説明

水質検出器の洗浄方法及び洗浄装置

【課題】洗浄時に砂や結晶等の固形物が電極部に衝突するのを防いで電極部の破損を防止するようにした、水質検出器の洗浄方法及び洗浄装置を提供する。
【解決手段】水質検出器の、試料水に接触する洗浄対象部位に付着した汚濁物質を洗浄ノズル14から噴射させた圧縮空気の作用により除去する洗浄方法であって、一洗浄期間内に電磁弁17を1回以上、開動作させることにより、エアタンク16から電磁弁17を介して前記圧縮空気を洗浄ノズル14に供給可能とした洗浄方法において、一洗浄期間の開始時点からエアタンク16への空気の充填を開始し、前記開始時点から所定時間幅を有するノズル排出時間T6に、エアタンク16から電磁弁17を介して前記圧縮空気よりも低圧(例えば、ほぼ大気圧)の空気を洗浄ノズル14に供給してノズル内の固形物を空気及び試料水と共に排出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質検出器の電極部等に付着した汚濁物質を圧縮気体の作用によって除去するための洗浄方法及び洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川水や湖沼水、工業用水の水質を連続的に測定するpH計、ORP計等の水質検出器において、試料水に浸漬されている電極部に試料水中の各種汚濁物質が付着すると、検出能力が低下し、分析精度が低下してくる。
このため、例えば特許文献1や特許文献2には、試料水に浸漬した洗浄ノズルから電極部に向けて圧縮空気を間欠的に噴射することにより、圧縮空気を試料水中で急激に膨張させて気泡を含んだ高速水流を発生させ、この水流の勢いと、電極部に付着した汚濁物質に試料水及び気泡の境界部が無秩序に接触することによる汚濁物質自体の振動との相乗作用により、汚濁物質を効率よく除去して電極部を洗浄する洗浄方法及び洗浄装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−211858号公報(段落[0015]〜[0027]、図1〜図3等)
【特許文献2】特開2007−190535号公報(段落[0012]〜[0022]、図1〜図3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術によれば、電極部等に付着した各種汚濁物質を効率良く確実に剥離させて除去し、水質検出器の分析精度を長期にわたって良好に維持することが可能である。
しかしながら、試料水には砂や結晶等の固形物が含まれることがしばしばあり、これらの固形物が洗浄ノズルの内部に付着または滞留している場合には、洗浄時に洗浄ノズルから上記固形物が圧縮空気と共に噴射されて電極部に高速で衝突することがあり、その衝撃によって電極部を破損してしまうおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明の解決課題は、洗浄時に砂や結晶等の固形物が電極部等の洗浄対象部位に衝突するのを防いでその破損を防止するようにした、水質検出器の洗浄方法及び洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に係る水質検出器の洗浄方法は、
水質検出器の、試料水に接触する洗浄対象部位に付着した汚濁物質を、試料水中の洗浄ノズルから噴射させた圧縮気体の作用により除去する洗浄方法であって、一洗浄期間内に弁を1回以上、開動作させることにより、タンクから前記弁を介して前記圧縮気体を前記洗浄ノズルに供給可能とした洗浄方法において、
一洗浄期間の開始時点から前記タンクへの気体の充填を開始し、前記開始時点から所定時間幅を有するノズル排出時間に、前記タンクから前記弁を介して前記圧縮気体よりも低圧の気体を前記洗浄ノズルに供給し、前記洗浄ノズルの内部に浸入している固形物を気体及び試料水と共に排出するものである。
【0007】
請求項2に係る洗浄方法は、請求項1に記載した水質検出器の洗浄方法において、一洗浄期間内に前記弁を複数回、開動作させて間欠洗浄を行うものである。
【0008】
請求項3に係る洗浄方法は、請求項1または2に記載した水質検出器の洗浄方法において、前記ノズル排出時間に、前記タンクから前記弁を介してほぼ大気圧の気体を前記洗浄ノズルに供給するものである。
【0009】
請求項4に係る洗浄装置は、
水質検出器の、試料水に接触する洗浄対象部位に付着した汚濁物質を、試料水中の洗浄ノズルから噴射させた圧縮気体の作用により除去する洗浄装置であって、一洗浄期間内に弁を1回以上、開動作させることにより、タンクから前記弁を介して前記圧縮気体を前記洗浄ノズルに供給可能とした洗浄装置において、
一洗浄期間の開始時点から前記タンクへの気体の充填を開始する手段と、
前記開始時点から所定時間幅を有するノズル排出時間に、前記タンクから前記弁を介して前記圧縮気体よりも低圧の気体を前記洗浄ノズルに供給して、前記洗浄ノズルの内部に浸入している固形物を気体及び試料水と共に排出する手段と、
を有する洗浄制御ユニットを備えたものである。
【0010】
請求項5に係る洗浄装置は、請求項4に記載した水質検出器の洗浄装置において、
前記洗浄制御ユニットが、前記タンクに気体を供給するポンプと、前記弁を構成する電磁弁と、前記ポンプ及び前記電磁弁の動作を制御する制御部と、を有するものである。
【0011】
請求項6に係る洗浄装置は、請求項5に記載した水質検出器の洗浄装置において、
前記洗浄制御ユニットが、一洗浄期間内に前記電磁弁を複数回、開動作させて間欠洗浄を行わせるものである。
【0012】
請求項7に係る洗浄装置は、請求項5または6に記載した水質検出器の洗浄装置において、前記洗浄制御ユニットが、前記ノズル排出時間に前記タンクから前記電磁弁を介してほぼ大気圧の気体を前記洗浄ノズルに供給するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、圧縮気体を洗浄ノズルから高速で噴射させる洗浄動作の前処理として、洗浄周期の開始時点に設定したノズル排出時間に、低圧の圧縮気体を洗浄ノズルに供給してノズル内に浸入している砂や結晶等の固形物を気体及び試料水と共に排出することができる。
これにより、固形物が高速で電極部等の洗浄部位に向けて噴射されるおそれがなく、固形物の衝突による洗浄部位の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態の動作を示すタイミングチャートである。
【図2】本発明の実施形態が適用される水質検出器の主要部を示す斜視図である。
【図3】図2における保護筒、洗浄ノズル等の縦断面図及び底面図である。
【図4】本発明の実施形態が適用される水質検出器の全体的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
前後するが、図2は、本実施形態が適用される水質検出器としてのpH計の主要部を示す斜視図である。図2において、10は試料水に浸漬される検出器本体、11は円筒状の電極ホルダ、12は電極ホルダ11の下端部に連結された保護筒、13は保護筒12内に配置されたガラス電極、比較電極等からなる電極部、14は電極部12を洗浄するための洗浄ノズル、15は洗浄ノズル14に圧縮空気を供給するための気体供給チューブである。
【0016】
図3(a)は前記保護筒12、洗浄ノズル14等の縦断面図、図3(b)は同じく底面図であり、これらの図において、14aは気体供給チューブ15の下端部が連結される連結部、14bは連結部14aに連通して電極部13方向に開口された圧縮空気の噴射口を示している。
【0017】
図4は、本実施形態の洗浄装置を含む水質検出器の全体的な構成図である。図4において、20は、検出器本体10の洗浄ノズル14に所定のタイミングで圧縮空気を供給する洗浄制御ユニット、30は、電極部13の出力信号を処理して試料水のpH値に変換するための変換器である。
ここで、洗浄制御ユニット20は、制御部21と、この制御部21によって駆動制御されるポンプ22及び前記電磁弁17と、外部から取り入れた空気をポンプ22によって圧縮空気とした後に所定圧力に減圧して前記エアタンク16に供給する圧力制御弁23とを備えている。また、制御部21からは、電極部13を洗浄中であることを示す洗浄中信号が変換器30に送出されるようになっている。なお、制御部21は、所定のシーケンスに従ってポンプ22の駆動制御及び電磁弁17の開閉制御を行うためのタイマ機能を有するコントローラであり、主としてCPU等の演算処理装置と、ポンプ22及び電磁弁17に接続されるインターフェースとを備えている。
【0018】
次に、この実施形態の動作を説明する。
図1は、本実施形態における電磁弁17の動作や洗浄中信号の様子を示すタイミングチャートであり、始めに、電磁弁17の動作について説明する。なお、図1では電磁弁17が「開」(ON)の状態を「High」レベル、「閉」(OFF)の状態を「Low」レベルにて示してある。
【0019】
図1において、T1は洗浄周期であり、前記制御部21のタイマ機能によって例えば99.9時間以内で設定可能である。この洗浄周期T1の初期に、ノズル排出・洗浄期間T2が設けられている。
また、Q1は前記ポンプ22のON時間であり、ノズル排出・洗浄期間T2の開始と同時にポンプ22がONするように制御部21によって設定される。ノズル排出・洗浄期間T2は、ポンプ22の動作によってエアタンク16に圧縮空気を充填するための充填時間T7と、その後の複数(後述する洗浄パルス数C1に等しい)回の洗浄パルス周期T5の和と、を加えた期間に等しくなっている。
【0020】
個々の洗浄パルス周期T5の初期には、ON時間がT4である洗浄パルスが設けられる。つまり、ON時間がT4である洗浄パルスを周期T5にて間欠的にC1(図1の例ではC1=4)回、発生させることで、エアタンク16の圧縮空気を電磁弁17及び気体供給チューブ15を介して洗浄ノズル14に間欠的に供給することが可能である。
以上のことから、以下の数式1,数式2が成り立つ。
[数式1]
T2=T7+T5×C1
[数式2]
Q1=T7+T5×(C1−1)
【0021】
なお、ノズル排出・洗浄期間T2の最後の洗浄パルス周期T5では、ON時間T4の最後の洗浄パルスに続けてON時間T8のパルスが付加されている。この時間T8を排気時間といい、当該パルスを排気パルスという。ここで、最後の洗浄パルス周期T5が開始する時点で、ポンプ22のON時間Q1は終了している。
上述した排気パルスは、最後の洗浄パルスから引き続き電磁弁17をONし続けてエアタンク16の排気を促すことにより、ノズル排出・洗浄期間T2が終了した時点におけるエアタンク16の残圧を大気圧に等しくするためのものである。
【0022】
さて、この実施形態では、前述したノズル排出・洗浄期間T2の開始時点(つまり、ポンプON時間Q1または充填時間T7の開始時点)から、ON時間T6のパルスが設けられる。この時間T6をノズル排出時間といい、当該パルスをノズル排出パルスという。
このノズル排出パルスは、ポンプ22の駆動開始直後であってエアタンク16内の圧力が大気圧から立ち上がったときに電磁弁17をONさせるパルスであり、ON時間T4の複数の洗浄パルスの発生時とは異なって、洗浄ノズル14に低圧の空気を供給するためのものである。このノズル排出パルスの作用により、洗浄ノズル14の内部に浸入して付着、滞留していた砂や結晶等の試料水中の固形物は、上記低圧の空気によって洗浄ノズル14内から空気及び試料水と共に、洗浄ノズル14の外へゆっくり排出される。
従って、上記固形物が洗浄ノズル14から高速に噴射されて電極部13に衝突することがなく、電極部13を破損させる心配はない。
なお、上述した各周期または時間T1〜T8及び洗浄パルス数C1は、制御部21のタイマ機能により、例えば図1に記載した範囲内で任意に設定可能である。
【0023】
また、前述したように、ON時間T8の排気パルスは、ON時間T6のノズル排出パルスの開始時点におけるエアタンク16の残圧を大気圧に保つ作用を果たしているが、洗浄周期T1が長ければ(例えば、30分以上)圧力制御弁23からの経時的な空気漏れにより、あるいは、ノズル排出・洗浄期間T2内の最後の洗浄パルスによって、エアタンク16の残圧がほぼ大気圧に等しくなる場合には、上記排気パルスを付加しなくてもよい。
【0024】
なお、図1において、洗浄後待機時間T3は、ノズル排出・洗浄期間T2の終了直後(電極部13の洗浄直後)は検出値が安定しないため、前記変換器30による信号処理を待機させるために設けられている時間である。従って、制御部21からは、ノズル排出・洗浄期間T2に洗浄後待機時間T3を加えた時間(T2+T3)にわたって「High」レベルとなる洗浄中信号が変換器30に送られており、変換器30では、この時間(T2+T3)内に電極部13から取得した検出値の信号処理動作を中止することとなる。
【0025】
上記実施形態では、本発明を水質検出器の電極部を洗浄する場合について説明したが、本発明に係る洗浄方法及び洗浄装置は、電極部以外の洗浄対象部位に対しても勿論、適用可能である。
【符号の説明】
【0026】
10:検出器本体
11:電極ホルダ
12:保護筒
13:電極部
14:洗浄ノズル
14a:連結部
14b:噴射口
15:気体供給チューブ
16:エアタンク
17:電磁弁
20:洗浄制御ユニット
21:制御部
22:ポンプ
23:圧力制御弁
30:変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水質検出器の、試料水に接触する洗浄対象部位に付着した汚濁物質を、試料水中の洗浄ノズルから噴射させた圧縮気体の作用により除去する洗浄方法であって、一洗浄期間内に弁を1回以上、開動作させることにより、タンクから前記弁を介して前記圧縮気体を前記洗浄ノズルに供給可能とした洗浄方法において、
一洗浄期間の開始時点から前記タンクへの気体の充填を開始し、前記開始時点から所定時間幅を有するノズル排出時間に、前記タンクから前記弁を介して前記圧縮気体よりも低圧の気体を前記洗浄ノズルに供給し、前記洗浄ノズルの内部に浸入している固形物を気体及び試料水と共に排出することを特徴とする、水質検出器の洗浄方法。
【請求項2】
請求項1に記載した水質検出器の洗浄方法において、
一洗浄期間内に前記弁を複数回、開動作させて間欠洗浄を行うことを特徴とする、水質検出器の洗浄方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載した水質検出器の洗浄方法において、
前記ノズル排出時間に、前記タンクから前記弁を介してほぼ大気圧の気体を前記洗浄ノズルに供給することを特徴とする、水質検出器の洗浄方法。
【請求項4】
水質検出器の、試料水に接触する洗浄対象部位に付着した汚濁物質を、試料水中の洗浄ノズルから噴射させた圧縮気体の作用により除去する洗浄装置であって、一洗浄期間内に弁を1回以上、開動作させることにより、タンクから前記弁を介して前記圧縮気体を前記洗浄ノズルに供給可能とした洗浄装置において、
一洗浄期間の開始時点から前記タンクへの気体の充填を開始する手段と、
前記開始時点から所定時間幅を有するノズル排出時間に、前記タンクから前記弁を介して前記圧縮気体よりも低圧の気体を前記洗浄ノズルに供給して、前記洗浄ノズルの内部に浸入している固形物を気体及び試料水と共に排出する手段と、
を有する洗浄制御ユニットを備えたことを特徴とする、水質検出器の洗浄装置。
【請求項5】
請求項4に記載した水質検出器の洗浄装置において、
前記洗浄制御ユニットが、
前記タンクに気体を供給するポンプと、前記弁を構成する電磁弁と、前記ポンプ及び前記電磁弁の動作を制御する制御部と、を有することを特徴とする、水質検出器の洗浄装置。
【請求項6】
請求項5に記載した水質検出器の洗浄装置において、
前記洗浄制御ユニットが、一洗浄期間内に前記電磁弁を複数回、開動作させて間欠洗浄を行わせることを特徴とする、水質検出器の洗浄装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載した水質検出器の洗浄装置において、
前記洗浄制御ユニットが、前記ノズル排出時間に前記タンクから前記電磁弁を介してほぼ大気圧の気体を前記洗浄ノズルに供給することを特徴とする、水質検出器の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−55791(P2012−55791A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198594(P2010−198594)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】