説明

水質検査試験紙計測装置

【課題】カラー撮像部を用いて、水質検査試験紙を撮像した色情報に基づいて画像処理し、その反応色の度合いを数値表示させる装置を提供する。
【解決手段】水質検査試験紙計測装置は、台紙に1から数種類の薬紙が取付けられている水質検査試験紙をカラー撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された前記薬紙部分の色情報を算出する色情報算出手段と、前記色情報算出手段により算出された薬紙部分の色情報と予め設定されている検量線データと比較する色情報比較手段と、前記色情報比較手段により比較された色情報に基づいて得られる計測値を表示する計測値表示手段と、を備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水質検査試験紙計測装置に関し、詳しくは、水質検査試験紙の反応色を反射光を利用して画像処理を行い、反応色の度合いを数値表示させるようにした水質検査試験紙計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術における水質検査試験紙を用いた、例えば、pHの計測や塩素濃度計測、又は尿検査などを行うとき、よく水質検査試験紙を使い、その反応色の色みや濃さを目視により判断して検査を行っている。
例えば、水質検査として遊離残留塩素、pH、総アルカリ度の3項目を1枚の水質検査試験紙で測定するというもので、その遊離残留塩素の測定原理は遊離残留塩素を特異的に検出するシリンガルダジン法に基づき、アクアチェック(商標登録)という名称で流通されている。
測定の手法は極めて簡単で、水質検査試験紙を被検査水に浸し一定時間反応させ、別途用意してある比色表に照らし合わせることにより目視による呈色判定するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−234455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術で説明したように、水質検査試験紙を使った反応色の判断に、印刷した比色表(カラーチャート)と水質検査試験紙の反応色を目視で比較しているが、なかなか正確な値を出しづらく、人によりその判断にバラつきがでてしまうと云う問題がある。
従って、これらの問題を解決するために、本計測装置においては、カラーCCD(撮像手段)を用い、画像処理で反応色の度合いを数値表示させるようにした装置に解決しなければならない課題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本願発明の水質検査試験紙計測装置は、次に示す構成にすることである。
【0006】
(1)水質検査試験紙計測装置は、 台紙に1から数種類の薬紙が取付けられている水質検査試験紙をカラー撮像する撮像手段と、 前記撮像手段により撮像された前記薬紙部分の色情報を算出する色情報算出手段と、 前記色情報算出手段により算出された薬紙部分の色情報と予め設定されている検量線データと比較する色情報比較手段と、 前記色情報比較手段により比較された色情報に基づいて得られる計測値を表示する計測値表示手段と、を備えてなることである。
(2)前記色情報算出手段は、前記薬紙以外の部分に基準となる白色部を設け、これら定位置を白色部分とみなして基準ホワイトとすることを特徴とする(1)に記載の水質検査試験紙計測装置。
(3)前記撮像手段は、被測定部材である水質検査試験紙に対して斜め方向に設置して撮像するようにしたことを特徴とする(1)に記載の水質検査試験紙計測装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明のように、水質検査試験紙を被検査水に浸し一定時間経過後の水質検査試験紙を挿入部から挿入して撮像部で撮像して画像処理し、その画像処理した色情報に基づいた結果を数値表示するようにしたことで、従来のように目視により比色表との比較によることによる個人差を解消することができる。
又、従来は試験紙1枚ごとに、目視による呈色判定していたが、本願発明においては目視による判定ではないために、複数の試験紙を同時に画像処理して数値表示することができ、検査の効率化を図り且つ迅速な処理をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の水質検査試験紙計測装置の外観を示した斜視図である。
【図2】同、実施例1の内部構造を断面図で示した説明図である。
【図3】同、内部構造を断面図で示した説明図である。
【図4】同、内部構造を断面図で示した説明図である。
【図5】3種類の薬紙を台紙に貼り付けた水質検査試験紙の平面図である。
【図6】同、水質検査試験紙の側面図である。
【図7】撮像手段で取り込んだ画像から薬紙の部分と台紙の部分とを識別する様子を示す説明図である。
【図8】撮像手段で取り込んだ水質検査試験紙を計測する様子を示すフローである。
【図9】実施例2の内部構造を断面図で示した説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本願発明に係る水質検査試験紙計測装置の実施形態について、以下、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0010】
本発明に係る水質検査試験紙計測装置は、図1乃至図4に示すように、パソコン等の情報機器11にUSBケーブル12を介して接続されるもので、基台13と、基台13上に水質検査試験紙21を挿脱自在に挿入して位置決めする挿入位置決め部14と、基台13の上部で挿入位置決め部14に装着された水質検査試験紙31の反応部である薬紙を撮像できる上部位置に設けた撮像部15と、撮像部15を挟んだ両側に位置決めされている水質検査試験紙31方向に光線を照射する照射部15と、を備えた構成になっている。
【0011】
挿入位置決め部14は、基台13上に凹部状に設けられたもので、カバー17で覆われた内部で撮像部15で撮像できる領域に水質検査試験紙21を挿入して先端側が当接して位置決めされ、試験紙21が位置決めされた部位の隣接する位置を白色に表面処理して形成された基準ホワイト検出部19を設け、カバー17の終端に水質検査試験紙31が脱落しないようにU字型形状の試験紙脱落防止板18を設け、水質検査試験紙31を差し込む後端側には水質検査試験紙31を手で持って差し込み易くするために窪みに形成したガイド部22を設けた構造となっている。
【0012】
撮像部15は、所謂、カラーCCDであり、基板23に取付けられており、撮像方向が固定され挿入位置決め部14に装着された試験紙31の上部から撮像できる構成となっている。
【0013】
照射部16は、所謂、LEDで構成され、撮像部15を挟んで2つのLEDを設けた構成となっており、そのLEDの照射側に拡散板24を備えた構成になっている。この拡散板24を設けた構成にすることで、LEDから発射された光線は、拡散板24で拡散され、水質検査試験紙31側への光線が均一に照射される。
【0014】
水質検査試験紙31は、図5及び図6に示すように、ステック状に形成され、主として白色で形成された台紙32に等間隔で3個の薬紙である第1の薬紙33a、第2の薬紙33b、第3の薬紙33c、が貼り付けて取付けてある。この薬紙の数は検査するものに対応して決められたもので1個のものもある。
実施例においては、3個の薬紙、第1の薬紙33a、第2の薬紙33b、第3の薬紙33cが台紙32に貼り付けられており、第1の薬紙33aはpH、第2の薬紙は遊離残留塩素、第3の薬紙は総アルカリ度を測定するものである。
【0015】
このような構成において、水質検査試験紙31を挿入位置決め部14に挿入すると、先端側が凹部の壁に当接した状態となり、撮像部15で撮像できる位置に位置決めされる。
【0016】
撮像部15で撮影された水質検査試験紙31のデータは、USBケーブル12を介して情報機器11に取込まれる。情報機器11に搭載されている処理ソフトウェアにより、試験紙31のデータは処理されることになる。
パソコン等の情報機器11には、撮像部15で撮影した試験紙31のデータであるR・G・Bデータを取込み、試験紙31の台紙32の部分及び試験紙31本体の背景色の差や、台紙31に貼り付けてある薬紙(第1の薬紙33a、第2の薬紙33b、第3の薬紙33c)の厚みで生じる陰の輪郭などを検出して、試験紙31の薬紙部分であると判断する薬紙判断フローが搭載されている。
更に、照射部16や撮像部15の個体差などで、基準ホワイトが異なってくるために、これを補正するためにホワイト訂正フローが搭載されている。具体的には、装着されている試験紙31の台紙32に貼り付けられている薬紙33a、33b、33cの間、もしくは位置決めされている試験紙21に隣接する部位である基準ホワイト検出部19を白色に表面処理をし、これら定位置を白色部分として基準ホワイトとする。
さらに、撮像したR・G・Bデータに基づいて試験紙31の各薬紙33a、33b、33cのR・G・Bデータを取込み、決められている検量線に基づいて計測値を算出する計測値算出フローが搭載されている。
そして、算出された計測値を表示する表示フローが搭載されている。
【0017】
これら様々なフローを搭載した情報機器11を利用して、試験紙31から計測値を算出するためのフローについて、図8に示すCCD試験紙・計測フローを参照して以下説明する。
【0018】
先ず、計測を開始するにあたり、被検査水に浸した水質検査試験紙31を挿入位置決め部14に挿入して位置決めしてセットする(ステップST1)。
【0019】
次に、情報機器11側においては、挿入位置決め部14に水質検査試験紙31が装着したことを撮像部15で撮像したR・G・Bデータを取得することにより試験紙31が装着されたことを検出する(ステップST2)。
【0020】
そして、ステップST2で撮像部15より取得したR・G・Bデータに基づいて試験紙31の位置を検出する(ステップST3)。
即ち、図7に示すように、撮像部15より取得したR・G・Bデータから、試験紙31の台紙の部分の色情報及び試験紙背景色の差や、台紙32に貼り付けた薬紙33a、33b、33cの厚みで生じる陰の輪郭などを検出し、薬紙部分だと判断する。
このように認識することで、多少の位置ずれがあっても正確な反応色部分(薬紙の部分)のR・G・Bデータを計測するようにしている。
【0021】
次に、水質検査試験紙31のうち薬紙の部分の一定範囲内のR・G・Bデータを抽出する(ステップST4)。
これは、薬紙33a、33b、33cの部分のR・G・Bデータのうち、薬紙33a、33b、33cの隅の部分のデータは反応色として好ましくないために、薬紙33a、33b、33cの中央部分のR・G・Bデータを抽出するというものである。
【0022】
次に、薬紙33a、33b、33cの中央部分のR・G・Bデータの均質化を行う(ステップST5)。
これは、反応色が斑模様等になっている場合には、均質化することで正確な反応色にすることができる。
【0023】
次に、撮像した水質検査試験紙31のR・G・Bデータを利用してホワイト部の位置検出を行う(ステップST6)。
実施例において、ホワイト部は台紙32に貼り付けてある薬紙33a(、33b、33c)と薬紙33b(、33c)の間の台紙、もしくは位置決めされている試験紙21に隣接する部位である基準ホワイト検出部19を白色に表面処理をし、これら定位置の色情報をホワイト部としており、そのため薬紙33a(、33b、33c)と薬紙33b(、33c)の間のR・G・Bデータを抽出すること、あるいは基準ホワイト検出部19のR・G・Bデータを抽出することでホワイト部の位置検出を行う。
【0024】
ホワイト部の位置検出をした後に、ホワイト部のR・G・Bデータを取得する(ステップST7)。
照射部16の光源や撮像部15のCCDなどの個体差などで、基準ホワイトが異なってくる。この為、これの補正するので定位置に白色部を設け、RGBデータを取得する都度この部分のR・G・Bデータを取込みこれを基準ホワイトとしている。
この白色部は、計測器の撮影ステージ内に設けたり、試験紙31の台紙32を白色部とみなすことで実現することができ、実施例においては台紙32の部分を白色部とみなしている。
【0025】
次に、取得したホワイト部のR・G・Bデータの均質化を行う(ステップST8)。
【0026】
ホワイト部の均質化したR・G・Bデータと真のホワイトデータとの偏差値を算出する(ステップST9)。
【0027】
そして、次に、ステップST9で算出されたホワイトデータの偏差値に基づいて薬紙33a、33b、33cを撮像して得られた均質化されたR・G・Bデータを補正することにより薬紙33a、33b、33cのR・G・Bデータを算出する(ステップST10)。
【0028】
次に、試験紙31の台紙32に貼り付けられているそれぞれの薬紙33a、33b、33cに属する検量線データに基づいて計測値を算出する(ステップST11)。
この計測値の算出方法は、各種の試験紙31毎に色みが異なるので、それぞれに検量線データを存在させる。この検量線データを決める時は、少なくとも3種類の異なる濃度で反応させた試験紙31を作成する。次にこれらのR・G・Bデータを撮像部(CCD)15より取得し、それぞれの濃度に対する均質化したR・G・Bデータを決め、最小二乗法などで演算しR・G・Bデータの各検量線を求める。
計測値を算出するときは、その都度セットした試験紙31のR・G・Bデータをこの検量線データから割り出している。
【0029】
以上のようにして計測値を算出すると、図7に示すように、これら計測値を色情報と共に結果を表示する(ステップST12)。
図7においては、3種類の薬紙33a、33b、33cのうち、例えば、pHについては7pH、遊離残留塩素については2.8mg/L、総アルカリ度については0.1mg/Lと表示する。
【実施例2】
【0030】
次に、本発明に係る水質検査試験紙計測装置の実施例2について、図9を参照して説明する。
実施例2の水質検査試験紙計測装置は、図2乃至図4に示す実施例1で示した構成と同じ構成であるが、撮像部15からの撮影位置が被測定部材である水質検査試験紙31に対して斜め方向から撮像する構成とし、且つ照射部16からの照射も被測定部材である水質検査試験紙31に対して斜め方向から照射する構成にしたことである。このように斜め方向からの撮像及び照射をする構成にすると、例えば、被測定部材31の測定表面が、光沢のある材質や液体で漏れている場合など、光が乱反射しやすい状態の場合において照明が直接反射し撮像部15の受光部に入ることによる画像の影響を解消することができる。この解消する手法として、図9に示すように、被測定部材である水質検査試験紙31に対し撮像部15のカメラの光軸角θを5度以上つけることで、測定物表面に発生する照明の直接反射光が受光部に入るのを回避させることができる。
その他の点については、図2乃至図4に示す実施例1で示したものと同様であるので、同一符号を付与してその説明は省略する。
【0031】
尚、実施例2においては、撮像部15及び照射部16を被測定部材31に対して斜め方向になるようにしたが、これに限定されることなく、撮像部15が実施例1で示した如く被測定部材31の上部位置で略垂直方向に位置させ、照射部16を実施例2に示す如く被測定部材31に対して斜め方向から照射するようにしても、照射部16からの光線の直接反射が直接撮像部15に入らないようにすることができる。
更に、撮像部15が実施例2で示すように被測定部材31に対して斜め方向から撮像するように設置し、照射部16が実施例1で示す如く、被測定部材31の上部位置で略垂直方向に位置させる構成にしても、照射部16からの光線の直接反射が直接撮像部15に入らないようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
カラー撮像部を用いて、水質検査試験紙を撮像した色情報に基づいて画像処理し、その反応色の度合いを数値表示させる装置を提供する。
【符号の説明】
【0033】
11 情報機器
12 USBケーブル
13 基台
14 挿入位置決め部
15 撮像部
16 照射部
17 カバー
18 試験紙脱落防止板
19 基準ホワイト検出部
22 ガイド部
23 基板
24 拡散板
31 水質検査試験紙
32 台紙
33a 第1の薬紙
33b 第2の薬紙
33c 第3の薬紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台紙に1から数種類の薬紙が取付けられている水質検査試験紙をカラー撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された前記薬紙部分の色情報を算出する色情報算出手段と、
前記色情報算出手段により算出された薬紙部分の色情報と予め設定されている検量線データと比較する色情報比較手段と、
前記色情報比較手段により比較された色情報に基づいて得られる計測値を表示する計測値表示手段と、
を備えてなる水質検査試験紙計測装置。
【請求項2】
前記色情報算出手段は、前記薬紙以外の部分に基準となる白色部を設け、これら定位置を白色部分とみなして基準ホワイトとすることを特徴とする請求項1に記載の水質検査試験紙計測装置。
【請求項3】
前記撮像手段は、被測定部材である水質検査試験紙に対して斜め方向に設置して撮像するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の水質検査試験紙計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−88232(P2012−88232A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236491(P2010−236491)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(391052541)株式会社スタックシステム (4)
【Fターム(参考)】