説明

水質測定システム

【課題】水処理機器への通水中にのみ水質測定を行う。
【解決手段】水処理機器3の下流側と接続され、予め設定された測定間隔時間と外部からの指示信号とに基づいて、測定動作を行う水質測定装置7と、この水質測定装置7と接続された測定制御装置8とを備え、この測定制御装置8は、フロースイッチ6による前記水処理機器3への通水の有無の検出結果に基づいて、前記水質測定装置7へ測定許可信号または測定禁止信号を出力することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水の濁度および硬度などの水質測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、ボイラなどの機器への給水ラインには、所定水質の給水を供給するために、水処理機器が設けられているが、この水処理機器への通水中に所定水質が得られているか否かを確認すべく、前記給水ラインに水質測定装置が設けられることがある。
【0003】
前記水質測定装置としては、濁度測定装置や硬度測定装置などが知られている(たとえば、特許文献1,2参照)。たとえば、ボイラへの給水ラインには、給水中の硬度分に起因するボイラ缶体へのスケール付着を防止するため、イオン交換樹脂などによって被処理水中の硬度分を除去する軟水装置が設けられているが、前記軟水装置の下流側には、硬度漏れを検出するために、前記硬度測定装置が設けられている。
【特許文献1】特開2004−170196号公報
【特許文献2】特開平9−329581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、前記水質測定装置における測定動作は、内蔵されたタイマーに基づいて、予め設定された一定の測定間隔で行われている場合が多い。この場合、前記水処理機器への通水の有無とは関係なく測定が行われることになる。したがって、測定する必要がない通水停止中であっても、設定された測定時間になると測定動作が行われ、無駄な測定が行われている。
【0005】
また、通水停止中に測定を行うことが好ましくない場合もある。たとえば、前記軟水装置では、通水停止中に硬度分が前記イオン交換樹脂から流出し、前記軟水装置の下流側の硬度が高くなることがある。したがって、通水停止中に測定を行った場合、硬度漏れを起こしていないにも関わらず測定値が高くなり、硬度漏れと判断されるおそれがある。
【0006】
さらに、予め設定された測定タイミング以外のときに水質測定を行うことにより、処理水質の異常を早期に発見することができる場合もある。たとえば、前記軟水装置では、前記イオン交換樹脂が、イオン交換能力を失って破過状態となる前に、前記イオン交換樹脂へ再生剤として塩水を供給し、イオン交換能力を回復させる再生動作が行われている。この再生動作において、前記イオン交換樹脂のイオン交換能力が正常に回復しない場合、所定水質の処理水が得られなくなる。したがって、予め設定された測定タイミング以外にも、前記再生動作後に、前記硬度測定装置による測定を行えば、再生不良による硬度漏れを早期に発見することができる。このように、前記水処理機器の運転状況に応じて、水質測定を行うことができれば、処理水質の異常を早期に発見することができる。
【0007】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする第一の課題は、水処理機器への通水中にのみ水質測定を行うことである。
【0008】
また、この発明が解決しようとする第二の課題は、処理水の水質の異常を早期に発見するために、適切なタイミングで水質測定を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、水処理機器の上流側および/または下流側と接続され、予め設定された測定間隔時間と外部からの指示信号とに基づいて、測定動作を行う水質測定装置と、この水質測定装置と接続された測定制御装置とを備え、この測定制御装置は、前記水処理機器への通水の有無に基づいて、前記水質測定装置へ測定許可信号または測定禁止信号を出力することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の前記測定制御装置と前記水処理機器とが接続され、前記測定制御装置は、前記水処理機器の運転情報および前記水処理機器への通水の有無に基づいて、前記水質測定装置へ測定指令信号を出力することを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の前記測定制御装置に接点出力部を設け、この接点出力部の接点の開閉パターンにより、前記水質測定装置への前記測定許可信号,前記測定禁止信号および前記測定指令信号の各出力を切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載された発明によれば、前記水処理機器への通水が行われていないときには、前記測定制御装置から前記測定装置へ測定禁止信号が出力され、この測定禁止信号の入力があるときには、前記測定装置は測定動作を行わない。一方で、前記水処理機器への通水が行われているときには、前記測定制御装置から前記測定装置へ測定許可信号が出力され、この測定許可信号の入力があるときには、前記測定装置は、予め設定された測定間隔時間ごとに測定動作を行う。これにより、前記水処理機器への通水を停止しているときには水質測定が行われず、常に通水中にのみ水質測定を行うことができる。
【0013】
請求項2に記載された発明によれば、前記水処理機器の運転状況に応じた水質測定を行うことができ、これによって処理水の水質の異常を早期に発見することができる。
【0014】
請求項3に記載された発明によれば、前記測定許可信号,前記測定禁止信号および前記測定指令信号の各出力を、前記接点出力部の接点の開閉パターンにより簡単に切り替えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、この発明の実施の形態について図面に基づいて詳細に説明する。
(第一実施形態)
まず、この発明に係る水質測定システムの第一実施形態について説明する。図1は、水処理システムに設けられたこの発明に係る水質測定システムの第一実施形態の構成を示す概略的な説明図、図2は、第一実施形態の水質測定システムにおいて、接点出力部が閉状態のときの概略構成図、図3は、第一実施形態の水質測定システムにおいて、接点出力部が開状態のときの概略構成図、図4は第一実施形態の水質測定システムの測定動作の説明図である。
【0016】
水質測定システム1は、機器(図示省略)への給水ライン2に水処理機器3を設けた水処理システム4に設けられている。前記水処理機器3は、たとえば被処理水中の非溶解物などの不純物を濾材によって除去する濾過装置や、被処理水中の硬度分をイオン交換樹脂によって除去する軟水装置などである。前記水処理機器3の上流側には、被処理水を前記水処理機器3へ供給するために、ポンプ5が設けられている。
【0017】
前記水質測定システム1は、フロースイッチ6と水質測定装置7と測定制御装置8とを備えている。前記フロースイッチ6および前記水質測定装置7は、信号線9を介して前記水質測定装置7とそれぞれ接続されている。
【0018】
前記フロースイッチ6および前記水質測定装置7は、前記水処理機器3の下流側の前記給水ライン2とそれぞれ接続されている。前記フロースイッチ6では、前記水処理機器3への通水の有無を検出するようになっている。また、前記水質測定装置7では、前記水処理機器3が、たとえば濾過装置であるときには、濁度または色度を測定し、また軟水装置であるときには、硬度を測定するようになっている。
【0019】
前記水質測定装置7は、予め設定された測定間隔時間と、前記測定制御装置8からの指示信号,具体的には後述する測定許可信号S1(図4参照)とに基づいて測定動作を行うようになっている。前記水質測定装置7は、前記測定間隔時間を計測するタイマー(図示省略)を備えている。
【0020】
前記測定制御装置8は、図2および図3に示すように、接点出力部10を備えており、この接点出力部10の接点の開閉パターンにより、前記水質測定装置7へ前記測定許可信号S1または測定禁止信号S2(図4参照)を出力するようになっている。具体的には、図2に示すように、前記接点出力部10の接点が閉状態のときに、前記水質測定装置7へ前記測定禁止信号S2を出力し、一方で図3に示すように、前記接点出力部10の接点が開状態のときに、前記水質測定装置7へ前記測定許可信号S1を出力するようになっている。前記測定制御装置8からの前記測定許可信号S1または前記測定禁止信号S2の出力は、前記水処理機器3への通水の有無,すなわち前記フロースイッチ6からの信号に基づいて行われるようになっている。
【0021】
さて、前記水質測定システム1の測定制御方法について説明する。前記水質測定システム1では、前記フロースイッチ6において前記水処理機器3への通水の有無を検出する。そして、前記測定制御装置8は、前記フロースイッチ6の検出結果に基づいて、前記水質測定装置7へ前記測定許可信号S1(図4参照)または前記測定禁止信号S2(図4参照)を出力する。具体的には、前記水処理機器3への通水が行われていないときには、前記測定制御装置8は、前記接点出力部10を閉状態とし、前記水質測定装置7へ前記測定禁止信号S2を出力する。一方で、前記水処理機器3への通水が行われているときには、前記測定制御装置8は、前記接点出力部10を開状態とし、前記水質測定装置7へ前記測定許可信号S1を出力する。
【0022】
前記水質測定装置7における測定動作について、図4に基づいて説明する。前記水質測定装置7は、前記測定制御装置8からの前記測定許可信号S1の入力があるときには、前記タイマー(図示省略)で計測される所定間隔時間T1ごとに測定動作を行う(図4のM2およびM3)。一方で、前記水質測定装置7は、前記測定制御装置8からの前記測定禁止信号S2の入力があるときには、測定動作を行わない(図4のM1およびM4)。
【0023】
前記水質測定システム1によれば、前記水処理機器3への通水を停止しているときには水質測定が行われず、常に通水中にのみ水質測定を行うことができる。これにより、通水停止中の無駄な測定が行われないので、たとえば水質測定に際し試薬を用いる場合には、その試薬の無駄遣いを防止することができるなどの効果を得ることができる。また、前記水処理機器3が軟水装置である場合に、通水停止中の硬度の上昇を検出するようなこともないので、処理水の水質について、常に正しい判断をすることができる。
【0024】
(第二実施形態)
つぎに、この発明に係る水質測定システムの第二実施形態について説明する。図5は、水処理システムに設けられたこの発明に係る水質測定システムの第二実施形態の構成を示す概略的な説明図、図6は、第二実施形態の水質測定システムの概略構成を示し、接点出力部から測定指令信号を出力するときの説明図、図7は第二実施形態の水質測定システムの測定動作の説明図である。図において、前記第一実施形態と同一の構成については同一の符号を付して示し、その説明を省略する。
【0025】
この第二実施形態の水質測定システム20では、前記水処理機器3への通水の有無を検出するために、前記水処理機器3の下流側に、流量計21が設けられている。また、前記測定制御装置8は、前記水質測定装置7のほか、前記流量計21および前記水処理機器3と前記信号線9を介してそれぞれ接続されている。
【0026】
前記測定制御装置8へは、前記信号線9を介して前記水処理機器3の運転情報が入力されるようになっている。前記測定制御装置8は、前記測定許可信号S1(図7参照)および前記測定禁止信号S2(図7参照)のほか、図6に示すように、前記接点出力部10が開状態にあるとき,すなわち前記水処理機器3への通水が行われており前記測定許可信号S1が出力されているときに、前記水処理機器3の運転情報に基づいて、所定間隔時間T2(図7参照)ごとに、たとえば1〜3秒間前記接点出力部10を開閉させ、前記水質測定装置7へ測定指令信号S3(図7参照)を出力するようになっている。
【0027】
ここで、前記測定指令信号S3を出力するために参照される前記水処理機器3の運転情報としては、前記水処理機器3が濾過装置や軟水装置の場合、前記濾材による非溶解物などの不純物の除去能力や前記イオン交換樹脂による硬度分の除去能力を回復させるための再生動作中に、前記水処理機器3から出力される再生動作中信号や、前記水処理機器3に設定された再生動作開始時刻を挙げることができる。また、前記水処理機器3の運転情報として、前記流量計21によって検出され、前記水処理機器3または前記測定制御装置8に記憶された単位時間ごとの採水量データを挙げることもできる。
【0028】
さて、前記水質測定システム20では、前記測定制御装置8は、前記水処理機器3への通水の有無,具体的には前記流量計21の検出結果に基づいて、前記第一実施形態と同様に、前記接点出力部10から、前記水質測定装置7へ前記測定許可信号S1(図7参照)または前記測定禁止信号S2(図7参照)を出力する。
【0029】
そして、前記水質測定装置7では、図7に示すように、前記第一実施形態と同様に、前記測定制御装置8からの前記測定許可信号S1の入力があるときには、前記タイマーで計測される前記所定間隔時間T1ごとに測定動作を行う(図7のM12およびM14)。一方で、前記水質測定装置7は、前記測定制御装置8からの前記測定禁止信号S2の入力があるときには、測定動作を行わない(図7のM10およびM15)。
【0030】
また、前記水質測定装置7では、前記測定許可信号S1が入力されているときに、前記測定制御装置8から前記測定指令信号S3が入力されると、測定動作を行う(図7のM11〜M14。M12およびM14については、前記所定間隔時間T1と重複している)。前記測定制御装置8は、前記水処理機器3の運転情報に基づいて、前記所定間隔時間T1よりも短い前記所定間隔時間T2ごとに前記測定指令信号S3を出力する。
【0031】
前記測定制御装置8による前記測定指令信号S3の出力についてさらに詳細に説明する。たとえば、前記水処理機器3としての前記濾過装置や前記軟水装置の再生動作中信号を参照して前記測定指令信号S3を出力するときには、再生動作の終了直後から所定時間の間は、前記測定制御装置8は、前記所定間隔時間T2ごとに前記測定指令信号S3を出力する。また、前記水処理機器3としての前記濾過装置や前記軟水装置の再生動作開始時刻を参照して前記測定指令信号S3を出力するときには、再生動作開始前の所定時間の間は、前記所定間隔時間T2ごとに前記測定指令信号S3を出力する。さらに、前記水処理機器3の採水量を参照して前記測定指令信号S3を出力するときには、平均よりも採水量が多い時間帯に前記測定指令信号S3を出力する。ここで、前記所定間隔時間T2は、前記水処理機器3の運転情報ごとに異なる値を設定してもよい。
【0032】
前記水質測定システム20によれば、前記水処理機器3からの再生動作中信号を参照して、再生動作の終了直後から所定時間の間、前記所定間隔時間T1よりも短い間隔で測定動作を行うことにより、前記水処理機器3の水処理能力が回復していないことによる処理水の水質悪化を検出することができる。また、前記水処理機器3の再生動作開始時刻を参照して、再生動作の開始前の所定時間の間、前記所定間隔時間T1よりも短い間隔で測定動作を行うことにより、前記水処理機器3の水処理能力を超過していることによる処理水の水質悪化を検出することができる。さらに、前記水処理機器3の採水量を参照して、平均よりも採水量が多い時間帯に前記所定間隔時間T1よりも短い間隔で測定動作を行うことにより、処理水量の増加によって処理水の水質が悪化しているか否かを判断することができる。したがって、このように前記水処理機器3の運転状況に応じた水質測定を行うことにより、処理水の水質の異常を早期に発見することができる。
【0033】
以上、この発明を前記各実施形態によって説明したが、この発明は、前記各実施形態に限られるものでないことはもちろんである。たとえば、前記水質測定装置7は、前記水処理機器3の上流側と接続されていてもよく、また前記水処理機器3の上流側と下流側とに接続されていてもよい。さらに、前記水処理機器3への通水の有無は、前記フロースイッチ6や前記流量計21によって検出するものに限られず、たとえば前記ポンプ5のオンオフ信号や、前記水処理機器3の下流側に処理水タンク(図示省略)が設けられている場合には、この処理水タンクからの水位検出信号に基づいて検出を行ってもよい。さらにまた、前記測定許可信号S1,前記測定禁止信号S2および前記測定指令信号S3の情報入力は、適宜な通信手段を用いて行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】水処理システムに設けられたこの発明に係る水質測定システムの第一実施形態の構成を示す概略的な説明図である。
【図2】第一実施形態の水質測定システムにおいて、接点出力部が閉状態のときの概略構成図である。
【図3】第一実施形態の水質測定システムにおいて、接点出力部が開状態のときの概略構成図である。
【図4】第一実施形態の水質測定システムの測定動作の説明図である。
【図5】水処理システムに設けられたこの発明に係る水質測定システムの第二実施形態の構成を示す概略的な説明図である。
【図6】第二実施形態の水質測定システムの概略構成を示し、接点出力部から測定指令信号を出力するときの説明図である。
【図7】第二実施形態の水質測定システムの測定動作の説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1,20 水質測定システム
3 水処理機器
7 水質測定装置
8 測定制御装置
10 接点出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理機器の上流側および/または下流側と接続され、予め設定された測定間隔時間と外部からの指示信号とに基づいて、測定動作を行う水質測定装置と、
この水質測定装置と接続された測定制御装置とを備え、
この測定制御装置は、前記水処理機器への通水の有無に基づいて、前記水質測定装置へ測定許可信号または測定禁止信号を出力することを特徴とする水質測定システム。
【請求項2】
前記測定制御装置と前記水処理機器とが接続され、
前記測定制御装置は、前記水処理機器の運転情報および前記水処理機器への通水の有無に基づいて、前記水質測定装置へ測定指令信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の水質測定システム。
【請求項3】
前記測定制御装置に接点出力部を設け、
この接点出力部の接点の開閉パターンにより、前記水質測定装置への前記測定許可信号,前記測定禁止信号および前記測定指令信号の各出力を切り替えることを特徴とする請求項1または2に記載の水質測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−263806(P2007−263806A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−90345(P2006−90345)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】