説明

水質測定装置

【課題】下水処理場の反応槽等の気泡の混入する分析用採水では、採水部分に気泡が混入し、前段に別途の採水槽を設置し、安定採水を図る方法が一般的であった。この場合、採水槽の頻繁なメンテナンスが必要とされる問題点があった。
【解決手段】収容部1に収容された被測定水2の水質を検知する水質検知器4と、上記収容部及び上記水質検知器を連通する採水管6とを備えた水質測定装置において、上記採水管の途中に設けられた分岐部8と、この分岐部で分岐された被測定水を上記採水管よりも高い位置に上昇させた後、上記収容部に戻すバイパス配管12と、このバイパス配管における上記採水管よりも高い位置に流路断面積が上方向に小さくなるように介装されたレジューサ10と、上記バイパス配管に介装されたバイパス弁11とを備えるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば下水処理場や排水処理設備の反応槽に収容された被処理液等、気泡が含まれた被測定水などでも、その水質を好ましく検知することができる水質測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の下水処理場における反応槽の被処理液等、気泡が混入した液体を被測定水として水質を検知する場合、水質検知器の前段に別途採水槽を設置し、測定部への気泡の影響を除去したり、エア抜きバルブ等を配管の高い部分に設置したりして、測定部への採水を行っている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−121628号公報(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の水質測定装置では、水質検知器の前段に採水槽を設けて気泡を除去する場合は、採水槽の定期的なメンテナンスが必要となること、また、エア抜きバルブを設置した場合は、下水処理場などの夾雑物の多い採水では、エア抜きバルブヘの泥等の付着により配管の詰まり等が発生する問題が有り、安定的な計測が難しいなどの課題があった。
【0005】
この発明は上記のような従来技術の課題を解決するためになされたもので、下水処理場の被処理液等の気泡を含む被測定水であっても、採水された被測定水から容易に気泡を除去し、水質検知器に気泡の除去された被測定水を安定的に送給し、長期間メンテナンスが低減可能な水質測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る水質測定装置は、収容部に収容された被測定水の水質を検知する水質検知器と、上記収容部及び上記水質検知器を連通する採水管とを備えた水質測定装置において、上記採水管に設けられた分岐部と、この分岐部で分岐された被測定水を上記採水管よりも高い位置に上昇させた後、上記収容部に戻すバイパス配管と、このバイパス配管における上記採水管よりも高い位置に流路断面積が上方向に小さくなるように介装されたレジューサと、上記バイパス配管に介装されたバイパス弁と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、エア抜きの如く作用するバイパス配管に、上方向に流路断面積が小さくなるようにレジューサを介装したことにより、レジューサ以降のバイパス配管を流れる気泡を含む液体の流速を早め、各種夾雑物などを気泡と共に採水管の分岐部から除去するため、水質検知器に気泡の除去された被測定水を安定的に送給し、気泡の混入による水質検知器への影響を低減できる。また、配管の詰まりが少なくメンテナンスを長期間不要に出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による水質測定装置の要部を概念的に示す構成図である。なお、以下では、この発明を下水処理場の反応槽に収容された被処理液を被測定水として水質測定する場合について説明する。図において、下水処理場の反応槽からなる収容部1には、被測定水である被処理液2が収容され、図示省略している曝気装置から供給された空気などの酸化性ガスによって撹拌され、無数の気泡3が生じている。収容部1には、収容された被処理液2を被測定水として水質計器である水質検知器4に採水管6を通じて送給するための水中ポンプ5が設けられており、収容部1と水質検知器4を連通する採水管6には、下流方向に仕切弁7、分岐部8、及び前処理装置9が順次介装されている。仕切弁7では、採水流量や採水圧力が調整される。
【0009】
分岐部8で上方向に分岐された被処理液2は、レジューサ10、及びバイパス弁11を経て、分岐部8よりも高さhだけ上方部に立ち上げられた後、収容部1に戻るように設けられたバイパス配管12によって収容部1に戻される。なお、レジューサ10は入口部よりも出口部の内径を連続的に滑らかに絞った公知の配管部材であり、例えば出口部の内径が入口部の2分の1程度としたものなどは好ましく用いることができる。また、前処理装置9は、公知のマクロ化を使って採水するもので、図示省略しているフィルタに圧力水を通して浸透した水を水質検知器4に送る。上記前処理装置9には、余剰水を収容部1に戻すための戻り管13が接続されている。なお、水質検知器4は例えば公知の一般的なものを用いることができるので、その構造、信号処理回路、制御装置などは詳細図示を省略している。また、レジューサ10の入口または出口に接続される配管の内径は、レジューサ10の入口径または出口径に合わせたものがそれぞれ用いられている。
【0010】
次に上記のように構成された実施の形態1の動作について説明する。下水処理場の被処理液2は、反応槽である収容部1から水中ポンプ5によって採水され、採水管6を通じて水質検知器4の前処理装置9を経由して水質検知器4へ送られる。ここで、採水管6に設けられた仕切弁7の開度を調整して、採水流量や採水圧力が調整される。仕切弁7を通過した被処理液2の一部は、前処理装置9の手前に設けられた分岐部8からレジューサ10、バイパス弁11に連なるバイパス配管12に向かうが、レジューサ10を有するバイパス配管12が高さhだけ立ち上げて設けられていることにより、下側の分岐部8の圧力が高く、上方向に圧力が低くなるような圧力差が生じる。
【0011】
このため、バイパス配管12自体でエア抜き配管の機能が働いて、被処理液2に含まれる気泡がバイパス配管12に抜けようとする。従来のエア抜き配管の場合、下水処理場の被処理液のように気泡と共に各種夾雑物などを多く含む懸濁液では、配管やバルブ類が詰まり易いという問題が有ったが、この発明の実施の形態1ではレジューサ10が上方向に流路断面積が小さくなるように介装されていることにより、レジューサ10以降のバイパス配管12を流れる気泡を含む液体の流速が早まり、各種夾雑物などを気泡と共に流し去り、収容部1に戻すため、長時間詰まりを生じることがない。
【0012】
なお、バイパス弁11はバイパス配管12を流れる被処理液の流量及び本管である採水管6の圧力を所定の範囲内に保持するために必要なものであり、該バイパス弁11の開度調整により、被処理液2が分岐部8を通るときに、被処理液2に混入した気泡の大部分はレジューサ10及びバイパス弁11を経由してバイパス配管12に抜けてゆき、収容部1に戻される。このため、分岐部8よりも下流側の前処理装置9には気泡の混入が少ない被測定水として送給され、水質検知器4に対して測定の障害となる気泡が除去された被測定水として供給される。
【0013】
上記のようにこの実施の形態1では、採水部である前処理装置9の手前の分岐部8から上方向に立ち上げたバイパス配管12に、内径が減じられるレジューサ10とバイパス弁11を設け、高低差、配管の太さの相違及びバイパス弁11の開度調整を利用するという簡単な構造で、気泡抜きを行うようにしたので、水質検知器4に対して気泡の除去された被測定水が送給され、気泡による採水断を防ぎ、水質検知器4による水質検知も長時間安定して行える。また、エア抜きバルブを用いていないので下水処理場などの夾雑物の多い被測定水でも、バルブ類ヘの泥等の付着による配管の詰まりの発生が少なく、メンテナンスを長期間不要にできる。
【0014】
実施の形態2.
図2はこの発明の実施の形態2による水質測定装置の要部を概念的に示す構成図である。図において、採水管6の仕切弁7の上流側には、採水管6から分岐されて収容部1に戻される流量調節管14aと、この流量調節管14aに介装された流量調整弁14bからなる流量調節手段14が設けられている。その他の構成は上記実施の形態1と同様であり、各図を通じて同一符号は同一もしくは相当部分を示しているので説明を省略する。
この実施の形態2では、仕切弁7による開度調整に加えて、流量調節手段14の流量調整弁14bによって仕切弁7方向への流量調節を行うことにより、上記実施の形態1の効果に加えて、採水部である前処理装置9への細かな流量調整や圧力調整等を行うことができる。
【0015】
実施の形態3.
図3はこの発明の実施の形態3による水質測定装置の要部を概念的に示す構成図である。図において、前処理装置9から収容部1に至る戻り管13には透明部材13aが設けられ、前処理装置9から収容部1に流れる水の状態、特に気泡の混入の有無が確認できるように構成されている。なお、透明部材13aは、管自体が例えばプラスチックや硝子などの透明材料からなるもの、あるいは不透明な管の一部に透明材料からなる窓を設けたものなど、何れでも良い。その他の構成は上記実施の形態2と同様である。
この実施の形態3では、前処理装置9の出口付近の戻り管13の一部を透明部材13aとしたことにより、上記実施の形態2の効果に加えて、水質検知器4方向への気泡の混入の有無を容易に確認することが可能となり、気泡の除去の確認が容易となる。
【0016】
実施の形態4.
図4はこの発明の実施の形態4による水質測定装置の要部を概念的に示す構成図である。図において、バイパス配管12におけるバイパス弁11の出口付近には上記透明部材13aと同様の透明部材12aが設けられている。その他の構成は上記実施の形態3と同様であるので説明を省略する。
この実施の形態4では、バイパス配管12の一部を透明部材12aとしたことにより、上記実施の形態3の効果に加えて、バイパス配管12を流れる気泡の状況が容易に確認できるので、バイパス弁11の開度調整を気泡の状況を目で確認しながら行うことが可能となる。なお、上記透明部材12a、13aは何れか一方のみ設けるようにしても相応の効果が期待できる。
【0017】
実施の形態5.
図5はこの発明の実施の形態5による水質測定装置の要部を概念的に示す構成図である。図において、流量調節手段14には流量調整用の電動弁14cを設ける一方、採水管6の前処理装置9入口部に、採水管6を通流する被測定水の圧力に応じた信号を出力する圧力計16と、この圧力計16の信号に基づいて電動弁14cを制御する制御装置17が設けられている。その他の構成は上記実施の形態1と同様である。
上記のように構成された実施の形態5では、前処理装置9の手前に圧力計16を設置し、制御装置17にて圧力が一定になる様に、電動弁14cの開度制御を行い、流量が一定となるように調節することで、安定した採水が可能となる。
【0018】
実施の形態6.
図6はこの発明の実施の形態6による水質測定装置の要部を概念的に示す構成図である。図において、水中ポンプ5と仕切弁7の間の採水管6には、採水部電動弁18が介装され、さらにこの採水部電動弁18と仕切弁7の間の採水管6に洗浄水供給部19から洗浄水を導入するための洗浄用電動弁20を介装した洗浄水供給管21が接続されている。そして、圧力計16の出力に応じて警報を設定する警報設定器22と、この警報設定器22の出力に基づいて採水部電動弁18及び洗浄用電動弁20を制御するバルブ切替回路23が設けられている。なお、上記採水部電動弁18、洗浄用電動弁20、及びバルブ切替回路23で切替手段24を構成している。その他の構成は上記実施の形態2と同様であるので説明を省略する。
【0019】
上記のように構成された実施の形態6では、圧力計16によって検知された前処理装置9に送給される被測定水の圧力が警報設定器22で設定された所定値以下となった場合、採水管6の汚れが激しいと判断され、切替手段24によってバルブ切替回路23が採水部電動弁18を「閉」とし、洗浄用電動弁20を「開」とするように制御して、洗浄水供給管21から洗浄水を供給して水洗浄を行い、採水管6、バイパス配管12などの配管や、前処理装置9、水質検知器4などの汚れを除去するものである。
上記のように、実施の形態6によれば、上記実施の形態2の効果に加えて、長期の使用で配管などに汚れの沈着などが生じたときに、自動的に系内に洗浄水を供給することで汚れを除去することが可能となり、さらに安定した長期の水質計測が可能となる。
【0020】
なお、上記各実施の形態に示した発明は、任意に複数組み合わせて構成することもできる。その場合にはそれぞれの発明の相乗効果を期待することができる。また、弁の位置など、適宜変更しても差し支えない。さらに、下水処理場の反応槽に収容された被処理液を測定する場合を例に説明したが、被測定水としては特にこれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施の形態1による水質測定装置の要部を概念的に示す構成図。
【図2】この発明の実施の形態2による水質測定装置の要部を概念的に示す構成図。
【図3】この発明の実施の形態3による水質測定装置の要部を概念的に示す構成図。
【図4】この発明の実施の形態4による水質測定装置の要部を概念的に示す構成図。
【図5】この発明の実施の形態5による水質測定装置の要部を概念的に示す構成図。
【図6】この発明の実施の形態6による水質測定装置の要部を概念的に示す構成図。
【符号の説明】
【0022】
1 収容部(反応槽)、 2 被処理液(被測定水)、 3 気泡、 4 水質検知器、 5 水中ポンプ、 6 採水管、 7 仕切弁、 8 分岐部、 9 前処理装置、 10 レジューサ、 11 バイパス弁、 12 バイパス配管、 12a 透明部材、 13 戻り管、 13a 透明部材、 14 流量調節手段、 14a 流量調節管、 14b 流量調整弁、 14c 電動弁、 15 流量調整弁、 15a 電動弁、 16 圧力計、 17 制御装置、 18 採水部電動弁、 19 洗浄水供給部、 20 洗浄用電動弁、 21 洗浄水供給管、 22 警報設定器、 23 バルブ切替回路、 24 切替手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容部に収容された被測定水の水質を検知する水質検知器と、上記収容部及び上記水質検知器を連通する採水管とを備えた水質測定装置において、上記採水管に設けられた分岐部と、この分岐部で分岐された被測定水を上記採水管よりも高い位置に上昇させた後、上記収容部に戻すバイパス配管と、このバイパス配管における上記採水管よりも高い位置に流路断面積が上方向に小さくなるように介装されたレジューサと、上記バイパス配管に介装されたバイパス弁と、を備えてなることを特徴とする水質測定装置。
【請求項2】
上記水質検知器と上記分岐部との間の採水管に、上記被測定水を前処理して処理水を上記水質検知器に送り、前処理に伴う余剰水を上記収容部に送る戻り管を有する前処理装置が介装されてなることを特徴とする請求項1に記載の水質測定装置。
【請求項3】
上記戻り管の少なくとも一部に透明部材を用いてなることを特徴とする請求項2に記載の水質測定装置。
【請求項4】
上記採水管における上記収容部と上記分岐部との間に流量調節手段を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の水質測定装置。
【請求項5】
上記分岐部の下流側に設けられた採水管内の圧力を検知する圧力計を備え、この圧力計の検知結果に応じて上記流量調節手段を制御するようにしてなることを特徴とする請求項4に記載の水質測定装置。
【請求項6】
上記バイパス弁の開度制御により上記被測定水に含まれる気泡を上記バイパス配管に導くようにしたことを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載の水質測定装置。
【請求項7】
上記バイパス配管の少なくとも一部に透明部材を用いてなることを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れかに記載の水質測定装置。
【請求項8】
上記分岐部の下流側に設けられた採水管内の圧力を検知する圧力計と、洗浄水を供給し得る洗浄水供給部と、上記採水管に送給する液体を上記被測定水または上記洗浄水に切り替える切替手段とを備え、上記圧力計の検知結果が所定値を下まわったときに、上記切替手段により被測定水を洗浄水に切り替えて通流するようにしてなることを特徴とする請求項1ないし請求項7の何れかに記載の水質測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−170993(P2007−170993A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369229(P2005−369229)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】