説明

水質監視装置

【課題】原水への特定物質の混入を検出し、物質及び物質の濃度を特定する。
【解決手段】試料水が送水される測定槽11と、測定槽の内部に配置され、微生物を保持する微生物膜12を透過する酸素量を測定する酸素電極13とを有し、酸素電極によって測定された酸素量に基づいて、試料水への特定の物質の混入の有無を検知するバイオセンサ10と、試料水が送水される反応容器21a,21bと、試料水に特定の物質と反応する薬品を注入する薬品注入手段22とを有し、薬品を添加後の試料水の変化に応じて、試料水に含まれる物質及び物質の濃度を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原水への特定物質の混入を検出し、物質及び物質の濃度を特定して原水の水質を監視する水質監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原水への有害物質の混入を検出する方法として、有害物質が生物の活性に与える負荷を計測し、試料水の有害性を総合的に評価する方法がある。特に、酸素電極と微生物膜を組み合わせたバイオセンサを用いて、微生物膜の酸素消費量から微生物膜の呼吸活性をモニタリングする方法は、比較的簡単な装置で試料水への有害物質の混入を連続的に監視することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載される異常水質検出装置では、鉄酸化細菌の呼吸活性をモニタリングしている。例えば、鉄酸化細菌等の微生物は、特定の物質によって呼吸反応やその他の代謝反応の阻害を受けたり、細胞壁や細胞膜の破壊等が引き起こされることがある。このように微生物を利用して水質の異常を検出する場合、比較的広範囲な有害物質を検出することができる。
【0004】
特許文献1に記載されるようなバイオセンサを用いて有害物質の混入を検知した場合、原水に何らかの有害物質が含まれている可能性があることから、取水や送水の停止、汚染源の特定や除去、有害物質の漏洩防止等の対策をとる必要がある。一方、適切な対策をとるためには、有害物質の種類および濃度が特定できていることが望ましい。
【0005】
しかしながら、評価指標である呼吸活性の変化からは、有害物質の混入は検出できたとしても、有害物質の種別を識別することは困難である。したがって、バイオセンサのみでは、原水に含まれる化学物質を特定することは困難である。
【0006】
これに対し、有害物質を検出するバイオセンサと試料水に含まれる有害物質の検出を行なう擬似細胞膜センサとの二種類のセンサを併用する方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
擬似細胞膜センサでは、特定の化学物質毎に異なる反応が得られるため、有害物質の特定が可能になる。したがって、特許文献2に記載されるような方法では、バイオセンサによる連続的、かつ総括的な有害物質の監視と、擬似細胞膜センサによる化学物質の特定が可能となる。
【特許文献1】特開2003−251345号公報
【特許文献2】特開2000−167432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、バイオセンサと擬似細胞膜センサとの2種類の計測器機を利用する場合、2台のセンサが必要となるため、装置が大型化、複雑化するという問題がある。また、擬似細胞膜センサでは、有害物質の種類の特定まですることができるが、濃度の特定は困難である。
【0009】
上記課題に鑑み、本発明は、原水への特定物質の混入を検出するとともに、試料水に含まれる物質及び物質の濃度を特定することができる水質監視装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る水質異常監視は、試料水が送水される測定槽と、測定槽の内部に配置され、微生物を保持する微生物膜を透過する酸素量を測定する酸素電極とを有し、酸素電極によって測定された酸素量に基づいて、試料水への特定の物質の混入の有無を検知するバイオセンサと、試料水が送水される反応容器と、試料水に特定の物質と反応する薬品を注入する薬品注入手段とを有し、薬品を添加後の試料水の変化に応じて、試料水に含まれる物質及び物質の濃度を特定する物質特定装置とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原水への特定物質の混入を検出するとともに、試料水に含まれる物質及び物質の濃度を特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る水質監視装置は、水道水源(河川、湖沼、ダム、地下水等)から取水する原水や浄水場で処理される原水を試料水とし、この試料水に含まれる有害物質を検出し、試料水に含まれる物質及び物質の濃度特定して試料水の水質を監視する。試料水の有害物質の一例には、シアン化物や重金属(水銀等)や農薬類が挙げられる。
【0013】
〈第1の実施形態〉
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る水質監視装置1aは、試料水に含まれる有害物質を検出するバイオセンサ10と、試料水に含まれる物質及び物質の濃度を特定する物質特定装置20aとを備えている。また、図1に示す水質監視装置1aは、バイオセンサ10及び物質特定装置20aに試料水を供給する試料水供給手段30と、バイオセンサ10に基質溶液を供給する基質溶液供給手段40と、バイオセンサ10に洗浄液を供給する洗浄液供給手段50と、バイオセンサ10に校正水を供給する校正水供給手段60とを備えている。さらに、水質監視装置1aは、バイオセンサ10の出力を処理して電流値(測定電流I)を求める出力処理装置70と、出力処理装置70で求められた電流値に応じて物質特定装置20aを制御する制御装置80とを備えている。
【0014】
バイオセンサ10は、測定槽11と、微生物膜12と、酸素電極13とを有する。測定槽11は、試料水供給手段30からの試料水と基質溶液供給手段40からの基質溶液が供給される。尚、測定槽11への試料水及び基質溶液の供給は、連続的に供給することで水質の連続監視が可能となるが、間欠的に供給することで監視することも可能である。微生物膜12は、酸素電極13の先端に備えられ、微生物が固定化されている。この微生物の一例としては、鉄酸化細菌(Thiobacillus ferrooxidans)が挙げられる。また、酸素電極13は、測定槽11の内部に配置されている。出力処理装置70で測定する酸素電極13からの測定電流Iが予め定められる警報値Aを上回ったとき、試料水には有害物質が含まれていると検出される。
【0015】
測定槽11に送水される液体に応じて微生物膜12に付着している微生物の呼吸活性が変化するため、酸素電極13を介して出力処理装置70で測定される電流値も変化する。例えば、測定槽11に供給される試料水に有害物質が含まれないときは、微生物は基質溶液を栄養源とし、微生物の呼吸が活性化され、酸素は微生物膜12で消費され、酸素電極13に到達する酸素量が減少するため、電流値は下がる。一方、測定槽11に微生物の呼吸活性に影響を与える有害物質を含む試料水が送水されると、微生物膜12に固定される微生物の呼吸が減少し、酸素が微生物膜12で消費されなくなり、電流値が上がる。
【0016】
物質特定装置20aは、反応容器21aと、薬品注入手段22と、比色表23と、攪拌装置24とを有する。反応容器21aには、供給される所定量の液体(試料水)を貯水することが可能であり、所定量以上の液体が流入した場合には排水として反応容器21aから排出される。反応容器21aは、内部が見えるように容器の少なくとも一部が透明部材211で形成されている。図1に示す反応容器21aは、前面(紙面)の一部のみが透明部材211であるが、全体が透明部材211で形成されていてもよい。
【0017】
薬品注入手段22は、試料水に特定の物質と反応する薬品を注入する。この薬品注入手段22は、図1に示すように反応容器21aに流入した試料水に薬品を注入してもよいし、反応容器21aに流入する前の試料水に薬品を注入してもよい。特定の物質が含まれる試料水に薬品を注入したとき、試料水の色が変化する。この試料水の色の変化は、反応容器21aの透明部材211を通して把握することができる。
【0018】
比色表23は、薬品の添加によって変化する試料水の色の例のリストである。薬品添加後の試料水の色は、試料水に含まれる物質の種類と物質の濃度によって異なる。したがって、比色表23では、薬品添加後に変化する試料水の色の例と、この色の場合に試料水に含まれると推定される物質及び物質の濃度とを関連付けてリストしている。この比色表23は、この比色表23でリストされる色と透明部材211を介して観察される反応容器21a内の試料水の色とを比較することができるように反応容器21aの近傍に配置されている。
【0019】
攪拌装置24は、マグネットスターラーや攪拌扇等、反応容器21a内の試料水と薬品を攪拌する手段である。この攪拌装置24で攪拌されることで、試料水と薬品が十分に混合されて試料水に特定の物質が含まれているときには試料水の色を変化させることができる。
【0020】
このように、反応容器21a内で試料水と薬品を混合した後、透明部材211を介して把握することのできる試料水の色と比色表でリストされる色とを対比することで、試料水に含まれる物質及び物質の濃度を容易に特定することができる。
【0021】
ここで、試料水に含まれる物質によって反応する薬品が異なる。したがって、水質監視装置1aで複数の物質特定装置20aを備えていれば、含有物質の特定の精度を向上させることができる。すなわち、複数の物質特定装置20aの薬品注入手段22でそれぞれ異なる種類の薬品を注入し、各比色表23がそれぞれ薬品に応じたリストであれば、水質監視装置1aでは、より多くの物質及び物質の濃度を特定することが可能になる。
【0022】
なお、図1に示す例では、反応容器21aの透明部材211を介して試料水の色を観察することができるが、反応容器21aが透明部材211で形成されていない場合、反応容器21aから薬品を注入後の試料水が供給される透明の観察用の容器を備えていてもよい。このような透明用の容器を備えている場合、比色表23は観察用の容器の近傍に配置されている。
【0023】
試料水供給手段30は、バルブ31及びポンプ32を介して試料水を測定槽11に供給する。
【0024】
基質溶液供給手段40は、微生物膜12に保持される微生物の栄養源である基質溶液を備えており、微生物を活性化させるためにこの基質溶液をバルブ41及びポンプ42を介して測定槽11に供給する。例えば、微生物膜12に保持する微生物が鉄酸化細菌であるとき、鉄酸化細菌の栄養源である2価の鉄イオンを含む溶液を基質溶液とする。
【0025】
洗浄液供給手段50は、バイオセンサ10を洗浄する洗浄液を備えており、バイオセンサ10を長期間使用しても有害物質の検出の安定性を維持するためにこの洗浄液をバルブ51及びポンプ42を介して測定槽11に供給する。例えば、微生物膜12に保持する微生物が鉄酸化細菌であるとき、硫酸水溶液(pH2〜3)を洗浄液とすることができる。
【0026】
校正水供給手段60は、バイオセンサ10における検出の精度を校正する校正水を備えており、バルブ61及びポンプ32を介して校正水を測定槽11に供給する。
【0027】
図2を用いて、出力処理装置70によって検出されるバイオセンサ10での電流の変化の一例を説明する。図2に示す例では、出力処理装置70が測定時(検出時)に測定した測定電流Iが警報値Aを上回ったときに試料水に有害物質が含まれていると検出する。まず、測定中(t0〜t1)にはバルブ31及びバルブ41が開き、バイオセンサ10には試料水供給手段30から試料水が供給され、基質溶液供給手段40から基質溶液が供給されている。
【0028】
ここで、長時間測定が行なわれることでバイオセンサ10の有害物質の検出精度が劣ることがあるため、測定電流Iの安定性が損なわれた場合や定期的等の所定のタイミングでバイオセンサ10が洗浄される。洗浄時(t1〜t2)には、バルブ31及びバルブ51が開き、バイオセンサ10には、試料水供給手段30から試料水が供給され、洗浄液供給手段50から洗浄液が供給されてバイオセンサ10が洗浄される。洗浄時には、バイオセンサ10に基質溶液が供給されないため、微生物膜12に保持される微生物の呼吸活性が低下し、図2に示すように出力処理装置70で測定される測定電流Iは高くなる。
【0029】
洗浄後は、スパン校正のため、バルブ51及びバルブ61が開き、バイオセンサ10には、洗浄液供給手段50から洗浄液が供給され、校正水供給手段60から校正水が供給されてバイオセンサ10が校正される。スパン校正時(t2〜t3)にも、基質溶液は供給されないため、微生物膜12に保持される微生物の呼吸活性の低下が継続し、図2に示すように出力処理装置70で測定される測定電流Iは高くなる。
【0030】
スパン校正後は、ゼロ校正のため、バルブ41及びバルブ61が開き、バイオセンサ10には、基質溶液供給手段40から基質溶液が供給され、校正水供給手段60から校正水が供給されてバイオセンサ10が校正される。ゼロ校正時(t3〜t4)になると、バイオセンサ10に基質溶液が供給され、微生物膜12に保持される微生物の呼吸活性が増加し、図2に示すように出力処理装置70で測定される測定電流Iは低くなる。
【0031】
ゼロ校正後は、測定のため、バルブ31及びバルブ41が開き、バイオセンサ10には、試料水供給手段30から試料水が供給され、基質溶液供給手段40から基質溶液が供給される。測定時(t4〜)にも基質溶液が供給されているため、試料水が有害物質を含まない限り、微生物膜12に保持される微生物の呼吸が活性化され、出力処理装置70で測定される測定電流Iは、警報値Aよりも低い状態が継続する。その後、例えばt5の時点で有害物質が含有される試料水がバイオセンサ10に供給された場合、微生物の呼吸活性が低下して出力処理装置70で測定される測定電流Iは上昇し、警報値Aを上回る。
【0032】
制御装置80は、測定時に出力処理装置70で測定される測定電流Iが警報値を上回ったとき、バルブ33を開に制御するとともにポンプ34を起動するように制御し、試料水供給手段30が供給する試料水を物質特定装置20に送水する。また、制御装置80は、物質特定装置20aを起動する。具体的には、薬品注入手段22が試料水に薬品を注入するように制御する。
【0033】
すなわち、図3に示すフローチャートにあるように、制御装置80は、出力処理装置70から電流値(測定電流I)を入力すると(S01)、この測定電流Iが警報値A以上であるか否かを判定する(S02)。
【0034】
入力した測定電流Iが警報値A以上であるときには(S02でYES)、試料水に有害物質が含まれていると考えられるため、制御装置80は、物質特定装置20aを起動し、試料水に含まれる有害物質を特定するように、物質特定装置20a、バルブ33及びポンプ34を制御する(S03)。
【0035】
一方、入力した測定電流Iが警報値A以下であるときには(S02でNO)、試料水には有害物質は含まれていないと考えられるため、制御装置80は物質特定装置20aを起動せずに、ステップS01に戻り、同様の処理を繰り返す。
【0036】
上述した水質監視装置1aによれば、バイオセンサ10と物質特定装置20aとを有することで、試料水に有害物質を含んでいる場合、バイオセンサ10で有害物質の混入を検出する他、物質特定装置20aによって、有害物質及び有害物質の混入濃度を特定することができる。
【0037】
また、上述したように、連続的に動作させることのできるバイオセンサ10で有害物質を検出した場合にのみ制御装置80の制御によって連続的な監視に適していない物質特定装置20aでの特定を行なうようにすることで、物質特定装置20aを有効に使用することができる。
【0038】
なお、上述の説明では、水質監視装置1aは、バイオセンサ10による検出で試料水に有害物質を含んでいた場合に制御装置80が物質特定装置20aを起動していたが、ユーザの操作によって物質特定装置20aを起動するようにしても良い。
【0039】
〈第2の実施形態〉
図4に示すように、本発明の第2の実施形態に係る水質監視装置1bは、試料水に含まれる有害物質を検出するバイオセンサ10と、試料水に含まれる物質を特定する物質特定装置20bとを備えている。
【0040】
この水質監視装置1bは、図1を用いて上述した水質監視装置1aと比較して、物質特定装置20aに代えて、物質特定装置20bを備えている点で異なる。以下の説明において、図1を用いて上述した水質監視装置1aと同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0041】
物質特定装置20bは、反応容器21bと、薬品注入手段22と、攪拌装置24と、光源25と、受光器26とを有する。
【0042】
光源25は、反応容器21b内の試料水に光を照射する。また、受光器26は、光源25から照射され、反応容器21b内の試料水を透過した光を受光する。
【0043】
物質特定装置20bの反応容器21bは、光源25と対向する面と、受光器26を対向する面とが透明部材211である必要がある。すなわち、物質特定装置20aでは、比色表23と反応容器21a内の試料水の色を対比できるように、例えば、反応容器21aの前面の一部のみが透明部材211であっても良かった。一方、物質特定装置20bでは、光源25から照射され、反応容器21b内の試料水を透過した光を受光器26で受光するため、光源25と向き合う面と、受光器26と向き合う面とを透明部材211にする必要がある。
【0044】
なお、光源25又は受光器26と向き合う面の全面を透明部材としなくても、光源25から受光器26の光路を保つことができればよい。すなわち、光源25から受光器26までの直線を光路としたとき、光源25から照射された光がこの光路を通って受光器26で受光されるように、少なくとも反応容器21bの光路上の部分が透明部材211であることが必要である。
【0045】
吸光度測定手段27は、光の照射を制御する制御信号を光源25に出力し、受光器26から光の受光量を入力する。吸光度測定手段27は、例えば、所定の光量で光を照射した際に試料水を透過した光の受光量から求められる吸光度と、この吸光度の場合に試料水に含まれると考えられる物質及び物質の濃度を関連付けた有害物データを記憶しており、光源25から照射した光量と受光器26から入力した光の受光量に基づいて試料水の吸光度を求め、求めた急高度に応じて試料水に含まれる物質及び物質の濃度を特定する。
【0046】
この有害物データは、薬品を添加しない状態の試料水であるリファレンス水を透過する光の量と、薬品を添加して呈色反応が生じた状態の試料水を透過する光の量とを予め取得して求められる。例えば、物質特定装置20bでは、定期的にリファレンス水を通水して有害物データを更新してもよい。有害物データを更新した場合、反応容器21bの汚れによる誤差や、光源25や受光器26の経年劣化等による誤差にも対応することができる。なお、リファレンス水には純水や濁度を除去した原水を使用することができる。
【0047】
図5に示すフローチャートを用いて、水質監視装置1bにおける処理の流れを説明する。まず、水質監視装置1aの場合と同様に、制御装置80が出力処理装置70から電流値(測定電流I)入力し(S11)、この測定電流Iが警報値A以上であるとき(S12でYES)、制御装置80は物質特定装置20bを起動する(S13)。
【0048】
その後、吸光度測定手段27は、受光器26から入力する受光量から吸光度を求め(S14)、求めた吸光度に応じて有害物質を特定する(S15)。
【0049】
ステップS15において有害物質が特定できると(S16でYES)、その有害物質に応じた対策が実行される(S17)。また、有害物質が特定できないとき(S16でNO)、採水手段90が起動されてバルブ91が開となって試料水が採水される(S18)。
【0050】
上述した水質監視装置1bによれば、バイオセンサ10と物質特定装置20bとを有することで、試料水に有害物質を含んでいる場合、バイオセンサ10で有害物質の混入を検出する他、物質特定装置20bによって、有害物質及び有害物質の混入濃度を特定することができる。
【0051】
また、上述したように、バイオセンサ10で有害物質を検出した場合にのみ制御装置80の制御によって物質特定装置20bでの特定を行なうようにすることで、物質特定装置20bを有効に使用することができる。
【0052】
なお、上述の説明では、水質監視装置1bは、バイオセンサ10による検出で試料水に有害物質を含んでいた場合に制御装置80が物質特定装置20bを起動していたが、ユーザの操作によって物質特定装置20bを起動するようにしても良い。
【0053】
《具体例》
続いて、物質特定装置20bによって、JIS−K−0102で規定される「4−ピリジンカルボン酸−ピラゾロン吸光光度法」を使用し、シアン化物を有害物質として特定する場合の例について説明する。
【0054】
この場合、薬品注入手段22は、第1試薬「クロラミンT溶液(p−トルエンスルホンクロロアミドナトリウム三水和物)」と、第2試薬「4−ピリジンカルボン酸−ピラゾロン溶液」の2種類の薬品を使用する。薬品注入手段22は、粉末の状態で各試薬を試料水に注入してもよいし、水に希釈した液体の状態で試料水に注入してもよい。
【0055】
具体的には、薬品注入手段22は、20mlの試料水二対して、0.5mlの第1試薬を注入し、約5分間放置する。その後、薬品注入手段22は、この試料水に10mlの第2試薬を注入する。第2試薬が注入されると、攪拌装置24は試料水を攪拌し、約30分放置する。その後、吸光度測定手段27によって波長638nm付近の吸光度を測定してシアン及びシアンの濃度を特定する。
【0056】
ここで、第2試薬は、N,N−ジメチルホルムアミド20mlに0.3gの3−メチル1−フェニル−5−ピラゾロンを溶解し、別に約20mlの水酸化ナトリウム溶液(40g/l)に4−ピリジンカルボン酸カルボン酸を溶解して塩酸を添加してpHを約7として、両溶液の混合液に水を加えて100mlとすることで調整される。
【0057】
薬品を注入後の試料水がpH6〜8であるときに呈色反応が最適に現れるため、薬品を注入後の試料水のpHがこの範囲(pH6〜8)を外れている場合には、pH調整のため、リン酸塩緩衝液を注入することが望ましい。
【0058】
ここでは、「4−ピリジンカルボン酸−ピラゾロン吸光光度法」を用いて説明したが、「ピリジン−ピラゾロン吸光光度法」を用いても良い。
【0059】
なお、物質特定装置20aの場合、試料水に第2試薬を注入するまでの処理は同一であるが、第2試薬を注入して約30分放置後、試料水の色を比色表23でリストされる色とを利用して、シアン及びシアンの濃度を特定する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】第1の実施形態に係る水質監視装置の構成を説明する図である。
【図2】図1の水質監視装置のバイオセンサにおける測定について説明する図である。
【図3】図1の水質監視装置における処理の流れを説明するフローチャートである。
【図4】第2の実施形態に係る水質監視装置の構成を説明する図である。
【図5】図4の水質監視装置における処理の流れを説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0061】
1a,1b…水質監視装置
10…バイオセンサ
11…測定槽
12…微生物膜
13…酸素電極
20a,20b…物質特定装置
21a,21b…反応容器
211…透明部材
22…薬品注入手段
23…比色表
24…攪拌装置
25…光源
26…受光器
27…吸光度測定手段
30…試料水供給手段
40…基質溶液供給手段
50…洗浄液供給手段
60…校正水供給手段
70…出力処理装置
80…制御装置
90…採水手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料水が送水される測定槽と、前記測定槽の内部に配置され、微生物を保持する微生物膜を透過する酸素量を測定する酸素電極とを有し、前記酸素電極によって測定された酸素量に基づいて、試料水への特定の物質の混入の有無を検知するバイオセンサと、
試料水が送水される反応容器と、試料水に特定の物質と反応する薬品を注入する薬品注入手段とを有し、薬品を添加後の試料水の変化に応じて、試料水に含まれる物質及び物質の濃度を特定する物質特定装置と、
を備えることを特徴とする水質監視装置。
【請求項2】
前記バイオセンサによって特定の物質の混入されていることが検出された場合に、前記反応容器に試料水を送水するとともに、前記物質特定装置を起動する制御装置を備えることを特徴とする請求項1に記載の水質監視装置。
【請求項3】
前記反応容器は、少なくとも一部が透明素材で形成され、
前記物質特定装置は、
試料水と薬品の呈色反応で生じる色と、各呈色反応が生じた場合に試料水に含まれる物質の名称及び物質の濃度とが関連付けられるリストである比色表を有し、当該比色表を前記反応容器の透明部材の近傍に設置することを特徴とする請求項1又は2に記載の水質監視装置。
【請求項4】
前記物質特定装置は、
薬品と反応後の試料水の吸光度を測定し、測定された吸光度に応じて試料水に含まれる物質及び物質の濃度を特定する吸光度測定手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の水質監視装置。
【請求項5】
前記反応容器は、少なくとも対向する二ヶ所が透明部材で形成され、
前記物質特定装置は、
前記透明部材を通る光路に沿って光を照射する光源と、
前記光源から照射され、前記反応容器内の試料水を透過した光を受光する受光器と、
前記光源から照射した光の強度と前記受光器で受光した光の強度とから前記反応容器内の試料水の吸光度を測定し、測定された吸光度に応じて試料水に含まれる物質および物質の濃度を特定する吸光度測定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の水質監視装置。
【請求項6】
前記微生物膜で保持する微生物として、鉄酸化細菌を利用することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の水質監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−133783(P2010−133783A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308630(P2008−308630)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】