説明

水質監視装置

【課題】魚類を利用した水質監視装置の監視水槽の清掃頻度を少なくする。
【解決手段】監視水槽1の入水槽3と遊泳槽4とを仕切る仕切壁7に通水孔7aを設けるとともに、遊泳槽4の底部と入水槽3の上部とを沈殿槽9を介してリターン配管10でつなぎ、このリターン配管10にエアを吹き込んで遊泳槽4底部から入水槽3上部へ検水を送るエアリフトポンプ11を設けて、入水槽3と遊泳槽4の水位差により入水槽3内の検水が仕切壁7の通水孔7aを通って遊泳槽4に流れ込み、遊泳槽4内に水流が生じるようにした。この構成では、遊泳槽4内に水流を生じさせる手段として、検水中の濁質成分の影響によって故障するおそれのないエアリフトポンプ11を用いたので、監視水槽1の清掃頻度を少なくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視水槽内で遊泳する魚類の行動を観察することによって、その監視水槽に導入された検水の水質を監視する水質監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
河川等から取水した原水を浄化して上水道等に供給する浄化施設においては、浄化水の安全を確保するために、毒物等の混入による原水の水質異常を早期検知できるようにした水質監視装置が設置されていることが多い。このような水質監視装置の一つに、取水した原水の一部を検水として監視水槽に導入し、監視水槽内で遊泳する魚類の行動を観察することによって検水の水質を監視するタイプのものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記の魚類を利用したタイプの水質監視装置の一例を図3および図4に示す。この水質監視装置は、監視水槽51内で遊泳させる魚類として水流に向かって泳ぐ習性のあるメダカを用い、そのメダカの行動を監視水槽51上方に設置した監視カメラ52で観察している。その監視水槽51は、検水が導入される入水槽53と、水中ポンプ54が設置され、入水槽53から排出される検水を受けるポンプ槽55と、メダカを遊泳させる遊泳槽56とからなり、ポンプ槽55と遊泳槽56とを仕切る仕切壁57に水中ポンプ54の吐出口57aと多数の通水孔57bを設けて、遊泳槽56内にメダカの行動の観察に適した水流を生じさせている。また、遊泳槽56の底面には排水口56aが設けられ、この排水口56aに接続された排水配管58の立上部の途中からオーバーフローした検水が排出されるようになっている。
【0004】
ところが、この水質監視装置では、遊泳槽56から仕切壁57の通水孔57bを通ってポンプ槽55に戻ってくる検水に含まれる魚糞や残留餌等の濁質成分が水中ポンプ54内に蓄積されることにより、水中ポンプ54が故障して使用できなくなるトラブルが発生しやすい。また、検水中の濁質成分が排水配管58内に蓄積されやすいので、排水配管58が詰まってしまうおそれもある。このため、ポンプ槽55や遊泳槽56を頻繁に清掃する必要があり、装置の維持管理にかかるコストが高いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−134119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、魚類を利用した水質監視装置の監視水槽の清掃頻度を少なくすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、監視水槽内で遊泳する魚類の行動を観察することによって前記監視水槽に導入された検水の水質を監視する水質監視装置において、前記監視水槽を仕切壁により前記検水が導入される入水槽と前記魚類を遊泳させる遊泳槽とに仕切り、前記仕切壁に前記入水槽と遊泳槽とを連通させる通水孔を設けるとともに、前記遊泳槽の底部と前記入水槽の上部とをリターン配管でつなぎ、このリターン配管にエアを吹き込んで遊泳槽底部から入水槽上部へ検水を送るエアリフトポンプを設けて、前記入水槽と遊泳槽の水位差により入水槽内の検水が前記仕切壁の通水孔を通って遊泳槽に流れ込むようにした。
【0008】
すなわち、監視水槽を仕切壁で入水槽と遊泳槽とに仕切って、遊泳槽底部から入水槽上部へエアリフトポンプで検水を送り、入水槽と遊泳槽の水位差により入水槽から遊泳槽へ検水を噴き出させて、遊泳槽内に魚類観察に適した水流が生じるようにしたのである。この構成では、遊泳槽内に水流を生じさせる手段として、検水中の濁質成分の影響によって故障するおそれのないエアリフトポンプを用いているので、監視水槽内に水中ポンプを設置した場合に比べて監視水槽の清掃頻度を少なくすることができる。
【0009】
また、上記の構成においては、前記遊泳槽の底部と前記リターン配管の吸込側の端部との間に、前記検水中の濁質成分を沈殿させる沈殿槽を設けることが望ましい。このようにすれば、検水中の濁質成分を効率よく除去できるようになってリターン配管の詰まりが生じにくくなるので、監視水槽の清掃の頻度をさらに減少させることができる。
【0010】
さらに、前記遊泳槽と沈殿槽との間で検水の流れを絞る構成とすれば、沈殿槽で検水の流れが遅くなって濁質成分が沈殿しやすくなるので、より効率よく濁質成分を除去できるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水質監視装置は、上述したように、検水中の濁質成分の影響によって故障するおそれのないエアリフトポンプを用いて遊泳槽内に水流を生じさせるものであるから、水中ポンプを用いた場合のように頻繁に監視水槽を清掃する必要がなく、維持管理にかかるコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態の水質監視装置の外観斜視図
【図2】図1の縦断面図
【図3】従来の水質監視装置の外観斜視図
【図4】図2の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1および図2に基づき、本発明の実施形態を説明する。この水質監視装置は、図1に示すように、前述の従来のものと同じく、監視水槽1の上方に設置した監視カメラ2で監視水槽1内の魚類(ここではメダカ)の行動を観察することによって、監視水槽1内の検水の水質を監視するものである。なお、実際の水質の判定は、監視カメラ2に電気的に接続された画像処理装置(図示省略)において、監視カメラ2が撮像したメダカの画像を処理・解析することにより行われている。また、監視水槽1内で遊泳させる魚類はメダカに限らないが、水流に向かって泳ぐ習性のあるものが好ましい。
【0014】
図1および図2に示すように、前記監視水槽1は、検水が連続的に導入される入水槽3と、メダカを遊泳させる遊泳槽4と、遊泳槽4からオーバーフローした検水を受けて排水配管5へ排出する排水槽6とからなる。その入水槽3、遊泳槽4、排水槽6は互いに仕切壁7、8で仕切られており、遊泳槽4を入水槽3および排水槽6と仕切る仕切壁7には、一側部の底側に入水槽3と遊泳槽4とを連通させる多数の通水孔7aが設けられ、他側部の高さ方向中央部に遊泳槽4から検水をオーバーフローさせる3本のスリット7bが設けられている。この仕切壁7の通水孔7aおよびスリット7bは、メダカを通過させない寸法に形成されている。
【0015】
前記遊泳槽4と入水槽3とは、遊泳槽4の底側に設けられた沈殿槽9を介してリターン配管10でつながれている。その沈殿槽9は遊泳槽4の底面中央部に設けられた流出口4aで遊泳槽4と連通しており、リターン配管10は沈殿槽9の側壁から入水槽3の上部まで略L字状に配されている。また、リターン配管10の途中には、その立上部の下端から上向きにエアを吹き込んでリターン配管10内の検水を入水槽3上部へ送り込むエアリフトポンプ11が設けられている。これにより、遊泳槽4の底部から入水槽3の上部へ検水が送られ、入水槽3の水位が遊泳槽4の水位よりも高く保たれる。そして、この入水槽3と遊泳槽4の水位差により入水槽3内の検水が仕切壁7の通水孔7aを通って遊泳槽4に流れ込み、遊泳槽4内にその周壁に沿ってメダカの行動の観察に適した水流が生じるようになっている。なお、遊泳槽4の流出口4aは、網状体を設けてメダカが通過できないようにしている。
【0016】
前記沈殿槽9は、遊泳槽4の流出口4aから流れ込んだ検水がリターン配管10の吸込側の端部に達するまでに、検水に含まれる濁質成分を沈殿させるものである。ここで、遊泳槽4の流出口4a(遊泳槽4と沈殿槽9との間)では検水の流れが絞られるので、遊泳槽4の流出口4a近傍に集まった濁質成分が大きな流速で流出口4aに吸い込まれる一方、沈殿槽9では検水の流速が遅くなり濁質成分が沈殿しやすくなっている。
【0017】
また、沈殿槽9の底面には沈殿物排出管12が接続されており、この排出管12の途中に通常は閉状態とされるバルブ13が設けられている。従って、このバルブ13を開くだけで、沈殿槽9底部に沈殿した濁質成分を少量の検水とともに沈殿槽9から排出することができる。
【0018】
この水質監視装置は、上記の構成であり、遊泳槽4内に水流を生じさせる手段として用いたエアリフトポンプ11が、検水と直接接触せず、検水中の濁質成分の影響によって故障するおそれのないものであるから、水中ポンプを用いた場合のように頻繁に監視水槽1を清掃する必要はない。
【0019】
また、遊泳槽4の底部とリターン配管10の吸込側の端部との間に沈殿槽9を設けるとともに、遊泳槽4と沈殿槽9との間で検水の流れを絞る構成として、検水に含まれる濁質成分を沈殿槽9で沈殿しやすくし、沈殿した濁質成分を沈殿槽9底側から排出するようにしたので、検水中の濁質成分を効率よく除去してリターン配管10を詰まりにくくすることができ、この点でも監視水槽1の清掃の頻度を従来よりも少なくできる。
【符号の説明】
【0020】
1 監視水槽
2 監視カメラ
3 入水槽
4 遊泳槽
4a 流出口
5 排水配管
6 排水槽
7、8 仕切壁
7a 通水孔
7b スリット
9 沈殿槽
10 リターン配管
11 エアリフトポンプ
12 沈殿物排出管
13 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視水槽内で遊泳する魚類の行動を観察することによって前記監視水槽に導入された検水の水質を監視する水質監視装置において、前記監視水槽を仕切壁により前記検水が導入される入水槽と前記魚類を遊泳させる遊泳槽とに仕切り、前記仕切壁に前記入水槽と遊泳槽とを連通させる通水孔を設けるとともに、前記遊泳槽の底部と前記入水槽の上部とをリターン配管でつなぎ、このリターン配管にエアを吹き込んで遊泳槽底部から入水槽上部へ検水を送るエアリフトポンプを設けて、前記入水槽と遊泳槽の水位差により入水槽内の検水が前記仕切壁の通水孔を通って遊泳槽に流れ込むようにしたことを特徴とする水質監視装置。
【請求項2】
前記遊泳槽の底部と前記リターン配管の吸込側の端部との間に、前記検水中の濁質成分を沈殿させる沈殿槽を設けたことを特徴とする請求項1に記載の水質監視装置。
【請求項3】
前記遊泳槽と沈殿槽との間で検水の流れを絞る構成としたことを特徴とする請求項2に記載の水質監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−191101(P2011−191101A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55551(P2010−55551)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)