説明

水質管理システム

【課題】水質測定センサが割り当てられた複数の浄化槽の水質を、浄化槽の型式や水質測定センサの種類によらず、一元的に管理するのに有効な水質管理システムを提供する。
【解決手段】水質管理装置100は、複数の浄化槽110と、それぞれの浄化処理部112に割り当てられた水質測定センサ120と、浄化処理部112の水質を管理する単一の水質管理センター150と、測定されたセンサ測定値を水質管理センター150へと伝送する通信端末130及び通信回線140を備え、また水質管理センター150は、複数の浄化槽110のそれぞれを識別可能な浄化槽識別情報を記憶するデータテーブルと、複数の浄化槽110のそれぞれに割り当てられた水質測定センサ120の型式を示すセンサ型式情報とを組み合せた情報を記憶するデータテーブルと、演算処理部によって演算された推定水質値を、浄化槽識別情報に対応させて出力する出力処理部とを含む構成とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の浄化槽のそれぞれの浄化処理部に割り当てられた水質測定センサによって、複数の浄化槽の水質を管理する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般家庭等から排出される生活排水や、産業廃水等の汚水などの被処理水を処理する浄化槽には、浄化処理部の水質を管理するべく水質測定センサが設置されているものがある。例えば下記特許文献1には、浄化槽において、消毒処理後の水に含まれる残留塩素を水質センサによって検出する技術が開示されている。ところで、この種の浄化槽の水質管理に際しては、水質測定センサが設置された複数の浄化槽の水質を集中管理可能な水質管理システムが要請される。その場合、複数の浄化槽の型式が異なり、また浄化槽に組み合わせられる水質測定センサの種類が各浄化槽で異なるような場合であっても、浄化槽の型式や水質測定センサの種類によらず、複数の浄化槽の水質を一元的に管理することが必要とされる。
【特許文献1】特開平4−235798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、水質測定センサが割り当てられた複数の浄化槽の水質を、浄化槽の型式や水質測定センサの種類によらず、一元的に管理するのに有効な水質管理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために、本発明が構成される。本発明は、典型的には一般家庭等から排出される生活排水や、産業廃水等の汚水などの被処理水を処理する複数の浄化槽の水質を管理する水質管理システムに適用することが可能とされる。
【0005】
本発明にかかる水質管理システムは、被処理水の浄化処理を行なう浄化処理部を収容する複数の浄化槽と、複数の浄化槽のそれぞれの浄化処理部に組み合わせられる水質測定センサと、水質測定センサによって測定された浄化処理部の水質を管理する単一の水質管理装置と、水質測定センサによって測定されたセンサ測定値を水質管理装置へと伝送する伝送装置を少なくとも備える。ここで、各浄化槽の浄化処理部に割り当てられた水質測定センサに関し、当該水質測定センサは、浄化処理部に設置された1または複数の水質測定センサの中から適宜に選択して浄化処理部に割り当てられることが可能とされる。ここでいう「浄化処理部」は、各浄化槽の被処理水が槽外へ流出するまでになされる1または複数の水処理領域からなる水処理領域群として規定される。伝送装置として、典型的には通信端末と、この通信端末のデータ通信に用いるインターネット、携帯電話網、公衆電話回線、無線などの通信回線のうちの少なくとも1つの通信回線とを組み合わせた構成を用いることができる。
【0006】
特に、この水質管理装置は、第1のデータテーブル、第2のデータテーブル、第3のデータテーブル及び第4のデータテーブルを含むデータベースと、演算処理部及び出力処理部とを備える構成とされる。データベースに含まれる各データテーブルは、複数のデータを組み合わせて配置した「テーブル」或いは「データ群」とも称呼される。
【0007】
第1のデータテーブルは、複数の浄化槽のそれぞれを識別可能な浄化槽識別情報を少なくとも記憶するデータテーブルとして構成される。ここでいう「浄化槽識別情報」として、典型的には複数の浄化槽の中での特定が可能な、浄化槽の個体情報(固定番号等)が用いられる。第2のデータテーブルは、複数の浄化槽のそれぞれの型式を示す浄化槽型式情報と、複数の浄化槽のそれぞれに割り当てられた水質測定センサの型式を示すセンサ型式情報とを組み合せた組み合わせ情報を少なくとも記憶するデータテーブルとして構成される。ここでいう「浄化槽型式情報」として、典型的には浄化槽における処理方式或いは処理方式の組み合わせを示す情報や、処理性能を示す情報や、浄化槽の大きさや人槽を示す情報等が用いられる。また、ここでいう「センサ型式情報」として、典型的には水質測定センサの種類及び対象水質等の特定が可能な、水質測定センサの個体情報(固定番号等)が用いられる。第3のデータテーブルは、浄化槽型式情報とセンサ型式情報との組み合わせ情報を、浄化槽識別情報に対応させて少なくとも記憶するデータテーブルとして構成される。第4のデータテーブルは、水質測定センサに関するセンサ測定値を水質値に換算可能な変換式情報を、浄化槽型式情報とセンサ型式情報との組み合わせ情報或いは浄化槽識別情報に対応させて少なくとも記憶するデータテーブルとして構成される。すなわち、浄化槽型式情報とセンサ型式情報との組み合わせ情報に応じて、センサ測定値を水質値に換算するのに使用する変換式情報が特定されることとなる。なお、複数の浄化槽に割り当てられた水質測定センサの型式が全て同一のときには、センサ型式情報を省略し、組み合わせ情報を浄化槽型式情報に置き換えて、浄化槽型式情報に応じて変換式情報が特定されるようにすることもできる。また、複数の浄化槽の型式が全て同一のときには、浄化槽型式情報を省略し、組み合わせ情報をセンサ型式情報に置き換えて、センサ型式情報のみから変換式情報が特定されるようにすることもできる。
ここでいう「水質測定センサに関するセンサ測定値」に関しては、当該センサ測定値として、水質測定センサから入力される電流値或いは電圧値を用いてもよいし、或いは水質測定センサから入力される電流値或いは電圧値から導出される値を用いてもよい。また、ここでいう「水質値」には、BOD(生物化学的酸素要求量)、濁度、透視度、SS(浮遊懸濁物質量)、pH、DO(溶存酸素)、紫外線(UV)吸光度等のうちの1または複数が包含される。
【0008】
演算処理部は、水質測定センサによって測定されたセンサ測定値を、データベースの第4のデータテーブルに記憶された変換式情報に適用することにより推定水質値を演算する機能を有する。出力処理部は、演算処理部によって演算された推定水質値を、浄化槽識別情報に対応させて出力する機能を有する。
【0009】
本発明にかかる水質管理システムの上記構成によれば、水質測定センサが割り当てられた複数の浄化槽の水質を、浄化槽の浄化槽型式や水質測定センサのセンサ型式によらず、単一の水質管理装置において一元的に管理することが可能となる。また、水質測定センサ自体に変換式情報を記憶させる必要がなく水質測定センサのコスト低減を図ることができ、また複数の浄化槽の水質に関する情報を単一の水質管理装置において一括して処理する構成であるため、水質管理システムの構築に必要なコストを抑えることが可能となる。
【0010】
また、本発明にかかる更なる形態の水質管理システムでは、前記の水質管理装置は、更新処理部を更に備える構成であるのが好ましい。この更新処理部は、水質測定センサが割り当てられた浄化処理部において採水された水の水質分析結果に基づいて、データベースの第4のデータテーブルに既に記憶されている変換式情報を新たな変換式情報に更新する機能を有する。そして、演算処理部は、水質測定センサによって測定されたセンサ測定値を、第4のデータテーブルにおいて更新処理部によって新たに更新された変換式情報に適用することにより推定水質値を演算する。このような構成によれば、常に新しい変換式情報を用いることによって、水質測定センサのセンサ測定値から導出される水質値の信頼性向上を図ることが可能となる。
【0011】
また、本発明にかかる更なる形態の水質管理システムは、記憶処理部を更に備える構成であるのが好ましい。この記憶処理部は、浄化処理部における採水日時を示す情報と、当該採水日時に浄化処理部において採水されたことを示す情報とを対応させて記憶する機能を有する。ここでいう第5のデータテーブルは、前述の第1〜第4のデータテーブルを含むデータベースとは別個に構成されるデータベースに含まれてもよいし、或いは第1〜第4のデータテーブルを含むデータベースに含まれて、これら第1〜第4のデータテーブルと別個に設けられてもよいし、或いは第1〜第4のデータテーブルのいずれかに含まれるように構成されてもよい。そして、この記憶処理部に記憶された情報が伝送装置を介して水質管理装置に伝送され、当該採水日時に前記浄化処理部において採水された水の水質分析結果とともに、データベースの第5のデータテーブルにて記憶される。このような構成によれば、所定の採水日時に採水された水の水質分析結果と、当該採水日時に水質測定センサによって測定されたセンサ測定値を適正に対応させることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、水質測定センサが割り当てられた複数の浄化槽の水質を、浄化槽の型式や水質測定センサの種類によらず、一元的に管理するのに有効な水質管理システムを構築することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明における一実施の形態の水質管理システムの構成等を図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態は、一般家庭等から排出される排水(被処理水)の浄化処理を行う複数の浄化槽からなる水質管理システムについて説明するものである。
【0014】
本発明に係る「水質管理システム」の一実施の形態である水質管理システム100の概要が図1に示される。図1に示すように、本実施の形態の水質管理システム100は、複数(図1中では3つ)の浄化槽110、水質測定センサ120、通信端末130、通信回線140、水質管理センター150を少なくとも含む構成とされる。更に後述する水質検査部170を含めて水質管理システム100とすることもできる。
【0015】
各浄化槽110は、槽状に成形された浄化槽本体111を有し、この浄化槽本体111に浄化処理部112が収容されている。この浄化処理部112は、各浄化槽の被処理水が槽外へ流出するまでになされる1または複数の水処理領域からなる水処理領域群として規定される。この浄化処理部112の典型的な構成に関し、当該浄化処理部112は、被処理水中に含まれる夾雑物を流入バッフル(図示省略)などの固液分離手段を用いて被処理水から分離する処理を行う夾雑物除去槽、被処理水から泡沫を分離する処理を行う泡沫分離槽、被処理水中の有機汚濁物質を嫌気処理(還元)する嫌気濾床槽、被処理水中の有機汚濁物質を好気処理(酸化)する接触ばっ気槽、被処理水中の浮遊物質をろ過処理するろ過槽、被処理水中の浮遊物質を沈殿・除去する沈澱槽、被処理水を一定時間滞留させるとともに、各処理槽での滞留時間を調整する流量調整機能を備えた流量調整部、消毒装置から供給された消毒剤によって被処理水を消毒処理する消毒処理部等のうちの1または複数を含む構成とされるのが好ましい。この浄化処理部112において浄化処理された後の水は、浄化槽本体111外へと流出する。この場合、各浄化槽110は、浄化槽本体111外へと流出した水をそのまま放流する浄化槽として構成されてもよいし、或いは浄化槽本体111外へと流出した水をトイレや散水用の水として再利用する水再利用装置として構成されてもよい。ここでいう複数の浄化槽110が、本発明における「複数の浄化槽」に相当し、また各浄化槽110に収容される浄化処理部112が、本発明における「被処理水の浄化処理を行なう浄化処理部」に相当する。
【0016】
水質測定センサ120は、各浄化槽110に割り当てられた水質測定センサとして構成される。この水質測定センサ120は、典型的にはBOD(生物化学的酸素要求量)、濁度、透視度、SS(浮遊懸濁物質量)、pH、DO(溶存酸素)、紫外線(UV)吸光度等のうちの1または複数の測定を行なう水質測定センサとして構成される。なお、本実施の形態では、各槽において処理される排水および当該排水を処理する処理過程において流れる水を「被処理水」ないし「水」と記載する。ここでいう水質測定センサ120が、本発明における「水質測定センサ」に相当する。
【0017】
通信端末130は、水質測定センサ120に接続され、水質測定センサ120によって連続的ないし定期的に測定された水質情報を、通信回線140を経由して水質管理センター150のサーバー160に伝送する通信端末として構成される。通信回線140は、通信端末130のデータ通信に用いるインターネット、携帯電話網、公衆電話回線、無線などの通信回線のうちの少なくとも1つによって構成される。水質測定センサ120によって連続的ないし一定期間毎に定期的に測定された水質情報は、通信端末130及び通信回線140を介して水質管理センター150のサーバー160に伝送され、このサーバー160にて記憶されるように構成されている。ここでいう通信端末130及び通信回線140によって、本発明における「伝送装置」が構成される。
【0018】
一方、水質検査部170においては、浄化槽110の浄化処理部112から法定検査等の時期に採水された水の水質分析が分析者によって行なわれる。この水質検査部170において分析された水の水質分析結果は、水質管理センター150のサーバー160に記憶される。
【0019】
ここで水質管理センター150に設けられたサーバー160の具体的な構成に関しては、図2が参照される。図2には、図1中のサーバー160のシステム構成が示される。この図2に示すように、本実施の形態のサーバー160は、データベース160a、演算処理部166、出力処理部167及び更新処理部168を少なくとも有する。ここでいう水質管理センター150ないしサーバー160は、複数の浄化槽110の水質測定センサ120によって測定された浄化処理部112の水質を管理する単一の水質管理装置であり、本発明における「水質管理装置」に相当する。また水質管理センター150のデータベース160aには、物件テーブル161、浄化槽・センサ組み合わせテーブル162、変換式テーブル163、BOD入力テーブル164及びBOD出力テーブル165が少なくとも含まれる。このデータベース160aに含まれる各データテーブルは、複数のデータを組み合わせて配置した「テーブル」或いは「データ群」とも称呼される。このサーバー160(水質管理センター150)は、複数の浄化槽110から離間した遠隔地において水質の監視を行なう「遠隔監視装置」とも称呼される。
【0020】
物件テーブル161は、複数の浄化槽のそれぞれを識別可能な浄化槽識別情報A、浄化槽型式情報B及びセンサ型式情報Cを浄化槽識別情報Aに対応させて記憶するデータテーブルとして構成される。ここで、浄化槽識別情報Aとして、典型的には複数の浄化槽の中での特定が可能な、浄化槽の個体情報(固定番号等)が用いられる。ここでいう物件テーブル161が、本発明における「第1のデータテーブル」及び「第3のデータテーブル」を構成している。
【0021】
浄化槽・センサ組み合わせテーブル162は、複数の浄化槽のそれぞれの型式を示す浄化槽型式情報B、及び複数の浄化槽のそれぞれに割り当てられた水質測定センサ120の型式を示すセンサ型式情報Cを、これら浄化槽型式情報B及びセンサ型式情報Cの組み合わせによって規定される組み合わせ情報Dとともに記憶するデータテーブルとして構成される。ここで、浄化槽型式情報Bとして、典型的には浄化槽の製品名に関する情報や、浄化槽の処理方式或いは処理方式の組み合わせを示す情報や、浄化槽の処理性能を示す情報や、浄化槽の大きさや人槽を示す情報等が用いられる。浄化槽型式情報Bの処理方式として、例えば被処理水中の浮遊物をろ過処理するろ過槽の有無や、滞留時間を調整する流量調整機能を備えた流量調整部の有無などを用いることができる。また、浄化槽型式情報Bの処理性能として、例えばBOD除去タイプや、BODおよび窒素除去タイプなどを用いることができる。また、センサ型式情報Cとして、典型的には水質測定センサの種類及び対象水質等の特定が可能な、水質測定センサの個体情報(固定番号等)が用いられる。
なお、複数の浄化槽に割り当てられた水質測定センサ120の型式が全て同一のときには、センサ型式情報Cを省略し、浄化槽型式情報Bのみから組み合わせ情報Dを規定することもできる。また、複数の浄化槽の型式が全て同一のときには、浄化槽型式情報Bを省略し、センサ型式情報Cのみから組み合わせ情報Dを規定することもできる。ここでいう浄化槽・センサ組み合わせテーブル162が、本発明における「第2のデータテーブル」を構成している。
【0022】
変換式テーブル163は、水質測定センサ120に関するセンサ測定値を水質値に換算可能な変換式情報Eを、組み合わせ情報Dに対応させて記憶するデータテーブルとして構成される。すなわち、浄化槽型式情報Bとセンサ型式情報Cとの組み合わせ情報Dに応じて、センサ測定値を水質値に換算するのに使用する変換式情報が特定されることとなる。また、この変換式テーブル163では、水質測定センサ120に関するセンサ測定値を水質値に換算可能な変換式情報Eを、組み合わせ情報Dにかえて浄化槽識別情報Aに対応させて記憶することもできる。ここでいう変換式テーブル163が、本発明における「第4のデータテーブル」に相当する。
【0023】
BOD入力テーブル164は、水質測定センサ120に関するセンサ測定値と、そのときの水を実際に採水して分析したときの水質分析値を記憶するデータベースとして構成される。ここでいうBOD入力テーブル164が、本発明における「第5のデータテーブル」に相当する。なお、上記テーブル161〜164は、それらのうちの全部または一部のテーブルが統合された構成であってもよい。
【0024】
演算処理部166は、水質測定センサ120によって実際に測定されたセンサ測定値を、変換式テーブル163に記憶された変換式情報Eに適用することにより推定BOD(推定水質値)を演算する機能を有する。この演算処理部166が、本発明における「演算処理部」に相当する。
【0025】
出力処理部167は、演算処理部166によって演算された推定水質値を、浄化槽識別情報Aに対応させて出力する機能を有する。これにより、浄化槽識別情報Aに対応する推定水質値が出力処理部167によって出力される。この出力処理部167が、本発明における「出力処理部」に相当する。なお、ここでいう出力処理部167の出力態様には、浄化槽識別情報Aに対応する推定水質値が表示画面に表示出力される態様、或いは印字装置によって印字出力される態様のみならず、浄化槽識別情報Aに対応する推定水質値を所定のデータテーブルに記憶させるべく当該データテーブルに出力される態様等が広く包含される。本実施の形態では、演算処理部166によって演算された推定BODは、BOD出力テーブル165においてデータテーブル化される。
【0026】
更新処理部168は、更に、水質測定センサ120が設置された部位において採水された水の水質分析結果に基づいて、変換式テーブル163に既に記憶された変換式情報Eを新たな変換式情報に更新する機能を有する。この更新処理部168が、本発明における「更新処理部」に相当する。本実施の形態では、演算処理部166によって演算された推定BODは、BOD出力テーブル165において更新される。なお、上記の演算処理部166、出力処理部167及び更新処理部168は、それぞれがサーバー160において別個の構成要素とされてもよいし、或いは複数が組み合わせられた構成要素とされてもよい。なお、この更新処理部168は、必要に応じて適宜省略することもできる。
【0027】
上記テーブル161〜165の具体例に関しては、図3〜図7が参照される。図3〜図7にはそれぞれ、本実施の形態の物件テーブル161、本実施の形態の浄化槽・センサ組み合わせテーブル162、本実施の形態の変換式テーブル163、本実施の形態のBOD入力テーブル164及び本実施の形態のBOD出力テーブル165が示されている。
【0028】
図3に示す物件テーブル161では、浄化槽識別情報Aや、浄化槽型式情報B及びセンサ型式情報Cを含む情報として、各浄化槽に関する物件ID、物件名、住所、連絡先、使用人数、人槽、使用開始日、浄化槽型式及びセンサ型式等が記憶される。ここでいう物件IDが、本発明における「浄化槽識別情報」に相当する。
【0029】
図4に示す浄化槽・センサ組み合わせテーブル162では、上記の浄化槽型式情報B、センサ型式情報C及び組み合わせ情報Dを含む情報として、組み合わせID、浄化槽型式、センサ型式等が記憶される。図4中において、例えば浄化槽110の浄化槽型式が「A型」で、水質測定センサ120のセンサ型式が「T01」である場合に、組み合わせIDが「1」として規定される。ここでいう組み合わせID、浄化槽型式及びセンサ型式がそれぞれ、本発明における「組み合わせ情報」、「浄化槽型式情報」及び「センサ型式情報」に相当する。なお、複数の浄化槽に割り当てられた水質測定センサ120の型式が全て同一のときには、センサ型式を省略でき、浄化槽型式のみから組み合せIDを規定することもできる。また、複数の浄化槽の型式が全て同一のときには、浄化槽型式を省略でき、センサ型式のみから組み合せIDを規定することもできる。また、本実施の形態の組み合わせ情報Dは、浄化槽型式情報Bとセンサ型式情報Cとの組み合わせによって規定されてグループ分け(或いは区分)される情報であり、「グループ情報」或いは「区分情報」とも称呼される。また、本実施の形態の組み合わせIDは、この組み合わせ情報Dに関連するとともに、変換式を規定するIDであり、「グループID」或いは「区分ID」、更には「変換式ID」とも称呼される。
【0030】
なお、上記の組み合わせ情報Dは、浄化槽型式情報Bとセンサ型式情報Cとの組み合わせによって規定されるが、この組み合わせのパターンが異なれば必ず組み合わせ情報Dが異なるというわけではなく、異なる組み合わせ情報Dが付与される場合や、同一の組み合わせ情報Dが付与される場合があり得る。例えば、別の型式の浄化槽であっても、浄化槽の処理方式や処理性能が類似のものであって、同一の変換式情報Eを用いることが妥当である場合には、浄化槽型式情報Bとセンサ型式情報Cとの組み合わせが異なる場合であっても同一の組み合わせ情報Dを付与することができる。
【0031】
図5に示す変換式テーブル163では、水質測定センサ120に関するセンサ測定値を水質値に換算可能な変換式情報Eを含む情報として、組み合わせID、変換式(「換算式」或いは「回帰式」ともいう)、変換式中の係数a及びbが記憶される。図5中において、例えば組み合わせIDが「1」である場合に、変換式が「Y=aX+b」とされ、その変換式の係数aが「0.452」とされ、その変換式の係数(切片)bが「0.846」とされる。これら係数a,bは、変換式テーブル163に既に記憶されているセンサ測定値とBODとの関係を直線近似させることによって導出される。ここでいう変換式及び変換式中の係数a及びbが、本発明における「変換式情報」に相当する。
【0032】
図6に示すBOD入力テーブル164では、物件ID、組み合わせID、日時、センサ測定値、BODが記憶される。ここで、センサ測定値とBODに関しては、所定のタイミングで水質測定センサ120によって測定された値がセンサ測定値とされ、同じタイミングで採水された水の水質分析値がBODとされる。図6中において、例えば物件ID及び組み合わせIDが「1」で、水質測定センサ120によるセンサ測定値が「5」である場合に、BODが「3.0」とされる。なお、水質分析値とは、水中の水質センサによる分析ではなく、例えば環境計量証明事務所の公定法による水質分析値を指す。
【0033】
なお、本実施の形態においては、水質測定センサ120と通信端末130との間に、或いは水質測定センサ120自体や通信端末130自体に、水質測定センサ120が設置された浄化処理部112における採水日時を示す情報と、当該採水日時に浄化処理部112において採水されたことを示す情報とを対応させて記憶する記憶処理部131(「ロガー」ともいう)を設けるのが好ましい(図1参照)。そして、この記憶処理部131に記憶された情報が通信回線140を介してBOD入力テーブル164に伝送され、当該採水日時に浄化処理部112において採水された水のBODの水質分析結果とともにBOD入力テーブル164にて記憶される。ここでいう記憶処理部131が、本発明における「記憶処理部」に相当する。
【0034】
具体的には、通信端末130に接続された手動操作可能な入力装置(典型的には操作スイッチないし操作ボタン)が、採水時に操作されることで記憶処理部131が作動する。この記憶処理部131は、典型的には通信端末130、或いは水質測定センサ120の接続された任意の装置に装着される。このとき、採水日時を示す情報と、当該採水日時に浄化処理部112において採水されたことを示す情報、すなわち入力装置の操作情報が、一旦記憶処理部131にて記憶された後に通信回線140を経由して水質管理センター150のサーバー160に送信され、このBOD入力テーブル164においてBODの水質分析値に対応して記憶される。このとき、入力装置の操作情報は、当該採水時に水質測定センサ120によって測定されたセンサ測定値とは別個に、通信回線140を経由して水質管理センター150のサーバー160に送信されてもよいし、或いは当該採水時に水質測定センサ120によって測定されたセンサ測定値とともに、通信回線140を経由して水質管理センター150のサーバー160に送信されてもよい。
【0035】
このような構成によれば、所定の採水日時に採水された水の水質分析結果と、当該採水日時に水質測定センサ120によって測定されたセンサ測定値を適正に対応させることが可能となる。なお、必要に応じては、記憶処理部131を適宜省略し、少なくとも入力装置の操作情報が、そのまま通信回線140を経由して水質管理センター150のサーバー160に送信されるように構成してもよい。
【0036】
図7に示すBOD出力テーブル165では、物件ID、組み合わせID、日時、センサ測定値、推定BODが記憶される。この推定BODは、センサ測定値が変換式テーブル163の変換式に基づいて導出された推定値とされる。図7中において、例えば物件ID及び組み合わせIDが「1」で、水質測定センサ120によるセンサ測定値が「19」である場合に、変換式により換算された推定BODが「9.4」とされる。この推定BODは、水質測定センサ120から定期的に取り込まれたセンサ測定値から導出されて、BOD出力テーブル165に追加して記憶される構成であるのが好ましい。
【0037】
ここで、BOD出力テーブル165において推定BODを更新する手順を図8〜図11を参照しつつ説明する。なお、図8には、変換式テーブルの更新の前後でのセンサ測定値とBODとの直線近似の様子が示され、図9には、図6のBOD入力テーブル164が更新された後のBOD入力テーブル164aが示される。また図10には、図5の変換式テーブル163が更新された後の変換式テーブル163aが示される。更に図11には、図7のBOD出力テーブル165が更新された後のBOD出力テーブル165aが示される。
【0038】
本実施の形態では、BOD出力テーブル165における推定BODの更新に際し、物件IDが「5」で組み合わせIDが「1」の浄化槽に関し、センサ測定値とBODとの組み合わせが新たに追加された場合を考える。図9に示す例では、2008年2月25日の14時の水質に関し、水質測定センサ120によって測定されたセンサ測定値である「40」と、その測定時に採水された水の水質分析値(BOD)である「20」との関係が追加されている。従って、変換式テーブル163に既に記憶されているセンサ測定値とBODとの関係に対し、センサ測定値とBODとの更なる関係を追加したうえで、全体としてのセンサ測定値とBODとの関係を公知の手法によって直線近似させる。
【0039】
この直線近似に関しては図8が参照される。図8では、更新前におけるセンサ測定値とBODとの関係が○:プロットP1及び近似直線L1で示される一方、更新後におけるセンサ測定値とBODとの関係が△:プロットP2及び近似直線L2で示される。更新後の近似直線L2の係数を導出した場合、例えば係数aが「0.484」とされ、係数bが「0.476」とされる。従って、図5中の変換式テーブル163のうち、組み合わせIDが「1」のときの係数a及びbが更新されることによって、新たに図10中の変換式テーブル163aが記憶される。更に、この更新された変換式テーブル163aを用いることによって、センサ測定値に基づいて推定BODが導出される。例えば2008年4月10日の15時の水質に関し、更新前においては図7に示すようにセンサ測定値が「19」である場合の推定BODが「9.4」であったのに対し、更新後においては図11に示すようにセンサ測定値が「19」である場合の推定BODが「9.7」とされる。
【0040】
上記のように、本実施の形態の水質管理システム100によれば、複数の浄化槽の水質を、水質管理センター150のサーバー160において一元的に管理することが可能となる。また、水質測定センサ120の種類が変った場合であっても、サーバー160の変換式テーブル163に記憶された変換式情報Eのみを変更することによって対応可能であるため合理的である。また、変換式テーブル163に記憶された変換式情報Eが常に最新の変換式情報に更新される構成を採用することによって、水質測定センサ120のセンサ測定値から導出される推定BODの信頼性向上を図るのに有効とされる。また、水質測定センサ120自体に変換式情報Eを記憶させる必要がなく水質測定センサ120のコスト低減を図ることができ、また複数の浄化槽110の水質に関する情報を単一の水質管理装置において一括して処理する構成であるため、水質管理システムの構築に必要なコストを抑えることが可能となる。
【0041】
また、本実施の形態の水質管理システム100によれば、水質予測の正確性が増すため、多大な物件数の浄化槽を維持管理するにあたり、維持管理の精度が上がり、品質向上が図られる。更には、異常の予測精度も上がるため、水環境の改善に貢献することが可能となる。また、公定法による水質分析ではBODの測定に5日間程度の期間が必要であり、浄化槽の処理性能に異常があった場合には最低でも当該期間の経過後に対処することとなるが、本システムを用いれば、浄化槽の処理性能を常時監視することで、水質センサからの推定BODが精度良く瞬時に把握されるため、浄化槽の処理性能が悪化する前に対処することが可能となり、水環境に与える悪影響を最小限に食い止めることができる。更には、事態が既に悪化した状態に対処する場合に比べて対応作業が容易であり、異常時の現場対応作業の低減による維持管理コスト低減を図ることが可能となる。
また、本システムを用いれば、推定水質値に基づいて、水質分析をしなくても目標水質(例えば、BOD:20)をクリアしていることが明らかな場合には、適宜公定法による水質分析を省略する等、水質分析回数を減らして余分な水質分析を削減することができ、水質分析コスト低減を図ることが可能となる。
また、本システムを用いれば、浄化槽の維持管理経験および専門知識を有する浄化槽維持管理業者だけでなく、例えば市町村の浄化槽整備担当者などのように、浄化槽の維持管理に直接従事しない浄化槽管理者であっても、浄化槽の異常判断を簡便に行うことができ、異常時対応のスピードアップが図られるとともに、日常業務の煩雑さから開放されるという効果が得られる。
【0042】
〔他の実施の形態〕
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0043】
上記実施の形態の水質管理システム100では、水質測定センサ120がBODに関する水質測定を行なう例について記載したが、BOD以外の水質、例えば濁度、透視度、SS(浮遊懸濁物質量)、pH、DO(溶存酸素)、紫外線(UV)吸光度等の水質測定を行なう場合についても同様に本発明を適用することが可能である。
【0044】
また、上記実施の形態の水質管理システム100では、各浄化槽110の浄化処理部112に1つの水質測定センサ120が設置される場合について記載したが、本発明では、1または複数の水質測定センサを浄化処理部に割り当てることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る「水質管理システム」の一実施の形態である水質管理システム100の概要を示す図である。
【図2】図1中のサーバー160のシステム構成を示す図である。
【図3】本実施の形態の物件テーブル161を示す図である。
【図4】本実施の形態の浄化槽・センサ組み合わせテーブル162を示す図である。
【図5】本実施の形態の変換式テーブル163を示す図である。
【図6】本実施の形態のBOD入力テーブル164を示す図である。
【図7】本実施の形態のBOD出力テーブル165を示す図である。
【図8】変換式テーブルの更新の前後でのセンサ測定値とBODとの直線近似の様子を示す図である。
【図9】図6のBOD入力テーブル164が更新された後のBOD入力テーブル164aを示す図である。
【図10】図5の変換式テーブル163が更新された後の変換式テーブル163aを示す図である。
【図11】図7のBOD出力テーブル165が更新された後のBOD出力テーブル165aを示す図である。
【符号の説明】
【0046】
100…水質管理システム
110…浄化槽
111…浄化槽本体
112…浄化処理部
120…水質測定センサ
130…通信端末
131…記憶処理部
140…通信回線
150…水質管理センター
160…サーバー
160a…データベース
161…物件テーブル
162…浄化槽・センサ組み合わせテーブル
163…変換式テーブル
164…BOD入力テーブル
165…BOD出力テーブル
166…演算処理部
167…出力処理部
168…更新処理部
170…水質検査部
A…浄化槽識別情報
B…浄化槽型式情報
C…センサ型式情報
D…組み合わせ情報
E…変換式情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水の浄化処理を行なう浄化処理部を収容する複数の浄化槽と、
前記複数の浄化槽のそれぞれの前記浄化処理部に割り当てられた水質測定センサと、
前記水質測定センサによって測定された前記浄化処理部の水質を管理する単一の水質管理装置と、
前記水質測定センサによって測定されたセンサ測定値を前記水質管理装置へと伝送する伝送装置と、
を備える水質管理システムであって、
前記水質管理装置は、データベース、演算処理部及び出力処理部を備え、
前記データベースは、
前記複数の浄化槽のそれぞれを識別可能な浄化槽識別情報を記憶する第1のデータテーブルと、
前記複数の浄化槽のそれぞれの型式を示す浄化槽型式情報と、前記複数の浄化槽のそれぞれに割り当てられた前記水質測定センサの型式を示すセンサ型式情報とを組み合せた組み合わせ情報を記憶する第2のデータテーブルと、
前記組み合わせ情報を前記浄化槽識別情報に対応させて記憶する第3のデータテーブルと、
前記水質測定センサに関するセンサ測定値を水質値に換算可能な変換式情報を、前記組み合わせ情報或いは前記浄化槽識別情報に対応させて記憶する第4のデータテーブルと、を含み、
前記演算処理部は、前記伝送装置によって伝送された前記水質測定センサによるセンサ測定値を、前記データベースの前記第4のデータテーブルに記憶された前記変換式情報に適用することにより推定水質値を演算する構成であり、
前記出力処理部は、前記演算処理部によって演算された推定水質値を、前記浄化槽識別情報に対応させて出力する構成であることを特徴とする水質管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水質管理システムであって、
前記水質管理装置は、前記水質測定センサが割り当てられた浄化処理部において採水された水の水質分析結果に基づいて、前記データベースの前記第4のデータテーブルに既に記憶されている前記変換式情報を新たな変換式情報に更新する更新処理部を更に備え、
前記演算処理部は、前記水質測定センサによって測定されたセンサ測定値を、前記第4のデータテーブルにおいて前記更新処理部によって新たに更新された変換式情報に適用することにより推定水質値を演算することを特徴とする水質管理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の水質管理システムであって、
前記浄化処理部における採水日時を示す情報と、当該採水日時に前記浄化処理部において採水されたことを示す情報とを対応させて記憶する記憶処理部を更に備え、
前記記憶処理部に記憶された情報が前記伝送装置を介して前記水質管理装置に伝送され、当該採水日時に前記浄化処理部において採水された水の水質分析結果とともに、前記データベースの前記第5のデータテーブルにて記憶される構成であることを特徴とする水質管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−264415(P2010−264415A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119760(P2009−119760)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(390021348)フジクリーン工業株式会社 (71)
【出願人】(301050924)株式会社ハウステック (234)
【Fターム(参考)】