説明

水質計測システム

【課題】水道水源の水質を安価に計測すること。
【解決手段】水質計測管理装置20が、水質を計測する計測地点の位置情報を端末装置40に送信する。端末装置40は、電気通信回線50を介して水質計測管理装置20から送信された計測地点の位置情報を受信し、電気通信回線50を介して水質計測装置30によって計測された計測地点の水質のデータを水質計測管理装置20に送信する。そして、水質計測管理装置20は、電気通信回線50を介して端末装置40から送信された計測地点の水質のデータを受信する。このような構成によれば、計測地点毎に計測装置を設置することなく任意の計測地点における水質のデータを計測できるので、水道水源の水質を安価に計測することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道水源の水質を計測する水質計測システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、浄水場では、ダム、湖沼、河川などの水道水源の水質に応じた浄水処理を行っている。すなわち、浄水場では、適正な水質と必要水量とを確保するように水道水源の水質に応じて浄水処理方法を変更するようにしている。このため、浄水場では、水道水源の水質を計測、監視する必要がある。このような背景から、水道水源の計測地点に配置された計測装置を利用して水道水源の水質を計測し、計測された水質のデータを計測装置から水質監視装置に伝送し、伝送された水質のデータと標準の水質データとを比較することによって水道水源の水質を監視するシステムが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−214042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の水質計測システムによれば、水質を計測したい計測地点毎に計測装置を配置しなければならないために、水道水源の水質を安価に計測することが難しい。また、複数の位置に計測装置を配置した場合には、計測装置の保守に多くの労力と費用とを要する。このため、水道水源の水質を安価に計測可能な技術の提供が期待されていた。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、水道水源の水質を安価に計測することが可能な水質計測システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る水質計測システムは、水道水源の水質を計測する計測地点の位置情報を送信する送信手段と、電気通信回線を介して送信された計測地点の水質のデータを受信する受信手段と、を備える水質計測管理装置と、電気通信回線を介して前記水質計測管理装置から送信された計測地点の位置情報を受信する受信手段と、電気通信回線を介して計測地点において測定された水道水源の水質のデータを送信する送信手段と、を備える端末装置と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る水質計測システムによれば、水道水源の水質を安価に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である水質計測システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示す計測地点データベースに格納されている計測地点マスタの一例を示す図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態である水質計測処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】図4は、図3に示すステップS9の処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である水質計測システムの構成およびその動作について説明する。
【0010】
〔水質計測システムの構成〕
始めに、図1および図2を参照して、本発明の一実施形態である水質計測システムの構成について説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態である水質計測システムの構成を示すブロック図である。図2は、図1に示す計測地点データベース10に格納されている計測地点マスタの一例を示す図である。図1に示すように、本発明の一実施形態である水質計測システム1は、計測地点データベース10と、水質計測管理装置20と、水質計測装置30と、端末装置40とを備え、水質計測管理装置20と端末装置40とは電気通信回線50を介して相互に情報通信可能なように構成されている。
【0012】
計測地点データベース10は、図2に示すような、水質の計測地点毎に付与された固有の識別情報(地点ID)と、水質の計測地点の経度および緯度と、本発明に係る所定値としての計測地点で計測される水質の標準値(標準計測値)とを関連付けして記述した計測地点マスタを格納している。なお、水質の計測地点の経度および緯度の情報と共に、水質の計測地点の高度の情報を計測地点マスタに記述してもよい。
【0013】
水質計測管理装置20は、パーソナルコンピュータやワークステーションなどの情報処理装置によって構成され、水道水源の水質の計測作業を管理する管理者によって操作される。水質計測管理装置20は、情報処理装置内部のCPUなどの演算処理装置がコンピュータプログラムを実行することによって、計測ルート算出部21、計測作業制御部22、および情報送受信部23として機能する。これら各部の機能については後述する。
【0014】
水質計測装置30は、pH計、濁度計、水温計、残塩濃度計測装置などの公知の水質計測装置によって構成され、水道水源の水質を計測するオペレータによって操作される。水質計測装置30は、計測地点の水質を計測し、計測された水質のデータを端末装置40に入力する。
【0015】
端末装置40は、携帯型情報端末装置やパーソナルコンピュータなどの情報処理装置によって構成され、水道水源の水質を計測するオペレータによって操作される。端末装置40は、情報処理装置内部のCPUなどの演算処理装置がコンピュータプログラムを実行することによって、情報送受信部41、位置情報取得部42、および出力部43として機能する。これら各部の機能については後述する。
【0016】
このような構成を有する水質計測システム1は、以下に示す水質計測処理を実行することによって水道水源の水質を計測する。以下、図3に示すフローチャートを参照して、水質計測処理を実行する際の水質計測システム1の動作について説明する。
【0017】
〔水質計測処理〕
図3は、本発明の一実施形態である水質計測処理の流れを示すフローチャートである。図3に示すフローチャートは、端末装置40から送信された水質計測処理の開始を要求するトリガ信号を水質計測管理装置20が受信したタイミングで開始となり、水質計測処理はステップS1の処理に進む。
【0018】
ステップS1の処理では、計測ルート算出部21が、計測地点データベース10に格納されている計測地点マスタを参照して、水質を計測する複数の計測地点の最短ルートを算出する。そして、計測ルート算出部21は、最短ルートの算出結果に基づいて情報送受信部23を介して最初の計測地点の位置情報を端末装置40に送信する。なお、計算ルート算出部21は、端末装置40の位置情報を取得し、取得した位置情報に基づいて最短ルートを算出するようにしてもよい。これにより、ステップS1の処理は完了し、水質計測処理はステップS2の処理に進む。
【0019】
ステップS2の処理では、情報送受信部41が、水質計測管理装置20から送信された計測地点の位置情報を受信する。また、位置情報取得部42が、例えばGPS衛生からの信号を受信することによって端末装置40の位置情報を取得する。そして、出力部43が、計測地点の位置情報と端末装置40の位置情報とを比較することによって、計測地点の方角と計測地点までの距離に関する情報を出力する。オペレータは、出力部43が出力した情報に基づいて計測地点へと移動する。これにより、ステップS2の処理は完了し、水質計測処理はステップS3の処理に進む。
【0020】
ステップS3の処理では、情報送受信部41が、位置情報取得部42を介して端末装置40の位置情報を定期的に取得し、取得した端末装置40の位置情報を水質計測管理装置20に送信する。これにより、ステップS3の処理は完了し、水質計測処理はステップS4の処理に進む。
【0021】
ステップS4の処理では、計測作業制御部22が、端末装置40から送信された端末装置40の位置情報に基づいてオペレータが計測地点に到着したか否かを判別する。そして、計測作業制御部22は、オペレータが計測地点に到着したと判別されたタイミングで情報送受信部23を介して水質の計測作業の開始を指示する計測指示信号を端末装置40に送信する。これにより、ステップS4の処理は完了し、水質計測処理はステップS5の処理に進む。
【0022】
ステップS5の処理では、出力部43が、水質計測管理装置20から送信された計測指示信号を情報送受信部41が受信するのに応じて、水質の計測作業の開始を指示する情報を出力する。オペレータは、出力部43が出力した情報に基づいて、水質計測装置30を利用して計測地点の水質を計測する。これにより、ステップS5の処理は完了し、水質計測処理はステップS6の処理に進む。
【0023】
ステップS6の処理では、水質計測装置20が、計測された水質のデータを端末装置40に出力し、情報送受信部41が、水質計測装置20が出力した水質のデータを水質計測管理装置20に送信する。これにより、ステップS6の処理は完了し、水質計測処理はステップS7の処理に進む。
【0024】
ステップS7の処理では、計測作業制御部22が、情報送受信部23を介して端末装置40から送信された水質のデータを受信することによって、水質の計測作業が完了したことを確認する。これにより、ステップS7の処理は完了し、水質計測処理はステップS8の処理に進む。
【0025】
ステップS8の処理では、計測作業制御部22が、受信した水質データを計測地点マスタに記述されている標準計測値と比較することによって計測値が正常であるか否かを判別する。判別の結果、計測値が正常である場合、計測作業制御部22は、ステップS1の処理によって算出された最短計測ルートに基づいて水質の計測作業を進めるように水質計測処理をステップS2の処理に戻す。一方、計測値が異常である場合には、計測作業制御部22は、水質計測処理をステップS9の処理に進める。
【0026】
ステップS9の処理では、計測作業制御部22が、水質異常が発生している地点を特定するために、計測地点より上流側の地点を次の計測地点にするように次の計測地点を変更する。具体的には、図4に示すように、河川が直線Lに示すように高度H2から高度H1に向かって流れている場合において、最下流側の計測地点P1における計測値が異常である場合、始めに、計測作業制御部22は、計測地点P1に隣接する上流側の計測地点P2を飛ばして、計測地点P1より2地点上流側にある計測地点P3を次の計測地点とし、計測地点P3の水質を計測するように水質計測処理をステップS2の処理に戻す。
【0027】
次に、計測作業制御部22は、計測地点P3における水質計測処理の結果、計測地点P3の計測値が異常である場合、同様にして、計測地点P3より2地点上流側にある計測地点P5を次の計測地点とし、計測地点P5の水質を計測するように水質計測処理をステップS2の処理に戻す。そして、計測地点P5(又は計測地点P3)の計測値が正常である場合には、計測作業制御部22は、計測地点P5(又は計測地点P3)に隣接する下流側の計測地点P4(又は計測地点P2)を次の計測地点とし、計測地点P4(又は計測地点P2)の水質を計測するように水質計測処理をステップS2の処理に戻す。
【0028】
このように、このステップS9の処理では、計測作業制御部22は、水質異常が発生した際、水が上流側から下流側に流れるという特性を利用して、水質の計測地点をより上流側の計測地点に順次変更する。この処理により、水質の悪化が生じている地点を特定することができる。なお、本実施形態では、計測作業制御部22は、水質を測定した計測地点から2地点上流側にある計測地点を次の計測地点とする、換言すれば、1地点飛ばしで次の計測地点を決定したが、飛ばす計測地点の数は1に限定されることはなく、任意に設定することができる。これにより、ステップS9の処理は完了し、水質計測処理はステップS2の処理に戻る。
【0029】
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態である水質計測処理では、水質計測管理装置20が、水質を計測する計測地点の位置情報を端末装置40に送信する。端末装置40は、電気通信回線50を介して水質計測管理装置20から送信された計測地点の位置情報を受信し、電気通信回線50を介して水質計測装置30によって計測された計測地点の水質のデータを水質計測管理装置20に送信する。そして、水質計測管理装置20は、電気通信回線50を介して端末装置40から送信された計測地点の水質のデータを受信する。このような構成によれば、計測地点毎に計測装置を設置することなく任意の計測地点における水質のデータを計測できるので、水道水源の水質を安価に計測することができる。
【0030】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述および図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者などによりなされる他の実施の形態、実施例および運用技術などは全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
1 水質計測システム
10 計測地点データベース
20 水質計測管理装置
21 計測ルート算出部
22 計測作業制御部
23 情報送受信部
30 水質計測装置
40 端末装置
41 情報送受信部
42 位置情報取得部
43 出力部
50 電気通信回線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道水源の水質を計測する計測地点の位置情報を送信する送信手段と、電気通信回線を介して送信された計測地点の水質のデータを受信する受信手段と、を備える水質計測管理装置と、
電気通信回線を介して前記水質計測管理装置から送信された計測地点の位置情報を受信する受信手段と、電気通信回線を介して計測地点において測定された水道水源の水質のデータを送信する送信手段と、を備える端末装置と、
を備える水質計測システム。
【請求項2】
前記水質計測管理装置は、
前記端末装置から送信された水質のデータを所定値と比較することによって前記計測地点の水質が正常であるか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段によって前記計測地点の水質が異常であると判別された場合、水質が異常であると判別された計測地点より水道水源の流れ方向上流側にある計測地点を次の計測地点に設定する計測地点設定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の水質計測システム。
【請求項3】
前記計測地点設定手段は、水道水源の流れ方向に沿って配置された複数の計測地点のうち、水質が異常であると判別された計測地点より所定数上流側にある計測地点を次の計測地点に設定することを特徴とする請求項2に記載の水質計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−50309(P2013−50309A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186824(P2011−186824)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)