説明

水質評価方法及びそれに用いられる基板保持容器

【課題】簡易な手順にて被評価水の評価を行うことが可能であると共に、基板の分析設備への搬送時における基板表面の変質や汚染を大幅に抑制することが可能な水質評価方法と、この水質評価方法に用いられる基板保持容器とを提供する。
【解決手段】保持容器10の給水口14に連なる導入管18のバルブ20上流側にサンプリングチューブ3のチューブ継手4が着脱可能に接続されている。導入管18、導出管19、排水管17には開閉バルブとしてボールバルブ20〜22がそれぞれ接続されている。給水口14及び排水口15と各管16,17との接続、並びに各管18,19,17と各バルブ20〜22との接続は、いずれも螺じ込みにより行われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体、液晶などの電子材料を扱う産業において好適に使用される、超純水の水質評価方法に係り、特に、半導体ウェハ等の基板に超純水を接触させ、この基板の表面分析を行うことで、超純水の水質を評価する場合に好適な評価方法に関するものである。また、本発明は、この水質評価方法に用いられる、基板の保持容器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子産業分野で使用される超純水の水質評価法として、半導体ウェハ等の基板を被評価水と接触させることにより被評価水中の不純物をこの基板に付着させ、この基板表面の付着物を分析、あるいは付着物を一旦溶離して溶離液を分析、あるいは基板表面の変化を分析するなどして、被評価水の水質を評価する方法がある。
【0003】
例えば、特開2001−208748号には、基板表面に付着した金属を全反射蛍光X線分析により検出することが記載されている。また、特開2005−274400号には、基板表面に付着した有機物をフーリエ変換赤外吸収分光法(FTIR)や熱脱離ガスクロマトグラフ法(TDGCMS)により検出することが記載されている。
【0004】
上記特開2001−208748号及び特開2005−274400号においては、基板を保持容器内に収容し、この保持容器内に被評価水を通水して被評価水と基板とを接触させた後、保持容器から基板を取り出し、この基板を密閉容器に入れて分析装置のある場所へ搬送し、分析を行っていた。
【特許文献1】特開2001−208748号
【特許文献2】特開2005−274400号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特開2001−208748号及び特開2005−274400号の評価方法においては、基板を保持容器から取り出した際に空気中の不純物が基板表面に付着するのを防止するために、保持容器への通水工程をクリーンルームのような清浄な雰囲気が形成される場所で行うか、又はこのような場所の近くで行わなければならない。
【0006】
また、搬送中に基板に水が付着していると、基板成分が水に溶解し、基板表面が変質したり、汚染物質が水中に濃縮され、基板表面を汚染するおそれがあるため、搬送前に予め基板を乾燥しておく必要がある。
【0007】
なお、保持容器に基板を収容したままこの保持容器ごと搬送することも考えられるが、上記特開2001−208748号及び特開2005−274400号の保持容器にあっては、僅かながらも外気との接触が避けられず、外気からのコンタミネーション、酸化膜形成、表面状態の変化が微量の分析に影響を及ぼすことになる。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点を解消し、簡易な手順にて被評価水の評価を行うことが可能であると共に、基板の分析設備への搬送時における基板表面の変質や汚染を大幅に抑制することが可能な水質評価方法と、この水質評価方法に用いられる基板保持容器とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明(請求項1)の保持容器は、基板に被評価水を接触させた後、該基板の表面を分析することによって被評価水中の不純物を検出又は測定する水質評価方法で使用される基板を収容して保持するための保持容器であって、内部に被評価水を流入させるための給水口と、該内部から被評価水を排出するための排水口とを備えており、該給水口に給水管が接続され、該排水口に排水管が接続された保持容器において、該給水管の上流側は、導入管と導出管とに二叉に分岐しており、該導入管、導出管及び排水管にそれぞれ開閉バルブが接続されており、上記の接続はいずれも螺じ込みにより行われており、該導入管の該開閉バルブの上流側に、被評価水供給用の配管を着脱可能に接続するための接続部が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2の保持容器は、請求項1において、該開閉バルブはボールバルブであることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3の保持容器は、請求項1又は2において、該保持容器は搬送容器に収容されていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明(請求項4)の水質評価方法は、基板に被評価水を接触させた後、該基板の表面を分析することによって被評価水中の不純物を検出又は測定する被評価水の水質評価方法であって、該基板を収容した保持容器内に被評価水を通水して該基板に被評価水を接触させた後、該基板を分析設備に搬送して該基板の表面の分析を行う水質評価方法において、該保持容器は上記本発明のものであり、該保持容器内に基板を収容し、前記導入管の開閉バルブの上流側の前記接続部に被評価水供給用の配管を接続し、該導入管、前記導出管及び前記排水管の各開閉バルブを開として該保持容器内に被評価水を通水し、該基板に被評価水を接触させた後、各開閉バルブを閉とし、その後、該被評価水供給用の配管を該接続部から取り外し、該保持容器内に基板を収容したまま、該保持容器を前記分析設備に搬送することを特徴とするものである。
【0013】
請求項5の水質評価方法は、請求項4において、該保持容器を搬送容器に収容して搬送することを特徴とするものである。
【0014】
請求項6の水質評価方法は、請求項5において、該搬送容器は、密閉容器であることを特徴とするものである。
【0015】
請求項7の水質評価方法は、請求項5又は6において、該搬送容器は、内部の温度を15℃以下に保つ保冷手段を備えていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項8の水質評価方法は、請求項5ないし7のいずれか1項において、該搬送容器は、その内部に収容された保持容器を略水平に支持する支持部材を備えていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項9の水質評価方法は、請求項5ないし8のいずれか1項において、該搬送容器内に水が充填されており、保持容器はこの水中に浸漬された状態で搬送されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の水質評価方法及び基板の保持容器にあっては、被評価水供給用の配管が保持容器の導入管の開閉バルブ上流側の接続部に着脱可能に接続されているので、保持容器内に被評価水を通水して該被評価水と基板とを接触させた後、該接続部から被評価水供給用の配管を取り外すことにより、保持容器内に基板を収容したまま、この保持容器を分析設備に搬送することができる。
【0019】
この際、導入管、導出管及び排水管の各開閉バルブを閉とすることにより、保持容器が密閉され、基板と外気との接触が防止される。また、本発明では、保持容器と各管との接続及び各管と各バルブとの接続がいずれも螺じ込みにより行われているので、これらの接続部の気密性も高く、これらの接続部から保持容器内へ外気が侵入することも防止される。
【0020】
これにより、簡易な手順にて被評価水の評価を行うことが可能であると共に、基板の分析設備への搬送時における基板表面の変質や汚染も防止することが可能である。
【0021】
導入管、導出管及び排水管の各開閉バルブをボールバルブとすることにより、各バルブを閉としたときの気密性を一層良好なものとすることができる。
【0022】
本発明においては、保持容器を搬送容器に収容して分析設備に搬送するようにしてもよい。
【0023】
この場合、搬送容器を密閉容器とすることにより、搬送時における基板表面の外気による汚染をより確実に防止することが可能である。
【0024】
また、この搬送容器に、内部の温度を15℃以下に保つ保冷手段を設けることにより、基板の表面状態の変化を抑えることができる。即ち、基板の表面状態の変化は、基板成分と汚染物質(例えば金属や有機物など)との化学反応から起こるため、温度を下げることによりその反応速度が遅くなり、表面状態の変化を抑制することができる。
【0025】
搬送容器に、保持容器を略水平に支持する支持部材を設けておくことにより、基板が保持容器内でずれ動いて該保持容器の内面に接触したりすることが防止される。
【0026】
搬送容器内に水を充填し、保持容器をこの水中に浸漬した状態で搬送することにより、保持容器内への外気の侵入が確実に防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0028】
図1は実施の形態に係る水質評価方法に用いられる保持容器の縦断面図、図2はこの保持容器の底盤の斜視図、図3はこの保持容器への通水系の概略図、図4はこの保持容器の搬送容器の断面図である。また、図5は比較例に係る保持容器の縦断面図であり、図6、図7は実施例及び比較例の測定結果を示すグラフである。
【0029】
この実施の形態における基板保持容器10は、上面に基板Wを収容する円形の窪み12aを有した底盤12と、この窪み12aを閉鎖する上蓋13とからなる容器本体11を備えている。上蓋13の中央付近には、該窪み12a内に被評価水(超純水)を供給するための給水口14が設けられており、窪み12aの底面の中央付近には、該窪み12a内から被評価水を排出するための排水口15が設けられている。この給水口14に給水管16が接続され、排水口15に排水管17が接続されている。符号12bは、底盤12の下面から下方へ立設された脚を示している。なお、この脚12bは、保持容器10を略水平面上に配置したときに該保持容器10を略水平に支持するよう構成されている。
【0030】
給水管16の下流側の外周面には雄ねじ16aが形成されており、給水口14の内周面にはこの雄ねじ16aが螺合する雌ねじ(図示略)が形成されている。この雄ねじ16aがシール材(図示略)を介して給水口14内に螺じ込まれることにより、給水管16が給水口14に接続されている。また、排水管17の上流側の外周面には雄ねじ17aが形成されており、排水口15の内周面にはこの雄ねじ17aが螺合する雌ねじ(図示略)が形成されている。この雄ねじ17aがシール材(図示略)を介して排水口15内に螺じ込まれることにより、排水管17が排水口15に接続されている。
【0031】
以下、このように一方に設けられた雄ねじが、他方に設けられた雌ねじに螺じ込まれることにより両者が接続されることを、螺じ込みによる接続と称する。
【0032】
給水管16の上流側は、導入管18と導出管19とに二叉に分岐している。なお、この実施の形態では、該給水管16、導入管18及び導出管19は一連のT字管よりなり、該導入管18と導出管19とは各々の軸心線が略一直線状となるように互いに反対方向に延在しており、給水管16はこれらと略直交方向に延在している。ただし、導入管18と導出管19とは二叉に分岐していれば、一直線状でなくともよい。
【0033】
これらの導入管18と導出管19の先端側にそれぞれ開閉バルブとしてボールバルブ20,21が接続されている。導入管18及び導出管19とボールバルブ20,21との接続はそれぞれ螺じ込みにより行われている。符号18aは、導入管18の先端外周に形成され、シール材(図示略)を介してボールバルブ20の下流側接続口(符号略)に螺じ込まれた雄ねじを示し、符号19aは、導出管19の先端外周に形成され、シール材(図示略)を介してボールバルブ21の上流側接続口(符号略)に螺じ込まれた雄ねじを示している。
【0034】
超純水供給用配管1から開閉バルブ2を介して保持容器10に被評価水を供給するためのサンプリングチューブ3が分岐している。このサンプリングチューブ3がチューブ継手4に外嵌及びバンド留め等によって接続されている。このサンプリングチューブ3及びチューブ継手4により被評価水供給用配管が構成されている。導入管18のボールバルブ20の上流側接続口の内周面に、配管接続部としての雌ねじ(符号略)が設けられている。即ち、この実施の形態では、このチューブ継手4とボールバルブ20との接続も螺じ込みにより行われている。符号4aは、該チューブ継手4の先端外周に形成され、ボールバルブ20の上流側接続口に螺じ込まれた雄ねじを示している。なお、チューブ継手4は、ボールバルブ20の該上流側接続口に対し取り外し可能に螺合している。
【0035】
排水管17の下流側にも、開閉バルブとしてボールバルブ22が接続されている。この排水管17とボールバルブ22との接続も螺じ込みにより行われている。符号17bは、排水管17の下流端外周に形成され、ボールバルブ22の上流側接続口(符号略)に螺じ込まれた雄ねじを示している。
【0036】
なお、この排水管17は、排水口15から下方へ延出した後、途中から略直角に折れ曲がるL字管よりなる。
【0037】
前記導出管19のボールバルブ21の下流側及び排水管17のボールバルブ22の下流側には、それぞれ、該導出管19及び排水管17からの流出水を排水系に導く排水用配管5,6が接続されている。この実施の形態では、これらの配管5,6のボールバルブ21,22への接続も螺じ込みにより行われている。符号5a,6aは、それぞれ、該配管5,6の上流端外周に形成され、該ボールバルブ21,22の下流側接続口(符号略)に螺じ込まれた雄ねじを示している。これらの配管5,6も、各ボールバルブ21,22の該下流側接続口に対し取り外し可能に螺合している。
【0038】
ただし、これらの配管5,6は排水側であるので、各配管5,6と各バルブ21,22との接続についてはさほど気密性を考慮する必要はない。従って、各配管5,6と各バルブ21,22との接続は、螺じ込みによるものでなくてもよい。前記チューブ継手4とバルブ20との接続も、必ずしも螺じ込みによるものでなくてもよいが、こちらは給水側であるので、気密性の高い螺じ込み式であることが好ましい。
【0039】
前記底盤12の円形の窪み12aの内径は保持すべき基板Wの直径よりも充分に大である。窪み12aの底面上には、基板Wの保持手段として、円周方向に等間隔に複数(この実施の形態では3条)の放射状畝24が隆設されている。各放射状畝24は窪み12aの半径方向に延在している。
【0040】
基板Wは、板面を上に向けてこれらの放射状畝24の上に略水平に保持される。各畝24の外端部上には基板Wの周縁部が載置される段26を有する階段形の支持台25が設けられている。段26の段差は基板Wの厚さに対応している。また、各畝24の延在方向途中部には基板Wの半径方向の途中の下面を支持する支持部27が突設されている。
【0041】
底盤12の上面からは、上蓋13の位置決め用の複数の突起23が突設されている。これらの突起23は、窪み12aの周方向に略等間隔に配置されている。上蓋13の下面には、これらの突起23が係合する凹部(図示略)が設けられている。符号28bは、該上蓋13を底盤12に固定するためのボルト28aが螺じ込まれるボルト孔を示している。
【0042】
かかる構成の基板Wの保持容器10を用いた超純水の水質評価手順について次に説明する。
【0043】
まず、窪み12a内に基板Wを配置し、上蓋13を底盤12に被せてボルト28aで固定する。次に、図3に示すように、被評価水供給用のサンプリングチューブ3を、チューブ継手4を介して導入管18のボールバルブ20の上流側接続口に接続する。また、導出管19及び排水管17の各ボールバルブ21,22の下流側接続口に、排水用配管5,6を接続する。
【0044】
次いで、サンプリングチューブ3の開閉バルブ2と導入管18及び導出管19の各ボールバルブ20,21を開として該導入管18、導出管19及び各ボールバルブ20,21内に被評価水を流し、これらを清浄化する。
【0045】
次に、排水管17のボールバルブ22を開として被評価水を保持容器10内(窪み12a内)に通水し、基板Wに被評価水を接触させる。
【0046】
この際、導入管18側のボールバルブ20を一定開度とした状態にて、導出管19側のボールバルブ21の開度を調節することにより、被評価水の流速を調節する。なお、導入管18側のボールバルブ20の開度を調節することにより被評価水の流速を調節することも考えられるが、このようにすると、バルブ操作の際に各部の摩擦等によりバルブ構成材料が被評価水中に溶出したり、微粒子が被評価水中に混入するおそれがある。これに対し、導出管19側のボールバルブ21の開度を調節して被評価水の流速を調節した場合には、仮にボールバルブ21から被評価水に構成材料の溶出や微粒子の混入が生じても、このボールバルブ21は給水管16よりも下流側に位置しているので、保持容器10への供給水が汚染されることがない。
【0047】
所定時間、被評価水を保持容器10内に通水した後、各バルブ2,20〜22を閉として通水を終了する。その後、チューブ継手4をバルブ20から取り外し、基板Wを保持容器10内に収容したまま、該保持容器10を基板分析設備に搬送する。
【0048】
この際、図4に示すように、保持容器10を搬送容器に収容して搬送することが好ましい。この実施の形態では、搬送容器30は、内部の保持容器10と外気との接触を遮断する密閉容器であると共に、その内部温度の上昇を防止するために断熱性の材料により構成されている。
【0049】
なお、本発明においては、搬送容器30の内部温度を15℃以下、特に5℃以下に維持することが好ましい。このように搬送容器30の内部を低温に保つことにより、基板Wの表面状態の変化を抑えることができる。即ち、基板Wの表面状態の変化は、基板Wの成分と汚染物質(例えば金属や有機物など)との化学反応から起こるため、温度を下げることによりその反応速度が遅くなり、表面状態の変化を抑制することができる。この結果、基板Wの表面状態の変化が分析結果に影響を与えることを防止することができる。
【0050】
搬送容器30の内部を低温に保つために、該搬送容器30に冷却装置を設けてもよく、該搬送容器30内に保持容器10と共に冷却材を入れておいてもよい。
【0051】
また、図示は省略するが、保持容器10が搬送容器30内でずれ動いたり、保持容器10に衝撃が加えられたりすることを防止するために、該搬送容器30内にクッション材等を充填してもよい。
【0052】
あるいは、該搬送容器30内に水(例えば被評価水と同じ超純水)を充填し、この水中に保持容器10を浸漬した状態で搬送するようにしてもよい。このようにした場合、保持容器10内への外気の侵入が確実に防止される。
【0053】
ただし、このような搬送容器30を使用する代わりに、単にビニール袋等に保持容器10を入れ、この袋の口を縛って搬送するようにしてもよい。
【0054】
保持容器10を分析設備に搬送した後、保持容器10内から基板Wを取り出してその表面を分析する。
【0055】
このように、本発明の基板保持容器10及びこの保持容器10を用いた水質評価方法によれば、被評価水供給用のサンプリングチューブ3(チューブ継手4)が保持容器10の導入管18のボールバルブ20上流側に着脱可能に接続されているので、保持容器10内に被評価水を通水して該被評価水と基板Wとを接触させた後、該バルブ20からサンプリングチューブ3を取り外すことにより、保持容器10内から基板Wを取り出すことなく、この保持容器10ごと分析設備に搬送することができる。
【0056】
この際、導入管18、導出管19及び排水管17の各ボールバルブ20〜22を閉とすることにより、保持容器10が密閉され、基板Wと外気との接触が防止される。また、この保持容器10にあっては、給水口14及び排水口15と各管16,17との接続及び各管18,19,17と各バルブ20〜22との接続がいずれも螺じ込みにより行われているので、これらの接続部の気密性も高く、これらの接続部から保持容器10内へ外気が侵入することも防止される。
【0057】
この結果、簡易な手順にて被評価水の評価を行うことが可能であると共に、基板Wの分析設備への搬送時における基板W表面の変質や汚染も防止することが可能である。
【0058】
特に、この実施の形態では、導入管18、導出管19及び排水管17の各開閉バルブをボールバルブ20〜22としているので、各バルブ20〜22を閉としたときの保持容器10の気密性がきわめて良好である。
【実施例】
【0059】
以下に、実施例及び比較例を参照して本発明をさらに詳しく説明する。
【0060】
実施例1
上記実施の形態の保持容器10を用い、上記実施の形態と同様の手順にて基板表面の分析を行った。なお、基板としてはSiウェハを用いた。流速1L/minにて1時間、保持容器10内に被評価水(超純水)を通水した後、各バルブ20〜22を閉鎖して3日間保管し、その後Siウェハを取り出して表面付着有機物の測定を行った。この測定は、ウェハ表面から有機物を昇温離脱し、ガスクロマトグラフ/マススペクトルにより行った。結果を図6に示す。
【0061】
比較例1
Siウェハに、流速1L/minにて1時間、被評価水を接触させた後、直ちに表面付着有機物の測定を行った。この測定方法は実施例1と同様である。結果を図6に示す。
【0062】
比較例2
図5に示す保持容器10Aを用いた。
【0063】
図5の保持容器10Aは、図1の保持容器10においてボールバルブ20〜22を用いる代わりにニードルバルブ40〜42を用い、これらのニードルバルブ40〜42をフッ素樹脂パイプ43で導入管18、導出管19及び排水管17にそれぞれ接続した構成となっている。
【0064】
なお、該フッ素樹脂パイプ43と各管18,19,17との接続は、図示の通り、該パイプ43の一端側を各管18,19,17の先端に差し込み、次いでナット44を各管18,19,17に締め込んで固定することにより行われている。また、これと同様に、該パイプ43と各バルブ40〜42との接続は、該パイプ43の他端側を各バルブ40〜42の接続口(符号略)に差し込み、次いでナット44を各バルブ40〜42に締め込んで固定することにより行われている。
【0065】
一般的に、ニードルバルブ40〜42の閉鎖時の気密性はボールバルブ20〜22よりも低い。また、樹脂パイプ43及びナット44による各管18,19,17と各バルブ40〜42との接続も、保持容器10における各管18,19,17と各バルブ20〜22との螺じ込みによる接続よりも、気密性が低い。
【0066】
この保持容器10Aのその他の構成は図1の保持容器10と同様であり、図5において図1と同一符号は同一部分を示している。
【0067】
この保持容器10AにSiウェハを収容し、該保持容器10A内に流速1L/minにて1時間、被評価水(超純水)を通水した後、各バルブ40〜42を閉鎖して3日間保管し、その後Siウェハを取り出して表面付着有機物の測定を行った。この測定方法は、実施例1と同様である。結果を図6に示す。
【0068】
図6に示すように、実施例1にあっては、保持容器10の気密性が高いため、被評価水接触後の基板の表面状態の変化(付着有機物の増加)が減少し、より長期間、基板の表面状態を維持できることが分かる。
【0069】
実施例2
実施例1において、通水終了後、Siウェハの表面温度が5℃以下となるようにして3日間保管した後、Siウェハを取り出して表面付着有機物の測定を行った。この測定方法は、実施例1と同様である。結果を図7に示す。
【0070】
比較例3〜5
実施例1において、通水終了後、Siウェハの表面温度が15℃(比較例3)、25℃(比較例4)、及び40℃(比較例5)となるようにして3日間保管した後、Siウェハを取り出して表面付着有機物の測定を行った。この測定方法は、実施例1と同様である。結果を図7に示す。
図7に示すように、保管時(搬送時)の温度が低い方が、表面付着有機物の増加が抑えられ、被評価水接触後の基板表面の状態が維持されることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】実施の形態に係る水質評価方法に用いられる保持容器の縦断面図である。
【図2】保持容器の底盤の斜視図である。
【図3】保持容器への通水系の概略図である。
【図4】保持容器の搬送容器の断面図である。
【図5】比較例に係る保持容器の縦断面図である。
【図6】実施例及び比較例の測定結果を示すグラフである。
【図7】実施例及び比較例の測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0072】
3 サンプリングチューブ
4 チューブ継手
10 保持容器
11 保持容器本体
12 底盤
13 上蓋
14 給水口
15 排水口
16 給水管
17 排水管
18 導入管
19 導出管
20〜22 ボールバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に被評価水を接触させた後、該基板の表面を分析することによって被評価水中の不純物を検出又は測定する水質評価方法で使用される基板を収容して保持するための保持容器であって、
内部に被評価水を流入させるための給水口と、該内部から被評価水を排出するための排水口とを備えており、
該給水口に給水管が接続され、該排水口に排水管が接続された保持容器において、
該給水管の上流側は、導入管と導出管とに二叉に分岐しており、
該導入管、導出管及び排水管にそれぞれ開閉バルブが接続されており、
上記の接続はいずれも螺じ込みにより行われており、
該導入管の該開閉バルブの上流側に、被評価水供給用の配管を着脱可能に接続するための接続部が設けられていることを特徴とする保持容器。
【請求項2】
請求項1において、該開閉バルブはボールバルブであることを特徴とする保持容器。
【請求項3】
請求項1又は2において、該保持容器は搬送容器に収容されていることを特徴とする保持容器。
【請求項4】
基板に被評価水を接触させた後、該基板の表面を分析することによって被評価水中の不純物を検出又は測定する被評価水の水質評価方法であって、
該基板を収容した保持容器内に被評価水を通水して該基板に被評価水を接触させた後、該基板を分析設備に搬送して該基板の表面の分析を行う水質評価方法において、
該保持容器は請求項1ないし3のいずれか1項に記載のものであり、
該保持容器内に基板を収容し、前記導入管の開閉バルブの上流側の前記接続部に被評価水供給用の配管を接続し、該導入管、前記導出管及び前記排水管の各開閉バルブを開として該保持容器内に被評価水を通水し、該基板に被評価水を接触させた後、各開閉バルブを閉とし、その後、該被評価水供給用の配管を該接続部から取り外し、該保持容器内に基板を収容したまま、該保持容器を前記分析設備に搬送することを特徴とする水質評価方法。
【請求項5】
請求項4において、該保持容器を搬送容器に収容して前記分析設備に搬送することを特徴とする水質評価方法。
【請求項6】
請求項5において、該搬送容器は、密閉容器であることを特徴とする水質評価方法。
【請求項7】
請求項5又は6において、該搬送容器は、内部の温度を15℃以下に保つ保冷手段を備えていることを特徴とする水質評価方法。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれか1項において、該搬送容器は、その内部に収容された保持容器を略水平に支持する支持部材を備えていることを特徴とする水質評価方法。
【請求項9】
請求項5ないし8のいずれか1項において、該搬送容器内に水が充填されており、保持容器はこの水中に浸漬された状態で搬送されることを特徴とする水質評価方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−256181(P2007−256181A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83280(P2006−83280)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】