説明

水質評価方法及び装置

【課題】超純水中に含まれるアミン系の有機物などを短時間で高精度に検出し、超純水の水質を評価できる方法および装置を提供する。
【解決手段】試料水は、配管1、バルブ2を通ってカラム3に上向流にて通水される。カラム3内にはシリコン物質の粒子4が充填されており、このシリコン物質の粒子4が流動層を形成するように上向流の流速が選定される。シリコン物質の粒子4と接触した水は、配管5、バルブ6、流量計7を通って排出される。この水の一部は、配管7から分岐する配管8によって分取され、水素濃度計9にて水素濃度が測定された後、流量計10を通って流出する。カラム3への通水速度をSV100〜10,000h−1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は純水(超純水を含む。)の水質を評価する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ICやメモリーをはじめとする半導体製造工場や液晶パネル製造工場などでは、超純水が大量に使用されている。
【0003】
半導体製造工程においては、半導体デバイスの高精細化が進むに従い、シリコン表面の清浄度の維持、平坦度の維持が重要になってくる。高精細度の半導体を製造する工程においては、超純水が表面のシリコンをわずかでも溶解させると、表面のエッチングに伴う表面荒れが生じ、それに伴い電気特性を低下させるおそれがある。
【0004】
従って、半導体製造工程においては、シリコン表面荒れを生じさせることがない超純水を使用することが必要であり、超純水がシリコン表面をエッチングする性質を有するか否かを判断することは重要な課題である。
【0005】
超純水中の不純物は、金属などの無機物以外に、有機物があり、全有機性炭素濃度(TOC)での管理がなされており、1ppb程度以下に保持されている。TOCとしては、1ppb以下であっても、アミン系の有機物が含まれていると、シリコンウエハをエッチングしてしまい、表面の粗さを大きくすることが知られている。また、アミン系の有機物のうちでも、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミンあるいはオクタデシルアミンなどのアルキル鎖が長いものほど、エッチング量が多いことが知られている(特許第4056417号)。このアミン系の不純物は、超純水を製造する際に利用されるアニオン交換樹脂などの溶出物である。半導体工場で新設された超純水設備や、運転を中断した後の再開時に、このようなアミン系の有機物が多く含まれる超純水が排出されることが知られている。
【0006】
超純水設備からの超純水が半導体洗浄に用いても良いものかどうかを判定するために、この超純水を用いてウエハを洗浄し、洗浄後のウエハ表面の凹凸を赤外分光法で分析するか原子間力顕微鏡で観察する方法が行われているが、長時間を要すると共に、現場では行いにくい。
【0007】
特開2007−170863には、試料水をシリコン物質と接触させ、該シリコン物質に接触後の試料水に含有されるシリカ濃度に相関する物性値である溶存水素濃度を測定し、該シリコン物質との接触によって上昇した溶存水素濃度に基づいて、試料水の水質を評価する水質評価方法が記載されている。
【0008】
試料水中にアミン類などのようにシリコンをエッチングし易い物質が混入していると、試料水をシリコン物質に接触させた際にシリコン表面にエッチングが生じ、試料水中にシリコンが溶出する。溶出したシリコンはOHイオンもしくは水分子と反応し、イオン状シリカ(ケイ酸イオン)(SiO2−)になると共に、水素を生成させる。この水素は溶存水素となって水中に存在する。従って、溶存水素濃度はシリカ濃度と相関関係にあるため、溶存水素濃度の上昇をモニタリングすることによって、試料水がシリコンにエッチングを生じさせる水質かどうかを評価することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4056417
【特許文献2】特開2007−170863
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特開2007−170863の方法では、試料水をカラムに下向流にて通水しているため、シリコン物質と試料水との反応に時間がかかり、測定時間が長くなる。
【0011】
また、極めて低い濃度のアミン類(TOCで0.1ppb程度)であってもシリコンの表面エッチングが進行することがあり、検出感度の向上が求められている。
【0012】
本発明は、超純水中に含まれるアミン系の有機物などを短時間で高精度に検出し、超純水の水質を評価できる方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の水質評価方法は、シリコン物質の粒子が充填されたカラムに純水からなる試料水を通水し、通水後の試料水の溶存水素濃度を測定し、該測定値に基づいて試料水の水質を評価する水質評価方法において、該カラムに試料水を上向流で通水することにより流動層を形成すると共に、通水速度をSV100〜10,000h−1とすることを特徴とするものである。
【0014】
請求項2の水質評価方法は、請求項1において、純水が下記条件を全て満たす超純水であることを特徴とするものである。
電気比抵抗 :18MΩ・cm以上
金属イオン濃度:5ng/L以下
残留イオン濃度:10ng/L以下
微粒子数 :1mL中に0.1μm以上の微粒子5個以下
TOC :0.1〜10μg/L
【0015】
請求項3の水質評価方法は、請求項1又は2において、シリコン物質が純度99.9999%以上の高純度半導体シリコンであることを特徴とするものである。
【0016】
請求項4の水質評価方法は、請求項1ないし3のいずれか1項において、シリコン物質が水素終端化されていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項5の水質評価方法は、請求項4において、水素終端化する方法が、シリコン物質をオゾン水で洗浄した後にフッ酸で洗浄するものであることを特徴とするものである。
【0018】
請求項6の水質評価装置は、シリコン物質の粒子が充填されたカラムと、該カラムに純水からなる試料水を通水する通水手段と、通水後の試料水の溶存水素濃度を測定する手段とを有する水質評価装置において、該通水手段は、該カラムに試料水を上向流で通水することにより流動層を形成すると共に、通水速度をSV100〜10,000h−1とするものであることを特徴とするものである。
【0019】
請求項7の水質評価装置は、請求項6において、前記シリコン物質が純度99.9999%以上の高純度半導体シリコンであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、試料水をカラムに上向流にて通水して流動層を形成するので、シリコン物質と試料水との反応が早くなる。そのため、超純水中の極微量のアミン系の有機物を短時間で高精度に検出し、超純水の水質を精度よく評価することができる。
【0021】
本発明の水質評価方法及び装置は、試料水、特に超純水をシリコン物質と接触させて該超純水中の溶存水素濃度を測定することによって、この超純水がシリコンウエハ表面をエッチングする性質を有するか否かを容易に判定できるので、半導体製造上の不具合の発生防止に極めて有効である。
【0022】
本発明の評価装置を、超純水製造装置直近、製造装置内、工場への供給配管途上等、任意の位置に設置することにより、水質評価を迅速に実行することが可能となる。従って、本発明は、半導体製造上の不具合の原因及びその発生源の解明に役立ち、解決に大きく寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明方法のフロー図である。
【図2】本発明装置を組み込んだ超純水製造設備のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0025】
本発明は、シリコン物質の粒子が充填されたカラムに純水からなる試料水を通水し、通水後の試料水の溶存水素濃度を測定し、該測定値に基づいて試料水の水質を評価する水質評価方法において、該カラムに試料水を上向流で通水することにより流動層を形成すると共に、通水速度をSV100〜10,000h−1とすることを特徴とするものである。
【0026】
前述の通り、特開2007−170863には、試料水をシリコン物質と接触させ、該シリコン物質に接触後の試料水に含有される溶存水素濃度を測定し、該シリコン物質との接触によって上昇した溶存水素濃度に基づいて、試料水の水質を評価する水質評価方法が記載されている。
【0027】
この方法では、試料水中にアミン類などのようにシリコンをエッチングし易い物質が混入していると、試料水をシリコン物質に接触させた際にシリコン表面にエッチングが生じ、試料水中にシリコンが溶出する。溶出したシリコンはOHイオンもしくは、水分子と反応し、イオン状シリカ(ケイ酸イオン)(SiO2−)になると共に、水素を生成させる。この水素は溶存水素となって水中に存在する。従って、溶存水素濃度の上昇をモニタリングすることによって、試料水の水質を評価することができる。
【0028】
本発明方法に従って、シリコン物質と接触した後の純水中の溶存水素濃度を測定し、当該物質との接触前の溶存水素濃度と比較すれば、当該物質との接触によって上昇した溶存水素濃度を測定することができる。従って、定期的或いは連続的に溶存水素濃度を測定することにより、純水の水質、特にエッチング性の変動をモニタリングすることができる。また、シリコンへの接触条件を一定のものにすることで、複数種の試料水がシリコンに対して有するエッチング能力を相対的に比較対比することができる。
【0029】
本発明ではシリコンの充填量と通水量との関係が、SV=100〜10,000h−1好ましくは200〜5000h−1となるように調節し、カラム内に流動層を形成する。ここでSVとはSpace Velocity(空間速度)の略称であり、1時間あたりの通水量をシリコンの充填量で除算した値となる。例えばシリコンの充填量が120mLで通水量が60L/hであれば、SV=60×1,000/120=500h−1となる。SVが10000h−1よりも大きくなると、超純水がシリコンの充填材に接触する時間が短くなり、超純水中のアミン系有機物の検出感度が低くなる。一方、SVが100h−1を下回ると、水素濃度が飽和状態となるのに極めて長い時間(24時間以上)を要し、検出時間が長くなる。
【0030】
充填材料のシリコンとしては金属シリコンが用いられる。この金属シリコンとしては、純度が99%の金属シリコン(純度は2N、不純物を1%含む)を用いるよりは、純度6N以上のもの、例えば高純度の半導体ウエハ(99.999999999%,11N)の破砕物あるいは、太陽電池用(99.9999%,6N以上)に球状に形成されたシリコン(例えば特許第4074931号に記載のもの)を利用するのが望ましい。
【0031】
シリコン物質の大きさ(粒径)は、特に制限はないが、0.2mm〜2.0mmが良く、望ましくは0.2mm〜1.0mm程度とする。シリコン物質の形状は、特に制限はない。再溶解して、球形にしたものでも良い。
【0032】
シリコンは水素終端化されていることが好ましく、その方法としてまずオゾン水でシリコン表面の有機物を酸化処理し、次いでフッ酸で水素終端化するのが望ましい。オゾン水のオゾン濃度は1ppm以上が良く処理時間は30分程度が良い。フッ酸の濃度は0.5〜1%程度で良く、処理時間は5分程度が良い。
【0033】
シリコン物質を充填するためのカラムとしては、超純水と接触して溶出物を排出しなければ良く、アクリル製でも良く、ポリテトラフルオルエチレン、PFA等のフッ素樹脂製でも良い。
【0034】
水中の溶存水素濃度測定には、各種の溶存水素濃度計を用いることができ、例えば、隔膜電極式溶存水素濃度計が挙げられる。
【0035】
シリコン充填カラムに試料水の通水を開始した場合、試料水の水質が悪いときにはカラム流出水中の溶存水素濃度がいったん増加するが、水質が良くなると溶存水素濃度が低下する。
【0036】
なお、本発明において、超純水は次の水質を満たすものであることが好ましい。
【0037】
電気比抵抗 :18MΩ・cm以上
金属イオン濃度:5ng/L以下
残留イオン濃度:10ng/L以下
微粒子数 :1mL中に0.1μm以上の微粒子5個以下
TOC :0.1〜10μg/L
【0038】
本発明で検知対象となる、シリコン表面荒れを生じさせる不純物としては、アミン類が挙げられる。アミン類のうち特にドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミンなどのアルキル鎖が長いものは、エッチング量が多いため、本発明方法により精度よく検知することができる。
【0039】
以下、図面を参照して本発明についてさらに詳細に説明する。
【0040】
第1図は本発明方法及び装置を示すフロー図である。
【0041】
試料水は、配管1、バルブ2を通ってカラム3に上向流にて通水される。カラム3内にはシリコン物質の粒子4が充填されており、このシリコン物質の粒子4が流動層を形成するように上向流の流速が選定される。シリコン物質の粒子4と接触した水は、配管5、バルブ6、流量計7を通って系外に排出される。この水の一部は、配管7から分岐する配管8によって分取され、水素濃度計9にて水素濃度が測定された後、流量計10を通って系外に排出される。
【0042】
第2図は、半導体製造工程に適用される超純水設備を示す概略的なフロー図である。
【0043】
原水は1次純水装置11で処理された後、サブシステム12で処理されて超純水となる。この超純水は、ライン13を介して循環され、その途中で分岐してユースポイント14に送られる。
【0044】
超純水は、サブシステム12から出た直後の地点、ユースポイント14に送られる直前の地点、及びサブシステム12に戻る地点で採水用分岐配管15で分取され、第1図の構成を有した評価装置16に供給され、評価が行われる。
【0045】
以下に、本発明を第2図の超純水製造装置に適用した場合の超純水製造装置の運転方法について説明する。
【0046】
[超純水製造装置の新設時及びメンテナンス等で運転を中断した後の再開時]
<ステップ1> サブシステム12の循環ライン13からユースポイント14への供給ラインのバルブを閉めた状態で超純水製造装置の運転を開始又は再開する。評価装置16のバルブ2を開け、循環ライン13から分岐した超純水をカラム3に通水する。このとき、評価装置16における溶存水素濃度の測定値は、予め設定した設定値(許容溶存水素濃度の上限値)を超える。
【0047】
<ステップ2> その後、時間の経過と共に、評価装置16における溶存水素濃度測定値が徐々に低下する。この評価装置16における溶存水素濃度測定値が設定値を下回るまで低下したときには、循環ライン13を循環する超純水中のシリコン汚染物質の濃度が十分に低減されたと判断し、ユースポイント14への供給ラインのバルブを開ける。
【0048】
[超純水製造装置の運転を継続しながらメンテナンスを行う場合]
<ステップ1> 超純水製造装置の運転を継続しながらメンテナンスを行う場合、超純水製造装置の通常運転中に評価装置16のバルブ2を開け、循環ライン13から分岐した超純水をカラム3に通水する。評価装置16における溶存水素濃度の測定値が、予め設定した設定値を超えないことを確認しながら部材更新等のメンテナンスを進めるが、万一設定値を超えた場合には、超純水中のシリコン汚染物質の濃度が高いと判断し、ユースポイント14への供給ラインのバルブを閉じる。
【0049】
<ステップ2> メンテナンス終了後、時間の経過と共に、評価装置16における溶存水素濃度測定値が徐々に低下し、設定値を下回ったときには、循環ライン13を循環する超純水中のシリコン汚染物質の濃度が十分に低減されたと判断し、ユースポイント14への供給ラインのバルブを開ける。
【実施例】
【0050】
以下、実施例、比較例及び参考例について説明する。
【0051】
後述の水質判定時間とは、ウエハを洗浄するのに適当な溶存水素濃度にまで達する全体の時間を表わす。
【0052】
[実施例1]
内径25mm、高さ700mmのアクリル製カラム内に半導体高純度シリコンウエハ(純度:11N)を破砕し、篩分けして平均粒径約1mmとしたシリコン粒を120mL充填した。なお、シリコン粒は、充填前にオゾン水で30分洗浄した後に、1%HF溶液中に5分浸漬して水素終端化を行っている。下記水質の超純水を0.4L/minとなるように上向流で通水したところシリコン粒子は展開して流動層となった。このときのSVは200h−1であった。カラム流出水中の溶存水素濃度は、隔膜電極式溶存水素計(オービスフェア製)を利用して測定した。
【0053】
超純水の水質
電気比抵抗 :18MΩ・cm以上
金属イオン濃度:5ng/L以下
残留イオン濃度:10ng/L以下
微粒子数 :1mL中に0.1μm以上の微粒子5個以下
TOC :0.1〜10μg/L
【0054】
通水開始から6時間後には溶存水素濃度が6.45ppbまで増加したが、その10時間後に0.20ppb以下となったので、ウエハ洗浄工程への供給を開始した。水質判定に要した時間は16時間(6+10=16)であった。
【0055】
[実施例2]
太陽電池向けシリコン粒子(純度:6N、粒径0.5mm)120mLをアクリル製カラムに充填し、SVを500h−1としたこと以外は実施例1と同等の条件として試験を実施した。なお、このときの通水量は1L/minである。
【0056】
通水開始から3時間後には溶存水素濃度が5.45ppbまで増加したが、その9時間後に0.20ppb以下となったので、ウエハ洗浄工程への供給を開始した。水質判定に要した時間は12時間(3+9=12)であった。
【0057】
[実施例3]
太陽電池向けシリコン粒子30mLをアクリルカラムに充填し、SVを2000h−1としたこと以外は実施例2と同様に試験を実施した。なお、通水量は1L/minである。
【0058】
通水開始から3時間後には溶存水素濃度が3.45ppbまで増加したが、その7時間後に0.20ppb以下となったので、ウエハ洗浄工程への供給を開始した。水質判定に要した時間は10時間(3+7=10)であった。
【0059】
[実施例4]
太陽電池向けシリコン粒子20mLをアクリルカラムに充填し、SVを3000h−1としたこと以外は実施例2と同様に試験を実施した。なお、通水量は1L/minである。
【0060】
通水開始から2時間後には溶存水素濃度が2.45ppbまで増加したが、その6時間後に0.20ppb以下となったので、ウエハ洗浄工程への供給を開始した。水質判定に要した時間は8時間(2+6=8)であった。
【0061】
[比較例1]
実施例1において、超純水をカラムに下向流で通水したこと以外は同等の条件として溶存水素濃度を測定した。通水量は1L/minであり、SVは500h−1である。
【0062】
通水開始から6時間後には溶存水素濃度が6.15ppbまで増加したが、その12時間後にはまだ2.00ppbであり、溶存水素濃度が所定値以下になるにはさらに6時間程度を要した。その結果、水質判定には24時間以上を要した。そのため、ウエハ洗浄を開始するのに時間がかかり生産性が悪かった。
【0063】
[参考例1]
99.9%のシリコン粒子(純度:3N)60mLを充填し、SVを1000h−1としたこと以外は実施例1と同等の条件として試験を実施した。なお、通水量は1L/minである。
【0064】
通水開始から6時間後には溶存水素濃度が2.15ppbまで増加したが、その12時間後にはまだ1.00ppbであり、溶存水素濃度が所定値以下になるにはさらに6時間程度を要した。その結果、水質判定には24時間以上を要した。ウエハ洗浄を開始するのに時間がかかり生産性が悪かった。
【0065】
[参考例2]
99.99%のシリコン粒子(純度:4N)60mLを充填し、SVを1000h−1としたこと以外は実施例1と同等の条件として試験を実施した。なお、通水量は1L/minである。
【0066】
通水開始から6時間後には溶存水素濃度が1.75ppbまで増加したが、その12時間後にはまだ0.85ppbであり、溶存水素濃度が所定値以下になるにはさらに6時間程度を要した。その結果、水質判定には24時間以上を要した。そのため、ウエハ洗浄を開始するのに時間がかかり生産性が悪かった。
【0067】
[比較例2]
太陽電池用のシリコン粒子(純度:6N、粒径1.0mm)4mLを充填すると共に、SVを15,000h−1としたこと以外は実施例1と同等の条件として試験を実施した。なお、通水量は1L/minである。
【0068】
通水開始から6時間後には溶存水素濃度が0.75ppbまで増加したが、その12時間後にはまだ0.55ppbであり、溶存水素濃度が所定値以下になるにはさらに6時間程度を要した。その結果、水質判定には24時間以上を要し、ウエハ洗浄を開始するのに時間がかかり生産性が悪かった。
【0069】
以上より、本発明例(実施例1〜4)によると、水質判定を短時間で行うことができることが認められた。
【符号の説明】
【0070】
3 カラム
4 シリコン粒子
9 水素濃度計
14 ユースポイント
16 水質評価装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン物質の粒子が充填されたカラムに純水からなる試料水を通水し、通水後の試料水の溶存水素濃度を測定し、該測定値に基づいて試料水の水質を評価する水質評価方法において、
該カラムに試料水を上向流で通水することにより流動層を形成すると共に、通水速度をSV100〜10,000h−1とすることを特徴とする水質評価方法。
【請求項2】
請求項1において、純水が下記条件を全て満たす超純水であることを特徴とする水質評価方法。
電気比抵抗 :18MΩ・cm以上
金属イオン濃度:5ng/L以下
残留イオン濃度:10ng/L以下
微粒子数 :1mL中に0.1μm以上の微粒子5個以下
TOC :0.1〜10μg/L
【請求項3】
請求項1又は2において、前記シリコン物質が純度99.9999%以上の高純度半導体シリコンであることを特徴とする水質評価方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、シリコン物質が水素終端化されていることを特徴とする水質評価方法。
【請求項5】
請求項4において、水素終端化する方法が、シリコン物質をオゾン水で洗浄した後にフッ酸で洗浄するものであることを特徴とする水質評価方法。
【請求項6】
シリコン物質の粒子が充填されたカラムと、該カラムに純水からなる試料水を通水する通水手段と、通水後の試料水の溶存水素濃度を測定する手段とを有する水質評価装置において、
該通水手段は、該カラムに試料水を上向流で通水することにより流動層を形成すると共に、通水速度をSV100〜10,000h−1とするものであることを特徴とする水質評価装置。
【請求項7】
請求項6において、前記シリコン物質が純度99.9999%以上の高純度半導体シリコンであることを特徴とする水質評価装置。

【図1】
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【図2】
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