水路の分水機構
【課題】渇水時でも平水時同様の手段で番水によらず水を確実に一定の分水比で幹線水路側と支線水路側とに配分する。
【解決手段】水路の分水機構2は、幹線水路20から水流の一部を支線水路21へ分水する分水口4と残りの水流を下流へ通水する通水口5とに設けられ、各口4、5を通過する水流を制御する流量制御装置を備えている。この流量制御装置は、両口4、5に上下に変位可能に設けられ両口をともにほぼ同一の開度で開き、下方で水流の通過を許容し上端からの越流を阻止する潜流調整板10とこの潜流調整板10を上下に変位させ開度を調整する調整ロッド11とを備えて構成される。潜流調整板10は、両口にわたって一体で変位する矩形状の一枚板により構成され、その上下方向寸法を水路の設計水位の高さ寸法Llmtとほぼ同一または長寸としている。
【解決手段】水路の分水機構2は、幹線水路20から水流の一部を支線水路21へ分水する分水口4と残りの水流を下流へ通水する通水口5とに設けられ、各口4、5を通過する水流を制御する流量制御装置を備えている。この流量制御装置は、両口4、5に上下に変位可能に設けられ両口をともにほぼ同一の開度で開き、下方で水流の通過を許容し上端からの越流を阻止する潜流調整板10とこの潜流調整板10を上下に変位させ開度を調整する調整ロッド11とを備えて構成される。潜流調整板10は、両口にわたって一体で変位する矩形状の一枚板により構成され、その上下方向寸法を水路の設計水位の高さ寸法Llmtとほぼ同一または長寸としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幹線水路と支線水路とに流水を配分操作する水路の分水機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、灌漑水路などの開水路で水を配分するにあたり、渇水などで送水量が減少した場合、上流優先の取水が水争いの主な原因となり、配分比の確保が大きな問題となる。渇水時の水管理の手法としては、歴史的に番水が行われていた。番水の機能としては、(1)取水水位の確保、(2)水路からの浸透損失の減少および(3)ルールを守った確実な水の配分操作である。しかしながら、番水は効果的ではあるものの非常に労力が大きいという難点がある。
【0003】
そこで、従来、取水水位の確保と水路からの浸透損失の減少という上記2点を解消する手法として、水路のコンクリート化と分水ゲートとチェックゲートとの組み合わせによる分水装置が提案されている。この分水装置は、幹線水路から水流の一部を支線水路へ分水する分水口と残りの水流を下流へ通水する通水口とにそれぞれ流量制御装置を設け、各口を通過する水流を制御するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。流量制御装置は、分水口側に設けられた分水口側支線取水ゲート(分水ゲート)と、通水口側に設けられた通水口側幹線チェックゲート(チェックゲート)とにより構成され、それぞれ独立に制御されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平5−9808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術では、チェックゲートと分水ゲートとがそれぞれ独立に制御されるため、通水口を通過する通水量と分水口を通過する分水量との分水比率(分水比=分水量/通水量)の制約がない。このため「ルールを守った確実な水配分操作」ができないという課題がある。特に、分水口側の取水水位を上げるために通水口側のチェックゲートの開度を正常な値より小さくすると、支線への過剰な分水が発生し、通水口から下流への通水量が減少して下流の水不足を招く。このように、分水口側での取水水位確保と通水口から下流へ送水量確保はトレードオフとなっている。このため、渇水時には、チェックゲートがあるにも係わらず、ルールを守った操作が行われないため、労力を要する番水を行わなければならないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、簡易な構成で、渇水時でも平水時と同様に通常の管理により水を確実に一定の分水比で配分操作することができる水路の分水機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る水路の分水機構は、幹線水路から水流の一部を支線水路へ分水する分水口と残りの水流を下流へ通水する通水口とに設けられ、各口を通過する水流を制御する流量制御装置を備えた水路の分水機構において、流量制御装置を、下端が両口に上下に変位可能に設けられた潜流調整部材とこの潜流調整部材の下端を上下に変位させて保持する変位手段とを備えて構成し、両口をともにほぼ同一の高さで開き潜流調整部材の下方で水流の通過を許容するようにしたことを特徴としている。
【0008】
本発明の請求項1に係る水路の分水機構では、幹線水路から水流の一部を支線水路へ分水する分水口と残りの水流を下流へ通水する通水口とに設けられ、各口を通過する水流を制御する流量制御装置を備えた水路の分水機構において、流量制御装置を、下端が両口に上下に変位可能に設けられた潜流調整部材とこの潜流調整部材の下端を上下に変位させて保持する変位手段とを備えて構成し、両口をともにほぼ同一の高さで開き潜流調整部材の下方で水流の通過を許容するようにしたことにより、水路では、通水口を通過する通水量と分水口を通過する分水量とにより求められる分水比率が常にほぼ一定となる。分水と通水との水量の配分はこの分水比率に基づいて行われる。このため、たとえ渇水時であっても、分水比率に基づいてルールを守った水の配分が確実に行われる。
【0009】
本発明の請求項2に係る水路の分水機構は、潜流調整部材が、両口にわたって配置され上下方向寸法が水路の設計水位の高さ寸法とほぼ同一または長寸に形成され上端からの越流を阻止する潜流調整板であることを特徴としている。
【0010】
本発明の請求項2に係る水路の分水機構では、潜流調整部材は、両口にわたって配置され上下方向寸法が水路の設計水位の高さ寸法とほぼ同一または長寸に形成され上端からの越流を阻止する潜流調整板であることにより、潜流調整板の上端から越流することがなく、両口を通過する潜流のみにより、分水口下流の水量と通水口下流の水量が決定される。
【0011】
本発明の請求項3に係る水路の分水機構は、流量制御装置を分水口と通水口の一部とに設けるとともに、通水口の残りの部分には上端越流部を所望の高さに設定して越流を許容し上流側の水位を制御する水位制御装置を設けたことを特徴としている。
【0012】
本発明の請求項3に係る水路の分水機構では、流量制御装置を分水口と通水口の一部とに設けるとともに、通水口の残りの部分には上端越流部を所望の高さに設定して越流を許容し上流側の水位を制御する水位制御装置を設けたことにより、通水口上流側の水位を制御することができるので、上流側の水位が所望のレベルに達すると分水比率に基づいた配分に加え、通水口下流側への流下を優先させることができる。すなわち、通水口の残りの部分により潜流以外の余剰な流量が流下される。
【0013】
本発明の請求項4に係る水路の分水機構は、水位制御装置が、水路側壁と流量制御装置との間に上方から差し入れられて下端部が水路底面に当接され、上端越流部が潜流調整板下端部より上方に位置し上流側水位がこの上端越流部より高くなると下流側に水を越流させる堰上げ板を備えて構成されることを特徴としている。
【0014】
本発明の請求項4に係る水路の分水機構では、水位制御装置は、水路側壁と流量制御装置との間に上方から差し入れられて下端部が水路底面に当接され、上端越流部が潜流調整板下端部より上方に位置し上流側水位がこの上端越流部より高くなると下流側に水を越流させる堰上げ板を備えて構成されることにより、堰上げ板の高さにより上流側の水位がどのレベルに達すると通水口下流側への流下を優先させるか決定することができる。
【0015】
本発明の請求項5に係る水路の分水機構は、変位手段が、水路に設けられ潜流調整板の左右両端が差し入れられるガイドと、両ガイドの上方に設けられ水路に固定された支持枠と、この支持枠に螺合され下端が潜流調整板に回動可能に連結され上端が支持枠を貫通して突出するロッドと、このロッドを回動操作する操作部とを備えて構成されることを特徴としている。
【0016】
本発明の請求項5に係る水路の分水機構では、変位手段は、水路に設けられ潜流調整板の左右両端が差し入れられるガイドと、両ガイドの上方に設けられ水路に固定された支持枠と、この支持枠に螺合され下端が潜流調整板に回動可能に連結され上端が支持枠を貫通して突出するロッドと、このロッドを回動操作する操作部とを備えて構成されることにより、操作部が操作されると、ロッドを介して潜流調整板が上下に変位される。
【0017】
本発明の請求項6に係る水路の分水機構は、潜流調整部材を上下方向寸法を水路の設計水位の高さ寸法より短寸に形成した潜流調整板により形成するとともに、分水口と通水口とにわたって上端越流部を所望の高さに設定して越流を許容し上流側の水位を制御する水位制御装置を設け、この水位制御装置を、潜流調整板に左右両端を合致させて摺動自在に重ね合わされ、上下方向寸法が水路の設計水位の高さ寸法より短寸に形成され、潜流調整板と独立に上下に変位可能な越流調整板を備えて構成し、分水口または水位制御装置のうちいずれか一方に、水位制御装置から支線水路側への越流を阻止する越流阻止部を設け、変位手段を、この越流調整板を上下に変位させるとともに、越流調整板の上端越流部を潜流調整板の上端部より上方に、越流調整板の下端部を潜流調整板の下端部より上方に保持し、上流側水位がこの上端越流部より高くなると通水口側に水を越流させるよう構成したことを特徴としている。
【0018】
本発明の請求項6に係る水路の分水機構では、潜流調整部材を上下方向寸法を水路の設計水位の高さ寸法より短寸に形成した潜流調整板により形成するとともに、分水口と通水口とにわたって上端越流部を所望の高さに設定して越流を許容し上流側の水位を制御する水位制御装置を設け、この水位制御装置を、潜流調整板に左右両端を合致させて摺動自在に重ね合わされ、上下方向寸法が水路の設計水位の高さ寸法より短寸に形成され、潜流調整板と独立に上下に変位可能な越流調整板を備えて構成し、分水口または水位制御装置のうちいずれか一方に、水位制御装置から支線水路側への越流を阻止する越流阻止部を設け、変位手段を、この越流調整板を上下に変位させるとともに、越流調整板の上端越流部を潜流調整板の上端部より上方に、越流調整板の下端部を潜流調整板の下端部より上方に保持し、上流側水位がこの上端越流部より高くなると通水口側に水を越流させるよう構成したことにより、変位手段により越流調整板の上端越流部を上流側水位より上方に変位させ、潜流調整板を水路底面から所望の高さ位置でそれぞれ保持すると、ほぼ一定の分水比率で下流側幹線水路と支線水路とに潜流調整板の高さ位置に応じた水量で通水と分水との配分が行われる。変位手段により潜流調整板を水路底面から上方に保持して潜流の流出を許容し、越流調整板の上端越流部を上流側水位より下方に変位させて保持すると、分水比率に基づいて潜流調整板の開放面積に応じた水量が通水口と分水口とにそれぞれ配分されるだけでなく、それ以上の水量を通水口下流側へ流すことができる。すなわち、支線水路には、潜流のみ流入されるので、残りの流量は下流側幹線水路に流下される。このため、幹線側水路が優先される。このため、上流側水位上昇時や余裕時などに幹線水路側と支線水路側とに適切な配分操作を行うことができる。
【0019】
本発明の請求項7に係る水路の分水機構は、変位手段が、水路の側壁に設けられ潜流調整板と越流調整板との左右両端が差し入れられる各ガイドと、両ガイドの上方に設けられ水路に固定された支持枠と、この支持枠にそれぞれ螺合され下端が潜流調整板と越流調整板とに回動可能に連結され、上端がそれぞれ支持枠を貫通して突出する各ロッドと、これら各ロッドをそれぞれ回動操作する操作部とを備えて構成されることを特徴としている。
【0020】
本発明の請求項7に係る水路の分水機構では、変位手段は、水路の側壁に設けられ潜流調整板と越流調整板との左右両端が差し入れられる各ガイドと、両ガイドの上方に設けられ水路に固定された支持枠と、この支持枠にそれぞれ螺合され下端が潜流調整板と越流調整板とに回動可能に連結され、上端がそれぞれ支持枠を貫通して突出する各ロッドと、これら各ロッドをそれぞれ回動操作する操作部とを備えて構成されることにより、潜流調整板側の操作部を操作すると、ロッドを介して潜流調整板が上下に変位され、越流調整板側の操作部を操作すると、ロッドを介して越流調整板が上下に変位される。しかも、変位手段は、越流調整板の上端越流部を潜流調整板の上端部より上方に、越流調整板の下端部を潜流調整板の下端部より上方に保持するようにしているので、越流調整板の上端越流部は潜流調整板の下端部より常に上方に保持される。
【0021】
本発明の請求項8に係る水路の分水機構は、越流阻止部が、分水口の上側を覆って形成される壁であることを特徴としている。
【0022】
本発明の請求項8に係る水路の分水機構では、越流阻止部が、分水口の上側を覆って形成される壁であることにより、支線水路には、最大で分水口の開口面積に応じた流量が潜流として流入され、残りの流量は下流側幹線水路に流下される。このため、幹線側水路が優先される。
【0023】
本発明の請求項9に係る水路の分水機構は、越流阻止部が、支持枠または越流調整板のうちいずれか一方に設けられ分水口の上側を常時覆う越流阻止板であることを特徴としている。
【0024】
本発明の請求項9に係る水路の分水機構では、越流阻止部が、支持枠または越流調整板のうちいずれか一方に設けられ分水口の上側を常時覆う越流阻止板であることにより、越流阻止板は支線水路への越流を阻止するので、支線水路には、潜流のみ流入され、残りの流量は下流側幹線水路に流下される。このため、幹線側水路が優先される。
【0025】
本発明の請求項10に係る水路の分水機構は、通水口と分水口とが同一水路面に形成されることを特徴としている。
【0026】
本発明の請求項10に係る水路の分水機構では、通水口と分水口とが同一水路面に形成されるようにしたことにより、潜流調整部材を一枚の板により構成することができるので、構造が簡素化される。また、既存の水路で通水口と分水口とにそれぞれ一枚ずつ開閉扉が設けられている場合でも、これらを同期させて変位手段により上下させることにより、潜流調整部材としての機能を果たすことができるので、既存の水路にも適用することができる。
【0027】
本発明の請求項11に係る水路の分水機構は、分水口を幹線水路の側壁に形成し、通水口を分水口より下流側の幹線水路の水路面とするとともに、これら分水口と通水口とにそれぞれ潜流調整板を設け、変位手段はこれら各潜流調整板を同期させて上下に変位させることを特徴としている。
【0028】
本発明の請求項11に係る水路の分水機構では、分水口を幹線水路の側壁に形成し、通水口を分水口より下流側の幹線水路の水路面とするとともに、これら分水口と通水口とにそれぞれ潜流調整板を設け、変位手段はこれら各潜流調整板を同期させて上下に変位させることにより、通水口と分水口が同一水路面に形成されていなくとも、予め決められた分水比率に応じた通水量と分水量とを保持することができる。
【0029】
本発明の請求項12に係る水路の分水機構は、幹線水路には、一端が分水口に向かい合う他方の側壁に開口し他端が他の支線水路に接続される連絡水路が設けられ、連絡水路と通水口下流側の幹線水路との間には、連絡水路からの水流を幹線水路に導き上流側の水位を制御する水位制御装置が設けられることを特徴としている。
【0030】
本発明の請求項12に係る水路の分水機構では、幹線水路には、一端が分水口に向かい合う他方の側壁に開口し他端が他の支線水路に接続される連絡水路が設けられ、連絡水路と通水口下流側の幹線水路との間には、連絡水路からの水流を幹線水路に導き上流側の水位を制御する水位制御装置が設けられるようにしたことにより、連絡水路により上流側幹線水路の水流の一部を水位制御装置により下流側幹線水路に迂回させることができるので、下流側幹線水路への通水を優先させることができる。
【0031】
本発明の請求項13に係る水路の分水機構は、連絡水路と他の支線水路との間には、余水吐が形成されるとともに、水位制御装置が制御する最高水位を余水吐の高さより低く設定したことを特徴としている。
【0032】
本発明の請求項13に係る水路の分水機構では、連絡水路と他の支線水路との間には、余水吐が形成されるとともに、水位制御装置が制御する最高水位を余水吐の高さより低く設定したことにより、余裕時には、下流側幹線水路側に流入する水量が増大しても余水吐を通じて他の支線水路に排出させることができる。
【0033】
本発明の請求項14に係る水路の分水機構は、分水口を通水口と高さを異ならせて形成し、上流側水位が異なる高さの差に達するまで、一方の口への流水の通過を優先させるようにしたことを特徴としている。
【0034】
本発明の請求項14に係る水路の分水機構では、分水口を通水口と高さを異ならせて形成し、上流側水位が異なる高さの差に達するまで、一方の口への流水の通過を優先させるようにしたことにより、分水口底部が通水口底部より高い位置にあり、上流側水位が分水口の底より高い場合、各潜流調整部材からの潜流のみにより分水と通水が行われるので、分水比は予め設定された一定の値となる。他方、上流側水位が分水口の底部より低い場合、支線水路には、分水は行われず、下流側幹線水路への通水が優先される。このため、幹線水路の水路面に対して分水口の配置が多様であっても、上流側水位が分水口の底部以上で予め設定された一定の分水比を保持して分水と通水とを行うことができる。そして、上流側水位が分水口の底部以下では、下流側幹線水路への通水を優先させる。
【0035】
本発明の請求項15に係る水路の分水機構は、潜流調整部材により支線水路へ分水される分水量と下流側幹線水路へ流下する通水量との比により求められる分水比が、潜流調整部材によりそれぞれ開口される両口の開口面積比に基づいて設定されることを特徴としている。
【0036】
本発明の請求項15に係る水路の分水機構では、潜流調整部材により支線水路へ分水される分水量と下流側幹線水路へ流下する通水量との比により求められる分水比が、潜流調整部材によりそれぞれ開口される両口の開口面積比に基づいて設定されることにより、通水口と分水口との形状がたとえ非矩形状の相似形であっても潜流調整部材の上下変位の量と開口面積の増減とが比例しさえすれば、通水口を通過する通水量と分水口を通過する分水量とにより求められる分水比率が常にほぼ一定となり、分水と通水との水量の配分はこの分水比率に基づいて行われる。
【0037】
本発明の請求項16に係る水路の分水機構は、潜流調整部材により支線水路へ分水される分水量と下流側幹線水路へ流下する通水量がそれぞれ、流量係数に基づいて補正されることを特徴としている。
【0038】
本発明の請求項16に係る水路の分水機構では、潜流調整部材により支線水路へ分水される分水量と下流側幹線水路へ流下する通水量はそれぞれ、流量係数に基づいて補正されるようにしたことにより、分水量と通水量とを予め正確に求めることができる。
【0039】
本発明の請求項17に係る水路の分水機構は、潜流調整部材には、通水口側の下端部が切り欠かれ、常時潜流を許容する切り欠き部が形成されることを特徴としている。
【0040】
本発明の請求項17に係る水路の分水機構では、潜流調整部材には、通水口側の下端部が切り欠かれ、常時潜流を許容する切り欠き部が形成されるようにしたことにより、通水口側と分水口側とのうち、切り欠き部が形成された側の水路には、渇水・平水時でも、常時、潜流が確保される。このため、分水比に差を設けることができる。
【0041】
本発明の請求項18に係る水路の分水機構は、通水口には、支持ガイドを介して複数の潜流調整板を並べて配置したことを特徴としている。
【0042】
本発明の請求項18に係る水路の分水機構では、通水口には、支持ガイドを介して複数の潜流調整板を並べて配置したことにより、水路幅の広い大規模な幹線水路であっても、潜流調整板を配置することができ、一定の分水比率に基づいて水の配分が行われる。
【0043】
本発明の請求項19に係る水路の分水機構は、隣り合う潜流調整板には、上下に接離可能に支持され、一方の側の潜流調整板が上昇すると他方の側の潜流調整板を押し上げてともに上昇し、一方の側の潜流調整板が下降すると他方の側の潜流調整板が連動して下降する支持機構を設けるとともに、変位手段を取水口から最遠の潜流調整板から最も離れた取水口の最近傍の潜流調整板に設け、変位手段が取水口の最近傍の潜流調整板を上方に変位させると、隣り合う他方の潜流調整板から取水口の最遠の潜流調整板まで順に上方に変位させて連動させ、変位手段が取水口の最近傍の潜流調整板を下方に変位させると、隣り合う他方の潜流調整板から取水口から最遠の潜流調整板まで順次連動して降下させるよう構成したことを特徴としている。
【0044】
本発明の請求項19に係る水路の分水機構では、隣り合う潜流調整板には、上下に接離可能に支持され、一方の側の潜流調整板が上昇すると他方の側の潜流調整板を押し上げてともに上昇し、一方の側の潜流調整板が下降すると他方の側の潜流調整板が連動して下降する支持機構を設けるとともに、変位手段を取水口から最遠の潜流調整板から最も離れた取水口の最近傍の潜流調整板に設け、変位手段が取水口の最近傍の潜流調整板を上方に変位させると、隣り合う他方の潜流調整板から取水口の最遠の潜流調整板まで順に上方に変位させて連動させ、変位手段が取水口の最近傍の潜流調整板を下方に変位させると、隣り合う他方の潜流調整板から取水口から最遠の潜流調整板まで順次連動して降下させるよう構成したことにより、複数の潜流調整板は同期して上下に変位される。
【0045】
本発明の請求項20に係る水路の分水機構は、支持機構が、一端が潜流調整板に取り付けられ、延長端が取水口から最遠の潜流調整板に近い側の隣の潜流調整板に及んでこの延長端に載置面が形成された支持部材と、この隣の潜流調整板に取り付けられ、下面がこれら両潜流調整板の最下端位置で支持部材の延長端載置面に載置される当接部材とを備えて構成されることを特徴としている。
【0046】
本発明の請求項20に係る水路の分水機構では、支持機構は、一端が潜流調整板に取り付けられ、延長端が取水口から最遠の潜流調整板に近い側の隣の潜流調整板に及んでこの延長端に載置面が形成された支持部材と、この隣の潜流調整板に取り付けられ、下面がこれら両潜流調整板の最下端位置で支持部材の延長端載置面に載置される当接部材とを備えて構成されることにより、変位手段側の潜流調整板が上方に押し上げられると、この潜流調整板の支持部材は隣の潜流調整板の当接部材を押し上げて隣の潜流調整板を同期させて上方に変位させる。変位手段側の潜流調整板が下方に降下されると、支持部材は一体に降下するとともに、隣の潜流調整板は自重により降下する。このため、互いに隣り合う潜流調整板は同期して上下に変位される。
【0047】
本発明の請求項21に係る水路の分水機構は、幹線水路の側壁に形成された分水口側の潜流調整板と、通水口側に設けられ分水口に近い取水口の最近傍の潜流調整板とを連結機構により連結したことを特徴としている。
【0048】
本発明の請求項21に係る水路の分水機構では、幹線水路の側壁に形成された分水口側の潜流調整板と、通水口側に設けられ分水口に近い取水口の最近傍の潜流調整板とを連結機構により連結したことにより、通水口側の潜流調整板と分水口側の潜流調整板とは同期して上下に変位される。
【0049】
本発明の請求項22に係る水路の分水機構は、分水口側潜流調整板が通水口側潜流調整板より上方に変位することを規制する規制機構を設けたことを特徴としている。
【0050】
本発明の請求項22に係る水路の分水機構では、分水口側潜流調整板が通水口側潜流調整板より上方に変位することを規制する規制機構を設けたことにより、分水口側潜流調整板は通水口側潜流調整板より上方への変位が規制され、必ず下方側に位置するので、分水口側への過剰な分水が避けられる。
【0051】
本発明の請求項23に係る水路の分水機構は、規制機構を、各潜流調整板側にそれぞれストッパを一部を上下に重複させて設け、分水口側の潜流調整板側ストッパを通水口側の潜流調整板側ストッパより下方に配置して構成したことを特徴としている。
【0052】
本発明の請求項23に係る水路の分水機構では、規制機構を、各潜流調整板側にそれぞれストッパを一部を上下に重複させて設け、分水口側の潜流調整板側ストッパを通水口側の潜流調整板側ストッパより下方に配置して構成したことにより、簡素な構成で分水口側潜流調整板は通水口側潜流調整板より上方へ変位が規制される。
【0053】
本発明の請求項24に係る水路の分水機構は、変位手段を、潜流調整板間に設けられ潜流調整板の左右両端が差し入れられる支持ガイドと、支持ガイドの上方に設けられ水路に固定された支持枠と、潜流調整板毎に支持枠に取り付けられ潜流調整板を同期させて上下に変位させる油圧シリンダと、これら油圧シリンダに配管を介して圧油を供給する油圧供給機構とを備えて構成したことを特徴としている。
【0054】
本発明の請求項24に係る水路の分水機構では、変位手段を、潜流調整板間に設けられ潜流調整板の左右両端が差し入れられる支持ガイドと、支持ガイドの上方に設けられ水路に固定された支持枠と、潜流調整板毎に支持枠に取り付けられ潜流調整板を同期させて上下に変位させる油圧シリンダと、これら油圧シリンダに配管を介して圧油を供給する油圧供給機構とを備えて構成したことにより、油圧供給機構から各油圧シリンダに所定圧の油圧が導入されると、各潜流調整板は同期して所定の高さに変位される。このため、制御の自動化を図ることができる。
【0055】
本発明の請求項25に係る水路の分水機構は、変位手段を、潜流調整板間に設けられ潜流調整板の左右両端が差し入れられる支持ガイドと、支持ガイドの上方に設けられ水路に固定された支持枠と、上下に形成された雄ねじ部を同一水路面上に並んで配置された潜流調整板の雌ねじ部に螺合させ、上端にウォームホイールが取り付けられたねじロッドと、支持枠に軸受けを介して回動自在に支持され、ギヤ部がそれぞれねじロッドのウォームホイールに噛合するとともに、一端に操作ホイールが取り付けられたウォームシャフトとを備えて構成したことを特徴としている。
【0056】
本発明の請求項25に係る水路の分水機構では、変位手段を、潜流調整板間に設けられ潜流調整板の左右両端が差し入れられる支持ガイドと、支持ガイドの上方に設けられ水路に固定された支持枠と、上下に形成された雄ねじ部を同一水路面上に並んで配置された潜流調整板の雌ねじ部に螺合させ、上端にウォームホイールが取り付けられたねじロッドと、支持枠に軸受けを介して回動自在に支持され、ギヤ部がそれぞれねじロッドのウォームホイールに噛合するとともに、一端に操作ホイールが取り付けられたウォームシャフトとを備えて構成したことにより、操作ホイールが操作されると、ウォームシャフトの回転量に応じて各ねじロッドが同じ方向に同じ量回動され、各潜流調整板が同期してきめ細かく変位される。
【0057】
本発明の請求項26に係る水路の分水機構は、変位手段を、一端が潜流調整板上端部の左右両側にそれぞれ連結されたワイヤと、ワイヤの他端を連結して引き出し自在に巻き取るとともに同一軸心上に配置されたプーリと、これら各プーリの互いに向かい合う一側面から延びる軸同士を連結してこれら両軸を同期させる潜流調整板水平同期手段と、プーリを正逆に回動させる回動操作手段とを備えて構成したことを特徴としている。
【0058】
本発明の請求項26に係る水路の分水機構では、変位手段を、一端が潜流調整板上端部の左右両側にそれぞれ連結されたワイヤと、ワイヤの他端を連結して引き出し自在に巻き取るとともに同一軸心上に配置されたプーリと、これら各プーリの互いに向かい合う一側面から延びる軸同士を連結してこれら両軸を同期させる潜流調整板水平同期手段と、プーリを正逆に回動させる回動操作手段とを備えて構成したことにより、回動操作手段によりプーリを正逆に回動させると、プーリの回動に応じてワイヤが潜流調整板上端部の左右両側を上下動させる。このとき、各プーリは潜流調整板水平同期手段により軸を介して同期されるので、ワイヤは潜流調整板上端部の左右両側を同期させて上下動させる。
【0059】
本発明の請求項27に係る水路の分水機構は、支持ガイドを介して潜流調整板を複数設けるとともに、変位手段を、隣接する潜流調整板のプーリのうち他方の潜流調整板の近接したプーリの他方の側面からプーリと一体回動する回動伝達手段を引き出し、これら回動伝達手段同士を連結してこれら回動伝達手段を同期させる全潜流調整板水平同期手段を設けて構成したことを特徴としている。
【0060】
本発明の請求項27に係る水路の分水機構では、支持ガイドを介して潜流調整板を複数設けるとともに、変位手段を、隣接する潜流調整板のプーリのうち他方の潜流調整板の近接したプーリの他方の側面からプーリと一体回動する回動伝達手段を引き出し、これら回動伝達手段同士を連結してこれら回動伝達手段を同期させる全潜流調整板水平同期手段を設けて構成したことにより、複数の潜流調整板は同期して上下動される。
【0061】
本発明の請求項28に係る水路の分水機構は、回動伝達手段を、近接したプーリの他方の側面からそれぞれ引き出される回動伝達軸により構成し、潜流調整板水平同期手段を、軸に連結された歯車同士を噛合させた第1のコネクタにより、全潜流調整板水平同期手段を、回動伝達軸に連結された歯車同士を噛合させた第2のコネクタによりそれぞれ構成したことを特徴としている。
【0062】
本発明の請求項28に係る水路の分水機構では、回動伝達手段を、近接したプーリの他方の側面からそれぞれ引き出される回動伝達軸により構成し、潜流調整板水平同期手段を、軸に連結された歯車同士を噛合させた第1のコネクタにより、全潜流調整板水平同期手段を、回動伝達軸に連結された歯車同士を噛合させた第2のコネクタによりそれぞれ構成したことにより、同期をとった上で潜流調整板の配置の自由度を高くすることができる。
【0063】
本発明の請求項29に係る水路の分水機構は、分水口を幹線水路の側壁に形成し、通水口を分水口より下流側の幹線水路の水路面とするとともに、これら分水口と通水口とにそれぞれ潜流調整板を設けたことを特徴としている。
【0064】
本発明の請求項29に係る水路の分水機構では、分水口を幹線水路の側壁に形成し、通水口を分水口より下流側の幹線水路の水路面とするとともに、これら分水口と通水口とにそれぞれ潜流調整板を設けたことにより、潜流調整板が配置される角度の変化に対する自由度を高くすることができる。
【0065】
本発明の請求項30に係る水路の分水機構は、第2のコネクタを、複数のコネクタにより構成したことを特徴としている。
【0066】
本発明の請求項30に係る水路の分水機構では、第2のコネクタを、複数のコネクタにより構成したことにより、第2のコネクタの小型化が可能となる。
【0067】
本発明の請求項31に係る水路の分水機構は、回動伝達手段を、近接したプーリの他方の側面からそれぞれ引き出される弦巻ばねにより構成し、全潜流調整板水平同期手段を、各弦巻ばねの他端に連結された歯車同士を噛合させた第2のコネクタにより構成したことを特徴としている。
【0068】
本発明の請求項31に係る水路の分水機構では、回動伝達手段を、近接したプーリの他方の側面からそれぞれ引き出される弦巻ばねにより構成し、全潜流調整板水平同期手段を、各弦巻ばねの他端に連結された歯車同士を噛合させた第2のコネクタにより構成したことにより、同期をとりやすくなる。
【0069】
本発明の請求項32に係る水路の分水機構は、水位制御装置が、下端が水路側壁と流量制御装置との間で上下に変位可能に設けられ上端からの越流を阻止するとともに下方で水流の通過を許容する水位制御用潜流板とこの水位制御用潜流板の下端を上下に変位させて保持する水位制御用潜流板変位装置とを備えて構成されることを特徴としている。
【0070】
本発明の請求項32に係る水路の分水機構では、水位制御装置は、下端が水路側壁と流量制御装置との間で上下に変位可能に設けられ上端からの越流を阻止するとともに下方で水流の通過を許容する水位制御用潜流板とこの水位制御用潜流板の下端を上下に変位させて保持する水位制御用潜流板変位装置とを備えて構成されるようにしたことにより、水位制御用潜流板の下端位置により上流側の水位がどのレベルに達すると通水口下流側への流下を優先させるか決定することができる。
【発明の効果】
【0071】
本発明に係る水路の分水機構は、幹線水路から水流の一部を支線水路へ分水する分水口と残りの水流を下流へ通水する通水口とに設けられ、各口を通過する水流を制御する流量制御装置を備えた水路の分水機構において、流量制御装置を、下端が両口に上下に変位可能に設けられた潜流調整部材とこの潜流調整部材の下端を上下に変位させて保持する変位手段とを備えて構成し、両口をともにほぼ同一の高さで開き潜流調整部材の下方で水流の通過を許容するようにしたので、簡単な構成で、渇水・平水時にも確実に一定の分水比で配分操作することができる。その結果、番水のような水管理労力を削減することによりコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、本発明の第1の実施例に係る水路の分水機構を示す平面図である。(実施例1)
【図2】図2は、図1の分水機構のII−II線縦断面図である。
【図3】図3は、図1の分水機構のIII−III線縦断面図である。
【図4】図4は、図1の分水機構のIV−IV線縦断面図である。
【図5】図5は、図1の分水機構を上流側から見た正面図である。
【図6】図6は、図1の分水機構において、渇水時および平水時と余裕時とにおける支線水路と下流側幹線水路との取り込む水量をそれぞれ比較して示す表である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施例に係る水路の分水機構を示す一部破断斜視図である。(実施例2)
【図8】図8は、図7の分水機構の平面図である。
【図9】図9の(A)ないし(D)はそれぞれ、上流側幹線水路の水位に対する潜流調整板と越流調整板との上下方向位置を示す説明図である。
【図10】図10は、図7の分水機構において、潜流調整板と越流調整板との上下方向位置および支線水路と下流側幹線水路との取り込む水量をそれぞれ比較して示す表である。
【図11】図11は、本発明の第3の実施例に係る水路の分水機構を示す一部破断斜視図である。(実施例3)
【図12】図12は、図11の分水機構の平面図である。
【図13】図13は、図12のXIII−XIII線縦断面図である。
【図14】図14は、図11の分水機構において、潜流調整板と越流調整板との上下方向位置および支線水路と下流側幹線水路との取り込む水量をそれぞれ比較して示す表である。
【図15】図15は、本発明の第4の実施例に係る水路の分水機構を示す平面図である。(実施例4)
【図16】図16は、図15の分水機構の要部を示す説明図である。
【図17】図17の(A)および(B)はそれぞれ、図15の分水機構の斜視図およびゲートの上から水を越流させるゲート構造の一例を模式的に示す説明図である。
【図18】図18は、本発明の第5の実施例に係る水路の分水機構の概念を示す説明図である。(実施例5)
【図19】図19は、図18の分水機構の要部を示す説明図である。
【図20】図20は、図18の分水機構の平面図である。
【図21】図21は、図18の分水機構を上流側から見た一部破断断面図である。
【図22】図22は、図20の分水機構のXXII−XXII線縦断面図である。
【図23】図23の(A)、(B)はそれぞれ、本発明の特徴を比較して示すモデルを示し、(A)は図1に示す本発明の第1の実施例に係る水路の分水機構の構成に基づいて作成されたモデルで、(B)は通水口の一部と分水口とにそれぞれ独立に上下に変位する潜流調整板を設け、通水口の他の部位に越流調整板を設けた従来例のモデルを示す。(実施例6)
【図24】図24は、幹線水路の流下比(横軸)と支線水路の取水比(縦軸)とについて、図23の本発明のモデルに基づき本発明の流量制御装置が操作可能な範囲を示すグラフである。
【図25】図25は、図23の従来のモデルに基づき、設計最大送水量が流入する際、従来の流量制御装置が操作可能な範囲を示すグラフである。
【図26】図26は、図23の従来のモデルに基づき、送水量が設計最大送水量の60%で、かつ支線水路の最大通水量より少ない場合、従来の流量制御装置が操作可能な範囲を示すグラフである。
【図27】図27は、図23の従来のモデルに基づき、送水量が0以上設計最大送水量以下で、かつ支線水路の最大通水量より少ない場合、従来の流量制御装置が操作可能な範囲を示すグラフである。
【図28】図28は、図23の従来のモデルに基づき、送水量が支線水路の最大通水量以上設計最大送水量以下で、かつ支線水路の通常通水量以上最大通水量以下の場合、従来の流量制御装置が操作可能な範囲を示すグラフである。
【図29】図29は、幹線水路の0から最大までの送水量(横軸)と支線水路の0から最大までの取水量(横軸)とについて本発明のモデルと従来のモデルとによる操作可能な範囲の違いを示すグラフである。
【図30】図30の(A)、(B)はそれぞれ、本発明の第7の実施例に係る水路の分水機構を示すもので、上流側から見た説明図である。(実施例7)
【図31】図31は、本発明の第8の実施例に係る水路の分水機構を示す平面図である。(実施例8)
【図32】図32は、図31の水路の分水機構の要部を下流側から見た概念図である。
【図33】図33の(A)ないし(C)はそれぞれ、本発明の第8の実施例の第1の変形例を示すもので、支持機構としてのストッパを示す斜視図、正面図および平面図である。(実施例9)
【図34】図34は、本発明の第8の実施例の第2の変形例に係る水路の分水機構を示す斜視図である。(実施例10)
【図35】図35は、本発明の第8の実施例の第3の変形例に係る水路の分水機構を示す斜視図である。(実施例11)
【図36】図36は、本発明の第9の実施例に係る水路の分水機構を示す平面図である。(実施例12)
【図37】図37は、図37の水路の分水機構の要部を拡大して示す説明図である。
【図38】図38の(A)、(B)はそれぞれ、第9の実施例に係る水路の分水機構の油圧操作の例を示す説明図である。
【図39】図39は、本発明の第10の実施例に係る水路の分水機構を上流から見た説明図である。(実施例13)
【図40】図40は、図39の水路の分水機構の要部を示す説明図である。
【図41】図41は、本発明の第11の実施例に係る水路の分水機構の概念図である。(実施例14)
【図42】図42の(A)、(B)はそれぞれ、本発明の第12の実施例に係る水路の分水機構の概念図である。(実施例15)
【図43】図43は、本発明の第13の実施例に係る水路の分水機構の概念図である。(実施例16)
【図44】図44は、本発明の第13の実施例の変形例に係る水路の分水機構の概念図である。(実施例17)
【図45】図45は、本発明の第14の実施例に係る水路の分水機構の概念図である。(実施例18)
【図46】図46は、本発明の第15の実施例に係る水路の分水機構の概念図である。(実施例19)
【図47】図47は、本発明の第16の実施例に係る水路の分水機構の概念図である。(実施例20)
【発明を実施するための形態】
【0073】
渇水時でも平水時でも同様に水を確実に一定の分水比で幹線水路と支線水路とに配分操作するという目的を、幹線水路から水流の一部を支線水路へ分水する分水口と残りの水流を下流へ通水する通水口とに設けられ、各口を通過する水流を制御する流量制御装置を備えた水路の分水機構であって、流量制御装置を、両口に上下に変位可能に設けられる一枚の潜流調整板とこの潜流調整板を上下に変位させて保持する変位装置とを備えて構成し、両口をともにほぼ同一の開度で開き下方で水流の通過を許容し上端からの越流を阻止するようにしたことにより実現した。
【実施例1】
【0074】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。図1は、本発明の第1の実施例に係る水路の分水機構を示す平面図である。本実施例に係る水路の分水機構2は、図1および図5に示すように、コンクリート製の水路3は、上流側幹線水路20と支線水路21と下流側幹線水路22とを有し、支線水路21と下流側幹線水路22との入口にはそれぞれ、同一水路面に分水口4と通水口5とが形成される。なお、図中、同一符号は同一または相当部分を示す。
【0075】
水路3には、河川を取水・送水施設として水路代わりに利用している場合も含む。用語は相対的なヒエラルキーを表し、状況で指し示す対象が異なる。このため、以下のように用語を定義付けする。幹線水路から支線水路への分水では、分水前の幹線水路流量を「送水量」、支線水路への取水量を「分水量」、取水後の幹線水路流量を「通水量」、幹線水路を「幹線」、支線水路を「支線」と呼ぶ。支線水路から3次水路への分水では、分水前の支線水路流量を「送水量」、3次水路への取水量を「分水量」、取水後の支線水路流量を「通水量」、支線水路を「幹線」、3次水路を「支線」と呼ぶ。3次水路から末端水路への分水では、分水前の3次水路流量を「送水量」、末端水路への取水量を「分水量」、取水後の3次水路流量を「通水量」、3次水路を「幹線」、末端水路を「支線」と呼ぶ。「直接分水工」とは、幹線水路に支線水路でなく、3次水路や末端水路への分水口が設置されている場合、または、支線水路に3次水路でなく、末端水路への分水口が設置されている場合を指す。「取水比」とは、分水量を送水量で割った値(取水比=分水量/送水量)である。「分水比」とは、分水量を通水量で割った値(分水比=分水量/通水量)である。「流下比」とは、通水量を送水量で割った値(流下比=通水量/送水量)である。「ゲート開度比」とは、ゲートにより開かれた分水口の開口面積をゲートにより開かれた通水口の開口面積で割った値(ゲート開度比=ゲートにより開かれた分水口の開口面積/ゲートにより開かれた通水口の開口面積)である。
【0076】
また、本明細書中、平水時とは、各支線水路等の期別の需要量である計画取水量がほぼ充足できる幹線水路最上流端の取水量が確保されている期間をいい、渇水時とは、各支線水路等の期別の需要量である計画取水量が充足されていないが、追加の取水を幹線水路最上流部で河川から行うことができず、取水不足の状況が続いている期間をいい、余裕時とは、各支線水路の期別の需要量である計画取水量がほぼ充足できる幹線水路最上流端の取水量が確保されている状態で、支線水路で必要な取水量が一時的に減少し、送水量に余裕が生じている状態をいい、具体的には、豪雨時の支線水路の取水減少も含まれる。すなわち、水路では、河川流量のような豊水量と平水量の違いはなく、多くの取水は期別の水利権許可の最大値に近い値で取水される。この量を本明細書では、平水時の水量と呼ぶ。また、渇水は、河川から水路最上量流端への取水量が小さく、なおかつ、河川流量が少なくより多く取水できない状況が続く状態を指す。河川でいう豊水は洪水時で流量が多いときをいい、水路でいう余裕時は、流量が多いのではなく、支線水路の取水量が少ないときをいう。
【0077】
なお、ゲートの流れは、潜り流出と自由流出に分かれるが、山間部等で水路勾配が急峻な場合を除けば、ゲートは潜り流出で利用されている場合が圧倒的多数である。このため、以下では、潜り流出を念頭においた説明をする。自由流出の場合には、下流水位を、ゲート開口部の中央の標高、あるいは近似的には、ゲート敷高に置き換えればよい。
【0078】
水路3の分水口4には、水路3の一方の側壁3Aに支柱6Aが、通水口5には、水路3の他方の側壁3Bに支柱6Bが、それぞれ水路3の幅方向を一致させて設置される。さらに、通水口5側には、これら支柱6A、6B間で他方の側壁3Bの近傍に支柱6Cが幅方向を一致させて設置される。分水壁7の上流側端部には、並んで立設された支柱6A、6C、6Bより下流側に後退して支柱6Dが設置される。支柱6A、6Cおよび支柱6B、6Cにはそれぞれ、互いに向き合う面に図示しない縦溝(ガイド)が形成される。支柱6A〜6Cの頂部には、上枠6Eが取り付けられるようになっており、これら支柱6A〜6Cと上枠6Eとにより支持枠を構成している。第1のゲート(水門)6は、支柱6A〜6Dのうち、一方の側壁3Aの支柱6Aと他方の側壁3近傍の支柱6Cと分水壁7の支柱6Dとを備えて構成される。第2のゲート(水門)8は、他方の側壁3Bの支柱6Bと他方の側壁3近傍の支柱6Cとを備えて構成される。支柱6A、6D間が分水口4の開口幅寸法Wd1、支柱6C、6D間が通水口5の開口幅寸法Wp1となっている。
【0079】
第1のゲート6は、一枚板からなる矩形状の潜流調整板(潜流調整部材)10を備え、この潜流調整板10は、支柱6A、6C間に上下に変位可能に差し入れられる。水路のゲートが通常に使用されている潜り流出の場合、潜流調整板が用いられる。潜流調整板10の横幅寸法W1は両端が両支柱6A、6Cの縦溝(図示せず)に嵌め入れられる寸法となっている。潜流調整板10の縦寸法(上下方向寸法)H1は、水路3の設計水位の高さ寸法Llmtとほぼ同じか長寸に形成され、水平な下端面10Aが水路3の水路底面に接して、潜流調整板10が閉じられても上端部10Bからの越流を阻止するようになっている。潜流調整板10と上枠6Eとの間には、調整ロッド11が設けられる。調整ロッド11は上端が上枠6Eを貫通し、下端が潜流調整板10の上端部10Bに回動自在に連結される。調整ロッド11は、上側がねじ切りされ、上枠6Eに形成されたねじ孔に螺合し、回動操作により潜流調整板10を上下動させるようになっている。調整ロッド11の上端は角形に形成され、この上端角形部に工具(操作部)を嵌め入れて回動操作するようになっている。支柱6A、6Cおよび上枠6E(支持枠)と調整ロッド11とにより潜流調整板10を上下動させる変位手段(変位装置)が構成される。また、潜流調整板10の下流側の面10Cは、分水壁7の支柱6Dの支持部(図示せず)に当接して支持される。このため、潜流調整板10の上流側面10Dにかかる圧力は、支柱6A、6C、6Dにより支持されるようになっている。第1のゲート6は、支柱6A、6C、6Dと上枠6Eと潜流調整板10と調整ロッド11とにより、分水口4と通水口5の一部とを、ともに同一の開度で開き下方で水流の通過を許容し上端からの越流を阻止して、分水口4と通水口5の一部を通過する水流を制御するようになっている。
【0080】
なお、潜流調整板10の開度について、開度0%とは、潜流調整板10により分水口4と通水口5とを完全に閉じて潜流を生じさせない状態をいう。開度100%とは、潜流調整板10の下端面10Aが上流側の実際の水位(上流側幹線水路20の水位)とほぼ同一高さに位置して上流側幹線水路20からの流水を潜流調整板10の面でブロックすることなく全量円滑に下流側に流下させる状態をいう。潜流調整板10は潜流を生じさせる機能を果たすものであり、本実施例では、潜流調整板10の開度、すなわち、第1のゲート6の開度は、上流側水位に対する水路底面3Cからの潜流調整板下端面10Aの高さの比率により決定される。たとえば、開度50%ならば、潜流調整板10の下端面10Aが上流側水位の半分の高さに位置していることになる。
【0081】
第2のゲート8は、一枚板からなる矩形状の堰上げ板(越流板)12を備え、この堰上げ板12は、通水口5の一部である支柱6B、6C間に差し入れられる。堰上げ板12は、複数の板を支柱6B、6Cの縦溝(図示せず)に嵌め入れ、上下に重ねて水路底面からの高さH2を調整できるようになっている。この堰上げ板12は、最大高さ寸法が水路3の設計水位の高さ寸法Llmtを超えないようになっており、上端越流部12Aから下流側に水を越流させ上端越流部12Aの上下位置に応じて上流側の水位を調整するようになっている。この第2のゲート8は、支柱6B、6Cと堰上げ板12とにより上流側の水位を制御する水位制御装置を構成している。こうして、第1のゲート6と第2のゲート8とにより、分水口4と通水口5とを通過する水流を制御する流量制御装置が構成される。なお、水位制御装置は、支柱6B、6Cと堰上げ板12とにより構成される第2のゲート8に代えて、図示しない開閉板を上下に開閉させるスルースゲート(図示せず)により構成してもよい。
【0082】
分水壁7は、水路3の側壁3Aに沿って下流に延びて支線水路(支線)21を構成し、後端は側壁3Aに接続され、この支線水路21は水路3から分岐するようになっている。分水壁7と水路3の他方の側壁3Bとの間は、分水後の幹線水路22となっている。符号20は、分水前の幹線水路である。これら分水口4と通水口5とに設けられた第1第2のゲート6、8より上流側の幹線水路20には、余水吐23が設けられる。
【0083】
第1のゲート6は、上述のように潜流調整板10を調整ロッド11により上下させ、水路3の平坦な水路底面3Cと潜流調整板10の下端面10Aとの間に形成される開口から分水口4側の支線水路21と通水口5側の幹線水路22とに通水させるようになっている。すなわち、水路3の水路底面3Cと潜流調整板10の下端面10Aとの間の高さ寸法をH3とすると、分水口4側の開口Adでは、開口幅寸法Wd1×高さ寸法H3が水流の開口面積Ad1(Ad1=Wd1×H3)となり、通水口5側の開口Apでは、開口幅寸法Wp1×高さ寸法H3が水流の開口面積Ap1(Ap1=Wp1×H3)となる。このとき、分水口4側の支柱6A、6D間の開口幅寸法Wd1および通水口5側の支柱6C、6D間の開口幅寸法Wp1とも、予め設計プランに応じて決定され一定なので、潜流調整板10の下端面10Aの高さH3が通過する水流の流量を決定する変数となる。しかも、潜流調整板10は両口4、5にわたって一体に変位するので、分水口4側開口面積Ad1と通水口5側開口面積Ap1は、高さH3に応じて常に一定の比率で変化する。つまり、第2のゲート8の越流を阻止したとすると、分水比(分水比=分水量/通水量)または取水比(取水比=分水量/送水量)は、潜流調整板10が上下方向のどの位置にあっても、常に一定となる。そして、ゲート開度比(ゲート開度比=ゲートにより開かれた分水口の開口面積/ゲートにより開かれた通水口の開口面積)も常に一定となる。このため、第2のゲート8の越流を阻止すれば、潜流調整板10をどの上下位置に変位させても、支線水路21の取水流量と幹線水路22の通水流量との分水比率(または取水比率)を一定にし、機械的に配分操作することができるようになっている。
【0084】
これに対し、第2のゲート8の堰上げ板12は、第1のゲート6が支線水路21と幹線水路22との分水比率を一定にし、恣意性を排除して機械的に配分操作するのに対し、幹線水路22の通水量を分水比率に基づく水量より多くして幹線水路22を優先させる役割を果たす。すなわち、図5に示すように、上流側幹線水路20の水位Lf1(Lf1は渇水時または平水時の水位)が、潜流調整板10の下端面10Aのレベルより上方に達し、しかも、第2のゲート8の堰上げ板12の上端越流部12Aの高さH2がこの水位Lf1より高いと(H3<Lf1<H2)、すなわち、渇水時や平水時には、幹線水路20側の水は、堰上げ板12によりブロックされて、上述のように、支線水路21側の取水流量と幹線水路22側の通水流量とは予め決められた一定の分水比率(または取水比率)で配分される。ところが、第2のゲート8の堰上げ板12の上端越流部12Aの高さH2が余裕時の水位Lf2より低いと(H3<H2<Lf2)、すなわち、余裕時には、潜流調整板10により一定の分水比率で配分操作がなされた通水口5側開口Apを通過する潜流の水量に加え、上端越流部12Aから越流する水流も下流側幹線水路22に合流して水量が増大する。下流側幹線水路22の水位は、通水口5側開口Apを通過する潜流の水量に上端越流部12Aから越流する水量を加えた量により決定される。こうして、上流側幹線水路20の水位Lf2が、第2のゲート8の堰上げ板12の上端越流部12Aの高さH2を越えると、幹線水路22側の水量を増やし、支線水路21側は、分水比率に基づいた量のみ取水されるようになっている。従って、堰上げ板12の上端越流部12A(上端越流部高さH2)は、必ず、潜流調整板10の下端面10A(下端面高さH3)より上方に位置していなければならない(H2>H3)。もし、堰上げ板上端越流部12Aが潜流調整板下端面10Aより下方にあると、通水口5側は、潜流調整板10による開口Apからだけでなく下端面10Aのレベルより低い上端越流部12Aからも通水されてしまい、分水比率を一定に保つことができなくなるからである。言い換えれば、渇水時あるいは平水時には一定の分水比率を確保するというルールに対し、堰上げ板12の上端越流部12Aを潜流調整板10の下端面10Aのレベルより下方に位置させた場合、渇水時あるいは平水時に支線水路21側の取水流量より幹線水路22側の通水流量を優先させることになる。これら配分操作の考え方は、通水側利用者と分水側利用者との話し合いにより変更されることもあり、本実施例に係る構成では、いずれにも対応が可能となっている。
【0085】
ところで、上記第1の実施例に係る水路の分水機構2では、上述のように、第2のゲート8の堰上げ板12が流水をブロックした場合、開口面積比を分水比に一致させて第1のゲート6が支線水路21と幹線水路22との分水比率を一定にし、恣意性を排除して機械的に配分操作するようにしているが、実際の水路3では、開口面積比が正確に分水比に合致しないことがある。その理由は、縮流係数と流速分布の偏りによるものである。この縮流係数と流速分布の偏りにより、開口面積比と分水比の間にずれが生じる。そこで、本実施例に係る水路の分水機構2では、縮流係数と流速分布の偏りによるずれを補正してより正確に分水比率を一定とするようにしている。すなわち、開口面積比と分水比の間に生じるずれの大きさを予め水理実験で求め、計画している所望の分水比率に合致するよう開口面積比を補正するようにしている。このような補正を行うことにより分水比の精度の向上を図ることができる。開口面積比の補正は、潜流調整板10の下端面10Aの分水口4側または通水口5側のいずれかに切り欠き溝を形成してもよいし、潜流調整板10下部の分水口4側または通水口5側のいずれかに孔を穿設するようにしてもよい。
【0086】
第1第2のゲート6、8より下流側の支線水路21と幹線水路22とには、第3のゲート(水門)30が設けられる。第3のゲート30は、両側壁3A、3Bと分水壁7とにそれぞれ水路3の幅方向を一致させて設置された支柱31A、31B、31Cを備えて構成される。支柱31A、31Cの向かい合う面に形成された縦溝(図示せず)には、複数の板を上下に重ねた支線水路側堰上げ板32が、支柱31B、31Cの向かい合う面に形成された縦溝(図示せず)には、複数の板を上下に重ねた幹線水路側堰上げ板33が、それぞれ差し入れられる。これら各堰上げ板32、33はそれぞれ、上流側の堰上げ板12の高さH2を超えないようになっており、上端越流部32A、33Aから下流側に水を越流させ上端越流部32A、33Aの上下位置に応じて上流側の水位を調整するようになっている。すなわち、支線水路21の堰上げ板32は、上端越流部32Aの上下位置に応じて支線水路21の堰上げ板32より上流側の水位を、幹線水路22の堰上げ板33は、上端越流部33Aの上下位置に応じて幹線水路22の堰上げ板33より上流側の水位をそれぞれ調整するようになっている。これら各堰上げ板32、33はそれぞれ独立に高さが調整される。
【0087】
なお、上記第1の実施例に係る水路の分水機構では、支持枠6Eを水路3の全幅にわたって設けているがこれに限られるものではなく、支持枠を固定する基礎を確保することができれば、第2のゲート8上方に設ける必要はなく、その部分を省略してもよい。しかしながら、ゲート操作と管理の足場を確保する必要がある場合には、水路3の全幅にわたって設け、作業者が対岸に移動可能とすることが好ましい。
【0088】
次に、本実施例に係る水路の分水機構2の作用について、第1第2のゲート6、8の動作に基づいて説明する。本実施例に係る水路の分水機構2は、潜流調整板10の開閉により形成される分水口4側開口面積Ad1と通水口5側開口面積Ap1に基づいて分水比率が決定されるので、予め計画供給水量について取水側水路21の利用者と通水側水路22の利用者の合意を得て分水比率を決定する。分水比率が決定すると、予め水理実験を行い、縮流係数と流速分布の偏りによるずれの大きさを、すなわち、流量係数を求め、求められたずれの大きさ、すなわち、流量係数に基づいて決定された分水比率に合致するよう開口面積比を補正する。第1のゲート6の潜流調整板10の開度が分水比率に対応しているので、上流側幹線水路20の水位(Lf1、Lf2)に応じて、第1のゲート6の調整ロッド11を操作して潜流調整板10の上下位置を調整し、潜流調整板10の下端面10Aの水路底面3Cからの高さH3が上流側水位(Lf1、Lf2)のレベル以下にあって、分水口側開口面積Ad1により分水口4側が決められた取水流量を確保できる位置に潜流調整板10を保持する。次に、余裕時の通水側優先取り分を最大送水量を参考に決定し、これに波、風による吹き寄せを考慮して、第2のゲート8の堰上げ板12の上端越流部12A上限高さを決定する。上端越流部12Aの下限高さは、利水面でなく、非常時の安全を配慮し、費用を勘案して、経済的な最も低い値を採用する。すなわち、上流側幹線水路20の水位Lf1〜Lf2がどの高さの水位に達すると、第2のゲート8は越流を許容するか決定する。堰上げ板12は、複数の板を順次重ねて高さを調整するようになっている。
【0089】
こうして、第1のゲート6の潜流調整板10の上下方向位置、すなわち、下端面10Aの水路底面3Cからの高さH3が決められ、第2のゲート8の堰上げ板12の上端越流部12Aの水路底面3Cからの高さH2が決められると、上流側幹線水路20の水位が第2のゲート8の堰上げ板12の上端越流部12Aより低く、越流が生じない場合、第1のゲート6の潜流調整板10の開度に応じて、一定の分水比率(取水比率)で分水口4側と通水口5側とに分水と通水とが行われ、この分水比率に応じた通水量が下流側幹線水路22に、取水量が支線水路21にそれぞれ取り込まれることになる。上流側幹線水路20の水位が第2のゲート8の堰上げ板12の上端越流部12Aより高く、越流が生じる場合、支線水路21には分水比率に応じた取水流量のみが流下するのに対し、下流側幹線水路22には、上記一定の分水比率に応じた通水量に越流した分の水量が加わることになる。このように、本実施例に係る水路の分水機構2では、上流側幹線水路20の水位が第2のゲート8の堰上げ板12の上端越流部12Aの水路底面3Cからの高さH2以下では、すなわち、渇水時や水量減少時には、第1のゲート6の潜流調整板10の開度(水路3の水路底面3Cと潜流調整板10の下端面10Aとの間の開口高さH3)に応じた水量で、常に一定の分水比率(取水比率)で分水口4側と通水口5側とに分水と通水とが行われる。他方、上流側幹線水路20の水位が上端越流部12Aの水路底面3Cからの高さH2以上では、すなわち、余裕時や水量余剰時には、潜流調整板10の開口高さH3に応じた水量で、常に一定の分水比率(取水比率)で分水口4側と通水口5側とに分水と通水とが行われるのに加え、通水口5側には、堰上げ板12の上端越流部12Aからの越流分が流れ込む。つまり、分水口4側では、余裕時や水量余剰時であっても、渇水時や水量減少時と同様に、第1のゲート6の潜流調整板10の開度(開口高さH3)に応じた水量が取り込まれるのに対し、通水口5側では、第1のゲート6の潜流調整板10の開度(開口高さH3)に応じた水量に加え、上端越流部12Aからの越流分が取り込まれる。このため、余裕時や水量余剰時には、通水口5側、すなわち、幹線水路22への通水流量が増大され、幹線水路22の下流側が優先されるようになっている(図6参照)。
【実施例2】
【0090】
次に、本発明の第2の実施例に係る水路の分水機構102について説明する。本発明の第2の実施例に係る水路の分水機構102は、上記第1の実施例に係る水路の分水機構2が、大規模な水路に適用されるのに対し、小規模の水路に適用されるもので、複数のゲートを用いることなく、単一のゲートで、渇水・平水時でも水を確実に一定の分水比で配分操作するようにしている点が異なっている。本実施例に係る水路の分水機構102は、図7および図8に示すように、コンクリート製の水路103には同一水路面に分水口104と通水口105とが形成される。
【0091】
水路103の分水口104は、水路103の一方の側壁103Aから水路103の幅方向に立設された壁(越流阻止部)108の下部に矩形状に形成される。壁108の水路中央側端部108Aは、側壁103Aに沿って平行に下流側に延び支線水路121を形成する隔壁107の上流側端部に接続される。すなわち、支線水路121には、上流側水位に関係なく分水口104からのみ水が流入するようになっている。壁108と他方の側壁103Bとの間に通水口105が形成される。通水口105の水路幅方向寸法Wp2は、分水口104の水路幅方向寸法Wd2より長寸となっている。水路面を同一に配置されたこれら分水口104と通水口105とには、単一のゲート106が設けられる。ゲート106は、両側壁103A、103Bにそれぞれ幅方向を一致させて形成された各縦溝(ガイド)109A、109Bにそれぞれ両端が嵌め入れられる矩形状の潜流調整板110と越流調整板111とを備えている。これら矩形状の各板110、111はそれぞれ縦溝に沿って上下動するようになっている。壁108の上流側平坦面108B側には、この面108Bに沿って摺動し分水口104を開閉する潜流調整板110が、この潜流調整板110の上流側には、越流調整板111がそれぞれ重なり合って配置され、これら潜流調整板110と越流調整板111は互いに上下に相対変位可能になっている。これら潜流調整板110と越流調整板111とはそれぞれ、同一の縦寸法H10、H11を有するようにするか、越流調整板111の縦寸法H11を潜流調整板110の縦寸法H10より長寸となるようにしている(H11≧H10)(図9の(A)参照)。縦寸法H10、H11の大きさには絶対的な制約はないが、まず、潜流調整板11を制御し、次に、越流調整板111の越流高さを制御するのであれば、H11≧H10が制御しやすい。また、この条件で、越流制御板111の高さの制御範囲を最大にとるのであれば、H11=H10が望ましい条件になるので、以下、H10=H11の場合について説明する。これら縦寸法H10、H11はそれぞれ、水路の設計水位の高さ寸法Llmtより短寸となっている。本実施例では、これら潜流調整板110と越流調整板111とが重なり合った面積が最小となるように配置された際、すなわち、潜流調整板110が最も下方に位置し、越流調整板111が最も上方に位置する状態で設定水路面をほぼ覆って重なり合うようそれぞれ高さ寸法が設計水位の高さLlmtに対してほぼ半分の寸法より若干長寸の縦寸法を有している(H10=H11>(Llmt×1/2+e)eは重なり分。)。
【0092】
これら潜流調整板110と越流調整板111とはそれぞれ、調整ロッド113、114を介して水路103上に設けられた支持枠112に接続される。一方の調整ロッド113は、下端が潜流調整板110の上端部110Bに回動自在に取り付けられ、上端が支持枠112の上枠部112Aを貫通して突出している。他方の調整ロッド114は、下端が越流調整板111の上端部111Bに回動自在に取り付けられ、上端が支持枠112の上枠部112Aを貫通して突出している。各調整ロッド113、114は、上側がねじ切りされ、上枠部112Aに形成されたねじ孔に螺合し、回動操作により潜流調整板110と越流調整板111をそれぞれ上下動させるようになっている。寸法の異なる各調整ロッド113、114の上端は角形に形成され、この上端角形部に工具を嵌め入れて回動操作するようになっている。支持枠112と調整ロッド113、114とにより潜流調整板110と越流調整板111を上下動させる変位手段が構成される。
【0093】
さらに、潜流調整板110の下端面110Aには、越流調整板111側に突出するストッパ110Cが設けられ、越流調整板111はその下端面111Aが常時、潜流調整板110の下端面110Aと同一の高さかまたはその下端面11Aより上方に変位可能になっている。すなわち、水路103の水路底面103Cと潜流調整板110の下端面110Aとの間の高さ寸法をH110、水路底面103Cと越流調整板111の下端部111Aとの間の高さ寸法をH111とすると、H111≧H110が成立するようになっている。さらに、越流調整板111が最も上方の位置にあり、潜流調整板110が最も下方の位置にある場合(図9の(D)参照)でも、これら両潜流調整板110と越流調整板111との間には隙間が生じないよう必ず重なる部分(重なる部分の上下方向長さOL、重なる部分が最小の場合の上下縦方向長さOL1、重なる部分が最大の場合の上下方向長さOL2(OL1<OL、OL<OL2))が形成されるようになっている。つまり、これら両潜流調整板110と越流調整板111により水路面を塞ぐ最大上下方向長さHmax1は、両縦寸法H10、H11を加えた長さから重なる部分が最小の場合の上下方向長さOL1を減じた長さ、すなわち、Hmax1=(H10+H11)−OL1となっている。他方、これら両潜流調整板110と越流調整板111により水路面を塞ぐ最小上下方向長さHmin1は、これら両潜流調整板110と越流調整板111とが上下端を揃えて重なった場合の長さ、すなわち、Hmin1=H10=H11となり、このとき重なる部分は最大の上下方向長さOL2となる。このように、本実施例に係る水路の分水機構102では、潜流調整板110と越流調整板111との2体により形成される水路面を塞ぐ扉は、上下方向長さが可変となるとともに、所望の上下方向長さでかつ一体に上下位置を変えることができるようになっている。従って、上流側の水位が低い渇水・平水時には、これら両板110、111を最大の上下方向長さOL2で重なり合うようにし、ゲート106の扉の縦方向長さを両板110、111の縦寸法H10、H11と実質的に同一とし、分水口104と通水口105とにはそれぞれ潜流のみ流出するのを許容し、越流を阻止するようにしている(図9の(C)参照)。そして、上流側の水位が高い余裕時には、上流側の水位に関係なく、上下方向の位置を変えて通水口105側に越流させることも越流を阻止することもできるようになっている(図9の(A)、(B)参照)。
【0094】
また、本実施例に係る水路の分水機構102では、越流調整板111が上下方向のどの位置にあっても、壁108により分水口104側への越流が阻止されるようになっている。また、潜流調整板110は、上下方向の位置を変えて分水口104の開度を調整することができるとともに、分水口104を塞ぐこともできるようになっている。
【0095】
第2の実施例に係る水路の分水機構102では、ゲート106の潜流調整板110の上下方向位置、すなわち、下端面110Aの水路底面103Cからの高さH110が分水口104の高さH104の範囲内で決められ、越流調整板111が潜流調整板110と同一の上下方向位置にあるか潜流調整板110より上方に位置した状態で、上流側幹線水路120の水位が上端越流部111Bより低く、越流が生じない場合(図9の(B)、(C)、図10のケース番号III参照)、ゲート106の潜流調整板110の水路底面103Cからの高さH110に応じて、一定の分水比率(取水比率)で分水口104側と通水口105側とに分水と通水とが行われ、この分水比率に応じた通水量が下流側幹線水路122に、取水量が支線水路121にそれぞれ取り込まれることになる。上流側幹線水路120の水位が越流調整板111の上端越流部111Bより高く、越流が生じる場合(図9の(A)、(D)、図10のケース番号IV参照)、支線水路121には予め決められた分水比率に応じた取水流量のみが流下するのに対し、下流側幹線水路122には、上記一定の分水比率に応じた通水量に越流した分の水量が加わることになる。
【0096】
潜流調整板110の下端面110Aの水路底面103Cからの高さH110が分水口104の高さH104を越え、潜流調整板110が分水口104より上方に位置し、越流調整板111が潜流調整板110と同一の上下方向位置にあるか、潜流調整板110より上方に位置した状態で、上流側幹線水路120の水位が上端越流部111Bより低く、越流が生じない場合(図10のケース番号V参照)、上流側水位が分水口104の高さH104より低いと、水位に応じた量が分水口104の流下面と通水口105の流下面とに応じて分配される。このとき、分水比(取水比)は一定となるが、潜流調整板110は予め決められた分水比確保に寄与するものではなく、分水口104の流下面と通水口105の流下面とにより分水比は決定され一定となる。上流側幹線水路120の水位が、分水口104の高さH104より高いと、分水口104には、分水口104の面積に応じた一定の量のみが流下する一方、通水口105側には潜流調整板下端面110Aの高さH110に応じた潜流が流下する。このため、分水比は不定で、下流側幹線水路122への通水量が予め設定された分水比による通水量より増大する(図10のケース番号VI参照)。さらに上流側水位が高くなり、越流調整板111から越流があると、分水口104側は一定の量が流下するのに対し、通水口105側では、越流分も加わり、幹線側下流域への通水が優先される(図10のケース番号VII参照)。なお、潜流調整板110が最下方位置で分水口104を塞いだ場合、越流調整板110から越流がなければ、分水口104と通水口105とのいずれにも水は流れることがない(図10のケース番号I参照)。越流調整板110から越流があると、分水口104には水が流れないものの、通水口105には越流分がすべて流れることになる(図10のケース番号II参照)。
【0097】
このように、第2の実施例に係る水路の分水機構102は、渇水・平水時等、上流側水位が低い場合、潜流調整板110の下端面110Aの高さH110が分水口104の高さH104の範囲内にあるときであって、越流調整板111から下流側幹線水路122への越流がない場合、分水比(取水比)は予め設定された一定の値を保持することができる。余裕時等、上流側水位が高い場合であって、下流側幹線水路122への越流がある場合、越流分は分水口104に流れ込むことがなく、すべて下流側幹線水路122へ流れ込むので、下流側幹線水路122側が優先されることになる。また、余裕時であって、潜流調整板110が分水口104の上方に位置し、上流側水位が分水口104の高さH104より高い場合、支線水路121側には分水口104の開口面積に応じた一定の水量が分水され、残りの水量は下流側幹線水路122側に通水される。上流側水位が分水口104の高さH104より低い場合、分水口104と通水口105とには、それぞれの水路幅に応じた水量が分配される。このように、分水口104側には越流による水の流入がなく、潜流調整板110を通じてのみ分水されるので、通水口105側下流の流量が分水口104側下流の流量より優先される。
【0098】
なお、本実施例では、潜流調整板110と越流調整板111とのそれぞれの縦寸法H110、H111を同一としているがこれに限られるものではなく、予め決定された通水量や分水量に応じていずれか一方を長寸に他方を短寸に構成してもよいことはいうまでもない。さらに、上記実施例では、潜流調整板110と越流調整板111との縦寸法をそれぞれ、設計水位の高さLlmtに対してほぼ半分の寸法より若干長寸としているが、これに限られるものではなく、上端越流部の越流位置を低くするか潜流面を増大させるには、両板の縦寸法を縮寸させてもよい。また、ゲート106の扉を潜流調整板110と越流調整板111との2枚の板により構成しているがこれに限られるものではなく、2枚以上の板により構成してもよい。また、本実施例では、支線水路121側への越流を阻止する越流阻止部108を設けているが、これに限られるものではなく、壁108に代えて下流側幹線水路122と支線水路121とを流れ方向に隔てる隔壁を設け、分水口104側にも越流調整板111からの越流を許容するようにしてもよい(図11の第3の実施例参照)。さらに、支線水路121側への越流を阻止する越流阻止部として水路103側に壁108を形成しているが、これに限られるものではなく、支持枠112側または越流調整板111側に支線水路121への越流を阻止する越流阻止板(越流阻止部)を設け、支線水路121側への越流を阻止するようにしてもよい。
【実施例3】
【0099】
次に、本発明の第3の実施例に係る水路の分水機構202について説明する。本発明の第3の実施例に係る水路の分水機構202は、上記第2の実施例に係る水路の分水機構102が、越流阻止部(壁108)を設けて支線水路121側への越流を阻止するようにしているのに対し、箱部207により支線水路側への越流を阻止する点が異なっている。本実施例に係る水路の分水機構202は、図11ないし図13に示すように、パイプラインの調整スタンドに適用した例を示す。上流側パイプライン220と角箱状調整スタンド(調整水槽)203の分水口204と通水口205より上流側水槽部分203Aが上流側幹線水路に、下流側パイプライン222と調整スタンド203の通水口205より下流側水槽部分203Bが下流側幹線水路にそれぞれ相当し、調整スタンド203の分水口204と通水口205とを区画するとともに調整スタンド203の一側面203Dに接続される箱部207の室内208と一側面203Dに開口する分岐パイプライン221とが支線水路に相当する。
【0100】
本実施例に係る水路の分水機構202は、調整スタンド203の一側面203Dに、上流側下部が開口され分水口204を形成する箱部207が設けられる。箱部207の流れ方向に沿って形成された壁部207Aにより分水口204と通水口205とが同一水路面上に形成される。箱部207の分水口204の上方には、上流側壁面207Bが形成され、越流調整板211から室内208への越流を阻止するようになっている。これら分水口204と通水口205とにわたって上記第2の実施例と同様に潜流調整板210と越流調整板211が設けられる。分水口204と通水口205とは同一水路面上に形成され、下流側パイプライン222への流下を優先させるため、通水口205の水路幅方向寸法Wp3は分水口204の水路幅方向寸法Wd3より長寸となっている(Wp3>Wd3)。本実施例では、上記第2の実施例とは逆に、上流側に潜流調整板210が、下流側に越流調整板211がそれぞれ摺動自在に重なって配置される。これら各板210、211は図示しない変位手段により互いに上下に相対変位可能になっている。本実施例に係る分水機構202では、上流側パイプライン220から流入した水は、上流側水槽部分203Aに流れ込む。上流側水槽部分203Aの水位Lp1は越流調整板211の上端越流部211Bの上下方向位置により制御される。このため、越流が生じなければ、分水口204側と通水口205側への水の分配は、潜流調整板210を通じてのみ行われ、予め決められた一定の分水比(取水比)で分岐パイプライン221と下流側パイプライン222とに分水と通水がそれぞれ行われる。越流を許容する場合、越流調整板211からの越流分は、下流側水槽部分203Bの下流側パイプライン222に連通する室209のみに流入する。なお、分水量の制御において、取水水位の水圧が必要な場合、越流が生じるか生じないかの限界まで最小の開度に設定されるようになっている。すなわち、閉塞面積を越流が生じない最大面積とするようにしている。一般の水路と異なり調整スタンド203では、越流に伴い生じる空気連行がサージングの原因ともなりうるが、送水量の主たる部分は潜流調整板210による潜流で実現されるため、空気連行を小さく抑えることができ、調整スタンド203のサイズを小さくすることができ、コストダウンを図ることができる。
【0101】
上記第3の実施例に係る水路の分水機構202では、図11に示すように、潜流調整板210により分水口204と通水口205を閉じて、上流側水槽部分203Aの水位Lp1が上昇すると、越流調整板211からの越流が下流側パイプライン222側の室209のみに流れ込む(図14のケース番号I参照)。潜流調整板210の開度が最大(水路底面203Cからの下端面210Aまでの高さH210が最大、すなわち、分水口204の高さと同一)となるまでの範囲では、越流調整板211からの越流がない場合、潜流調整板210からの潜流のみにより分水と通水が行われるので、分水比(取水比)は予め設定された一定の値となる(図14のケース番号II参照)。越流調整板211からの越流がある場合、潜流により分岐パイプライン221側の室208と下流側パイプライン222側の室209とにはそれぞれ、一定の分水比で分配される一方、これら一定の分水比での配水に加え、下流側パイプライン222側の室209には、越流分が加えられる。(図14のケース番号III参照)。このように越流がない場合、分水口204側と通水口205側とには、一定の分水比で対等に分水と通水が行われ、越流がある場合、下流側パイプライン222側への流下が優先されるようになっている。
【実施例4】
【0102】
次に、本発明の第4の実施例に係る水路の分水機構302について説明する。本発明の第4の実施例に係る水路の分水機構302は、上記第1第2の実施例に係る水路の分水機構2、102がそれぞれ、大規模な水路と小規模な水路とに適用されるのに対し、すでに設けられている既存の水路を利用して適用するもので、図15に示すように、分水口304を上流側幹線水路320の側壁320Aに形成し、通水口305を分水口304より下流側の下流側幹線水路322の水路面に配し、これら分水口304と通水口305とにそれぞれ別体で上下方向に変位し所望の位置で保持される潜流調整板310、311を設置した点が異なっている。すなわち、既存の水路では、通水口305の部位に下流側幹線水路322の水位制御と通水量制御を同時に行うため、越流を許容する越流調整ゲート(越流堰、越流板)または潜流を許容する第1の潜流調整ゲートを設け、支線水路321側の分水口304には、潜流を許容し第1の潜流調整ゲートと独立に上下に変位する第2の潜流調整ゲートを設け、上流側幹線水路320と連絡水路331との間には余水吐を設けている。これに対し、本実施例に係る水路の分水機構302では、通水口305と分水口304とにそれぞれ、潜流のみを許容する潜流調整板310、311を設け、余水吐に代えて連絡開口部330を水路底面303Cまで削り取って形成し、連絡水路331と下流側幹線水路322との間には、越流を許容する越流調整板335を設け、連絡水路331と排水連絡水路333との間には、余水吐334を形成した点が異なっている。
【0103】
本実施例に係る水路の分水機構302は、上流側幹線水路320の一方の側壁320Aに分水口304が形成される。分水口304は支線水路321に接続される。分水口304の底部は通水口305の底部と同様に水路303の水路底面303Cと合致している。分水口304には、矩形状の支線側潜流調整板310が後述する開度調整装置(変位手段)306により上下方向に変位可能に配置される。支線側潜流調整板310は、上端からの越流を許さないよう高さ寸法は分水口304の高さに準じた寸法となっている。支線側潜流調整板310は水路底面303Cより上方で保持されると、水路底面303Cとの間に形成される空隙S310(図16参照)から支線水路321側に潜流を導くようになっている。支線水路321には、支線側潜流調整板310の下流側に、手動で操作される非常時用の止水ゲートや角落し(図示せず)が設置される。
【0104】
下流側幹線水路322で分水口304地点より下流側の通水口305には、矩形状の幹線側潜流調整板311が開度調整装置306により上下方向に変位可能に配置される。幹線側潜流調整板311は、上端からの越流を許さないよう高さ寸法は通水口305の高さに準じた寸法となっている。幹線側潜流調整板311は水路底面303Cより上方で保持されると、水路底面303Cとの間に形成される空隙S311から下流側幹線水路322側に潜流を導くようになっている。これら両潜流調整板310、311は、開度調整装置306により同期して同一の開度で開口するようになっている。開度調整装置306は、各潜流調整板310、311の上端部に回動可能に設けられ支持枠に螺合される両調整ロッドを同期させて回動させる回動機構(図示せず)を備えている。このため、両潜流調整板310、311は独立して操作することができないようになっている。
【0105】
上流側幹線水路320の他方の側壁320Bには、分水口304に向かい合って連絡開口部330が形成される。連絡開口部330の底部は水路底面303Cと合致している。連絡開口部330の外側には、他方の側壁320Bに沿ってこの側壁320Bと外壁332とにより連絡水路331が形成される。連絡水路331は幹線側潜流調整板311より下流側に延長され、延長端には排水河川への排水連絡水路(他の支線水路)333が接続される。連絡水路331と排水連絡水路333との間には、余水吐334が形成される。下流側幹線水路322の側壁322Bには、通水口305の下流側に連絡水路331の水位を制御する越流調整板335が設けられる。越流調整板335は角落し構造の越流調整板により高さを調整し、連絡水路331からの水流を上流端から越流させるようになっている。越流調整板335は、上端面高さ(越流高さ)が余水吐334の越流部より低くなるよう設定される。
【0106】
このように、上記第4の実施例に係る水路の分水機構302は、上述の如く構成されているので、既存の水路であっても、簡易な改修により上記各実施例と同様に、渇水時でも、平水時でも予め決められた分水比率で通水量と分水量とを一定に保持することができる。また、たとえ支線水路321が上流側幹線水路320の側壁320Aに接続されていても、開度調整装置306により両潜流調整板310、311を同期させて同一の開度で開口させることができ、渇水時でも、平水時でも予め決められた分水比率で通水量と分水量とを一定に保持することができる。さらに、連絡水路331により上流側幹線水路320の水流の一部を越流調整板335により下流側幹線水路322に迂回させることができるので、下流側幹線水路322への通水を優先させることができる。また、越流調整板335は、上端面高さが余水吐334の越流部より低くなるよう設定されているので、越流調整板335から下流側幹線水路322側に流入する越流量が増大し続けると、過剰な増水分を余水吐334を通じて排水連絡水路333に排出させることができる。さらに、既存の支線水路321を改修する際や潜流調整板310、311や開度調整装置306が故障した際にも止水ゲートや角落しを用いることにより作業がし易くなる。
【0107】
なお、水位調整のためのゲート構造については、水理特性に着目すると、(1)ゲートの下から水を通すのか(1−aタイプ)、ゲートの上から水を越流させるのか(1−bタイプ)のいずれかからなる種類と、(2)ゲートはスルースゲートのように滑りで上下移動するのか(2−aタイプ)、ゲートにヒンジがあって回転移動するのか(2−bタイプ)のいずれかからなる種類との2種類が考えられる。これらタイプとゲート設置場所との関係では、河川の取水堰にあっては、堰上げは1−bタイプ、取水は1−aタイプが多く見られ、用水路の分水ゲートでは、堰上げ、分水とも1−aタイプが多く見られる。河口の防潮ゲートでは、1−aタイプが多く見られる。また、水位の制御では、1−bタイプが1−aタイプより容易である。一方、水位制御を越流ゲートで行う場合、1−aタイプの場合は、ゲートの扉が水路底より低くなるように水路底を加工して設置する。1−bタイプの場合は、ゲートの扉とヒンジが水路底より低くなるように水路を加工して設置するなどの工夫をして、ゲート全開時の流量を確保する必要がある(図17の(B)参照)。これらの工事が複雑で工費が高くなる場合には、水路幅を大きくして、水路底に設置する代替案も考えられる。
【実施例5】
【0108】
次に、本発明の第5の実施例に係る水路の分水機構402について説明する。本発明の第5の実施例に係る水路の分水機構402は、上記第4の実施例に係る水路の分水機構302が、分水口304を上流側幹線水路320の側壁320Aに形成し、分水口304の底部を通水口305の底部と一致させ水路303の水路底面303Cと同一面に形成しているのに対し、図18に示すように、通水口405より上流側の上流側幹線水路420の側壁420Aに形成した四角形状の分水口404を、水路403の水路底面403Cより上方の高い位置に形成した点が異なっている。本実施例に係る水路の分水機構402は、通水口405が分水口404より下流側で下流側幹線水路422の水路面に配置される。分水口404には、図20ないし図22に示すように、支線側潜流調整板410が、通水口405には、幹線側潜流調整板411がそれぞれ配置される。これら潜流調整板410、411は矩形状に形成され、それぞれガイド機構408に両側部が差し入れられ上下方向に変位し所望の位置で保持される。支線側潜流調整板410は、上端からの越流を許さないよう高さ寸法は分水口404の高さ寸法より長寸となっている。支線側潜流調整板410は分水口404の底部404Aより上方で保持されると、底部404Aとの間に形成される空隙S410から支線水路421側に潜流を導くようになっている。また、幹線側潜流調整板411は、上端からの越流を許さないよう高さ寸法は通水口405の高さに準じた寸法となっている。幹線側潜流調整板411は水路底面403Cより上方で保持されると、水路底面403Cとの間に形成される空隙S411から下流側幹線水路422側に潜流を導くようになっている。支線水路421の水路面は分水口404と同一に形成される。
【0109】
これら潜流調整板410、411は、開度調整装置(変位手段)406により同期して同一の開度で開口される。開度調整装置406は、各潜流調整板410、411の上端部に回動可能に設けられ支持枠に螺合される両調整ロッドを同期させて回動させる回動機構(図示せず)を備えている。このため、両潜流調整板410、411は独立して操作することができないようになっている。
【0110】
通水口405には、幹線側潜流調整板411に隣接し、ガイド機構408に両側部が差し入れられる越流調整板412が配置される。越流調整板412は複数の板片から構成され、水路底面403Cから順次板片を重ねて、越流上端部412Aを所望の高さに設定することができるようになっている。ガイド機構408と支線側潜流調整板410とにより第1のゲート(支線側潜流ゲート)を、ガイド機構408と幹線側潜流調整板411とにより第2のゲート(幹線側潜流ゲート)を、ガイド機構408と越流調整板412とにより第3のゲート(幹線側越流ゲート)をそれぞれ構成している。
【0111】
本実施例に係る水路の分水機構402では、水路のゲートが通常使用されている潜り流出の場合、第1ゲートの支線側潜流調整板410と第2のゲートの幹線側潜流調整板411とを同期させて連動させるようにしているので、上流側幹線水路420の上流側水位をh、下流側幹線水路422の下流側水位をhm、支線水路421の水位をhlとし、第3のゲートで越流調整板411が越流を阻止している場合、すなわち、越流調整板411の上端越流部411の高さが上流側水位hより高い場合、幹線水路403の通過部A(空隙S411に相当)の流量QAは、
QA=通過部Aの幅(空隙S411の水路幅方向寸法)×通過部Aの高さ(幹線側潜流調整板411下端面の水路底面403Cからの高さ寸法)×流速係数×縮流係数×sqrt(2×(h−hm))となる(ここでsqrtは平方根、ルートの関数である。)。
支線水路421の通過部B(空隙S410に相当)の流量QBは、
QB=通過部Bの幅(分水口404の横幅)×通過部Bの高さ(支線側潜流調整板410下端面の分水口底部404Aからの高さ寸法)×流速係数×縮流係数×sqrt(2×(h−hl))となる。
ここで、上記2つの流速係数と縮流係数(流量係数=流速係数×縮流係数)との差が無視でき、hm=hlとすれば、通過部Bと通過部Aとの面積比が同じになるように第1のゲートの支線側潜流調整板410と第2のゲートの幹線側潜流調整板411とを同期させる。こうすることにより、上記各実施例と同様に、越流調整板412からの越流がなく、しかも、上流側水位が分水口404の底部404Aより高い場合、各潜流調整板410、411からの潜流のみにより分水と通水が行われるので、分水比(取水比)は予め設定された一定の値となる。しかしながら、上流側水位が分水口404の底部404Aより低い場合、支線水路421には、分水は行われず、下流側幹線水路422への通水が優先される。このように、幹線水路の水路面に対して分水口の配置が多様であっても、上流側水位が分水口404の底部404A以上で予め設定された一定の分水比を保持して分水と通水とを行うことができる。そして、上記上流側水位以下では、下流側幹線水路422への通水を優先させるようになっている。
【実施例6】
【0112】
図23の(A)、(B)はそれぞれ、本発明の特徴を比較して示すモデルM−I、M−IIを示すもので、(A)は図5に示す本発明の第1の実施例に係る水路の分水機構2の構成に基づいて作成された本発明のモデルM−I、(B)は分水口4と通水口5とにおける分水量と通水量とをそれぞれ独立に制御する2体の流量制御装置C10A、C−10Bを備えた従来例のモデルM−IIを示している。図23の(A)の本発明のモデルM−Iでは、上記第1の実施例と同様に、分水口4と通水口5の一部に上下に変位可能に設けられ両口4、5をともにほぼ同一の開度で開き下方で水流の通過を許容し上端からの越流を阻止する潜流調整板10を備え、通水口5の他の部分には、越流を許容する堰上げ板(水位制御装置)12が差し入れられるようになっている。図23の(B)の従来例のモデルM−IIでは、通水口5の一部と分水口4とにそれぞれ図示しない変位手段により独立に上下に変位する第1第2の潜流調整板(スルースゲート)C−10A、C−10Bを設け、通水口5の他の部分に堰上げ板12が差し入れられるようになっている。堰上げ板12が差し入れられる第2のゲート8は上流側の水位制御を果たすようになっている。第1の実施例と同一部号は同一または相当部分を示す。また、図24ないし図28はそれぞれ、これら両モデルM−I、M−IIの流量公式に基づいて支線水路12の取水比と本線水路22の流下比とについて操作可能な範囲との関係を示したグラフである。図29は、幹線水路20の0から最大までの送水量(横軸)と支線水路21の0から最大までの取水量(横軸)とについて本発明のモデルM−Iと従来のモデルM−IIとによる操作可能な範囲の違いを示すグラフである。
【0113】
図23の(A)、(B)に示す両モデルM−I、M−IIについて、上流側幹線水路20の最大送水量をM(m3/s)、支線水路21の最大分水量をZ(m3/s)でそれぞれ表し、上流側幹線水路20の最大以下の通常時の送水量をm(m3/s)、支線水路21の最大以下の通常時の分水量をz(m3/s)でそれぞれ表す(最大量を大文字のアルファベットで、最大以下の通常時の値を小文字のアルファベットで表す)。上流側幹線水路20の通常時送水量m(m3/s)はM≧m≧0となり、支線水路21の通常時分水量z(m3/s)はZ≧z≧0を満足する。幹線水路の規模は、上流側幹線水路20の最大送水量Mと支線水路21の最大分水量Zとで設計され、このときの支線水路21の分水量に対する幹線水路20の送水量に対する取水比は、Z/Mである。下流側幹線水路22への通水量(通過流量)xはm−z(x=m−z)であり、上流側幹線水路20の通常時送水量mの値に係わらず、m=z+xが成立する。そこで、以下では、上流側幹線水路20の通常時送水量mの配分比率である支線水路21の取水比z/mと本線水路22の流下比(下流側幹線水路への通水量(通過流量)/送水量)x/mを検討する。
【0114】
まず、図23の(B)に示す従来のモデルM−IIでは、通水口5側の第1の潜流調整板(第1のスルースゲート)C10Aと分水口4側の第2の潜流調整板(第2のスルースゲート)C10Bとをそれぞれ独立に上下に操作するようにしているので、上流側幹線水路20の送水量が最大送水量Mから減少し通常送水量m(M>m>0)(m3/s)になった場合、支線水路21が取りうる可能な最大分水量はZであり、支線水路21の取水比z/mの最大値はZ/mになる。言い換えれば、支線水路21の取水比z/mの範囲は(Z/m)≧(z/m)≧0になる。つまり、上流側幹線水路20の通常送水量mが最大送水量Mから減少しても、支線水路側施設では取水可能な最大量Zまで取水を増加させることができる。そしてその分だけ支線水路21の取水比z/mが増加し下流側本線水路22の流下比x/mが減少する(図26、図27参照)。
【0115】
これに対し、図23の(A)に示す本発明のモデルM−Iでは、一枚の潜流調整板10が分水口4と通水口5とにわたって一体に上下に操作されるので、水位制御ゲートである第2のゲート8で堰上げ板12(図5参照)から越流がない、すなわち、越流による通過流量が零の場合、通水口5の通水量を制御するチェックゲート側(第1のゲート6の通水口側)と分水口4の分水を制御する分水ゲート側(第1のゲート6の分水口側)との分水比x/z(分水比=分水量z/通水量x(=送水量m))は、両水路21、22の下流水位が同じ場合、分水口4側の取水比z/m=Z/Mと同一で一定である(図24の流下比x/mが80%−100%、取水比z/mが0%−20%の範囲である「一定比率」、「下流優先取水」の部分参照)。
【0116】
第2のゲート8で堰上げ板12から越流がある場合、すなわち、越流による通過流量がある場合、下流側幹線水路22への通水量(通過流量)が増加するので、分水ゲートの取水比は、送水量が増大するに従って下流側幹線水路22への通水量は増大する一方、支線水路21への分水量は一定の量のままとなり、潜流調整板10が閉じられ越流のみ許容すると、分水が遮断され全量が通水されるので、(Z/M)≧(z/m)≧0となる。このように本発明のモデルM−Iでは、従来のモデルM−IIと比較して、(Z/m)≧b≧(Z/M)の範囲bが第1のゲート6の制御対象から除外される点が異なっている。このように、本発明のモデルM−Iでは、分水ゲート(支線水路21)の利用者は、送水量に対して最大の取水量を確保するとしても、分水口4側の取水比z/mは(Z/M)≧(z/m)≧0に基づいて最大のZ/Mの取水比が確保され、上流側幹線水路20からの送水量mないしZに係わらず、一定の分水比での配水が実現する。
【0117】
図24ないし図28のぞれぞれのグラフでは、縦軸に支線水路21の取水比z/mを、横軸に本線水路22の流下比x/zを示し、分水操作を表現している。縦軸と横軸との和が一直線上にあるのは、送水量を支線水路21の取水と本線水路22の流下で分け合っており、総和が100%になることを意味する。これらグラフではいずれも、水路がZ/M=0.2で設計の最大通水量での支線水路の取水比を20%としている。
【0118】
図25は、幹線水路20の送水量が最大送水量Mの場合の従来のモデルM−IIによる操作を示す。支線水路21への取水が最大取水量Zを取った場合の分水比は20%で、取水制限をした場合には、これより小さい値となり、図25中、「一定比率」および「下流優先取水」の領域で操作ができる。次に、幹線水路20の送水量が減少し、m=0.6×Mになった場合の例を図26に示す。支線水路21への最大取水量Zは、Z=0.2×Mとなるので、支線水路21には、最大で0.2×Mの取水が可能である。このときの操作は図中、三角形の印で示す。このときの本線22の流下流量(通水量)xは(0.6×M)−(0.2×M)=0.4×Mとなる。支線水路21の取水比z/m=(0.2/0.6)=0.333で、下流側幹線水路22の流下比x/m=(0.4/0.6)=0.666となる。これが最大の取水可能な量であり、操作可能な領域は図26の三角形マークの右側になる。この場合、本線水路22の流下比x/mは0.66(=(0.4×M)/(0.6×M))で、設計時の流下比の値0.8=1.0−0.2を下回っている。
【0119】
次に、従来のモデルM−IIについて、本線20の送水量mを0<m<Z、つまり、幹線20の送水量全量を支線水路21に導入可能な場合と、Z<m<M、つまり、幹線20の送水量の一部を下流側幹線水路22へ通水する場合とに分けて考える。
(i)0<m<Zの場合を図27に示す。この図27で明らかなように、ここでは、支線水路21に幹線20の送水量の全量を導入可能であり、従来のモデルM−IIでは、支線水路21の取水比で0%〜100%のすべての範囲、本線水路22の流下比で0%〜100%のすべての範囲で操作が可能になっている。
(ii)Z<m<Mの場合を図28に示す。ここでは、支線水路21の最大取水量は、z=Zのときに生じ、これにより従来のモデルM−IIでは、取水を絞り込む範囲の操作が可能である。
このように、幹線送水量が最大の送水量Mの場合を除けば、従来のモデルM−IIでは、設計時の取水配分比率(図24ないし図28中、「一定比率」と表記)の他に、図中左側の「上流優先取水」(支線水路21側の分水優先)と図中右側の「下流優先取水」(下流側幹線水路22側の通水優先)の2つの領域で取水が可能である。このため、支線水路21の利用者は、より有利な、「上流優先取水」の領域で取水を実現させ、下流の水不足を発生させてきた。つまり、従来のモデルM−IIでは、上流の過剰取水、下流の取水不足を招く構造的な性質がある。
【0120】
これに対し、本願発明のモデルM−Iでは、幹線22の流下比の最小値は、送水量の影響を受けず、一定になる。このため、下流側幹線水路22の流下比x/mは、x/m=1−(Z/M)=0.8で目標値(図24中、丸い円の部分で示す)に一致する。図24の丸形マークの右側に本発明モデルM−Iの操作可能範囲を示している。本発明で操作可能な範囲は、設計時の取水配分比率(図24中、「一定比率」と表記)の他には、図24の右側の「下流優先取水」の領域のみで取水が可能である。このため、支線水路21の利用者は、最も有利な一定比率取水を実現させた場合でも、下流での水不足は発生しない。図29は、支線水路取水の操作可能範囲を幹線送水量との関係で示したものである。本発明のモデルM−Iで操作可能な場合を右辺と底辺とが直角をなす三角形の領域α(本発明モデルM−Iの取水操作可能な領域=α)で示されている。従来のモデルM−IIで操作可能な場合は、上記領域αとこの領域αの上辺の上側にある2つのより小さい三角形の領域β、γ(従来のモデルM−IIの取水操作可能な領域=α+β+γ)で示されている。従来のモデルM−IIでは、領域α、β、γでなす台形部分の組み合わせが可能となり、領域β、γの部分では、上流優先取水、すなわち、支線水路21側の分水優先を許すことになり、支線水路の取水比z/mが目標設定値より大きくなる一方、本線流下比x/mは目標設定値より小さくなっている(図26ないし図28参照)。これに対し、本発明のモデルM−Iでは、操作可能な範囲が大三角形αで示され、支線水路21の取水比z/mは、目標設定値またはそれ以下になっている。
【実施例7】
【0121】
次に、本発明の第7の実施例に係る水路の分水機構602について説明する。本発明の第7の実施例に係る水路の分水機構602は、上記第1ないし第6の実施例に係る水路の分水機構2、102、202、302、402が、潜流を許容する潜流調整板10、110、210、310、311、410、411の下端を水平に形成し、水路底面に接すると、下端からの潜流を遮断するようにしているのに対し、図30に示すように、潜流調整板610の通水口605側の下端部を切り欠くようにした点が異なっている。この第7の実施例に係る水路の分水機構602は、通水口605と分水口604とには、これら両口605、604にわたって上下に変位する潜流調整板610が設けられる。潜流調整板610は、上下方向寸法を水路の設計水位の高さ寸法より短寸に形成されるとともに、通水口605側の下端部が切り欠かれて切り欠き部610Aが形成される。このため、下流側幹線水路622には、渇水・平水時でも、常時、潜流が確保されるようになっている。このため、分水比に差を設けて設定することができるようになっている。なお、符号603A,603Bはそれぞれ水路の側壁を、603Cは水路底面を、605は通水口側水路を、607は分水壁を、621は支線水路を、622は下流側幹線水路をそれぞれ示す。
【実施例8】
【0122】
次に、本発明の第8の実施例に係る水路の分水機構702について説明する。本発明の第8の実施例に係る水路の分水機構702は、上記第1ないし第7の実施例に係る水路の分水機構2、102、202、302、402、602が、幹線水路20、22、122、209(222)、322、422、522の通水口5、105、205、305、405、605に単一の潜流調整板10、110、210、311、411、610を設けるようにしているのに対し、大規模な水路(幹線水路幅の広い水路)に適用できるように、幹線水路703の通水口705には、複数の潜流調整板711A〜711Dを並べて配置し、これら複数の潜流調整板711A〜711Dと分水口704側の潜流調整板710とを同期させて上下に変位させる点が異なっている。この第8の実施例に係る水路の分水機構702は、図32に示すように、水路703の両側壁703A、703Bに水路幅方向を合致させて一対の支柱706A、706Bが設置される。これら支柱706A、706B間には、支持ガイド707A〜707Dを介して複数の潜流調整板711A〜711Dと越流調整板715が配置される。支持ガイド707A〜707Dは、支柱706A、706Bとともに図示しない縦溝(ガイド)を有し、各潜流調整板711A〜711Dの両側と越流調整板715の両側とを滑動自在に支持するようになっている。
【0123】
幹線水路703の一方の側壁703Aには、支線水路721の分水口704が形成され、分水口704には、下端面が水路底面に合致して平坦に形成され上下方向に変位し所望の位置で保持される潜流調整板710が設置される。通水口705側の第1の潜流調整板(取水口の最近傍の潜流調整板)711Aと分水口704側の潜流調整板710とは、連結バー(連結機構)716で連結され同期して一体に上下動するようになっている。第1の潜流調整板711Aの下端には、隣の第2の潜流調整板711Bの下面切り欠き部714Bに嵌るストッパ713Aが、第2の潜流調整板711Bの下端には、隣の第3の潜流調整板711Cの下面切り欠き部714Cに嵌るストッパ713Bが、第3の潜流調整板711Cの下端には、隣の第3の潜流調整板711Dの下面切り欠き部714Dに嵌るストッパ713Cがそれぞれ形成される。これらストッパ713A〜713Cと切り欠き部714B〜714Dとにより支持機構を構成している。本実施例に係る水路の分水機構702では、図示しない変位手段により第1の潜流調整板711Aが上方に変位されると、この第1の潜流調整板711Aに同期して、分水口704側の潜流調整板710とともに第2ないし第4の潜流調整板711B、711C、711Dも上方に変位されるようになっている。図示しない変位手段により第1の潜流調整板711Aが下方に変位されると、分水口704側の潜流調整板710は第1の潜流調整板711Aに同期して下方に変位されるとともに、第2の潜流調整板711Bから順に第4の潜流調整板(取水口から最遠の潜流調整板)711Dまで連動して降下するようになっている。なお、上記水路の分水機構702では、連結バー716を両潜流調整板710、711Aとの連動機構として構成しているが、第1の潜流調整板711Aの開度が分水口704側の潜流調整板710の開度より優先するようにストッパを設置することもできる。また、上記実施例では、分水口側潜流調整板710と通水口側の第1の潜流調整板711Aとを連結バー716により連結し図示しない変位手段により連動させるようにしているが、これに限られるものではなく、連結バー716と変位手段とを、両板710、711Aにそれぞれ一端が連結された各ワイヤを巻き取り車に引き出し自在に巻き取るようにして連動させるように構成してもよいし、両板710、711Aにそれぞれ下端が取り付けられて立設されたねじ切りロッドに噛合する歯車を設け、これら両歯車を同期させて回転させる連動機構により連動させるように構成してもよい。
【0124】
なお、上記第8の実施例に係る水路の分水機構702では、分水口704側の潜流調整板710の下端面は平坦に形成され、第1ないし第4の潜流調整板711A〜711Dのようなストッパやこのストッパに嵌る切り欠き部が設けられていないが、これに限られるものではなく、例えば、通水口と分水口とを同一水路面に形成し、分水口側のゲートを支柱706Aと707Aと第1の潜流調整板711Aとにより構成し、通水口側のゲートを支柱707A、707B、707C、707D、706Bとこれら支柱707A〜707D、706B間に配設される第2の潜流調整板711B、711C、711Dと越流調整板715とにより構成し、分水口側潜流調整板(第1の潜流調整板)711Aとこの分水口側潜流調整板711Aと隣接する通水口側潜流調整板(第2の潜流調整板)711Bとを連結バー716で連結して同期させ、図示しない変位手段により一体に上下動させるようにしてもよい。
【実施例9】
【0125】
図34の(A)ないし(C)はそれぞれ、上記第8の実施例に係る水路の分水機構702のストッパ713A、713B、713Cの第1の変形例を示すもので、上記第8の実施例に係る水路の分水機構702のストッパ713A、713B、713Cが潜流調整板711A〜711Cの下端に設けられている、つまり、下端に支持機構が設けられているのに対し、上部に設けられている点が異なっている。すなわち、第8の実施例の第1の変形例に係る水路の分水機構702Aでは、第1の潜流調整板711Aの上部にはコ字状支持部材717の一端が取り付けられる。支持部材717の延長端は、第4の潜流調整板711Dに近い隣の第2の潜流調整板711Bに及んで延長され、この延長端に平坦な載置面718が形成される。第2の潜流調整板711Bには、下面がこれら両潜流調整板711A、711Bの最下端位置にあるとき、支持部材717の延長端載置面718に載置される当接部材719が取り付けられる。当接部材719の下面には尖頭突部が形成され、折曲された延長端718の内側に収まるようになっている。これら支持部材717は、第2、第3の潜流調整板711B、711Cにもそれぞれ順に設けられ、第2の潜流調整板711Bの支持部材717は、第3の潜流調整板711Cの当接部材719に、第3の潜流調整板711Cの支持部材717は、第4の潜流調整板(取水口から最遠の潜流調整板)711Dの当接部材719にそれぞれ当接するようになっている。このため、この変形例に係る水路の分水機構では、図示しない変位手段により第1の潜流調整板711Aが上方に変位されると、この第1の潜流調整板711Aに同期して、分水口704側の潜流調整板710が上方に変位されるとともに、第1の潜流調整板711Aが支持部材717と当接部材719とを通じて第2の潜流調整板711Bを、第2の潜流調整板711Bが支持部材717と当接部材719とを通じて第3の潜流調整板711Cを、第3の潜流調整板711Cが支持部材717と当接部材719とを通じて第4の潜流調整板711Dをそれぞれ順次同期して上方に変位させるようになっている。図示しない変位手段により第1の潜流調整板711Aが下方に変位されると、分水口704側の潜流調整板710は第1の潜流調整板711Aに同期して下方に変位されるとともに、第2の潜流調整板711Bから順に第4の潜流調整板711Dまで自重で降下するようになっている。
【実施例10】
【0126】
図35は、上記第8の実施例に係る水路の分水機構702のストッパ713A〜713Cの第2の変形例を示すもので、上記第1の変形例に係る分水機構702Aでは、一方の潜流調整板711Aにコ字状支持部材717を取り付け、他方の潜流調整板711Bには、下面が支持部材717の延長端載置面718に載置される当接部材719を設けて構成しているのに対し、第2の変形例に係る水路の分水機構702Bでは、通水口側と分水口側とで隣り合う支柱706A、708Aの上流側近傍に立設されたガイドロッド730に、分水口側潜流調整板720のストッパ722と通水口側潜流調整板721のストッパ723とを係止させるようにして点が異なっている。すなわち、第2の変形例に係る水路の分水機構702Bは、分水口712側の潜流調整板720には、その上端に板状ストッパ722を幹線水路側に突出させて設け、通水口703側の潜流調整板721には、その上端に板状ストッパ723を上流側に突出させて設け、これら両ストッパ722、723の長手方向一端を重なり合うように延長して設け、これら延長端にそれぞれガイド孔724、725を上下に貫通して穿設している。各潜流調整板720、721の上端部中央には、それぞれ図示しない変位手段に連結され、これら潜流調整板720、721を上下に変位させる操作ロッド720A、721Aが立設される。通水口側と分水口側とで隣り合う支柱706A、708Aの上流側近傍には、ガイドロッド730を立設し、まず、分水口側潜流調整板720の板状ストッパ722をガイド孔724を介してガイドロッド730に係止させ、次に、通水口側潜流調整板721の板状ストッパ723をガイド孔725を介してガイドロッド730に係止させるようにしている。このように、第2の変形例に係る水路の分水機構702Bでは、両ストッパ722、723とガイドロッド730とにより、分水口側潜流調整板720が通水口側潜流調整板721より上方へ変位するのを規制する規制機構を構成するようになっている。このため、図示しない変位手段によりこれら両潜流調整板720、721を同期させて上下に変位させる際には、分水口側潜流調整板720は通水口側潜流調整板721より上方への変位が規制され、必ず下方側に位置するので、分水口側への過剰な分水を避けることができる。
【実施例11】
【0127】
図36は、上記第8の実施例に係る水路の分水機構702の第3の変形例を示すもので、上記第2の変形例に係る分水機構702Bでは、板状ストッパ722、723をそれぞれ各潜流調整板720、721の上端に設けているのに対し、板状ストッパ742、743をそれぞれ操作ロッド720A、721Aに取り付けて、ガイドロッド750に係止させた点が異なっている。第8の実施例の第3の変形例に係る水路の分水機構702Cでは、板状ストッパ742、743はそれぞれ、潜流調整板720,721が最下方位置、すなわち、潜流を阻止する位置にあるとき、支柱708A、708B、706A、707Aと干渉しない位置で長手方向を各潜流調整板720,721の上端面長手方向と合致させて操作ロッド720A、721Aに取り付けられる。板状ストッパ742、743はそれぞれ、上記第2の変形例と同様に、これら両ストッパ742、743の長手方向一端を重なり合うように延長して設け、これら延長端にそれぞれガイド孔744、745を上下に貫通して穿設している。ガイドロッド750は、隣り合う支柱706A、708Aの近傍で、通水口側の両支柱707A、706Aを結ぶ方向と分水口側の両支柱708B、708Aを結ぶ方向とが合致する位置に立設される。このように、第3の変形例に係る水路の分水機構702Cでは、両ストッパ742、743とガイドロッド750とにより、分水口側潜流調整板720が通水口側潜流調整板721より上方へ変位するのを規制する規制機構を構成するようになっている。このため、分水口側潜流調整板720は通水口側潜流調整板721より常に下方に位置するとともに、板状ストッパ742、743は水に触れにくくより確実にストッパとしての機能を果たすことができる。
【実施例12】
【0128】
次に、本発明の第9の実施例に係る水路の分水機構802について説明する。本発明の第9の実施例に係る水路の分水機構802は、上記第8の実施例およびその変形例に係る水路の分水機構702が、幹線水路703の通水口705には、複数の潜流調整板711A〜711Dを並べて配置し、変位手段により第1の潜流調整板711Aを上下動させ、連結バー716により分水口側の潜流調整板710を、支持機構713A〜713C、714B〜714D、717、719により通水口側の潜流調整板711A〜711Dをそれぞれ同期させ、これら複数の潜流調整板711A〜711Dと分水口704側の潜流調整板710とを上下に変位させるように構成しているのに対し、支持機構を用いないで、各潜流調整板710、711A〜711Dを油圧により同期させて上下動させるようにした点が異なっている。
【0129】
すなわち、本発明の第9の実施例に係る水路の分水機構802は、図37および図38に示すように、幹線水路703の通水口705に並べて配置された複数の潜流調整板811A〜811Dと、分水口704側に配置された潜流調整板810は、それぞれ独立に上下に変位可能に構成される。水路703の両側壁703A、703Bに水路幅方向を合致させて一対の支柱706A、706Bが設置される。これら支柱706A、706B間には、支持ガイド707A〜707Dを介して複数の潜流調整板811A〜811Dと越流調整板812が配置される。支持ガイド707A〜707Dは、支柱706A、706Bとともに図示しない縦溝(ガイド)を有し、各潜流調整板811A〜811Dの両側と越流調整板812の両側とを滑動自在に支持するようになっている。分水口704側の潜流調整板810も両端が図示しない支柱に上下に変位可能に支持されるようになっている。
【0130】
ところで、この第9の実施例に係る水路の分水機構802は、変位手段が、支持ガイド707A〜707Dの上方に設けられ水路703、712に固定された支持枠812と、各潜流調整板710、711A〜711D毎に支持枠812に取り付けられ各潜流調整板810、811A〜811Dを同期させて上下に変位させる油圧シリンダ813と、これら油圧シリンダ813に配管814を介して圧油を供給する油圧供給機構815とを備えて構成される。各油圧シリンダ813には、非常コック816が設けられる。第9の実施例に係る水路の分水機構802は、このように構成されているので、油圧供給機構815から各油圧シリンダ813に各潜流調整板810、811A〜811Dの開度を同一にするよう所定圧の油圧が導入されると、各潜流調整板810、811A〜811Dは同期して所定の高さに変位される。このため、制御の自動化を図ることができる。非常コック816は、油圧システムの故障時、操作系全体に影響が及ぶのを防ぐために設けられる。
【0131】
図39の(A)、(B)はそれぞれ、油圧シリンダ813の動作方向をそれぞれ示すもので、矢印の方向は油圧シリンダ813の動作方向を示す。矢印の基端部位置が固定側に相当し矢印の延長方向位置、すなわち、延長長さが大気圧を引いた油圧に比例する。図39の(A)に示す構成では、油圧ゼロ(油圧の非導入時)の場合、大気圧と同一で、矢印の長さがゼロになり、各潜流調整板810、811A〜811Dは全閉となる。この場合、支線水路712側への過剰取水発生のおそれがある。このため、図39の(B)に示すように、油圧シリンダ813の動作方向を上下逆にし、カウンターウェイト817を設け、故障時には、各潜流調整板810、811A〜811Dが全開となるようにしてもよい。
【実施例13】
【0132】
次に、本発明の第10の実施例に係る水路の分水機構902について説明する。本発明の第10の実施例に係る水路の分水機構902は、上記第9の実施例に係る水路の分水機構802が変位手段として油圧システム813、814、815を用いているのに対し、機械的な変位装置を用いた点が異なっている。すなわち、第10の実施例に係る水路の分水機構902は、図40および図41に示すように、水路903の分水口904に配設された潜流調整板910Aと通水口905に配設された複数の潜流調整板910B、910Cとを備えている。通水口905の一部には、越流調整板911が設けられる。これら潜流調整板911A〜911C、越流調整板912はそれぞれ水路側壁903A、903Bの幅方向に形成された縦溝906A、906Bと支持ガイド907とにより上下に変位可能に支持される。支持ガイド907の上方には、両端が水路903に固定された支持枠912が配設される。
【0133】
各潜流調整板911A〜911Cの上端中央部には、雌ねじ部913が設けられ、この雌ねじ部913には、上下に雄ねじ部が形成されたねじロッド914が螺装される。ねじロッド914の上端には、ウォームホイール915が取り付けられる。支持枠912には、軸受け916を介してウォームシャフト917が回動自在に支持される。そして、このウォームシャフト917のギヤ部918がそれぞれねじロッド914のウォームホイール915に噛合するようになっている。ウォームシャフト917の突出端には、操作ホイール919が取り付けられる。第10の実施例に係る水路の分水機構902は、このように構成されているので、操作ホイール919を一方向に回すと、ウォームシャフト917が一体に回動し、各ウォームホイール915を同一の方向に回転させる。このため、各潜流調整板911A〜911Cの雌ねじ部913に螺合されたねじロッド914はいずれも同一方向に回動して各潜流調整板911A〜911Cを同期させて上方または下方に変位させるようになっている。このように、第10の実施例に係る水路の分水機構902では、操作ホイール919が操作されると、各潜流調整板911A〜911Cは同期して上下に変位されるように構成されているので、簡素な構造で、水を確実に一定の分水比で配分操作することができる。また、きめ細かく各潜流調整板911A〜911Cの開度を調整することができる。
【実施例14】
【0134】
次に、本発明の第11の実施例に係る水路の分水機構1002について説明する。本発明の第11の実施例に係る水路の分水機構1002は、上記第10の実施例に係る水路の分水機構902が変位手段として、各潜流調整板911A〜911Cの上端中央部に設けられた雌ねじ部913と、この雌ねじ部913に螺装されるねじロッド914と、ねじロッド914の上端に取り付けられたウォームホイール915と、支持枠912の軸受け916を介して回動自在に支持されるウォームシャフト917と、ねじロッド914のウォームホイール915に噛合するウォームシャフト917のギヤ部918と、ウォームシャフト917の突出端に取り付けられた操作ホイール919とを備えて構成し、操作ホイール919の回動により、各潜流調整板911A〜911Cを同期させて変位させるようにしているのに対し、図42に示すように、変位手段を、一端が潜流調整板1010上端部1010Aの左右両側にそれぞれ連結されたワイヤ1011、1012と、ワイヤ1011、1012の他端を連結して引き出し自在に巻き取るとともに同一軸心上に配置されたプーリ1013、1014と、これら各プーリ1013、1014の互いに向かい合う一側面1013A、1014Bから延びる回動伝達軸(軸)1015、1016同士を連結してこれら両回動伝達軸1015、1016を同期させる第1のコネクタ(潜流調整板水平同期手段)1017と、プーリを正逆に回動させる操作ハンドル(回動操作手段)1018とを備えて構成した点が異なっている。第1のコネクタ1017は、回動伝達軸1015、1016の衝合端にそれぞれ歯車(図示せず)を設けこれら歯車同士を噛合させて両軸1015、1016の同期をとるようになっている。
【0135】
すなわち、本発明の第11の実施例に係る水路の分水機構1002は、操作ハンドル1018によりプーリ1013を正逆に回動させると、他方のプーリ1014が第1のコネクタ1017を通じて同期して回動し、プーリ1013、1014の回動に応じてワイヤ1011、1012が潜流調整板1010の左右両側を上下動させる。このとき、各プーリ1013、1014は第1のコネクタ1017により回動伝達軸1015、1016を介して同期されるので、ワイヤ1011、1012は潜流調整板上端部1010Aの左右両側を水平を確保して上下動させるようになっている。このため、本発明の第11の実施例に係る水路の分水機構1002は、上記第10の実施例に対し、簡素な構造で潜流調整板1010を水平を確保して上下動させることができるようになっている。
【実施例15】
【0136】
次に、本発明の第12の実施例に係る水路の分水機構1102について説明する。本発明の第12の実施例に係る水路の分水機構1102は、上記第11の実施例に係る水路の分水機構1002が、1枚の潜流調整板1010をプーリ1013、1014と第1のコネクタとを通じて水平に上下に変位させるようにしているのに対し、図43に示すように、本実施例では、同一水路面上に配置された2枚の潜流調整板1010、1020を備え、変位手段がこれらすべての潜流調整板(本実施例では2枚)を水平を確保し、かつ、両者を同期させて上下に変位させるようにした点が異なっている。
【0137】
すなわち、本発明の第12の実施例に係る水路の分水機構1102は、同一水路面上に配置され図示しない支持ガイドにより上下に変位可能に支持される第1第2の潜流調整板1010、1020毎に変位手段が設けられる。第1の潜流調整板1010の変位手段は、上記第11の実施例と同様に、一端が第1の潜流調整板1010の上端部1010Aの左右両側にそれぞれ連結されたワイヤ1011、1012と、これらワイヤ1011、1012の他端を連結して引き出し自在に巻き取るとともに同一軸心上に配置されたプーリ1013、1014と、これら各プーリ1013、1014の互いに向かい合う一側面1013A、1014Bから延びる回動伝達軸1015、1016同士を連結してこれら両回動伝達軸1015、1016を同期させる第1のコネクタ(潜流調整板水平同期手段)1017とを備えて構成される。プーリ1013の他側面1013Bには、このプーリ1013を正逆に回動させる操作ハンドル1018が取り付けられる。
【0138】
第2の潜流調整板1020側の変位手段は、一端が第2の潜流調整板1020の上端部1020Aの左右両側にそれぞれ連結されたワイヤ1021、1022と、これらワイヤ1021、1022の他端を連結して引き出し自在に巻き取るとともに同一軸心上に配置されたプーリ1023、1024と、これら各プーリ1023、1024の互いに向かい合う一側面1023A、1024Bから延びる回動伝達軸1025、1026同士を連結してこれら両回動伝達軸1025、1026を同期させる第1のコネクタ(潜流調整板水平同期手段)1027とを備えて構成される。第1のコネクタ1017、1027はそれぞれ、回動伝達軸1015、1016と1025、1026の衝合端にそれぞれ歯車(図示せず)を設けこれら歯車同士を噛合させて各軸1015、1016と1025、1026の同期をとるようになっている。
【0139】
ところで、本実施例に係る水路の分水機構1102の変位手段は、第1の潜流調整板1010の変位手段と第2の潜流調整板1020の変位手段を同期させる第2のコネクタ(全潜流調整板水平同期手段)1037を備えている。すなわち、第2のコネクタ1037は、隣接するこれら第1第2の潜流調整板1010、1020の各プーリ1013、1014、1023、1024のうち、他方の潜流調整板1010、1020の近接したプーリ1014、1023の他方の側面1014A、1023Bから延びる回動伝達軸(回動伝達手段)1035、1036同士を連結してこれら両回動伝達軸1035、1036を同期させるようになっている。このため、操作ハンドル1018が回動操作されると、この回転はプーリ1013から順に回動伝達軸1015−第1のコネクタ1017−回動伝達軸1016−プーリ1014−回動伝達軸1035−第2のコネクタ1037−回動伝達軸1036−プーリ1023−回動伝達軸1025−第1のコネクタ1027−回動伝達軸1026−プーリ1024に伝達される。こうして、第12の実施例に係る水路の分水機構1102では、両潜流調整板1010、1020を水平を確保し、かつ、両者を同期させて上下に変位させることができるようになっている。すなわち、第2のコネクタを用いることにより、2枚の潜流調整板1010、1020を同期をとった上で、配置の自由度を高くすることができる。
【実施例16】
【0140】
次に、本発明の第13の実施例に係る水路の分水機構1202について説明する。本発明の第13の実施例に係る水路の分水機構1202は、上記第12の実施例に係る水路の分水機構1102が、同一水路面上に配置された2枚の潜流調整板1010、1020を水平に上下に変位させるようにしているのに対し、図44に示すように、本実施例では、分水口1204を上流側幹線水路1220の側壁1220Aに形成し、通水口1205を分水口1204より下流側の下流側幹線水路1222の水路面に配し、これら分水口1204と通水口1205とにそれぞれ別体で上下方向に変位し所望の位置で保持される潜流調整板1040、1050をそれぞれ設置し、変位手段がこれら2枚の潜流調整板1040、1050を水平を確保し、かつ、両者を同期させて上下に変位させるようにした点が異なっている。
【0141】
すなわち、第13の実施例に係る水路の分水機構1202は、第1の潜流調整板1040と第2の潜流調整板1050にはそれぞれ、上記第12の実施例と同様に、両プーリ1013、1014および1023、1024とこれら両プーリ1013、1014および1023、1024間を回動伝達軸1015、1016および1025、1026を介して連結する第1のコネクタ1017および1027とが設けられる。そして、第1の潜流調整板1040は分水口1204に、第2の潜流調整板1050は通水口1205にそれぞれ設置されているので、これら第1の潜流調整板1040のなす面と第2の潜流調整板1050のなす面とが直角になり、第1の潜流調整板1040側の回動伝達軸1015,1016の軸方向と第2の潜流調整板1050側の回動伝達軸1025,1026の軸方向とは直角となる。このため、第2のコネクタ1047は、90度の角度で隣接するこれら第1第2の潜流調整板1040、1050の各プーリ1013、1014、1023、1024のうち、他方の潜流調整板1040、1050の近接したプーリ1014、1023の他方の側面1014A、1023Bからそれぞれ延びる回動伝達軸1045、1046同士を連結してこれら両回動伝達軸1045、1046を90度の角度で図示しない傘歯車で連結し同期させるようになっている。このように、本実施例では、潜流調整板1040、1050が配置される角度の変化に対する自由度を高くすることができる。
【実施例17】
【0142】
次に、上記第13の実施例の変形例に係る水路の分水機構1302について説明する。第13の実施例の変形例に係る水路の分水機構1402は、上記第13の実施例に係る水路の分水機構1302が、直角に配置された第1第2の潜流調整板1040、1050の間に、第2のコネクタ1047を設けるようにしているのに対し、図45に示すように、この第2の1047と第2の潜流調整板1050のプーリ1023側との間に回転数変換機1049を設けた点が異なっている。係る構成とすることにより、確実に同期をとることができる。
【実施例18】
【0143】
次に、本発明の第14の実施例に係る水路の分水機構1402について説明する。本発明の第14の実施例に係る水路の分水機構1402は、上記第12および第13の実施例に係る水路の分水機構1102、1202が、第2のコネクタ1037、1047を単体で構成しているのに対し、第2のコネクタ1067A、1067B、1067Cを複数台で構成している点が異なっている。すなわち、本実施例に係る水路の分水機構1402は、図46に示すように、直角に配置された第1第2の潜流調整板1040、1050の近接したプーリ1014、1023の他方の側面1014A、1023Bからそれぞれ延びる回動伝達軸1065、1066に連結される第2のコネクタ1067A、1067Cを備えるとともに、こられ第2のコネクタ1067A、1067C間にほぼ45度に傾斜して設けられ第2のコネクタ1067A、1067Cからそれぞれ延びる回動伝達軸1068、1069に連結される第2のコネクタ1067Bを備えている。この中間の第2のコネクタ1067Bは、各回動伝達軸1068、1069と傾斜して連結されるようになっている。このように、本実施例では、第2のコネクタを、複数のコネクタ1067A、1067B、1067Cにより構成したことにより、第2のコネクタの小型化が可能となる。
【実施例19】
【0144】
次に、本発明の第15の実施例に係る水路の分水機構1502について説明する。本発明の第15の実施例に係る水路の分水機構1502は、上記第12ないし第14の実施例に係る水路の分水機構1102〜1402が、回動伝達軸を剛体の軸材で構成しているのに対し、図47に示すように、第2のコネクタ1077と各プーリ1014、1023と
の間を弦巻ばね1075、1076とにより連結した点が異なっている。この実施例では、弦巻ばね1075、1076を回転伝搬手段として用い2枚の潜流調整板1040、1050を同期させるようにしている。
【実施例20】
【0145】
次に、本発明の第16の実施例に係る水路の分水機構1602について説明する。本発明の第16の実施例に係る水路の分水機構1602は、上記第1の実施例に係る水路の分水機構2が、水位制御装置を、支柱6B、6Cと堰上げ板12とにより構成される第2のゲート8により構成し、堰上げ板12の上端越流部12Aから下流側に水を越流させ、上端越流部12Aの上下位置に応じて上流側の水位を調整するようにしているのに対し、図48に示すように、水位制御装置をスルースゲート1608により構成した点が異なっている。すなわち、スルースゲート1608は、支柱6B、6Cとこれら支柱6B、6C間に上下動自在に設けられた扉板(水位制御用潜流板)1612とにより構成される。このスルースゲート1608は、扉板1612の下端部1612Aからの潜流を許容し、上端部1612Bからの越流を阻止するようになっている。扉板1612は、図示しない扉板変位装置(水位制御用潜流板変位装置)により扉板1612の下端部1612Aを上下に変位させて保持されるようになっている。このため、本実施例に係る水路の分水機構1602では、扉板1612の下端部1612Aの位置により上流側の水位がどのレベルに達すると通水口下流側への流下を優先させるか決定することができるようになっている。
【0146】
なお、上記実施例では、変位手段を、支持枠6A、6C、6Eと、この支持枠6A、6C、6Eの上枠6Eを上下に貫通して螺合され下端が潜流調整板10の上端に回動自在に連結され上端に工具(回動ハンドル、図示せず)を嵌め入れて操作する調整ロッド11とにより構成しているがこれに限られるものではなく、潜流調整板10を上下に変位させ所定の位置で保持する変位装置であればよい。また、上記実施例6では、従来例のモデルM−IIとして、通水口5側の第1の潜流調整板C10Aと分水口4側の第2の潜流調整板C10Bとをそれぞれ独立に上下に操作する例を示しているが、たとえこれら両潜流調整板が別体であっても、図15に示す上記実施例4と同様に開度調整装置によりこれら両板を一体に変位可能に同期させるよう構成してもよく、両板が別体で変位する既設の施設についても本願発明の構成を適用することができる。さらに、上記実施例では、灌漑水路などの農業用水路やパイプラインについて述べているがこれらに限られるものではなく、流体を本線と支線とに分配して流下させる構造物についても適用可能であることはいうまでもない。また、上記実施例では、潜流調整部材を一枚板の潜流調整板により構成しているがこれに限られるものではなく、折り畳まれた多数の板を水路上方に配置し、伸縮させて下端部から潜流を生じさせるようにしてもよい。さらに、上記各実施例では、通水口と分水口との開口形状を矩形状としているがこれに限られるものではなく、例えば、開口形状が円形や台形、逆三角形のように非矩形状の相似形であっても潜流調整部材の上下変位の量と開口面積の増減とを比例させるように構成すれば、通水口を通過する通水量と分水口を通過する分水量とにより求められる分水比率が常にほぼ一定となり、分水と通水との水量の配分をこの分水比率に基づいて行うようにすることができる。また、上記第11ないし第15の実施例では、ワイヤの一端を潜流調整板の上端部に連結するようにしているがこれに限られるものではなく、潜流調整板上端部の左右両側にそれぞれシーブを設け、このシーブにワイヤを巻回し、シーブに巻回されたワイヤをプーリに巻き取るようにしてもよい。
【符号の説明】
【0147】
2 水路の分水機構
4 分水口
5 通水口
10 潜流調整板(潜流調整部材)
11 調整ロッド(変位手段)
20、22 幹線水路
21 支線水路
【技術分野】
【0001】
本発明は、幹線水路と支線水路とに流水を配分操作する水路の分水機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、灌漑水路などの開水路で水を配分するにあたり、渇水などで送水量が減少した場合、上流優先の取水が水争いの主な原因となり、配分比の確保が大きな問題となる。渇水時の水管理の手法としては、歴史的に番水が行われていた。番水の機能としては、(1)取水水位の確保、(2)水路からの浸透損失の減少および(3)ルールを守った確実な水の配分操作である。しかしながら、番水は効果的ではあるものの非常に労力が大きいという難点がある。
【0003】
そこで、従来、取水水位の確保と水路からの浸透損失の減少という上記2点を解消する手法として、水路のコンクリート化と分水ゲートとチェックゲートとの組み合わせによる分水装置が提案されている。この分水装置は、幹線水路から水流の一部を支線水路へ分水する分水口と残りの水流を下流へ通水する通水口とにそれぞれ流量制御装置を設け、各口を通過する水流を制御するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。流量制御装置は、分水口側に設けられた分水口側支線取水ゲート(分水ゲート)と、通水口側に設けられた通水口側幹線チェックゲート(チェックゲート)とにより構成され、それぞれ独立に制御されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平5−9808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術では、チェックゲートと分水ゲートとがそれぞれ独立に制御されるため、通水口を通過する通水量と分水口を通過する分水量との分水比率(分水比=分水量/通水量)の制約がない。このため「ルールを守った確実な水配分操作」ができないという課題がある。特に、分水口側の取水水位を上げるために通水口側のチェックゲートの開度を正常な値より小さくすると、支線への過剰な分水が発生し、通水口から下流への通水量が減少して下流の水不足を招く。このように、分水口側での取水水位確保と通水口から下流へ送水量確保はトレードオフとなっている。このため、渇水時には、チェックゲートがあるにも係わらず、ルールを守った操作が行われないため、労力を要する番水を行わなければならないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、簡易な構成で、渇水時でも平水時と同様に通常の管理により水を確実に一定の分水比で配分操作することができる水路の分水機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る水路の分水機構は、幹線水路から水流の一部を支線水路へ分水する分水口と残りの水流を下流へ通水する通水口とに設けられ、各口を通過する水流を制御する流量制御装置を備えた水路の分水機構において、流量制御装置を、下端が両口に上下に変位可能に設けられた潜流調整部材とこの潜流調整部材の下端を上下に変位させて保持する変位手段とを備えて構成し、両口をともにほぼ同一の高さで開き潜流調整部材の下方で水流の通過を許容するようにしたことを特徴としている。
【0008】
本発明の請求項1に係る水路の分水機構では、幹線水路から水流の一部を支線水路へ分水する分水口と残りの水流を下流へ通水する通水口とに設けられ、各口を通過する水流を制御する流量制御装置を備えた水路の分水機構において、流量制御装置を、下端が両口に上下に変位可能に設けられた潜流調整部材とこの潜流調整部材の下端を上下に変位させて保持する変位手段とを備えて構成し、両口をともにほぼ同一の高さで開き潜流調整部材の下方で水流の通過を許容するようにしたことにより、水路では、通水口を通過する通水量と分水口を通過する分水量とにより求められる分水比率が常にほぼ一定となる。分水と通水との水量の配分はこの分水比率に基づいて行われる。このため、たとえ渇水時であっても、分水比率に基づいてルールを守った水の配分が確実に行われる。
【0009】
本発明の請求項2に係る水路の分水機構は、潜流調整部材が、両口にわたって配置され上下方向寸法が水路の設計水位の高さ寸法とほぼ同一または長寸に形成され上端からの越流を阻止する潜流調整板であることを特徴としている。
【0010】
本発明の請求項2に係る水路の分水機構では、潜流調整部材は、両口にわたって配置され上下方向寸法が水路の設計水位の高さ寸法とほぼ同一または長寸に形成され上端からの越流を阻止する潜流調整板であることにより、潜流調整板の上端から越流することがなく、両口を通過する潜流のみにより、分水口下流の水量と通水口下流の水量が決定される。
【0011】
本発明の請求項3に係る水路の分水機構は、流量制御装置を分水口と通水口の一部とに設けるとともに、通水口の残りの部分には上端越流部を所望の高さに設定して越流を許容し上流側の水位を制御する水位制御装置を設けたことを特徴としている。
【0012】
本発明の請求項3に係る水路の分水機構では、流量制御装置を分水口と通水口の一部とに設けるとともに、通水口の残りの部分には上端越流部を所望の高さに設定して越流を許容し上流側の水位を制御する水位制御装置を設けたことにより、通水口上流側の水位を制御することができるので、上流側の水位が所望のレベルに達すると分水比率に基づいた配分に加え、通水口下流側への流下を優先させることができる。すなわち、通水口の残りの部分により潜流以外の余剰な流量が流下される。
【0013】
本発明の請求項4に係る水路の分水機構は、水位制御装置が、水路側壁と流量制御装置との間に上方から差し入れられて下端部が水路底面に当接され、上端越流部が潜流調整板下端部より上方に位置し上流側水位がこの上端越流部より高くなると下流側に水を越流させる堰上げ板を備えて構成されることを特徴としている。
【0014】
本発明の請求項4に係る水路の分水機構では、水位制御装置は、水路側壁と流量制御装置との間に上方から差し入れられて下端部が水路底面に当接され、上端越流部が潜流調整板下端部より上方に位置し上流側水位がこの上端越流部より高くなると下流側に水を越流させる堰上げ板を備えて構成されることにより、堰上げ板の高さにより上流側の水位がどのレベルに達すると通水口下流側への流下を優先させるか決定することができる。
【0015】
本発明の請求項5に係る水路の分水機構は、変位手段が、水路に設けられ潜流調整板の左右両端が差し入れられるガイドと、両ガイドの上方に設けられ水路に固定された支持枠と、この支持枠に螺合され下端が潜流調整板に回動可能に連結され上端が支持枠を貫通して突出するロッドと、このロッドを回動操作する操作部とを備えて構成されることを特徴としている。
【0016】
本発明の請求項5に係る水路の分水機構では、変位手段は、水路に設けられ潜流調整板の左右両端が差し入れられるガイドと、両ガイドの上方に設けられ水路に固定された支持枠と、この支持枠に螺合され下端が潜流調整板に回動可能に連結され上端が支持枠を貫通して突出するロッドと、このロッドを回動操作する操作部とを備えて構成されることにより、操作部が操作されると、ロッドを介して潜流調整板が上下に変位される。
【0017】
本発明の請求項6に係る水路の分水機構は、潜流調整部材を上下方向寸法を水路の設計水位の高さ寸法より短寸に形成した潜流調整板により形成するとともに、分水口と通水口とにわたって上端越流部を所望の高さに設定して越流を許容し上流側の水位を制御する水位制御装置を設け、この水位制御装置を、潜流調整板に左右両端を合致させて摺動自在に重ね合わされ、上下方向寸法が水路の設計水位の高さ寸法より短寸に形成され、潜流調整板と独立に上下に変位可能な越流調整板を備えて構成し、分水口または水位制御装置のうちいずれか一方に、水位制御装置から支線水路側への越流を阻止する越流阻止部を設け、変位手段を、この越流調整板を上下に変位させるとともに、越流調整板の上端越流部を潜流調整板の上端部より上方に、越流調整板の下端部を潜流調整板の下端部より上方に保持し、上流側水位がこの上端越流部より高くなると通水口側に水を越流させるよう構成したことを特徴としている。
【0018】
本発明の請求項6に係る水路の分水機構では、潜流調整部材を上下方向寸法を水路の設計水位の高さ寸法より短寸に形成した潜流調整板により形成するとともに、分水口と通水口とにわたって上端越流部を所望の高さに設定して越流を許容し上流側の水位を制御する水位制御装置を設け、この水位制御装置を、潜流調整板に左右両端を合致させて摺動自在に重ね合わされ、上下方向寸法が水路の設計水位の高さ寸法より短寸に形成され、潜流調整板と独立に上下に変位可能な越流調整板を備えて構成し、分水口または水位制御装置のうちいずれか一方に、水位制御装置から支線水路側への越流を阻止する越流阻止部を設け、変位手段を、この越流調整板を上下に変位させるとともに、越流調整板の上端越流部を潜流調整板の上端部より上方に、越流調整板の下端部を潜流調整板の下端部より上方に保持し、上流側水位がこの上端越流部より高くなると通水口側に水を越流させるよう構成したことにより、変位手段により越流調整板の上端越流部を上流側水位より上方に変位させ、潜流調整板を水路底面から所望の高さ位置でそれぞれ保持すると、ほぼ一定の分水比率で下流側幹線水路と支線水路とに潜流調整板の高さ位置に応じた水量で通水と分水との配分が行われる。変位手段により潜流調整板を水路底面から上方に保持して潜流の流出を許容し、越流調整板の上端越流部を上流側水位より下方に変位させて保持すると、分水比率に基づいて潜流調整板の開放面積に応じた水量が通水口と分水口とにそれぞれ配分されるだけでなく、それ以上の水量を通水口下流側へ流すことができる。すなわち、支線水路には、潜流のみ流入されるので、残りの流量は下流側幹線水路に流下される。このため、幹線側水路が優先される。このため、上流側水位上昇時や余裕時などに幹線水路側と支線水路側とに適切な配分操作を行うことができる。
【0019】
本発明の請求項7に係る水路の分水機構は、変位手段が、水路の側壁に設けられ潜流調整板と越流調整板との左右両端が差し入れられる各ガイドと、両ガイドの上方に設けられ水路に固定された支持枠と、この支持枠にそれぞれ螺合され下端が潜流調整板と越流調整板とに回動可能に連結され、上端がそれぞれ支持枠を貫通して突出する各ロッドと、これら各ロッドをそれぞれ回動操作する操作部とを備えて構成されることを特徴としている。
【0020】
本発明の請求項7に係る水路の分水機構では、変位手段は、水路の側壁に設けられ潜流調整板と越流調整板との左右両端が差し入れられる各ガイドと、両ガイドの上方に設けられ水路に固定された支持枠と、この支持枠にそれぞれ螺合され下端が潜流調整板と越流調整板とに回動可能に連結され、上端がそれぞれ支持枠を貫通して突出する各ロッドと、これら各ロッドをそれぞれ回動操作する操作部とを備えて構成されることにより、潜流調整板側の操作部を操作すると、ロッドを介して潜流調整板が上下に変位され、越流調整板側の操作部を操作すると、ロッドを介して越流調整板が上下に変位される。しかも、変位手段は、越流調整板の上端越流部を潜流調整板の上端部より上方に、越流調整板の下端部を潜流調整板の下端部より上方に保持するようにしているので、越流調整板の上端越流部は潜流調整板の下端部より常に上方に保持される。
【0021】
本発明の請求項8に係る水路の分水機構は、越流阻止部が、分水口の上側を覆って形成される壁であることを特徴としている。
【0022】
本発明の請求項8に係る水路の分水機構では、越流阻止部が、分水口の上側を覆って形成される壁であることにより、支線水路には、最大で分水口の開口面積に応じた流量が潜流として流入され、残りの流量は下流側幹線水路に流下される。このため、幹線側水路が優先される。
【0023】
本発明の請求項9に係る水路の分水機構は、越流阻止部が、支持枠または越流調整板のうちいずれか一方に設けられ分水口の上側を常時覆う越流阻止板であることを特徴としている。
【0024】
本発明の請求項9に係る水路の分水機構では、越流阻止部が、支持枠または越流調整板のうちいずれか一方に設けられ分水口の上側を常時覆う越流阻止板であることにより、越流阻止板は支線水路への越流を阻止するので、支線水路には、潜流のみ流入され、残りの流量は下流側幹線水路に流下される。このため、幹線側水路が優先される。
【0025】
本発明の請求項10に係る水路の分水機構は、通水口と分水口とが同一水路面に形成されることを特徴としている。
【0026】
本発明の請求項10に係る水路の分水機構では、通水口と分水口とが同一水路面に形成されるようにしたことにより、潜流調整部材を一枚の板により構成することができるので、構造が簡素化される。また、既存の水路で通水口と分水口とにそれぞれ一枚ずつ開閉扉が設けられている場合でも、これらを同期させて変位手段により上下させることにより、潜流調整部材としての機能を果たすことができるので、既存の水路にも適用することができる。
【0027】
本発明の請求項11に係る水路の分水機構は、分水口を幹線水路の側壁に形成し、通水口を分水口より下流側の幹線水路の水路面とするとともに、これら分水口と通水口とにそれぞれ潜流調整板を設け、変位手段はこれら各潜流調整板を同期させて上下に変位させることを特徴としている。
【0028】
本発明の請求項11に係る水路の分水機構では、分水口を幹線水路の側壁に形成し、通水口を分水口より下流側の幹線水路の水路面とするとともに、これら分水口と通水口とにそれぞれ潜流調整板を設け、変位手段はこれら各潜流調整板を同期させて上下に変位させることにより、通水口と分水口が同一水路面に形成されていなくとも、予め決められた分水比率に応じた通水量と分水量とを保持することができる。
【0029】
本発明の請求項12に係る水路の分水機構は、幹線水路には、一端が分水口に向かい合う他方の側壁に開口し他端が他の支線水路に接続される連絡水路が設けられ、連絡水路と通水口下流側の幹線水路との間には、連絡水路からの水流を幹線水路に導き上流側の水位を制御する水位制御装置が設けられることを特徴としている。
【0030】
本発明の請求項12に係る水路の分水機構では、幹線水路には、一端が分水口に向かい合う他方の側壁に開口し他端が他の支線水路に接続される連絡水路が設けられ、連絡水路と通水口下流側の幹線水路との間には、連絡水路からの水流を幹線水路に導き上流側の水位を制御する水位制御装置が設けられるようにしたことにより、連絡水路により上流側幹線水路の水流の一部を水位制御装置により下流側幹線水路に迂回させることができるので、下流側幹線水路への通水を優先させることができる。
【0031】
本発明の請求項13に係る水路の分水機構は、連絡水路と他の支線水路との間には、余水吐が形成されるとともに、水位制御装置が制御する最高水位を余水吐の高さより低く設定したことを特徴としている。
【0032】
本発明の請求項13に係る水路の分水機構では、連絡水路と他の支線水路との間には、余水吐が形成されるとともに、水位制御装置が制御する最高水位を余水吐の高さより低く設定したことにより、余裕時には、下流側幹線水路側に流入する水量が増大しても余水吐を通じて他の支線水路に排出させることができる。
【0033】
本発明の請求項14に係る水路の分水機構は、分水口を通水口と高さを異ならせて形成し、上流側水位が異なる高さの差に達するまで、一方の口への流水の通過を優先させるようにしたことを特徴としている。
【0034】
本発明の請求項14に係る水路の分水機構では、分水口を通水口と高さを異ならせて形成し、上流側水位が異なる高さの差に達するまで、一方の口への流水の通過を優先させるようにしたことにより、分水口底部が通水口底部より高い位置にあり、上流側水位が分水口の底より高い場合、各潜流調整部材からの潜流のみにより分水と通水が行われるので、分水比は予め設定された一定の値となる。他方、上流側水位が分水口の底部より低い場合、支線水路には、分水は行われず、下流側幹線水路への通水が優先される。このため、幹線水路の水路面に対して分水口の配置が多様であっても、上流側水位が分水口の底部以上で予め設定された一定の分水比を保持して分水と通水とを行うことができる。そして、上流側水位が分水口の底部以下では、下流側幹線水路への通水を優先させる。
【0035】
本発明の請求項15に係る水路の分水機構は、潜流調整部材により支線水路へ分水される分水量と下流側幹線水路へ流下する通水量との比により求められる分水比が、潜流調整部材によりそれぞれ開口される両口の開口面積比に基づいて設定されることを特徴としている。
【0036】
本発明の請求項15に係る水路の分水機構では、潜流調整部材により支線水路へ分水される分水量と下流側幹線水路へ流下する通水量との比により求められる分水比が、潜流調整部材によりそれぞれ開口される両口の開口面積比に基づいて設定されることにより、通水口と分水口との形状がたとえ非矩形状の相似形であっても潜流調整部材の上下変位の量と開口面積の増減とが比例しさえすれば、通水口を通過する通水量と分水口を通過する分水量とにより求められる分水比率が常にほぼ一定となり、分水と通水との水量の配分はこの分水比率に基づいて行われる。
【0037】
本発明の請求項16に係る水路の分水機構は、潜流調整部材により支線水路へ分水される分水量と下流側幹線水路へ流下する通水量がそれぞれ、流量係数に基づいて補正されることを特徴としている。
【0038】
本発明の請求項16に係る水路の分水機構では、潜流調整部材により支線水路へ分水される分水量と下流側幹線水路へ流下する通水量はそれぞれ、流量係数に基づいて補正されるようにしたことにより、分水量と通水量とを予め正確に求めることができる。
【0039】
本発明の請求項17に係る水路の分水機構は、潜流調整部材には、通水口側の下端部が切り欠かれ、常時潜流を許容する切り欠き部が形成されることを特徴としている。
【0040】
本発明の請求項17に係る水路の分水機構では、潜流調整部材には、通水口側の下端部が切り欠かれ、常時潜流を許容する切り欠き部が形成されるようにしたことにより、通水口側と分水口側とのうち、切り欠き部が形成された側の水路には、渇水・平水時でも、常時、潜流が確保される。このため、分水比に差を設けることができる。
【0041】
本発明の請求項18に係る水路の分水機構は、通水口には、支持ガイドを介して複数の潜流調整板を並べて配置したことを特徴としている。
【0042】
本発明の請求項18に係る水路の分水機構では、通水口には、支持ガイドを介して複数の潜流調整板を並べて配置したことにより、水路幅の広い大規模な幹線水路であっても、潜流調整板を配置することができ、一定の分水比率に基づいて水の配分が行われる。
【0043】
本発明の請求項19に係る水路の分水機構は、隣り合う潜流調整板には、上下に接離可能に支持され、一方の側の潜流調整板が上昇すると他方の側の潜流調整板を押し上げてともに上昇し、一方の側の潜流調整板が下降すると他方の側の潜流調整板が連動して下降する支持機構を設けるとともに、変位手段を取水口から最遠の潜流調整板から最も離れた取水口の最近傍の潜流調整板に設け、変位手段が取水口の最近傍の潜流調整板を上方に変位させると、隣り合う他方の潜流調整板から取水口の最遠の潜流調整板まで順に上方に変位させて連動させ、変位手段が取水口の最近傍の潜流調整板を下方に変位させると、隣り合う他方の潜流調整板から取水口から最遠の潜流調整板まで順次連動して降下させるよう構成したことを特徴としている。
【0044】
本発明の請求項19に係る水路の分水機構では、隣り合う潜流調整板には、上下に接離可能に支持され、一方の側の潜流調整板が上昇すると他方の側の潜流調整板を押し上げてともに上昇し、一方の側の潜流調整板が下降すると他方の側の潜流調整板が連動して下降する支持機構を設けるとともに、変位手段を取水口から最遠の潜流調整板から最も離れた取水口の最近傍の潜流調整板に設け、変位手段が取水口の最近傍の潜流調整板を上方に変位させると、隣り合う他方の潜流調整板から取水口の最遠の潜流調整板まで順に上方に変位させて連動させ、変位手段が取水口の最近傍の潜流調整板を下方に変位させると、隣り合う他方の潜流調整板から取水口から最遠の潜流調整板まで順次連動して降下させるよう構成したことにより、複数の潜流調整板は同期して上下に変位される。
【0045】
本発明の請求項20に係る水路の分水機構は、支持機構が、一端が潜流調整板に取り付けられ、延長端が取水口から最遠の潜流調整板に近い側の隣の潜流調整板に及んでこの延長端に載置面が形成された支持部材と、この隣の潜流調整板に取り付けられ、下面がこれら両潜流調整板の最下端位置で支持部材の延長端載置面に載置される当接部材とを備えて構成されることを特徴としている。
【0046】
本発明の請求項20に係る水路の分水機構では、支持機構は、一端が潜流調整板に取り付けられ、延長端が取水口から最遠の潜流調整板に近い側の隣の潜流調整板に及んでこの延長端に載置面が形成された支持部材と、この隣の潜流調整板に取り付けられ、下面がこれら両潜流調整板の最下端位置で支持部材の延長端載置面に載置される当接部材とを備えて構成されることにより、変位手段側の潜流調整板が上方に押し上げられると、この潜流調整板の支持部材は隣の潜流調整板の当接部材を押し上げて隣の潜流調整板を同期させて上方に変位させる。変位手段側の潜流調整板が下方に降下されると、支持部材は一体に降下するとともに、隣の潜流調整板は自重により降下する。このため、互いに隣り合う潜流調整板は同期して上下に変位される。
【0047】
本発明の請求項21に係る水路の分水機構は、幹線水路の側壁に形成された分水口側の潜流調整板と、通水口側に設けられ分水口に近い取水口の最近傍の潜流調整板とを連結機構により連結したことを特徴としている。
【0048】
本発明の請求項21に係る水路の分水機構では、幹線水路の側壁に形成された分水口側の潜流調整板と、通水口側に設けられ分水口に近い取水口の最近傍の潜流調整板とを連結機構により連結したことにより、通水口側の潜流調整板と分水口側の潜流調整板とは同期して上下に変位される。
【0049】
本発明の請求項22に係る水路の分水機構は、分水口側潜流調整板が通水口側潜流調整板より上方に変位することを規制する規制機構を設けたことを特徴としている。
【0050】
本発明の請求項22に係る水路の分水機構では、分水口側潜流調整板が通水口側潜流調整板より上方に変位することを規制する規制機構を設けたことにより、分水口側潜流調整板は通水口側潜流調整板より上方への変位が規制され、必ず下方側に位置するので、分水口側への過剰な分水が避けられる。
【0051】
本発明の請求項23に係る水路の分水機構は、規制機構を、各潜流調整板側にそれぞれストッパを一部を上下に重複させて設け、分水口側の潜流調整板側ストッパを通水口側の潜流調整板側ストッパより下方に配置して構成したことを特徴としている。
【0052】
本発明の請求項23に係る水路の分水機構では、規制機構を、各潜流調整板側にそれぞれストッパを一部を上下に重複させて設け、分水口側の潜流調整板側ストッパを通水口側の潜流調整板側ストッパより下方に配置して構成したことにより、簡素な構成で分水口側潜流調整板は通水口側潜流調整板より上方へ変位が規制される。
【0053】
本発明の請求項24に係る水路の分水機構は、変位手段を、潜流調整板間に設けられ潜流調整板の左右両端が差し入れられる支持ガイドと、支持ガイドの上方に設けられ水路に固定された支持枠と、潜流調整板毎に支持枠に取り付けられ潜流調整板を同期させて上下に変位させる油圧シリンダと、これら油圧シリンダに配管を介して圧油を供給する油圧供給機構とを備えて構成したことを特徴としている。
【0054】
本発明の請求項24に係る水路の分水機構では、変位手段を、潜流調整板間に設けられ潜流調整板の左右両端が差し入れられる支持ガイドと、支持ガイドの上方に設けられ水路に固定された支持枠と、潜流調整板毎に支持枠に取り付けられ潜流調整板を同期させて上下に変位させる油圧シリンダと、これら油圧シリンダに配管を介して圧油を供給する油圧供給機構とを備えて構成したことにより、油圧供給機構から各油圧シリンダに所定圧の油圧が導入されると、各潜流調整板は同期して所定の高さに変位される。このため、制御の自動化を図ることができる。
【0055】
本発明の請求項25に係る水路の分水機構は、変位手段を、潜流調整板間に設けられ潜流調整板の左右両端が差し入れられる支持ガイドと、支持ガイドの上方に設けられ水路に固定された支持枠と、上下に形成された雄ねじ部を同一水路面上に並んで配置された潜流調整板の雌ねじ部に螺合させ、上端にウォームホイールが取り付けられたねじロッドと、支持枠に軸受けを介して回動自在に支持され、ギヤ部がそれぞれねじロッドのウォームホイールに噛合するとともに、一端に操作ホイールが取り付けられたウォームシャフトとを備えて構成したことを特徴としている。
【0056】
本発明の請求項25に係る水路の分水機構では、変位手段を、潜流調整板間に設けられ潜流調整板の左右両端が差し入れられる支持ガイドと、支持ガイドの上方に設けられ水路に固定された支持枠と、上下に形成された雄ねじ部を同一水路面上に並んで配置された潜流調整板の雌ねじ部に螺合させ、上端にウォームホイールが取り付けられたねじロッドと、支持枠に軸受けを介して回動自在に支持され、ギヤ部がそれぞれねじロッドのウォームホイールに噛合するとともに、一端に操作ホイールが取り付けられたウォームシャフトとを備えて構成したことにより、操作ホイールが操作されると、ウォームシャフトの回転量に応じて各ねじロッドが同じ方向に同じ量回動され、各潜流調整板が同期してきめ細かく変位される。
【0057】
本発明の請求項26に係る水路の分水機構は、変位手段を、一端が潜流調整板上端部の左右両側にそれぞれ連結されたワイヤと、ワイヤの他端を連結して引き出し自在に巻き取るとともに同一軸心上に配置されたプーリと、これら各プーリの互いに向かい合う一側面から延びる軸同士を連結してこれら両軸を同期させる潜流調整板水平同期手段と、プーリを正逆に回動させる回動操作手段とを備えて構成したことを特徴としている。
【0058】
本発明の請求項26に係る水路の分水機構では、変位手段を、一端が潜流調整板上端部の左右両側にそれぞれ連結されたワイヤと、ワイヤの他端を連結して引き出し自在に巻き取るとともに同一軸心上に配置されたプーリと、これら各プーリの互いに向かい合う一側面から延びる軸同士を連結してこれら両軸を同期させる潜流調整板水平同期手段と、プーリを正逆に回動させる回動操作手段とを備えて構成したことにより、回動操作手段によりプーリを正逆に回動させると、プーリの回動に応じてワイヤが潜流調整板上端部の左右両側を上下動させる。このとき、各プーリは潜流調整板水平同期手段により軸を介して同期されるので、ワイヤは潜流調整板上端部の左右両側を同期させて上下動させる。
【0059】
本発明の請求項27に係る水路の分水機構は、支持ガイドを介して潜流調整板を複数設けるとともに、変位手段を、隣接する潜流調整板のプーリのうち他方の潜流調整板の近接したプーリの他方の側面からプーリと一体回動する回動伝達手段を引き出し、これら回動伝達手段同士を連結してこれら回動伝達手段を同期させる全潜流調整板水平同期手段を設けて構成したことを特徴としている。
【0060】
本発明の請求項27に係る水路の分水機構では、支持ガイドを介して潜流調整板を複数設けるとともに、変位手段を、隣接する潜流調整板のプーリのうち他方の潜流調整板の近接したプーリの他方の側面からプーリと一体回動する回動伝達手段を引き出し、これら回動伝達手段同士を連結してこれら回動伝達手段を同期させる全潜流調整板水平同期手段を設けて構成したことにより、複数の潜流調整板は同期して上下動される。
【0061】
本発明の請求項28に係る水路の分水機構は、回動伝達手段を、近接したプーリの他方の側面からそれぞれ引き出される回動伝達軸により構成し、潜流調整板水平同期手段を、軸に連結された歯車同士を噛合させた第1のコネクタにより、全潜流調整板水平同期手段を、回動伝達軸に連結された歯車同士を噛合させた第2のコネクタによりそれぞれ構成したことを特徴としている。
【0062】
本発明の請求項28に係る水路の分水機構では、回動伝達手段を、近接したプーリの他方の側面からそれぞれ引き出される回動伝達軸により構成し、潜流調整板水平同期手段を、軸に連結された歯車同士を噛合させた第1のコネクタにより、全潜流調整板水平同期手段を、回動伝達軸に連結された歯車同士を噛合させた第2のコネクタによりそれぞれ構成したことにより、同期をとった上で潜流調整板の配置の自由度を高くすることができる。
【0063】
本発明の請求項29に係る水路の分水機構は、分水口を幹線水路の側壁に形成し、通水口を分水口より下流側の幹線水路の水路面とするとともに、これら分水口と通水口とにそれぞれ潜流調整板を設けたことを特徴としている。
【0064】
本発明の請求項29に係る水路の分水機構では、分水口を幹線水路の側壁に形成し、通水口を分水口より下流側の幹線水路の水路面とするとともに、これら分水口と通水口とにそれぞれ潜流調整板を設けたことにより、潜流調整板が配置される角度の変化に対する自由度を高くすることができる。
【0065】
本発明の請求項30に係る水路の分水機構は、第2のコネクタを、複数のコネクタにより構成したことを特徴としている。
【0066】
本発明の請求項30に係る水路の分水機構では、第2のコネクタを、複数のコネクタにより構成したことにより、第2のコネクタの小型化が可能となる。
【0067】
本発明の請求項31に係る水路の分水機構は、回動伝達手段を、近接したプーリの他方の側面からそれぞれ引き出される弦巻ばねにより構成し、全潜流調整板水平同期手段を、各弦巻ばねの他端に連結された歯車同士を噛合させた第2のコネクタにより構成したことを特徴としている。
【0068】
本発明の請求項31に係る水路の分水機構では、回動伝達手段を、近接したプーリの他方の側面からそれぞれ引き出される弦巻ばねにより構成し、全潜流調整板水平同期手段を、各弦巻ばねの他端に連結された歯車同士を噛合させた第2のコネクタにより構成したことにより、同期をとりやすくなる。
【0069】
本発明の請求項32に係る水路の分水機構は、水位制御装置が、下端が水路側壁と流量制御装置との間で上下に変位可能に設けられ上端からの越流を阻止するとともに下方で水流の通過を許容する水位制御用潜流板とこの水位制御用潜流板の下端を上下に変位させて保持する水位制御用潜流板変位装置とを備えて構成されることを特徴としている。
【0070】
本発明の請求項32に係る水路の分水機構では、水位制御装置は、下端が水路側壁と流量制御装置との間で上下に変位可能に設けられ上端からの越流を阻止するとともに下方で水流の通過を許容する水位制御用潜流板とこの水位制御用潜流板の下端を上下に変位させて保持する水位制御用潜流板変位装置とを備えて構成されるようにしたことにより、水位制御用潜流板の下端位置により上流側の水位がどのレベルに達すると通水口下流側への流下を優先させるか決定することができる。
【発明の効果】
【0071】
本発明に係る水路の分水機構は、幹線水路から水流の一部を支線水路へ分水する分水口と残りの水流を下流へ通水する通水口とに設けられ、各口を通過する水流を制御する流量制御装置を備えた水路の分水機構において、流量制御装置を、下端が両口に上下に変位可能に設けられた潜流調整部材とこの潜流調整部材の下端を上下に変位させて保持する変位手段とを備えて構成し、両口をともにほぼ同一の高さで開き潜流調整部材の下方で水流の通過を許容するようにしたので、簡単な構成で、渇水・平水時にも確実に一定の分水比で配分操作することができる。その結果、番水のような水管理労力を削減することによりコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、本発明の第1の実施例に係る水路の分水機構を示す平面図である。(実施例1)
【図2】図2は、図1の分水機構のII−II線縦断面図である。
【図3】図3は、図1の分水機構のIII−III線縦断面図である。
【図4】図4は、図1の分水機構のIV−IV線縦断面図である。
【図5】図5は、図1の分水機構を上流側から見た正面図である。
【図6】図6は、図1の分水機構において、渇水時および平水時と余裕時とにおける支線水路と下流側幹線水路との取り込む水量をそれぞれ比較して示す表である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施例に係る水路の分水機構を示す一部破断斜視図である。(実施例2)
【図8】図8は、図7の分水機構の平面図である。
【図9】図9の(A)ないし(D)はそれぞれ、上流側幹線水路の水位に対する潜流調整板と越流調整板との上下方向位置を示す説明図である。
【図10】図10は、図7の分水機構において、潜流調整板と越流調整板との上下方向位置および支線水路と下流側幹線水路との取り込む水量をそれぞれ比較して示す表である。
【図11】図11は、本発明の第3の実施例に係る水路の分水機構を示す一部破断斜視図である。(実施例3)
【図12】図12は、図11の分水機構の平面図である。
【図13】図13は、図12のXIII−XIII線縦断面図である。
【図14】図14は、図11の分水機構において、潜流調整板と越流調整板との上下方向位置および支線水路と下流側幹線水路との取り込む水量をそれぞれ比較して示す表である。
【図15】図15は、本発明の第4の実施例に係る水路の分水機構を示す平面図である。(実施例4)
【図16】図16は、図15の分水機構の要部を示す説明図である。
【図17】図17の(A)および(B)はそれぞれ、図15の分水機構の斜視図およびゲートの上から水を越流させるゲート構造の一例を模式的に示す説明図である。
【図18】図18は、本発明の第5の実施例に係る水路の分水機構の概念を示す説明図である。(実施例5)
【図19】図19は、図18の分水機構の要部を示す説明図である。
【図20】図20は、図18の分水機構の平面図である。
【図21】図21は、図18の分水機構を上流側から見た一部破断断面図である。
【図22】図22は、図20の分水機構のXXII−XXII線縦断面図である。
【図23】図23の(A)、(B)はそれぞれ、本発明の特徴を比較して示すモデルを示し、(A)は図1に示す本発明の第1の実施例に係る水路の分水機構の構成に基づいて作成されたモデルで、(B)は通水口の一部と分水口とにそれぞれ独立に上下に変位する潜流調整板を設け、通水口の他の部位に越流調整板を設けた従来例のモデルを示す。(実施例6)
【図24】図24は、幹線水路の流下比(横軸)と支線水路の取水比(縦軸)とについて、図23の本発明のモデルに基づき本発明の流量制御装置が操作可能な範囲を示すグラフである。
【図25】図25は、図23の従来のモデルに基づき、設計最大送水量が流入する際、従来の流量制御装置が操作可能な範囲を示すグラフである。
【図26】図26は、図23の従来のモデルに基づき、送水量が設計最大送水量の60%で、かつ支線水路の最大通水量より少ない場合、従来の流量制御装置が操作可能な範囲を示すグラフである。
【図27】図27は、図23の従来のモデルに基づき、送水量が0以上設計最大送水量以下で、かつ支線水路の最大通水量より少ない場合、従来の流量制御装置が操作可能な範囲を示すグラフである。
【図28】図28は、図23の従来のモデルに基づき、送水量が支線水路の最大通水量以上設計最大送水量以下で、かつ支線水路の通常通水量以上最大通水量以下の場合、従来の流量制御装置が操作可能な範囲を示すグラフである。
【図29】図29は、幹線水路の0から最大までの送水量(横軸)と支線水路の0から最大までの取水量(横軸)とについて本発明のモデルと従来のモデルとによる操作可能な範囲の違いを示すグラフである。
【図30】図30の(A)、(B)はそれぞれ、本発明の第7の実施例に係る水路の分水機構を示すもので、上流側から見た説明図である。(実施例7)
【図31】図31は、本発明の第8の実施例に係る水路の分水機構を示す平面図である。(実施例8)
【図32】図32は、図31の水路の分水機構の要部を下流側から見た概念図である。
【図33】図33の(A)ないし(C)はそれぞれ、本発明の第8の実施例の第1の変形例を示すもので、支持機構としてのストッパを示す斜視図、正面図および平面図である。(実施例9)
【図34】図34は、本発明の第8の実施例の第2の変形例に係る水路の分水機構を示す斜視図である。(実施例10)
【図35】図35は、本発明の第8の実施例の第3の変形例に係る水路の分水機構を示す斜視図である。(実施例11)
【図36】図36は、本発明の第9の実施例に係る水路の分水機構を示す平面図である。(実施例12)
【図37】図37は、図37の水路の分水機構の要部を拡大して示す説明図である。
【図38】図38の(A)、(B)はそれぞれ、第9の実施例に係る水路の分水機構の油圧操作の例を示す説明図である。
【図39】図39は、本発明の第10の実施例に係る水路の分水機構を上流から見た説明図である。(実施例13)
【図40】図40は、図39の水路の分水機構の要部を示す説明図である。
【図41】図41は、本発明の第11の実施例に係る水路の分水機構の概念図である。(実施例14)
【図42】図42の(A)、(B)はそれぞれ、本発明の第12の実施例に係る水路の分水機構の概念図である。(実施例15)
【図43】図43は、本発明の第13の実施例に係る水路の分水機構の概念図である。(実施例16)
【図44】図44は、本発明の第13の実施例の変形例に係る水路の分水機構の概念図である。(実施例17)
【図45】図45は、本発明の第14の実施例に係る水路の分水機構の概念図である。(実施例18)
【図46】図46は、本発明の第15の実施例に係る水路の分水機構の概念図である。(実施例19)
【図47】図47は、本発明の第16の実施例に係る水路の分水機構の概念図である。(実施例20)
【発明を実施するための形態】
【0073】
渇水時でも平水時でも同様に水を確実に一定の分水比で幹線水路と支線水路とに配分操作するという目的を、幹線水路から水流の一部を支線水路へ分水する分水口と残りの水流を下流へ通水する通水口とに設けられ、各口を通過する水流を制御する流量制御装置を備えた水路の分水機構であって、流量制御装置を、両口に上下に変位可能に設けられる一枚の潜流調整板とこの潜流調整板を上下に変位させて保持する変位装置とを備えて構成し、両口をともにほぼ同一の開度で開き下方で水流の通過を許容し上端からの越流を阻止するようにしたことにより実現した。
【実施例1】
【0074】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。図1は、本発明の第1の実施例に係る水路の分水機構を示す平面図である。本実施例に係る水路の分水機構2は、図1および図5に示すように、コンクリート製の水路3は、上流側幹線水路20と支線水路21と下流側幹線水路22とを有し、支線水路21と下流側幹線水路22との入口にはそれぞれ、同一水路面に分水口4と通水口5とが形成される。なお、図中、同一符号は同一または相当部分を示す。
【0075】
水路3には、河川を取水・送水施設として水路代わりに利用している場合も含む。用語は相対的なヒエラルキーを表し、状況で指し示す対象が異なる。このため、以下のように用語を定義付けする。幹線水路から支線水路への分水では、分水前の幹線水路流量を「送水量」、支線水路への取水量を「分水量」、取水後の幹線水路流量を「通水量」、幹線水路を「幹線」、支線水路を「支線」と呼ぶ。支線水路から3次水路への分水では、分水前の支線水路流量を「送水量」、3次水路への取水量を「分水量」、取水後の支線水路流量を「通水量」、支線水路を「幹線」、3次水路を「支線」と呼ぶ。3次水路から末端水路への分水では、分水前の3次水路流量を「送水量」、末端水路への取水量を「分水量」、取水後の3次水路流量を「通水量」、3次水路を「幹線」、末端水路を「支線」と呼ぶ。「直接分水工」とは、幹線水路に支線水路でなく、3次水路や末端水路への分水口が設置されている場合、または、支線水路に3次水路でなく、末端水路への分水口が設置されている場合を指す。「取水比」とは、分水量を送水量で割った値(取水比=分水量/送水量)である。「分水比」とは、分水量を通水量で割った値(分水比=分水量/通水量)である。「流下比」とは、通水量を送水量で割った値(流下比=通水量/送水量)である。「ゲート開度比」とは、ゲートにより開かれた分水口の開口面積をゲートにより開かれた通水口の開口面積で割った値(ゲート開度比=ゲートにより開かれた分水口の開口面積/ゲートにより開かれた通水口の開口面積)である。
【0076】
また、本明細書中、平水時とは、各支線水路等の期別の需要量である計画取水量がほぼ充足できる幹線水路最上流端の取水量が確保されている期間をいい、渇水時とは、各支線水路等の期別の需要量である計画取水量が充足されていないが、追加の取水を幹線水路最上流部で河川から行うことができず、取水不足の状況が続いている期間をいい、余裕時とは、各支線水路の期別の需要量である計画取水量がほぼ充足できる幹線水路最上流端の取水量が確保されている状態で、支線水路で必要な取水量が一時的に減少し、送水量に余裕が生じている状態をいい、具体的には、豪雨時の支線水路の取水減少も含まれる。すなわち、水路では、河川流量のような豊水量と平水量の違いはなく、多くの取水は期別の水利権許可の最大値に近い値で取水される。この量を本明細書では、平水時の水量と呼ぶ。また、渇水は、河川から水路最上量流端への取水量が小さく、なおかつ、河川流量が少なくより多く取水できない状況が続く状態を指す。河川でいう豊水は洪水時で流量が多いときをいい、水路でいう余裕時は、流量が多いのではなく、支線水路の取水量が少ないときをいう。
【0077】
なお、ゲートの流れは、潜り流出と自由流出に分かれるが、山間部等で水路勾配が急峻な場合を除けば、ゲートは潜り流出で利用されている場合が圧倒的多数である。このため、以下では、潜り流出を念頭においた説明をする。自由流出の場合には、下流水位を、ゲート開口部の中央の標高、あるいは近似的には、ゲート敷高に置き換えればよい。
【0078】
水路3の分水口4には、水路3の一方の側壁3Aに支柱6Aが、通水口5には、水路3の他方の側壁3Bに支柱6Bが、それぞれ水路3の幅方向を一致させて設置される。さらに、通水口5側には、これら支柱6A、6B間で他方の側壁3Bの近傍に支柱6Cが幅方向を一致させて設置される。分水壁7の上流側端部には、並んで立設された支柱6A、6C、6Bより下流側に後退して支柱6Dが設置される。支柱6A、6Cおよび支柱6B、6Cにはそれぞれ、互いに向き合う面に図示しない縦溝(ガイド)が形成される。支柱6A〜6Cの頂部には、上枠6Eが取り付けられるようになっており、これら支柱6A〜6Cと上枠6Eとにより支持枠を構成している。第1のゲート(水門)6は、支柱6A〜6Dのうち、一方の側壁3Aの支柱6Aと他方の側壁3近傍の支柱6Cと分水壁7の支柱6Dとを備えて構成される。第2のゲート(水門)8は、他方の側壁3Bの支柱6Bと他方の側壁3近傍の支柱6Cとを備えて構成される。支柱6A、6D間が分水口4の開口幅寸法Wd1、支柱6C、6D間が通水口5の開口幅寸法Wp1となっている。
【0079】
第1のゲート6は、一枚板からなる矩形状の潜流調整板(潜流調整部材)10を備え、この潜流調整板10は、支柱6A、6C間に上下に変位可能に差し入れられる。水路のゲートが通常に使用されている潜り流出の場合、潜流調整板が用いられる。潜流調整板10の横幅寸法W1は両端が両支柱6A、6Cの縦溝(図示せず)に嵌め入れられる寸法となっている。潜流調整板10の縦寸法(上下方向寸法)H1は、水路3の設計水位の高さ寸法Llmtとほぼ同じか長寸に形成され、水平な下端面10Aが水路3の水路底面に接して、潜流調整板10が閉じられても上端部10Bからの越流を阻止するようになっている。潜流調整板10と上枠6Eとの間には、調整ロッド11が設けられる。調整ロッド11は上端が上枠6Eを貫通し、下端が潜流調整板10の上端部10Bに回動自在に連結される。調整ロッド11は、上側がねじ切りされ、上枠6Eに形成されたねじ孔に螺合し、回動操作により潜流調整板10を上下動させるようになっている。調整ロッド11の上端は角形に形成され、この上端角形部に工具(操作部)を嵌め入れて回動操作するようになっている。支柱6A、6Cおよび上枠6E(支持枠)と調整ロッド11とにより潜流調整板10を上下動させる変位手段(変位装置)が構成される。また、潜流調整板10の下流側の面10Cは、分水壁7の支柱6Dの支持部(図示せず)に当接して支持される。このため、潜流調整板10の上流側面10Dにかかる圧力は、支柱6A、6C、6Dにより支持されるようになっている。第1のゲート6は、支柱6A、6C、6Dと上枠6Eと潜流調整板10と調整ロッド11とにより、分水口4と通水口5の一部とを、ともに同一の開度で開き下方で水流の通過を許容し上端からの越流を阻止して、分水口4と通水口5の一部を通過する水流を制御するようになっている。
【0080】
なお、潜流調整板10の開度について、開度0%とは、潜流調整板10により分水口4と通水口5とを完全に閉じて潜流を生じさせない状態をいう。開度100%とは、潜流調整板10の下端面10Aが上流側の実際の水位(上流側幹線水路20の水位)とほぼ同一高さに位置して上流側幹線水路20からの流水を潜流調整板10の面でブロックすることなく全量円滑に下流側に流下させる状態をいう。潜流調整板10は潜流を生じさせる機能を果たすものであり、本実施例では、潜流調整板10の開度、すなわち、第1のゲート6の開度は、上流側水位に対する水路底面3Cからの潜流調整板下端面10Aの高さの比率により決定される。たとえば、開度50%ならば、潜流調整板10の下端面10Aが上流側水位の半分の高さに位置していることになる。
【0081】
第2のゲート8は、一枚板からなる矩形状の堰上げ板(越流板)12を備え、この堰上げ板12は、通水口5の一部である支柱6B、6C間に差し入れられる。堰上げ板12は、複数の板を支柱6B、6Cの縦溝(図示せず)に嵌め入れ、上下に重ねて水路底面からの高さH2を調整できるようになっている。この堰上げ板12は、最大高さ寸法が水路3の設計水位の高さ寸法Llmtを超えないようになっており、上端越流部12Aから下流側に水を越流させ上端越流部12Aの上下位置に応じて上流側の水位を調整するようになっている。この第2のゲート8は、支柱6B、6Cと堰上げ板12とにより上流側の水位を制御する水位制御装置を構成している。こうして、第1のゲート6と第2のゲート8とにより、分水口4と通水口5とを通過する水流を制御する流量制御装置が構成される。なお、水位制御装置は、支柱6B、6Cと堰上げ板12とにより構成される第2のゲート8に代えて、図示しない開閉板を上下に開閉させるスルースゲート(図示せず)により構成してもよい。
【0082】
分水壁7は、水路3の側壁3Aに沿って下流に延びて支線水路(支線)21を構成し、後端は側壁3Aに接続され、この支線水路21は水路3から分岐するようになっている。分水壁7と水路3の他方の側壁3Bとの間は、分水後の幹線水路22となっている。符号20は、分水前の幹線水路である。これら分水口4と通水口5とに設けられた第1第2のゲート6、8より上流側の幹線水路20には、余水吐23が設けられる。
【0083】
第1のゲート6は、上述のように潜流調整板10を調整ロッド11により上下させ、水路3の平坦な水路底面3Cと潜流調整板10の下端面10Aとの間に形成される開口から分水口4側の支線水路21と通水口5側の幹線水路22とに通水させるようになっている。すなわち、水路3の水路底面3Cと潜流調整板10の下端面10Aとの間の高さ寸法をH3とすると、分水口4側の開口Adでは、開口幅寸法Wd1×高さ寸法H3が水流の開口面積Ad1(Ad1=Wd1×H3)となり、通水口5側の開口Apでは、開口幅寸法Wp1×高さ寸法H3が水流の開口面積Ap1(Ap1=Wp1×H3)となる。このとき、分水口4側の支柱6A、6D間の開口幅寸法Wd1および通水口5側の支柱6C、6D間の開口幅寸法Wp1とも、予め設計プランに応じて決定され一定なので、潜流調整板10の下端面10Aの高さH3が通過する水流の流量を決定する変数となる。しかも、潜流調整板10は両口4、5にわたって一体に変位するので、分水口4側開口面積Ad1と通水口5側開口面積Ap1は、高さH3に応じて常に一定の比率で変化する。つまり、第2のゲート8の越流を阻止したとすると、分水比(分水比=分水量/通水量)または取水比(取水比=分水量/送水量)は、潜流調整板10が上下方向のどの位置にあっても、常に一定となる。そして、ゲート開度比(ゲート開度比=ゲートにより開かれた分水口の開口面積/ゲートにより開かれた通水口の開口面積)も常に一定となる。このため、第2のゲート8の越流を阻止すれば、潜流調整板10をどの上下位置に変位させても、支線水路21の取水流量と幹線水路22の通水流量との分水比率(または取水比率)を一定にし、機械的に配分操作することができるようになっている。
【0084】
これに対し、第2のゲート8の堰上げ板12は、第1のゲート6が支線水路21と幹線水路22との分水比率を一定にし、恣意性を排除して機械的に配分操作するのに対し、幹線水路22の通水量を分水比率に基づく水量より多くして幹線水路22を優先させる役割を果たす。すなわち、図5に示すように、上流側幹線水路20の水位Lf1(Lf1は渇水時または平水時の水位)が、潜流調整板10の下端面10Aのレベルより上方に達し、しかも、第2のゲート8の堰上げ板12の上端越流部12Aの高さH2がこの水位Lf1より高いと(H3<Lf1<H2)、すなわち、渇水時や平水時には、幹線水路20側の水は、堰上げ板12によりブロックされて、上述のように、支線水路21側の取水流量と幹線水路22側の通水流量とは予め決められた一定の分水比率(または取水比率)で配分される。ところが、第2のゲート8の堰上げ板12の上端越流部12Aの高さH2が余裕時の水位Lf2より低いと(H3<H2<Lf2)、すなわち、余裕時には、潜流調整板10により一定の分水比率で配分操作がなされた通水口5側開口Apを通過する潜流の水量に加え、上端越流部12Aから越流する水流も下流側幹線水路22に合流して水量が増大する。下流側幹線水路22の水位は、通水口5側開口Apを通過する潜流の水量に上端越流部12Aから越流する水量を加えた量により決定される。こうして、上流側幹線水路20の水位Lf2が、第2のゲート8の堰上げ板12の上端越流部12Aの高さH2を越えると、幹線水路22側の水量を増やし、支線水路21側は、分水比率に基づいた量のみ取水されるようになっている。従って、堰上げ板12の上端越流部12A(上端越流部高さH2)は、必ず、潜流調整板10の下端面10A(下端面高さH3)より上方に位置していなければならない(H2>H3)。もし、堰上げ板上端越流部12Aが潜流調整板下端面10Aより下方にあると、通水口5側は、潜流調整板10による開口Apからだけでなく下端面10Aのレベルより低い上端越流部12Aからも通水されてしまい、分水比率を一定に保つことができなくなるからである。言い換えれば、渇水時あるいは平水時には一定の分水比率を確保するというルールに対し、堰上げ板12の上端越流部12Aを潜流調整板10の下端面10Aのレベルより下方に位置させた場合、渇水時あるいは平水時に支線水路21側の取水流量より幹線水路22側の通水流量を優先させることになる。これら配分操作の考え方は、通水側利用者と分水側利用者との話し合いにより変更されることもあり、本実施例に係る構成では、いずれにも対応が可能となっている。
【0085】
ところで、上記第1の実施例に係る水路の分水機構2では、上述のように、第2のゲート8の堰上げ板12が流水をブロックした場合、開口面積比を分水比に一致させて第1のゲート6が支線水路21と幹線水路22との分水比率を一定にし、恣意性を排除して機械的に配分操作するようにしているが、実際の水路3では、開口面積比が正確に分水比に合致しないことがある。その理由は、縮流係数と流速分布の偏りによるものである。この縮流係数と流速分布の偏りにより、開口面積比と分水比の間にずれが生じる。そこで、本実施例に係る水路の分水機構2では、縮流係数と流速分布の偏りによるずれを補正してより正確に分水比率を一定とするようにしている。すなわち、開口面積比と分水比の間に生じるずれの大きさを予め水理実験で求め、計画している所望の分水比率に合致するよう開口面積比を補正するようにしている。このような補正を行うことにより分水比の精度の向上を図ることができる。開口面積比の補正は、潜流調整板10の下端面10Aの分水口4側または通水口5側のいずれかに切り欠き溝を形成してもよいし、潜流調整板10下部の分水口4側または通水口5側のいずれかに孔を穿設するようにしてもよい。
【0086】
第1第2のゲート6、8より下流側の支線水路21と幹線水路22とには、第3のゲート(水門)30が設けられる。第3のゲート30は、両側壁3A、3Bと分水壁7とにそれぞれ水路3の幅方向を一致させて設置された支柱31A、31B、31Cを備えて構成される。支柱31A、31Cの向かい合う面に形成された縦溝(図示せず)には、複数の板を上下に重ねた支線水路側堰上げ板32が、支柱31B、31Cの向かい合う面に形成された縦溝(図示せず)には、複数の板を上下に重ねた幹線水路側堰上げ板33が、それぞれ差し入れられる。これら各堰上げ板32、33はそれぞれ、上流側の堰上げ板12の高さH2を超えないようになっており、上端越流部32A、33Aから下流側に水を越流させ上端越流部32A、33Aの上下位置に応じて上流側の水位を調整するようになっている。すなわち、支線水路21の堰上げ板32は、上端越流部32Aの上下位置に応じて支線水路21の堰上げ板32より上流側の水位を、幹線水路22の堰上げ板33は、上端越流部33Aの上下位置に応じて幹線水路22の堰上げ板33より上流側の水位をそれぞれ調整するようになっている。これら各堰上げ板32、33はそれぞれ独立に高さが調整される。
【0087】
なお、上記第1の実施例に係る水路の分水機構では、支持枠6Eを水路3の全幅にわたって設けているがこれに限られるものではなく、支持枠を固定する基礎を確保することができれば、第2のゲート8上方に設ける必要はなく、その部分を省略してもよい。しかしながら、ゲート操作と管理の足場を確保する必要がある場合には、水路3の全幅にわたって設け、作業者が対岸に移動可能とすることが好ましい。
【0088】
次に、本実施例に係る水路の分水機構2の作用について、第1第2のゲート6、8の動作に基づいて説明する。本実施例に係る水路の分水機構2は、潜流調整板10の開閉により形成される分水口4側開口面積Ad1と通水口5側開口面積Ap1に基づいて分水比率が決定されるので、予め計画供給水量について取水側水路21の利用者と通水側水路22の利用者の合意を得て分水比率を決定する。分水比率が決定すると、予め水理実験を行い、縮流係数と流速分布の偏りによるずれの大きさを、すなわち、流量係数を求め、求められたずれの大きさ、すなわち、流量係数に基づいて決定された分水比率に合致するよう開口面積比を補正する。第1のゲート6の潜流調整板10の開度が分水比率に対応しているので、上流側幹線水路20の水位(Lf1、Lf2)に応じて、第1のゲート6の調整ロッド11を操作して潜流調整板10の上下位置を調整し、潜流調整板10の下端面10Aの水路底面3Cからの高さH3が上流側水位(Lf1、Lf2)のレベル以下にあって、分水口側開口面積Ad1により分水口4側が決められた取水流量を確保できる位置に潜流調整板10を保持する。次に、余裕時の通水側優先取り分を最大送水量を参考に決定し、これに波、風による吹き寄せを考慮して、第2のゲート8の堰上げ板12の上端越流部12A上限高さを決定する。上端越流部12Aの下限高さは、利水面でなく、非常時の安全を配慮し、費用を勘案して、経済的な最も低い値を採用する。すなわち、上流側幹線水路20の水位Lf1〜Lf2がどの高さの水位に達すると、第2のゲート8は越流を許容するか決定する。堰上げ板12は、複数の板を順次重ねて高さを調整するようになっている。
【0089】
こうして、第1のゲート6の潜流調整板10の上下方向位置、すなわち、下端面10Aの水路底面3Cからの高さH3が決められ、第2のゲート8の堰上げ板12の上端越流部12Aの水路底面3Cからの高さH2が決められると、上流側幹線水路20の水位が第2のゲート8の堰上げ板12の上端越流部12Aより低く、越流が生じない場合、第1のゲート6の潜流調整板10の開度に応じて、一定の分水比率(取水比率)で分水口4側と通水口5側とに分水と通水とが行われ、この分水比率に応じた通水量が下流側幹線水路22に、取水量が支線水路21にそれぞれ取り込まれることになる。上流側幹線水路20の水位が第2のゲート8の堰上げ板12の上端越流部12Aより高く、越流が生じる場合、支線水路21には分水比率に応じた取水流量のみが流下するのに対し、下流側幹線水路22には、上記一定の分水比率に応じた通水量に越流した分の水量が加わることになる。このように、本実施例に係る水路の分水機構2では、上流側幹線水路20の水位が第2のゲート8の堰上げ板12の上端越流部12Aの水路底面3Cからの高さH2以下では、すなわち、渇水時や水量減少時には、第1のゲート6の潜流調整板10の開度(水路3の水路底面3Cと潜流調整板10の下端面10Aとの間の開口高さH3)に応じた水量で、常に一定の分水比率(取水比率)で分水口4側と通水口5側とに分水と通水とが行われる。他方、上流側幹線水路20の水位が上端越流部12Aの水路底面3Cからの高さH2以上では、すなわち、余裕時や水量余剰時には、潜流調整板10の開口高さH3に応じた水量で、常に一定の分水比率(取水比率)で分水口4側と通水口5側とに分水と通水とが行われるのに加え、通水口5側には、堰上げ板12の上端越流部12Aからの越流分が流れ込む。つまり、分水口4側では、余裕時や水量余剰時であっても、渇水時や水量減少時と同様に、第1のゲート6の潜流調整板10の開度(開口高さH3)に応じた水量が取り込まれるのに対し、通水口5側では、第1のゲート6の潜流調整板10の開度(開口高さH3)に応じた水量に加え、上端越流部12Aからの越流分が取り込まれる。このため、余裕時や水量余剰時には、通水口5側、すなわち、幹線水路22への通水流量が増大され、幹線水路22の下流側が優先されるようになっている(図6参照)。
【実施例2】
【0090】
次に、本発明の第2の実施例に係る水路の分水機構102について説明する。本発明の第2の実施例に係る水路の分水機構102は、上記第1の実施例に係る水路の分水機構2が、大規模な水路に適用されるのに対し、小規模の水路に適用されるもので、複数のゲートを用いることなく、単一のゲートで、渇水・平水時でも水を確実に一定の分水比で配分操作するようにしている点が異なっている。本実施例に係る水路の分水機構102は、図7および図8に示すように、コンクリート製の水路103には同一水路面に分水口104と通水口105とが形成される。
【0091】
水路103の分水口104は、水路103の一方の側壁103Aから水路103の幅方向に立設された壁(越流阻止部)108の下部に矩形状に形成される。壁108の水路中央側端部108Aは、側壁103Aに沿って平行に下流側に延び支線水路121を形成する隔壁107の上流側端部に接続される。すなわち、支線水路121には、上流側水位に関係なく分水口104からのみ水が流入するようになっている。壁108と他方の側壁103Bとの間に通水口105が形成される。通水口105の水路幅方向寸法Wp2は、分水口104の水路幅方向寸法Wd2より長寸となっている。水路面を同一に配置されたこれら分水口104と通水口105とには、単一のゲート106が設けられる。ゲート106は、両側壁103A、103Bにそれぞれ幅方向を一致させて形成された各縦溝(ガイド)109A、109Bにそれぞれ両端が嵌め入れられる矩形状の潜流調整板110と越流調整板111とを備えている。これら矩形状の各板110、111はそれぞれ縦溝に沿って上下動するようになっている。壁108の上流側平坦面108B側には、この面108Bに沿って摺動し分水口104を開閉する潜流調整板110が、この潜流調整板110の上流側には、越流調整板111がそれぞれ重なり合って配置され、これら潜流調整板110と越流調整板111は互いに上下に相対変位可能になっている。これら潜流調整板110と越流調整板111とはそれぞれ、同一の縦寸法H10、H11を有するようにするか、越流調整板111の縦寸法H11を潜流調整板110の縦寸法H10より長寸となるようにしている(H11≧H10)(図9の(A)参照)。縦寸法H10、H11の大きさには絶対的な制約はないが、まず、潜流調整板11を制御し、次に、越流調整板111の越流高さを制御するのであれば、H11≧H10が制御しやすい。また、この条件で、越流制御板111の高さの制御範囲を最大にとるのであれば、H11=H10が望ましい条件になるので、以下、H10=H11の場合について説明する。これら縦寸法H10、H11はそれぞれ、水路の設計水位の高さ寸法Llmtより短寸となっている。本実施例では、これら潜流調整板110と越流調整板111とが重なり合った面積が最小となるように配置された際、すなわち、潜流調整板110が最も下方に位置し、越流調整板111が最も上方に位置する状態で設定水路面をほぼ覆って重なり合うようそれぞれ高さ寸法が設計水位の高さLlmtに対してほぼ半分の寸法より若干長寸の縦寸法を有している(H10=H11>(Llmt×1/2+e)eは重なり分。)。
【0092】
これら潜流調整板110と越流調整板111とはそれぞれ、調整ロッド113、114を介して水路103上に設けられた支持枠112に接続される。一方の調整ロッド113は、下端が潜流調整板110の上端部110Bに回動自在に取り付けられ、上端が支持枠112の上枠部112Aを貫通して突出している。他方の調整ロッド114は、下端が越流調整板111の上端部111Bに回動自在に取り付けられ、上端が支持枠112の上枠部112Aを貫通して突出している。各調整ロッド113、114は、上側がねじ切りされ、上枠部112Aに形成されたねじ孔に螺合し、回動操作により潜流調整板110と越流調整板111をそれぞれ上下動させるようになっている。寸法の異なる各調整ロッド113、114の上端は角形に形成され、この上端角形部に工具を嵌め入れて回動操作するようになっている。支持枠112と調整ロッド113、114とにより潜流調整板110と越流調整板111を上下動させる変位手段が構成される。
【0093】
さらに、潜流調整板110の下端面110Aには、越流調整板111側に突出するストッパ110Cが設けられ、越流調整板111はその下端面111Aが常時、潜流調整板110の下端面110Aと同一の高さかまたはその下端面11Aより上方に変位可能になっている。すなわち、水路103の水路底面103Cと潜流調整板110の下端面110Aとの間の高さ寸法をH110、水路底面103Cと越流調整板111の下端部111Aとの間の高さ寸法をH111とすると、H111≧H110が成立するようになっている。さらに、越流調整板111が最も上方の位置にあり、潜流調整板110が最も下方の位置にある場合(図9の(D)参照)でも、これら両潜流調整板110と越流調整板111との間には隙間が生じないよう必ず重なる部分(重なる部分の上下方向長さOL、重なる部分が最小の場合の上下縦方向長さOL1、重なる部分が最大の場合の上下方向長さOL2(OL1<OL、OL<OL2))が形成されるようになっている。つまり、これら両潜流調整板110と越流調整板111により水路面を塞ぐ最大上下方向長さHmax1は、両縦寸法H10、H11を加えた長さから重なる部分が最小の場合の上下方向長さOL1を減じた長さ、すなわち、Hmax1=(H10+H11)−OL1となっている。他方、これら両潜流調整板110と越流調整板111により水路面を塞ぐ最小上下方向長さHmin1は、これら両潜流調整板110と越流調整板111とが上下端を揃えて重なった場合の長さ、すなわち、Hmin1=H10=H11となり、このとき重なる部分は最大の上下方向長さOL2となる。このように、本実施例に係る水路の分水機構102では、潜流調整板110と越流調整板111との2体により形成される水路面を塞ぐ扉は、上下方向長さが可変となるとともに、所望の上下方向長さでかつ一体に上下位置を変えることができるようになっている。従って、上流側の水位が低い渇水・平水時には、これら両板110、111を最大の上下方向長さOL2で重なり合うようにし、ゲート106の扉の縦方向長さを両板110、111の縦寸法H10、H11と実質的に同一とし、分水口104と通水口105とにはそれぞれ潜流のみ流出するのを許容し、越流を阻止するようにしている(図9の(C)参照)。そして、上流側の水位が高い余裕時には、上流側の水位に関係なく、上下方向の位置を変えて通水口105側に越流させることも越流を阻止することもできるようになっている(図9の(A)、(B)参照)。
【0094】
また、本実施例に係る水路の分水機構102では、越流調整板111が上下方向のどの位置にあっても、壁108により分水口104側への越流が阻止されるようになっている。また、潜流調整板110は、上下方向の位置を変えて分水口104の開度を調整することができるとともに、分水口104を塞ぐこともできるようになっている。
【0095】
第2の実施例に係る水路の分水機構102では、ゲート106の潜流調整板110の上下方向位置、すなわち、下端面110Aの水路底面103Cからの高さH110が分水口104の高さH104の範囲内で決められ、越流調整板111が潜流調整板110と同一の上下方向位置にあるか潜流調整板110より上方に位置した状態で、上流側幹線水路120の水位が上端越流部111Bより低く、越流が生じない場合(図9の(B)、(C)、図10のケース番号III参照)、ゲート106の潜流調整板110の水路底面103Cからの高さH110に応じて、一定の分水比率(取水比率)で分水口104側と通水口105側とに分水と通水とが行われ、この分水比率に応じた通水量が下流側幹線水路122に、取水量が支線水路121にそれぞれ取り込まれることになる。上流側幹線水路120の水位が越流調整板111の上端越流部111Bより高く、越流が生じる場合(図9の(A)、(D)、図10のケース番号IV参照)、支線水路121には予め決められた分水比率に応じた取水流量のみが流下するのに対し、下流側幹線水路122には、上記一定の分水比率に応じた通水量に越流した分の水量が加わることになる。
【0096】
潜流調整板110の下端面110Aの水路底面103Cからの高さH110が分水口104の高さH104を越え、潜流調整板110が分水口104より上方に位置し、越流調整板111が潜流調整板110と同一の上下方向位置にあるか、潜流調整板110より上方に位置した状態で、上流側幹線水路120の水位が上端越流部111Bより低く、越流が生じない場合(図10のケース番号V参照)、上流側水位が分水口104の高さH104より低いと、水位に応じた量が分水口104の流下面と通水口105の流下面とに応じて分配される。このとき、分水比(取水比)は一定となるが、潜流調整板110は予め決められた分水比確保に寄与するものではなく、分水口104の流下面と通水口105の流下面とにより分水比は決定され一定となる。上流側幹線水路120の水位が、分水口104の高さH104より高いと、分水口104には、分水口104の面積に応じた一定の量のみが流下する一方、通水口105側には潜流調整板下端面110Aの高さH110に応じた潜流が流下する。このため、分水比は不定で、下流側幹線水路122への通水量が予め設定された分水比による通水量より増大する(図10のケース番号VI参照)。さらに上流側水位が高くなり、越流調整板111から越流があると、分水口104側は一定の量が流下するのに対し、通水口105側では、越流分も加わり、幹線側下流域への通水が優先される(図10のケース番号VII参照)。なお、潜流調整板110が最下方位置で分水口104を塞いだ場合、越流調整板110から越流がなければ、分水口104と通水口105とのいずれにも水は流れることがない(図10のケース番号I参照)。越流調整板110から越流があると、分水口104には水が流れないものの、通水口105には越流分がすべて流れることになる(図10のケース番号II参照)。
【0097】
このように、第2の実施例に係る水路の分水機構102は、渇水・平水時等、上流側水位が低い場合、潜流調整板110の下端面110Aの高さH110が分水口104の高さH104の範囲内にあるときであって、越流調整板111から下流側幹線水路122への越流がない場合、分水比(取水比)は予め設定された一定の値を保持することができる。余裕時等、上流側水位が高い場合であって、下流側幹線水路122への越流がある場合、越流分は分水口104に流れ込むことがなく、すべて下流側幹線水路122へ流れ込むので、下流側幹線水路122側が優先されることになる。また、余裕時であって、潜流調整板110が分水口104の上方に位置し、上流側水位が分水口104の高さH104より高い場合、支線水路121側には分水口104の開口面積に応じた一定の水量が分水され、残りの水量は下流側幹線水路122側に通水される。上流側水位が分水口104の高さH104より低い場合、分水口104と通水口105とには、それぞれの水路幅に応じた水量が分配される。このように、分水口104側には越流による水の流入がなく、潜流調整板110を通じてのみ分水されるので、通水口105側下流の流量が分水口104側下流の流量より優先される。
【0098】
なお、本実施例では、潜流調整板110と越流調整板111とのそれぞれの縦寸法H110、H111を同一としているがこれに限られるものではなく、予め決定された通水量や分水量に応じていずれか一方を長寸に他方を短寸に構成してもよいことはいうまでもない。さらに、上記実施例では、潜流調整板110と越流調整板111との縦寸法をそれぞれ、設計水位の高さLlmtに対してほぼ半分の寸法より若干長寸としているが、これに限られるものではなく、上端越流部の越流位置を低くするか潜流面を増大させるには、両板の縦寸法を縮寸させてもよい。また、ゲート106の扉を潜流調整板110と越流調整板111との2枚の板により構成しているがこれに限られるものではなく、2枚以上の板により構成してもよい。また、本実施例では、支線水路121側への越流を阻止する越流阻止部108を設けているが、これに限られるものではなく、壁108に代えて下流側幹線水路122と支線水路121とを流れ方向に隔てる隔壁を設け、分水口104側にも越流調整板111からの越流を許容するようにしてもよい(図11の第3の実施例参照)。さらに、支線水路121側への越流を阻止する越流阻止部として水路103側に壁108を形成しているが、これに限られるものではなく、支持枠112側または越流調整板111側に支線水路121への越流を阻止する越流阻止板(越流阻止部)を設け、支線水路121側への越流を阻止するようにしてもよい。
【実施例3】
【0099】
次に、本発明の第3の実施例に係る水路の分水機構202について説明する。本発明の第3の実施例に係る水路の分水機構202は、上記第2の実施例に係る水路の分水機構102が、越流阻止部(壁108)を設けて支線水路121側への越流を阻止するようにしているのに対し、箱部207により支線水路側への越流を阻止する点が異なっている。本実施例に係る水路の分水機構202は、図11ないし図13に示すように、パイプラインの調整スタンドに適用した例を示す。上流側パイプライン220と角箱状調整スタンド(調整水槽)203の分水口204と通水口205より上流側水槽部分203Aが上流側幹線水路に、下流側パイプライン222と調整スタンド203の通水口205より下流側水槽部分203Bが下流側幹線水路にそれぞれ相当し、調整スタンド203の分水口204と通水口205とを区画するとともに調整スタンド203の一側面203Dに接続される箱部207の室内208と一側面203Dに開口する分岐パイプライン221とが支線水路に相当する。
【0100】
本実施例に係る水路の分水機構202は、調整スタンド203の一側面203Dに、上流側下部が開口され分水口204を形成する箱部207が設けられる。箱部207の流れ方向に沿って形成された壁部207Aにより分水口204と通水口205とが同一水路面上に形成される。箱部207の分水口204の上方には、上流側壁面207Bが形成され、越流調整板211から室内208への越流を阻止するようになっている。これら分水口204と通水口205とにわたって上記第2の実施例と同様に潜流調整板210と越流調整板211が設けられる。分水口204と通水口205とは同一水路面上に形成され、下流側パイプライン222への流下を優先させるため、通水口205の水路幅方向寸法Wp3は分水口204の水路幅方向寸法Wd3より長寸となっている(Wp3>Wd3)。本実施例では、上記第2の実施例とは逆に、上流側に潜流調整板210が、下流側に越流調整板211がそれぞれ摺動自在に重なって配置される。これら各板210、211は図示しない変位手段により互いに上下に相対変位可能になっている。本実施例に係る分水機構202では、上流側パイプライン220から流入した水は、上流側水槽部分203Aに流れ込む。上流側水槽部分203Aの水位Lp1は越流調整板211の上端越流部211Bの上下方向位置により制御される。このため、越流が生じなければ、分水口204側と通水口205側への水の分配は、潜流調整板210を通じてのみ行われ、予め決められた一定の分水比(取水比)で分岐パイプライン221と下流側パイプライン222とに分水と通水がそれぞれ行われる。越流を許容する場合、越流調整板211からの越流分は、下流側水槽部分203Bの下流側パイプライン222に連通する室209のみに流入する。なお、分水量の制御において、取水水位の水圧が必要な場合、越流が生じるか生じないかの限界まで最小の開度に設定されるようになっている。すなわち、閉塞面積を越流が生じない最大面積とするようにしている。一般の水路と異なり調整スタンド203では、越流に伴い生じる空気連行がサージングの原因ともなりうるが、送水量の主たる部分は潜流調整板210による潜流で実現されるため、空気連行を小さく抑えることができ、調整スタンド203のサイズを小さくすることができ、コストダウンを図ることができる。
【0101】
上記第3の実施例に係る水路の分水機構202では、図11に示すように、潜流調整板210により分水口204と通水口205を閉じて、上流側水槽部分203Aの水位Lp1が上昇すると、越流調整板211からの越流が下流側パイプライン222側の室209のみに流れ込む(図14のケース番号I参照)。潜流調整板210の開度が最大(水路底面203Cからの下端面210Aまでの高さH210が最大、すなわち、分水口204の高さと同一)となるまでの範囲では、越流調整板211からの越流がない場合、潜流調整板210からの潜流のみにより分水と通水が行われるので、分水比(取水比)は予め設定された一定の値となる(図14のケース番号II参照)。越流調整板211からの越流がある場合、潜流により分岐パイプライン221側の室208と下流側パイプライン222側の室209とにはそれぞれ、一定の分水比で分配される一方、これら一定の分水比での配水に加え、下流側パイプライン222側の室209には、越流分が加えられる。(図14のケース番号III参照)。このように越流がない場合、分水口204側と通水口205側とには、一定の分水比で対等に分水と通水が行われ、越流がある場合、下流側パイプライン222側への流下が優先されるようになっている。
【実施例4】
【0102】
次に、本発明の第4の実施例に係る水路の分水機構302について説明する。本発明の第4の実施例に係る水路の分水機構302は、上記第1第2の実施例に係る水路の分水機構2、102がそれぞれ、大規模な水路と小規模な水路とに適用されるのに対し、すでに設けられている既存の水路を利用して適用するもので、図15に示すように、分水口304を上流側幹線水路320の側壁320Aに形成し、通水口305を分水口304より下流側の下流側幹線水路322の水路面に配し、これら分水口304と通水口305とにそれぞれ別体で上下方向に変位し所望の位置で保持される潜流調整板310、311を設置した点が異なっている。すなわち、既存の水路では、通水口305の部位に下流側幹線水路322の水位制御と通水量制御を同時に行うため、越流を許容する越流調整ゲート(越流堰、越流板)または潜流を許容する第1の潜流調整ゲートを設け、支線水路321側の分水口304には、潜流を許容し第1の潜流調整ゲートと独立に上下に変位する第2の潜流調整ゲートを設け、上流側幹線水路320と連絡水路331との間には余水吐を設けている。これに対し、本実施例に係る水路の分水機構302では、通水口305と分水口304とにそれぞれ、潜流のみを許容する潜流調整板310、311を設け、余水吐に代えて連絡開口部330を水路底面303Cまで削り取って形成し、連絡水路331と下流側幹線水路322との間には、越流を許容する越流調整板335を設け、連絡水路331と排水連絡水路333との間には、余水吐334を形成した点が異なっている。
【0103】
本実施例に係る水路の分水機構302は、上流側幹線水路320の一方の側壁320Aに分水口304が形成される。分水口304は支線水路321に接続される。分水口304の底部は通水口305の底部と同様に水路303の水路底面303Cと合致している。分水口304には、矩形状の支線側潜流調整板310が後述する開度調整装置(変位手段)306により上下方向に変位可能に配置される。支線側潜流調整板310は、上端からの越流を許さないよう高さ寸法は分水口304の高さに準じた寸法となっている。支線側潜流調整板310は水路底面303Cより上方で保持されると、水路底面303Cとの間に形成される空隙S310(図16参照)から支線水路321側に潜流を導くようになっている。支線水路321には、支線側潜流調整板310の下流側に、手動で操作される非常時用の止水ゲートや角落し(図示せず)が設置される。
【0104】
下流側幹線水路322で分水口304地点より下流側の通水口305には、矩形状の幹線側潜流調整板311が開度調整装置306により上下方向に変位可能に配置される。幹線側潜流調整板311は、上端からの越流を許さないよう高さ寸法は通水口305の高さに準じた寸法となっている。幹線側潜流調整板311は水路底面303Cより上方で保持されると、水路底面303Cとの間に形成される空隙S311から下流側幹線水路322側に潜流を導くようになっている。これら両潜流調整板310、311は、開度調整装置306により同期して同一の開度で開口するようになっている。開度調整装置306は、各潜流調整板310、311の上端部に回動可能に設けられ支持枠に螺合される両調整ロッドを同期させて回動させる回動機構(図示せず)を備えている。このため、両潜流調整板310、311は独立して操作することができないようになっている。
【0105】
上流側幹線水路320の他方の側壁320Bには、分水口304に向かい合って連絡開口部330が形成される。連絡開口部330の底部は水路底面303Cと合致している。連絡開口部330の外側には、他方の側壁320Bに沿ってこの側壁320Bと外壁332とにより連絡水路331が形成される。連絡水路331は幹線側潜流調整板311より下流側に延長され、延長端には排水河川への排水連絡水路(他の支線水路)333が接続される。連絡水路331と排水連絡水路333との間には、余水吐334が形成される。下流側幹線水路322の側壁322Bには、通水口305の下流側に連絡水路331の水位を制御する越流調整板335が設けられる。越流調整板335は角落し構造の越流調整板により高さを調整し、連絡水路331からの水流を上流端から越流させるようになっている。越流調整板335は、上端面高さ(越流高さ)が余水吐334の越流部より低くなるよう設定される。
【0106】
このように、上記第4の実施例に係る水路の分水機構302は、上述の如く構成されているので、既存の水路であっても、簡易な改修により上記各実施例と同様に、渇水時でも、平水時でも予め決められた分水比率で通水量と分水量とを一定に保持することができる。また、たとえ支線水路321が上流側幹線水路320の側壁320Aに接続されていても、開度調整装置306により両潜流調整板310、311を同期させて同一の開度で開口させることができ、渇水時でも、平水時でも予め決められた分水比率で通水量と分水量とを一定に保持することができる。さらに、連絡水路331により上流側幹線水路320の水流の一部を越流調整板335により下流側幹線水路322に迂回させることができるので、下流側幹線水路322への通水を優先させることができる。また、越流調整板335は、上端面高さが余水吐334の越流部より低くなるよう設定されているので、越流調整板335から下流側幹線水路322側に流入する越流量が増大し続けると、過剰な増水分を余水吐334を通じて排水連絡水路333に排出させることができる。さらに、既存の支線水路321を改修する際や潜流調整板310、311や開度調整装置306が故障した際にも止水ゲートや角落しを用いることにより作業がし易くなる。
【0107】
なお、水位調整のためのゲート構造については、水理特性に着目すると、(1)ゲートの下から水を通すのか(1−aタイプ)、ゲートの上から水を越流させるのか(1−bタイプ)のいずれかからなる種類と、(2)ゲートはスルースゲートのように滑りで上下移動するのか(2−aタイプ)、ゲートにヒンジがあって回転移動するのか(2−bタイプ)のいずれかからなる種類との2種類が考えられる。これらタイプとゲート設置場所との関係では、河川の取水堰にあっては、堰上げは1−bタイプ、取水は1−aタイプが多く見られ、用水路の分水ゲートでは、堰上げ、分水とも1−aタイプが多く見られる。河口の防潮ゲートでは、1−aタイプが多く見られる。また、水位の制御では、1−bタイプが1−aタイプより容易である。一方、水位制御を越流ゲートで行う場合、1−aタイプの場合は、ゲートの扉が水路底より低くなるように水路底を加工して設置する。1−bタイプの場合は、ゲートの扉とヒンジが水路底より低くなるように水路を加工して設置するなどの工夫をして、ゲート全開時の流量を確保する必要がある(図17の(B)参照)。これらの工事が複雑で工費が高くなる場合には、水路幅を大きくして、水路底に設置する代替案も考えられる。
【実施例5】
【0108】
次に、本発明の第5の実施例に係る水路の分水機構402について説明する。本発明の第5の実施例に係る水路の分水機構402は、上記第4の実施例に係る水路の分水機構302が、分水口304を上流側幹線水路320の側壁320Aに形成し、分水口304の底部を通水口305の底部と一致させ水路303の水路底面303Cと同一面に形成しているのに対し、図18に示すように、通水口405より上流側の上流側幹線水路420の側壁420Aに形成した四角形状の分水口404を、水路403の水路底面403Cより上方の高い位置に形成した点が異なっている。本実施例に係る水路の分水機構402は、通水口405が分水口404より下流側で下流側幹線水路422の水路面に配置される。分水口404には、図20ないし図22に示すように、支線側潜流調整板410が、通水口405には、幹線側潜流調整板411がそれぞれ配置される。これら潜流調整板410、411は矩形状に形成され、それぞれガイド機構408に両側部が差し入れられ上下方向に変位し所望の位置で保持される。支線側潜流調整板410は、上端からの越流を許さないよう高さ寸法は分水口404の高さ寸法より長寸となっている。支線側潜流調整板410は分水口404の底部404Aより上方で保持されると、底部404Aとの間に形成される空隙S410から支線水路421側に潜流を導くようになっている。また、幹線側潜流調整板411は、上端からの越流を許さないよう高さ寸法は通水口405の高さに準じた寸法となっている。幹線側潜流調整板411は水路底面403Cより上方で保持されると、水路底面403Cとの間に形成される空隙S411から下流側幹線水路422側に潜流を導くようになっている。支線水路421の水路面は分水口404と同一に形成される。
【0109】
これら潜流調整板410、411は、開度調整装置(変位手段)406により同期して同一の開度で開口される。開度調整装置406は、各潜流調整板410、411の上端部に回動可能に設けられ支持枠に螺合される両調整ロッドを同期させて回動させる回動機構(図示せず)を備えている。このため、両潜流調整板410、411は独立して操作することができないようになっている。
【0110】
通水口405には、幹線側潜流調整板411に隣接し、ガイド機構408に両側部が差し入れられる越流調整板412が配置される。越流調整板412は複数の板片から構成され、水路底面403Cから順次板片を重ねて、越流上端部412Aを所望の高さに設定することができるようになっている。ガイド機構408と支線側潜流調整板410とにより第1のゲート(支線側潜流ゲート)を、ガイド機構408と幹線側潜流調整板411とにより第2のゲート(幹線側潜流ゲート)を、ガイド機構408と越流調整板412とにより第3のゲート(幹線側越流ゲート)をそれぞれ構成している。
【0111】
本実施例に係る水路の分水機構402では、水路のゲートが通常使用されている潜り流出の場合、第1ゲートの支線側潜流調整板410と第2のゲートの幹線側潜流調整板411とを同期させて連動させるようにしているので、上流側幹線水路420の上流側水位をh、下流側幹線水路422の下流側水位をhm、支線水路421の水位をhlとし、第3のゲートで越流調整板411が越流を阻止している場合、すなわち、越流調整板411の上端越流部411の高さが上流側水位hより高い場合、幹線水路403の通過部A(空隙S411に相当)の流量QAは、
QA=通過部Aの幅(空隙S411の水路幅方向寸法)×通過部Aの高さ(幹線側潜流調整板411下端面の水路底面403Cからの高さ寸法)×流速係数×縮流係数×sqrt(2×(h−hm))となる(ここでsqrtは平方根、ルートの関数である。)。
支線水路421の通過部B(空隙S410に相当)の流量QBは、
QB=通過部Bの幅(分水口404の横幅)×通過部Bの高さ(支線側潜流調整板410下端面の分水口底部404Aからの高さ寸法)×流速係数×縮流係数×sqrt(2×(h−hl))となる。
ここで、上記2つの流速係数と縮流係数(流量係数=流速係数×縮流係数)との差が無視でき、hm=hlとすれば、通過部Bと通過部Aとの面積比が同じになるように第1のゲートの支線側潜流調整板410と第2のゲートの幹線側潜流調整板411とを同期させる。こうすることにより、上記各実施例と同様に、越流調整板412からの越流がなく、しかも、上流側水位が分水口404の底部404Aより高い場合、各潜流調整板410、411からの潜流のみにより分水と通水が行われるので、分水比(取水比)は予め設定された一定の値となる。しかしながら、上流側水位が分水口404の底部404Aより低い場合、支線水路421には、分水は行われず、下流側幹線水路422への通水が優先される。このように、幹線水路の水路面に対して分水口の配置が多様であっても、上流側水位が分水口404の底部404A以上で予め設定された一定の分水比を保持して分水と通水とを行うことができる。そして、上記上流側水位以下では、下流側幹線水路422への通水を優先させるようになっている。
【実施例6】
【0112】
図23の(A)、(B)はそれぞれ、本発明の特徴を比較して示すモデルM−I、M−IIを示すもので、(A)は図5に示す本発明の第1の実施例に係る水路の分水機構2の構成に基づいて作成された本発明のモデルM−I、(B)は分水口4と通水口5とにおける分水量と通水量とをそれぞれ独立に制御する2体の流量制御装置C10A、C−10Bを備えた従来例のモデルM−IIを示している。図23の(A)の本発明のモデルM−Iでは、上記第1の実施例と同様に、分水口4と通水口5の一部に上下に変位可能に設けられ両口4、5をともにほぼ同一の開度で開き下方で水流の通過を許容し上端からの越流を阻止する潜流調整板10を備え、通水口5の他の部分には、越流を許容する堰上げ板(水位制御装置)12が差し入れられるようになっている。図23の(B)の従来例のモデルM−IIでは、通水口5の一部と分水口4とにそれぞれ図示しない変位手段により独立に上下に変位する第1第2の潜流調整板(スルースゲート)C−10A、C−10Bを設け、通水口5の他の部分に堰上げ板12が差し入れられるようになっている。堰上げ板12が差し入れられる第2のゲート8は上流側の水位制御を果たすようになっている。第1の実施例と同一部号は同一または相当部分を示す。また、図24ないし図28はそれぞれ、これら両モデルM−I、M−IIの流量公式に基づいて支線水路12の取水比と本線水路22の流下比とについて操作可能な範囲との関係を示したグラフである。図29は、幹線水路20の0から最大までの送水量(横軸)と支線水路21の0から最大までの取水量(横軸)とについて本発明のモデルM−Iと従来のモデルM−IIとによる操作可能な範囲の違いを示すグラフである。
【0113】
図23の(A)、(B)に示す両モデルM−I、M−IIについて、上流側幹線水路20の最大送水量をM(m3/s)、支線水路21の最大分水量をZ(m3/s)でそれぞれ表し、上流側幹線水路20の最大以下の通常時の送水量をm(m3/s)、支線水路21の最大以下の通常時の分水量をz(m3/s)でそれぞれ表す(最大量を大文字のアルファベットで、最大以下の通常時の値を小文字のアルファベットで表す)。上流側幹線水路20の通常時送水量m(m3/s)はM≧m≧0となり、支線水路21の通常時分水量z(m3/s)はZ≧z≧0を満足する。幹線水路の規模は、上流側幹線水路20の最大送水量Mと支線水路21の最大分水量Zとで設計され、このときの支線水路21の分水量に対する幹線水路20の送水量に対する取水比は、Z/Mである。下流側幹線水路22への通水量(通過流量)xはm−z(x=m−z)であり、上流側幹線水路20の通常時送水量mの値に係わらず、m=z+xが成立する。そこで、以下では、上流側幹線水路20の通常時送水量mの配分比率である支線水路21の取水比z/mと本線水路22の流下比(下流側幹線水路への通水量(通過流量)/送水量)x/mを検討する。
【0114】
まず、図23の(B)に示す従来のモデルM−IIでは、通水口5側の第1の潜流調整板(第1のスルースゲート)C10Aと分水口4側の第2の潜流調整板(第2のスルースゲート)C10Bとをそれぞれ独立に上下に操作するようにしているので、上流側幹線水路20の送水量が最大送水量Mから減少し通常送水量m(M>m>0)(m3/s)になった場合、支線水路21が取りうる可能な最大分水量はZであり、支線水路21の取水比z/mの最大値はZ/mになる。言い換えれば、支線水路21の取水比z/mの範囲は(Z/m)≧(z/m)≧0になる。つまり、上流側幹線水路20の通常送水量mが最大送水量Mから減少しても、支線水路側施設では取水可能な最大量Zまで取水を増加させることができる。そしてその分だけ支線水路21の取水比z/mが増加し下流側本線水路22の流下比x/mが減少する(図26、図27参照)。
【0115】
これに対し、図23の(A)に示す本発明のモデルM−Iでは、一枚の潜流調整板10が分水口4と通水口5とにわたって一体に上下に操作されるので、水位制御ゲートである第2のゲート8で堰上げ板12(図5参照)から越流がない、すなわち、越流による通過流量が零の場合、通水口5の通水量を制御するチェックゲート側(第1のゲート6の通水口側)と分水口4の分水を制御する分水ゲート側(第1のゲート6の分水口側)との分水比x/z(分水比=分水量z/通水量x(=送水量m))は、両水路21、22の下流水位が同じ場合、分水口4側の取水比z/m=Z/Mと同一で一定である(図24の流下比x/mが80%−100%、取水比z/mが0%−20%の範囲である「一定比率」、「下流優先取水」の部分参照)。
【0116】
第2のゲート8で堰上げ板12から越流がある場合、すなわち、越流による通過流量がある場合、下流側幹線水路22への通水量(通過流量)が増加するので、分水ゲートの取水比は、送水量が増大するに従って下流側幹線水路22への通水量は増大する一方、支線水路21への分水量は一定の量のままとなり、潜流調整板10が閉じられ越流のみ許容すると、分水が遮断され全量が通水されるので、(Z/M)≧(z/m)≧0となる。このように本発明のモデルM−Iでは、従来のモデルM−IIと比較して、(Z/m)≧b≧(Z/M)の範囲bが第1のゲート6の制御対象から除外される点が異なっている。このように、本発明のモデルM−Iでは、分水ゲート(支線水路21)の利用者は、送水量に対して最大の取水量を確保するとしても、分水口4側の取水比z/mは(Z/M)≧(z/m)≧0に基づいて最大のZ/Mの取水比が確保され、上流側幹線水路20からの送水量mないしZに係わらず、一定の分水比での配水が実現する。
【0117】
図24ないし図28のぞれぞれのグラフでは、縦軸に支線水路21の取水比z/mを、横軸に本線水路22の流下比x/zを示し、分水操作を表現している。縦軸と横軸との和が一直線上にあるのは、送水量を支線水路21の取水と本線水路22の流下で分け合っており、総和が100%になることを意味する。これらグラフではいずれも、水路がZ/M=0.2で設計の最大通水量での支線水路の取水比を20%としている。
【0118】
図25は、幹線水路20の送水量が最大送水量Mの場合の従来のモデルM−IIによる操作を示す。支線水路21への取水が最大取水量Zを取った場合の分水比は20%で、取水制限をした場合には、これより小さい値となり、図25中、「一定比率」および「下流優先取水」の領域で操作ができる。次に、幹線水路20の送水量が減少し、m=0.6×Mになった場合の例を図26に示す。支線水路21への最大取水量Zは、Z=0.2×Mとなるので、支線水路21には、最大で0.2×Mの取水が可能である。このときの操作は図中、三角形の印で示す。このときの本線22の流下流量(通水量)xは(0.6×M)−(0.2×M)=0.4×Mとなる。支線水路21の取水比z/m=(0.2/0.6)=0.333で、下流側幹線水路22の流下比x/m=(0.4/0.6)=0.666となる。これが最大の取水可能な量であり、操作可能な領域は図26の三角形マークの右側になる。この場合、本線水路22の流下比x/mは0.66(=(0.4×M)/(0.6×M))で、設計時の流下比の値0.8=1.0−0.2を下回っている。
【0119】
次に、従来のモデルM−IIについて、本線20の送水量mを0<m<Z、つまり、幹線20の送水量全量を支線水路21に導入可能な場合と、Z<m<M、つまり、幹線20の送水量の一部を下流側幹線水路22へ通水する場合とに分けて考える。
(i)0<m<Zの場合を図27に示す。この図27で明らかなように、ここでは、支線水路21に幹線20の送水量の全量を導入可能であり、従来のモデルM−IIでは、支線水路21の取水比で0%〜100%のすべての範囲、本線水路22の流下比で0%〜100%のすべての範囲で操作が可能になっている。
(ii)Z<m<Mの場合を図28に示す。ここでは、支線水路21の最大取水量は、z=Zのときに生じ、これにより従来のモデルM−IIでは、取水を絞り込む範囲の操作が可能である。
このように、幹線送水量が最大の送水量Mの場合を除けば、従来のモデルM−IIでは、設計時の取水配分比率(図24ないし図28中、「一定比率」と表記)の他に、図中左側の「上流優先取水」(支線水路21側の分水優先)と図中右側の「下流優先取水」(下流側幹線水路22側の通水優先)の2つの領域で取水が可能である。このため、支線水路21の利用者は、より有利な、「上流優先取水」の領域で取水を実現させ、下流の水不足を発生させてきた。つまり、従来のモデルM−IIでは、上流の過剰取水、下流の取水不足を招く構造的な性質がある。
【0120】
これに対し、本願発明のモデルM−Iでは、幹線22の流下比の最小値は、送水量の影響を受けず、一定になる。このため、下流側幹線水路22の流下比x/mは、x/m=1−(Z/M)=0.8で目標値(図24中、丸い円の部分で示す)に一致する。図24の丸形マークの右側に本発明モデルM−Iの操作可能範囲を示している。本発明で操作可能な範囲は、設計時の取水配分比率(図24中、「一定比率」と表記)の他には、図24の右側の「下流優先取水」の領域のみで取水が可能である。このため、支線水路21の利用者は、最も有利な一定比率取水を実現させた場合でも、下流での水不足は発生しない。図29は、支線水路取水の操作可能範囲を幹線送水量との関係で示したものである。本発明のモデルM−Iで操作可能な場合を右辺と底辺とが直角をなす三角形の領域α(本発明モデルM−Iの取水操作可能な領域=α)で示されている。従来のモデルM−IIで操作可能な場合は、上記領域αとこの領域αの上辺の上側にある2つのより小さい三角形の領域β、γ(従来のモデルM−IIの取水操作可能な領域=α+β+γ)で示されている。従来のモデルM−IIでは、領域α、β、γでなす台形部分の組み合わせが可能となり、領域β、γの部分では、上流優先取水、すなわち、支線水路21側の分水優先を許すことになり、支線水路の取水比z/mが目標設定値より大きくなる一方、本線流下比x/mは目標設定値より小さくなっている(図26ないし図28参照)。これに対し、本発明のモデルM−Iでは、操作可能な範囲が大三角形αで示され、支線水路21の取水比z/mは、目標設定値またはそれ以下になっている。
【実施例7】
【0121】
次に、本発明の第7の実施例に係る水路の分水機構602について説明する。本発明の第7の実施例に係る水路の分水機構602は、上記第1ないし第6の実施例に係る水路の分水機構2、102、202、302、402が、潜流を許容する潜流調整板10、110、210、310、311、410、411の下端を水平に形成し、水路底面に接すると、下端からの潜流を遮断するようにしているのに対し、図30に示すように、潜流調整板610の通水口605側の下端部を切り欠くようにした点が異なっている。この第7の実施例に係る水路の分水機構602は、通水口605と分水口604とには、これら両口605、604にわたって上下に変位する潜流調整板610が設けられる。潜流調整板610は、上下方向寸法を水路の設計水位の高さ寸法より短寸に形成されるとともに、通水口605側の下端部が切り欠かれて切り欠き部610Aが形成される。このため、下流側幹線水路622には、渇水・平水時でも、常時、潜流が確保されるようになっている。このため、分水比に差を設けて設定することができるようになっている。なお、符号603A,603Bはそれぞれ水路の側壁を、603Cは水路底面を、605は通水口側水路を、607は分水壁を、621は支線水路を、622は下流側幹線水路をそれぞれ示す。
【実施例8】
【0122】
次に、本発明の第8の実施例に係る水路の分水機構702について説明する。本発明の第8の実施例に係る水路の分水機構702は、上記第1ないし第7の実施例に係る水路の分水機構2、102、202、302、402、602が、幹線水路20、22、122、209(222)、322、422、522の通水口5、105、205、305、405、605に単一の潜流調整板10、110、210、311、411、610を設けるようにしているのに対し、大規模な水路(幹線水路幅の広い水路)に適用できるように、幹線水路703の通水口705には、複数の潜流調整板711A〜711Dを並べて配置し、これら複数の潜流調整板711A〜711Dと分水口704側の潜流調整板710とを同期させて上下に変位させる点が異なっている。この第8の実施例に係る水路の分水機構702は、図32に示すように、水路703の両側壁703A、703Bに水路幅方向を合致させて一対の支柱706A、706Bが設置される。これら支柱706A、706B間には、支持ガイド707A〜707Dを介して複数の潜流調整板711A〜711Dと越流調整板715が配置される。支持ガイド707A〜707Dは、支柱706A、706Bとともに図示しない縦溝(ガイド)を有し、各潜流調整板711A〜711Dの両側と越流調整板715の両側とを滑動自在に支持するようになっている。
【0123】
幹線水路703の一方の側壁703Aには、支線水路721の分水口704が形成され、分水口704には、下端面が水路底面に合致して平坦に形成され上下方向に変位し所望の位置で保持される潜流調整板710が設置される。通水口705側の第1の潜流調整板(取水口の最近傍の潜流調整板)711Aと分水口704側の潜流調整板710とは、連結バー(連結機構)716で連結され同期して一体に上下動するようになっている。第1の潜流調整板711Aの下端には、隣の第2の潜流調整板711Bの下面切り欠き部714Bに嵌るストッパ713Aが、第2の潜流調整板711Bの下端には、隣の第3の潜流調整板711Cの下面切り欠き部714Cに嵌るストッパ713Bが、第3の潜流調整板711Cの下端には、隣の第3の潜流調整板711Dの下面切り欠き部714Dに嵌るストッパ713Cがそれぞれ形成される。これらストッパ713A〜713Cと切り欠き部714B〜714Dとにより支持機構を構成している。本実施例に係る水路の分水機構702では、図示しない変位手段により第1の潜流調整板711Aが上方に変位されると、この第1の潜流調整板711Aに同期して、分水口704側の潜流調整板710とともに第2ないし第4の潜流調整板711B、711C、711Dも上方に変位されるようになっている。図示しない変位手段により第1の潜流調整板711Aが下方に変位されると、分水口704側の潜流調整板710は第1の潜流調整板711Aに同期して下方に変位されるとともに、第2の潜流調整板711Bから順に第4の潜流調整板(取水口から最遠の潜流調整板)711Dまで連動して降下するようになっている。なお、上記水路の分水機構702では、連結バー716を両潜流調整板710、711Aとの連動機構として構成しているが、第1の潜流調整板711Aの開度が分水口704側の潜流調整板710の開度より優先するようにストッパを設置することもできる。また、上記実施例では、分水口側潜流調整板710と通水口側の第1の潜流調整板711Aとを連結バー716により連結し図示しない変位手段により連動させるようにしているが、これに限られるものではなく、連結バー716と変位手段とを、両板710、711Aにそれぞれ一端が連結された各ワイヤを巻き取り車に引き出し自在に巻き取るようにして連動させるように構成してもよいし、両板710、711Aにそれぞれ下端が取り付けられて立設されたねじ切りロッドに噛合する歯車を設け、これら両歯車を同期させて回転させる連動機構により連動させるように構成してもよい。
【0124】
なお、上記第8の実施例に係る水路の分水機構702では、分水口704側の潜流調整板710の下端面は平坦に形成され、第1ないし第4の潜流調整板711A〜711Dのようなストッパやこのストッパに嵌る切り欠き部が設けられていないが、これに限られるものではなく、例えば、通水口と分水口とを同一水路面に形成し、分水口側のゲートを支柱706Aと707Aと第1の潜流調整板711Aとにより構成し、通水口側のゲートを支柱707A、707B、707C、707D、706Bとこれら支柱707A〜707D、706B間に配設される第2の潜流調整板711B、711C、711Dと越流調整板715とにより構成し、分水口側潜流調整板(第1の潜流調整板)711Aとこの分水口側潜流調整板711Aと隣接する通水口側潜流調整板(第2の潜流調整板)711Bとを連結バー716で連結して同期させ、図示しない変位手段により一体に上下動させるようにしてもよい。
【実施例9】
【0125】
図34の(A)ないし(C)はそれぞれ、上記第8の実施例に係る水路の分水機構702のストッパ713A、713B、713Cの第1の変形例を示すもので、上記第8の実施例に係る水路の分水機構702のストッパ713A、713B、713Cが潜流調整板711A〜711Cの下端に設けられている、つまり、下端に支持機構が設けられているのに対し、上部に設けられている点が異なっている。すなわち、第8の実施例の第1の変形例に係る水路の分水機構702Aでは、第1の潜流調整板711Aの上部にはコ字状支持部材717の一端が取り付けられる。支持部材717の延長端は、第4の潜流調整板711Dに近い隣の第2の潜流調整板711Bに及んで延長され、この延長端に平坦な載置面718が形成される。第2の潜流調整板711Bには、下面がこれら両潜流調整板711A、711Bの最下端位置にあるとき、支持部材717の延長端載置面718に載置される当接部材719が取り付けられる。当接部材719の下面には尖頭突部が形成され、折曲された延長端718の内側に収まるようになっている。これら支持部材717は、第2、第3の潜流調整板711B、711Cにもそれぞれ順に設けられ、第2の潜流調整板711Bの支持部材717は、第3の潜流調整板711Cの当接部材719に、第3の潜流調整板711Cの支持部材717は、第4の潜流調整板(取水口から最遠の潜流調整板)711Dの当接部材719にそれぞれ当接するようになっている。このため、この変形例に係る水路の分水機構では、図示しない変位手段により第1の潜流調整板711Aが上方に変位されると、この第1の潜流調整板711Aに同期して、分水口704側の潜流調整板710が上方に変位されるとともに、第1の潜流調整板711Aが支持部材717と当接部材719とを通じて第2の潜流調整板711Bを、第2の潜流調整板711Bが支持部材717と当接部材719とを通じて第3の潜流調整板711Cを、第3の潜流調整板711Cが支持部材717と当接部材719とを通じて第4の潜流調整板711Dをそれぞれ順次同期して上方に変位させるようになっている。図示しない変位手段により第1の潜流調整板711Aが下方に変位されると、分水口704側の潜流調整板710は第1の潜流調整板711Aに同期して下方に変位されるとともに、第2の潜流調整板711Bから順に第4の潜流調整板711Dまで自重で降下するようになっている。
【実施例10】
【0126】
図35は、上記第8の実施例に係る水路の分水機構702のストッパ713A〜713Cの第2の変形例を示すもので、上記第1の変形例に係る分水機構702Aでは、一方の潜流調整板711Aにコ字状支持部材717を取り付け、他方の潜流調整板711Bには、下面が支持部材717の延長端載置面718に載置される当接部材719を設けて構成しているのに対し、第2の変形例に係る水路の分水機構702Bでは、通水口側と分水口側とで隣り合う支柱706A、708Aの上流側近傍に立設されたガイドロッド730に、分水口側潜流調整板720のストッパ722と通水口側潜流調整板721のストッパ723とを係止させるようにして点が異なっている。すなわち、第2の変形例に係る水路の分水機構702Bは、分水口712側の潜流調整板720には、その上端に板状ストッパ722を幹線水路側に突出させて設け、通水口703側の潜流調整板721には、その上端に板状ストッパ723を上流側に突出させて設け、これら両ストッパ722、723の長手方向一端を重なり合うように延長して設け、これら延長端にそれぞれガイド孔724、725を上下に貫通して穿設している。各潜流調整板720、721の上端部中央には、それぞれ図示しない変位手段に連結され、これら潜流調整板720、721を上下に変位させる操作ロッド720A、721Aが立設される。通水口側と分水口側とで隣り合う支柱706A、708Aの上流側近傍には、ガイドロッド730を立設し、まず、分水口側潜流調整板720の板状ストッパ722をガイド孔724を介してガイドロッド730に係止させ、次に、通水口側潜流調整板721の板状ストッパ723をガイド孔725を介してガイドロッド730に係止させるようにしている。このように、第2の変形例に係る水路の分水機構702Bでは、両ストッパ722、723とガイドロッド730とにより、分水口側潜流調整板720が通水口側潜流調整板721より上方へ変位するのを規制する規制機構を構成するようになっている。このため、図示しない変位手段によりこれら両潜流調整板720、721を同期させて上下に変位させる際には、分水口側潜流調整板720は通水口側潜流調整板721より上方への変位が規制され、必ず下方側に位置するので、分水口側への過剰な分水を避けることができる。
【実施例11】
【0127】
図36は、上記第8の実施例に係る水路の分水機構702の第3の変形例を示すもので、上記第2の変形例に係る分水機構702Bでは、板状ストッパ722、723をそれぞれ各潜流調整板720、721の上端に設けているのに対し、板状ストッパ742、743をそれぞれ操作ロッド720A、721Aに取り付けて、ガイドロッド750に係止させた点が異なっている。第8の実施例の第3の変形例に係る水路の分水機構702Cでは、板状ストッパ742、743はそれぞれ、潜流調整板720,721が最下方位置、すなわち、潜流を阻止する位置にあるとき、支柱708A、708B、706A、707Aと干渉しない位置で長手方向を各潜流調整板720,721の上端面長手方向と合致させて操作ロッド720A、721Aに取り付けられる。板状ストッパ742、743はそれぞれ、上記第2の変形例と同様に、これら両ストッパ742、743の長手方向一端を重なり合うように延長して設け、これら延長端にそれぞれガイド孔744、745を上下に貫通して穿設している。ガイドロッド750は、隣り合う支柱706A、708Aの近傍で、通水口側の両支柱707A、706Aを結ぶ方向と分水口側の両支柱708B、708Aを結ぶ方向とが合致する位置に立設される。このように、第3の変形例に係る水路の分水機構702Cでは、両ストッパ742、743とガイドロッド750とにより、分水口側潜流調整板720が通水口側潜流調整板721より上方へ変位するのを規制する規制機構を構成するようになっている。このため、分水口側潜流調整板720は通水口側潜流調整板721より常に下方に位置するとともに、板状ストッパ742、743は水に触れにくくより確実にストッパとしての機能を果たすことができる。
【実施例12】
【0128】
次に、本発明の第9の実施例に係る水路の分水機構802について説明する。本発明の第9の実施例に係る水路の分水機構802は、上記第8の実施例およびその変形例に係る水路の分水機構702が、幹線水路703の通水口705には、複数の潜流調整板711A〜711Dを並べて配置し、変位手段により第1の潜流調整板711Aを上下動させ、連結バー716により分水口側の潜流調整板710を、支持機構713A〜713C、714B〜714D、717、719により通水口側の潜流調整板711A〜711Dをそれぞれ同期させ、これら複数の潜流調整板711A〜711Dと分水口704側の潜流調整板710とを上下に変位させるように構成しているのに対し、支持機構を用いないで、各潜流調整板710、711A〜711Dを油圧により同期させて上下動させるようにした点が異なっている。
【0129】
すなわち、本発明の第9の実施例に係る水路の分水機構802は、図37および図38に示すように、幹線水路703の通水口705に並べて配置された複数の潜流調整板811A〜811Dと、分水口704側に配置された潜流調整板810は、それぞれ独立に上下に変位可能に構成される。水路703の両側壁703A、703Bに水路幅方向を合致させて一対の支柱706A、706Bが設置される。これら支柱706A、706B間には、支持ガイド707A〜707Dを介して複数の潜流調整板811A〜811Dと越流調整板812が配置される。支持ガイド707A〜707Dは、支柱706A、706Bとともに図示しない縦溝(ガイド)を有し、各潜流調整板811A〜811Dの両側と越流調整板812の両側とを滑動自在に支持するようになっている。分水口704側の潜流調整板810も両端が図示しない支柱に上下に変位可能に支持されるようになっている。
【0130】
ところで、この第9の実施例に係る水路の分水機構802は、変位手段が、支持ガイド707A〜707Dの上方に設けられ水路703、712に固定された支持枠812と、各潜流調整板710、711A〜711D毎に支持枠812に取り付けられ各潜流調整板810、811A〜811Dを同期させて上下に変位させる油圧シリンダ813と、これら油圧シリンダ813に配管814を介して圧油を供給する油圧供給機構815とを備えて構成される。各油圧シリンダ813には、非常コック816が設けられる。第9の実施例に係る水路の分水機構802は、このように構成されているので、油圧供給機構815から各油圧シリンダ813に各潜流調整板810、811A〜811Dの開度を同一にするよう所定圧の油圧が導入されると、各潜流調整板810、811A〜811Dは同期して所定の高さに変位される。このため、制御の自動化を図ることができる。非常コック816は、油圧システムの故障時、操作系全体に影響が及ぶのを防ぐために設けられる。
【0131】
図39の(A)、(B)はそれぞれ、油圧シリンダ813の動作方向をそれぞれ示すもので、矢印の方向は油圧シリンダ813の動作方向を示す。矢印の基端部位置が固定側に相当し矢印の延長方向位置、すなわち、延長長さが大気圧を引いた油圧に比例する。図39の(A)に示す構成では、油圧ゼロ(油圧の非導入時)の場合、大気圧と同一で、矢印の長さがゼロになり、各潜流調整板810、811A〜811Dは全閉となる。この場合、支線水路712側への過剰取水発生のおそれがある。このため、図39の(B)に示すように、油圧シリンダ813の動作方向を上下逆にし、カウンターウェイト817を設け、故障時には、各潜流調整板810、811A〜811Dが全開となるようにしてもよい。
【実施例13】
【0132】
次に、本発明の第10の実施例に係る水路の分水機構902について説明する。本発明の第10の実施例に係る水路の分水機構902は、上記第9の実施例に係る水路の分水機構802が変位手段として油圧システム813、814、815を用いているのに対し、機械的な変位装置を用いた点が異なっている。すなわち、第10の実施例に係る水路の分水機構902は、図40および図41に示すように、水路903の分水口904に配設された潜流調整板910Aと通水口905に配設された複数の潜流調整板910B、910Cとを備えている。通水口905の一部には、越流調整板911が設けられる。これら潜流調整板911A〜911C、越流調整板912はそれぞれ水路側壁903A、903Bの幅方向に形成された縦溝906A、906Bと支持ガイド907とにより上下に変位可能に支持される。支持ガイド907の上方には、両端が水路903に固定された支持枠912が配設される。
【0133】
各潜流調整板911A〜911Cの上端中央部には、雌ねじ部913が設けられ、この雌ねじ部913には、上下に雄ねじ部が形成されたねじロッド914が螺装される。ねじロッド914の上端には、ウォームホイール915が取り付けられる。支持枠912には、軸受け916を介してウォームシャフト917が回動自在に支持される。そして、このウォームシャフト917のギヤ部918がそれぞれねじロッド914のウォームホイール915に噛合するようになっている。ウォームシャフト917の突出端には、操作ホイール919が取り付けられる。第10の実施例に係る水路の分水機構902は、このように構成されているので、操作ホイール919を一方向に回すと、ウォームシャフト917が一体に回動し、各ウォームホイール915を同一の方向に回転させる。このため、各潜流調整板911A〜911Cの雌ねじ部913に螺合されたねじロッド914はいずれも同一方向に回動して各潜流調整板911A〜911Cを同期させて上方または下方に変位させるようになっている。このように、第10の実施例に係る水路の分水機構902では、操作ホイール919が操作されると、各潜流調整板911A〜911Cは同期して上下に変位されるように構成されているので、簡素な構造で、水を確実に一定の分水比で配分操作することができる。また、きめ細かく各潜流調整板911A〜911Cの開度を調整することができる。
【実施例14】
【0134】
次に、本発明の第11の実施例に係る水路の分水機構1002について説明する。本発明の第11の実施例に係る水路の分水機構1002は、上記第10の実施例に係る水路の分水機構902が変位手段として、各潜流調整板911A〜911Cの上端中央部に設けられた雌ねじ部913と、この雌ねじ部913に螺装されるねじロッド914と、ねじロッド914の上端に取り付けられたウォームホイール915と、支持枠912の軸受け916を介して回動自在に支持されるウォームシャフト917と、ねじロッド914のウォームホイール915に噛合するウォームシャフト917のギヤ部918と、ウォームシャフト917の突出端に取り付けられた操作ホイール919とを備えて構成し、操作ホイール919の回動により、各潜流調整板911A〜911Cを同期させて変位させるようにしているのに対し、図42に示すように、変位手段を、一端が潜流調整板1010上端部1010Aの左右両側にそれぞれ連結されたワイヤ1011、1012と、ワイヤ1011、1012の他端を連結して引き出し自在に巻き取るとともに同一軸心上に配置されたプーリ1013、1014と、これら各プーリ1013、1014の互いに向かい合う一側面1013A、1014Bから延びる回動伝達軸(軸)1015、1016同士を連結してこれら両回動伝達軸1015、1016を同期させる第1のコネクタ(潜流調整板水平同期手段)1017と、プーリを正逆に回動させる操作ハンドル(回動操作手段)1018とを備えて構成した点が異なっている。第1のコネクタ1017は、回動伝達軸1015、1016の衝合端にそれぞれ歯車(図示せず)を設けこれら歯車同士を噛合させて両軸1015、1016の同期をとるようになっている。
【0135】
すなわち、本発明の第11の実施例に係る水路の分水機構1002は、操作ハンドル1018によりプーリ1013を正逆に回動させると、他方のプーリ1014が第1のコネクタ1017を通じて同期して回動し、プーリ1013、1014の回動に応じてワイヤ1011、1012が潜流調整板1010の左右両側を上下動させる。このとき、各プーリ1013、1014は第1のコネクタ1017により回動伝達軸1015、1016を介して同期されるので、ワイヤ1011、1012は潜流調整板上端部1010Aの左右両側を水平を確保して上下動させるようになっている。このため、本発明の第11の実施例に係る水路の分水機構1002は、上記第10の実施例に対し、簡素な構造で潜流調整板1010を水平を確保して上下動させることができるようになっている。
【実施例15】
【0136】
次に、本発明の第12の実施例に係る水路の分水機構1102について説明する。本発明の第12の実施例に係る水路の分水機構1102は、上記第11の実施例に係る水路の分水機構1002が、1枚の潜流調整板1010をプーリ1013、1014と第1のコネクタとを通じて水平に上下に変位させるようにしているのに対し、図43に示すように、本実施例では、同一水路面上に配置された2枚の潜流調整板1010、1020を備え、変位手段がこれらすべての潜流調整板(本実施例では2枚)を水平を確保し、かつ、両者を同期させて上下に変位させるようにした点が異なっている。
【0137】
すなわち、本発明の第12の実施例に係る水路の分水機構1102は、同一水路面上に配置され図示しない支持ガイドにより上下に変位可能に支持される第1第2の潜流調整板1010、1020毎に変位手段が設けられる。第1の潜流調整板1010の変位手段は、上記第11の実施例と同様に、一端が第1の潜流調整板1010の上端部1010Aの左右両側にそれぞれ連結されたワイヤ1011、1012と、これらワイヤ1011、1012の他端を連結して引き出し自在に巻き取るとともに同一軸心上に配置されたプーリ1013、1014と、これら各プーリ1013、1014の互いに向かい合う一側面1013A、1014Bから延びる回動伝達軸1015、1016同士を連結してこれら両回動伝達軸1015、1016を同期させる第1のコネクタ(潜流調整板水平同期手段)1017とを備えて構成される。プーリ1013の他側面1013Bには、このプーリ1013を正逆に回動させる操作ハンドル1018が取り付けられる。
【0138】
第2の潜流調整板1020側の変位手段は、一端が第2の潜流調整板1020の上端部1020Aの左右両側にそれぞれ連結されたワイヤ1021、1022と、これらワイヤ1021、1022の他端を連結して引き出し自在に巻き取るとともに同一軸心上に配置されたプーリ1023、1024と、これら各プーリ1023、1024の互いに向かい合う一側面1023A、1024Bから延びる回動伝達軸1025、1026同士を連結してこれら両回動伝達軸1025、1026を同期させる第1のコネクタ(潜流調整板水平同期手段)1027とを備えて構成される。第1のコネクタ1017、1027はそれぞれ、回動伝達軸1015、1016と1025、1026の衝合端にそれぞれ歯車(図示せず)を設けこれら歯車同士を噛合させて各軸1015、1016と1025、1026の同期をとるようになっている。
【0139】
ところで、本実施例に係る水路の分水機構1102の変位手段は、第1の潜流調整板1010の変位手段と第2の潜流調整板1020の変位手段を同期させる第2のコネクタ(全潜流調整板水平同期手段)1037を備えている。すなわち、第2のコネクタ1037は、隣接するこれら第1第2の潜流調整板1010、1020の各プーリ1013、1014、1023、1024のうち、他方の潜流調整板1010、1020の近接したプーリ1014、1023の他方の側面1014A、1023Bから延びる回動伝達軸(回動伝達手段)1035、1036同士を連結してこれら両回動伝達軸1035、1036を同期させるようになっている。このため、操作ハンドル1018が回動操作されると、この回転はプーリ1013から順に回動伝達軸1015−第1のコネクタ1017−回動伝達軸1016−プーリ1014−回動伝達軸1035−第2のコネクタ1037−回動伝達軸1036−プーリ1023−回動伝達軸1025−第1のコネクタ1027−回動伝達軸1026−プーリ1024に伝達される。こうして、第12の実施例に係る水路の分水機構1102では、両潜流調整板1010、1020を水平を確保し、かつ、両者を同期させて上下に変位させることができるようになっている。すなわち、第2のコネクタを用いることにより、2枚の潜流調整板1010、1020を同期をとった上で、配置の自由度を高くすることができる。
【実施例16】
【0140】
次に、本発明の第13の実施例に係る水路の分水機構1202について説明する。本発明の第13の実施例に係る水路の分水機構1202は、上記第12の実施例に係る水路の分水機構1102が、同一水路面上に配置された2枚の潜流調整板1010、1020を水平に上下に変位させるようにしているのに対し、図44に示すように、本実施例では、分水口1204を上流側幹線水路1220の側壁1220Aに形成し、通水口1205を分水口1204より下流側の下流側幹線水路1222の水路面に配し、これら分水口1204と通水口1205とにそれぞれ別体で上下方向に変位し所望の位置で保持される潜流調整板1040、1050をそれぞれ設置し、変位手段がこれら2枚の潜流調整板1040、1050を水平を確保し、かつ、両者を同期させて上下に変位させるようにした点が異なっている。
【0141】
すなわち、第13の実施例に係る水路の分水機構1202は、第1の潜流調整板1040と第2の潜流調整板1050にはそれぞれ、上記第12の実施例と同様に、両プーリ1013、1014および1023、1024とこれら両プーリ1013、1014および1023、1024間を回動伝達軸1015、1016および1025、1026を介して連結する第1のコネクタ1017および1027とが設けられる。そして、第1の潜流調整板1040は分水口1204に、第2の潜流調整板1050は通水口1205にそれぞれ設置されているので、これら第1の潜流調整板1040のなす面と第2の潜流調整板1050のなす面とが直角になり、第1の潜流調整板1040側の回動伝達軸1015,1016の軸方向と第2の潜流調整板1050側の回動伝達軸1025,1026の軸方向とは直角となる。このため、第2のコネクタ1047は、90度の角度で隣接するこれら第1第2の潜流調整板1040、1050の各プーリ1013、1014、1023、1024のうち、他方の潜流調整板1040、1050の近接したプーリ1014、1023の他方の側面1014A、1023Bからそれぞれ延びる回動伝達軸1045、1046同士を連結してこれら両回動伝達軸1045、1046を90度の角度で図示しない傘歯車で連結し同期させるようになっている。このように、本実施例では、潜流調整板1040、1050が配置される角度の変化に対する自由度を高くすることができる。
【実施例17】
【0142】
次に、上記第13の実施例の変形例に係る水路の分水機構1302について説明する。第13の実施例の変形例に係る水路の分水機構1402は、上記第13の実施例に係る水路の分水機構1302が、直角に配置された第1第2の潜流調整板1040、1050の間に、第2のコネクタ1047を設けるようにしているのに対し、図45に示すように、この第2の1047と第2の潜流調整板1050のプーリ1023側との間に回転数変換機1049を設けた点が異なっている。係る構成とすることにより、確実に同期をとることができる。
【実施例18】
【0143】
次に、本発明の第14の実施例に係る水路の分水機構1402について説明する。本発明の第14の実施例に係る水路の分水機構1402は、上記第12および第13の実施例に係る水路の分水機構1102、1202が、第2のコネクタ1037、1047を単体で構成しているのに対し、第2のコネクタ1067A、1067B、1067Cを複数台で構成している点が異なっている。すなわち、本実施例に係る水路の分水機構1402は、図46に示すように、直角に配置された第1第2の潜流調整板1040、1050の近接したプーリ1014、1023の他方の側面1014A、1023Bからそれぞれ延びる回動伝達軸1065、1066に連結される第2のコネクタ1067A、1067Cを備えるとともに、こられ第2のコネクタ1067A、1067C間にほぼ45度に傾斜して設けられ第2のコネクタ1067A、1067Cからそれぞれ延びる回動伝達軸1068、1069に連結される第2のコネクタ1067Bを備えている。この中間の第2のコネクタ1067Bは、各回動伝達軸1068、1069と傾斜して連結されるようになっている。このように、本実施例では、第2のコネクタを、複数のコネクタ1067A、1067B、1067Cにより構成したことにより、第2のコネクタの小型化が可能となる。
【実施例19】
【0144】
次に、本発明の第15の実施例に係る水路の分水機構1502について説明する。本発明の第15の実施例に係る水路の分水機構1502は、上記第12ないし第14の実施例に係る水路の分水機構1102〜1402が、回動伝達軸を剛体の軸材で構成しているのに対し、図47に示すように、第2のコネクタ1077と各プーリ1014、1023と
の間を弦巻ばね1075、1076とにより連結した点が異なっている。この実施例では、弦巻ばね1075、1076を回転伝搬手段として用い2枚の潜流調整板1040、1050を同期させるようにしている。
【実施例20】
【0145】
次に、本発明の第16の実施例に係る水路の分水機構1602について説明する。本発明の第16の実施例に係る水路の分水機構1602は、上記第1の実施例に係る水路の分水機構2が、水位制御装置を、支柱6B、6Cと堰上げ板12とにより構成される第2のゲート8により構成し、堰上げ板12の上端越流部12Aから下流側に水を越流させ、上端越流部12Aの上下位置に応じて上流側の水位を調整するようにしているのに対し、図48に示すように、水位制御装置をスルースゲート1608により構成した点が異なっている。すなわち、スルースゲート1608は、支柱6B、6Cとこれら支柱6B、6C間に上下動自在に設けられた扉板(水位制御用潜流板)1612とにより構成される。このスルースゲート1608は、扉板1612の下端部1612Aからの潜流を許容し、上端部1612Bからの越流を阻止するようになっている。扉板1612は、図示しない扉板変位装置(水位制御用潜流板変位装置)により扉板1612の下端部1612Aを上下に変位させて保持されるようになっている。このため、本実施例に係る水路の分水機構1602では、扉板1612の下端部1612Aの位置により上流側の水位がどのレベルに達すると通水口下流側への流下を優先させるか決定することができるようになっている。
【0146】
なお、上記実施例では、変位手段を、支持枠6A、6C、6Eと、この支持枠6A、6C、6Eの上枠6Eを上下に貫通して螺合され下端が潜流調整板10の上端に回動自在に連結され上端に工具(回動ハンドル、図示せず)を嵌め入れて操作する調整ロッド11とにより構成しているがこれに限られるものではなく、潜流調整板10を上下に変位させ所定の位置で保持する変位装置であればよい。また、上記実施例6では、従来例のモデルM−IIとして、通水口5側の第1の潜流調整板C10Aと分水口4側の第2の潜流調整板C10Bとをそれぞれ独立に上下に操作する例を示しているが、たとえこれら両潜流調整板が別体であっても、図15に示す上記実施例4と同様に開度調整装置によりこれら両板を一体に変位可能に同期させるよう構成してもよく、両板が別体で変位する既設の施設についても本願発明の構成を適用することができる。さらに、上記実施例では、灌漑水路などの農業用水路やパイプラインについて述べているがこれらに限られるものではなく、流体を本線と支線とに分配して流下させる構造物についても適用可能であることはいうまでもない。また、上記実施例では、潜流調整部材を一枚板の潜流調整板により構成しているがこれに限られるものではなく、折り畳まれた多数の板を水路上方に配置し、伸縮させて下端部から潜流を生じさせるようにしてもよい。さらに、上記各実施例では、通水口と分水口との開口形状を矩形状としているがこれに限られるものではなく、例えば、開口形状が円形や台形、逆三角形のように非矩形状の相似形であっても潜流調整部材の上下変位の量と開口面積の増減とを比例させるように構成すれば、通水口を通過する通水量と分水口を通過する分水量とにより求められる分水比率が常にほぼ一定となり、分水と通水との水量の配分をこの分水比率に基づいて行うようにすることができる。また、上記第11ないし第15の実施例では、ワイヤの一端を潜流調整板の上端部に連結するようにしているがこれに限られるものではなく、潜流調整板上端部の左右両側にそれぞれシーブを設け、このシーブにワイヤを巻回し、シーブに巻回されたワイヤをプーリに巻き取るようにしてもよい。
【符号の説明】
【0147】
2 水路の分水機構
4 分水口
5 通水口
10 潜流調整板(潜流調整部材)
11 調整ロッド(変位手段)
20、22 幹線水路
21 支線水路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹線水路から水流の一部を支線水路へ分水する分水口と残りの水流を下流へ通水する通水口とに設けられ、各口を通過する水流を制御する流量制御装置を備えた水路の分水機構において、
流量制御装置を、下端が両口に上下に変位可能に設けられた潜流調整部材とこの潜流調整部材の下端を上下に変位させて保持する変位手段とを備えて構成し、両口をともにほぼ同一の高さで開き潜流調整部材の下方で水流の通過を許容するようにしたことを特徴とする水路の分水機構。
【請求項2】
潜流調整部材は、両口にわたって配置され上下方向寸法が水路の設計水位の高さ寸法とほぼ同一または長寸に形成され上端からの越流を阻止する潜流調整板であることを特徴とする請求項1に記載の水路の分水機構。
【請求項3】
流量制御装置を分水口と通水口の一部とに設けるとともに、通水口の残りの部分には上端越流部を所望の高さに設定して越流を許容し上流側の水位を制御する水位制御装置を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の水路の分水機構。
【請求項4】
水位制御装置は、水路側壁と流量制御装置との間に上方から差し入れられて下端部が水路底面に当接され、上端越流部が潜流調整板下端部より上方に位置し上流側水位がこの上端越流部より高くなると下流側に水を越流させる堰上げ板を備えて構成されることを特徴とする請求項3に記載の水路の分水機構。
【請求項5】
変位手段は、水路に設けられ潜流調整板の左右両端が差し入れられるガイドと、両ガイドの上方に設けられ水路に固定された支持枠と、この支持枠に螺合され下端が潜流調整板に回動可能に連結され上端が支持枠を貫通して突出するロッドと、このロッドを回動操作する操作部とを備えて構成されることを特徴とする請求項2に記載の水路の分水機構。
【請求項6】
潜流調整部材を上下方向寸法を水路の設計水位の高さ寸法より短寸に形成した潜流調整板により形成するとともに、
分水口と通水口とにわたって上端越流部を所望の高さに設定して越流を許容し上流側の水位を制御する水位制御装置を設け、
この水位制御装置を、潜流調整板に左右両端を合致させて摺動自在に重ね合わされ、上下方向寸法が水路の設計水位の高さ寸法より短寸に形成され、潜流調整板と独立に上下に変位可能な越流調整板を備えて構成し、
分水口または水位制御装置のうちいずれか一方に、水位制御装置から支線水路側への越流を阻止する越流阻止部を設け、
変位手段を、この越流調整板を上下に変位させるとともに、越流調整板の上端越流部を潜流調整板の上端部より上方に、越流調整板の下端部を潜流調整板の下端部より上方に保持し、上流側水位がこの上端越流部より高くなると通水口側に水を越流させるよう構成したことを特徴とする請求項1に記載の水路の分水機構。
【請求項7】
変位手段は、水路の側壁に設けられ潜流調整板と越流調整板との左右両端が差し入れられる各ガイドと、両ガイドの上方に設けられ水路に固定された支持枠と、この支持枠にそれぞれ螺合され下端が潜流調整板と越流調整板とに回動可能に連結され、上端がそれぞれ支持枠を貫通して突出する各ロッドと、これら各ロッドをそれぞれ回動操作する操作部とを備えて構成されることを特徴とする請求項6に記載の水路の分水機構。
【請求項8】
越流阻止部が、分水口の上側を覆って形成される壁であることを特徴とする請求項6に記載の水路の分水機構。
【請求項9】
越流阻止部が、支持枠または越流調整板のうちいずれか一方に設けられ分水口の上側を常時覆う越流阻止板であることを特徴とする請求項6に記載の水路の分水機構。
【請求項10】
通水口と分水口とが同一水路面に形成されることを特徴とする請求項1ないし9のうちいずれか1に記載の水路の分水機構。
【請求項11】
分水口を幹線水路の側壁に形成し、通水口を分水口より下流側の幹線水路の水路面とするとともに、これら分水口と通水口とにそれぞれ潜流調整板を設け、変位手段はこれら各潜流調整板を同期させて上下に変位させることを特徴とする請求項1または2に記載の水路の分水機構。
【請求項12】
幹線水路には、一端が分水口に向かい合う他方の側壁に開口し他端が他の支線水路に接続される連絡水路が設けられ、連絡水路と通水口下流側の幹線水路との間には、連絡水路からの水流を幹線水路に導き上流側の水位を制御する水位制御装置が設けられることを特徴とする請求項11に記載の水路の分水機構。
【請求項13】
連絡水路と他の支線水路との間には、余水吐が形成されるとともに、水位制御装置が制御する最高水位を余水吐の高さより低く設定したことを特徴とする請求項12に記載の水路の分水機構。
【請求項14】
分水口を通水口と高さを異ならせて形成し、上流側水位が異なる高さの差に達するまで、一方の口への流水の通過を優先させることを特徴とする請求項11に記載の水路の分水機構。
【請求項15】
潜流調整部材により支線水路へ分水される分水量と下流側幹線水路へ流下する通水量との比により求められる分水比が、潜流調整部材によりそれぞれ開口される両口の開口面積比に基づいて設定されることを特徴とする請求項1に記載の水路の分水機構。
【請求項16】
潜流調整部材により支線水路へ分水される分水量と下流側幹線水路へ流下する通水量はそれぞれ、流量係数に基づいて補正されることを特徴とする請求項15に記載の水路の分水機構。
【請求項17】
潜流調整部材には、通水口側の下端部が切り欠かれ、常時潜流を許容する切り欠き部が形成されることを特徴とする請求項1ないし16のうちいずれか1に記載の水路の分水機構。
【請求項18】
通水口には、支持ガイドを介して複数の潜流調整板を並べて配置したことを特徴とする請求項10または11に記載の水路の分水機構。
【請求項19】
隣り合う潜流調整板には、上下に接離可能に支持され、一方の側の潜流調整板が上昇すると他方の側の潜流調整板を押し上げてともに上昇し、一方の側の潜流調整板が下降すると他方の側の潜流調整板が連動して下降する支持機構を設けるとともに、変位手段を取水口から最遠の潜流調整板から最も離れた取水口の最近傍の潜流調整板に設け、変位手段が取水口の最近傍の潜流調整板を上方に変位させると、隣り合う他方の潜流調整板から取水口の最遠の潜流調整板まで順に上方に変位させて連動させ、変位手段が取水口の最近傍の潜流調整板を下方に変位させると、隣り合う他方の潜流調整板から取水口から最遠の潜流調整板まで順次連動して降下させるよう構成したことを特徴とする請求項18に記載の水路の分水機構。
【請求項20】
支持機構は、一端が潜流調整板に取り付けられ、延長端が取水口から最遠の潜流調整板に近い側の隣の潜流調整板に及んでこの延長端に載置面が形成された支持部材と、この隣の潜流調整板に取り付けられ、下面がこれら両潜流調整板の最下端位置で支持部材の延長端載置面に載置される当接部材とを備えて構成されることを特徴とする請求項19に記載の水路の分水機構。
【請求項21】
幹線水路の側壁に形成された分水口側の潜流調整板と、通水口側に設けられ分水口に近い取水口の最近傍の潜流調整板とを連結機構により連結したことを特徴とする請求項19または20に記載の水路の分水機構。
【請求項22】
分水口側潜流調整板が通水口側潜流調整板より上方に変位することを規制する規制機構を設けたことを特徴とする請求項11に記載の水路の分水機構。
【請求項23】
規制機構を、各潜流調整板側にそれぞれストッパを一部を上下に重複させて設け、分水口側の潜流調整板側ストッパを通水口側の潜流調整板側ストッパより下方に配置して構成したことを特徴とする請求項22に記載の水路の分水機構。
【請求項24】
変位手段を、潜流調整板間に設けられ潜流調整板の左右両端が差し入れられる支持ガイドと、支持ガイドの上方に設けられ水路に固定された支持枠と、潜流調整板毎に支持枠に取り付けられ潜流調整板を同期させて上下に変位させる油圧シリンダと、これら油圧シリンダに配管を介して圧油を供給する油圧供給機構とを備えて構成したことを特徴とする請求項18に記載の水路の分水機構。
【請求項25】
変位手段を、潜流調整板間に設けられ潜流調整板の左右両端が差し入れられる支持ガイドと、支持ガイドの上方に設けられ水路に固定された支持枠と、上下に形成された雄ねじ部を同一水路面上に並んで配置された潜流調整板の雌ねじ部に螺合させ、上端にウォームホイールが取り付けられたねじロッドと、支持枠に軸受けを介して回動自在に支持され、ギヤ部がそれぞれねじロッドのウォームホイールに噛合するとともに、一端に操作ホイールが取り付けられたウォームシャフトとを備えて構成したことを特徴とする請求項18に記載の水路の分水機構。
【請求項26】
変位手段を、一端が潜流調整板上端部の左右両側にそれぞれ連結されたワイヤと、ワイヤの他端を連結して引き出し自在に巻き取るとともに同一軸心上に配置されたプーリと、これら各プーリの互いに向かい合う一側面から延びる軸同士を連結してこれら両軸を同期させる潜流調整板水平同期手段と、プーリを正逆に回動させる回動操作手段とを備えて構成したことを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1に記載の水路の分水機構。
【請求項27】
支持ガイドを介して潜流調整板を複数設けるとともに、
変位手段を、隣接する潜流調整板のプーリのうち他方の潜流調整板の近接したプーリの他方の側面からプーリと一体回動する回動伝達手段を引き出し、これら回動伝達手段同士を連結してこれら回動伝達手段を同期させる全潜流調整板水平同期手段を設けて構成したことを特徴とする請求項26に記載の水路の分水機構。
【請求項28】
回動伝達手段を、近接したプーリの他方の側面からそれぞれ引き出される回動伝達軸により構成し、
潜流調整板水平同期手段を、軸に連結された歯車同士を噛合させた第1のコネクタにより、全潜流調整板水平同期手段を、回動伝達軸に連結された歯車同士を噛合させた第2のコネクタによりそれぞれ構成したことを特徴とする請求項27に記載の水路の分水機構。
【請求項29】
分水口を幹線水路の側壁に形成し、通水口を分水口より下流側の幹線水路の水路面とするとともに、これら分水口と通水口とにそれぞれ潜流調整板を設けたことを特徴とする請求項27または28に記載の水路の分水機構。
【請求項30】
第2のコネクタを、複数のコネクタにより構成したことを特徴とする請求項29に記載の水路の分水機構。
【請求項31】
回動伝達手段を、近接したプーリの他方の側面からそれぞれ引き出される弦巻ばねにより構成し、
全潜流調整板水平同期手段を、各弦巻ばねの他端に連結された歯車同士を噛合させた第2のコネクタにより構成したことを特徴とする請求項27、29または30のうちいずれか1に記載の水路の分水機構。
【請求項32】
水位制御装置は、下端が水路側壁と流量制御装置との間で上下に変位可能に設けられ上端からの越流を阻止するとともに下方で水流の通過を許容する水位制御用潜流板とこの水位制御用潜流板の下端を上下に変位させて保持する水位制御用潜流板変位装置とを備えて構成されることを特徴とする請求項3に記載の水路の分水機構。
【請求項1】
幹線水路から水流の一部を支線水路へ分水する分水口と残りの水流を下流へ通水する通水口とに設けられ、各口を通過する水流を制御する流量制御装置を備えた水路の分水機構において、
流量制御装置を、下端が両口に上下に変位可能に設けられた潜流調整部材とこの潜流調整部材の下端を上下に変位させて保持する変位手段とを備えて構成し、両口をともにほぼ同一の高さで開き潜流調整部材の下方で水流の通過を許容するようにしたことを特徴とする水路の分水機構。
【請求項2】
潜流調整部材は、両口にわたって配置され上下方向寸法が水路の設計水位の高さ寸法とほぼ同一または長寸に形成され上端からの越流を阻止する潜流調整板であることを特徴とする請求項1に記載の水路の分水機構。
【請求項3】
流量制御装置を分水口と通水口の一部とに設けるとともに、通水口の残りの部分には上端越流部を所望の高さに設定して越流を許容し上流側の水位を制御する水位制御装置を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の水路の分水機構。
【請求項4】
水位制御装置は、水路側壁と流量制御装置との間に上方から差し入れられて下端部が水路底面に当接され、上端越流部が潜流調整板下端部より上方に位置し上流側水位がこの上端越流部より高くなると下流側に水を越流させる堰上げ板を備えて構成されることを特徴とする請求項3に記載の水路の分水機構。
【請求項5】
変位手段は、水路に設けられ潜流調整板の左右両端が差し入れられるガイドと、両ガイドの上方に設けられ水路に固定された支持枠と、この支持枠に螺合され下端が潜流調整板に回動可能に連結され上端が支持枠を貫通して突出するロッドと、このロッドを回動操作する操作部とを備えて構成されることを特徴とする請求項2に記載の水路の分水機構。
【請求項6】
潜流調整部材を上下方向寸法を水路の設計水位の高さ寸法より短寸に形成した潜流調整板により形成するとともに、
分水口と通水口とにわたって上端越流部を所望の高さに設定して越流を許容し上流側の水位を制御する水位制御装置を設け、
この水位制御装置を、潜流調整板に左右両端を合致させて摺動自在に重ね合わされ、上下方向寸法が水路の設計水位の高さ寸法より短寸に形成され、潜流調整板と独立に上下に変位可能な越流調整板を備えて構成し、
分水口または水位制御装置のうちいずれか一方に、水位制御装置から支線水路側への越流を阻止する越流阻止部を設け、
変位手段を、この越流調整板を上下に変位させるとともに、越流調整板の上端越流部を潜流調整板の上端部より上方に、越流調整板の下端部を潜流調整板の下端部より上方に保持し、上流側水位がこの上端越流部より高くなると通水口側に水を越流させるよう構成したことを特徴とする請求項1に記載の水路の分水機構。
【請求項7】
変位手段は、水路の側壁に設けられ潜流調整板と越流調整板との左右両端が差し入れられる各ガイドと、両ガイドの上方に設けられ水路に固定された支持枠と、この支持枠にそれぞれ螺合され下端が潜流調整板と越流調整板とに回動可能に連結され、上端がそれぞれ支持枠を貫通して突出する各ロッドと、これら各ロッドをそれぞれ回動操作する操作部とを備えて構成されることを特徴とする請求項6に記載の水路の分水機構。
【請求項8】
越流阻止部が、分水口の上側を覆って形成される壁であることを特徴とする請求項6に記載の水路の分水機構。
【請求項9】
越流阻止部が、支持枠または越流調整板のうちいずれか一方に設けられ分水口の上側を常時覆う越流阻止板であることを特徴とする請求項6に記載の水路の分水機構。
【請求項10】
通水口と分水口とが同一水路面に形成されることを特徴とする請求項1ないし9のうちいずれか1に記載の水路の分水機構。
【請求項11】
分水口を幹線水路の側壁に形成し、通水口を分水口より下流側の幹線水路の水路面とするとともに、これら分水口と通水口とにそれぞれ潜流調整板を設け、変位手段はこれら各潜流調整板を同期させて上下に変位させることを特徴とする請求項1または2に記載の水路の分水機構。
【請求項12】
幹線水路には、一端が分水口に向かい合う他方の側壁に開口し他端が他の支線水路に接続される連絡水路が設けられ、連絡水路と通水口下流側の幹線水路との間には、連絡水路からの水流を幹線水路に導き上流側の水位を制御する水位制御装置が設けられることを特徴とする請求項11に記載の水路の分水機構。
【請求項13】
連絡水路と他の支線水路との間には、余水吐が形成されるとともに、水位制御装置が制御する最高水位を余水吐の高さより低く設定したことを特徴とする請求項12に記載の水路の分水機構。
【請求項14】
分水口を通水口と高さを異ならせて形成し、上流側水位が異なる高さの差に達するまで、一方の口への流水の通過を優先させることを特徴とする請求項11に記載の水路の分水機構。
【請求項15】
潜流調整部材により支線水路へ分水される分水量と下流側幹線水路へ流下する通水量との比により求められる分水比が、潜流調整部材によりそれぞれ開口される両口の開口面積比に基づいて設定されることを特徴とする請求項1に記載の水路の分水機構。
【請求項16】
潜流調整部材により支線水路へ分水される分水量と下流側幹線水路へ流下する通水量はそれぞれ、流量係数に基づいて補正されることを特徴とする請求項15に記載の水路の分水機構。
【請求項17】
潜流調整部材には、通水口側の下端部が切り欠かれ、常時潜流を許容する切り欠き部が形成されることを特徴とする請求項1ないし16のうちいずれか1に記載の水路の分水機構。
【請求項18】
通水口には、支持ガイドを介して複数の潜流調整板を並べて配置したことを特徴とする請求項10または11に記載の水路の分水機構。
【請求項19】
隣り合う潜流調整板には、上下に接離可能に支持され、一方の側の潜流調整板が上昇すると他方の側の潜流調整板を押し上げてともに上昇し、一方の側の潜流調整板が下降すると他方の側の潜流調整板が連動して下降する支持機構を設けるとともに、変位手段を取水口から最遠の潜流調整板から最も離れた取水口の最近傍の潜流調整板に設け、変位手段が取水口の最近傍の潜流調整板を上方に変位させると、隣り合う他方の潜流調整板から取水口の最遠の潜流調整板まで順に上方に変位させて連動させ、変位手段が取水口の最近傍の潜流調整板を下方に変位させると、隣り合う他方の潜流調整板から取水口から最遠の潜流調整板まで順次連動して降下させるよう構成したことを特徴とする請求項18に記載の水路の分水機構。
【請求項20】
支持機構は、一端が潜流調整板に取り付けられ、延長端が取水口から最遠の潜流調整板に近い側の隣の潜流調整板に及んでこの延長端に載置面が形成された支持部材と、この隣の潜流調整板に取り付けられ、下面がこれら両潜流調整板の最下端位置で支持部材の延長端載置面に載置される当接部材とを備えて構成されることを特徴とする請求項19に記載の水路の分水機構。
【請求項21】
幹線水路の側壁に形成された分水口側の潜流調整板と、通水口側に設けられ分水口に近い取水口の最近傍の潜流調整板とを連結機構により連結したことを特徴とする請求項19または20に記載の水路の分水機構。
【請求項22】
分水口側潜流調整板が通水口側潜流調整板より上方に変位することを規制する規制機構を設けたことを特徴とする請求項11に記載の水路の分水機構。
【請求項23】
規制機構を、各潜流調整板側にそれぞれストッパを一部を上下に重複させて設け、分水口側の潜流調整板側ストッパを通水口側の潜流調整板側ストッパより下方に配置して構成したことを特徴とする請求項22に記載の水路の分水機構。
【請求項24】
変位手段を、潜流調整板間に設けられ潜流調整板の左右両端が差し入れられる支持ガイドと、支持ガイドの上方に設けられ水路に固定された支持枠と、潜流調整板毎に支持枠に取り付けられ潜流調整板を同期させて上下に変位させる油圧シリンダと、これら油圧シリンダに配管を介して圧油を供給する油圧供給機構とを備えて構成したことを特徴とする請求項18に記載の水路の分水機構。
【請求項25】
変位手段を、潜流調整板間に設けられ潜流調整板の左右両端が差し入れられる支持ガイドと、支持ガイドの上方に設けられ水路に固定された支持枠と、上下に形成された雄ねじ部を同一水路面上に並んで配置された潜流調整板の雌ねじ部に螺合させ、上端にウォームホイールが取り付けられたねじロッドと、支持枠に軸受けを介して回動自在に支持され、ギヤ部がそれぞれねじロッドのウォームホイールに噛合するとともに、一端に操作ホイールが取り付けられたウォームシャフトとを備えて構成したことを特徴とする請求項18に記載の水路の分水機構。
【請求項26】
変位手段を、一端が潜流調整板上端部の左右両側にそれぞれ連結されたワイヤと、ワイヤの他端を連結して引き出し自在に巻き取るとともに同一軸心上に配置されたプーリと、これら各プーリの互いに向かい合う一側面から延びる軸同士を連結してこれら両軸を同期させる潜流調整板水平同期手段と、プーリを正逆に回動させる回動操作手段とを備えて構成したことを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1に記載の水路の分水機構。
【請求項27】
支持ガイドを介して潜流調整板を複数設けるとともに、
変位手段を、隣接する潜流調整板のプーリのうち他方の潜流調整板の近接したプーリの他方の側面からプーリと一体回動する回動伝達手段を引き出し、これら回動伝達手段同士を連結してこれら回動伝達手段を同期させる全潜流調整板水平同期手段を設けて構成したことを特徴とする請求項26に記載の水路の分水機構。
【請求項28】
回動伝達手段を、近接したプーリの他方の側面からそれぞれ引き出される回動伝達軸により構成し、
潜流調整板水平同期手段を、軸に連結された歯車同士を噛合させた第1のコネクタにより、全潜流調整板水平同期手段を、回動伝達軸に連結された歯車同士を噛合させた第2のコネクタによりそれぞれ構成したことを特徴とする請求項27に記載の水路の分水機構。
【請求項29】
分水口を幹線水路の側壁に形成し、通水口を分水口より下流側の幹線水路の水路面とするとともに、これら分水口と通水口とにそれぞれ潜流調整板を設けたことを特徴とする請求項27または28に記載の水路の分水機構。
【請求項30】
第2のコネクタを、複数のコネクタにより構成したことを特徴とする請求項29に記載の水路の分水機構。
【請求項31】
回動伝達手段を、近接したプーリの他方の側面からそれぞれ引き出される弦巻ばねにより構成し、
全潜流調整板水平同期手段を、各弦巻ばねの他端に連結された歯車同士を噛合させた第2のコネクタにより構成したことを特徴とする請求項27、29または30のうちいずれか1に記載の水路の分水機構。
【請求項32】
水位制御装置は、下端が水路側壁と流量制御装置との間で上下に変位可能に設けられ上端からの越流を阻止するとともに下方で水流の通過を許容する水位制御用潜流板とこの水位制御用潜流板の下端を上下に変位させて保持する水位制御用潜流板変位装置とを備えて構成されることを特徴とする請求項3に記載の水路の分水機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【公開番号】特開2012−172312(P2012−172312A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32273(P2011−32273)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業(CREST)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業(CREST)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】
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