説明

水路の補修方法および水路の補修用パネル

【課題】既設の水路トンネルや開水路の内壁面のプレキャストパネルによる補修工法において、比較的簡単な補修部材により、容易で迅速な施工が可能となり、コストの低減・工期の大幅な短縮が可能となる水路の補修方法・補修用パネルを提供する。
【解決手段】超高強度繊維補強コンクリート製のパネルの裏面に固定用の凸部11が設けられたパネル10を水路底面に添設してパネル10と底面との間に隙間を形成し、凸部に形成された穿孔口12から既設底面を穿孔してアンカー孔を形成し、アンカーとネジからなるねじ込み式アンカー23を穿孔口からアンカー孔に打ち込み、アンカーに対してネジを締め込むことによりパネル10を底面に直接固定し、アンカー23をパネルの支保としてパネル裏面の隙間に裏込めモルタル40を充填する。凸部11と底面との間には、圧縮率の高いゴム板を配置し、アンカーのネジで圧縮してパネルの設置高さを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の水路トンネルや開水路の内壁面のプレキャストパネルによる補修方法および補修用パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
老朽化が進んだ水路内壁面をプレキャストパネルにより補修する方法として、FRPM板(強化プラスチック複合板)を用い、内壁面の傷みが激しい水路・断面が大きい水路では、内壁面に支持鋼材を取り付け、これにFRPM板をボルトで固定し、このFRPM板と水路内壁面との間にグラウトを注入して一体化し、水路壁面の傷みが少ない場合・流量アップを目的とする場合には、水路内壁面にFRPM板を接着剤とアンカーで直接固定する方法、あるいは、レジンコンクリート板を用い、水路内壁面との間に接着剤を注入する方法がある。
【0003】
また、FRP板やFRPM板を用いる先行技術文献としては、例えば特許文献1〜4などがある。このうち、特許文献1の水路内面のライニング工法では、水路内面にスペーサー(ゴム製筒状体の中にパテ状接着剤を充填したもの)を介してFRP板を張設し、FRP板を押圧することで、スペーサーの接着剤を突出させて水路内面にFRP板を固定し、ゴム製筒状体で水路内面の凹凸を吸収する。FRP板の適宜箇所をボルト式ねじ込みアンカーや叩き込みアンカーで水路内面にビス止めし、FRP板と内面の間隙に無収縮モルタルを打設する。FRP板の裏面にはアンカーを設けてモルタルとの一体化を図る。
【0004】
レジンコンクリート板を用いる先行技術文献としては、例えば特許文献5があり、この水路の更正構造およびその施工方法では、レジンコンクリート製のパネル(底面パネル・側面パネル・ヒンジ構造の角部パネル)を用い、底面パネル・角部パネルを板材スペーサー・敷砂の上に設置し、底面パネルに接着剤で接続した左右一対の角部パネルを水平サポートで保持し、樹脂系接着剤を水路側面に沿って流下させ、底面パネル・角部パネルと水路内面との間に注入し、敷砂に浸透させることでレジンコンクリートを形成する。次に、角部パネルに接着剤で接続した左右一対の側面パネルを水平サポートで保持し、樹脂系接着剤を上方から側面パネルと水路内面との間に注入する。
【0005】
【特許文献1】特開2003−96750号公報
【特許文献2】特開2002−294664号公報
【特許文献3】特許2002−294665号公報
【特許文献4】特開2002−266337号公報
【特許文献5】特開2005−120664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のようなプレキャストパネルを用いた水路の補修工法の場合、流水面積の減少が少なく、また平滑なパネル表面により円滑な通水を確保でき、さらに比較的簡単な補修部材により水路内面の凹凸を吸収しつつ比較的簡易に補修を行うことができるが、より簡易な補修部材により、より容易で迅速な施工が可能となる補修工法が望まれている。
【0007】
本発明は、既設の水路トンネルや開水路の内壁面のプレキャストパネルによる補修工法において、比較的簡単な補修部材により、容易で迅速な施工が可能となり、コストの低減および工期の大幅な短縮が可能となる水路の補修方法および補修用パネルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1の発明は、水路内壁面をパネルで覆い、水路内壁面とパネルとの間に裏込め材を充填する水路(水路トンネルや開水路など)の補修方法において、プレキャストコンクリート製のパネルの水路内壁面側の裏面に固定用の凸部が設けられたパネルを水路内壁面に添設してパネルと水路内壁面との間に隙間を形成し、前記凸部に形成された穿孔口から水路内壁を穿孔してアンカー孔を形成し、アンカーとネジからなるねじ込み式アンカーを穿孔口から前記アンカー孔に打ち込み、アンカーに対してネジを締め込むことによりパネルを水路内壁面に固定し、パネルと水路内壁面との間の隙間に裏込め材(モルタル等のグラウト材)を充填することを特徴とする水路の補修方法である。
【0009】
本発明は、例えば図1に示すように、薄肉のプレキャストコンクリートパネルを固定用の凸部においてねじ込み式アンカーにより既設の覆工コンクリートに直接固定し、このねじ込み式アンカーをパネルの支保工として利用し、裏込め材をパネル裏面の隙間空間に充填し、比較的簡単な補修部材により、容易で迅速な施工が可能となるようにしたものである。
【0010】
パネルには、高強度・高耐久性・高じん性等の利点を備えた超高強度繊維補強コンクリートを用いるのが好ましく、例えば、鋼繊維、ステンレス繊維、アモルファス繊維などの補強用繊維が混入され、反応性微粉末(シリカフューム等)を使用した繊維混入コンクリートを用いれば、薄肉化・軽量化等を図ることができる。さらに、パネルは、水路の流水方向と幅方向に適宜の寸法に分割し、人力で施工できるようにする。ねじ込み式アンカーは、例えば、プラスチック製の筒体からなるアンカーと、これにねじ込まれるステンレス製の皿ネジから構成されるものを用いることができる。裏込め材は、高流動性・高間隙充填性・水中不分離性のモルタルが好ましく、狭い隙間空間に自然流下で充填でき、また湿潤状態でも材料が分離しないようにする。
【0011】
本発明の請求項2の発明は、請求項1に記載の水路の補修方法において、パネル裏面の凸部と水路内壁面との間に高さ調整用のゴム板を設け、ねじ込み式アンカーのネジの締め込み力によりゴム板を圧縮させ、パネルの設置高さを調整することを特徴とする水路の補修方法である。
【0012】
パネルの設置高さ調整にゴム板を用いるものであり、このゴム板には圧縮率の高い緩衝ゴムを用いるのが好ましい。アンカーのねじ込みによるパネル固定と同時にパネルの設置高さを調整することができ、既設覆工コンクリートの凹凸等を容易に吸収することができる。
【0013】
本発明の請求項3の発明は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の水路の補修方法において、水路の下部に配置されるパネルの水路幅方向の両端部を水路内壁面に沿って隙間をおいて立ち上げ、この立ち上がり片と水路内壁面との間の隙間から裏込め材を注入し、自然流下により充填することを特徴とする水路の補修方法である。
【0014】
水路トンネルのインバート部や開水路の底部をパネル覆工する場合であり、パネルの両端部に一体的な立ち上がり片を設け、この立ち上がり片により、(1)自然流下方式による裏込め材の打設口を形成し、(2)既設覆工コンクリート湧水の処理用ホースおよび水の噴出口を確保し、(3)既設水路の施工誤差吸収およびクリアランスを確保する。
【0015】
本発明の請求項4の発明は、水路内壁面を覆うように設置され、水路内壁面との間に裏込め材が充填される水路(水路トンネルや開水路など)の補修用パネルであり、プレキャスト繊維補強コンクリート製のパネルの水路内壁面側の裏面に固定用の凸部が水路の流水方向と幅方向に間隔をおいて複数突設され、この凸部には、水路内壁を穿孔してアンカー孔を形成し、かつ、アンカーとネジからなるねじ込み式アンカーを前記アンカー孔に打ち込むための穿孔口が穿設されていることを特徴とする水路の補修用パネルである。
【0016】
プレキャスト繊維補強コンクリートパネルは、前述の超高強度繊維補強コンクリートが好ましく、成形用型枠を用いて裏面に複数の固定用の凸部が一体的に形成された薄肉パネルが製作される。凸部には、ねじ込み式アンカーと同一径の穿孔口が形成されており、パネルをねじ込み式アンカーにより既設の覆工コンクリートに直接固定することができ、このねじ込み式アンカーをパネルの支保工として利用することができる。
【0017】
成形用型枠には、対向配置された竪配置の型枠鋼板の一方の型枠鋼板の内面にパンチングメタルを添設し、この表面に通気性シートを貼設し、コンクリートを竪打ちした後、型枠全体をパンチングメタル・通気性シートが上になるように90°回転させて水平状態とし、上に集まった気泡が通気性シート・パンチングメタルを通して排気される構造のものを用いることができ、薄肉のパネルの表面は気泡のない鏡面が得られ、背面(裏込め材と接触する部分)にはパンチングメタルにより凹凸模様が形成され、付着強度が向上する。型枠鋼板は多段に積層することで、良好な超高強度繊維補強コンクリートパネルが大量生産される。
【0018】
本発明の請求項5の発明は、請求項4に記載の水路の補修用パネルにおいて、凸部の表面には、ねじ込み式アンカーのネジの締め込み力により圧縮され、パネルの設置高さを調整する高さ調整用のゴム板が設けられていることを特徴とする水路の補修用パネルである。
【0019】
ゴム板には圧縮率の高い緩衝ゴムを用いるのが好ましく、パネルの設置前に凸部の表面に取付けておき、パネルの設置後、アンカーのねじ込みによるパネル固定と同時にパネルの設置高さを調整することができ、既設覆工コンクリートの凹凸等を容易に吸収することができる。
【0020】
本発明の請求項6の発明は、請求項3または請求項4のいずれかに記載の水路の補修用パネルにおいて、パネルの水路幅方向の両端部に水路内壁面に沿って隙間をおいて立ち上がる立ち上がり片が設けられていることを特徴とする水路の補修用パネルである。
【0021】
水路トンネルのインバート部や開水路の底部に設置されるパネルであり、パネルの両端部に一体的な立ち上がり片を設けることにより、(1)自然流下方式による裏込め材の打設口を形成することができ、(2)既設覆工コンクリート湧水の処理用ホースおよび水の噴出口を確保することができ、(3)既設水路の施工誤差吸収およびクリアランス確保が可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、以上のような構成からなるので、次のような効果が得られる。
【0023】
(1) 薄肉のプレキャストコンクリートパネルを固定用の凸部においてねじ込み式アンカーにより既設の覆工コンクリートに直接固定し、このねじ込み式アンカーをパネルの支保工として利用し、裏込め材をパネル裏面の隙間空間に充填するようにしているため、比較的簡単な補修部材により、容易で迅速な施工が可能となり、コストの低減および工期の大幅な短縮が可能となる。
【0024】
(2) パネル裏面の凸部と水路内壁面との間に高さ調整用のゴム板を設けることにより、アンカーのねじ込みによるパネル固定と同時にパネルの設置高さを調整することができ、既設覆工コンクリートの凹凸等を容易に吸収することができ、平坦なパネル補修面を容易に得ることができる。
【0025】
(3) パネルの両端部に一体的な立ち上がり片を設けることにより、裏込め材を上方から打設して自然流下方式により充填することができ、また既設覆工コンクリート湧水の処理用ホースおよび水の噴出口を確保することができ、さらに既設水路の施工誤差吸収およびクリアランスを確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。この実施形態は、水路トンネルや開水路の底面の補修に本発明を適用した例である。図1〜図3は、本発明を水路トンネルのインバート部のパネル覆工に適用した実施形態の全体図と部分詳細図である。図4〜図6は、本発明を開水路の底部のパネル覆工に適用した実施形態の全体図と部分詳細図である。
【0027】
図1の実施形態においては、水路トンネル1の内壁面のうちの底面、即ちインバート部1aの覆工コンクリート2の表面を本発明に係るプレキャストコンクリートパネル10で補修する。天井部分1bと両側の側壁部分1cの内壁面は、ポリマーセメントモルタル等と無機常温硬化型塗料等からなるコーティング膜3で補修される。このような図示例に限らず、両側の側壁部分もパネル10で補修してもよいし、断面全周をパネル10で補修することもできる。
【0028】
プレキャストコンクリートパネル10は、軽量の薄肉パネルを用いる。高強度・高耐久性・高じん性等の利点を備えた超高強度繊維補強コンクリート、例えば、鋼繊維、ステンレス繊維、アモルファス繊維などの補強用繊維が混入され、反応性微粉末(シリカフューム等)を使用した繊維混入コンクリートを用いれば、薄肉化・軽量化等を図ることができる。なお、超高強度繊維補強コンクリートのプレキャスト板で構築した水路の粗度係数は、鋼製型枠を用いた製品では、0.009以下(RCコンクリート板で0.012以下)の数値が確認されおり、円滑な通水を確保できる。
【0029】
このパネル10の形状は、図1〜図3に示すように、インバート部1aの表面に沿う曲率を有する曲板であり、トンネル幅方向(ピース接合方向)に半割りで2分割され、またトンネル軸方向(リング接合方向)にも所定の幅に分割され、人力で施工が可能な寸法とされている。
【0030】
このようなパネル10において、本発明では、各分割パネル10の覆工コンクリート側の裏面に、平面形状が四角形等の固定用の凸部11をトンネル幅方向に間隔をおいて例えば3個、トンネル軸方向には間隔をおいて一対として合計6個、一体的に突設する。なお、各凸部11は独立しているが、これに限らず、例えば、トンネル側壁側の一辺を除く三辺に凸部11を繋ぐ同じ高さのリブを設け、パネル裏面を連続した凸部とリブで3方から取り囲むようにすることもできる。
【0031】
さらに、本発明では、この凸部11の中央に予め穿孔口(固定用孔)12を穿設しておき、パネル仮置後、この穿孔口12から覆工コンクリート2を穿孔してアンカー孔20を形成し、アンカー21とネジ22からなるねじ込み式アンカー23を穿孔口12からアンカー孔20に打ち込み、アンカー21に対してネジ22を締め込むことによりパネル10を覆工コンクリート2に固定する(図3(a)参照)。
【0032】
また、本発明では、凸部11と覆工コンクリート2との間に高さ調整用のゴム板(緩衝ゴム板)30を設け、ネジ22の締め込み力によりゴム板30を圧縮させ、パネル10の設置高さを調整し、既設水路底面の凹凸等を吸収する。このゴム板30は凸部11の表面にパネル設置前に取付けておく。
【0033】
また、本発明では、パネル10のトンネル幅方向の両端部をトンネル側壁面に沿って隙間をおいて立ち上げ、この立ち上がり片13とトンネル側壁面との間の隙間から裏込め材としてモルタル40を注入し、自然流下により充填する。ねじ込み式アンカー23がパネルの支保工を兼ねる。
【0034】
一例として、覆工厚20mmに対して、板パネル10の本体部分の板厚は10mm、裏込め厚は10mmである。また、凸部11の突出高さは6mmであるため、4mmの隙間に高さ調整用のゴム板30が配置される。このゴム板30は、板厚が例えば10mmで圧縮率の高い緩衝ゴムを使用する。例えばCR(クロロプレン)系ゴムスポンジ(100×100×10mmの板)の場合、荷重2kNで圧縮率60%、最大で圧縮率約80%が得られる。
【0035】
ねじ込み式アンカー23は、穿孔口12・アンカー孔20と同一径のプラスチック系筒体のアンカー21と、これにねじ込まれるステンレス製のネジ22からなり、ネジ22は皿ネジが好ましい。パネル凸部11の穿孔口12から覆工コンクリート2を穿孔し、アンカー孔20から切粉をブロア等で排出し、アンカー21・ネジ22を挿入打設し、挿入が完了してからネジ22をドライバーで締め付ける。このねじ込み式アンカー23の使用目的は、(1)パネル10の位置決め固定、(2)裏込め注入時の支保、(3)長期の剥がれ防止である。
【0036】
パネル端部を立ち上げて立ち上がり片13を設ける目的は、(1)自然流下方式による裏込め材の打設口、(2)既設覆工コンクリート湧水の処理ホースの配置・水の噴出口、(3)既設水路トンネルの施工誤差吸収・クリアランス確保である。この立ち上がり片13とトンネル側壁面との間の隙間から裏込めモルタル40を注入し、自然流下によりパネル10と覆工コンクリート2の間に充填する。裏込めモルタル40は、仕上がり高さから20〜30mm低く打ち上げ、最終仕上げとしてポリマーセメントモルタル41等を上部隙間に充填する。
【0037】
パネル10と覆工コンクリート2の間の最小隙間の寸法は、覆工厚20mmの内、凸部の板厚が16mmであるため、4mmとなり、フロー試験(JIS R 5201 落下なし)のフロー値は250mm以上が必要となる。また、インバート部では、水路部底面に流水が存在し湿潤状態にあることが想定される。このことにより、裏込めモルタル40には、流動性が高く、充填性に優れ、さらに水中不分離性を備えるものを用いる。例えば、水セメント比W/Cを50%とし、減水剤・増結剤を適量加える。圧縮強度は材齢28日で40N/mm以上が得られる。
【0038】
パネル10同士のピース間・リング間の接合部の上面には、面取りを施し(図2(f)、(g)参照)、適当な漏れ防止処置を配置して接合する。
【0039】
なお、パネル10は、超高強度繊維補強コンクリート製品の成形用型枠で大量生産することができる。この成形用型枠は、対向配置された竪配置の型枠鋼板の一方の型枠鋼板の内面にパンチングメタルを添設し、このパンチングメタルの表面に織物や不織布の通気性シートを接着剤により貼設し、コンクリートを竪打ちした後、型枠全体をパンチングメタル・通気性シートが上になるように90°回転させて水平状態とし、上に集まった気泡が通気性シート・パンチングメタルを通して排気される構造のものを用いることができる。薄肉のパネル10の表面は気泡のない鏡面が得られ、背面(裏込め材と接触する部分)にはパンチングメタルの多数の小孔により凹凸模様が形成され、付着強度が向上する。型枠鋼板は多段に積層することで、良好な超高強度繊維補強コンクリートパネルが大量生産される。
【0040】
図4の実施形態においては、開水路1の内壁面のうちの底部1aと側壁部分1c下部の覆工コンクリート2の表面を本発明に係るプレキャストコンクリートパネル10で補修する。側壁部分1cの上部内壁面は、ポリマーセメントモルタル等と無機常温硬化型塗料等からなるコーティング膜3で補修される。このような図示例に限らず、断面全周をパネル10で補修することもできる。
【0041】
パネル10は、平板状のパネル本体の両端部に立ち上がり片13を設けた断面溝型であり、また立ち上がり片13にも固定用の凸部11が設けられている。その他の点は、水路トンネルの場合と同様であるため、部材に同一符号を付して説明を省略する。
【0042】
以上のような構成のプレキャストコンクリートパネル10を用いて例えば次のような手順で水路の補修を行う。以下は水路トンネルの場合であり、開水路の場合も同様に行うことができる。
【0043】
(1) 坑内準備工
トンネル内に測量ポイントを設置する。トンネルセンターの墨出し、トンネル内部の凹凸形状の確認測量を行う。測定点はトンネル底部のセンター位置とし、10m毎にセンター釘を設置する。また、側壁にも高さ基準釘を10m毎に設置する。
【0044】
(2) パネルの運搬
トンネル内に枕木とレールを設置し、運搬台車にパネルを積み込み、パネルの設置位置まで運搬する。運搬台車にはトンネル内移動台車を乗せ、この上にパネルを積み込む。トンネルの底面上を移動する移動台車によりパネルを設置箇所に分配して降ろす。
【0045】
(3) パネルの設置
トンネルセンター釘に水糸を取付け、トンネル軸方向の位置確認を行い、パネルの位置決め確認を行う。パネルの高さ確認は、高さ基準釘で確認して設置を行う。パネル設置前には、パネル10の裏面の凸部11に高さ調整用のゴム板30を取付けておく。パネルの設置は、底部と側壁に設置された水糸とスケールで高さを確認して行う。トンネル底部が凹凸しているときは、ライナーをかませて高さ調整し設置を行う。順次、トンネル軸方向にパネル設置を行う。このパネルの設置と平行してねじ込みアンカー23の打設を行う。この際、パネルの高さを再度確認しながら、ネジ22を締め付け、高さ調整用のゴム板30を圧縮させて固定する。これにより、既設トンネル底面の凹凸を吸収することができ、またパネル間の段差もなく、平坦なパネル補修面が得られる。
【0046】
(4) 裏込めモルタル注入
パネル10のピース間・リング間のジョイント位置に漏れ防止処置を行う。この漏れ防止処置の時期は、パネル設置時にその都度行う。トンネル軸方向(リング接合方向)の裏込め注入の妻止めは、パネルの端部に漏れ防止パッキン材を設置する。裏込めモルタル40は、モルタルミキサーで練り混ぜ、注入箇所まで圧送し、パネルの立ち上がり片13とトンネル側壁面との間の隙間から直接上部から注入し、自然流下によりパネル10と覆工コンクリート2の間に充填する。裏込めモルタル40の硬化後、最終仕上げとしてポリマーセメントモルタル41を上部隙間に充填する。
【0047】
なお、湧水処理方法は、湧水箇所にビニールホースを取付け、立ち上がり片13とトンネル側壁面の間を通し、上部へ導水する。湧水箇所周辺は、止水セメントで止水する。パネル設置後、裏込めモルタルを注入し、ポリマーセメントモルタルで最終仕上げした後、ビニールホースをカットする。
【0048】
なお、図示した補修用パネルおよび補修方法は一例であり、これに限定されない。また、種々の水路の補修に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明を水路トンネルのインバート部のパネル覆工に適用した実施形態であり、(a)は水路全体の鉛直断面図、(b)はパネルの底面図である。
【図2】図1の部分詳細図であり、(a)はパネルの長手方向に平行な断面図、(b)は分割パネルの平面図、(c)は分割パネルの幅方向に平行な断面図、(d)は分割パネルの正面図、(e)はパネル立ち上がり部の部分拡大図、(f)はピース間詳細図、(g)はリング間詳細図である。
【図3】図1の部分詳細図であり、(a)はA部の断面図、(b)はB部の断面図である。
【図4】本発明を開水路の底部のパネル覆工に適用した実施形態であり、(a)は水路全体の鉛直断面図、(b)はパネルの底面図、(c)はパネルの側面図である。
【図5】図4の部分詳細図であり、(a)は分割パネルの平面図、(b)は分割パネルの正面図、(c)は分割パネルの側面図である。
【図6】図4の部分詳細図であり、(a)はA部の断面図、(b)はB部の断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1…水路トンネル・開水路
1a…インバート部・底部
1b…天井部分
1c…側壁部分
2…覆工コンクリート
3…コーティング膜
10…プレキャストコンクリートパネル
11…固定用の凸部
12…穿孔口(固定用孔)
13…立ち上がり片
20…アンカー孔
21…アンカー
22…ネジ
23…ねじ込み式アンカー
30…高さ調整用のゴム板
40…裏込め材(モルタル)
41…ポリマーセメントモルタル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路内壁面をパネルで覆い、水路内壁面とパネルとの間に裏込め材を充填する水路の補修方法において、プレキャストコンクリート製のパネルの水路内壁面側の裏面に固定用の凸部が設けられたパネルを水路内壁面に添設してパネルと水路内壁面との間に隙間を形成し、前記凸部に形成された穿孔口から水路内壁を穿孔してアンカー孔を形成し、アンカーとネジからなるねじ込み式アンカーを穿孔口から前記アンカー孔に打ち込み、アンカーに対してネジを締め込むことによりパネルを水路内壁面に固定し、パネルと水路内壁面との間の隙間に裏込め材を充填することを特徴とする水路の補修方法。
【請求項2】
請求項1に記載の水路の補修方法において、パネル裏面の凸部と水路内壁面との間に高さ調整用のゴム板を設け、ねじ込み式アンカーのネジの締め込み力によりゴム板を圧縮させ、パネルの設置高さを調整することを特徴とする水路の補修方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかに記載の水路の補修方法において、水路の下部に配置されるパネルの水路幅方向の両端部を水路内壁面に沿って隙間をおいて立ち上げ、この立ち上がり片と水路内壁面との間の隙間から裏込め材を注入し、自然流下により充填することを特徴とする水路の補修方法。
【請求項4】
水路内壁面を覆うように設置され、水路内壁面との間に裏込め材が充填される水路の補修用パネルであり、プレキャスト繊維補強コンクリート製のパネルの水路内壁面側の裏面に固定用の凸部が水路の流水方向と幅方向に間隔をおいて複数突設され、この凸部には、水路内壁を穿孔してアンカー孔を形成し、かつ、アンカーとネジからなるねじ込み式アンカーを前記アンカー孔に打ち込むための穿孔口が穿設されていることを特徴とする水路の補修用パネル。
【請求項5】
請求項4に記載の水路の補修用パネルにおいて、凸部の表面には、ねじ込み式アンカーのネジの締め込み力により圧縮され、パネルの設置高さを調整する高さ調整用のゴム板が設けられていることを特徴とする水路の補修用パネル。
【請求項6】
請求項3または請求項4のいずれかに記載の水路の補修用パネルにおいて、パネルの水路幅方向の両端部に水路内壁面に沿って隙間をおいて立ち上がる立ち上がり片が設けられていることを特徴とする水路の補修用パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−127853(P2008−127853A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−314142(P2006−314142)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(000230010)ジオスター株式会社 (77)
【Fターム(参考)】