説明

水路ブロック製造用型枠及び水路ブロック製造方法

【課題】 ブロック上面から導水孔の外側開口までの距離が同じで、且つ、高さ寸法が異なる種々の水路ブロックを得ることができる水路ブロック製造用型枠を提供する。
【解決手段】 ベース11と、昇降自在な底板13と、開閉自在な左側板14及び右側板15と、開閉自在な前妻板16及び後妻板17と、流水路形成用の中子8とを備えた水路ブロック製造用の型枠であって、底板13の左側に開閉自在に設けられ型閉じ時には左側板14と前妻板16及び後妻板16との間に挟まれる二次側板19と、二次側板19に着脱自在に設けられ型閉じ時には二次側板19と中子18との間に挟まれる2つの導水孔形成部材20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流水路に至る導水孔をブロック側面に有する水路ブロックを製造するための型枠と、該型枠を用いた水路ブロックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排水性舗装道路に沿って水路を構築する際に用いられる水路ブロックは該排水性舗装道路からの雨水をブロック内側の流水路に導くための導水孔をブロック側面に有している。暗渠タイプの水路ブロックは頂版部と左側版部と右側版部と底版部とこれらによって画成された流水路とを有し、左側版部と右側版部の一方に流水路に至る導水孔を有する。門型タイプの水路ブロックは頂版部と左側版部と右側版部とこれらによって画成された流水路とを有し、暗渠タイプと同様に、左側版部と右側版部の一方に流水路に至る導水孔を有する。
【0003】
この種の水路ブロックを製造するための型枠には、導水孔をブロック側面に形成するための部材(以下、導水孔形成部材と言う)を側板を通じて型枠内に出し入れ可能に構成したものと、導水孔形成部材を側板に取り付けたものとが存在する。前者の型枠では型開き前に導水孔形成部材を水路ブロックから抜き出すことにより、また、後者の型枠では導水孔形成部材が水路ブロックから抜き出せるような軌跡で側板を開くことにより、ブロック側面に所期の導水孔を形成する。
【特許文献1】特開平10−15933号公報
【特許文献2】特開平10−315215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記水路ブロックにおけるブロック上面から導水孔の外側開口までの距離は排水性舗装道路の層構造によって定められているため、水路ブロックの高さ寸法を変更する場合でもブロック上面から導水孔の外側開口までの距離は変わらないようにしなければならない。
【0005】
先に述べた従前の型枠でも底板を昇降させる機構を型枠に付加すれば高さ寸法が異なる水路ブロックを得ることはできるが、水路ブロックの高さ寸法を変更するために底板の高さ位置を変えるとブロック上面から導水孔の外側開口までの距離が変化してしまう。具体的には、水路ブロックの高さ寸法を大きくするために底板を下げるとブロック上面から導水孔の外側開口までの距離が増加し、水路ブロックの高さ寸法を小さくするために底板を上げるとブロック上面から導水孔の外側開口までの距離が減少してしまう。
【0006】
つまり、従前の型枠を用いてブロック上面から導水孔の外側開口までの距離が同じで、且つ、高さ寸法が異なる水路ブロックを得るには、高さ寸法毎に構造が異なる型枠を用意しなければならない。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みて創作されたもので、その目的とするところは、ブロック上面から導水孔の外側開口までの距離が同じで、且つ、高さ寸法が異なる種々の水路ブロックを得ることができる水路ブロック製造用型枠及び水路ブロック製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明の水路ブロック製造用型枠は、ベースと、ベースに昇降自在に設けられた底板と、ベースに開閉自在に設けられた左側板及び右側板と、ベースに開閉自在に設けられた前妻板及び後妻板と、流水路形成用の中子とを備えた水路ブロック製造用の型枠であって、底板の左右側の少なくとも一方に開閉自在に設けられ、型閉じ時には側板と前妻板及び後妻板との間に挟まれる二次側板と、二次側板に着脱自在に設けられ、型閉じ時には二次側板と中子との間に挟まれる少なくとも1つの導水孔形成部材とを備える、ことをその特徴とする。
【0009】
また、本発明の水路ブロック製造方法は、前記型枠を用い、底板の高さ位置を調整した後に型枠を閉じて型枠内にコンクリートを打設して水路ブロックを形成し、水路ブロック形成後に導水孔形成部材を二次側板から外してから型枠を開いて導水孔形成部材が埋設された水路ブロックを型枠から取り出し、水路ブロック取出後に水路ブロックから導水孔形成部材を抜き出す、ことをその特徴とする。
【0010】
前記の水路ブロック製造用型枠及び水路ブロック製造方法によれば、底板の高さ位置を変えることにより高さ寸法が異なる水路ブロックを形成することができる。また、導水孔形成部材が設けられた二次側板は底板と一緒に昇降するため、水路ブロックの高さ寸法を変更するために底板の高さ位置を変えてもブロック上面から導水孔の外側開口までの距離は変わらない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ブロック上面から導水孔の外側開口までの距離が同じで、且つ、高さ寸法が異なる種々の水路ブロックを得ることができる水路ブロック製造用型枠及び水路ブロック製造方法を提供できる。
【0012】
本発明の前記目的とそれ以外の目的と、構成特徴と、作用効果は、以下の説明と添付図面によって明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1〜図19は本発明の一実施形態に係るもので、図1〜図3は水路ブロックを示し、図4〜図8は型枠を示し、図9〜図19は製造方法を示す。
【0014】
まず、図1〜図3を参照して図4〜図8の型枠によって製造可能は水路ブロックの形状について説明する。
【0015】
図1(A)及び図1(B)に示した水路ブロックB11は暗渠タイプのもので、頂版部TPと左側版部LSPと右側版部RSPと底版部BPとこれらによって画成された流水路WCとを有し、ブロック上面TPfは右側版部RSPから左側版部LSPに向かって下向きに傾斜している。右側版部RSPには流水路WCに至る導水孔WHが2個形成されており、ブロック上面TPfから各導水孔WHの外側開口までの距離aは一致している。この水路ブロックB11の高さ寸法はH1で、頂版部TPの最大厚さ寸法はt1である。
【0016】
図2(A)及び図2(B)に示した水路ブロックB12は暗渠タイプのもので、頂版部TPと左側版部LSPと右側版部RSPと底版部BPとこれらによって画成された流水路WCとを有し、ブロック上面TPfは右側版部RSPから左側版部LSPに向かって下向きに傾斜している。右側版部RSPには流水路WCに至る導水孔WHが2個形成されており、ブロック上面TPfから各導水孔WHの外側開口までの距離aは一致している。この水路ブロックB12の高さ寸法はH2で、水路ブロックB11の高さ寸法H1よりも大きい。また、頂版部TPの最大厚さ寸法はt2で、水路ブロックB11の最大厚さ寸法t1よりも大きい。さらに、ブロック上面TPfから各導水孔WHの外側開口までの距離aは水路ブロックB11と同じである。
【0017】
図3(A)及び図3(B)に示した水路ブロックB13は暗渠タイプのもので、頂版部TPと左側版部LSPと右側版部RSPと底版部BPとこれらによって画成された流水路WCとを有し、ブロック上面TPfは右側版部RSPから左側版部LSPに向かって下向きに傾斜している。右側版部RSPには流水路WCに至る導水孔WHが2個形成されており、ブロック上面TPfから各導水孔WHの外側開口までの距離aは一致している。この水路ブロックB13の一端側(図中手前側)の高さ寸法はH3で他端側の高さ寸法はH4であり、他端側の高さ寸法H4は一端側の高さ寸法H3よりも大きい。また、頂版部TPの一端側(図中手前側)の最大厚さ寸法はt3で他端側の最大厚さ寸法はt4であり、他端側の最大厚さ寸法t4は一端側の最大厚さ寸法t3よりも大きい。つまり、ブロック上面TPfは他端側から一端側に向かっても下向きに傾斜している。さらに、ブロック上面TPfから各導水孔WHの外側開口までの距離aは水路ブロックB11,B12と同じである。
【0018】
次に、図4〜図8を参照して図1〜図3に示した水路ブロックを製造可能な型枠の構造について説明する。ここでは図4の下側を左、上側を右、左側を前、右側を後と表記する。
【0019】
この型枠は、ベース11と、前後2つの昇降機構12と、底板13と、左側板14と、右側板15と、前妻板16と、後妻板17と、中子18と、二次側板19と、2つの導水孔形成部材20とを備える。
【0020】
ベース11の前側面と後側面には複数の軸支部11aが左右方向に並設され、左側面と右側面にも複数の軸支部11aが前後方向に並設されている。
【0021】
各昇降機構12は、ベース11に固定された本体12aと、該本体12aに回転自在に取り付けられたネジ杆12bと、該ネジ杆12bに螺合されたナット12cと、ナット12cに一端を回転自在に連結され他端を底板支持部材13aの下面に回転自在に連結された第1リンク12dと、一端を本体12aに回転自在に連結され他端を第1リンク12dの略中間位置に回転自在に連結された第2リンク12eとから構成されている。ネジ杆12bには該ネジ杆12bを回転操作するためのボルト頭部状の操作ヘッドが設けられている。
【0022】
前側の昇降機構12のネジ杆12bを回転させてナット12cを前後に移動させると第1リンク12d及び第2リンク12eの形態が変化して底板13の前側部分の昇降が主として行われ、後側の昇降機構12のネジ杆12bを回転させてナット12cを前後に移動させると第1リンク12d及び第2リンク12eの形態が変化して底板13の後側部分の昇降が主として行われる。
【0023】
底板13は水路ブロックB11〜B13のブロック上面TPfを形成するためのものであり、全体が矩形状を成し、その上面は右側板15から左側板14に向かって下向きに傾斜している。この底板13は支持部材13aに支承されており、該底板支持部材13aの下面には前記各昇降機構12の他端が回転自在に連結されている。また、底板支持部材13aの左側面には複数の軸支部13bが前後方向に並設されている。さらに、底板13の前後端の下面には挟持部材13cがそれぞれ設けられ、底板13の前後端の下面と各挟持部材13cとの間には合成ゴム等から成る断面く状の弾性片13dの基部が挟持されている(図8参照)。前側の弾性片13dはその一部を突出した状態で底板13の前縁全域に沿って配置され、後側の弾性片13dはその一部を突出した状態で底板13の後縁全域に沿って配置されている。
【0024】
左側板14は全体が矩形状を成し、その下面には複数の軸支部14aが前後方向に並設されている。左側板部14の各軸支部14aはベース11の左側面の軸支部11aにそれぞれ回転自在に連結されている。また、左側板14の上面の前後位置には、型閉じ時に前妻板16と後妻板17との相互位置決めを行うためのV状突起付きの位置決め片14bがそれぞれ設けられている。さらに、左側板14には各導水孔形成部材20に対応して窓穴14cが2つ設けられている。この窓穴14cは水路ブロック形成後に導水孔形成部材20を二次側板19から外す際に利用される。
【0025】
右側板15は全体が矩形状を成し、その下面には複数の軸支部15aが前後方向に並設されている。右側板部15の各軸支部15aはベース11の右側面の軸支部11aにそれぞれ回転自在に連結されている。また、右側板15の上面の前後位置には、型閉じ時に前妻板16と後妻板17との相互位置決めを行うためのV状突起付きの位置決め片15bがそれぞれ設けられている。
【0026】
前妻板16は全体が矩形状を成し、その下面には複数の軸支部16aが左右方向に並設されている。前妻板16の各軸支部16aはベース11の前側面の軸支部11aにそれぞれ回転自在に軸支されている。また、前妻板16の上面の左右位置には、型閉じ時に左側板14と右側板15との相互位置決めを行うためのV状凹部付きの位置決め片16bがそれぞれ設けられている。さらに、前妻板16の内面下部には凹部16cが形成され、該凹部16cには合成ゴム等から成る平板状の弾性部材16dがその内面が前妻板16の内面と面一となるように設けられている(図6及び図7(A)参照)。この弾性部材16dは底板13の前側の昇降範囲を許容する上下寸法を有しており、該弾性部材16dの内面には型閉じ時に底板13の前端と弾性片13dの突出部分の少なくとも一方が当接する。
【0027】
後妻板17は全体が矩形状を成し、その下面には複数の軸支部17aが左右方向に並設されている。後妻板17の各軸支部17aはベース11の後側面の軸支部11aにそれぞれ回転自在に軸支されている。また、後妻板17の上面の左右位置には、型閉じ時に左側板14と右側板15との相互位置決めを行うためのV状凹部付きの位置決め片17bがそれぞれ設けられている。さらに、後妻板17の内面下部には凹部17cが形成され、該凹部17cには合成ゴム等から成る平板状の弾性部材17dがその内面が後妻板17の内面と面一となるように設けられている(図6及び図7(B)参照)。この弾性部材17dは底板13の後側の昇降範囲を許容する上下寸法を有しており、該弾性部材17dの内面には型閉じ時に底板13の後端と弾性片13dの突出部分の少なくとも一方が当接する。
【0028】
中子18は水路ブロックB11〜B13の流水路WCを形成するためのものであり、縦断面矩形を成し、図示省略の拡縮機構による外形の縮小とその復帰を可能としている。この中子18は、後妻板17に設けられた図示省略の中子支持梁に配置されており、形成後の水路ブロックは型枠を開いてから中子18の外形を縮小させて該中子18から引き抜くことによって型枠から取り出される。中子18の配置形態は中子支持梁を用いたものに限らず、前妻板16と後妻板17に中子外形と略同一形状の孔を設けて両孔に中子18を挿通配置して、水路ブロック形成後に中子18の外形を縮小させて一方の孔を通じて中子18を水路ブロックから引き抜くようにした形態としてもよい。
【0029】
二次側板19は全体が矩形状を成し、その下端には複数の軸支部19aが前後方向に並設されている。二次側板19の各軸支部19aは底板支持部材13aの左側面の軸支部13bにそれぞれ回転自在に連結されている。この二次側板19の厚さはその外側に位置する左側板14の厚さよりも薄く、前後寸法は型閉じ時における前妻板16と後妻板17との間隔よりも大きい。また、二次側板19は底板13の昇降範囲を許容する上下寸法を有している。図示を省略したが、二次側板19には該二次側板19の内面に導水孔形成部材20を取り付ける際に利用されるボルト挿通孔が形成されている。
【0030】
各導水孔形成部材20は一端から他端に向けて横断面形が徐々に小さくなる略円錐台状を成し、一端面にネジ穴20aを有する。各導水孔形成部材20は二次側板19のボルト挿通孔にその外側から挿入されたボルト21のネジ部をネジ穴20aにねじ込むことによって二次側板19の内面に取り付けられている。各導水孔形成部材20の他端は型閉じ時に中子18の左側面に当接し、二次側板19と中子18との間に挟まれたような状態となる。
【0031】
次に、図9〜図19を参照して図4〜図8に示した型枠によって図1〜図3に示した水路ブロックを製造する方法について説明する。
【0032】
図1(A)及び図1(B)に示した水路ブロックB11を製造するときには、前側の昇降機構12によって底板13の前側部分の高さ位置を調整し、且つ、後側の昇降機構12によって底板13の後側部分の高さ位置を調整して、両高さ位置が同じになるようにする。そして、前妻板16及び後妻板17を閉じてから左側板14,二次側板19及び右側板15を閉じる順序で型枠を閉じる。
【0033】
このときの底板13は水平であるので、底板13の前端及び弾性片13dの突出部分と前妻板16の弾性部材16dの内面との当接形態と、底板13の後端及び弾性片13dの突出部分と後妻板17の弾性部材17dの内面との当接形態は、図9に示す形態となる。また、型閉じによって、前妻板16及び後妻板17は左側板14及び右側板15の内側に位置し、二次側板19は前妻板16及び後妻板17の左側面と左側板14の内面両端との間に挟まれた形態となる(図4参照)。
【0034】
型閉じ後は図示省略の型締め具を用いて左側板14の上端と右側板15の上端を内側に引き寄せ、型枠内にコンクリートを打設し養生して水路ブロックB11を形成する(図10参照)。
【0035】
水路ブロック形成後は型締め具を外すと共に左側板14の窓穴14cを通じてボルト21を外し、左側板14,二次側板19及び右側板15を開いてから前妻板16及び後妻板17を開く順序で型枠を開く(図11参照)。そして、中子18の外形を縮小させて該中子18から水路ブロックB11を引き抜くようにして該水路ブロックB11を型枠から取り出す。
【0036】
水路ブロック取出後は水路ブロックB11の内側から各導水孔形成部材20を外側に押圧して該各導水孔形成部材20を水路ブロックB11から抜き出す(図12参照)。以上により図1(A)及び図1(B)に示した水路ブロックB11が製造される。
【0037】
図2(A)及び図2(B)に示した水路ブロックB12を製造するときには、前側の昇降機構12によって底板13の前側部分の高さ位置を調整し、且つ、後側の昇降機構12によって底板13の後側部分の高さ位置を調整して、両高さ位置が同じで、且つ、水路ブロックB11を形成するときよりも低くなるようにする。高さ調整時に底板13を下げると、該底板13に設けられた二次側板19及び該二次側板19に設けられた導水孔形成部材20も底板13と一緒に降下する(図13参照)。そして、前妻板16及び後妻板17を閉じてから左側板14,二次側板19及び右側板15を閉じる順序で型枠を閉じる。
【0038】
このときの底板13は水平であるので、底板13の前端及び弾性片13dの突出部分と前妻板16の弾性部材16dの内面との当接形態と、底板13の後端及び弾性片13dの突出部分と後妻板17の弾性部材17dの内面との当接形態は、図9と同じ形態となる。また、型閉じによって、前妻板16及び後妻板17は左側板14及び右側板15の内側に位置し、二次側板19は前妻板16及び後妻板17の左側面と左側板14の内面両端との間に挟まれた形態となる(図4参照)。
【0039】
型閉じ後は図示省略の型締め具を用いて左側板14の上端と右側板15の上端を内側に引き寄せ、型枠内にコンクリートを打設し養生して水路ブロックB12を形成する(図14参照)。
【0040】
水路ブロック形成後は型締め具を外すと共に左側板14の窓穴14cを通じてボルト21を外し、左側板14,二次側板19及び右側板15を開いてから前妻板16及び後妻板17を開く順序で型枠を開く(図15参照)。そして、中子18の外形を縮小させて該中子18から水路ブロックB12を引き抜くようにして該水路ブロックB12を型枠から取り出す。
【0041】
水路ブロック取出後は水路ブロックB12の内側から各導水孔形成部材20を外側に押圧して該各導水孔形成部材20を水路ブロックB12から抜き出す(図16参照)。以上により図2(A)及び図2(B)に示した水路ブロックB12が製造される。
【0042】
図3(A)及び図3(B)に示した水路ブロックB13を形成するときには、前側の昇降機構12によって底板13の前側部分の高さ位置を調整し、且つ、後側の昇降機構12によって底板13の後側部分の高さ位置を調整して、底板13の前側部分の高さ位置が後側部分の高さ位置よりも高くなるようにする。この調整によって底板13が後ろ向きに傾斜すると、該底板13に設けられた二次側板19も同様に傾き、該二次側板19に設けられた導水孔形成部材20が傾きに応じて変位する(図17参照)。
【0043】
このときの底板13は後ろ向きに傾斜しているので、底板13の前端及び弾性片13dの突出部分と前妻板16の弾性部材16dの内面との当接形態と、底板13の後端及び弾性片13dの突出部分と後妻板17の弾性部材17dの内面との当接形態は、図18に示す形態となる。つまり、底板13の前側弾性片13dの突出部分は図9の当接形態に比べてより内側に屈曲した状態で弾性部材16dの内面に当接し、底板13の後側弾性片13dの突出部分は図9の当接形態に比べて屈曲を緩和された状態で弾性部材16dの内面に当接する。また、型閉じによって、前妻板16及び後妻板17は左側板14及び右側板15の内側に位置し、二次側板19は前妻板16及び後妻板17の左側面と左側板14の内面両端との間に挟まれた形態となる(図4参照)。
【0044】
型閉じ後は図示省略の型締め具を用いて左側板14の上端と右側板15の上端を内側に引き寄せ、型枠内にコンクリートを打設し養生して水路ブロックB13を形成する(図19参照)。
【0045】
水路ブロック形成後は型締め具を外すと共に左側板14の窓穴14cを通じてボルト21を外し、左側板14,二次側板19及び右側板15を開いてから前妻板16及び後妻板17を開く順序で型枠を開く。そして、中子18の外形を縮小させて該中子18から水路ブロックB13を引き抜くようにして該水路ブロックB13を型枠から取り出す。
【0046】
水路ブロック取出後は水路ブロックB13の内側から各導水孔形成部材20を外側に押圧して該各導水孔形成部材20を水路ブロックB13から抜き出す。以上により図1(A)及び図1(B)に示した水路ブロックB13が製造される。
【0047】
前述の水路ブロック製造用型枠及び該型枠を用いた水路ブロック製造方法によれば、底板13の高さ位置を変えることにより高さ寸法が異なる水路ブロックB11〜B13を形成することができる。また、導水孔形成部材20が設けられた二次側板19は底板13と一緒に昇降するため、水路ブロックB11〜B13の高さ寸法を変更するために底板13の高さ位置を変えてもブロック上面TPfから導水孔WHの外側開口までの距離aは変わらない。つまり、ブロック上面TPfから導水孔WHの外側開口までの距離aが同じで、且つ、高さ寸法が異なる種々の水路ブロックB11〜B13を得ることができる。
【0048】
さらに、ベース11と底板13との間には底板13の前側部分の昇降を主として行う前側昇降機構12と底板13の後側部分の昇降を主として行う後側昇降機構12が設けられているので、底板13の前側部分の高さ位置と後側部分の高さ位置を異ならせることでブロック上面TPfに前後方向に傾く勾配を任意に設けることができる。
【0049】
尚、前述の説明では図1〜図3に示した水路ブロックを製造するための型枠及び該型枠を用いた水路ブロックの製造方法について説明したが、図20に示す型枠を用いれば図21〜図23に示す門型タイプの水路ブロックB21〜B23を製造することもできる。
【0050】
図20に示した型枠が図4〜図8に示した型枠と異なるところは中子18’として縦断面U形のものを使用した点にある。この中子18’も図示省略の拡縮機構による外形の縮小とその復帰を可能としている。この型枠を用いれば、水路ブロックB11と同じ方法で水路ブロックB21を製造することができ、水路ブロックB12と同じ方法で水路ブロックB22を製造することができ、水路ブロックB13と同じ方法で水路ブロックB23を製造することができる。
【0051】
因みに、図21(A)及び図21(B)に示した水路ブロックB21は門型タイプのもので、頂版部TPと左側版部LSPと右側版部RSPとこれらによって画成された流水路WCとを有し、ブロック上面TPfは右側版部RSPから左側版部LSPに向かって下向きに傾斜している。右側版部RSPには流水路WCに至る導水孔WHが2個形成されており、ブロック上面TPfから各導水孔WHの外側開口までの距離aは一致している。この水路ブロックB21の高さ寸法はH1で、頂版部TPの最大厚さ寸法はt1である。
【0052】
図22(A)及び図22(B)に示した水路ブロックB22は門型タイプのもので、頂版部TPと左側版部LSPと右側版部RSPとこれらによって画成された流水路WCとを有し、ブロック上面TPfは右側版部RSPから左側版部LSPに向かって下向きに傾斜している。右側版部RSPには流水路WCに至る導水孔WHが2個形成されており、ブロック上面TPfから各導水孔WHの外側開口までの距離aは一致している。この水路ブロックB22の高さ寸法はH2で、水路ブロックB21の高さ寸法H1よりも大きい。また、頂版部TPの最大厚さ寸法はt2で、水路ブロックB21の最大厚さ寸法t1よりも大きい。さらに、ブロック上面TPfから各導水孔WHの外側開口までの距離aは水路ブロックB21と同じである。
【0053】
図23(A)及び図23(B)に示した水路ブロックB23は門型タイプのもので、頂版部TPと左側版部LSPと右側版部RSPとこれらによって画成された流水路WCとを有し、ブロック上面TPfは右側版部RSPから左側版部LSPに向かって下向きに傾斜している。右側版部RSPには流水路WCに至る導水孔WHが2個形成されており、ブロック上面TPfから各導水孔WHの外側開口までの距離aは一致している。この水路ブロックB23の一端側(図中手前側)の高さ寸法はH3で他端側の高さ寸法はH4であり、他端側の高さ寸法H4は一端側の高さ寸法H3よりも大きい。また、頂版部TPの一端側(図中手前側)の最大厚さ寸法はt3で他端側の最大厚さ寸法はt4であり、他端側の最大厚さ寸法t4は一端側の最大厚さ寸法t3よりも大きい。つまり、ブロック上面TPfは他端側から一端側に向かっても下向きに傾斜している。さらに、ブロック上面TPfから各導水孔WHの外側開口までの距離aは水路ブロックB21,B22と同じである。
【0054】
また、前述の説明では、左側板14の内側のみに二次側板19を設けた型枠を示したが、図24(A)に示す型枠を用いれば右側版部RSPと左側版部LSPの両方に流水路WCに至る導水孔WHを有する暗渠タイプの水路ブロック(図24(B)参照)を製造することができ、また、図25(A)に示す型枠を用いれば右側版部RSPと左側版部LSPの両方に流水路WCに至る導水孔WHを有する門型タイプの水路ブロック(図25(B)参照)を製造することができる。
【0055】
図24(A)に示した型枠が図4〜図8に示した型枠と異なるところは、底板支持部材13aの右側面に複数の軸支部13bを前後方向に並設して該軸支部13bに二次側板19の各軸支部19aをそれぞれ回転自在に連結して右側板15の内側にも二次側板19を設けた点と、該二次側板19から導水孔形成部材20を外す際に利用される窓穴15cを右側板15に設けた点と、底板13’の断面形状を山型とした点にある。一方、図25(A)に示した型枠が図20に示した型枠と異なるところは、底板支持部材13aの右側面に複数の軸支部13bを前後方向に並設して該軸支部13bに二次側板19の各軸支部19aをそれぞれ回転自在に連結して右側板15の内側にも二次側板19を設けた点と、該二次側板19から導水孔形成部材20を外す際に利用される窓穴15cを右側板15に設けた点と、底板13’の断面形状を山型とした点にある。
【0056】
さらに、前述の説明では、導水孔形成部材20として1つの形状のみを示したが、形状が異なる導水孔形成部材を各種用意しておけば、導水孔形成部材を選択的な使用によって水路ブロックに形成される導水孔WHの立体形状やサイズや傾斜角度等の任意に変更することができる。勿論、二次側板19に対する導水孔形成部材の取り付け位置を変えることによりブロック上面TPfから導水孔WHの外側開口までの距離aを任意に設定することができるし、導水孔形成部材の増数または減数によって水路ブロックに形成される導水孔WHの数を任意に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】暗渠タイプの水路ブロックの一例を示す斜視図及び正面図である。
【図2】暗渠タイプの水路ブロックの他の例を示す斜視図及び正面図である。
【図3】暗渠タイプの水路ブロックのさらに他の例を示す斜視図及び正面図である。
【図4】型枠の上面図である。
【図5】前妻板を除外した型枠の前面図である。
【図6】左側板及び二次側板を除外した型枠の左側面図である。
【図7】前妻板の内面図と後妻板の内面図である。
【図8】底板の要部拡大縦断面図である。
【図9】図4〜図8に示した型枠によって図1(A)及び図1(B)に示した水路ブロックを製造する方法の説明図である。
【図10】図4〜図8に示した型枠によって図1(A)及び図1(B)に示した水路ブロックを製造する方法の説明図である。
【図11】図4〜図8に示した型枠によって図1(A)及び図1(B)に示した水路ブロックを製造する方法の説明図である。
【図12】図4〜図8に示した型枠によって図1(A)及び図1(B)に示した水路ブロックを製造する方法の説明図である。
【図13】図4〜図8に示した型枠によって図2(A)及び図2(B)に示した水路ブロックを製造する方法の説明図である。
【図14】図4〜図8に示した型枠によって図2(A)及び図2(B)に示した水路ブロックを製造する方法の説明図である。
【図15】図4〜図8に示した型枠によって図2(A)及び図2(B)に示した水路ブロックを製造する方法の説明図である。
【図16】図4〜図8に示した型枠によって図2(A)及び図2(B)に示した水路ブロックを製造する方法の説明図である。
【図17】図4〜図8に示した型枠によって図3(A)及び図3(B)に示した水路ブロックを製造する方法の説明図である。
【図18】図4〜図8に示した型枠によって図3(A)及び図3(B)に示した水路ブロックを製造する方法の説明図である。
【図19】図4〜図8に示した型枠によって図3(A)及び図3(B)に示した水路ブロックを製造する方法の説明図である。
【図20】図4〜図8に示した型枠の変形例を示す図である。
【図21】図20に示した型枠によって製造可能な門型タイプの水路ブロックの一例を示す斜視図及び正面図である。
【図22】図20に示した型枠によって製造可能な門型タイプの水路ブロックの他の例を示す斜視図及び正面図である。
【図23】図20に示した型枠によって製造可能な門型タイプの水路ブロックのさらに他の例を示す斜視図及び正面図である。
【図24】図4〜図8に示した型枠のさらなる変形例を示す図である。
【図25】図20に示した型枠の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
B11〜B13…暗渠タイプの水路ブロック、B21〜B23…門型タイプの水路ブロック、TP…頂版部、LSP…左側版部、RSP…右側版部、BP…底版部、WC…流水路、TPf…ブロック上面、WH…導水孔、a…ブロック上面から導水孔の外側開口までの距離、11…ベース、12…昇降機構、13,13’…底板、14…左側板、15…右側板、16…前妻板、17…後妻板、18,18’…中子、19…二次側板、20…導水孔形成部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、ベースに昇降自在に設けられた底板と、ベースに開閉自在に設けられた左側板及び右側板と、ベースに開閉自在に設けられた前妻板及び後妻板と、流水路形成用の中子とを備えた水路ブロック製造用の型枠であって、
底板の左右側の少なくとも一方に開閉自在に設けられ、型閉じ時には側板と前妻板及び後妻板との間に挟まれる二次側板と、
二次側板に着脱自在に設けられ、型閉じ時には二次側板と中子との間に挟まれる少なくとも1つの導水孔形成部材とを備える、
ことを特徴とする水路ブロック製造用型枠。
【請求項2】
ベースと底板との間には底板の前側部分の昇降を主として行う前側昇降機構と底板の後側部分の昇降を主として行う後側昇降機構が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の水路ブロック製造用型枠。
【請求項3】
請求項1または2に記載の型枠を用い、
底板の高さ位置を調整した後に型枠を閉じて型枠内にコンクリートを打設して水路ブロックを形成し、
水路ブロック形成後に導水孔形成部材を二次側板から外してから型枠を開いて導水孔形成部材が埋設された水路ブロックを型枠から取り出し、
水路ブロック取出後に水路ブロックから導水孔形成部材を抜き出す、
ことを特徴とする水路ブロック製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2007−98717(P2007−98717A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−290058(P2005−290058)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(390027568)株式会社カイエーテクノ (12)
【Fターム(参考)】