説明

水路構成工法および勾配設定装置

【課題】勾配の設定が容易で、設定された勾配の調整も容易に行え、充填材の量を低減できる水路構成工法とこれに使用される勾配設定装置を提供する。
【解決手段】上方に開口し汚水等が流れる樋状のインバート部と、管路内面に下端が当接する長さ調整が可能な脚部10と、インバート部の外側に露出して該脚部10の長さを調整する調整部と、からなる水路構成部材1を用いて、地中に埋設された管路内に新規の水路を構成する水路構成工法であり、水路構成部材1を管路内に設置する工程と、該水路構成部材1の上部を走行する勾配設定装置30によって脚部10の長さを調整する工程と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新設の下水管や老朽化した既設の下水管等の管路内において新規の水路を構成する水路構成工法に係り、特に、所定の勾配を容易に付けることができ、また勾配の調整も容易に行える水路構成工法とそれに使用される勾配設定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の水路構成工法で使用する、例えば、特許文献1に記載の水路構成部材は、断面が樋状に形成され、その軸に沿った開口端面及び軸方向端面にそれぞれ半径方向へ延出する突縁が一体に形成され、軸方向端面の突縁に締結部材挿入孔が設けられ、また樋状の本体の突縁を含む両側面にアンカー部材取付部を設けて構成されている。
【0003】
前記構造の水路構成部材は、成形体の歪みが全く無く、断面の波打ち変形などは全く生じないため、水路を設ける場合において、モルタルの打設時に従来必要としていた浮上防止用抑え木が全く不要となり施工時管路内の上部空間が完全に空積となるので固定作業が非常に容易で、モルタル打設後はアンカー部材及びスペーサ部材等はすべてモルタル内に埋め込まれてしまい除去作業も不要となるので事後処理も不要となり施工の簡略化が図れるという種々の効果を有するものである。
【0004】
【特許文献1】特許第2704976号公報(段落[0007]、図1,2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記構造の水路構成部材は、前記のような種々の効果を有するものであるが、アンカー部材による水路構成部材の管路への固定は、管路内に人が入って手動で行う必要があった。また、アンカー部材としてアンカーボルトやターンバックル等で固定しているため固定作業が煩雑となり、1つの水路構成部材に対して4個所程度固定する必要があり、多数の水路構成部材を連結して固定する場合には作業時間が極めて多大となっていた。また、水路構成部材と管路の間に充填材を注入する時間も作業時間の延長をもたらす原因となっていた。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、例えば勾配が一定でなくなった既設の管路に、短尺の水路構成部材を連結して新規の水路を構成する際に、短い作業時間で勾配の設定が容易で、一度設定された勾配の調整も容易に行える水路構成部材を提供するものであり、特に、人が入れないような直径の小さい管路に新規の水路も構成できる水路構成部材を提供することにある。更に細かくは、水路構成部材と管路との間に注入する充填材量や充填時間を低減することのできる水路構成部材を提供することにある。また、その場合でも汚水等の流量を確保して汚水等の滞留を防止できる水路構成部材を提供することにある。さらに、前記の水路構成部材を用いて、既設や新設の管路内に所望の勾配を付けて新規の水路を容易に構成できる水路構成工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明の水路構成工法は、上方に開口し汚水等が流れる樋状のインバート部と、管路内面に下端が当接する長さ調整が可能な脚部と、該インバート部の外側に露出して該脚部の長さを調整する調整部と、からなる水路構成部材を用いて、地中に埋設された管路内に新規の水路を構成する水路構成工法であって、前記水路構成部材を前記管路内に設置する工程と、該水路構成部材の上部を走行する勾配設定装置によって前記脚部の長さを調整する工程と、を備えることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の水路構成工法の他の実施の形態は、前記水路構成工法において、前記水路構成部材を前記管路内に設置する工程は、隣接する水路構成部材を順次連結しながら該管路内に挿入することを特徴とするものである。
【0009】
さらに、本発明の勾配設定装置は、上方に開口し汚水等が流れる樋状のインバート部と、管路内面に下端が当接する長さ調整が可能な脚部と、該インバート部の外側に露出して該脚部の長さを調整する調整部と、からなる水路構成部材を用いて、地中に埋設された管路内に新規の水路を構成する水路構成工法に使用される勾配設定装置であって、前記水路構成部材の上部を走行するための移動手段と、前記脚部の長さを調整する調整手段と、該調整手段を駆動させる駆動手段と、を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
以上の説明から理解できるように、本発明の水路構成工法は、既設管内に新規の水路を容易に構成することができる。また、既設管のレベルを事前に測定しなくても、管路内に水路構成部材を搬入設置してから任意の勾配を付けることができるため、作業効率の向上により工期を短縮できる。また、水路構成部材を連結して管路内に設置した後、一旦、設定した勾配の変更も容易に行うことができる。さらに、モルタル等の充填材の量や充填時間を従来に比べて格段に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る水路構成部材の一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る水路構成部材の正面図と、高さを変えた状態の断面図、図2は、図1の水路構成部材の平面図と側面図、図3は、図1,2に示す水路構成部材の斜視図、図4は、図1〜3に示す水路構成部材の脚部(サポート部)の要部断面図である。
【0012】
図1〜4において、水路構成部材1は、基本的には円筒を軸方向に沿って割ったような半割管の上端に傾斜面が連続した形状をしており、上方に開口し汚水等が流れる水路を構成する樋状のインバート部2を備えている。インバート部2は、例えば断面は半径が100〜150mm程度の略半円弧状に形成され、長さが0.5〜1m程度の樋形状をしている。水路構成部材1の水路方向の両端部には、外側に向けて直角に延出する接合フランジ部3,3が形成され、所定の間隔で複数の連結孔4が穿設されている。本実施形態では、水路構成部材1の汚水等が流れる水路方向の長さは50cm程度に形成されているが、この長さに限られるものでなく、挿入できるマンホールの大きさに合わせて任意の長さに設定できる。水路構成部材1は接合フランジ部3を、他の水路構成部材1の接合フランジ部3と対接させ、連結孔4に例えばボルトを挿入してナットで締めることにより、インバート部2を延長させるように連結することができる。
【0013】
図1aに示すように、水路構成部材1はインバート部2の上端から所定の勾配αを有し、外側に向けて上昇して連続する傾斜部5,5を備えており、この傾斜部の外周端は上方に向けて延出され立上げ部6,6が形成されている。傾斜部5,5の勾配αは20%程度が好ましく、立上げ部6,6は鉛直方向に延出されている。傾斜部5から連続する立上げ部6は、後述する勾配設定装置を水路構成部材1に沿わせて移動させるのに好適である。水路構成部材1はインバート部2、接合フランジ部3、傾斜部5及び立上げ部6が一体的に、例えば繊維強化プラスチック(FRP)で形成されている。なお、FRPに限られるものでなく、強化されていない通常のプラスチック成形品や金属鋳物、板金加工品、陶器、セラミックス等から形成してもよく、また補強のために、例えばインバート部2と傾斜部5,5とのコーナー部分にアングル材等を埋め込むようにしてもよい。
【0014】
この水路構成部材1は、例えば既設のパイプ状の管路P内に設置される場合に、水路構成部材1を支持するサポート部として、管路P内面に下端が当接する伸縮自在の少なくとも1以上の脚部10…を備えることを特徴としている。すなわち、傾斜部5,5の下面には、接合フランジ部3,3に近接して4つの取付板部7が固着されており、取付板部7は中間部分で水平方向に折り曲げられ、この取付板部7の水平方向の延出端部に鉛直方向に脚部10が固定されている。このため、4つの脚部10は、各々が平行状態で鉛直方向に伸縮可能となっており、4点で水路構成部材1を支持する構成となっている。取付板部7を接合フランジ部3から離しているのは、水路構成部材1を連結するときにボルトナットで連結しやすいようにするためである。
【0015】
脚部10は外周の固定パイプ部11と、内周の中心軸部12とから二重構造に形成され、固定パイプ部11の内周ねじ部に中心軸部12の外周ねじ部が螺合している。固定パイプ部11は外周が六角柱をしており、上端が縮径されたねじ部11a(図4参照)で取付板部7に螺着されている。内周の中心軸部12は軸の全長にわたって外周にねじが形成され、上端には六角棒スパナSが嵌合できる六角穴13が形成され、下端にはねじ穴が形成され球体14が螺着されている。したがって、六角穴13に六角棒スパナSを嵌合させて回転することにより、中心軸部12は固定パイプ部11に対して上下し、その鉛直方向の長さD(図1,3参照)、すなわち、固定側の一側と当接側の他側との距離をD〜D1に連続的に変えることができる。本実施形態の脚部10は、同一長の固定パイプ部11と中心軸部12との二重構造であり、縮めた状態は比較的小型にでき、縮めた状態から最大に延ばした状態までの調整幅を大きく取れる長所がある。
【0016】
また、脚部10の下端には球体14が固定され、脚部の管路内面と当接する側の端部には球面が形成され、脚部10はこの球面で管路Pの内壁に当接するように構成されている。このように、球面が管路Pの内壁面と点接触で対接するため、脚部10の中心軸部12を連続的に回転させたときに、水路構成部材1を連続的に上下させることができ、上下の昇降の途中で水路構成部材1が急激に上昇や下降することを防止できる。そして、脚部10の球体14と管路P壁面とが点接触のため、水路構成部材1の管路P内への挿入は抵抗が小さく容易に行える。なお、脚部10の下端に球体を固定せず、中心軸部12の下端を球面に形成してもよい。
【0017】
脚部10の上端は、設置後に調整可能な位置として、水路構成部材1の上面から露出しており、水路構成部材の上下位置を調整する調整部である六角穴13が露出し、上方からの調整操作が可能となっている。このため、六角穴13に上方から六角棒スパナSを挿入して中心軸部12を回転させることができる。なお、中心軸部12を例えば右回転して下降させると、六角穴13は固定パイプ部11の奥深くに移動するため、六角棒スパナSは固定パイプ部11の長さより大きい長さが必要である。
【0018】
前記した脚部10は、外周の固定パイプ部11と中心軸部12との二重構造であるが、図5に示すように三重構造とすることもできる。すなわち、図5において、脚部10Aは、外周の固定パイプ部11Aと中心軸部12Aとの間に中間パイプ部11Bを備える三重構造であり、固定パイプ部11Aは上端の外ねじ11aで取付板部7に固定され、下端には縮径された内ねじ11bが形成されている。中間パイプ部11Bは下端部が縮径され、上端を除く外周には固定パイプ部の内ねじ11bと螺合する外ねじ11cが形成され、下端の縮径部には内ねじ11dが形成されている。そして、中心軸部12Aは上端を除く外周に中間パイプ部11Bの下端の内ねじ11dと螺合する外ねじ12aが形成され、下端には球体14が螺着されている。中心軸部12Aの上面には、六角棒スパナSが嵌合できる六角穴13が形成されている。この脚部10Aは、図4に示す脚部10と比較して固定側の一側と当接側の他側との距離の調整幅が大きいという長所を有しており、さらに図示していないが、四重構造とすることで調整幅をさらに大きくすることができる。
【0019】
前記の如く構成された本実施形態の水路構成部材を用いた水路の構成工法の動作について、図6,7を参照して以下に説明する。図6は水路構成部材の施工方法を示す管路Pの長手方向と直交する方向の断面図で(a)は施工中、(b)は施工後を示し、図7は水路構成部材の施工方法を示す管路Pの長手方向の断面図である。
【0020】
管路Pは、本実施の形態では内径が600mm程度の鉄筋コンクリート製のヒューム管が使用され、管路Pは汚水と雨水が流れる合流管である。管路Pは地中に埋設されてから長期間が経過して老朽化しており、図7に二点鎖線で示すように不等沈下等により所定の勾配が得られていない状態の部分があり、雨水が流れて流量が多い場合は汚水も同時に流れるが、汚水のみのときは流れにくく滞留しやすい状態で新規の水路が必要となっている。なお、管路Pは断面が円環の管路に限られず、断面が馬蹄形や矩形の管路でもよい。
【0021】
前記した水路構成部材1を管路P内に設置して新規の水路を形成するときは、先ず0.5〜1m程度の長さの各部材1をマンホールから下水道管に搬入する。そして、伸縮自在の4本の脚部10の長さを調整して、下端の球体14を管路Pの内壁に当接させる。脚部10の調整は、予め補修する管路P内に形成する水路の勾配を設定しておき、その勾配に合わせて調整するようにしてもよいが、例えば水平に近い状態で設置し、その後に勾配を調整するようにしてもよい。
【0022】
このようにして脚部10の長さを適当に調整した水路構成部材1を順次、管路Pの中に挿入し、接合フランジ部3,3を対接させてボルトナット8で締付けて連結する。この操作を繰り返して、例えば次のマンホールまでの下水管の管路P中に水路構成部材1を連結し、既存の管路P内に新規の水路を水平状態に近い状態で構成する。予め測定した管路Pの勾配にあわせて所定の勾配となるように脚部10を調整しても、設置後に勾配が好ましくなく凹部等が発生した場合は、脚部10の中心軸部12の六角穴13に六角棒スパナSを嵌合させて回転し、脚部10の長さを調整することで勾配を好ましい状態とすることができる。
【0023】
伸縮自在の脚部10は、予め測定しておいた既設の管路Pに所定の勾配を付けるように所定長に設定しておいてから管路Pに挿入してもよく、また、管路Pに挿入してから各脚部10の長さを調整して所望の勾配を付けるようにしてもよい。管路Pに挿入後に勾配を調整するときは、管路Pの内径が大きく人が入れる場合は六角棒スパナSにより脚部10の中心軸部12を回転させて伸縮することにより容易に勾配を設定することができる。管路Pの内径が小さく、人が入れない場合は勾配設定装置30を水路構成部材に沿って挿入し、脚部10の長さを調整する。
【0024】
この勾配設定装置30は、詳細には図示していないが水路構成部材1の傾斜部5,5に沿って移動するローラ31を備え、手動あるいは自動で移動するように構成され、勾配を調整する脚部10の位置にモータ等で回転する六角棒スパナに相当する六角棒32が突出した調整部を備えている。六角棒32は、中心軸部12を回転させると上下するため、中心軸部に合わせて軸方向に上下できる構成を備えている。また、勾配設定装置30は、図示していないが立上げ部6に係合するガイド片、あるいはガイドローラを備え、形成された水路に沿って一直線上を精度良く移動することができる。勾配設定装置30を手動で移動する場合、例えばロープの一端を装置に固定して他端を一方のマンホールから引くことにより移動することができる。
【0025】
そして、例えばテレビカメラにより、水路構成部材1の脚部10の位置を確認して六角穴13に六角棒32を挿入し、モータを正逆転させて六角棒32を回転させ、脚部10の長さ(一側と他側との距離)Dを調整することにより水路構成部材1を上下させて勾配を設定する。なお、1つの水路構成部材1に4つの脚部10がある場合、勾配設定装置30には4つの六角棒32を備える調整部を設けて、一度に4個所の調整を行って勾配を付けることが好ましい。脚部10と六角棒32との位置合わせは、テレビカメラ等で脚部10の像を取り込み、画像認識装置を用いて勾配設定装置30を移動させると、水路構成部材の勾配設定が短時間で効率良く行える。
【0026】
このようにして、管路P内に水路構成部材1を連結設置して新規の水路を構成した後、水路構成部材1を管路P内に固定する。この固定は、基本的には水路構成部材1と管路Pとの間にモルタルM等の充填材を注入して充填固定する。すなわち、水路構成部材1が浮き上がらないように下方に押圧した状態で隙間にモルタルMを注入して行う。モルタルMの注入は、例えば2回に分けて行い、1回目は水路構成部材1を押圧した状態で脚部10の下端の球体14が少なくとも埋まる程度にモルタルM1を注入し、1回目のモルタルM1が硬化したあとは水路構成部材1が移動することがなくなるため、押圧をせずに2回目のモルタルM2を注入できる。なお、モルタルMの1回目の注入は、水路構成部材1を押圧せずに実施することも可能である。2回目のモルタル注入後に、水路構成部材1の傾斜部5と同様の角度でモルタルの上面を傾斜面Ma(図6b参照)に均す。
【0027】
このようにして、既設の管路P内に多数の水路構成部材1を連結設置して新規の水路を構成すると、水路構成部材1の汚水等が流れるインバート部2は半径が小さくなって断面積が小さくなり、勾配が適正化されることと相俟って汚水等の流速が確保できるため、汚水等の滞留を防止して臭気の発生を防止することができる。また、降雨量が多く、管路内を流れる水量が多い場合は、汚水等はインバート部2と、その外側の傾斜部5,5の両方を使用して流れ、さらに水量が多い場合はモルタルの傾斜面Maを使用して流量を確保できる。
【0028】
前記の実施形態では、水路構成部材1はサポート部として4つの脚部10を備えているが、サポート部は少なくとも1以上あればよい。図8aに示す水路構成部材1Aは、サポート部として水路構成部材の片側に2つの脚部10,10を備えている。この構成の水路構成部材1Aは、接合フランジ部3,3により連結したときに図8bに示されるように連結設置され、それぞれの水路構成部材に2つずつ備えられた脚部10,10を調整することにより、全体の勾配を設定できるものである。また、図8cに示すように、4つの脚部10を備える水路構成部材1と、脚部を備えていない水路構成部材1Bとを交互に連結し、1つおきの水路構成部材1の脚部10を調整することにより、全体の勾配を設定できるように設置することができる。なお、図示していないが、水路構成部材1Aの脚部を備えていない端部同士を連結して、両端部に脚部を有する2倍の長さの水路構成部材として使用することも可能であり、さらに片側に脚部を有する水路構成部材1Aと、脚部を備えていない水路構成部材1Bとを交互に連結してもよい。
【0029】
つぎに、本発明に係る水路構成部材の他の実施形態を図9,10に基づき詳細に説明する。図9は本発明に係る水路構成部材の他の実施形態の斜視図、図10は図9の水路構成部材の施工方法の工程を示す断面図である。なお、この実施形態は前記した実施形態に対し、水路構成部材のサポート部を構成する脚部15は、長尺の全長に亘ってねじ山が形成された全ボルト16で形成され、この全ボルト上端のダブルナット17を用いて全ボルト16を回転させることにより、水路構成部材の管路内での上下位置を調整できることを特徴とする。そして、他の実質的に同等の構成については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0030】
図9、10において、水路構成部材1Cは半円筒状のインバート部2の上端に傾斜部5,5及び立上げ部6,6が延出形成され、これらと直交する接合フランジ部3,3が形成されている。そして、水路構成部材1Cには、インバート部2と傾斜部5,5の裏面に対接するように補強部を兼ねる金属板材7Aが固着されている。この金属板材7Aは、円弧部と、その上端の両端部から外側に延びる取付部とを備えており、取付部の左右端部は傾斜部5,5から外側に露出している。そして、露出部分の取付部にナットが固着され、このナットに脚部15として全ボルト16が螺合しており、この全ボルトの頭部にはダブルナット17の調整部が固定されている。このダブルナット17を回転することにより全ボルト16が鉛直方向に移動して、取付部から下方の長さ(距離)Dを変えて水路構成部材1Cの上下位置を調整できる構成となっている。なお、金属板材7Aを用いずに、前記の実施形態と同様の取付板部を接着等により固定してもよい。また、ダブルナットの代わりに1つのナットを溶接して固着してもよい。この脚部15も、上方からの調整が可能となっている。
【0031】
この脚部15を調整して水路構成部材1Cの管路P内での上下位置を調整するときは、全ボルト16の上端のダブルナット17にスパナを係合させて回転させる。この操作により全ボルト16は軸方向に移動して下端の球体14の位置が距離D2に変更され、球体14が管路P内面に当接しているため水路構成部材1Cを上下させることができる(図10a〜b)。1つの水路構成部材1Cの4本の全ボルト16を調整して勾配及び位置を設定し、この水路構成部材1Cと連結された他の水路構成部材1Aを順番に調整することにより、連結された新規の水路の勾配を設定することができる。全ての水路構成部材1Cの勾配の設定が完了すると、各水路構成部材から全ボルト16が突出している場合には突出部分を切断する(図10c)。
【0032】
なお、この実施形態においても、各水路構成部材1Cの脚部15の長さを設定してから管路P内に挿入して連結する場合と、水平に近い状態で連結した後、勾配設定装置30により脚部15の長さ(距離)を調整して勾配を決める場合のどちらの工法を用いてもよい。この実施形態の脚部15も、長さを調整する調整部としてのダブルナット17が水路構成部材1Cの上方から露出しているため、手で調整する場合でも、勾配設定装置30により調整でも容易に行うことができる。また、各水路構成部材1Cも、サポート部として4つの脚部15を有するものに限らず、2つの脚部15を備えるものでもよいことは勿論である。
【0033】
このあと、水路構成部材1Cと管路P内面との隙間にモルタルM等の充填材を注入し(図10d)、水路構成部材1Cを管路Pに固定するとともに、モルタルMの上面に傾斜面Maを形成して汚水等がインバート部2に流れやすくする。モルタルM等の充填材を注入するとき、注入時の圧力や浮力で水路構成部材1Cが移動しないように、水路構成部材を下方に押圧することが好ましい。また、モルタルMの注入を2度に分けて行い、1度目の注入(M1)は水路構成部材1Cを押圧固定した状態で脚部15下端の球体14が埋まる程度の注入として水路構成部材1Cを固定し、2度目の注入(M2)では押圧しない状態で上部まで注入することが好ましいが、押圧した状態で一度に充填してもよい。
【0034】
本発明のさらに他の実施形態を図11,12に基づき詳細に説明する。図11は本発明に係る水路構成部材のさらに他の実施形態を示し、(a)は一部を破断した正面図、(b)は(a)の要部断面図、(c)は(a)のA−A線断面図、(d)は(c)のB−B線要部断面図、図12は図11に示す水路構成部材の施工方法の工程を示す断面図である。なお、この実施形態の水路構成部材1Dは、この水路構成部材を支持するサポート部が異なることを特徴とする。
【0035】
図11,12において、水路構成部材1Dは、サポート部として機能するサポート部材20を備えており、サポート部材20は水路構成部材1Dのインバート部2の裏面に、接合フランジ部3,3の中間に、例えば45度の傾斜方向に2つ固定され、水路構成部材1Dの管路P内の上下位置を調整して支持するものである。サポート部材20は一対の板ばね部21,21と、一対の板ばね部の両端部を平行状態に間隔を有して並設支持する一対の支持部材22,22と、一対の支持部材を一対の板ばね部と平行状態に移動可能に貫通する中心軸部23と、中心軸部23に対して支持部材22,22を軸端側に移動可能に係止し中央側への移動を不能とする固定ねじ24,24とを備え、一対の板ばね部21,21を外側に湾曲させて膨らませた状態で一方の板ばね部の中央部を水路構成部材1Dの裏面に止め具25で固定し、他方の板ばね部の中央部を管路P内面に当接させて、水路構成部材1Dを管路P内に支持するものである。板ばね部21は無負荷状態では湾曲するように形成されている。
【0036】
支持部材22には、移動自在に貫通している中心軸部23を係止する固定手段として、先端が尖った固定ねじ24を傾斜状態にねじ込んでいる。すなわち、両側の支持部材22,22には、それぞれ先端が内側を向くように傾斜して固定ねじ24,24がねじ込まれ、中心軸部23に対して支持部材22は外側(矢印26)方向には移動可能であるが、内側(矢印27)方向には固定ねじ24の先鋭部が刺さって移動できない構成となっている。このサポート部材20は、搬送時には水路構成部材1Dから外され、固定ねじ24を緩めて板ばね部21を平坦な状態にして固定ねじ24を係止すると、中心軸部23と一対の板ばね部21,21とが平行で、かさばらない状態となる。
【0037】
サポート部材20を水路構成部材1Dに固定するときには、両方の板ばね部21,21を外側に湾曲させて膨らませた状態として固定ねじ24,24をねじ込んで先端の先鋭部が中心軸部23に僅かに刺さった状態に係止しておく。一方、水路構成部材1Dのインバート部2の裏面には、サポート部材20を固定する止め具25が固定されている。この止め具25は、例えば三又状に形成され、両側の2片がインバート部2の裏面に貼着等により固定され、中央の1片が浮き上がっており、両側の2片と中央の一片によりサポート部材20の一方の板ばね部21を挟んで固定するものである。
【0038】
このようにして一対の板ばね部21,21を膨らませた状態で、一方の板ばね部をインバート部2の裏面に固定された止め具25の中央の一片に係合させ、水路構成部材1Dの裏面のインバート部2に45度の方向で2つのサポート部材20,20を固定する。膨らまされた板ばね部21、21の反発力に抗して、一対の板ばね部が扁平となるように止め具25を押圧すると、支持部材22,22は中心軸部23を外側に向けて移動し、移動した位置で固定ねじ24,24により係止され、水路構成部材1Bは下降した位置で保持される構成となっている。
【0039】
なお、サポート部材を固定する角度は45度に限られるものでなく、固定する個数も2つに限られるものでない。また、板ばね部は金属製に限られるものでなく、例えば弾性を有する樹脂板等から形成してもよい。また、中心軸部に対して支持部材が外側方向に移動可能で、内側方向に移動不能とする固定手段として、中心軸部に軸方向と直交する方向の刻みを形成し、この刻みに傾斜状態に弾接するばね材を設けてラチェット機構として構成することもできる。
【0040】
サポート部材20を2つ固定した状態の水路構成部材1Dは、図12aに示すようにサポート部材の他側が管路Pの内面に当接した状態で管路内に挿入される。この状態で図12bに示すように、水路構成部材1Dを上方から押圧すると、サポート部材20の一対の板ばね部21,21はインバート部2と管路P内面とにより、ばね力に抗して押しつぶされた状態となり、支持部材22,22は中心軸部23に対して外側に移動してその位置で固定ねじ24,24により係止固定される。この結果、一対の板ばね部21,21の間隔(距離)DはD3に狭まり、水路構成部材1Dの管路P内での上下位置は変更される。
【0041】
このように水路構成部材1Dを上方から押圧するという単純な操作のみにより、水路構成部材1Dの勾配を設定することができる。このサポート部材20の場合、水路構成部材1Dを押圧して一度下降させると、その位置で固定されるため、再度上昇させたい場合は固定ねじ24,24を緩めて対向している支持部材22,22の係止を解くと、板ばね部21,21は膨らんで、支持部材22,22は間隔が狭まり、水路構成部材1Dを上昇させることができる。
【0042】
この後、図12dに示すように、水路構成部材1Dと管路との間にモルタルM等の充填材を注入し、水路構成部材1Dを管路P内に固定する。モルタルMの充填は、前記の実施形態と同様に、M1,M2のように2回に分けて充填し、1回目のモルタルM1でサポート部材20を固定し、2回目のモルタルM2で全体を固定することが好ましいが、1回で充填するようにしてもよい。水路構成部材1Dは、サポート部材20がモルタルM1,M2に埋め込まれた状態で固定される。このように構成された新規の水路は、前記の実施形態と同様に汚水等が円滑に流れ、臭気等の発生が防止できる。
【0043】
本発明のさらに他の実施形態を図13に基づき詳細に説明する。図13は、それぞれ本発明に係る水路構成部材のさらに他の実施形態を示している。図13aに示す水路構成部材1Eは、基本的には図1〜4に示す水路構成部材1の脚部10,10を連結する連結バー40を備え、脚部が直径の小さい管路Pの内面に当接したときに内側に湾曲することを防止すると共に、荷重が加わったときに脚部が折れるのを防止している。この例では、連結バー40は管路の内面に沿って屈成され、両端部の貫通孔に中心軸部12が貫通し、脚部10の球体14上部に中心軸部12が回転できるように僅かな隙間を空けて六角ナットを位置させ、中間の2個所に球体14Aがねじ止めされている。
【0044】
この構成では、管路の直径が小さい場合でも、水路構成部材の脚部が内側に湾曲することや、折損することが防止され、水路構成部材を安定した状態で設置できる。また、この形状にすると、モルタルの一度打ちで完全固定しやすく、連結バー等の連結部材に球体やそりのセットが可能で、最小高さをより低くできる効果を奏する。なお、中間部の球体は2個に限らず、1個でも、さらに多数個でもよい。また、連結バーの屈成の角度は、管路の直径に合わせて折り曲げることが好ましい。
【0045】
図13bに示す水路構成部材1Fは、平板状の連結バー41を備えることを特徴としている。この例の連結バー41も、両端の脚部10の球体14の上に、脚部の回転を妨げないような状態で支持され、管路Pの直径が小さく球体14が外周側で管路に対接する場合でも、脚部10,10が内側に曲げられることを防止でき、連結バー41の製造を容易とすることができる。
【0046】
図13c,dに示す水路構成部材1Gは、図13aに示す水路構成部材1Eの両端の球体14を外し、中央部の2個の球体14Aで管路Pの内面に当接する構成となっている。この構成の連結バー40は両端部の貫通孔に中心軸部12が貫通し、2個のナットで僅かな隙間を空けた状態で支持されているため、脚部10の高さを調整するときの中心軸部12の回転を妨げることがない。この構成では、中心寄りの2個の球体14Aで管路内面に当接するため、管路Pの直径が小さい場合でも、少ない球体数で安定した状態で水路構成部材1Gを設置することができる。
【0047】
図13eに示す水路構成部材1Hは、連結バー40の中央寄りの2個の球体14Aの代わりに、半円弧状のそり42(一方のみ図示)を備えていることを特徴としている。そり42は一端側が連結バー40に溶接等により固着され、他端側は片持ち梁となっている。この構成によると、高さ調整の済んだ水路構成部材の管路内への挿入が容易に行える。なお、そりの形状は、半円弧状に限らず、中心部分が平坦で両端が上方へ湾曲する形状や、中央部を溶接して固定した形状等、適宜の形状とすることができる。
【0048】
図13fに示す水路構成部材1Iは、図13cの球体14Aの代わりに、調整ボルト14Bを連結バー40に螺合させたことを特徴としている。調整ボルト14Bは下端が半球形とされており、球面で管路P内面に当接する構成となっている。このように構成すると、両端の脚部10,10で水路構成部材の上下位置を調整できると共に、調整ボルト14Bでさらに調整することができ、調整幅を大きくすることができる。また、調整ボルト14Bの下端は球面であり、管路P内への水路構成部材1Iの挿入を容易とすることができる。図13に示す各水路構成部材1E〜1Iは、前記と同様にモルタル等の充填材で管路P内に固定される。モルタルは2度打ちが好ましく、1度目に下端の管路当接部を固定し、2度目に上部まで充填して上面を傾斜面に形成することが好ましい。
【0049】
本発明のさらに他の実施形態を、図14を参照して説明する。図14は、それぞれ、本発明の他の実施形態の一部を破断した要部側面図である。図14aにおいて、水路構成部材1Jは、取付板部7の端部にサポート部として機能するサポート部材50を備えている。サポート部材50は取付板部7に固定される支持部材51と、この支持部材を鉛直方向に貫通する貫通孔に上下動可能に挿通した調整軸52と、調整軸の下端に固定された球体53と支持部材51との間の外周に巻回された圧縮ばね54と、支持部材に上向きにねじ込まれ先鋭部が調整軸に係止する固定ねじ55とを備えており、調整軸52は下方より圧縮ばね54に抗して押圧されると軸方向に上方に移動でき、移動位置に固定ねじ55で係止され、水路構成部材1Jを下降した位置に保持する構成である。
【0050】
すなわち、圧縮ばね54に抗して水路構成部材1Jを下方に押さえつけると、調整軸52に対して支持部材51が下降し、水路構成部材1Jを所定の高さに設定することができ、調整軸52は固定ねじ55で係止されるため、その位置で保持される構成となっている。この構成では、水路構成部材1Jをさらに押し込むことにより、さらに下降させることができるが、一旦、下降させたサポート部材50を上昇させるときには固定ねじ55を緩めて、圧縮ばね54を伸長させることが必要となる。そして、再度高さを調整するときには、固定ねじ55の先端の先鋭部を調整軸52に突き刺すようにして係止する。これにより、再度、サポート部材50の高さを調整することができる。
【0051】
つぎに、図14bにおいて、水路構成部材1Kは、取付板部7の端部にサポート部として機能するサポート部材60を備えている。このサポート部材60も、前記のサポート部材50と同様に、水路構成部材を上方から押し付けたときに、その上下位置を調整できるものである。サポート部材60は、取付板部7に支持部材としてケース状の支持ケース61が固定され、上下方向の貫通孔には調整軸62が貫通している。調整軸62は円錐台を連結したような形状をしており、その傾斜面に支持ケース61内に対向するラチェット爪63,63が弾接している。調整軸62の下端に固定された球体64と支持ケース61との間の外周には、圧縮ばね65が巻回されている。
【0052】
この構成においては、圧縮ばね65に抗して水路構成部材1Kを下方に押さえつけると、調整軸62に対して支持ケース61が下降し、水路構成部材1Kを所定の高さに設定することができ、調整軸62はラチェット爪63,63で係止されるため、その位置で保持される構成となっている。このサポート部材60は、水路構成部材1Kを押し付けることで、その高さを所望の位置に設定できるが、下降させ過ぎた場合に上昇させるときには、支持ケース61内のラチェット爪63,63を広げて圧縮ばね65を伸長させ、支持ケース61に対して調整軸62を下降させることで、水路構成部材1Kを上昇させることができる。図14に示す水路固定部材1J,1Kもモルタル等の充填材で、管路との空間が充填されて固定される。この固定も、モルタルの2度打ちが好ましい。なお、調整軸は円錐台を連結した形状に限らず、軸の側方に鋸歯の形状の爪を形成したものでもよい。
【0053】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、脚部の伸縮方向は鉛直方向に限られるものでなく、下方に向かって所定の角度で広がるように伸長するものでもよい。また、脚部として取付板部に長ナット状の固定パイプ部を取付け、この長ナットに螺合する中心軸部の例を示したが、取付板部に通常のナットを溶接等で固定し、このナットに通常のボルトを螺合させるように構成してもよい。
【0054】
さらに、前記した実施形態では、複数の水路構成部材を連結するのに、接続フランジ部をボルト、ナットで固定する例を示したが、一端側に溝を形成し、他端を挿入して接着してもよく、圧入するようにしてもよい。水路構成部材のサポート部として、接合フランジ部に近接して脚部を4つ固定した例を示したが、両端のフランジ部の中間位置に2つの脚部を固定し、管路内に連結設置した状態で2つの脚部の長さを変更して水路構成部材の上下位置を調整するように構成してもよい。サポート部を上方から調整するために調整部が露出するように構成したが、インバート部から連続する傾斜部に孔を開け、この孔から調整するようにしてもよい。
【0055】
本発明の水路構成部材の他の実施形態について、その水路方向に垂直な破断面で見た形状を変化させた場合の実施形態を以下で説明する。まず、図15aの正面図に示すように、インバート部2の開口形状は、水平方向の最長長さであるHが垂直方向の最深長さであるBの2倍以上となるように成形する。なお、図15aに示すインバート部2の開口形状は、一つの曲率半径からなり、中心角が180度よりも小さな中心角θの円弧の場合を示している。
【0056】
また、傾斜部5は水平方向から所定勾配βで傾斜させてインバート部2及び立上げ部6と連続させる。勾配βは図1aに示す傾斜部5の勾配αと同様に20%程度が好ましいが、通水断面積の確保などを勘案して適宜の勾配を選定できる。
【0057】
さらに、インバート部2の底中央付近の鉛直方向の部材幅hは極力小さく設定するのが好ましい。ここで、インバート部底中央付近とは、例えば、図15a中の中心角θで示した角度範囲のことであり、例えば、中心角θは90度程度に設定することができる。また、水路構成部材1Lと水路構成部材1Lをボルト接合するための連結孔4は、接合フランジ部3のうち、インバート部底中央付近以外の部分に設ける。
【0058】
水路構成部材1Lを連結していく場合、少なくとも所定の縦断勾配を設定した際の最下点に設置される水路構成部材1Lは、その部材幅hを極力小さくしたものを使用することにより、水路を更に延長していく際の勾配設定の自由度を高めることができる。
【0059】
図15bは、従来の水路構成部材と本発明の水路構成部材1Lを使用した場合の充填材の量の違いを断面図において説明したものである。図中、2点鎖線のインバート部及び傾斜部5Aが従来の水路構成部材を設置した場合を示しており、本発明の実施形態を示した実線部分とは斜線部5Bの断面積だけ充填材の量が相違する。これは、水平方向の最長長さが垂直方向の最深長さの2倍以上となるようなインバート部2としたことに起因するものである。なお、インバート部2の左右にそれぞれ2つ以上ずつの傾斜部5,5と立上げ部6,6を備えた場合も、従来に比べて充填材の量を低減することができる。
【0060】
図16は、水路構成部材の他の実施形態を示している。図16aは、インバート部2の水路方向に垂直な破断面の開口形状が滑らかな曲線からなる形状であり、インバート部2の左右にそれぞれ傾斜部5,5と立上げ部6,6を2つずつ備えた構成の水路構成部材1Lを示している。
【0061】
図16bではインバート部2の前記する開口形状を横長の略矩形状に成形して傾斜部5と立上げ部6を左右に備えた水路構成部材1Mを示しており、図16cではインバート部2の開口形状が多角形状(図は7角形を示している)で前記と同様に傾斜部5と立上げ部6を備えた水路構成部材1Nを示している。ここで、略矩形状とは、図示するように矩形の下端隅角部を面取りした形状のほか、矩形を含む意味である。開口形状が多角形状の場合は、水平方向の最長長さが垂直方向の最深長さの2倍以上となるように成形することで、半円形かそれよりも底の浅いインバート部2を構成することができる。なお、かかる多角形状のインバート部2は図示する実施形態に限定されるものではなく、3角形や5角形など適宜の形状を選定できることは勿論である。また、水路構成部材1M,1Nにおける傾斜部5の勾配β、部材幅hの設定は水路構成部材1Lと同様である。
【0062】
なお、図16に示す実施形態は、水路構成部材の形状のバリエーションを示したものであり、かかる形状の水路構成部材に前記するような脚部10,15を備えた構成とすることができるのは勿論である。
【0063】
図17は、従来の水路構成部材と本発明の水路構成部材1Lを使用した場合の流量の違いを断面図において説明したものである。図15bと同様に、図17a中、2点鎖線のインバート部が従来の水路構成部材を設置した場合を示しており、インバート部分の流量は、W1で表されている。図17bには、本発明の水路構成部材1Lを使用した場合の流量について、図17aに更に追記した図である。W1cは、中心角θによって決まる流量であり、W1bは、インバート部上面において左右の傾斜部及び立上げ部の形状によって決定される流量である。W2a及びW2bは、左右の傾斜部及び立上げ部によってそれぞれインバート部の左右に新たに形成される流量を示している。ここで、従来の水路構成部材の流量W1は、W1a+W1b+W1cとなる。一方、本発明の水路構成部材の流量W2は、W2a+W2b+W1b+W1cとなる。インバート部2の開口形状を、水平方向の最長長さであるHが垂直方向の最深部であるBの2倍以上となるように形成すると、インバート部上面の流量W1a分だけの流量の減少が懸念されることになるが、本発明によれば、減少した流量を左右の傾斜部及び立上げ部によって新たに形成される流量であるW2a+W2bで補充することができるので、所定の流量を確保しつつ、充填材の量の低減と充填時間の短縮を図ることができるのである。中心角θおよび左右の傾斜部、立上げ部の形状をそれぞれ任意に設定することにより、流量に関する所定の設計仕様を満たすことが可能となる。
【0064】
本発明の水路構成部材の他の実施形態として、接合フランジ部3に、隣接する水路構成部材の接合フランジ部3を係止させるフック部材3a,3bを取付けた水路構成部材1P,1Qを図18に示している。なお、水路構成部材1P,1Qは、前記する水路構成部材1〜水路構成部材1Nにかかるフック部材3aまたはフック部材3bを備えた水路構成部材である。図18aに示すフック部材3aは、断面が上方に開いたコの字状に成形されたものであり、該フック部材3aを接合フランジ部3に引っ掛けた状態で予め固着させ、隣接する水路構成部材の接合フランジ部3をフック部材3に落とし込んで係止させることができる。
【0065】
図18bに示すフック部材3bは、1本の細長い棒状の部材を折り曲げ成形したものである。その形状は、上方に開いたコの字状となる側部3b1,3b1を左右に構成し、側部3b1,3b1の端部から水平に伸びた繋ぎ部3b2で左右の側部3b1,3b1を繋いだ形状である。上方に開いたコの字状の側部3b1の立ち上がり部分を一方の接合フランジ部3に引っ掛けて固着させておき、繋ぎ部3b2と側部3b1,3b1の水平な部分に他方の接合フランジ部3を落とし込んで係止させることができる。
【0066】
上記するフック部材3a,3bは、プラスチック成形品や金属鋳物などとして製作することができる。また、フック部材は図示する実施形態に限定されるものではなく、隣接する水路構成部材の接合フランジ部3を係止できる形状であればよい。
【0067】
フック部材3a(または3b)は、水路構成部材1P(または1Q)の一端の接合フランジ部3にのみ取り付けておき、隣接して設置される水路構成部材1P(または1Q)のフック部材3a(または3b)が取り付けられていない接合フランジ部3を係止させてボルト結合し、この作業を順次繰り返して管路内に水路構成部材1P(または1Q)を設置していく。さらに、水路構成部材1P(または1Q)の両端の接合フランジ部3,3にそれぞれフック部材3a(または3b)を取り付けておき、かかる水路構成部材1P(または1Q)とフック部材3a(または3b)が取り付けられていない水路構成部材1P(または1Q)を交互に結合させていくこともできる。
【0068】
さらに、図19に本発明の他の実施形態を示す。図19aは、インバート部2の下面から斜め下方に伸びて管路P内面に固定された固定部材9を1つの水路構成部材当たり2つ使用した場合の実施形態を示している。図19aの2点鎖線で囲んだ部分の拡大図を図19bに示している。インバート部2の裏面にはアングル部材92を固着させておき、管路P内面にもアンカーボルト93を介してアングル部材92を固定しておく。図示するように、例えば2本の細長プレート91a,91bをボルト95aにて結合させ、その両端部に穿設した連結孔と両アングル部材92,92の連結孔にボルト94a,94bを挿入してナット締めする。
【0069】
2本の細長プレート91a,91bはボルト結合されているため、水路構成部材のレベル調整を行った後、インバート部2下面と管路Pとの離隔に合わせてボルト結合部95にて長さ調整を行うことができる。ボルト結合部95における細長プレート91a,91bの長さ調整とは、ボルト結合部95を構成する細長プレート91aまたは91bの少なくとも一方に長孔を穿設しておき、この長孔内をボルト95aがスライドすることによって2本の細長プレート91a,91bの延長を調整することである。また、その他の実施例としては、ボルト結合部95で両細長プレート91a,91bを折り曲げてインバート部2下面と管路Pとの離隔に合わせることもできる。細長プレートは、2本をボルト結合するまでもなく、1本ものであってもよい。さらに図示するように1つの水路構成部材当たり2つの固定部材9,9を使用することの他、3つ以上使用することもできる。細長プレートは金属鋳物やプラスチック成形品などとして製作することができる。
【0070】
また、固定部材9の他の実施形態としては、図示しないが、取付板部7に細長プレートの一端を固着させておき、他端は前記と同様に管路P内面とアングル部材92を介してボルト93にて固定することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1(a)】本発明に係る水路構成部材の一実施形態を示す正面図。
【図1(b)】本発明に係る水路構成部材の一実施形態の高さを変えた状態の断面図。
【図2(a)】図1に示す水路構成部材の平面図。
【図2(b)】図1に示す水路構成部材の側面図。
【図3】図1に示す水路構成部材の斜視図。
【図4】図1の水路構成部材のサポート部としての脚部の詳細を示す要部断面図。
【図5】脚部の他の実施形態を示す要部断面図。
【図6(a)】図1〜4に示す水路構成部材の施工方法を示す施工中の断面図。
【図6(b)】図1〜4に示す水路構成部材の施工方法を示す施工後の要部断面図。
【図7】図1〜4に示す水路構成部材の施工方法を示す管路の長手方向の断面図。
【図8(a)】片側に脚部を備える水路構成部材の斜視図。
【図8(b)】片側に脚部を備える水路構成部材の連結状態を示す要部側面図。
【図8(c)】片側に脚部を備える水路構成部材の他の連結状態を示す側面図。
【図9】本発明に係る水路構成部材の他の実施形態の斜視図。
【図10】図9に示す水路構成部材の施工方法の工程を示す断面図。
【図11(a)】本発明に係る水路構成部材のさらに他の実施形態の一部を破断した正面図。
【図11(b)】図11(a)の要部断面図。
【図11(c)】図11(a)のA−A線断面図。
【図11(d)】図11(c)のB−B線要部断面図。
【図12】図11に示す水路構成部材の施工方法の工程を示す断面図。
【図13(a)】本発明に係る水路構成部材のさらに他の実施形態を示す要部断面図。
【図13(b)】本発明に係る水路構成部材のさらに他の実施形態を示す要部断面図。
【図13(c)】本発明に係る水路構成部材のさらに他の実施形態を示す要部断面図。
【図13(d)】本発明に係る水路構成部材のさらに他の実施形態を示す要部断面図。
【図13(e)】本発明に係る水路構成部材のさらに他の実施形態を示す要部断面図。
【図13(f)】本発明に係る水路構成部材のさらに他の実施形態を示す要部断面図。
【図14(a)】本発明に係る水路構成部材のさらに他の実施形態を示す一部を破断した側面図。
【図14(b)】本発明に係る水路構成部材のさらに他の実施形態を示す一部を破断した側面図。
【図15(a)】インバート部の開口形状や傾斜部の勾配を説明した図。
【図15(b)】本発明と従来の水路構成部材を使用した場合の充填材の量の違いを説明した説明図。
【図16(a)】本発明に係る水路構成部材の他の実施形態を示す斜視図。
【図16(b)】本発明に係る水路構成部材の他の実施形態を示す斜視図。
【図16(c)】本発明に係る水路構成部材の他の実施形態を示す斜視図。
【図17(a)】従来の水路構成部材を使用した場合の流量を説明した断面図。
【図17(b)】従来の水路構成部材と本発明の水路構成部材の流量の違いを説明した断面図。
【図18(a)】本発明に係る水路構成部材の他の実施形態を示す断面図。
【図18(b)】本発明に係る水路構成部材の他の実施形態を示す断面図。
【図19(a)】本発明に係る水路構成部材の他の実施形態を示す断面図。
【図19(b)】図19(a)の水路構成部材の固定部材を拡大した断面図。
【符号の説明】
【0072】
1,1A〜1Q…水路構成部材、2…インバート部、3…接合フランジ部、3a,3b…フック部材、10,15…脚部(サポート部)、7…取付板部、9…固定部材、11…固定パイプ部、12…中心軸部、13…六角穴、14,14A,53,64…球体、16…全ボルト、17…ダブルナット(調整部)、20,50,60…サポート部材、21…板ばね部、22…支持部材、23…中心軸部、24,55…固定ねじ(固定手段)、25…止め具、30…勾配設定装置、32…六角棒、54,65…圧縮ばね、63…ラチェット爪(固定手段)、D,D1〜D3…距離、P…管路、S…六角棒スパナ、M,M1,M2…モルタル、H…水平方向の最長長さ、B…垂直方向の最深長さ、α,β…勾配、θ,θ…中心角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口し汚水等が流れる樋状のインバート部と、管路内面に下端が当接する長さ調整が可能な脚部と、該インバート部の外側に露出して該脚部の長さを調整する調整部と、からなる水路構成部材を用いて、地中に埋設された管路内に新規の水路を構成する水路構成工法であって、
前記水路構成部材を前記管路内に設置する工程と、
該水路構成部材の上部を走行する勾配設定装置によって前記脚部の長さを調整する工程と、を備えることを特徴とする水路構成工法。
【請求項2】
請求項1に記載の水路構成工法において、
前記水路構成部材を前記管路内に設置する工程は、隣接する水路構成部材を順次連結しながら該管路内に挿入することを特徴とする水路構成工法。
【請求項3】
上方に開口し汚水等が流れる樋状のインバート部と、管路内面に下端が当接する長さ調整が可能な脚部と、該インバート部の外側に露出して該脚部の長さを調整する調整部と、からなる水路構成部材を用いて、地中に埋設された管路内に新規の水路を構成する水路構成工法に使用される勾配設定装置であって、
前記水路構成部材の上部を走行するための移動手段と、前記脚部の長さを調整する調整手段と、該調整手段を駆動させる駆動手段と、を備えることを特徴とする勾配設定装置。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図7】
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【図8(a)】
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【図8(b)】
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【図8(c)】
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【図9】
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【図10】
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【図11(a)】
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【図11(b)】
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【図11(c)】
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【図11(d)】
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【図12】
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【図13(a)】
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【図13(b)】
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【図13(c)】
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【図13(d)】
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【図13(e)】
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【図13(f)】
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【図14(a)】
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【図14(b)】
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【図15(a)】
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【図15(b)】
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【図16(a)】
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【図16(b)】
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【図16(c)】
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【図17(a)】
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【図17(b)】
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【図18(a)】
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【図18(b)】
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【図19(a)】
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【図19(b)】
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【公開番号】特開2007−255183(P2007−255183A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−112935(P2007−112935)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【分割の表示】特願2006−128374(P2006−128374)の分割
【原出願日】平成16年4月13日(2004.4.13)
【出願人】(505142964)クボタシーアイ株式会社 (192)
【出願人】(503315702)クボタシーアイプラテック株式会社 (16)
【Fターム(参考)】