説明

水車の速度制御装置

【課題】制御回路の簡素化を図り、また、出力調節部の信号を速度垂下率による影響を受けることなく、水車の速度制御を行うことにある。
【解決手段】発電機51に連結された水車50の回転速度と速度設定値との差信号に基づいて水車に入る流水の水口開度を調節するサーボ機構10を駆動して水車の回転速度を制御する速度制御装置において、サーボ機構10を駆動する差信号に基づく速度制御系として、無負荷運転時及び単独負荷運転時に前記差信号を比例要素25及び水車の水口開度に応じて時定数が可変する1次要素を有する演算部26にそれぞれ入力してその出力信号の加算信号をサーボ機構に入力する第1の速度制御系と、電力系統52との並列運転時に出力調節部19からの信号と前記差信号との加算信号をサーボ機構に入力する第2の速度制御系と、発電機51を電力系統52に連系する遮断器12の状態を判別し、遮断時には第1の速度制御系に、投入時には第2の速度制御系に切替える判別器32とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機に連結された水車の回転速度と規定速度との偏差値によって水車に流入する水口開度を制御して回転速度を規定速度に制御する水車の速度制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発電機に連結された水車の回転速度を制御する速度制御装置としては、種々提案されているが、いずれも設定値から水車の回転速度と速度垂下率を減じた偏差値をPID演算部に取込んでPID演算を実行し、その出力値により水車のガイドベーン開度を制御するようにしたものである(例えば、特許文献1〜4)。
【0003】
ところで、電力系統との連系や解離を考慮した水車の速度制御装置としては、図3に示すような回路構成のものが採用されている。
【0004】
図3において、50は発電機51に連結された水車であり、水車50は水口開度Y(例えばガイドベーン開度)の制御により回転速度が制御され、また発電機51は遮断器12を介して電力系統52に連系されている。
【0005】
一方、水車50の速度制御系は、次のような構成となっている。
【0006】
上記水車50と発電機51とを連結する回転軸に取付けられた回転速度検出器1により検出された速度検出信号Nと速度調節部(65F)2により設定値が調節された信号Noとを加算部3により加算してその偏差信号を加算部4に加える。この加算部4では、偏差信号と速度垂下率設定器18を通して入力される水車50の水口開度Yを制御するサーボ機構10の水口開度に応じた位置信号とを加算し、その偏差信号を微分要素(Kd.Td.S/(1+Td.S))17に与えると共に、遮断器12が遮断しているときは接点5を介して第1の比例要素(kp1)13及び第1の積分要素(1/(Ti1.S))15、また、遮断器12が投入しているときは接点6を介して第2の比例要素(kp2)14及び第2の積分要素(1/(Ti2.S))16にそれぞれ与える。
【0007】
いま、遮断器12が遮断され、水車50により発電機51が無負荷運転しているときは第1の比例要素13、第1の積分要素15及び微分要素17の出力信号を加算部7で加算し、この加算信号と油圧などによる強力なサーボ機構10により制御される水車50の水口開度Yの位置信号とを加算部8で加算し、その偏差信号9をサーボ機構10に与えて、水車50の水口開度を変えることにより発電機51の回転数が変化する。
【0008】
なお、速度調節部2は、発電機51の無負荷運転時に回転速度を上げ下げして速度調節を行うためのものである。
【0009】
上記の場合は遮断器12が遮断されていて発電機51が電力系統に並列されていない無負荷運転時のガバナの調速機能であるが、遮断器12が投入され、発電機51が電力系統に並列すると、系統容量が大きいので、発電機51の回転速度は電力系統の周波数変化に比例して僅かに変化するだけである。
【0010】
そして、発電機51の出力を変えるには、水車50の水口開度を変える比例要素と積分要素のゲインを大きくしなければならない。
【0011】
そこで、遮断器12を投入し、発電機51が電力系統に並列されると、接点5が開き、接点6が閉じるので、加算部4からの偏差信号は微分要素17に与えられると共に、第1の比例要素13から第2の比例要素14に、第1の積分要素15から第2の積分要素16に切替えられてそれぞれ与えられ、そのゲイン値を大きな値に変えている。
【0012】
ここで、出力調節部(65P)19は、遮断器12が投入されると閉じる接点11により接続されて有効になり、水車50の水口開度を変えることにより発電機51の出力を上下させるものであり、この出力調節部(65P)19の出力は加算部20により水車50の水口開度Yを制御するサーボ機構10の水口開度に対応する位置信号と加算されて速度垂下率設定器18に与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平10−122119号公報
【特許文献2】特開昭61−093276号公報
【特許文献3】特開昭61−093277号公報
【特許文献4】特開2000−310177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このように水車の運転パターンの種類は、(1)無負荷運転、(2)電力系統に並列運転、(3)単独小容量負荷における運転の3パターンがあり、現在、電力系統の負荷容量は大きいので、上記(3)の運転はほとんど無いが、上記(1),(2)の運転パターンによって運転を行うには制御定数を変えなければならない。
【0015】
このため、その制御系として次のような課題がある。
【0016】
(1)2種類の設定数値が決められた比例要素と積分要素を設けて、これらを遮断器12の入切によって切替えるようにしているため、制御回路が煩雑である。
【0017】
(2)出力調節部(65P)19の出力信号は加算部20により水口開度Yに対応するサーボ機構10の位置信号に加算して速度垂下率装置18に与えているので、出力調節部(65P)19の出力信号には速度垂下率の僅かな値(0.03〜0.06)が掛けられ、速度偏差と同じ程度の僅かな信号になるので、比例積分要素を通過させるためには、この比例積分要素の設定値を速度垂下率値の逆数倍程度の大きな値にする必要がある。
【0018】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、無負荷運転時のみ比例要素と積分要素を用いて従来同様の負荷時、無負荷時の制御を行えるようにすることで、制御回路の簡素化を図り、また、出力調節部の信号を速度垂下率による影響を受けることなく、水車の速度制御を行うことができる水車の速度制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上記の目的を達成するため、発電機に連結された水車の回転速度と速度設定値との差信号に基づいて水車に入る流水の水口開度又はガイドベーン開度を調節するサーボ機構を駆動して水車の回転速度を制御する速度制御装置において、前記サーボ機構を駆動する前記差信号に基づく速度制御系として、無負荷運転時及び単独負荷運転時に前記差信号を比例要素及び水車の水口開度又はガイドベーン開度に応じて時定数が可変する1次要素を有する演算部にそれぞれ入力してその出力信号の加算信号を前記サーボ機構に入力する第1の速度制御系と、電力系統との並列運転時に出力調節部からの信号と前記差信号との加算信号を前記サーボ機構に入力する第2の速度制御系と、前記発電機を電力系統に連系する遮断器の状態を判別し、遮断時には前記第1の速度制御系に、投入時には前記第2の速度制御系に切替える判別器とを備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、無負荷運転時のみ比例要素と1次要素を有する演算部を用いて従来同様の負荷時、無負荷時の制御を行えるので、制御回路の簡素化を図り、また、出力調節部の信号を速度垂下率による影響を受けることなく、水車の速度制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による水車の速度制御装置の第1の実施形態を示す回路構成図。
【図2】本発明による水車の速度制御装置の第2の実施形態を示す回路構成図。
【図3】従来の水車の速度制御装置を示す回路構成図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明による水車の速度制御装置の第1の実施形態を示す回路構成図である。
【0024】
なお、図3と同一構成部品には同一符号を付して示す。
【0025】
図1において、50は発電機51に連結された水車であり、この水車50は水口開度Y(又は、ガイドベーン開度)の調節により回転速度が制御され、また、発電機51は遮断器12を介して電力系統52に連系されている。
【0026】
本実施形態では、水車50の速度制御系として、次のような構成とするものである。
【0027】
上記水車50と発電機51とを連結する回転軸に取付けられた回転速度検出器1により検出される速度検出信号Nと速度調節部(65F)2により設定値が調節される信号Noとが加算部21により加算され、その差信号は詳細を後述するスイッチ22を介して比例要素(KP)25と演算部26にそれぞれ加えられる。
【0028】
上記演算部26は、水車の水口開度に応じて時定数が可変する1次要素(1/(Ksn+Tb.S))を有し、この1次要素(1/(Ksn+Tb.S))は、分母の定数Ksnと1次遅れの時定数Tbにより構成されている。
【0029】
これら比例要素25及び演算部26の出力信号は、加算部27により加算され、その加算信号は加算部28に与えられる。
【0030】
これら速度調節部(65F)2よりスイッチ22を通して比例要素25、演算部26および加算部27、28に至る信号経路は第1の速度制御系を構成している。
【0031】
また、上記加算部21で加算された速度検出信号Nと速度調節部2からの信号Noとの差信号は、詳細を後述するスイッチ23を介して加算部31に与えられ、この加算部31に詳細を後述するスイッチ24を介して入力される出力調節部(65P)19からの信号と加算されて加算部28に与えられる。
【0032】
これら出力調節部19よりスイッチ24を通して入力される信号と、スイッチ23を通して入力される速度検出信号Nと速度設定信号Noとの差信号とを加算する加算部31、この加算部31より加算部28に至る信号経路は第2の速度制御系を構成している。
【0033】
そして、この加算部28では、前述した加算部27の加算信号と加算部31の加算信号とを加算し、その加算信号を加算部29に与えてサーボ機構10により制御される水口開度の位置信号との差信号30を作り、この差信号30を油圧などの強力なサーボ機構10に与えて、水車50の水口開度を調節する。
【0034】
一方、32は遮断器12が投入又は遮断されたことを判別してスイッチ22〜24に切替指令を出力する判別器で、この判別器32は遮断器12が投入されている場合はスイッチ22を開、スイッチ23,24を閉とし、また遮断器12が遮断されている場合はスイッチ22を閉、スイッチ23,24を開とし、さらに大容量の電力系統に並列運転しているとき遮断器12が急に遮断された場合にはサーボ機構10により調節される水車50の水口開度が起動開度以下(無負荷開度付近まで水口が閉鎖)になったことを条件にスイッチ22を開から閉、スイッチ23,24を閉から開に切替える機能を有している。
【0035】
次に上記のように構成された水車の速度制御装置の作用について説明する。
【0036】
水車の運転パターンとしては、(1)無負荷運転、(2)電力系統と並列運転、(3)単独小容量負荷における運転の3種類がある。
【0037】
まず、無負荷運転時の作用について述べる。
【0038】
無負荷運転時には、遮断器12が開路した状態にあり、判別器32からの指令によりスイッチ22〜24は図示状態のようにスイッチ22は閉路、スイッチ23,24は開路している。
【0039】
このとき、速度制御系としては第1の速度制御系が機能し、速度調節部(65F)2により設定された速度設定信号Noと回転速度検出器1により検出された速度検出信号Nとの差信号が比例要素(Kp)25と演算部26にそれぞれ入力される。
【0040】
すると、演算部26では1次要素を構成する速度垂下率に相当する定数Ksnと水車の水口開度に応じて可変される時定数Tbを有する積分要素から求められる信号と比例要素25より得られる信号が加算部27により加算される。
【0041】
そして、この加算部27で加算された信号は加算部28を経て加算部29に入力され、この加算部29でサーボ機構10により制御される水口開度の位置信号との差の信号を作り、この信号をサーボ機構10に与えて、水口開度を変えることで水車の回転速度を制御して無負荷運転している。演算部26における1次要素の定数Ksnと時定数Tbの値を可変にしたことが本実施形態の特徴である。水車の運転パターンによって、特に無負荷開度運転では安定度が必要になり、定数Ksnに大きい値を与えることによって必要な安定度が得られる。この定数Ksnの値は従来の速度垂下率値に該当するが、無負荷開度以下では、その値の範囲を超えて、例えば0.06〜0.15という値に設定することが可能である。ところが負荷開度が大きいところでは安定度は十分であり、周波数変動が少ない方が良いので、定数Ksnの値は小さい方が良いことになる。特に運転パターンの小容量の単独系統運転に参入する水車は限られた周波数変動内で、与えられたできるだけ大きい負荷の変動に対処する制御動作が望まれるので、定数Ksnの値はできるだけ小さい値にする必要がある。無負荷開度以上では開度が大きくなれば小さな値に従来の速度垂下率(0.03〜0.06)の範囲内で変えることが、周波数変動値に寄与する。
【0042】
そこで、無負荷運転ではサーボ機構10の位置信号を水口開度として取り出し、1次要素の定数Ksnの値を水口開度Yの関数として与えている。
【0043】
次に単独小容量負荷における運転時の作用について述べる。
【0044】
単独小容量負荷における運転の場合の速度制御系も、無負荷運転時の場合と同様であり、特に単独小容量負荷運転において、時定数Tbの値を水口開度によって変えると、良い応答性が得られることがシミュレーションの結果分かった。
【0045】
そこで、単独小容量運転ではサーボ機構10の位置信号を水口開度として取出し、1次要素の時定数Tbの値を水口開度Yの関数として与えている。
【0046】
次に電力系統との並列運転時の作用について述べる。
【0047】
遮断器12の投入により発電機51が電力系統に並列されると、電力系統の容量が大きいので、発電機51の回転速度は電力系統の周波数変化に比例して僅かに変化するだけである。
【0048】
この状態から発電機51の出力を変えるには、比例要素を値の大きい方に切替える必要があるため、判別器32では遮断器12が投入されたことを条件に切替指令を出してスイッチ22を開路、スイッチ23,24を閉路して第1の速度制御系から第2の速度制御系に切替えている。
【0049】
この第2の速度制御系では、出力調節器(65P)19からの信号と、速度調節器(65F)2からの信号Noと回転速度検出器1により検出された速度検出信号Nとの差信号とが加算部31にて加算され、その加算信号は加算部28を経て加算部29にてサーボ機構10により制御される水口開度の位置信号との差の信号を作り、この信号をサーボ機構10に与えて、水口開度を変えることで発電機の出力が制御される。
【0050】
一方、発電機51が大容量の電力系統52と並列運転しているとき、何らかの理由により遮断器12の遮断により発電機51が電力系統52から切離されると水車50の水口開度を急閉鎖しなければならないが、遮断器12に連動させてスイッチ22を閉じ、スイッチ23,24を開いて速度制御系を第2の速度制御系から第1の速度制御系に変えてしまうと、この比例要素25の値が緩慢な値のため水車50の水口開度が急閉鎖しなくなり、水車50の回転速度の上昇値が制限値を超えてしまう。この場合、水口開閉速度の制限値はサーボ機構の中の配圧弁ストッパにより行われるのは従来と同様である。
【0051】
そこで、判別器32では、サーボ機構10により制御される水車50の水口開度が起動開度以下(無負荷開度付近まで水口が閉鎖)になったことを条件にスイッチ22を開から閉、スイッチ23,24を閉から開に切替えることにより、水車50の水口開度を所定の閉鎖速度で閉鎖することが可能となり、水車の回転速度の制限値を超える上昇を抑えることができる。
【0052】
このように本発明の第1の実施形態では、発電機51を運転する水車50の回転速度を検出して速度設定値との差信号によって水車に入る流水の水口開度(又はガイドベーン開度)を可変するサーボ機構10を制御する速度制御系として、無負荷運転時及び単独小容量負荷運転時に水車の回転速度と速度設定値との差信号を比例要素(Kp)25及び水車の水口開度に応じて時定数が可変する1次要素(1/(Ksn+Tb.S))を有する演算部26に入力してその出力信号の加算信号をサーボ機構10に入力する第1の速度制御系と、電力系統との並列運転時に出力調節部からの信号と水車の回転速度と速度設定値との差信号との加算信号をサーボ機構10に入力する第2の速度制御系と、発電機51を電力系統52に連系する遮断器12の投入又は遮断を判別して第1の速度制御系と第2の速度制御系のいずかに切替える判別器とを備えたものである。
【0053】
したがって、無負荷運転時及び単独小容量負荷運転時のみ比例要素と積分要素を用いて従来同様の負荷時、無負荷時の制御を行えるので、制御回路の簡素化を図ることができる。
【0054】
また、演算部26に有する1次要素(1/(Ksn+Tb.S))を構成する分母の定数((Ksn)の値を従来のガバナの速度垂下率に近い値0.03〜0.05にすることによって、開度対速度の定常値の速度垂下率を変化させることができ、また、速度垂下率を考慮しなくても良い場合にこの定数((Ksn)の値を0にすることにより、1次要素を従来の積分要素と同じ要素にすることができる。
【0055】
さらに、演算部26に有する1次要素(1/(Ksn+Tb.S))の時定数Tbの値は水車の水口開度に応じて可変するようにしているので、良い応答特性が得られる。一例として無負荷開度(Y=0.15pu)においてはTb=4秒の場合が良いが、定格負荷開度(Y=1pu)ではTb=10秒の場合が良い負荷ステップ応答の計算結果を示している。
【0056】
また、発電機51が大容量の電力系統と並列運転しているとき、何らかの理由により遮断器12の遮断により発電機51が電力系統から切離されても、判別器32によりサーボ機構10により制御される水車50の水口開度が起動開度以下(無負荷開度付近まで水口が閉鎖)になったことを条件にスイッチ22を開から閉、スイッチ23,24を閉から開に切替えて第2の速度制御系から第1の速度制御系に遅らせて移行させることにより、水車50の水口開度を所定の閉鎖速度で閉鎖することが可能となり、水車の回転速度の制限値を超える上昇を抑えることができる。
【0057】
図2は、本発明による水車の速度制御装置の第2及び第3の実施形態を示す回路構成図で、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる点について述べる。
【0058】
第1の実施形態では、演算部26に有する1次要素(1/(Ksn+Tb.S))を構成する分母の定数((Ksn)の値を従来のガバナの速度垂下率に近い値0.03〜0.05にすることによって、特に無負荷開度以下では大きい値に変化させるように設定し、開度対速度の定常値の速度垂下率を変化させるようにしたが、単独負荷運転のとき速度変化を大きくしたいとき、負荷に対する周波数変化が大きいと応答性が悪くなる。
【0059】
そこで、第2の実施形態では、サーボ機構10の位置信号を水車50に入る流水の水口開度として速度垂下率設定器(Ksd)33に入力し、この速度垂下率設定器(Ksd)33より出力される水口開度に応じた信号を加算部34に与えて加算部21より入力される水車50の回転速度検出信号と速度設定値との差信号とを加算し、その加算信号をスイッチ22の閉路時には比例要素25及び演算部26に、スイッチ23の閉路時には加算部31にそれぞれ与えるようにしたものである。この場合、速度垂下率設定器(Ksd)33では速度垂下率の値が0.1〜0.08で変化する。
【0060】
また、第1の実施形態では、比例要素Kpのゲインについては言及しなかったが、この比例要素Kpのゲインが大きいと単独負荷運転のとき回転速度が不安定になる場合がある。
【0061】
そこで、第2の実施形態では、第1の速度制御系に微分要素(Kd.Tb.S/(1+Tb.S))35を設け、比例要素(Kp)25と演算部26にそれぞれ入力される速度設定信号Noと速度検出信号Nとの差信号を微分要素(Kd.Tb.S/(1+Tb.S))35に与え、これら比例要素25、演算部26及び微分要素35の出力を加算部27にて加算するようにしたものである。
【0062】
このような構成とすれば、比例要素Kpのゲインが大きくても、回転速度の安定化を図りながら単独負荷運転を行うことができる。
【符号の説明】
【0063】
1…回転速度検出器、2…速度調節部(65F)、10…サーボ機構、12…遮断器、19…出力調節部(65P)、22,23,24…スイッチ、25…比例要素、26…演算部、21,27〜31,34…加算部、30…差信号、32…判別器、33…速度垂下率設定器(Ksd)、35…微分要素、50…水車、51…発電機、52…電力系統。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機に連結された水車の回転速度と速度設定値との差信号に基づいて水車に入る流水の水口開度又はガイドベーン開度を調節するサーボ機構を駆動して水車の回転速度を制御する速度制御装置において、
前記サーボ機構を駆動する前記差信号に基づく速度制御系として、無負荷運転時及び単独負荷運転時に前記差信号を比例要素及び水車の水口開度又はガイドベーン開度に応じて時定数が可変する1次要素を有する演算部にそれぞれ入力してその出力信号の加算信号を前記サーボ機構に入力する第1の速度制御系と、電力系統との並列運転時に出力調節部からの信号と前記差信号との加算信号を前記サーボ機構に入力する第2の速度制御系と、前記発電機を電力系統に連系する遮断器の状態を判別し、遮断時には前記第1の速度制御系に、投入時には前記第2の速度制御系に切替える判別器とを備えたことを特徴とする水車の速度制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の水車の速度制御装置において、
前記判別器は、前記遮断器が投入状態から遮断されたときは前記サーボ機構により調節される水車の水口開度又はガイドベーン開度が起動開度以下(無負荷開度付近まで水口が閉鎖)になったことを条件に第2の速度制御系から第1の速度制御系に切替えるようにしたことを特徴とする水車の速度制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の水車の速度制御装置において、
前記サーボ機構のサーボ位置信号を入力して水車に入る流水の水口開度又はガイドベーン開度に応じて変化する速度垂下率を出力する速度垂下率設定器を設け、この速度垂下率設定器より出力される速度垂下率を水車の回転速度検出信号と速度設定値との差信号に加算するようにしたことを特徴とする水車の速度制御装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載の水車の速度制御装置において、
第1の速度制御系に速度設定信号と速度検出信号との差信号が入力される微分要素を設け、この微分要素の出力を前記比例要素及び前記演算部の出力に加算することを特徴とする水車の速度制御装置。
【請求項5】
請求項3記載の水車の速度制御装置において、
前記水車の回転速度検出信号と速度設定値との差信号に前記速度垂下率設定器より出力される速度垂下率が加算された信号が入力される微分要素を設け、この微分要素の出力を前記比例要素及び前記演算部の出力に加算することを特徴とする水車の速度制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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