水車発電機用の軸受
【課題】非膨潤性に加えて軽量化をも期待できて設置、交換等において取扱が容易であり、金属製の裏金の再加工等を必要としないで容易に滑り部材の交換を行い得、しかも、ガイドベーンを滑らかに回転させることができる水車発電機用の軸受を提供すること。
【解決手段】水車発電機用の軸受1は、水車発電機2の水車ケーシング3の水車ケーシング本体3a、水車上カバー3b及び水車下カバー3cによって規定された水路4に円周方向に等角度間隔をもって配された複数枚の水車ガイドベーン5の回転軸6a及び6bを当該水車ケーシング3の水車上カバー3b及び水車下カバー3cに設けられた軸受孔7a及び7bにおいて軸心8を中心としてR1及びR2方向に回転自在に支持するようになっている。
【解決手段】水車発電機用の軸受1は、水車発電機2の水車ケーシング3の水車ケーシング本体3a、水車上カバー3b及び水車下カバー3cによって規定された水路4に円周方向に等角度間隔をもって配された複数枚の水車ガイドベーン5の回転軸6a及び6bを当該水車ケーシング3の水車上カバー3b及び水車下カバー3cに設けられた軸受孔7a及び7bにおいて軸心8を中心としてR1及びR2方向に回転自在に支持するようになっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水車発電機のガイドベーンの回転軸及び斯かるガイドベーンの回転軸を回転させる回転伝達部材を互いに回転自在に連結する連結軸を回転自在に支持するための水車発電機用の軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、フランシス型の水車発電機は、水車の回りに形成された円環(渦巻き)状の渦巻き水路から水車羽根が配された軸方向水路に水流が導入されて、斯かる軸方向水流により水車羽根が回転されて発電がなされるが、渦巻き水路から軸方向水路への水路には、固定ベーンに加えて、軸方向水路への水量を調節するガイドベーンが回転自在に配されている一方、ガイドベーンの回転軸には、当該回転軸を回転させる複数の回転伝達部材が連結軸を介して直列に連結されており、これら回転軸及び連結軸は、軸受を介して夫々回転自在に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−293556号公報
【特許文献2】特開2001−124070号公報
【特許文献3】特開2002−174227号公報
【特許文献4】特開2006−189014号公報
【特許文献5】特開2009−92135号公報
【特許文献6】特開2009−257590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、非膨潤性が要求されるガイドベーンの回転軸の軸受において、一つの従来例では、金属素材に削り加工を施してなる一体成形品が使用されているが、斯かる削り加工による一体成形品からなる金属製の滑り軸受では、その重量が大きく、その設置、交換等において取扱が困難であり、クレーン等の重機を必要とする場合があり、他の従来例としての、金属製のハウジング(裏金)と、このハウジングに冷やしバメをもって嵌着されていると共に滑り内周面を有した金属製の滑り部材とからなる金属製の滑り軸受では、保守、交換に当たっての滑り部材のハウジングからの抜け出しが困難であると共に金属製の滑り部材の抜け出しにおいてハウジングの内周面に傷をつけたり変形させたりする結果、ハウジングの再利用にあたっては、ハウジングの寸法仕上げ等の再加工を必要とする虞があって、多大な時間を要する場合があり、一方、非膨潤性がそれ程要求されない回転伝達部材の連結軸においても、金属製の滑り軸受が使用される場合には、ガイドベーンの回転軸の軸受と同様であって、その設置、保守、交換等においてその取扱が困難であると共に多大な時間を要する場合がある。
【0005】
特許文献1から6に記載の水中軸受は、回転軸から動摩擦を介在した一定方向の回転を受けるのであるが、ガイドベーンの回転軸及び回転伝達部材の連結軸の夫々の軸受は、斯かる水中軸受と異なり、回転軸又は連結軸から静摩擦と動摩擦とを介在した交代的な回転を受ける結果、静摩擦係数と動摩擦係数との間に甚だしい乖離があると、ガイドベーンを滑らかに回転させることが困難となる。
【0006】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、非膨潤性に加えて軽量化をも期待できて設置、交換等において取扱が容易であり、金属製の裏金の再加工等を必要としないで容易に滑り部材の交換を行い得、しかも、ガイドベーンを滑らかに回転させることができる水車発電機用の軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
水車発電機の水車ケーシングによって規定された水路に配される水車ガイドベーンの回転軸を当該水車ケーシングに設けられた軸受孔において回転自在に支持するための本発明の水車発電機用の軸受は、円筒状の内周面を有していると共に水車ケーシングの軸受孔を規定する内周面に外周面で嵌着するための剛性の金属製裏金と、この金属製裏金の円筒状の内周面に嵌着されていると共に水車ガイドベーンの回転軸を滑り回転自在に受容するための円筒状の滑り内周面を有した主として熱硬化性樹脂からなる滑り層とを具備している。
【0008】
本発明の水車発電機用の軸受によれば、熱硬化性樹脂からなる滑り層が金属製裏金の円筒状の内周面に嵌着されているために、金属製の滑り軸受に比較して、軽量化を期待できて設置、交換等において容易に取扱うことができ、熱硬化性樹脂からなる滑り層の金属製裏金の内周面からの抜け出しを、冷やしバメをもって互いに嵌着されている金属製のハウジング(裏金)と金属製の滑り部材とのそれと比較して容易に行うことができる結果、金属製の裏金の再加工等の虞を回避できて容易に滑り層の交換を行い得、しかも、ガイドベーンの金属製の回転軸と熱硬化性樹脂からなる滑り層との摩擦となる結果、静摩擦係数を低減できる上に、静摩擦係数と動摩擦係数とを同等にできて、ガイドベーンの滑らかな回転を期待できる。
【0009】
水車発電機用の軸受の好ましい例では、水車ガイドベーンの回転軸を受容するための円孔を滑り内周面で規定した滑り層には、当該滑り内周面の円周方向に延びていると共に当該滑り内周面で円孔に開口した少なくとも一つの円環状の溝が形成されており、この円環状の溝は、一端で当該溝に開口する一方、他端で水車ケーシングの外面において外部に開口した通路を介して、当該外部に連通されるようになっている。
【0010】
斯かる円環状の溝と通路とを具備した水車発電機用の軸受によれば、水路に微小砂を含んだ泥水が供給された場合に、滑り層の内周面と回転軸の外周面との間に侵入した微小砂を円環状の溝で補足して、この補足した微小砂を通路を介して外部に排出できる排砂機能を具備し得る結果、微小砂による滑り層の内周面又は回転軸の外周面への摺動痕の発生を回避できて、長期に亘るガイドベーンの滑らかな回転を確保できる。
【0011】
円環状の溝は、一個でもよいが、軸方向に互いに離間して複数個の円環状の溝を滑り層に形成してもよく、この場合、複数個の円環状の溝を互いに連通させる相互連通通路を滑り層及び金属製裏金のうちの少なくとも一方に形成して、この相互連通通路を上記の通路を介して外部に連通するようにしてもよい。
【0012】
水車発電機の水車ガイドベーンの回転軸に回転源からの回転を伝達して当該回転軸を回転させる複数の回転伝達部材を互いに回転自在に直列に連結する連結軸を各回転伝達部材に設けられた軸受孔において回転自在に支持するための本発明の他の水車発電機用の軸受は、円筒状の内周面を有していると共に回転伝達部材の軸受孔を規定する内周面に外周面で嵌着するための剛性の金属製裏金と、この金属製裏金の円筒状の内周面に嵌着されていると共に連結軸を滑り回転自在に受容するための円筒状の滑り内周面を有した主として熱硬化性樹脂からなる滑り層とを具備している。
【0013】
本発明の他の水車発電機用の軸受によれば、上記の軸受と同様に、熱硬化性樹脂からなる滑り層が金属製裏金の円筒状の内周面に嵌着されているために、金属製の滑り軸受に比較して、軽量化を期待できて設置、交換等において容易に取扱うことができ、熱硬化性樹脂からなる滑り層の金属製裏金の内周面からの抜け出しを、冷やしバメをもって互いに嵌着されている金属製のハウジング(裏金)と金属製の滑り部材とのそれと比較して容易に行うことができる結果、金属製のハウジング(裏金)の再加工等の虞を回避できて容易に滑り層の交換を行い得、しかも、回転伝達部材の金属製の連結軸と熱硬化性樹脂からなる滑り層との摩擦となる結果、静摩擦係数を低減できる上に、静摩擦係数と動摩擦係数とを同等にできて、回転伝達部材を介するガイドベーンの滑らかな回転を期待できる。
【0014】
本発明の滑り層は、熱硬化性樹脂としてレゾール型フェノール樹脂を含んでいるとよく、斯かるレゾール型フェノール樹脂は、摩擦摩耗性に優れ、高い剛性を有して機械的強度に優れていると共に水中等の湿潤雰囲気でも極めて小さい膨潤量となり、乾燥摩擦条件下、グリース潤滑条件下及び水潤滑条件下のいずれの条件下でも好ましい滑り特性を発揮できる上に、滑り層がポリエステル繊維織布等の特定の補強繊維織布を含んでいる場合には、当該補強繊維織布との親和性に優れているために、補強繊維織布をしっかりと接合保持した滑り層を提供できる。
【0015】
好ましい例では、滑り層の滑り内周面は、熱硬化性樹脂からなる滑り面を含んでいる。
【0016】
滑り層は、熱硬化性樹脂に加えて、当該熱硬化性樹脂に分散された四フッ化エチレン樹脂(以下、「PTFE」という)を更に含んでいるとよく、斯かるPTFEは、滑り層の滑り内周面をより低摩擦性にし得る。
【0017】
PTFEを含んでいる滑り層の内周面は、好ましい例では、熱硬化性樹脂からなる滑り面と、この滑り面に混在されていると共にPTFEからなる滑り面とを含んでいる。
【0018】
滑り層の内周面でこのように熱硬化性樹脂からなる滑り面とPTFEからなる滑り面とが混在していると、滑り層の滑り内周面がより低摩擦になって、好ましい滑り性(摺動性)を得ることができる。
【0019】
滑り層は、更に、好ましくは補強繊維織布を含んでいてもよく、この場合、熱硬化性樹脂は、補強繊維織布に含浸されていると共に補強繊維織布を覆っているとよい。
【0020】
このような補強繊維織布を含んだ滑り層によれば、滑り層の形状維持性を向上できて、滑り層のクリープ変形等を好ましく防止できる。
【0021】
補強繊維織布は、合成樹脂製の繊維、例えば、ポリエステル樹脂繊維又はふっ素樹脂繊維が好ましく、ポリエステル樹脂繊維としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、PETという)繊維が特に好ましいが、ポリブチレンテレフタレート樹脂繊維、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂繊維、ポリエチレンナフタレート樹脂繊維又はポリブチレンナフタレート樹脂繊維であってもよく、ふっ素樹脂繊維としては、PTFE繊維が特に好ましいが、例えば、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニールエーテル共重合体樹脂繊維、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂繊維又はエチレン−ポリテトラフルオロエチレン共重合体樹脂繊維であってもよいが、本発明は、これらの例に限定されず、滑り層における補強基材としての補強機能を達成できて低摩擦性を有する上に、回転軸及び連結軸の表面との関連で当該回転軸及び連結軸の表面を損傷させる虞のないものであれば他の樹脂繊維、例えば、ポリアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等からなる繊維であってもよい。
【0022】
補強繊維織布を含んだ滑り層の一つの例は、補強繊維織布と熱硬化性樹脂とを含んでいる層を複数個積層した積層体からなっており、この場合、積層体の各層の熱硬化性樹脂は、補強繊維織布に含浸されていると共に補強繊維織布を覆っているとよく、斯かる例での滑り層の滑り内周面は、熱硬化性樹脂からなる滑り面を含んでいるとよい。
【0023】
積層体からなっている滑り層において、当該積層体の各層は、熱硬化性樹脂に加えて、当該熱硬化性樹脂に分散されたPTFEを含んでいてもよく、この場合、滑り層の滑り内周面は、熱硬化性樹脂からなる滑り面と、この滑り面に混在されていると共にPTFEからなる滑り面とを含んでいるとよい。
【0024】
レゾール型フェノール樹脂、PTFE及び補強繊維織布を含んだ滑り層は、レゾール型フェノール樹脂を35質量%から50質量%、PTFE10質量%から30質量%及び補強基材を35質量%から50質量%含んでいるとよい。
【0025】
以上の軸受において、金属製裏金は、アルミニウム、ステンレス、銅合金等の耐腐食性の金属からなっているとよく、また、当該金属製裏金は、円筒状の内周面を有している円筒部と、この円筒部に一体的に形成されている環状鍔部とを有していてもよいが、これに代えて、鍔部なしの円筒状の内周面を有した円筒部のみからなっていてもよく、これら鍔部付き軸受及び鍔部なし軸受は、使用箇所に適合するように適宜選択し得る。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、非膨潤性に加えて軽量化をも期待できて設置、交換等において取扱が容易であり、金属製の裏金の再加工等を必要としないで容易に滑り層の交換を行い得、しかも、ガイドベーンを滑らかに回転させることができる水車発電機用の軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、水車発電機の例の全体概略断面説明図である。
【図2】図2は、図1に示す例の一部拡大断面説明図である。
【図3】図3は、図1に示す例の一部拡大平面説明図である。
【図4】図4は、図1に示す例の一部拡大断面説明図である。
【図5】図5は、図1に示す例の水車ガイドベーンの回転軸の一方の軸受の図6に示すV−V線矢視断面説明図である。
【図6】図6は、図5に示す軸受の平面説明図である。
【図7】図7は、図1に示す例の水車ガイドベーンの回転軸の他方の軸受の断面説明図である。
【図8】図8は、図1に示す例の連結軸の軸受の例の断面説明図である。
【図9】図9は、図8に示す連結軸の軸受の例の斜視説明図である。
【図10】図10は、図5、図7及び図8に示す滑り層の製造方法の説明図である。
【図11】図11は、図5、図7及び図8に示す滑り層の製造方法の説明図である。
【図12】図12は、図5、図7及び図8に示す滑り層の製造方法の説明図である。
【図13】図13は、図1に示す例の水車ガイドベーンの回転軸の軸受の他の例の断面説明図である。
【図14】図14は、図13に示す例のXIV−XIV線矢視断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に本発明を、図に示す好ましい実施の形態の例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら例に何等限定されないのである。
【0029】
図1から図9において、本例の水車発電機用の軸受1は、水車発電機2の水車ケーシング3の水車ケーシング本体3a、水車上カバー3b及び水車下カバー3cによって規定された水路4に円周方向に等角度間隔をもって配された複数枚の水車ガイドベーン5の回転軸6a及び6bを当該水車ケーシング3の水車上カバー3b及び水車下カバー3cに設けられた軸受孔7a及び7bにおいて軸心8を中心としてR1及びR2方向に回転自在に支持するようになっている。
【0030】
本例の水車発電機2は、フランシス型であって、水路4を規定すると共に水車ケーシング本体3a、水車上カバー3b及び水車下カバー3cを有した水車ケーシング3と、水車上カバー3bに回転自在に支持された水車11と、水車ケーシング3外に配された発電機12と、水車11の回転を発電機12に伝達する回転軸13と、夫々が軸受1を介して水車ケーシング3の水車上カバー3b及び3cに軸心8を中心としてR1及びR2方向に回転自在に支持されている上記の複数枚の水車ガイドベーン5と、各水車ガイドベーン5に対応して水車ケーシング3の水車ケーシング本体3aに固定的に設けられた複数枚のステーベーン14と、各水車ガイドベーン5の回転軸6aに回転源15からのR3及びR4方向の回転を伝達して当該各回転軸6aをR1及びR2方向に回転させるように各水車ガイドベーン5に対応して設けられた回転伝達部材16、17及び18とを主として具備している。
【0031】
水車ケーシング3は、リベット、溶接、ボルト等により上下方向で互いに連結された水車上カバー3b及び水車下カバー3cと、水車上カバー3b及び水車下カバー3cの周囲にリベット、溶接、ボルト等により連結された水車ケーシング本体3aとを具備している。
【0032】
水路4は、水車ケーシング本体3aによって規定された円環(渦巻き)状の渦巻き水路21と、水車上カバー3b及び水車下カバー3cによって規定されていると共に水車11が配される軸方向水路22と、水車ケーシング本体3a、水車上カバー3b及び水車下カバー3cによって規定されていると共に水路21から軸方向水路22に水流を導く環状水路23とを有しており、水車11を回転させて回転軸13を介して発電機12を発電作動させるべく水路21に導入された水流は、環状水路23においてステーベーン14により案内されて水車ガイドベーン5によりその水量が調節されて当該環状水路23を介して軸方向水路22に導入されて軸方向水路22において水車11を回転させ、その後、軸方向水路22の下方から送出されるようになっている。
【0033】
水車ガイドベーン5は、環状水路23に配されるガイドベーン本体25と、ガイドベーン本体25の上端及び下端に一体的に設けられていると共に軸受1を介して水車ケーシング3の水車上カバー3b及び水車下カバー−3cにR1及びR2方向に回転自在に支持されている回転軸6a及び6bとを具備しており、回転軸6a及び6bの回転で環状水路23においてガイドベーン本体25が所定角に回転設定されることにより環状水路23の開度を決定して環状水路23を介する軸方向水路22に導入される水量を決定するようになっている。
【0034】
軸受1において、水車上カバー3bの軸受孔7aに配されて回転軸6aを回転自在に支持する軸受1aは、円筒状の内周面31aを有していると共に水車上カバー3bの軸受孔7aを規定する内周面32aに外周面33aで嵌着するための剛性の金属製裏金34aと、金属製裏金34aの円筒状の内周面31aに円筒状の外周面35aで嵌着されていると共に水車ガイドベーン5の一方の回転軸6aを軸心8を中心としてR1及びR2方向に滑り回転自在に受容するための円筒状の滑り内周面36aを有した主として熱硬化性樹脂からなる滑り層37aとを具備している。
【0035】
アルミニウム、ステンレス、銅合金等の耐腐食性の金属からなっている金属製裏金34aは、円筒状の外周面33a及び内周面31aを有した円筒部41aと、円筒部41aに一体的に形成されていると共に一対の貫通孔42aが軸対称に形成された環状鍔部43aと、外周面33a及び滑り内周面36aの夫々に形成された環状のシールリング溝44a及び45aと有している。
【0036】
円筒状の滑り層37aは、PET繊維又はPTFE繊維からなる補強繊維織布と、この補強繊維織布に含浸されていると共に補強繊維織布を覆っている熱硬化性樹脂としてのレゾール型フェノール樹脂と、斯かるレゾール型フェノール樹脂に分散されたPTFEとを含んでいる。
【0037】
レゾール型フェノール樹脂と、斯かるレゾール型フェノール樹脂に分散されたPTFEとを含んでいる円筒状の滑り層37aの露出した滑り内周面36aは、熱硬化性樹脂からなる滑り面と、この滑り面に混在されていると共に四フッ化エチレン樹脂からなる滑り面とを含んでいるが、滑り層37aにPTFEを含ませない場合には、円筒状の滑り層37aの露出した滑り内周面36aは、四フッ化エチレン樹脂からなる滑り面の存在しない熱硬化性樹脂からなる滑り面を含んだ面となる。
【0038】
環状のシールリング溝44aには、図示しない弾性Oリングが、シールリング溝45aには、弾性Yリング46aが夫々嵌着されている一方、滑り層37aの一方の端面47aには、当該端面47a及び内周面31aに接して弾性Yリング48aが嵌着されており、円筒部41a及び環状鍔部43aに形成された環状の段部溝49aには、弾性Yリング48aの内周面31aからの抜け出しを防止するための抜け出し防止リング50aが円筒部41aにねじ51aにより固定されて配されており、滑り層37aの他方の端面52aは、シールリング溝45aの一方の面を規定すると共に円筒部41aの内周面31aに一体的に形成された一方の突部53aに接触しており、突部53aの頂面54aと、シールリング溝45aの他方の面を規定して突部53aと協働してシールリング溝45aを規定すると共に円筒部41aの内周面31aに一体的に形成された他方の突部55aの頂面56aとは、滑り内周面36aの径よりも大きい径を有している。
【0039】
斯かる軸受1aは、水車上カバー3bの軸受孔7aに挿入されて、その外周面33aで水車上カバー3bの内周面32aに嵌着されて、貫通孔42aに挿入される図示しないボルトにより水車上カバー3bに固定される一方、その滑り内周面36aで規定する円孔61aに挿入される回転軸6aを軸心8を中心としてR1及びR2方向に回転自在に支持する。
【0040】
軸受1において、水車下カバー3cの軸受孔7bに配されて回転軸6bを回転自在に支持する軸受1bは、円筒状の内周面31bを有していると共に水車下カバー3cの軸受孔7bを規定する内周面32bに外周面33bで嵌着するための剛性の金属製裏金34bと、金属製裏金34bの円筒状の内周面31bに円筒状の外周面35bで嵌着されていると共に水車ガイドベーン5の他方の回転軸6bを軸心8を中心としてR1及びR2方向に滑り回転自在に受容するための円筒状の滑り内周面36bを有した主として熱硬化性樹脂からなる滑り層37bとを具備している。
【0041】
金属製裏金34aと同様に、アルミニウム、ステンレス、銅合金等の耐腐食性の金属からなっている金属製裏金34bは、円筒状の外周面33b及び内周面31bを有した円筒部41bと、外周面33bに形成された環状のシールリング溝44bと有して、鍔なしとして形成されている。
【0042】
円筒状の滑り層37bは、円筒状の滑り層37aと同様に形成されており、補強繊維織布と、この補強繊維織布に含浸されていると共に補強繊維織布を覆っている熱硬化性樹脂としてのレゾール型フェノール樹脂と、斯かるレゾール型フェノール樹脂に分散されたPTFEとを含んでおり、補強繊維織布は、PET繊維又はPTFE繊維からなり、レゾール型フェノール樹脂と、斯かるレゾール型フェノール樹脂に分散されたPTFEとを含んでいる円筒状の滑り層37bの露出した滑り内周面36bは、熱硬化性樹脂からなる滑り面と、この滑り面に混在されていると共に四フッ化エチレン樹脂からなる滑り面とを含んでいるが、円筒状の滑り層37aと同様に、滑り層37bにPTFEを含ませない場合には、円筒状の滑り層37bの露出した滑り内周面36bは、四フッ化エチレン樹脂からなる滑り面の存在しない熱硬化性樹脂からなる滑り面を含んだ面となる。
【0043】
環状のシールリング溝44bには、図示しない弾性Oリングが嵌着されている一方、円筒部41bの内周面31bの一方の端部に一体的に形成された突部53bと滑り層37bの一方の端面47bとの間には、これら突部53bと端面47bとに接触して弾性Yリング48bが嵌着されており、円筒部41bの内周面31bの他方の端部には、環状のスラスト軸受片57bが挿入されており、突部53bの頂面54bは、滑り内周面36bの径よりも大きい径を有している。
【0044】
斯かる軸受1bは、水車下カバー3cの軸受孔7bに挿入されて、その外周面33bで水車下カバー3cの内周面32bに嵌着されて固定される一方、その滑り内周面36bで規定する円孔61bに挿入される回転軸6bを軸心8を中心としてR1及びR2方向に回転自在に支持しており、軸受1b内に配されている環状のスラスト軸受片57bは、その中央部に排水用の貫通孔58bを有すると共に回転軸6bの端面59bに接触して回転軸6bのスラスト荷重を受けるようになっており、回転軸6bの端面59bとスラスト軸受片57bとの間又はスラスト軸受片57bと水車下カバー3cとの間に、適宜なシムを介在させることにより、スラスト軸受片57bで受ける回転軸6bの軸方向のスラスト荷重を調整することができる。
【0045】
各水車ガイドベーン5は、以上の対応の軸受1a及び1bにより、軸心8を中心としてR1及びR2方向に回転自在に支持される。
【0046】
各水車ガイドベーン5の回転軸6aを、対応の二個の回転伝達部材16及び17を介してR1及びR2方向に回転させる回転源15は、図示しない油圧シリンダのピストンロッド71に軸72を介して揺動自在に連結された連結部材73と、水車ケーシング3の水車上カバー3bに滑り案内機構74を介して回転軸13を中心としてR3及びR4方向に回転自在に支持されていると共に連結部材73が軸75及びブラケット76を介して揺動自在に連結された円筒部材77とを具備しており、油圧シリンダのピストンロッド71のA方向の移動で、円筒部材77を回転軸13を中心としてR3方向に回転させる一方、油圧シリンダのピストンロッド71のB方向の移動で、円筒部材77を回転軸13を中心としてR4方向に回転させるようになっている。
【0047】
回転伝達部材16は、軸受孔81を有すると共に円筒部材77の内周面82に一体的に形成された環状の突起からなり、回転伝達部材17は、一端部83及び他端部84の夫々に軸受孔85及び86を有する板状の腕部材からなり、回転伝達部材18は、一端部87及び他端部88に夫々に軸受孔89及び90を有する板状の腕部材からなり、回転伝達部材18の軸受孔90に回転軸6aの上部が嵌入されて当該回転軸6aの上部が他端部88に固着されており、回転軸6aは、回転伝達部材18の軸心8を中心とするR1及びR2方向の回転と共に回転するようになっており、軸受孔81において回転伝達部材16に一端部91が軸受92を介して軸心93を中心としてR5方向に回転自在に支持された連結軸94は、その他端部95が軸受孔85に嵌合されて回転伝達部材17に固着されて、回転伝達部材16と回転伝達部材17とを互いにR5方向に回転自在に直列に連結しており、軸受孔89において回転伝達部材18に一端部96が軸受97を介して軸心98を中心としてR6方向に回転自在に支持された連結軸99は、その他端部100が軸受孔86に嵌合されて回転伝達部材17に固着されて、回転伝達部材17と回転伝達部材18とを互いにR6方向に回転自在に直列に連結している。
【0048】
各水車ガイドベーン5は、油圧シリンダのピストンロッド71のA方向の移動による円筒部材77の回転軸13を中心としたR3方向の回転で、回転伝達部材17のR5方向の回転と回転伝達部材18のR6方向の回転との回転による回転軸6aのR1方向の回転を介してR1方向に回転される一方、油圧シリンダのピストンロッド71のB方向の移動による円筒部材77の軸心8を中心としたR4方向の回転で、回転伝達部材17のR5方向の回転と回転伝達部材18のR6方向の回転との回転による回転軸6aのR2方向の回転を介してR2方向に回転されるようになっており、而して、油圧シリンダのピストンロッド71のA方向又はB方向の適宜の移動量で、各ガイドベーン本体25の環状水路23に対する開度が決定された値に設定され、各ガイドベーン本体25による環状水路23に対する開度の大小は、水車発電機2による発電量が一定となるように、渦巻き水路21の流量等によって決定される。
【0049】
水車発電機2の水車ガイドベーン5の回転軸6aに回転源15からのR3方向及びR4方向の回転を伝達して当該回転軸6aをR1及びR2方向に回転させる回転伝達部材16、17及び18を互いに回転自在に直列に連結する連結軸94及び99を回転伝達部材16及び18の夫々に設けられた軸受孔81及び89においてR5方向及びR6方向の夫々に回転自在に支持するための水車発電機用の軸受92及び97の夫々は、円筒状の内周面111を有していると共に回転伝達部材16及び18の軸受孔81及び89の夫々を規定する内周面112及び113の夫々に外周面114で嵌着するための剛性の金属製裏金115と、金属製裏金115の円筒状の内周面111の夫々に嵌着されていると共に連結軸94及び99の夫々をR5及びR6方向の夫々に滑り回転自在に受容するための円筒状の滑り内周面116を有した主として熱硬化性樹脂からなる滑り層117とを具備している。
【0050】
連結軸94用の軸受92と連結軸99用の軸受97とは、互いに同様に形成されているので、以下、軸受92について説明すると、軸受92において、軸受1aにおける金属製裏金34aと同様にアルミニウム、ステンレス、銅合金等の耐腐食性の金属からなっている金属製裏金115は、円筒状の外周面114及び内周面111を有した円筒部121と、円筒部121に一体的に形成されている環状鍔部122とを具備しており、滑り層117は、軸受1aにおける滑り層37aと同様に形成されており、補強繊維織布と、この補強繊維織布に含浸されていると共に補強繊維織布を覆っている熱硬化性樹脂としてのレゾール型フェノール樹脂と、斯かるレゾール型フェノール樹脂に分散されたPTFEとを含んでおり、補強繊維織布は、PET繊維又はPTFE繊維からなり、レゾール型フェノール樹脂と、斯かるレゾール型フェノール樹脂に分散されたPTFEとを含んでいる円筒状の滑り層117の露出した内周面116は、熱硬化性樹脂からなる滑り面と、この滑り面に混在されていると共に四フッ化エチレン樹脂からなる滑り面とを含んでいるが、軸受1aにおける滑り層37aと同様に、滑り層117にPTFEを含ませない場合には、円筒状の滑り層117の露出した内周面116は、四フッ化エチレン樹脂からなる滑り面の存在しない熱硬化性樹脂からなる滑り面を含んだ面となる。
【0051】
斯かる軸受92は、その円筒部121が回転伝達部材16の軸受孔81に挿入されて、その外周面114で回転伝達部材16の内周面112に嵌着されると共にその環状鍔部122が回転伝達部材17の一端部83と回転伝達部材16との間に配されて回転伝達部材16に固定される一方、その滑り層117の内周面116で規定する円孔125に挿入される連結軸94を軸心93を中心としてR5方向に回転自在に支持する。
【0052】
軸受97も同様に、その円筒部121が回転伝達部材18の軸受孔89に挿入されて、その外周面114で回転伝達部材18の内周面113に嵌着されると共にその環状鍔部122が回転伝達部材17の他端部84と回転伝達部材18との間に配されて回転伝達部材18の一端部87に固定される一方、その滑り層117の内周面116で規定する円孔125に挿入される連結軸99を軸心98を中心としてR6方向に回転自在に支持する。
【0053】
以上の軸受1a、1b、92及び97のいずれも、熱硬化性樹脂からなる滑り層37a、37b及び117の夫々が金属製裏金34a、34b及び115の円筒状の内周面31a、31b及び111の夫々に嵌着されているために、金属製の滑り軸受に比較して、軽量化を期待できて設置、交換等において容易に取扱うことができ、熱硬化性樹脂からなる滑り層37a,37b及び117の夫々の金属製裏金の内周面31a、31b及び111の夫々からの抜け出しを、冷やしバメをもって互いに嵌着されている金属製のハウジング(裏金)と金属製の滑り部材とのそれと比較して容易に行うことができる結果、金属製の裏金34a、34b及び115の再加工等の虞を回避できて容易に滑り層37a、37b、及び117の交換を行い得、しかも、軸受1a及び1bでは、ガイドベーン5の金属製の回転軸6a及び6bの夫々と熱硬化性樹脂からなる滑り層37a、37bの夫々との摩擦となる結果、静摩擦係数を低減できる上に、静摩擦係数と動摩擦係数とを同等にできて、ガイドベーン5の滑らかな回転を期待できる一方、軸受92及び97では、回転伝達部材16、17及び18を介するガイドベーン5の滑らかな回転を期待できる。
【0054】
滑り層37a、37b及び117の夫々を作製する場合には、PET繊維又はPTFE繊維からなる補強繊維織布を準備し、次に、希釈したレゾール型フェノール樹脂ワニスを作成し、更に、この作成したレゾール型フェノール樹脂ワニスに、低分子量PTFE粉末を所定量配合して分散含有させ、レゾール型フェノール樹脂ワニスと低分子量PTFE粉末との混合液を作成する。斯かる準備したレゾール型フェノール樹脂ワニスを、準備した補強繊維織布に、当該ワニスを収容した容器内での浸漬により又はローラ塗り、スプレー塗り、刷毛塗り等により塗工し、このワニスを塗工した補強繊維織布を一対のローラに間に通して、補強繊維織布に塗工したワニスを補強繊維織布の隙間に隙間なしに十分に充填し、その後、ワニスを塗工した補強繊維織布を乾燥炉に配置してワニスを乾燥して、乾燥後、適宜の手段により目的の大きさをもった方形状に切断することにより、補強繊維織布と、補強繊維織布の含浸されていると共に補強繊維織布を覆っている熱硬化性樹脂とてしてのレゾール型フェノール樹脂と、斯かるレゾール型フェノール樹脂に分散された低分子量PTFEからなる図10に示す平板状の軸受素材151を形成し、こうして形成した軸受素材151を145℃の温度で加熱しつつ7Mpaの圧力を加えつつ所定の径をもったローラに巻きつけて円筒状に捲回することにより単層の滑り層37a、37b及び117を得ることができる。
【0055】
斯かる平板状の軸受素材151から補強繊維織布と熱硬化性樹脂とを含んでいる層を複数個積層した積層体からなる滑り層37a、37b及び117の夫々を作製する場合には、図11に示すように複数枚の平板状の軸受素材151を準備し、この複数枚の平板状の軸受素材151を重ね合わせて配置し、この重ね合わせた複数枚の平板状の軸受素材151からなる積層体152を、例えば145℃の温度で加熱しつつ7Mpaの圧力を加えて成形し、この平板状の積層体152をローラに複数回巻きつけて、ローラに捲回された積層体を、上記温度で加熱しつつ押圧ローラにより上記圧力を加えて成形すると、図12に示す積層体からなる滑り層37a、37b及び117の夫々を得ることができる。
【0056】
軸受1a及び1bの夫々では、夫々平坦な円筒状の滑り内周面36a及び36bを有した滑り層37a及び37bとしたが、例えば、図13及び14に示す軸受1aのように、滑り層37aに、滑り内周面36aの円周方向に延びていると共に当該滑り内周面36aで円孔61aに開口した少なくとも一つ、本例では、三つの円環状の溝161を軸方向において離間して形成して、一端では当該溝161に開口する一方、他端では水車ケーシング3の外面162において開口した通路163を介して斯かる溝161を水車ケーシング3の外部に連通するようにしてもよく、この場合、通路163は、滑り層37aの円筒状の外周面35aに円周方向において離間して形成された四つの溝164及び四つの溝164を溝161に連通させるべく、一端では溝161に開口し、他端では溝164に開口して各溝161に対して四つずつ滑り層37aに形成された貫通孔165からなる相互連通通路と、一端では四つの溝164に開口して、他端では円筒部41aの外周面33aで開口して円筒部41aに形成された四つの貫通孔166と、一端では貫通孔166に開口して、他端では水車ケーシング3の水車上カバー3bの外面162で開口して水車ケーシング3の水車上カバー3bに形成された貫通孔167とからなっていてもよい。
【0057】
斯かる円環状の溝161と通路163とを具備した水車発電機用の軸受1aによれば、水路23に微小砂を含んだ泥水が供給された場合に、滑り層37aの滑り内周面36aと回転軸6aの外周面171との間に侵入した微小砂を円環状の溝161で補足して、この補足した微小砂を通路163を介して水車ケーシング3の外部に排出できる排砂機能を具備し得る結果、微小砂による滑り層37aの滑り内周面36a又は回転軸6aの外周面171への摺動痕の発生を回避できて、長期に亘るガイドベーン5の滑らかな回転を確保できる。
【0058】
水車発電機2の保守等において、水車ケーシング3の外部から通路163を介して滑り内周面36aと外周面171との間の隙間に圧力浄水(清水)を注入して、当該隙間を清掃するようにしてもよく、斯かる通路163は、排砂機能に加えて、清掃機能にも使用し得て好ましい。
【0059】
軸受1bにも、上記と同様の排砂機能を設けてもよく、また図13に示すように、シールリング溝45a、弾性Yリング46a、弾性Yリング48a、段部溝49a、抜け出し防止リング50a、突部53a及び突部55aを設けない一方、円筒部41aの軸方向の一方の端面172に弾性Uリング装着用の環状のシールリング溝173を設けて軸受1aを形成してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 軸受
2 水車発電機
3 水車ケーシング
3a 水車ケーシング本体
3b 水車上カバー
3c 水車下カバー
4 水路
5 水車ガイドベーン
6a、6b 回転軸
7a、7b 軸受孔
8 軸心
31a、31b 内周面
32a、32b 内周面
33a、33b、35a、35b外周面
34a、34b 金属製裏金
36a、36b 滑り内周面
37a、37b 滑り層
【技術分野】
【0001】
本発明は、水車発電機のガイドベーンの回転軸及び斯かるガイドベーンの回転軸を回転させる回転伝達部材を互いに回転自在に連結する連結軸を回転自在に支持するための水車発電機用の軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、フランシス型の水車発電機は、水車の回りに形成された円環(渦巻き)状の渦巻き水路から水車羽根が配された軸方向水路に水流が導入されて、斯かる軸方向水流により水車羽根が回転されて発電がなされるが、渦巻き水路から軸方向水路への水路には、固定ベーンに加えて、軸方向水路への水量を調節するガイドベーンが回転自在に配されている一方、ガイドベーンの回転軸には、当該回転軸を回転させる複数の回転伝達部材が連結軸を介して直列に連結されており、これら回転軸及び連結軸は、軸受を介して夫々回転自在に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−293556号公報
【特許文献2】特開2001−124070号公報
【特許文献3】特開2002−174227号公報
【特許文献4】特開2006−189014号公報
【特許文献5】特開2009−92135号公報
【特許文献6】特開2009−257590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、非膨潤性が要求されるガイドベーンの回転軸の軸受において、一つの従来例では、金属素材に削り加工を施してなる一体成形品が使用されているが、斯かる削り加工による一体成形品からなる金属製の滑り軸受では、その重量が大きく、その設置、交換等において取扱が困難であり、クレーン等の重機を必要とする場合があり、他の従来例としての、金属製のハウジング(裏金)と、このハウジングに冷やしバメをもって嵌着されていると共に滑り内周面を有した金属製の滑り部材とからなる金属製の滑り軸受では、保守、交換に当たっての滑り部材のハウジングからの抜け出しが困難であると共に金属製の滑り部材の抜け出しにおいてハウジングの内周面に傷をつけたり変形させたりする結果、ハウジングの再利用にあたっては、ハウジングの寸法仕上げ等の再加工を必要とする虞があって、多大な時間を要する場合があり、一方、非膨潤性がそれ程要求されない回転伝達部材の連結軸においても、金属製の滑り軸受が使用される場合には、ガイドベーンの回転軸の軸受と同様であって、その設置、保守、交換等においてその取扱が困難であると共に多大な時間を要する場合がある。
【0005】
特許文献1から6に記載の水中軸受は、回転軸から動摩擦を介在した一定方向の回転を受けるのであるが、ガイドベーンの回転軸及び回転伝達部材の連結軸の夫々の軸受は、斯かる水中軸受と異なり、回転軸又は連結軸から静摩擦と動摩擦とを介在した交代的な回転を受ける結果、静摩擦係数と動摩擦係数との間に甚だしい乖離があると、ガイドベーンを滑らかに回転させることが困難となる。
【0006】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、非膨潤性に加えて軽量化をも期待できて設置、交換等において取扱が容易であり、金属製の裏金の再加工等を必要としないで容易に滑り部材の交換を行い得、しかも、ガイドベーンを滑らかに回転させることができる水車発電機用の軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
水車発電機の水車ケーシングによって規定された水路に配される水車ガイドベーンの回転軸を当該水車ケーシングに設けられた軸受孔において回転自在に支持するための本発明の水車発電機用の軸受は、円筒状の内周面を有していると共に水車ケーシングの軸受孔を規定する内周面に外周面で嵌着するための剛性の金属製裏金と、この金属製裏金の円筒状の内周面に嵌着されていると共に水車ガイドベーンの回転軸を滑り回転自在に受容するための円筒状の滑り内周面を有した主として熱硬化性樹脂からなる滑り層とを具備している。
【0008】
本発明の水車発電機用の軸受によれば、熱硬化性樹脂からなる滑り層が金属製裏金の円筒状の内周面に嵌着されているために、金属製の滑り軸受に比較して、軽量化を期待できて設置、交換等において容易に取扱うことができ、熱硬化性樹脂からなる滑り層の金属製裏金の内周面からの抜け出しを、冷やしバメをもって互いに嵌着されている金属製のハウジング(裏金)と金属製の滑り部材とのそれと比較して容易に行うことができる結果、金属製の裏金の再加工等の虞を回避できて容易に滑り層の交換を行い得、しかも、ガイドベーンの金属製の回転軸と熱硬化性樹脂からなる滑り層との摩擦となる結果、静摩擦係数を低減できる上に、静摩擦係数と動摩擦係数とを同等にできて、ガイドベーンの滑らかな回転を期待できる。
【0009】
水車発電機用の軸受の好ましい例では、水車ガイドベーンの回転軸を受容するための円孔を滑り内周面で規定した滑り層には、当該滑り内周面の円周方向に延びていると共に当該滑り内周面で円孔に開口した少なくとも一つの円環状の溝が形成されており、この円環状の溝は、一端で当該溝に開口する一方、他端で水車ケーシングの外面において外部に開口した通路を介して、当該外部に連通されるようになっている。
【0010】
斯かる円環状の溝と通路とを具備した水車発電機用の軸受によれば、水路に微小砂を含んだ泥水が供給された場合に、滑り層の内周面と回転軸の外周面との間に侵入した微小砂を円環状の溝で補足して、この補足した微小砂を通路を介して外部に排出できる排砂機能を具備し得る結果、微小砂による滑り層の内周面又は回転軸の外周面への摺動痕の発生を回避できて、長期に亘るガイドベーンの滑らかな回転を確保できる。
【0011】
円環状の溝は、一個でもよいが、軸方向に互いに離間して複数個の円環状の溝を滑り層に形成してもよく、この場合、複数個の円環状の溝を互いに連通させる相互連通通路を滑り層及び金属製裏金のうちの少なくとも一方に形成して、この相互連通通路を上記の通路を介して外部に連通するようにしてもよい。
【0012】
水車発電機の水車ガイドベーンの回転軸に回転源からの回転を伝達して当該回転軸を回転させる複数の回転伝達部材を互いに回転自在に直列に連結する連結軸を各回転伝達部材に設けられた軸受孔において回転自在に支持するための本発明の他の水車発電機用の軸受は、円筒状の内周面を有していると共に回転伝達部材の軸受孔を規定する内周面に外周面で嵌着するための剛性の金属製裏金と、この金属製裏金の円筒状の内周面に嵌着されていると共に連結軸を滑り回転自在に受容するための円筒状の滑り内周面を有した主として熱硬化性樹脂からなる滑り層とを具備している。
【0013】
本発明の他の水車発電機用の軸受によれば、上記の軸受と同様に、熱硬化性樹脂からなる滑り層が金属製裏金の円筒状の内周面に嵌着されているために、金属製の滑り軸受に比較して、軽量化を期待できて設置、交換等において容易に取扱うことができ、熱硬化性樹脂からなる滑り層の金属製裏金の内周面からの抜け出しを、冷やしバメをもって互いに嵌着されている金属製のハウジング(裏金)と金属製の滑り部材とのそれと比較して容易に行うことができる結果、金属製のハウジング(裏金)の再加工等の虞を回避できて容易に滑り層の交換を行い得、しかも、回転伝達部材の金属製の連結軸と熱硬化性樹脂からなる滑り層との摩擦となる結果、静摩擦係数を低減できる上に、静摩擦係数と動摩擦係数とを同等にできて、回転伝達部材を介するガイドベーンの滑らかな回転を期待できる。
【0014】
本発明の滑り層は、熱硬化性樹脂としてレゾール型フェノール樹脂を含んでいるとよく、斯かるレゾール型フェノール樹脂は、摩擦摩耗性に優れ、高い剛性を有して機械的強度に優れていると共に水中等の湿潤雰囲気でも極めて小さい膨潤量となり、乾燥摩擦条件下、グリース潤滑条件下及び水潤滑条件下のいずれの条件下でも好ましい滑り特性を発揮できる上に、滑り層がポリエステル繊維織布等の特定の補強繊維織布を含んでいる場合には、当該補強繊維織布との親和性に優れているために、補強繊維織布をしっかりと接合保持した滑り層を提供できる。
【0015】
好ましい例では、滑り層の滑り内周面は、熱硬化性樹脂からなる滑り面を含んでいる。
【0016】
滑り層は、熱硬化性樹脂に加えて、当該熱硬化性樹脂に分散された四フッ化エチレン樹脂(以下、「PTFE」という)を更に含んでいるとよく、斯かるPTFEは、滑り層の滑り内周面をより低摩擦性にし得る。
【0017】
PTFEを含んでいる滑り層の内周面は、好ましい例では、熱硬化性樹脂からなる滑り面と、この滑り面に混在されていると共にPTFEからなる滑り面とを含んでいる。
【0018】
滑り層の内周面でこのように熱硬化性樹脂からなる滑り面とPTFEからなる滑り面とが混在していると、滑り層の滑り内周面がより低摩擦になって、好ましい滑り性(摺動性)を得ることができる。
【0019】
滑り層は、更に、好ましくは補強繊維織布を含んでいてもよく、この場合、熱硬化性樹脂は、補強繊維織布に含浸されていると共に補強繊維織布を覆っているとよい。
【0020】
このような補強繊維織布を含んだ滑り層によれば、滑り層の形状維持性を向上できて、滑り層のクリープ変形等を好ましく防止できる。
【0021】
補強繊維織布は、合成樹脂製の繊維、例えば、ポリエステル樹脂繊維又はふっ素樹脂繊維が好ましく、ポリエステル樹脂繊維としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、PETという)繊維が特に好ましいが、ポリブチレンテレフタレート樹脂繊維、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂繊維、ポリエチレンナフタレート樹脂繊維又はポリブチレンナフタレート樹脂繊維であってもよく、ふっ素樹脂繊維としては、PTFE繊維が特に好ましいが、例えば、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニールエーテル共重合体樹脂繊維、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂繊維又はエチレン−ポリテトラフルオロエチレン共重合体樹脂繊維であってもよいが、本発明は、これらの例に限定されず、滑り層における補強基材としての補強機能を達成できて低摩擦性を有する上に、回転軸及び連結軸の表面との関連で当該回転軸及び連結軸の表面を損傷させる虞のないものであれば他の樹脂繊維、例えば、ポリアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等からなる繊維であってもよい。
【0022】
補強繊維織布を含んだ滑り層の一つの例は、補強繊維織布と熱硬化性樹脂とを含んでいる層を複数個積層した積層体からなっており、この場合、積層体の各層の熱硬化性樹脂は、補強繊維織布に含浸されていると共に補強繊維織布を覆っているとよく、斯かる例での滑り層の滑り内周面は、熱硬化性樹脂からなる滑り面を含んでいるとよい。
【0023】
積層体からなっている滑り層において、当該積層体の各層は、熱硬化性樹脂に加えて、当該熱硬化性樹脂に分散されたPTFEを含んでいてもよく、この場合、滑り層の滑り内周面は、熱硬化性樹脂からなる滑り面と、この滑り面に混在されていると共にPTFEからなる滑り面とを含んでいるとよい。
【0024】
レゾール型フェノール樹脂、PTFE及び補強繊維織布を含んだ滑り層は、レゾール型フェノール樹脂を35質量%から50質量%、PTFE10質量%から30質量%及び補強基材を35質量%から50質量%含んでいるとよい。
【0025】
以上の軸受において、金属製裏金は、アルミニウム、ステンレス、銅合金等の耐腐食性の金属からなっているとよく、また、当該金属製裏金は、円筒状の内周面を有している円筒部と、この円筒部に一体的に形成されている環状鍔部とを有していてもよいが、これに代えて、鍔部なしの円筒状の内周面を有した円筒部のみからなっていてもよく、これら鍔部付き軸受及び鍔部なし軸受は、使用箇所に適合するように適宜選択し得る。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、非膨潤性に加えて軽量化をも期待できて設置、交換等において取扱が容易であり、金属製の裏金の再加工等を必要としないで容易に滑り層の交換を行い得、しかも、ガイドベーンを滑らかに回転させることができる水車発電機用の軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、水車発電機の例の全体概略断面説明図である。
【図2】図2は、図1に示す例の一部拡大断面説明図である。
【図3】図3は、図1に示す例の一部拡大平面説明図である。
【図4】図4は、図1に示す例の一部拡大断面説明図である。
【図5】図5は、図1に示す例の水車ガイドベーンの回転軸の一方の軸受の図6に示すV−V線矢視断面説明図である。
【図6】図6は、図5に示す軸受の平面説明図である。
【図7】図7は、図1に示す例の水車ガイドベーンの回転軸の他方の軸受の断面説明図である。
【図8】図8は、図1に示す例の連結軸の軸受の例の断面説明図である。
【図9】図9は、図8に示す連結軸の軸受の例の斜視説明図である。
【図10】図10は、図5、図7及び図8に示す滑り層の製造方法の説明図である。
【図11】図11は、図5、図7及び図8に示す滑り層の製造方法の説明図である。
【図12】図12は、図5、図7及び図8に示す滑り層の製造方法の説明図である。
【図13】図13は、図1に示す例の水車ガイドベーンの回転軸の軸受の他の例の断面説明図である。
【図14】図14は、図13に示す例のXIV−XIV線矢視断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に本発明を、図に示す好ましい実施の形態の例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら例に何等限定されないのである。
【0029】
図1から図9において、本例の水車発電機用の軸受1は、水車発電機2の水車ケーシング3の水車ケーシング本体3a、水車上カバー3b及び水車下カバー3cによって規定された水路4に円周方向に等角度間隔をもって配された複数枚の水車ガイドベーン5の回転軸6a及び6bを当該水車ケーシング3の水車上カバー3b及び水車下カバー3cに設けられた軸受孔7a及び7bにおいて軸心8を中心としてR1及びR2方向に回転自在に支持するようになっている。
【0030】
本例の水車発電機2は、フランシス型であって、水路4を規定すると共に水車ケーシング本体3a、水車上カバー3b及び水車下カバー3cを有した水車ケーシング3と、水車上カバー3bに回転自在に支持された水車11と、水車ケーシング3外に配された発電機12と、水車11の回転を発電機12に伝達する回転軸13と、夫々が軸受1を介して水車ケーシング3の水車上カバー3b及び3cに軸心8を中心としてR1及びR2方向に回転自在に支持されている上記の複数枚の水車ガイドベーン5と、各水車ガイドベーン5に対応して水車ケーシング3の水車ケーシング本体3aに固定的に設けられた複数枚のステーベーン14と、各水車ガイドベーン5の回転軸6aに回転源15からのR3及びR4方向の回転を伝達して当該各回転軸6aをR1及びR2方向に回転させるように各水車ガイドベーン5に対応して設けられた回転伝達部材16、17及び18とを主として具備している。
【0031】
水車ケーシング3は、リベット、溶接、ボルト等により上下方向で互いに連結された水車上カバー3b及び水車下カバー3cと、水車上カバー3b及び水車下カバー3cの周囲にリベット、溶接、ボルト等により連結された水車ケーシング本体3aとを具備している。
【0032】
水路4は、水車ケーシング本体3aによって規定された円環(渦巻き)状の渦巻き水路21と、水車上カバー3b及び水車下カバー3cによって規定されていると共に水車11が配される軸方向水路22と、水車ケーシング本体3a、水車上カバー3b及び水車下カバー3cによって規定されていると共に水路21から軸方向水路22に水流を導く環状水路23とを有しており、水車11を回転させて回転軸13を介して発電機12を発電作動させるべく水路21に導入された水流は、環状水路23においてステーベーン14により案内されて水車ガイドベーン5によりその水量が調節されて当該環状水路23を介して軸方向水路22に導入されて軸方向水路22において水車11を回転させ、その後、軸方向水路22の下方から送出されるようになっている。
【0033】
水車ガイドベーン5は、環状水路23に配されるガイドベーン本体25と、ガイドベーン本体25の上端及び下端に一体的に設けられていると共に軸受1を介して水車ケーシング3の水車上カバー3b及び水車下カバー−3cにR1及びR2方向に回転自在に支持されている回転軸6a及び6bとを具備しており、回転軸6a及び6bの回転で環状水路23においてガイドベーン本体25が所定角に回転設定されることにより環状水路23の開度を決定して環状水路23を介する軸方向水路22に導入される水量を決定するようになっている。
【0034】
軸受1において、水車上カバー3bの軸受孔7aに配されて回転軸6aを回転自在に支持する軸受1aは、円筒状の内周面31aを有していると共に水車上カバー3bの軸受孔7aを規定する内周面32aに外周面33aで嵌着するための剛性の金属製裏金34aと、金属製裏金34aの円筒状の内周面31aに円筒状の外周面35aで嵌着されていると共に水車ガイドベーン5の一方の回転軸6aを軸心8を中心としてR1及びR2方向に滑り回転自在に受容するための円筒状の滑り内周面36aを有した主として熱硬化性樹脂からなる滑り層37aとを具備している。
【0035】
アルミニウム、ステンレス、銅合金等の耐腐食性の金属からなっている金属製裏金34aは、円筒状の外周面33a及び内周面31aを有した円筒部41aと、円筒部41aに一体的に形成されていると共に一対の貫通孔42aが軸対称に形成された環状鍔部43aと、外周面33a及び滑り内周面36aの夫々に形成された環状のシールリング溝44a及び45aと有している。
【0036】
円筒状の滑り層37aは、PET繊維又はPTFE繊維からなる補強繊維織布と、この補強繊維織布に含浸されていると共に補強繊維織布を覆っている熱硬化性樹脂としてのレゾール型フェノール樹脂と、斯かるレゾール型フェノール樹脂に分散されたPTFEとを含んでいる。
【0037】
レゾール型フェノール樹脂と、斯かるレゾール型フェノール樹脂に分散されたPTFEとを含んでいる円筒状の滑り層37aの露出した滑り内周面36aは、熱硬化性樹脂からなる滑り面と、この滑り面に混在されていると共に四フッ化エチレン樹脂からなる滑り面とを含んでいるが、滑り層37aにPTFEを含ませない場合には、円筒状の滑り層37aの露出した滑り内周面36aは、四フッ化エチレン樹脂からなる滑り面の存在しない熱硬化性樹脂からなる滑り面を含んだ面となる。
【0038】
環状のシールリング溝44aには、図示しない弾性Oリングが、シールリング溝45aには、弾性Yリング46aが夫々嵌着されている一方、滑り層37aの一方の端面47aには、当該端面47a及び内周面31aに接して弾性Yリング48aが嵌着されており、円筒部41a及び環状鍔部43aに形成された環状の段部溝49aには、弾性Yリング48aの内周面31aからの抜け出しを防止するための抜け出し防止リング50aが円筒部41aにねじ51aにより固定されて配されており、滑り層37aの他方の端面52aは、シールリング溝45aの一方の面を規定すると共に円筒部41aの内周面31aに一体的に形成された一方の突部53aに接触しており、突部53aの頂面54aと、シールリング溝45aの他方の面を規定して突部53aと協働してシールリング溝45aを規定すると共に円筒部41aの内周面31aに一体的に形成された他方の突部55aの頂面56aとは、滑り内周面36aの径よりも大きい径を有している。
【0039】
斯かる軸受1aは、水車上カバー3bの軸受孔7aに挿入されて、その外周面33aで水車上カバー3bの内周面32aに嵌着されて、貫通孔42aに挿入される図示しないボルトにより水車上カバー3bに固定される一方、その滑り内周面36aで規定する円孔61aに挿入される回転軸6aを軸心8を中心としてR1及びR2方向に回転自在に支持する。
【0040】
軸受1において、水車下カバー3cの軸受孔7bに配されて回転軸6bを回転自在に支持する軸受1bは、円筒状の内周面31bを有していると共に水車下カバー3cの軸受孔7bを規定する内周面32bに外周面33bで嵌着するための剛性の金属製裏金34bと、金属製裏金34bの円筒状の内周面31bに円筒状の外周面35bで嵌着されていると共に水車ガイドベーン5の他方の回転軸6bを軸心8を中心としてR1及びR2方向に滑り回転自在に受容するための円筒状の滑り内周面36bを有した主として熱硬化性樹脂からなる滑り層37bとを具備している。
【0041】
金属製裏金34aと同様に、アルミニウム、ステンレス、銅合金等の耐腐食性の金属からなっている金属製裏金34bは、円筒状の外周面33b及び内周面31bを有した円筒部41bと、外周面33bに形成された環状のシールリング溝44bと有して、鍔なしとして形成されている。
【0042】
円筒状の滑り層37bは、円筒状の滑り層37aと同様に形成されており、補強繊維織布と、この補強繊維織布に含浸されていると共に補強繊維織布を覆っている熱硬化性樹脂としてのレゾール型フェノール樹脂と、斯かるレゾール型フェノール樹脂に分散されたPTFEとを含んでおり、補強繊維織布は、PET繊維又はPTFE繊維からなり、レゾール型フェノール樹脂と、斯かるレゾール型フェノール樹脂に分散されたPTFEとを含んでいる円筒状の滑り層37bの露出した滑り内周面36bは、熱硬化性樹脂からなる滑り面と、この滑り面に混在されていると共に四フッ化エチレン樹脂からなる滑り面とを含んでいるが、円筒状の滑り層37aと同様に、滑り層37bにPTFEを含ませない場合には、円筒状の滑り層37bの露出した滑り内周面36bは、四フッ化エチレン樹脂からなる滑り面の存在しない熱硬化性樹脂からなる滑り面を含んだ面となる。
【0043】
環状のシールリング溝44bには、図示しない弾性Oリングが嵌着されている一方、円筒部41bの内周面31bの一方の端部に一体的に形成された突部53bと滑り層37bの一方の端面47bとの間には、これら突部53bと端面47bとに接触して弾性Yリング48bが嵌着されており、円筒部41bの内周面31bの他方の端部には、環状のスラスト軸受片57bが挿入されており、突部53bの頂面54bは、滑り内周面36bの径よりも大きい径を有している。
【0044】
斯かる軸受1bは、水車下カバー3cの軸受孔7bに挿入されて、その外周面33bで水車下カバー3cの内周面32bに嵌着されて固定される一方、その滑り内周面36bで規定する円孔61bに挿入される回転軸6bを軸心8を中心としてR1及びR2方向に回転自在に支持しており、軸受1b内に配されている環状のスラスト軸受片57bは、その中央部に排水用の貫通孔58bを有すると共に回転軸6bの端面59bに接触して回転軸6bのスラスト荷重を受けるようになっており、回転軸6bの端面59bとスラスト軸受片57bとの間又はスラスト軸受片57bと水車下カバー3cとの間に、適宜なシムを介在させることにより、スラスト軸受片57bで受ける回転軸6bの軸方向のスラスト荷重を調整することができる。
【0045】
各水車ガイドベーン5は、以上の対応の軸受1a及び1bにより、軸心8を中心としてR1及びR2方向に回転自在に支持される。
【0046】
各水車ガイドベーン5の回転軸6aを、対応の二個の回転伝達部材16及び17を介してR1及びR2方向に回転させる回転源15は、図示しない油圧シリンダのピストンロッド71に軸72を介して揺動自在に連結された連結部材73と、水車ケーシング3の水車上カバー3bに滑り案内機構74を介して回転軸13を中心としてR3及びR4方向に回転自在に支持されていると共に連結部材73が軸75及びブラケット76を介して揺動自在に連結された円筒部材77とを具備しており、油圧シリンダのピストンロッド71のA方向の移動で、円筒部材77を回転軸13を中心としてR3方向に回転させる一方、油圧シリンダのピストンロッド71のB方向の移動で、円筒部材77を回転軸13を中心としてR4方向に回転させるようになっている。
【0047】
回転伝達部材16は、軸受孔81を有すると共に円筒部材77の内周面82に一体的に形成された環状の突起からなり、回転伝達部材17は、一端部83及び他端部84の夫々に軸受孔85及び86を有する板状の腕部材からなり、回転伝達部材18は、一端部87及び他端部88に夫々に軸受孔89及び90を有する板状の腕部材からなり、回転伝達部材18の軸受孔90に回転軸6aの上部が嵌入されて当該回転軸6aの上部が他端部88に固着されており、回転軸6aは、回転伝達部材18の軸心8を中心とするR1及びR2方向の回転と共に回転するようになっており、軸受孔81において回転伝達部材16に一端部91が軸受92を介して軸心93を中心としてR5方向に回転自在に支持された連結軸94は、その他端部95が軸受孔85に嵌合されて回転伝達部材17に固着されて、回転伝達部材16と回転伝達部材17とを互いにR5方向に回転自在に直列に連結しており、軸受孔89において回転伝達部材18に一端部96が軸受97を介して軸心98を中心としてR6方向に回転自在に支持された連結軸99は、その他端部100が軸受孔86に嵌合されて回転伝達部材17に固着されて、回転伝達部材17と回転伝達部材18とを互いにR6方向に回転自在に直列に連結している。
【0048】
各水車ガイドベーン5は、油圧シリンダのピストンロッド71のA方向の移動による円筒部材77の回転軸13を中心としたR3方向の回転で、回転伝達部材17のR5方向の回転と回転伝達部材18のR6方向の回転との回転による回転軸6aのR1方向の回転を介してR1方向に回転される一方、油圧シリンダのピストンロッド71のB方向の移動による円筒部材77の軸心8を中心としたR4方向の回転で、回転伝達部材17のR5方向の回転と回転伝達部材18のR6方向の回転との回転による回転軸6aのR2方向の回転を介してR2方向に回転されるようになっており、而して、油圧シリンダのピストンロッド71のA方向又はB方向の適宜の移動量で、各ガイドベーン本体25の環状水路23に対する開度が決定された値に設定され、各ガイドベーン本体25による環状水路23に対する開度の大小は、水車発電機2による発電量が一定となるように、渦巻き水路21の流量等によって決定される。
【0049】
水車発電機2の水車ガイドベーン5の回転軸6aに回転源15からのR3方向及びR4方向の回転を伝達して当該回転軸6aをR1及びR2方向に回転させる回転伝達部材16、17及び18を互いに回転自在に直列に連結する連結軸94及び99を回転伝達部材16及び18の夫々に設けられた軸受孔81及び89においてR5方向及びR6方向の夫々に回転自在に支持するための水車発電機用の軸受92及び97の夫々は、円筒状の内周面111を有していると共に回転伝達部材16及び18の軸受孔81及び89の夫々を規定する内周面112及び113の夫々に外周面114で嵌着するための剛性の金属製裏金115と、金属製裏金115の円筒状の内周面111の夫々に嵌着されていると共に連結軸94及び99の夫々をR5及びR6方向の夫々に滑り回転自在に受容するための円筒状の滑り内周面116を有した主として熱硬化性樹脂からなる滑り層117とを具備している。
【0050】
連結軸94用の軸受92と連結軸99用の軸受97とは、互いに同様に形成されているので、以下、軸受92について説明すると、軸受92において、軸受1aにおける金属製裏金34aと同様にアルミニウム、ステンレス、銅合金等の耐腐食性の金属からなっている金属製裏金115は、円筒状の外周面114及び内周面111を有した円筒部121と、円筒部121に一体的に形成されている環状鍔部122とを具備しており、滑り層117は、軸受1aにおける滑り層37aと同様に形成されており、補強繊維織布と、この補強繊維織布に含浸されていると共に補強繊維織布を覆っている熱硬化性樹脂としてのレゾール型フェノール樹脂と、斯かるレゾール型フェノール樹脂に分散されたPTFEとを含んでおり、補強繊維織布は、PET繊維又はPTFE繊維からなり、レゾール型フェノール樹脂と、斯かるレゾール型フェノール樹脂に分散されたPTFEとを含んでいる円筒状の滑り層117の露出した内周面116は、熱硬化性樹脂からなる滑り面と、この滑り面に混在されていると共に四フッ化エチレン樹脂からなる滑り面とを含んでいるが、軸受1aにおける滑り層37aと同様に、滑り層117にPTFEを含ませない場合には、円筒状の滑り層117の露出した内周面116は、四フッ化エチレン樹脂からなる滑り面の存在しない熱硬化性樹脂からなる滑り面を含んだ面となる。
【0051】
斯かる軸受92は、その円筒部121が回転伝達部材16の軸受孔81に挿入されて、その外周面114で回転伝達部材16の内周面112に嵌着されると共にその環状鍔部122が回転伝達部材17の一端部83と回転伝達部材16との間に配されて回転伝達部材16に固定される一方、その滑り層117の内周面116で規定する円孔125に挿入される連結軸94を軸心93を中心としてR5方向に回転自在に支持する。
【0052】
軸受97も同様に、その円筒部121が回転伝達部材18の軸受孔89に挿入されて、その外周面114で回転伝達部材18の内周面113に嵌着されると共にその環状鍔部122が回転伝達部材17の他端部84と回転伝達部材18との間に配されて回転伝達部材18の一端部87に固定される一方、その滑り層117の内周面116で規定する円孔125に挿入される連結軸99を軸心98を中心としてR6方向に回転自在に支持する。
【0053】
以上の軸受1a、1b、92及び97のいずれも、熱硬化性樹脂からなる滑り層37a、37b及び117の夫々が金属製裏金34a、34b及び115の円筒状の内周面31a、31b及び111の夫々に嵌着されているために、金属製の滑り軸受に比較して、軽量化を期待できて設置、交換等において容易に取扱うことができ、熱硬化性樹脂からなる滑り層37a,37b及び117の夫々の金属製裏金の内周面31a、31b及び111の夫々からの抜け出しを、冷やしバメをもって互いに嵌着されている金属製のハウジング(裏金)と金属製の滑り部材とのそれと比較して容易に行うことができる結果、金属製の裏金34a、34b及び115の再加工等の虞を回避できて容易に滑り層37a、37b、及び117の交換を行い得、しかも、軸受1a及び1bでは、ガイドベーン5の金属製の回転軸6a及び6bの夫々と熱硬化性樹脂からなる滑り層37a、37bの夫々との摩擦となる結果、静摩擦係数を低減できる上に、静摩擦係数と動摩擦係数とを同等にできて、ガイドベーン5の滑らかな回転を期待できる一方、軸受92及び97では、回転伝達部材16、17及び18を介するガイドベーン5の滑らかな回転を期待できる。
【0054】
滑り層37a、37b及び117の夫々を作製する場合には、PET繊維又はPTFE繊維からなる補強繊維織布を準備し、次に、希釈したレゾール型フェノール樹脂ワニスを作成し、更に、この作成したレゾール型フェノール樹脂ワニスに、低分子量PTFE粉末を所定量配合して分散含有させ、レゾール型フェノール樹脂ワニスと低分子量PTFE粉末との混合液を作成する。斯かる準備したレゾール型フェノール樹脂ワニスを、準備した補強繊維織布に、当該ワニスを収容した容器内での浸漬により又はローラ塗り、スプレー塗り、刷毛塗り等により塗工し、このワニスを塗工した補強繊維織布を一対のローラに間に通して、補強繊維織布に塗工したワニスを補強繊維織布の隙間に隙間なしに十分に充填し、その後、ワニスを塗工した補強繊維織布を乾燥炉に配置してワニスを乾燥して、乾燥後、適宜の手段により目的の大きさをもった方形状に切断することにより、補強繊維織布と、補強繊維織布の含浸されていると共に補強繊維織布を覆っている熱硬化性樹脂とてしてのレゾール型フェノール樹脂と、斯かるレゾール型フェノール樹脂に分散された低分子量PTFEからなる図10に示す平板状の軸受素材151を形成し、こうして形成した軸受素材151を145℃の温度で加熱しつつ7Mpaの圧力を加えつつ所定の径をもったローラに巻きつけて円筒状に捲回することにより単層の滑り層37a、37b及び117を得ることができる。
【0055】
斯かる平板状の軸受素材151から補強繊維織布と熱硬化性樹脂とを含んでいる層を複数個積層した積層体からなる滑り層37a、37b及び117の夫々を作製する場合には、図11に示すように複数枚の平板状の軸受素材151を準備し、この複数枚の平板状の軸受素材151を重ね合わせて配置し、この重ね合わせた複数枚の平板状の軸受素材151からなる積層体152を、例えば145℃の温度で加熱しつつ7Mpaの圧力を加えて成形し、この平板状の積層体152をローラに複数回巻きつけて、ローラに捲回された積層体を、上記温度で加熱しつつ押圧ローラにより上記圧力を加えて成形すると、図12に示す積層体からなる滑り層37a、37b及び117の夫々を得ることができる。
【0056】
軸受1a及び1bの夫々では、夫々平坦な円筒状の滑り内周面36a及び36bを有した滑り層37a及び37bとしたが、例えば、図13及び14に示す軸受1aのように、滑り層37aに、滑り内周面36aの円周方向に延びていると共に当該滑り内周面36aで円孔61aに開口した少なくとも一つ、本例では、三つの円環状の溝161を軸方向において離間して形成して、一端では当該溝161に開口する一方、他端では水車ケーシング3の外面162において開口した通路163を介して斯かる溝161を水車ケーシング3の外部に連通するようにしてもよく、この場合、通路163は、滑り層37aの円筒状の外周面35aに円周方向において離間して形成された四つの溝164及び四つの溝164を溝161に連通させるべく、一端では溝161に開口し、他端では溝164に開口して各溝161に対して四つずつ滑り層37aに形成された貫通孔165からなる相互連通通路と、一端では四つの溝164に開口して、他端では円筒部41aの外周面33aで開口して円筒部41aに形成された四つの貫通孔166と、一端では貫通孔166に開口して、他端では水車ケーシング3の水車上カバー3bの外面162で開口して水車ケーシング3の水車上カバー3bに形成された貫通孔167とからなっていてもよい。
【0057】
斯かる円環状の溝161と通路163とを具備した水車発電機用の軸受1aによれば、水路23に微小砂を含んだ泥水が供給された場合に、滑り層37aの滑り内周面36aと回転軸6aの外周面171との間に侵入した微小砂を円環状の溝161で補足して、この補足した微小砂を通路163を介して水車ケーシング3の外部に排出できる排砂機能を具備し得る結果、微小砂による滑り層37aの滑り内周面36a又は回転軸6aの外周面171への摺動痕の発生を回避できて、長期に亘るガイドベーン5の滑らかな回転を確保できる。
【0058】
水車発電機2の保守等において、水車ケーシング3の外部から通路163を介して滑り内周面36aと外周面171との間の隙間に圧力浄水(清水)を注入して、当該隙間を清掃するようにしてもよく、斯かる通路163は、排砂機能に加えて、清掃機能にも使用し得て好ましい。
【0059】
軸受1bにも、上記と同様の排砂機能を設けてもよく、また図13に示すように、シールリング溝45a、弾性Yリング46a、弾性Yリング48a、段部溝49a、抜け出し防止リング50a、突部53a及び突部55aを設けない一方、円筒部41aの軸方向の一方の端面172に弾性Uリング装着用の環状のシールリング溝173を設けて軸受1aを形成してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 軸受
2 水車発電機
3 水車ケーシング
3a 水車ケーシング本体
3b 水車上カバー
3c 水車下カバー
4 水路
5 水車ガイドベーン
6a、6b 回転軸
7a、7b 軸受孔
8 軸心
31a、31b 内周面
32a、32b 内周面
33a、33b、35a、35b外周面
34a、34b 金属製裏金
36a、36b 滑り内周面
37a、37b 滑り層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水車発電機の水車ケーシングによって規定された水路に配される水車ガイドベーンの回転軸を当該水車ケーシングに設けられた軸受孔において回転自在に支持するための水車発電機用の軸受であって、円筒状の内周面を有していると共に水車ケーシングの軸受孔を規定する内周面に外周面で嵌着するための剛性の金属製裏金と、この金属製裏金の円筒状の内周面に嵌着されていると共に水車ガイドベーンの回転軸を滑り回転自在に受容するための円筒状の滑り内周面を有した主として熱硬化性樹脂からなる滑り層とを具備した水車発電機用の軸受。
【請求項2】
水車ガイドベーンの回転軸を受容するための円孔を滑り内周面で規定した滑り層には、当該滑り内周面の円周方向に延びていると共に当該滑り内周面で円孔に開口した少なくとも一つの円環状の溝が形成されており、この円環状の溝は、一端で当該溝に開口する一方、他端で水車ケーシングの外面において外部に開口した通路を介して、当該外部に連通されるようになっている請求項1に記載の軸受。
【請求項3】
水車発電機の水車ガイドベーンの回転軸に回転源からの回転を伝達して当該回転軸を回転させる複数の回転伝達部材を互いに回転自在に直列に連結する連結軸を各回転伝達部材に設けられた軸受孔において回転自在に支持するための水車発電機用の軸受であって、円筒状の内周面を有していると共に回転伝達部材の軸受孔を規定する内周面に外周面で嵌着するための剛性の金属製裏金と、この金属製裏金の円筒状の内周面に嵌着されていると共に連結軸を滑り回転自在に受容するための円筒状の滑り内周面を有した主として熱硬化性樹脂からなる滑り層とを具備した水車発電機用の軸受。
【請求項4】
滑り層は、熱硬化性樹脂としてレゾール型フェノール樹脂を含んでいる請求項1から3のいずれか一項に記載の軸受。
【請求項5】
滑り層の滑り内周面は、熱硬化性樹脂からなる滑り面を含んでいる請求項1から4のいずれか一項に記載の軸受。
【請求項6】
滑り層は、更に、熱硬化性樹脂に分散された四フッ化エチレン樹脂を含んでいる請求項1から5のいずれか一項に記載の軸受。
【請求項7】
滑り層の滑り内周面は、熱硬化性樹脂からなる滑り面と、この滑り面に混在されていると共に四フッ化エチレン樹脂からなる滑り面とを含んでいる請求項6に記載の軸受。
【請求項8】
滑り層は、更に、補強繊維織布を含んでおり、熱硬化性樹脂は、補強繊維織布に含浸されていると共に補強繊維織布を覆っている請求項1から7のいずれか一項に記載の軸受。
【請求項9】
滑り層は、補強繊維織布と熱硬化性樹脂とを含んでいる層を複数個積層した積層体からなり、積層体の各層の熱硬化性樹脂は、補強繊維織布に含浸されていると共に補強繊維織布を覆っている請求項1から4のいずれか一項に記載の軸受。
【請求項10】
滑り層の滑り内周面は、熱硬化性樹脂からなる滑り面を含んでいる請求項9に記載の軸受。
【請求項11】
積層体の各層は、熱硬化性樹脂に分散された四フッ化エチレン樹脂を含んでいる請求項9に記載の軸受。
【請求項12】
滑り層の滑り内周面は、熱硬化性樹脂からなる滑り面と、この滑り面に混在されていると共に四フッ化エチレン樹脂からなる滑り面とを含んでいる請求項11に記載の軸受。
【請求項13】
金属製裏金は、アルミニウム、ステンレス、銅合金等の耐腐食性の金属からなっている請求項1から12のいずれか一項に記載の軸受。
【請求項14】
金属製裏金は、円筒状の内周面を有した円筒部と、この円筒部に一体的に形成されている環状鍔部とを有している請求項1から13のいずれか一項に記載の軸受。
【請求項1】
水車発電機の水車ケーシングによって規定された水路に配される水車ガイドベーンの回転軸を当該水車ケーシングに設けられた軸受孔において回転自在に支持するための水車発電機用の軸受であって、円筒状の内周面を有していると共に水車ケーシングの軸受孔を規定する内周面に外周面で嵌着するための剛性の金属製裏金と、この金属製裏金の円筒状の内周面に嵌着されていると共に水車ガイドベーンの回転軸を滑り回転自在に受容するための円筒状の滑り内周面を有した主として熱硬化性樹脂からなる滑り層とを具備した水車発電機用の軸受。
【請求項2】
水車ガイドベーンの回転軸を受容するための円孔を滑り内周面で規定した滑り層には、当該滑り内周面の円周方向に延びていると共に当該滑り内周面で円孔に開口した少なくとも一つの円環状の溝が形成されており、この円環状の溝は、一端で当該溝に開口する一方、他端で水車ケーシングの外面において外部に開口した通路を介して、当該外部に連通されるようになっている請求項1に記載の軸受。
【請求項3】
水車発電機の水車ガイドベーンの回転軸に回転源からの回転を伝達して当該回転軸を回転させる複数の回転伝達部材を互いに回転自在に直列に連結する連結軸を各回転伝達部材に設けられた軸受孔において回転自在に支持するための水車発電機用の軸受であって、円筒状の内周面を有していると共に回転伝達部材の軸受孔を規定する内周面に外周面で嵌着するための剛性の金属製裏金と、この金属製裏金の円筒状の内周面に嵌着されていると共に連結軸を滑り回転自在に受容するための円筒状の滑り内周面を有した主として熱硬化性樹脂からなる滑り層とを具備した水車発電機用の軸受。
【請求項4】
滑り層は、熱硬化性樹脂としてレゾール型フェノール樹脂を含んでいる請求項1から3のいずれか一項に記載の軸受。
【請求項5】
滑り層の滑り内周面は、熱硬化性樹脂からなる滑り面を含んでいる請求項1から4のいずれか一項に記載の軸受。
【請求項6】
滑り層は、更に、熱硬化性樹脂に分散された四フッ化エチレン樹脂を含んでいる請求項1から5のいずれか一項に記載の軸受。
【請求項7】
滑り層の滑り内周面は、熱硬化性樹脂からなる滑り面と、この滑り面に混在されていると共に四フッ化エチレン樹脂からなる滑り面とを含んでいる請求項6に記載の軸受。
【請求項8】
滑り層は、更に、補強繊維織布を含んでおり、熱硬化性樹脂は、補強繊維織布に含浸されていると共に補強繊維織布を覆っている請求項1から7のいずれか一項に記載の軸受。
【請求項9】
滑り層は、補強繊維織布と熱硬化性樹脂とを含んでいる層を複数個積層した積層体からなり、積層体の各層の熱硬化性樹脂は、補強繊維織布に含浸されていると共に補強繊維織布を覆っている請求項1から4のいずれか一項に記載の軸受。
【請求項10】
滑り層の滑り内周面は、熱硬化性樹脂からなる滑り面を含んでいる請求項9に記載の軸受。
【請求項11】
積層体の各層は、熱硬化性樹脂に分散された四フッ化エチレン樹脂を含んでいる請求項9に記載の軸受。
【請求項12】
滑り層の滑り内周面は、熱硬化性樹脂からなる滑り面と、この滑り面に混在されていると共に四フッ化エチレン樹脂からなる滑り面とを含んでいる請求項11に記載の軸受。
【請求項13】
金属製裏金は、アルミニウム、ステンレス、銅合金等の耐腐食性の金属からなっている請求項1から12のいずれか一項に記載の軸受。
【請求項14】
金属製裏金は、円筒状の内周面を有した円筒部と、この円筒部に一体的に形成されている環状鍔部とを有している請求項1から13のいずれか一項に記載の軸受。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−7343(P2013−7343A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141251(P2011−141251)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000180368)四国電力株式会社 (95)
【出願人】(511238158)日立三菱水力株式会社 (14)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000180368)四国電力株式会社 (95)
【出願人】(511238158)日立三菱水力株式会社 (14)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】
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