説明

水透過性保護材料

ポリビニルアルコールまたはそれらの前駆体と組み合わせた一つ以上の第四級アミン組成物を含有する水透過性保護材料が提供される。アミンはポリマーまたは非ポリマーの第四級アミンのいずれでもよく、好ましい例はポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)[p(DADMAC)]である。組成物が液体の場合には、保護されるべき下地上に層として堆積させてもよく、また、乾燥した組成物から押し出しまたは成形によって保護物品を形成してもよい。下地は繊維素材であってもよく、特に衣類のアイテムであってもよい。化学兵器および生物兵器、有機材料、エアロゾルおよび他の有害な液体または気体物質などの、有害物質または有毒物質に対して保護される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第四級アミン、特に高分子第四級アミン,およびポリビニルアルコールの組成物を含有する水透過性保護材料に関する。「保護材料」は、有毒または有害な物質等の望ましくない物質の通過に対してバリアを与える材料を意味する。
【背景技術】
【0002】
保護繊維および衣類は有害材料に対する保護を提供するために救急サービスおよび軍隊によって世界的に広く使用されている。有害薬剤は一般に有機化合物であって、大きな容器に保持されるバルク化学物質から化学兵器または生物兵器まで様々なものであってもよい。
該保護繊維および衣類には、不透過性、空気透過性および水蒸気透過性の大きくわけて3つのタイプがある。不透過性防護服は様々なゴムまたはネオプレンから通常は製造され、一般にかなり重く、かさばっている。不透過性防護服はとても良好な保護を提供するが、空気および水蒸気透過性が欠如しているので着用者は運動することが特に要求される場合にはひどい物理的ストレスで苦しむことになる。これらの材料には柔軟性がない傾向もあるので、自由な動作が重要である場合には着用に不便である。このようなわけで、これらのタイプの材料を水蒸気透過性または空気透過性のどちらかを少なくともある程度示す代替タイプの保護材料に置き換えるために相当量の努力が払われてきた。
空気透過性防護服は高い水蒸気透過性を有するが、その空気透過性はある物質からの保護を低下させることを意味する。一方、水蒸気透過性防護服は、保護材料としての性能は低下するが、その性能は不透過性材料と空気透過性材料との間となる。このように、水蒸気透過性防護服は不透過性衣類よりも物理的負担が軽く、全部ではないがほとんどの薬剤に対して保護を提供する。軍隊によって現在使用されているほとんどの防護服は、化学兵器および生物兵器などの有毒な材料に対する吸収剤としての機能を果たす何らかの形の炭素を装着したさまざまなタイプの空気透過性繊維から製造される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
出願人が先に出願した同時係属中の特許出願(国際公開第03/062321号)はポリエチレンイミン(PEI)および、有害および/または有毒物質に対して保護するためのポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコール−co−エチレンの一方または両方を含有するポリマー組成物の使用を開示し、クレームする。該組成物は実質的に水透過性を示し、同時に従来の水透過性材料よりも保護レベルがより高い。
【0004】
驚いたことに、ポリビニルアルコール(PVOH)と組み合わせた第四級アミンのポリマー組成物を含む保護材料は初期のシステムにおいて立証されたいくつかまたは全ての問題を克服することが見出された。特に該組成物は、気体化学兵器および液体化学兵器などの有害薬剤に対して予想外の良好なバリア特性を持つ比較的軽量であって柔軟な保護材料を提供でき、良好な水透過性特性をも示し、したがって着用者にとって比較的着心地がよい。
これらの高分子第四級アミン−PVOH組成物は、PEIが大気中で二酸化炭素と反応するのに対して、高分子アミンは大気中で二酸化炭素と反応しない、または少なくともPEIと同程度までは反応しない点で、PEI−PVOH組成物に対して有利であることを示した。
該組成物の水蒸気透過性はポリビニルアルコール(PVOH)が単独の場合よりも高く、本発明による保護材料は多くの興味ある薬剤に対して高い保護レベルを与えることが見出された。特に本発明による材料は有機剤に対する保護を供与するために使用することができる。該保護はディーゼル油およびガソリン等の有機剤の漏出物を取り扱うためには有用である。気体および/または液体状態の有害薬剤およびエアロゾルに対しても保護を供与することができる。化学兵器および/または生物兵器に対しても本発明の材料によって好適に保護が供与される。
【0005】
本発明によれば、有害物質および/または有毒物質に対して好適な保護を与える水蒸気透過性保護材料は、第四級アミンおよびポリビニルアルコールの混合物を含有する組成物を含む。
【発明を実施するための形態】
【0006】
第四級アミンは高分子第四級アミンまたは非高分子第四級アミンであってもよい。好ましい材料としては、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)[p(DADMAC)]が挙げられるが、他の該材料としては、アクリルアミドとのコポリマーであるポリ(アクリルアミド−co−ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(アクリルアミド2−メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムブロミド)、ポリ[ビス(2−クロロエチル)エーテル−alt−1,3−ビス[3−(ジメチルアミノ)プロピル]尿素]、四級化物、ポリ(ジアリルジエチルアンモニウムブロミド)およびポリ(4−ビニルピリジン)、メチルクロリド四級化物を含有する。興味ある非高分子第四級アミンは、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムサルフェートおよびテトラエチルアンモニウムクロリドを含有する。
【0007】
ポリビニルアルコール(PVOH)は、パッケージング産業では接着促進剤および酸素バリアとして使用される用途の広い水溶性のポリマーである。本発明の保護材料が使用される場合には、ポリビニルアルコールはどのような形態であってもよく、すなわち、それから形成される組成物がフィルムを形成することが可能な組成物でさえあればどのような加水分解度であってもよい。ポリビニルアルコールそれ自身ばかりではなく、本発明の組成物に使用されるのに好適なポリビニルアルコールの他の形態には、フィルムを形成することが可能なPVOHのコポリマー、たとえばポリビニルアルコールco−エチレンおよびポリ(ビニルアルコール−co−酢酸ビニル−co−イタコン酸)と共にポリビニルアセタートなどのPVOHの前駆体を含有する。
本発明の保護材料中の第四級アミンおよびポリビニルアルコールの全質量はポリマー組成物の質量の10%から95%の範囲であってもよく、好ましくは60%から95%の範囲であってもよい。該ポリマー含有量は有害物質および/または有毒物質に対して良好な保護を与える。
【0008】
ポリマー組成物の残余は水を含有していてもよい。水の使用によってポリマー組成物を取り入れたどの材料も剛性が低下し、柔軟性が増し、さらに、水はポリマー組成物を調合するための安価な無毒性溶媒である。しかしながら、非水性溶媒の使用は、ある環境において、および、特定の用途に対しては有利である。たとえば、PVOHのある形態では水単独では溶解できないので、共溶媒としてもう一つの溶媒(例えばイソプロピルアルコール)の使用が必要になる。
あるいは組成物は乾燥または実質的に乾燥した組成物であってもよく、この場合には液体組成物からすぐに作製できないレスピレーターなどの組成物を含むアイテムでは、成形、押し出しまたはキャスティングなどの形成プロセスを代わりに使用して容易に得ることができる。
保護材料組成物はさらに当業者によって決めらるように組成物の溶解度を変えることが可能である架橋剤を含有してもよい。
【0009】
保護材料組成物には、当業者が製造条件に適合する材料特性に変更することができるように、さらに湿潤剤、界面活性剤または他の添加剤を含有してもよい。たとえば、他のポリマーなどの添加剤は、ブレンドの親水性を増し、または燃焼し難くするために使用されてもよい。従来の難燃材と同様に、アガロース、キトサン、ゼラチン(これらはゲル化剤であり、普通は99%までの水分またはそれを超える水分を含むヒドロゲルを形成する)などの高含水量のフィルムを形成する親水性ポリマーの添加によって、燃焼し難くし、組成物の水蒸気透過性を維持(あるいはさらに増加させる)するように使用されてもよい。同一目的のための他の添加剤はポリ(ビニルスルホン酸)またはその塩およびポリエチレングリコールを含有する。
【0010】
化学兵器の分解を支援するための金属塩を、本発明の保護材料組成物に添加してもよい。該塩はタングステンまたはモリブデンベースのポリオキソメタラート、金属酸化物、特にナノ粒子形状の、例えばTiO2、MgO、SiO2、Al23、CaO、同様にクロメートおよびバナジウム、銅およびルテニウムの塩も含有する。組成物に抗菌特性を与えまたは既存の抗菌特性を高めるのに好適な材料をも本発明の組成物に添加してもよく、そのような例には銀塩および銅塩、トリクロサンおよびN−クロリミドが含まれる。
【0011】
保護材料としての使用では、組成物は好ましくは層状形態である。これによって組成物を、有害薬剤に対して保護することが望まれるすべての物体の表面にすぐに適用できる。組成物が層状形態で使用される場合には、1μmから1000μmの間の層厚が都合がよい。所望の厚さは組成物の正確な使用状態に依存する。たとえば、繊維下地への用途では、10μmから100μmの間の層厚、好ましくは20μmから60μmの間の層厚が望ましいことが見出された。この厚さは繊維が重すぎずかつ硬すぎず、良好な保護を与える。他の用途では層の厚さは少なくとも20μmの厚さが望ましい場合がある。コートされた繊維は衣類のアイテムであってもよく、有害薬剤に対する透過性が低いが水蒸気に対して透過性を明らかに示す。
したがって、さらに他の実施態様によれば、本発明は、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)およびポリビニルアルコールなどの第四級アミンの組成物の層でコートされる繊維素材を提供する。繊維素材は防護服のアイテムを構成してもよい。
(例えば。繊維素材の)表面に層状に適用されると、保護材料組成物は水蒸気に対して実質的な透過性を好適に示し、好ましくは少なくとも400g/m2/日、一層好ましくは少なくとも600g/m2/日および最も好ましくは少なくとも800g/m2/日で水蒸気に対する透過性を示す。
【0012】
さらに他の実施態様によれば、本発明は、有害薬剤に対して実質的な透水性保護を提供するための方法を提供し、該方法には第四級アミンおよびポリビニルアルコールを含有する組成物を保護されるべき物体にコーティングすることを含む。
組成物の第四級アミン成分は好ましくは高分子第四級アミンであり、特にポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)(p(DADMAC))は好適な材料である。
物体には、たとえば、押し出しまたは熱成形材料またはテントまたは他の一時的な構造などである、繊維の表面または他のカバー形状が含まれる。
好ましくは、組成物を直接キャスティングする方法によって、保護されることが望まれる表面に保護材料組成物が適用されるが、その時の事情によっては、コーティング分野において周知の他の方法である、組成物を表面に塗装または吹きつけする等の方法を代わりに使用してもよい。たとえば、カバーされるべき領域が広い場合またはカバーされるべき全表面に材料をキャストすることが困難または時間がかかるいびつな形の場合、代わりの方法として組成物上への吹きつけまたは塗装を適用することができる。あるいは、保護されるべき物体または表面に対する次の用途に対して一枚の組成物を提供するために、その次にはぎ取ることができる一枚のガラスなどの一時的な下地上へ組成物をキャストすることができる。本発明の用途に有用な、いかなる表面にもコーティングを適用することができるさまざまな技法を、当業者であれば十分に認識している。
【0013】
乾燥または実質的に乾燥した組成物を使用する代わりに、例えばレスピレーター用のパーツなどの本発明の保護材料を含有する品物を得るために、成形、押し出しまたはキャスティングなどの形成プロセスが使用されてもよい。
本発明の保護材料組成物は、犠牲コーティング形態で保護されるべき物体の表面に適用されてもよい。犠牲コーティングはコーティングが形成されている表面上から容易に除去されてもよいものである。あるいは、犠牲コーティングは、下により多くの犠牲コーティングを生成するために容易に除去されてもよい、コーティングの露出した表面の一部分であってもよい。このようにして、有害薬剤で汚染されるコーティング(あるいはそれらの部分)は必要に応じて容易に除去することができる。
【0014】
犠牲コーティングの代わりに、保護材料組成物の層は、組成物の層を保護するように選択される材料の少なくとも一つの層でカバーされていてもよい。これは、、例えば、組成物が、例えば、大気中に一般的に存在する物質によって攻撃にさらされる場合に有用である。本発明のさらなる実施形態では水蒸気透過性保護材料の層は、保護材料の劣化を防ぐように選択される二つ以上の他の層の間に置かれている。外部に対する保護材料の該層にはその外部に対する保護材料を介して水蒸気が移行できるように親水性材料または細孔性材料が含有されるべきである。同時にこれらの外側の層はPVOH−p(DADMAC)が液体の水によって溶解されることを防止するであろう。
したがってさらに本発明の他の態様では、有害および/または有毒物質に対する保護を提供するために好適なラミネートが提供され、ラミネートは、水蒸気に対して実質的に透過性を有する第四級アミンおよびポリビニルアルコールの混合物を含有する組成物の少なくとも一つの層を含む。好ましくは前記層または複数の層は細孔性または親水性材料の一つ以上の層との組み合わせで提供され、特に保護材料の層は細孔性または親水性材料の二つ以上の他の層の間に配置されてもよい。
【0015】
本明細書に記述されるラミネート材料の外側の層は同一または異なる材料を含むことができ、一つの層は繊維材料であってもよい。好都合なことに、本発明の保護材料は親水性膜または細孔性膜と、衣類のアイテムを形成できる繊維層との間に層を形成するように配置できる。このような場合には、アイテムは身に着けた衣服の外側表面に、本発明の保護材料の層がまず適用され、次に、難燃材料などのさらなる保護材料層が適用される。層を固定するためには一緒に接着剤の使用が必要かもしれない。このような接着剤が連続的なフィルムとして適用される場合、ラミネートを介した水蒸気の移行が妨げられないことを保証するために親水性特性が必要かもしれない。しかしながら好都合なことに、接着剤は、たとえばパターン中のギャップを介して水が移行できるダイヤモンド形状のパターンの不連続層として適用されてもよい。
好都合なことに、(足首、手首等の)閉鎖部を介して服の中に入った化学兵器または他の薬剤を吸収する手段を提供するための炭素または他の吸着剤を含有する一つ以上の層が、防護服のような衣類のアイテムの内側表面に適用されてもよい。
【0016】
本発明のラミネートは好ましくは水蒸気に対して実質的に透過性があり、好ましくは少なくとも400g/m2/日の水蒸気透過性があり、一層好ましくは少なくとも600g/m2/日および最も好ましくは少なくとも800g/m2/日の水蒸気透過性がある。同時に、該ラミネート中の組成物の層は化学兵器などの有害薬剤に対して予想されたよりも高度の耐久性を提供すと同時に、ラミネート中の他の層または複数の層は物理的強度または耐熱性(同時に水蒸気透過性を有する)などの他の有用な特性を提供するように選択することができる。
該ラミネートでは、組成物層は適切には1μmから1000μmの範囲の厚さであってもよいが、場合によってはより厚い層が役に立つかもしれない。所望の厚さはラミネートの正確な使用状態に依存する。繊維の下地用途では、10μmから100μmの間の層厚、好ましくは20μmから60μmの間の層厚が望ましいことが見出された。この厚さでは繊維は重すぎず、また、堅すぎずに良好な保護が得られる。他の用途では層の厚さは少なくとも20μmの厚さが望ましい場合がある。
ここで単に例として以下の実施例に言及し、本発明を記載する。
【実施例】
【0017】
(実施例1)
ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)およびポリビニルアルコール(PVOH)を含有するポリマー組成物の製造(キャストフィルム)
PVOH(99+%加水分解、重量平均分子量約121,000;10.0g)および冷蒸留水(50cm3)を容器に入れ、PVOHが溶解するまで90℃〜95℃に攪拌しながら加熱した。さらに10分間、加熱を継続し、次にp(DADMAC)(重量平均分子量約100,000−200,00;50cm3)の20%w/w溶液を添加し、温度を90℃〜95℃に戻した。溶液を10分間この温度に維持した。次にポリマー溶液の加熱をやめて、気泡が溶液から発生するように攪拌をやめた。次にまだ熱いポリマー溶液をガラス板に流し込み、ガラス上高さ0.5mmでブレードを引いてキャストした。次にポリマー溶液は水の蒸発を最小限に抑えるためにカバーされ、約1時間後の2番目のキャストが実施されるまで加熱板に戻した(必要に応じて蒸発した水を置換した)。この2番目のキャストでは、ガラス板上1.0mmの高さでブレードを引いて製造した。次にキャストフィルムを、ガラス板から引きはがす前に周囲条件で一晩「乾燥」させた。
p(DADMAC)はシグマアルドリッチ社(cat.NO.409014)により提供された。
【0018】
(実施例2)
下地上へのポリマー組成物層の製造
PVOH(セラニーズ・ケミカルズ製のCelvol203ポリビニルアルコール(87〜89%加水分解、重量平均分子量13,000〜23,000)とp(DADMAC)(実施例1と同一材料)との組成物を細孔性ポリウレタン膜(厚さ30μm)上に約100μmの厚さでキャストした。組成物層を乾燥した後に、層厚は20μmから30μmの範囲になった。
【0019】
(実施例3)
組成物層を通り抜ける薬剤の浸透度の測定
実施例1の一枚のキャスト組成物が被検セル中に取り付けられ、HD(サルファーマスタード)およびGD(ソマン)の2マイクロリットルの滴を5つずつ含有するガラス皿がサンプル上に配置された。その次に試験サンプルを浸透する蒸気が気液クロマトグラフィーを用いて分析された。三つの別々のサンプルで1マイクログラム未満のHDおよびGD蒸気が24時間で浸透した(すなわち検出限界未満であった)。
【0020】
(実施例4)
水蒸気透過性の測定
実施例1で製造されたキャストフィルムサンプルの水蒸気透過性指数(WVPI)が、以下に要約される、BS3424−34:1992で与えられる方法に基づいてSDLインターナショナルM261水蒸気透過性テスターで測定された。
内径83mmおよび内部の深さ18.5mmで水の表面と皿のリムとの間に10mmのエアギャップがある円形アルミニウム皿の中に蒸留水(46cm3)が入れられた。皿のリム中にある深さ6mmの幾つかのノッチは皿の上面を覆うワイヤ支持体を受けるために使用され、フィルムサンプルがたわまないように支持する。Evo−stik多用途透明接着剤が皿の全周囲のリムの上面に使用され、試験されるべきそれぞれのサンプル部分がサイズにカットされ、皿の全開口部が覆われるように接着剤の上に置かれた。次に内径と外径が皿と同一のカバーリングを皿のリムの上に置くとともに、しっかりと下方に押し、所定の位置で保持するために接着剤テープをその外側および皿に使用した。標準参照材料(18μmのメッシュ開口を有する精密な、強力ポリエステルモノフィラメント織物メッシュ、糸直径が32μm、191.6スレッドcm-1および開口割合が約12.5%、M261A1としてSDLインターナショナルから市販されている)で覆われた皿を同様に準備した。サンプルは二つずつ試験し、コントロールも二つずつ試験した。
皿は、65%RHおよび22℃で環境が制御されるチャンバー内のターンテーブルに置かれ、少なくとも一時間回転している間に平衡化された。次に皿の重さが量られ、ターンテーブルに戻され、24時間後に(24時間以内に他の計量がされ)再び重さが量られた。それぞれのサンプルおよび標準に対してWVP(g m-2-1)が式1を用いて演算される:
【数1】

【0021】
ここでM(g)は、測定間の時間(一般に24時間)である時間tの間の質量損失であり、Aは露出した試験片の領域(上述した機材を使用した場合には0.0054113m2)である。
対比試験片のWVPは平均化され、式2に従ってサンプルの水蒸気透過性指数(WVPI)を演算するために使用した:
【数2】

【0022】
次にサンプルの2回のWVPIは、平均化され、異なる時間で試験されたサンプルを比較するために使用された。
上記のように製造され、測定されたPVOH−p(DADMAC)フィルムは、平均WVPIが96%であり、そのWVPが804g/m2/日であった。
比較として、p(DADMAC)を含まない同一のPVOHを使用して同一方法で準備されたフィルムのWVPIは31%(260g/m2/日)と測定された(異なるRH値で実施されるこれらの試験を考慮に入れるための訂正値である)。
この比較材料の薬剤浸透度は、実施例3と同一ベースで24時間にわたって測定したところ、H蒸気が4mg、GD蒸気が15mg測定された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害物質および/または有毒物質に対する透過性が低い水蒸気透過性保護材料において、第四級アミンおよびポリビニルアルコールの混合物を含む組成物を含有する水蒸気透過性保護材料。
【請求項2】
請求項1に記載の水蒸気透過性保護材料において、前記第四級アミンは高分子第四級アミンである水蒸気透過性保護材料。
【請求項3】
請求項2に記載の水蒸気透過性保護材料において、前記第四級アミンはポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)[p(DADMAC)]、アクリルアミドとのコポリマーであるポリ(アクリルアミド−co−ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(アクリルアミド2−メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムブロミド)、ポリ[ビス(2−クロロエチル)エーテル−alt−1,3−ビス[3−(ジメチルアミノ)プロピル]尿素]、四級化物、ポリ(ジアリルジエチルアンモニウムブロミド)およびポリ(4−ビニルピリジン)、メチルクロリド四級化物から選択される水蒸気透過性保護材料。
【請求項4】
請求項3に記載の水蒸気透過性保護材料において、前記第四級アミンはポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)[p(DADMAC)]である水蒸気透過性保護材料。
【請求項5】
請求項1に記載の水蒸気透過性保護材料において、前記第四級アミンはテトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヨウ化物、テトラブチルアンモニウムサルフェートおよびテトラエチルアンモニウムクロリドから選択される水蒸気透過性保護材料。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の水蒸気透過性保護材料において、前記組成物は層状である水蒸気透過性保護材料。
【請求項7】
請求項6に記載の水蒸気透過性保護材料において、前記層は1μmから1000μmの範囲の厚さである水蒸気透過性保護材料。
【請求項8】
請求項7に記載の水蒸気透過性保護材料において、前記層は20μmから60μmの範囲の厚さである水蒸気透過性保護材料。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の水蒸気透過性保護材料において、前記組成物には架橋剤がさらに含有される水蒸気透過性保護材料。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の水蒸気透過性保護材料において、第四級アミンおよびポリビニルアルコールの全質量はポリマー組成物の質量の10%から95%の範囲であり、好ましくは60%から95%の範囲である水蒸気透過性保護材料。
【請求項11】
請求項10に記載の水蒸気透過性保護材料において、前記組成物の残余には水が含有される水蒸気透過性保護材料。
【請求項12】
請求項10に記載の水蒸気透過性保護材料において、前記組成物の残余には非水性溶媒が含有される水蒸気透過性保護材料。
【請求項13】
請求項10に記載の水蒸気透過性保護材料において、前記組成物の残余には水および非水性溶媒の両方が含有される水蒸気透過性保護材料。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れか一項に記載の水蒸気透過性保護材料において、前記層は犠牲コーティング状態である水蒸気透過性保護材料。
【請求項15】
請求項1乃至14の何れか一項に記載の水蒸気透過性保護材料において、少なくとも400g/m2/日の水蒸気透過性を示す水蒸気透過性保護材料。
【請求項16】
請求項15に記載の水蒸気透過性保護材料において、少なくとも600g/m2/日の水蒸気透過性を示す水蒸気透過性保護材料。
【請求項17】
請求項15に記載の水蒸気透過性保護材料において、少なくとも800g/m2/日の水蒸気透過性を示す水蒸気透過性保護材料。
【請求項18】
請求項1乃至17の何れか一項に記載の水蒸気透過性保護材料の層を用いてコートされた繊維素材であって、有害物質および/または有毒物質に対して実質的に透水性保護を与える繊維素材。
【請求項19】
請求項18に記載のコートされた繊維素材であって、防護服のアイテムを含む繊維素材。
【請求項20】
請求項18または請求項19に記載のコートされた繊維素材において、前記水蒸気透過性保護材料の前記層の厚さは10μmから100μmの範囲であり、好ましくは20μmから60μmの範囲である繊維素材。
【請求項21】
有害物質および/または有毒物質に対して保護を提供し、第四級アミンおよびポリビニルアルコールの混合物を含有する組成物の少なくとも一つの層を含むラミネートにおいて、有害物質および/または有毒物質に対する透過性が低く、水蒸気を実質的に透過するラミネート。
【請求項22】
請求項21に記載のラミネートにおいて、細孔性または親水性材料の一つ以上の層と組み合わせて前記組成物の少なくとも一つの層を含有するラミネート。
【請求項23】
請求項22に記載のラミネートにおいて、前記組成物の前記層は、細孔性または親水性材料の少なくとも二つの層の間に配置されるラミネート。
【請求項24】
請求項22または請求項23に記載のラミネートにおいて、細孔性または親水性材料の前記層の一つは繊維素材を含有するラミネート。
【請求項25】
請求項24に記載のラミネートにおいて、前記繊維素材は衣類のアイテムを含むラミネート。
【請求項26】
請求項24または25に記載のラミネートにおいて、前記組成物の前記層は繊維素材と細孔性または親水性材料の一つ以上のさらなる層との間に配置されるラミネート。
【請求項27】
請求項21乃至26の何れか一項に記載のラミネートにおいて、少なくとも400g/m2/日の水蒸気透過性を示し、一層好ましくは少なくとも600g/m2/日の水蒸気透過性を示すラミネート。
【請求項28】
請求項27に記載のラミネートにおいて、少なくとも800g/m2/日の水蒸気透過性を示すラミネート。
【請求項29】
請求項21乃至24の何れか一項に記載のラミネートにおいて、前記組成物の前記層は1μmから1000μmの範囲の厚さであり、好ましくは10μmから100μmの範囲の厚さである。
【請求項30】
請求項21乃至29の何れか一項に記載のラミネートを含有する防護服のアイテム。
【請求項31】
物品に有害物質および/または有毒物質に対して実質的に透水性保護を付与する方法であって、第四級アミンおよびポリビニルアルコールとの混合物を含有する組成物コーティングを保護されるべき物品の表面に適用することを含む方法。
【請求項32】
請求項27に記載の方法において、前記コーティングは1μmから1000μmの範囲の厚さに適用され、好ましくは10μmから100μmの範囲の厚さに適用される。
【請求項33】
請求項31または32に記載の方法において、ポリマー組成物が保護されるべき表面に直接キャストされる方法。
【請求項34】
請求項31または32に記載の方法において、ポリマー組成物はフィルム状にキャストされ、次に、保護されるべき表面に適用される方法。
【請求項35】
実施例を参照して実質的に明細書に記載した方法。
【請求項36】
耐化学性材料または耐生物性材料、またはそれらの生成物を形成する方法において、請求項1乃至17の何れか一項に記載の水蒸気透過性保護材料は形状形成プロセスによって処理される方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法において、前記形状形成プロセスは成形プロセスであり、好ましくは射出成形である方法。
【請求項38】
請求項36に記載の方法において、前記形状形成プロセスは押し出しプロセスである方法。
【請求項39】
請求項36乃至38の何れか一項に記載の方法から得られる耐化学性材料または耐生物性材料、またはそれらの生成物。
【請求項40】
有害物質および/または有毒物質に対して実質的に透水性保護を有するための物体または表面に用いられるフィルム形状の第四級アミンおよびポリビニルアルコールの混合物を含有する組成物。
【請求項41】
化学兵器および/または生物兵器に対する実質的な透水性保護のための、第四級アミンおよびポリビニルアルコールの混合物を含む組成物の使用。

【公表番号】特表2010−521571(P2010−521571A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554079(P2009−554079)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【国際出願番号】PCT/GB2008/000939
【国際公開番号】WO2008/113996
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(390040604)イギリス国 (58)
【氏名又は名称原語表記】THE SECRETARY OF STATE FOR DEFENCE IN HER BRITANNIC MAJESTY’S GOVERNMENT OF THE UNETED KINGDOM OF GREAT BRITAIN AND NORTHERN IRELAND
【Fターム(参考)】