説明

水道メータ試験装置

【課題】被試験水道メータにおける始動流量の大きさを知ることができるとともに、パイロットの回転に応じたパルス信号を発生するパイロット検出部を、被試験水道メータの指示部に精度よく取りつけることのできる水道メータ試験装置を実現する。
【解決手段】被試験水道メータの指示値と通水量とを比較して、被試験水道メータの計量精度を検出する水道メータ試験装置において、被試験水道メータが挿入された試験用配管に水を流す給水部と、試験用配管に流れる水の瞬時流量を測定する基準流量計と、パイロットの回転に応じたパルス信号を発生するパイロット検出部と、パイロット検出部より得られるパルス信号を計数して被試験水道メータにおける計量値を求めるとともに、この計量値を基準流量計の出力から求められる通水量と比較して、被試験水道メータにおける計量精度を算出する比較判定部とを具備したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被試験水道メータに実際に水を流し、流した水の量と被試験水道メータの指示値とを比較することにより、被試験水道メータの計量精度(器差)を検出する水道メータ試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水道メータの通水試験は、通水試験台の上に複数の被試験水道メータを直列に並べ、ポンプなどで一定流量の水を流し、基準タンクに貯留した量と被試験水道メータの計量値(通水前後の指示値の差)とを比較して、各被試験水道メータにおける計量精度(器差)を算出していた。
【0003】
また、計量精度(器差)の算出を自動化するために、被試験水道メータの指示部におけるパイロットに光を照射するとともに、その反射光を受光して、パイロットの回転に応じて得られるパルス信号を計数し、計量値を求めるようにした装置も提案されている。
パイロットとは、反射性を有し、指示部の文字盤上で、通水量に比例して回転する八角形の部材である。
【0004】
さらに、被試験水道メータの指示部をCCDカメラにより撮影し、画像解析により指示値を読み取るようにした装置も提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平07−113677号公報
【特許文献2】特開平09−126869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような構成を有する試験装置においては、被試験水道メータに一定量の水を流し、最終的な積算流量を比較して、計量精度(器差)を求めているだけであるので、通水中に発生している瞬間的な計量誤差などを測定することができず、水道メータが計量動作を開始する始動流量の大きさ(不感帯)などを測定することはできない。
【0007】
また、パイロットの回転に応じて得られるパルス信号を計数する方式の試験装置においては、光の照射位置をパイロットの位置に精度よく合わせる必要があり、被試験水道メータを取り替える毎に検出器の位置を調整しなければならず、作業の効率が悪いとともに、計量値検出の信頼性に欠ける問題がある。
さらに、CCDカメラを使用した試験装置では、高度な画像解析ソフトなどを必要とし、高価な装置となってしまう。
【0008】
本発明は、上記のような従来装置の欠点をなくし、被試験水道メータにおける始動流量の大きさを知ることができるとともに、パイロットに光を照射し、その反射光を受光して、パイロットの回転に応じたパルス信号を発生するパイロット検出部を、被試験水道メータの指示部に精度よく取りつけることのできる水道メータ試験装置を実現することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような目的を達成するために、本発明の請求項1では、被試験水道メータに通水するとともに、被試験水道メータの指示値と通水量とを比較して、被試験水道メータの計量精度を検出する水道メータ試験装置において、1台または複数台の被試験水道メータが直列に挿入された試験用配管に水を流す給水部と、前記試験用配管に挿入され、流れる水の瞬時流量を測定する基準流量計と、前記被試験水道メータの指示部におけるパイロットの回転を検出してパイロットの回転に応じたパルス信号を発生するパイロット検出部と、前記パイロット検出部より得られるパルス信号を計数して前記被試験水道メータにおける計量値を求めるとともに、この計量値を前記基準流量計の出力から求められる通水量と比較して、被試験水道メータにおける計量精度を算出する比較判定部とを具備したことを特徴とする。
【0010】
請求項2では、請求項1の水道メータ試験装置において、前記基準流量計は、電磁流量計であることを特徴とする。
【0011】
請求項3では、請求項1または2の水道メータ試験装置において、前記パイロット検出部は、パイロットに光を照射するとともに、その反射光を受光して、パイロットの回転に応じたパルス信号を発生することを特徴とする。
【0012】
請求項4では、請求項1乃至3のいずれかの水道メータ試験装置において、前記パイロット検出部を保持するとともに、前記被試験水道メータにおける指示部に当接して、パイロット検出部をパイロットに対向した所定の検出位置に支持固定するアタッチメントと、前記試験用配管の軸方向にスライド可能に支持され、前記アタッチメントを前記被試験水道メータの指示部に押し付け固定するアタッチメント固定部とを有することを特徴とする。
【0013】
請求項5では、請求項1乃至4のいずれかの水道メータ試験装置において、前記被試験水道メータのフランジ部と押し込みにより接合される結合用短管と、結合された被試験水道メータと結合用短管とを両端から押締めする押締部とを有し、複数台の被試験水道メータを前記結合用短管を介して直列に配置することを特徴とする。
【0014】
請求項6では、請求項1乃至5のいずれかの水道メータ試験装置において、前記比較判定部は、積算流量に基づく計量精度を算出するとともに、パイロットの回転開始時における瞬時流量から被試験水道メータの始動流量を求めることを特徴とする。
【0015】
請求項7では、請求項1乃至6のいずれかの水道メータ試験装置において、前記試験用配管における基準流量計の下流位置に挿入された流量制御弁を有し、前記基準流量計の出力を使用して、被試験水道メータに流す水の量を制御する流量制御部を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
このように、流れる水の瞬時流量を測定する基準流量計を試験用配管に挿入し、パイロット検出部より得られるパルス信号を計数して、被試験水道メータにおける計量値を求め、この計量値を基準流量計の出力から求められる通水量と比較して、被試験水道メータにおける計量精度を算出するようにすると、常に被試験水道メータに流れる水の瞬時流量を監視することができ、パイロットが回転を開始するタイミングから、被試験水道メータにおける始動流量の大きさを知ることができる。
【0017】
また、パイロット検出部を被試験水道メータの指示部に当接するアタッチメントにより保持し、試験用配管の軸方向にスライド可能に支持されたアタッチメント固定部により、このアタッチメントを被試験水道メータの指示部に押し付け固定するように構成すると、被試験水道メータを取り替えた場合にも、パイロット検出部を簡単な操作により被試験水道メータの指示部に精度よく取り付けることができ、被試験水道メータの試験作業を効率よく実施することができる。
【0018】
さらに、複数の被試験水道メータを結合用短管を介して連結し、試験用配管に挿入するように構成すると、被試験水道メータを押締め機構により、容易に固定することができるとともに、結合用短管の数または長さを適切に選ぶことにより、各被試験水道メータにおける指示部の位置およびその間隔を、パイロット検出部の位置に合わせることができ、パイロット検出部の取付を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を用いて、本発明の水道メータ試験装置を説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の水道メータ試験装置の一実施例を示す構成図である。図に示されるように、被試験水道メータM1〜M3(ここでは、3台)は、結合用短管J1〜J3を介して直列に結合され、押締部11に挟持されて、試験用配管10内に直列に挿入されている。被試験水道メータM1〜M3と結合用短管J1〜J3とは押し込みにより接合されており、その両端から押締部11により押締めされ、固定される。押締部11は、クランプ機構などにより、ワンタッチで押締めを行う。
【0021】
被試験水道メータM1〜M3を含む試験用配管10の一端には、ポンプ等よりなる給水部20が接続され、被試験水道メータM1〜M3の下流側には基準流量計30および流量制御弁40が挿入されている。基準流量計30には、例えば、電磁流量計が使用され、試験用配管10に流れる水の瞬時流量を測定する。また、流量制御部50は、基準流量計30の測定出力を受け、試験用配管10に流す水の流量または流速が所定の値となるように、流量制御弁40の開度を調節する。
【0022】
パイロット検出部PD1〜PD3は、被試験水道メータM1〜M3における指示部I1〜I3の上部に配置され、パイロットの回転を検出する。パイロット検出部PD1〜PD3は、パイロットに光を照射するとともに、その反射光を受光して、パイロットの回転に応じたパルス信号を発生する。
【0023】
比較判定部60は、パイロット検出部PD1〜PD3より得られるパルス信号を計数して、被試験水道メータM1〜M3における計量値を求めるとともに、この計量値を基準流量計30の出力から求められる通水量と比較して、被試験水道メータM1〜M3における計量精度を算出する。
【0024】
このように構成された水道メータ試験装置において、通常の通水試験(法定計量)は、被試験水道メータM1〜M3の口径に応じて定められた2点の積算流量値により実施される。例えば、メータの口径が13mmの場合には、100リットル/hの流量で、3リットル流した点と、1000リットル/hの流量で、15リットル流した点とを測定し、この2点での計量精度が所定の範囲内にあれば、合格とする。
また、メータの口径が20mmの場合には、150リットル/hの流量で4リットル、2000リットル/hの流量で20リットルの2点で測定を行う。
【0025】
なお、比較判定部60は、上記のような試験動作の進行を管理(制御)するとともに、その測定結果および判定結果などを報告書の形にまとめ、帳票等を作成する。
【0026】
ここで、通水試験(法定計量)は、被試験水道メータを逐次取り替えて実施されるが、1回の試験台数が3台に満たない場合には、不足したメータの管路長に相当する長さ分だけ結合用短管を追加して、試験用配管10(押締部11)に挿入する。予め、被試験水道メータの管路長と等しい長さの結合用短管を用意しておき、不足したメータの位置に挿入することも可能である。
【0027】
このように、結合用短管J1〜J3を利用して、被試験水道メータM1〜M3を直列に結合し、試験用配管10に挿入すると、同時に試験するメータの台数にかかわらず、試験すべき被試験水道メータの指示部I1〜I3をパイロット検出部PD1〜PD3の近傍に位置させることができる。
【0028】
また、被試験水道メータM1〜M3は、その口径により管路長が異なるので、異なる口径のメータを試験する場合には、その寸法に応じた口径および管路長の結合用短管を使用して、被試験水道メータM1〜M3を結合する。
このため、被試験水道メータM1〜M3の口径が異なった場合にも、その指示部I1〜I3をパイロット検出部PD1〜PD3の近傍に位置させることができる。
【0029】
図2は、パイロット検出部PD1〜PD3を被試験水道メータM1〜M3における指示部I1〜I3の検出位置に固定する保持機構の一実施例を示す構成図である。図は、パイロット検出部PD1の部分のみを例示したもので、他のパイロット検出部PD2、PD3における保持機構も同様の構成を有するものである。図に示される如く、パイロット検出部PD1は指示部I1に当接するアタッチメント70により保持され、パイロットPI1に対向する位置(検出位置)に支持固定される。
【0030】
アタッチメント70は、例えば、円筒状の部材であり、指示部I1に載せた状態から円周方向に回転させることにより、パイロット検出部I1の照射光をパイロットPI1に合わせることができる。この位置合せにおいては、窓部などを介して、光の照射位置を目視により確認しても良いし、受光レベルがモニタされている場合には、そのモニタを見ながら、受光レベルが最大となる位置に調節する。
【0031】
位置決めされたアタッチメント70は、アタッチメント固定部80により指示部I1に押し付け固定される。アタッチメント固定部80は、その開放状態からレバー82を押し下げることにより、押え板81がアタッチメント70を押さえ、スプリング83の力によりアタッチメント70を押し付け固定する。
【0032】
また、アタッチメント固定部80は、支持軸85により、試験用配管の軸方向(図面の鉛直方向)にスライド可能に支持されている。
このため、被試験水道メータの入れ替え作業などにより、指示部の位置が変化してしまった場合にも、アタッチメント固定部80を管軸方向にスライドさせ、アタッチメント70を確実に指示部I1に押し付け固定することができる。
【0033】
図3は、本発明の水道メータ試験装置において、水道メータの始動流量(不感帯)を測定する場合の測定動作を示す特性図である。始動流量を測定するためには、グラフAに示す如く、被試験水道メータに流す水の流量を徐々に増加させる。
なお、この時の流量の制御は、流量制御部50により行われるものである。
【0034】
ここで、流量が少ない間は、水道メータが応答せず、パイロットが回転しないので、水道メータによる計量値Bはゼロのままである。この間を不感帯という。
流す流量が増加し、p1の流量において水道メータが計量を開始したとすると、パイロットが回転を始め、計量値が増加を始める。この時の流量値p1がその水道メータにおける始動流量である。
【0035】
また、図に示す如く、試験用配管10(被試験水道メータM1〜M3)に流れる水の瞬時流量を、基準流量計40により常に測定しているので、始動流量の他にも、計量中の積算流量値の誤差など、各種の特性を測定することが可能となる。
【0036】
なお、上記の説明においては、一度に3台の被試験水道メータM1〜M3を試験する場合を例示したが、試験する台数はこれに限られるものではない。
【0037】
また、試験用配管10に1台の基準流量計30を設置した場合を例示したが、試験用配管10を分岐させて、測定レンジの異なる複数台の基準流量計を設置し、試験用配管10(被試験水道メータM1〜M3)に流す水の流量に応じて、使用する基準流量計を切り換えるように構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は本発明の水道メータ試験装置の一実施例を示す構成図。
【図2】図2はパイロット検出部PD1〜PD3の保持機構の一実施例を示す構成図。
【図3】図3は本発明の水道メータ試験装置において、水道メータの始動流量(不感帯)を測定する場合の測定動作を示す特性図。
【符号の説明】
【0039】
10 試験用配管
11 押締部
20 給水部
30 基準流量計
40 流量制御弁
50 流量制御部
60 比較判定部
70 アタッチメント
80 アタッチメント固定部
M1〜M3 被試験水道メータ
I1〜I3 指示部
J1〜J3 結合用短管
PD1〜PD3 パイロット検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験水道メータに通水するとともに、被試験水道メータの指示値と通水量とを比較して、被試験水道メータの計量精度を検出する水道メータ試験装置において、
1台または複数台の被試験水道メータが直列に挿入された試験用配管に水を流す給水部と、
前記試験用配管に挿入され、流れる水の瞬時流量を測定する基準流量計と、
前記被試験水道メータの指示部におけるパイロットの回転を検出してパイロットの回転に応じたパルス信号を発生するパイロット検出部と、
前記パイロット検出部より得られるパルス信号を計数して前記被試験水道メータにおける計量値を求めるとともに、この計量値を前記基準流量計の出力から求められる通水量と比較して、被試験水道メータにおける計量精度を算出する比較判定部とを具備したことを特徴とする水道メータ試験装置。
【請求項2】
前記基準流量計は、電磁流量計であることを特徴とする請求項1に記載の水道メータ試験装置。
【請求項3】
前記パイロット検出部は、パイロットに光を照射するとともに、その反射光を受光して、パイロットの回転に応じたパルス信号を発生することを特徴とする請求項1または2に記載の水道メータ試験装置。
【請求項4】
前記パイロット検出部を保持するとともに、前記被試験水道メータにおける指示部に当接して、パイロット検出部をパイロットに対向した所定の検出位置に支持固定するアタッチメントと、
前記試験用配管の軸方向にスライド可能に支持され、前記アタッチメントを前記被試験水道メータの指示部に押し付け固定するアタッチメント固定部とを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の水道メータ試験装置。
【請求項5】
前記被試験水道メータのフランジ部と押し込みにより接合される結合用短管と、
結合された被試験水道メータと結合用短管とを両端から押締めする押締部とを有し、
複数台の被試験水道メータを前記結合用短管を介して直列に配置することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の水道メータ試験装置。
【請求項6】
前記比較判定部は、積算流量に基づく計量精度を算出するとともに、パイロットの回転開始時における瞬時流量から被試験水道メータの始動流量を求めることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の水道メータ試験装置。
【請求項7】
前記試験用配管における基準流量計の下流位置に挿入された流量制御弁を有し、前記基準流量計の出力を使用して、被試験水道メータに流す水の量を制御する流量制御部を具備することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の水道メータ試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−101472(P2007−101472A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294542(P2005−294542)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【出願人】(591043581)東京都 (107)