説明

水酸化カルシウム系化合物及びその製造方法

【課題】 毒性の問題を除いて、初期着色性、熱安定性、非発泡性等の性能と低価格性の全ての面で優れている鉛系熱安定剤に代わり得る、無毒性の新しい熱安定剤を開発する。
【解決手段】 水酸化カルシウムの結晶表面近傍のCaがAl、またはMgとAlで置換され、且つ該置換量が全カルシウムの0.5〜15モル%であることを特徴とする水酸化カルシウム系化合物、及び水または含水溶媒に分散した水酸化カルシウム、またはドロマイト由来の水酸化カルシウム・水酸化マグネシウム混合体に、攪拌下にアルミニウム水溶液、またはマグネシウムと水溶性アルミニウムの混合水溶液、またはそれぞれの単独水溶液を水酸化カルシウム1モルに対し、0.5モル%以上加えて反応させることを特徴とする上記水酸化カルシウム系化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸化カルシウムの結晶表面近傍のCaがAl、またはMgとAlで置換された水酸化カルシウム系化合物及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、該水酸化カルシウム系化合物を含有させることにより、水酸化カルシウムの欠点である初期着色を顕著に改善した、熱安定性に優れた安定化された含ハロゲン樹脂組成物を提供できる水酸化カルシウム系化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含ハロゲン樹脂は熱や光に対して不安定である。そのため、溶融する前に、熱安定剤を添加する必要がある。熱安定剤としては、鉛系化合物、有機スズ系化合物、Cd/Ba系金属石けん、Ba/Zn系金属石けん、Ca/Zn系金属石ケン、ハイドロタルサイト類等が使用されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
安全性および環境に対する影響に、社会的関心が高くなってきた結果、熱安定剤に使用されてきた、カドミウム系、鉛系、スズ系、バリウム系の使用を禁止、または抑制する傾向になってきた。同時に、熱安定剤に対する価格低減の要求もますます強くなっている。従来の熱安定剤であるCa/Zn系は無毒であるが、熱安定性が劣り、ハイドロタルサイト類は同じく無毒であるが、結晶水が多く発泡の問題があり、且つ価格的にも問題がある。
【0004】
そこで本発明者は、無毒で、安価で、発泡が無く、熱安定性も良い水酸化カルシウムに注目した。しかし水酸化カルシウムは、含ハロゲン樹脂を赤褐色に強く着色させる、いわゆる初期着色が強い問題がある。また炭酸化され易く、炭酸ガスとか炭酸イオンと反応して炭酸カルシウムに変化し、初期の活性を経時的に失い易い問題もある。これらの問題のため、熱安定剤として使用されることは殆ど無かった。
【0005】
したがって、本発明は前記水酸化カルシウムの問題を克服し、無毒、安価で初期着色が良く、熱安定性に優れた、そして耐炭酸化性良好な、含ハロゲン樹脂の新規な熱安定剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水酸化カルシウムの結晶表面近傍のCaを、AlまたはMgとAlで、全カルシウムの0.5〜15モル%、好ましくは1〜10モル%置換し、さらに好ましくは、さらにアニオン系界面活性剤で表面処理した、新規な水酸化カルシウム系化合物を提供する。
【0007】
さらに本発明は、該新規な水酸化カルシウム系化合物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水酸化カルシウムの結晶表面近傍のCaをAl、またはMgとAlで、少なくとも全Caの0.5モル%以上置換することにより、初期着色性、無毒性、非発泡性で、低価格の、優れた含ハロゲン樹脂の熱安定剤として有用な水酸化カルシウム系化合物及びその製造方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の水酸化カルシウム系化合物は、水酸化カルシウムの結晶表面近傍のCaをAlまたはMgとAlで一部置換した構造をしている。表面のCaがAl、またはMgとAlで一部置換されることにより、含ハロゲン樹脂の初期着色が大幅に改善される。さらに、耐炭酸化性も向上する。
【0010】
この理由は、Alの水酸化物が水に極めて溶けにくいことと、水酸化カルシウムの初期着色の原因である強い電子供与性を、電子受容性のAlが中和、軽減するためと考えられる。
【0011】
本発明の水酸化カルシウム系化合物におけるCaのAl、またはMgとAlによる置換量は、全カルシウムに対して0.5〜15モル%、好ましくは1〜10モル%、特に好ましくは2〜6モル%である。置換量が0.5モル%未満の場合は、目的とする初期着色改善等の効果が不十分であり、逆に置換量が多くなると、樹脂加工温度で発泡の原因となる、200℃以下で脱離する水の量が増えてくる。置換量が10モル%を超えても、さらなる初期着色、熱安定性の改善は無く、他方、200℃以下で脱離する結晶水量が多くなって、発泡する可能性が出てくる。したがって、置換量の上限は特に無いが、15モル%以下、さらには10モル%以下が好ましい。但し、発泡は結晶水の脱離温度が約130℃と低いため、約150℃の乾燥で防ぐことができる。
【0012】
本発明の水酸化カルシウム系化合物は、その結晶表面近傍だけ、CaがAl、またはMgとAlに置換されているため、結晶構造的には、殆ど全てが水酸化カルシウムである。したがって、X線回析パターンは水酸化カルシウムのみの場合が殆どで、それ以外の場合は、強い水酸化カルシウムの回析パターンと、CaとAl、またはCa、MgとAlの複合水酸化物と推定される微弱な回析,d(面間隔)=7.6Å,との混合である。
【0013】
本発明の水酸化カルシウム系化合物が、良好な含ハロゲン樹脂の熱安定剤として機能するためには、1次粒子が小さく、1次粒子が凝集してできる2次粒子も小さいことが好ましい。具体的には、BET比表面積が約3m/g以上、好ましくは5〜20m/g、特に好ましくは7〜20m/gである。粒度分布測定で決まる2次粒子径は、累積50%で2μm以下、好ましくは1.5μm以下、特に好ましくは1μm以下である。
【0014】
本発明の水酸化カルシウム系化合物は、そのままで用いることもできるが、アニオン系界面活性剤等で表面処理したものを用いることが、含ハロゲン樹脂との相溶性を高め、結果として、初期着色、熱安定性等を高めることに効果があり、好ましい。
【0015】
本発明の水酸化カルシウム系化合物の製造は、水を含む媒体に水酸化カルシウムを分散、攪拌下に、アルミニウム水溶液、またはアルミニウムとマグネシウムの混合水溶液を約100℃以下、好ましくは約40〜90℃で添加反応させることにより実施できる。ここで用いる水酸化カルシウムの代わりに、ドロマイトを焼成後、水和して得られる水酸化カルシウムと水酸化マグネシウムの混合水酸化物を用いることもできる。水溶性のアルミニウム塩としては、例えば硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、イソプロキシド等を挙げることができる。
【0016】
本発明の水酸化カルシウム系化合物の表面処理は、高級脂肪酸、高級脂肪酸のアルカリ金属塩、リン酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、ポリカルボン酸、またはそのアルカリ、またはアンモニウム塩等のアニオン系界面活性剤により、水酸化カルシウム系化合物の重量に基づき、約0.1〜10%、好ましくは約0.5〜5%、特に好ましくは約1〜4%処理する。表面処理剤によるコーティング処理は、それ自体公知の方法により実施できるが、含水媒体中に本発明水酸化カルシウム系化合物を分散させ、攪拌下に、前記アニオン系界面活性剤の水溶液を添加する方法で実施することが好ましい。表面処理後は必要に応じ、例えば、水洗、ろ過、造粒、乾燥、粉砕、分級等の手段を適宜選択して実施し、最終製品形態とすることができる。
【0017】
本発明で得られる安定化された含ハロゲン樹脂は、含ハロゲン樹脂100重量部に、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、特に好ましくは0.2〜3重量部の本発明水酸化カルシウム系化合物を配合する。安定化された含ハロゲン樹脂は、本発明の水酸化カルシウム系化合物以外に、(a)0.01〜2重量部、好ましくは0.1〜1重量部の亜鉛化合物、(b)0.001〜2重量部、好ましくは0.01〜1重量部のβ−ジケトン類、(c)0.001〜2重量部、好ましくは0.1〜1重量部の多価アルコール類、(d)0〜1重量部、好ましくは0〜0.5重量部の過塩素酸塩類、(e)0〜2重量部、好ましくは0〜1重量部のハイドロタルサイト類を併用して用いることが好ましい。
【0018】
(a)亜鉛化合物としては、例えばラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の有機酸の亜鉛塩、酸化亜鉛、炭酸亜鉛等の無機亜鉛化合物等を挙げることができる。好ましくは亜鉛の有機酸塩である。亜鉛化合物は初期着色防止および滑剤として有用である。
【0019】
(b)β−ジケトン類は初期着色防止に有用な化合物であり、下記一般式(1)
【0020】
【化1】

【0021】
(式中、RおよびRは同一または異なってもよく、30個までの炭素原子を有する直鎖、または分枝状のアルキル、またはアルケニル基、アリ−ル基、または脂環式基、Rは水素、アルキル基、アルケニル基を表わす)で表される化合物である。このようなβ−ジケトン類の中で好ましく用いられる物として、例えばジベンゾイルメタン(DBM)、ステアロイルベンゾイルメタン(SBM)、ベンゾイルアセトン、アセチルアセトン、デヒドロ酢酸等を挙げることができる。
【0022】
(c)多価アルコール類は熱安定性の改良に有用であり、多価アルコ−ル、または多価アルコ−ルとモノ、またはポリカルボン酸との部分エステルである。その様な化合物としては、マンニト−ル、ソルビト−ル、ペンタエリスリト−ル、ジペンタエリスリトール、トリメチロ−ルプロパン等を挙げることができる。
【0023】
(d)過塩素酸塩類は初期着色防止に有用であり、例えば過塩素酸のNa,K,Ca,Ba等の金属塩および下記式(2)
2+1−xAl(OH)(ClO(An−・mHO (2)
(式中、M2+はMgおよび/またはZnを示し、An−はCO2−,HPO等のClO以外のn価のアニオンを示し、x,y,zおよびmはそれぞれ次の範囲、0.1<x<0.5、好ましくは0.2≦x≦0.4,0<y<0.5、好ましくは0.2≦y≦0.4,0≦z<y,y+nz=x,0≦m<3、を満足する0または正の数を示す)で表される過塩素酸イオンを、層間アニオンとして含有するハイドロタルサイト類を挙げることができる。
【0024】
(e)ハイドロタルサイト類は熱安定性の改良に有用であり、式(2)において、M2+がMgおよび/またはZnで、An−がCO2−で、x=0.25〜0.4,y=0〜0.4のハイドロタルサイト類を用いることが好ましい。
【0025】
含ハロゲン樹脂としては次の様なものが例示される。ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−イソプレン共重合体、塩化ビニル−塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−各種ビニルエーテル共重合体等の含塩素合成樹脂。これらの含塩素合成樹脂相互のあるいは他の塩素を含まない合成樹脂とのブレンド品、ブロック共重合体、グラフト共重合体等。
【0026】
本発明の樹脂組成物には、慣用の他の添加剤を配合することもできる。このような他の添加剤としては、例えば次のものを例示できる。ビスフェノールAテトラC12−15アルキルジホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(モノフェニル)ホスファイト等のホスファイト系安定助剤。エポキシ化植物油、エポキシ化オレイン酸エステル類、エポキシ化エルシン酸エステル類等のエポキシ系安定助剤。チオジプロピオン酸、ジエチルチオジプロピオン酸エステル等の含硫黄化合物系安定助剤。アルキルガレート、アルキル化フェノール等のフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系安定助剤。グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、グリシンアミド、ヒスチジンエチルエステル、トリプトファンベンジルエステル等のα−アミノ酸およびその官能性誘導体系安定助剤。スチレン化パラクレゾール、2,6−ジ第3級ブチル−4−メチルフェノール、ブチル化アニソール、4,4'−メチレンビス(6−第3級ブチル−3−メチルフェノール)、2,2'メチレンビス(6−第3級ブチル−4−メチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ第3級ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ第3級ブチルフェニル)プロピオニルオキシメチレン]メタン等の酸化防止剤。
【0027】
これら添加剤の配合量は適宜選択することができ、例えば、含ハロゲン樹脂100重量部に対して約0.01〜約5重量部の安定助剤類、約0.01〜約2重量部の酸化防止剤が例示される。本発明は前期添加物以外に、慣用の他の添加剤、例えば、可塑剤、滑剤、加工助剤、耐候性改良剤、帯電防止剤、防曇剤、強化剤、充填剤、顔料等を配合してもよい。本発明において、含ハロゲン樹脂と本発明の添加剤、および他の添加剤との混合混練は、両者を均一に混合できる慣用の方法を採用すればよい。例えば、一軸または二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー等の任意の混合混練手段を採用できる。成形方法にも特別の制約はなく、例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、回転成形、カレンダー成形、シートフォーミング成形、トランスファー成形、積層成形、真空成形等の任意の成形手段を採用できる。
【0028】
以下、実施例に基づき本発明をより詳細に説明する。以下の各例において、%は重量%を意味する。
【0029】
(実施例1)
市販の高純度、化学用生石灰(岡山県新見産)120gを約70℃に加温した温水3リットルに、ケミスターラーで攪拌下に加え、約30分間攪拌を継続して消化反応を行った。その後、200メッシュの篩を通し、通過したスラリーから2モルを約5リットルの反応槽に入れ攪拌した。このスラリー(約65℃)に、0.2モル/リットルの硝酸アルミニウムの水溶液(全カルシウムの3モル%に相当)を添加した。ろ過、水洗後、再び水に分散させ、加熱して約70℃に昇温後、純度90%のステアリン酸ソーダ5gを溶解した100ミリリットルの水溶液(約70℃)を攪拌下に加え、表面処理を行った。その後、ろ過、水洗、乾燥、粉砕した。
【0030】
粉砕物のX線回析パターンを測定した結果、水酸化カルシウムのみの回析ピークが観測された。粉砕物を塩酸に溶解して、キレート滴定分析を行った結果、Ca:Alのモル比は96.5:3.5であった。粉砕品を塩酸に溶解後、エーテル抽出し、乾燥後、重量法で測定したステアリン酸量は2.8%であった。粉砕物の液体窒素吸着法で測定したBET比表面積は9m/gであった。
【0031】
イソプロピルアルコールに、超音波で5分間分散処理後、レーザー回析法粒度分布測定法で測定した累積50%の平均2次粒子径は1.3μmであった。熱分析を行い、200℃までの重量変化を測定した結果、1.2%の重量減少があった。これは約130℃の脱水による、吸熱反応によるものである。
【0032】
(実施例2)
実施例1において、添加する0.2モル/リットルの硝酸アルミニウム量を300ミリリットルから500ミリリットル(全Caに対し、5モル%に相当)に変更する以外は実施例1と同様に行った。
【0033】
粉砕物のX線回析パターンは、水酸化カルシウム以外に、微弱な回析ピークがd=約7.6Åにあった。粉砕物のCa:Alのモル比は94.8:5.2であった。ステアリン酸含有量は2.7%であった。BET比表面積は11m/g、累積50%の平均2次粒子径は1.1μmであった。熱分析による200℃までの脱水量は1.9%であった。
【0034】
(実施例3)
実施例1において、硝酸アルミニウムを添加する代わりに、Al3+=2.7モル/リットルのアルミン酸ソーダ水溶液を52ミリリットル(全Caに対し、7モル%に相当)を加える以外は実施例1と同様に行った。
【0035】
粉砕物のX線回析パターンは、d=約7.6Åに微弱な回析ピークがある以外は、水酸化カルシウムのみの回析ピークが観測された。粉砕物のCa:Alのモル比は92.8:7.2であり、ステアリン酸含有量は2.6%であった。BET比表面積は18m/g、累積50%の平均2次粒子径は0.70μmであった。熱分析による200℃までの脱水量は1.2%であった。
【0036】
(比較例1)
実施例1において、硝酸アルミニウムを添加しないこと以外は実施例1と同様に行った。
【0037】
粉砕物のX線回析パターンは水酸化カルシウムのみであった。ステアリン酸含有量は2.9%、BET比表面積は13m/g、累積50%の平均2次粒子径は1.7μm、熱分析による200℃までの脱水量は0%であった。
【0038】
(実施例4)
実施例1において、硝酸アルミニウムを添加する代わりに、まず0.5モル/リットルの塩化マグネシウム、60ミリリットル(全Caに対し、1.5モル%に相当)を加え、約20分間攪拌を継続後、0.2モル/リットルの硝酸アルミニウム、150ミリリットル(全Caの1.5モル%に相当)を加え反応させる以外は実施例1と同様に行った。
【0039】
粉砕物のX線回析パターンは、d=約7.6Åに微弱な回析ピークがある以外は、水酸化カルシウムのみの回析ピークであった。粉砕物のCa:Mg:Alのモル比は97:1.4:1.6であり、ステアリン酸含有量は2.7%であった。BET比表面積は12m/g、累積50%の平均2次粒子径は0.95μmであった。熱分析による200℃までの脱水量は0.90%であった。
【0040】
(比較例2)
実施例4において、熱安定剤として比較例1で作成した水酸化カルシウムを使用した場合の評価結果を表1に示す。
【0041】
(比較例3)
実施例4において、熱安定剤として、ステアリン酸カルシウムを使用した場合の評価結果を表1に示す。
【0042】
(比較例4)
実施例4において、熱安定剤として、三塩基性硫酸鉛とステアリン酸鉛をそれぞれ0.67重量部、0.33重量部の合計1.0重量部使用した場合の評価結果を表1に示す。
【0043】
(実施例5)
外国産高純度ドロマイト:(Ca,Mg)CO,(SiO=0.1%,Al=痕跡,Fe=0.024%,CaO=31.0%,MgO=21.7%,CO=41.0%)を1000℃で10時間焼成し、BET比表面積9.9m/gの酸化カルシウム、酸化マグネシウムを得た。この酸化物100gを実施例1で用いた生石灰の代わりに用いる以外は実施例1と同様に行った。
【0044】
粉砕物のX線回析パターンを測定した結果、水酸化カルシウムと水酸化マグネシウムの回析ピークが観測された。粉砕物のCa:Mg:Alのモル比は48.8:48.0:3.2で、ステアリン酸含有量は2.7%であった。BET比表面積は15m/g、累積50%の平均2次粒子径は1.1μmであった。熱分析による200℃までの脱水量は0.7%であった。
【0045】
(実施例6)
下記処方で、ポリ塩化ビニルに、実施例1〜5で得られた水酸化カルシウム系化合物を熱安定剤として混合後、オープンロールを使用して、165℃で3分間混錬し、厚さ約1mmのシートを作成した。
[処方]
ポリ塩化ビニル(信越化学株式会社製、分子量700) 100重量部
ステアリン酸亜鉛 0.3重量部
ステアロイルベンゾイルメタン 0.15重量部
ジペンタエリスリトール 0.2重量部
熱安定剤 1.0重量部
得られたシートを約3cm×3cmの大きさに切り出し、テストピースとし、これを185℃に設定したギヤオーブンに入れ、10分間隔で取り出し、初期着色の程度と黒化するまでの時間で、熱安定性、および発泡の有無をそれぞれ目視で測定した。その結果を表1に示す。
【0046】
(実施例7)
実施例4において、熱安定剤として、実施例1で得られた水酸化カルシウム系化合物を0.7重量部と、ハイドロタルサイト類(市販のアルカマイザー1)を0.3重量部の合計1.0重量部配合した場合の評価結果を表1に示す。
【0047】
(比較例5)
実施例4において、熱安定剤としてハイドロタルサイト類(市販のアルカマイザー1)を使用した場合の評価結果を表1に示す。
【0048】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化カルシウムの結晶表面近傍のCaがAl、またはMgとAlで置換され、且つ該置換量が全カルシウムの0.5〜15モル%であることを特徴とする水酸化カルシウム系化合物。
【請求項2】
水または含水溶媒に分散した水酸化カルシウム、またはドロマイト由来の水酸化カルシウム・水酸化マグネシウム混合体に、攪拌下にアルミニウム水溶液、またはマグネシウムと水溶性アルミニウムの混合水溶液、またはそれぞれの単独水溶液を水酸化カルシウム1モルに対し、0.5モル%以上加えて反応させることを特徴とする請求項1記載の水酸化カルシウム系化合物の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の反応生成物に、水酸化カルシウムまたはドロマイト由来の混合水酸化物の重量に対して、0.1〜10重量%のアニオン系界面活性剤の水溶液を攪拌下に加え、表面処理することを特徴とする請求項2記載の水酸化カルシウム系化合物の製造方法。

【公開番号】特開2007−302555(P2007−302555A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−167175(P2007−167175)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【分割の表示】特願2001−334631(P2001−334631)の分割
【原出願日】平成13年10月31日(2001.10.31)
【出願人】(391001664)株式会社海水化学研究所 (26)
【Fターム(参考)】