説明

水酸化マグネシウム粒子、および難燃剤

【課題】合成樹脂の難燃剤として優れた特性を有する水酸化マグネシウム粒子を提供すること。
【解決手段】六角盤状の結晶形態を有しかつアスペクト比(H)が下記式(I)を満足する水酸化マグネシウム粒子およびその粒子よりなる難燃剤、
0.45・A・B<H<1.1・A・B (I)
(ただし式中、Hはアスペクト比を示し、Aはレーザー回折散乱法で測定された全粒子の平均2次粒子径(μm)を示し、BはBET法で測定された全粒子の比表面積(m/g)を示す。)、合成樹脂100重量部に対して前記水酸化マグネシウム粒子を5〜300重量部を配合した難燃性樹脂組成物およびそれからの成形品の提供。
該水酸化マグネシウム粒子は、六角盤状の単一結晶であって、その六角形の形状は必ずしも正六角である必要はなく、その大きさは必ずしも一定ではないが、比表面積および平均粒径に関連して、アスペクト比がある特定の値を有し、合成樹脂の難燃剤として優れた性質を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な形状を有する水酸化マグネシウム粒子に関する。さらに詳しくは、六角盤状の結晶形態を有しかつ特定のアスペクト比を有する水酸化マグネシウム粒子に関する。さらに本発明は、その水酸化マグネシウム粒子を使用した難燃剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水酸化マグネシウム粒子は古くから知られており、医薬用、工業用として広い分野で使用されている。例えば、医薬用としては、制酸剤、瀉下剤および動物用薬剤などがあり、工業用としては熱可塑性樹脂に配合して該樹脂に難燃性を賦与する難燃剤、含油廃水用吸着剤、排煙脱硫剤、排水中和剤および土質改良剤などがある。
従来の水酸化マグネシウム粒子の製造方法も多様で、例えばMg源としてイオン苦汁、海水またはドロマイトを使用しアルカリ源として石灰または苛性ソーダなどを使用する方法;酸化マグネシウムの水和反応によるもの、およびMg塩とアンモニアを反応させて水酸化マグネシウム結晶を晶析させる方法などがある。しかしながら、従来の水酸化マグネシウムの場合、製造方法によって水酸化マグネシウム粒子の形状が特定されるので、異なる形状を有する水酸化マグネシウム粒子を得るためには、異なる製造方法が必要とされていた。
【0003】
一方合成樹脂の難燃剤としては、有機ハロゲン化合物または三酸化アンチモンが広く使用されている。
有機ハロゲン化合物または三酸化アンチモンまたは、その両者の組合せからなるいわゆるハロゲン系難燃剤は、火災時に大量の煙と有毒ガスを発生するため、社会的に問題を生じていた。このため、ハロゲン系難燃剤をできるだけ使わないで済むように難燃剤の研究が行われた。その結果、水酸化マグネシウム粒子は有効な難燃剤であるという評価が得られている。水酸化マグネシウム粒子は樹脂に配合したとき、燃焼時の発煙量が少なくしかも無毒である。さらに、水酸化マグネシウム粒子は水酸化アルミニウム粒子にみられるような樹脂の加工温度でそれ自体の一部が脱水分解し、樹脂成形体を発泡させるようなことが無いため適応する樹脂の範囲は広い。
水酸化マグネシウム粒子を難燃剤として高濃度で充填した合成樹脂は、原子力発電所、船舶、自動車、地下鉄、洞道内通信などに用いられる電線や、家電製品や電子機器の部品建材など広く用いられるようになってきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
合成樹脂を水酸化マグネシウム粒子で難燃化する場合、高濃度で充填する必要があり、そのため、外観不良や合成樹脂組成物が持っている特性を低下させるという問題がある。その問題を解消すべく高級脂肪酸や各種カップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウム粒子難燃剤が提案されているが上記の課題を本質的に解決するまでには至っていない。
そこで本発明者らは、従来にない特定の形状を有する新規な水酸化マグネシウム粒子を得るため、鋭意研究を進めたところ、塩化マグネシウムあるいは酸化マグネシウムを原料として水酸化マグネシウム粒子を製造する工程において、ある特定の酸もしくはその塩を添加することによって、従来とは異なる比較的大きいアスペクト比を有しかつ六角盤状の結晶形態を有する水酸化マグネシウム粒子が得られることを見出した。特に本発明によれば、比表面積および平均粒径に関連して、アスペクト比がある特定の値を有する水酸化マグネシウム粒子が提供される。
【0005】
また本発明は、この特定形状の水酸化マグネシウム粒子の利用について研究を進めた所、合成樹脂の難燃剤として優れた性質を有していることが見出された。
【課題を解決するため手段】
【0006】
本発明によれば、六角盤状の結晶形態を有しかつアスペクト比(H)が下記式(I)を満足し、かつ下記式(II)を満足する2次粒径(F)を有する水酸化マグネシウム粒子の体積割合が、全粒子の体積に対して60%以上である水酸化マグネシウム粒子が提供される。
0.45・A・B<H<1.1・A・B (I)
(ただし式中、Hはアスペクト比を示し、Aはレーザー回折散乱法で測定された全粒子の平均2次粒子径(μm)を示し、BはBET法で測定された全粒子の比表面積(m/g)を示す。)
0.3・A<F<1.7・A (II)
(ただし式中、Fは水酸化マグネシウム粒子の2次粒子経(μm)を示し、Aは前記式(I)と同じ定義を有する。)
【発明を実施するため最良の形態】
【0007】
以下本発明についてさらに詳細に説明する。まず本発明の六角盤状の結晶形態を有する水酸化マグネシウム粒子およびその製造方法について説明する。
【0008】
本発明の水酸化マグネシウム粒子は、六角盤状の結晶形態および特定のアスペクト比によって特徴付けられる。この六角盤状の結晶形態は、粒子を例えば5,000〜10,000倍の顕微鏡写真を撮ることによって観察される。本発明の水酸化マグネシウム粒子は、六角盤状の単一結晶であって、その六角形の形状は必ずしも正六角である必要はない。図1にはアスペクト比の計算のために、モデルとして正六角の盤状の形態を示してあるが、六角形の形状は盤状を形成する辺の数が大略6個であればよく、例えば相対する2辺が他の辺の長さよりも長い六角形であってもよく、また2辺が接する角(6個)の頂点を形成する角度(内角)が100°〜130°であってもよい。また2辺が接する角(6個)の一部が丸味を帯びていてもよい。本発明の水酸化マグネシウム粒子は、拡大写真の観察により、大部分(90%以上、好ましくは95%以上)の粒子は前記の六角盤状の結晶形態であり、その大きさは必ずしも一定ではない。しかし後述するように粒子の大きさ(粒径)は、ある一定の分布幅を有しており、粒子の大きさは比較的揃っていることも本発明のマグネシウム粒子の特徴の1つでもある。この粒径の分布についてはさらに後に説明する。
【0009】
本発明の水酸化マグネシウム粒子は、単一結晶が六角盤状であるとともに、そのアスペクト比(H)が従来のものと比べて比較的大きいことが特徴である。このアスペクト比(H)は、水酸化マグネシウム粒子の平均2次粒子径(A)とBET法比表面積(B)の値に相関してその範囲が決定される。つまりアスペクト比(H)は、平均2次粒子径(A)とBET法比表面積(B)との積(A×B)の値に基いて下記式(I)を満足する範囲である。
0.45・A・B<H<1.1・A・B (I)
アスペクト比(H)の好ましい範囲は下記式(I−a)、特に好ましい範囲は、下記式(I−b)を満足する範囲である。
0.50・A・B<H<1.1・A・B (I−a)
0.55・A・B<H<1.0・A・B (I−b)
前記式において、Aは水酸化マグネシウム粒子の平均2次粒子径(μm)を表し、Bは水酸化マグネシウム粒子のBET法により測定された比表面積(m/g)を表す。
【0010】
水酸化マグネシウム粒子のアスペクト比(H)が、(0.45・A・B)よりも小さいと、アスペクト比が小さい粒子が相対的に多くなり、本発明の水酸化マグネシウム粒子の特性が得られなくなる。また前記アスペクト比がかなり小さくなると従来公知のものと形状が区別できなくなる。一方アスペクト比(H)が(1.1・A・B)の値よりも大きい粒子は、安定して製造することが困難になり、また樹脂の添加剤として使用する場合その均一な混合や分散が困難となるので望ましくない。
【0011】
本発明の水酸化マグネシウム粒子は、前述したように粒度分布が比較的に狭く、つまり粒径が揃っている点にも特徴がある。この粒度分布の特徴は、下記式(II)を満足する2次粒子径(F)を有する水酸化マグネシウム粒子の体積割合が、全粒子の体積に対して60%以上、好ましくは65%以上特に好ましくは70%以上であることによって表される。
0.3・A<F<1.7・A (II)
(ただし式中、Fは、水酸化マグネシウム粒子の2次粒子径(μm)を示し、Aは前記式(I)と同じ定義を有する。)
【0012】
本発明における水酸化マグネシウム粒子は、レーザー回折散乱法で測定された平均2次粒子径(A)が0.15〜5μm、好ましくは0.5〜3.0μmであるのが望ましい。平均2次粒子径が大きくなるほどに、例えばゴム、セラミック、樹脂等の添加剤として使用する場合、樹脂との接触面が減り熱安定性が良くなるが、機械的強度の低下、外観不良という問題が出てくる。また吸着剤、中和剤等として粉末、または造粒して使用する場合の作業性等は、平均2次粒子径が大きくなるほど良い。一方医薬用として使用する場合も、大きいほど粉塵は立たず作業性も良いが、大きすぎると経口投与しづらく、また調剤しにくくなる。
ゆえに、水酸化マグネシウムとしての平均2次粒子径(A)の範囲は、0.15〜5μm、好ましくは0.5〜3.0μmが有利である。
また、水酸化マグネシウム粒子のBET法による比表面積(B)は1〜150m/g好ましくは、2〜130m/g、特に好ましくは3〜90m/gであるのが望ましい。
【0013】
本発明の水酸化マグネシウム粒子は、(i)アスペクト比(H)、(ii)平均2次粒子径(A)および(iii)BET法比表面積(B)がいずれも前記範囲を満足するものが好ましい。
【0014】
本発明の水酸化マグネシウム粒子は、前記した(i)アスペクト比(H)、(ii)平均2次粒子径(A)、(iii)BET法比表面積(B)、さらには粒度分布の特徴に基いて、合成樹脂の難燃剤としての利用に適している。水酸化マグネシウム粒子は、難燃剤として利用する場合には、合成樹脂100重量部当り、約5〜300重量部、好ましくは約10〜250重量部配合される。前記本発明の水酸化マグネシウム粒子を難燃剤として利用する場合、粒子のBET法で測定した比表面積は30m/g以下、好ましくは3〜20m/g、特に好ましくは3〜10m/gのものが適している。このように比較的多量の水酸化マグネシウム粒子を合成樹脂に配合した場合、成形時の加熱や成形品の使用時の加熱によって、成形品の劣化が起こり、成形品の本来の物性、例えば衝撃強度、伸び、引張り強度を低減させることがある。この原因は水酸化マグネシウム粒子の物理的性状よりも化学的性質、ことに不純物の種類と含有量に起因する。
【0015】
本発明者の研究によれば、本発明の水酸化マグネシウム粒子は、前記物理的性状を有しているとともに、その粒子中の不純物として鉄化合物およびマンガン化合物の含有量が合計で金属に換算して0.01重量%以下好ましくは、0.005重量%以下が望ましいことが判った。
本発明の水酸化マグネシウム粒子は、前記したように不純物として金属換算(Fe+Mn)の合計量が前記範囲であるのが好ましいが、さらに好ましいのは、コバルト化合物、クロム化合物、銅化合物、バナジウム化合物およびニッケル化合物の含有量も含めて重金属化合物の金属としての含有量が、0.02重量%以下であることが望ましい。すなわち、水酸化マグネシウム粒子は、金属として(Fe+Mn+Co+Cr+Cu+V+Ni)合計含有量が0.02重量%以下、好ましくは0.01重量%以下であるのが一層有利である。
【0016】
水酸化マグネシウム粒子中の鉄化合物およびマンガン化合物の含有量が多い程、配合した樹脂の熱安定性を著しく低下させる原因となる。
前記したように、水酸化マグネシウム粒子は、(i)アスペクト比、(ii)平均2次粒子径、(iii)BET法比表面積および(iv)鉄化合物およびマンガン化合物の合計含有量(またはさらに他の前記金属化合物の合計量)が、前記範囲であれば、樹脂との相溶性、分散性、成形および加工性、成形品の外観、機械的強度および難燃性の諸特性を満足する良好な品質の樹脂組成物が得られる。
【0017】
水酸化マグネシウム粒子中の鉄化合物およびマンガン化合物(さらに必要ならば、他の前記金属化合物)の含有量を前記範囲とするためには、後述する水酸化マグネシウム粒子の製造法において、原料となる塩化マグネシウムあるいは酸化マグネシウムとしてこれら不純物の含有量の少ないものを選択使用し、さらにアルカリ性化合物を使用する場合には、同様に高純度のものを使用すべきである。さらに反応装置、貯槽、配管、乾燥機、粉砕機などの製造プロセスの機器の材質として、前記不純物の溶出や混入の少ない物を使用する必要がある。
【0018】
本発明の水酸化マグネシウム粒子は、表面処理剤で処理して使用することができる。
表面処理剤として好ましく用いられるものを例示すれば次のとおりである。ステアリン酸、エルカ酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ベヘン酸等の炭素数10以上の高級脂肪酸類;前記高級脂肪酸のアルカリ金属塩;ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコールの硫酸エステル塩;ポリエチレングリコールエーテルの硫酸エステル塩、アミド結合硫酸エステル塩、エステル結合硫酸エステル塩、エステル結合スルホネート、アミド結合スルホン酸塩、エーテル結合スルホン酸塩、エーテル結合アルキルアリールスルホン酸塩、エステル結合アルキルアリールスルホン酸塩、アミド結合アルキルアリールスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤類;オルトリン酸とオレイルアルコール、ステアリルアルコール等のモノまたはジエステルまたは両者の混合物であって、それらの酸型またはアルカリ金属塩またはアミン塩等のリン酸エステル類;ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤;イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロフォスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス−(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス−(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等のチタネート系カップリング剤類;アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系カップリング剤類、トリフェニルホスファイト、ジフェニル・トリデシルホスファイト、フェニル・ジトリデシルホスファイト、フェニル・イソデシルホスファイト、トリ・ノニルフェニルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)−ジトリデシルホスファイト、トリラウリルチオホスファイト等、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート等の多価アルコールと脂肪酸のエステル類。
【0019】
前記した表面処理剤を使用して、水酸化マグネシウム粒子の表面コーティング処理をするには、それ自体公知の湿式または乾式法により実施できる。例えば湿式法としては、水酸化マグネシウム粒子のスラリーに該表面処理剤を液状またはエマルジョン状で加え、約100℃までの温度で機械的に十分混合すればよい。乾式法としては、水酸化マグネシウム粒子をヘンシェルミキサー等の混合機により、十分攪拌下で表面処理剤を液状、エマルジョン状、固形状で加え、加熱または非加熱下で十分混合すればよい。表面処理剤の添加量は、適宜選択できるが、該水酸化マグネシウム粒子の重量に基づいて、約10重量%以下とするのが好ましい。
表面処理をした水酸化マグネシウム粒子は、必要により、例えば水洗、脱水、造粒、乾燥、粉砕、分級等の手段を適宜選択して実施し、最終製品形態とすることができる。
【0020】
本発明者の研究によれば、前記したアスペクト比(H)によって特徴付けられる水酸化マグネシウム粒子は、塩化マグネシウムまたは酸化マグネシウムを原料としてそれ自体公知の方法で水酸化マグネシウム粒子を製造する方法において、その反応工程または水熱処理工程に、有機酸、ホウ酸、ケイ酸およびそれらの水可溶性塩よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を特定割合存在させることにより得ることが見出された。かくして本発明によれば、前記水酸化マグネシウム粒子の製造方法として下記(I)〜(IV)の方法が提供される。
【0021】
製造方法(I):
この製造方法(I)は、塩化マグネシウムとアルカリ物質とを水性媒体中で反応させて水酸化マグネシウム粒子を製造する方法において前記反応は、有機酸、ホウ酸、ケイ酸およびそれらの水可溶性塩よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物(以下“添加化合物”と略称することがある。)を塩化マグネシウムに対して0.01〜150モル%添加して行うことを特徴とする水酸化マグネシウム粒子の製造方法である。
【0022】
前記製造方法(I)は、塩化マグネシウムとアルカリ物質との水性媒体中における反応によるそれ自体公知の水酸化マグネシウム粒子の製造において、その反応系に所定量の添加化合物を存在させる点に特徴がある。アルカリ物質としては、例えば、アンモニア、水酸化アルカリ金属(代表的には水酸化カリおよび水酸化ナトリウム)および水酸化カルシウムが好適なものとして挙げられる。これらアルカリ物質は、塩化マグネシウム1当量当り、0.7〜1.2当量、好ましくは0.8〜1.1当量の割合で使用される。
【0023】
反応系に存在せしめる添加化合物は、有機酸、ホウ酸、ケイ酸またはこれらの水可溶性塩であり、これらは2種以上を組合せて使用することもできる。有機酸としては、クエン酸、酒石酸、酢酸およびシュウ酸を例示することができる。これら有機酸、ホウ酸およびケイ酸の水可溶性塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩などが挙げられる。添加化合物としては、ホウ酸、ケイ酸またはこれらの水可溶性塩を使用するのが好ましく、ホウ酸が特に好ましい。
【0024】
添加化合物は、塩化マグネシウムに対して0.01〜150モル%、好ましくは0.02〜140モル%の割合で使用される。この添加化合物の割合をこの範囲で変化させることにより、得られる水酸化マグネシウム粒子のアスペクト比(H)を任意にコントロールすることができる。所望の値のアスペクト比(H)の粒子を得るためには、あらかじめ簡単な実験により主として添加化合物の種類およびその割合を決定することができる。概して、添加化合物の割合(濃度)が高い方が低い場合に比べて、アスペクト比(H)の大きいものが得られる傾向にある。
【0025】
添加化合物の添加割合の好適な範囲は、添加化合物の種類より異なり、ホウ酸、ケイ酸またはそれらの塩の場合は、塩化マグネシウムに対して、好ましくは0.01〜20モル%、特に好ましくは0.02〜10モル%が適当である。一方、添加化合物が、有機酸またはその水可溶性塩の場合は、塩化マグネシウムに対して、好ましくは0.1〜140モル%の範囲である。
【0026】
前記塩化マグネシウムとアルカリ物質との水性媒体(好ましくは水)中での反応は、通常0〜60℃、好ましくは10〜50℃の範囲の温度で攪拌下に実施される。
前記反応により本発明の目的とする形状を有する水酸化マグネシウム粒子を得ることができる。しかし、得られた水酸化マグネシウム粒子をさらに水熱処理をすることにより、均一性があり、粒度分布が狭い優れた粒子とすることができる。水熱処理は、水性媒体中100〜250℃、好ましくは120〜200℃の温度で20分〜10時間、好ましくは30分〜8時間実施するのが適当である。
【0027】
製造方法(II):
この製造方法(II)は、塩化マグネシウムとアルカリ物質とを水性媒体中で反応させて、次いで得られた水酸化マグネシウム粒子スラリーを水熱処理して水酸化マグネシウム粒子を製造する方法において、前記水熱処理は有機酸、ホウ酸、ケイ酸およびそれらの水可溶性塩よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を水酸化マグネシウムに対して0.01〜150モル%添加して行うことを特徴とする水酸化マグネシウム粒子の製造方法である。
【0028】
この製造方法(II)は、前記製造方法(I)の反応工程においては添加化合物を存在させずに、(つまりそれ自体公知の方法で実施し)水熱処理工程に添加化合物を存在させる点において実質的に相違する。従ってこの製造方法(II)において塩化マグネシウムとアルカリ物質との反応は、アルカリ物質の種類と割合、反応条件など前記製造方法(I)に説明した内容と変更はない。水熱処理における添加化合物の種類も同様に前記したとおりであり添加化合物の割合も、生成した水酸化マグネシウムを基準にすることを除けば実質的に変更はない。
【0029】
製造方法(III):
この製造方法(III)は、酸化マグネシウムを水性媒体中で水和反応させて水酸化マグネシウム粒子を製造する方法において、前記水和反応は有機酸、ホウ酸、ケイ酸およびそれらの水可溶性塩よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を酸化マグネシウムに対して0.01〜150モル%以上添加して行うことを特徴とする水酸化マグネシウム粒子の製造方法である。
前記製造方法(III)は、酸化マグネシウムの水性媒体中における水和反応による、それ自体公知の水酸化マグネシウム粒子の製造方法において、その反応系に所定量の添加化合物を存在させる点に特徴がある。
この水和反応は通常0〜100℃、好ましくは20〜80℃の温度で、20分〜5時間、好ましくは30分〜4時間攪拌下に実施される。
【0030】
反応系に加えられる添加化合物は、前記製造方法(I)において説明したものと同じ化合物から選択される。その添加化合物の使用割合は、酸化マグネシウムに対して0.01〜150モル%、好ましくは0.02〜140モル%である。好ましい添加化合物の種類およびその割合は前記製造方法(I)において説明したものと同じである。
前記水和反応により、本発明の目的とする形状を有する水酸化マグネシウム粒子が得られる。また得られた水酸化マグネシウム粒子をさらに水熱処理することにより、粒子がより均一になり、粒度分布が狭い優れた粒子とすることができる。この水熱処理は、水性媒体中、100〜250℃、好ましくは120〜200℃の温度で、20分〜10時間、好ましくは30分〜8時間実施するのが望ましい。
【0031】
製造方法(IV):
この製造方法(IV)は、酸化マグネシウムを水性媒体中で水和反応させて、次いで得られた水酸化マグネシウム粒子のスラリーを水熱処理して水酸化マグネシウム粒子を製造する方法において、前記水熱処理は有機酸、ホウ酸、ケイ酸およびそれらの水可溶性塩よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を、水酸化マグネシウムに対して0.01〜150モル%添加して行うことを特徴とする水酸化マグネシウム粒子の製造方法である。
この製造方法(IV)は、前記製造方法(III)の水和反応においては添加化合物を存在させずに、水熱処理工程に添加化合物を存在させる点において実質的に相違する。従ってこの製造方法(IV)において水和反応の条件は、前記製造方法(III)に説明した内容と実質的に変わらない。水熱処理における添加化合物の種類も同様に製造方法(I)で説明したものが挙げられる。添加化合物の割合も、生成した水酸化マグネシウムを基準にすることを除けば実質的に前記製造方法(III)と特に変わらない。
【0032】
前記した製造方法(I)〜(IV)のいずれの方法によっても、本発明の目的とする水酸化マグネシウム粒子を得ることができる。前記方法のうち、製造方法(I)および(III)が、他の方法に比べて好ましく、特にこれらの方法において反応後に水熱処理を施すことにより、粒径並びにアスペクト比が均一で良好な品質の粒子を得ることができる。
得られた水酸化マグネシウム粒子は濾過、脱水後乾燥、粉砕などの手段によって粉末とすることができる。
本発明における前記した特定のアスペクト比によって特徴付られる水酸化マグネシウム粒子は、種々の用途に利用されるが、とりわけ合成樹脂の難燃剤として極めて有利に利用できることが見出された。
【0033】
かくして本発明によれば、合成樹脂100重量部に対して六角盤状の結晶形態を有しかつアスペクト比(H)が下記式(I)を満足し、かつ下記式(II)を満足する2次粒径(F)を有する水酸化マグネシウム粒子の体積割合が、全粒子の体積に対して60%以上である水酸化マグネシウム粒子5〜300重量部好ましくは10〜250重量部、配合したことを特徴とする難燃性樹脂組成物が提供される。
0.45・A・B<H<1.1・A・B (I)
(ただし式中、Hはアスペクト比を示し、Aはレーザー回折散乱法で測定された全粒子の平均2次粒子径(μm)を示し、BはBET法で測定された全粒子の比表面積(m/g)を示す。)
0.3・A<F<1.7・A (II)
(ただし式中、Fは水酸化マグネシウム粒子の2次粒子経(μm)を示し、Aは前記式(I)と同じ定義を有する。)
【0034】
本発明の難燃性樹脂組成物において、配合される水酸化マグネシウム粒子は、前記した本発明の水酸化マグネシウム粒子が使用され、前記(1)のアスペクト比(H)を有している。好ましい水酸化マグネシウム粒子は、既に説明したように、平均2次粒子径(A)、BET法比表面積(B)および粒度分布の特徴を有し、また不純物としての重金属含有量を満足し、さらに表面処理されたものである。ここではこれらについて説明は省略する。
【0035】
本発明の難燃性樹脂組成物に用いる合成樹脂としては、成形加工可能な任意の樹脂が利用できる。このような樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン−1共重合体、エチレン・4−メチルペンテン共重合体、プロピレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体等のようなオレフィンの重合体または共重合体;ポリスチレン、ABS、AA、AES、AS等のようなスチレンの重合体または共重合体、;塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、エチレン・塩化ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体のような塩化ビニル、酢酸ビニル系の重合体または共重合体;フェノキシ樹脂、ブタジエン樹脂、フッソ樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリケトン樹脂、メタクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、またSBR、BR、CR、CPE、CSM、NBR、IR、IIR、フッ素ゴム等のゴム類を例示できる。
これら合成樹脂のうち熱可塑性樹脂が適当である。
【0036】
熱可塑性樹脂の例としては、水酸化マグネシウム粒子による難燃効果、熱劣化防止効果および機械的強度保持特性の優れたポリオレフィンまたはその共重合体であり、具体的には、ポリプロピレンホモポリマー、エチレンプロピレン共重合体のようなポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、EVA(エチレンビニルアセテート樹脂)、EEA(エチレンエチルアクリレート樹脂)、EMA(エチレンアクリル酸メチル共重合樹脂)、EAA(エチレンアクリル酸共重合樹脂)、超高分子量ポリエチレンのようなポリエチレン系樹脂、およびポリブテン、ポリ4−メチルペンテン−1等のC〜Cのオレフィン(α−エチレン)の重合体もしくは共重合体である。
さらに、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、尿素樹脂等の熱硬化性樹脂およびEPDM、ブチルゴム、イソプレンゴム、SBR、NBR、クロロスルホン化ポリエチレン、NIR、ウレタンゴム、ブタジエンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の合成ゴムを例示することができる。
【0037】
本発明の樹脂組成物は、合成樹脂および水酸化マグネシウム粒子より実質的に形成されるが、さらに難燃助剤を少割合配合することができる。この難燃助剤を配合することにより、水酸化マグネシウム粒子の配合割合を少なくすることができるし、また難燃効果を増大することができる。
難燃助剤としては、赤リン、炭素粉末あるいはこれらの混合物であることが好ましい。赤リンとしては、難燃剤用の通常の赤リンの他に、例えば熱硬化性樹脂、ポリオレフィン、カルボン酸重合体、酸化チタンあるいはチタンアルミ縮合物で表面被覆した赤リンが使用しうる。また、炭素粉末としては、カーボンブラック、活性炭あるいは黒鉛が挙げられ、このカーボンブラックとしては、オイルファーネス法、ガスファーネス法、チャンネル法、サーマル法またはアセチレン法のいずれの方法によって調製されたものであってもよい。
【0038】
難燃助剤を配合する場合、その割合は、合成樹脂および水酸化マグネシウム粒子の合計重量に対して0.5〜20重量%、好ましくは1〜15重量%の範囲が適当である。本発明の樹脂組成物は、前記した割合で前記合成樹脂および水酸化マグネシウム粒子、必要により難燃助剤とを、それ自体公知の手段に従って混合すればよい。
【0039】
本発明の耐熱劣化性および難燃性を有する樹脂組成物は、上記成分以外にも慣用の他の添加剤を配合してもよい。このような添加剤としては、例えば酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、発泡剤、可塑剤、充填剤、補強剤、架橋剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤等を例示できる。
【0040】
かくして本発明によれば、実質的にハロゲンを含有しない難燃性樹脂組成物および成形品が提供できる。ここで“実質的にハロゲンを含有しない”とは、合成樹脂の製造のために触媒成分として混入されるハロゲン、その他樹脂に配合される前記添加物に含有されているハロゲンなどの微量のハロゲンは混入されていてもよいと理解すべきである。別の表現をすると難燃剤の目的で添加されるハロゲンを含有しないと理解すべきである。
【実施例】
【0041】
以下実施例を挙げて本発明を説明する。
【0042】
実施例において、水酸化マグネシウム粒子の(1)平均2次粒子径(2)BET法比表面積(3)アスペクト比および(4)粒度分布幅は、以下に記載する測定方法によって測定された値を意味する。
【0043】
(1)水酸化マグネシウム粒子の平均2次粒子径
MICROTRAC粒度分析計SPAタイプ(LEEDS &NORTHRUPINSTRUMENTS社製)を用いて測定決定する。試料粉末700mgを70mlの水に加えて、超音波(NISSEI社製、MODEL US−300、電流300μA)で3分間分散処理した後、その分散液の2〜4mlを採って、250mlの脱気水を収容した上記粒度分析計の試料室に加え、分析計を作動させて2分間その懸濁液を循環した後、粒度分布を測定する。合計2回の測定を行い、それぞれの測定について得られた50%累積2次粒子径の算術平均値を算出して、試料の平均2次粒子径とする。
【0044】
(2)水酸化マグネシウム粒子のBET法による比表面積
液体窒素の吸着法により測定した。
【0045】
(3)水酸化マグネシウム粒子のアスペクト比の測定
水酸化マグネシウム粒子は、図1に示すように単一結晶で同一粒子径の正六角柱の構造であるとして、下記A〜Eの実測値、計算値および文献値を基礎にしてXおよびYを求め、アスペクト比を算出した。
A (μm) ;平均2次粒子径 (実測値)
B (m/g) ;BET法比表面積 (実測値)
C (m) ;粒子1個当りの表面積 (計算値)
D (cm) ;粒子1個当りの体積 (計算値)
E (g/cm) ;水酸化マグネシウムの真比重 (文献値)
H ;アスペクト比 (計算値)
A=(4x+y1/2
C=(3*31/2+6xy)*10−12
D=3/2*31/2y*10−12
E=2.38
B=C/(D*E)
H=2x/y
(ただし H>1.30)
上記式よりx、yを求めアスペクト比を算出する。
【0046】
(4)粒度分布幅
(1)項で測定された粒度分布より粒子径が平均2次粒子径×0.3である累積体積分布度数を求めた。次いで同様に求めた粒子径が平均2次粒子径×1.7である累積体積分布度数から前数値を引いた値[すなわち、式(2)を満足する粒子の体積割合]を粒度分布幅(%)とした。
【0047】
比較例1
オートクレーブに0.5mol/Lの濃度に調整された塩化マグネシウム水溶液(和光純薬(株))400mlを入れ攪拌条件下に、3Nの苛性ソーダ溶液121mlを滴下しながら添加し、室温(25℃)にて30分間反応させて水酸化マグネシウム粒子サスペンション液を得た。
このサスペンション液を、180℃、2時間の条件下でまたは160℃、2時間の条件下で水熱処理し、脱水後、水洗し(200ml)、105℃で24時間乾燥して水酸化マグネシウム粒子を得た。
得られた各サンプルの平均2次粒子径、BET法比表面積、粒度分布幅およびアスペクト比を下記表1に示した。
【0048】
実施例1
オートクレーブに0.5mol/Lの濃度に調整された塩化マグネシウム水溶液(和光純薬(株))400mlおよび塩化マグネシウムに対して0.2mol%のホウ酸(BORAX製)を入れ攪拌条件下に、3Nの苛性ソーダ溶液121mlを滴下しながら添加し、室温(25℃)にて30分間反応させて水酸化マグネシウム粒子サスペンション液を得た。
このサスペンション液を、下記条件下で水熱処理し、脱水後、水洗し(200ml)、105℃で24時間乾燥して水酸化マグネシウム粒子を得た。
それぞれの水熱処理条件で得られた水酸化マグネシウム粒子のサンプルをサンプルA−1、A−2と呼ぶ。
水熱処理条件 サンプル名
(1)180℃、2時間 A−1
(2)160℃、2時間 A−2
得られた各サンプルの平均2次粒子径、BET法比表面積、粒度分布幅およびアスペクト比を下記表1に示した。
【0049】
実施例2
オートクレーブに0.5mol/Lの濃度に調整された塩化マグネシウム水溶液(和光純薬(株))400mlおよび塩化マグネシウムに対して1.7mol%のホウ酸(BORAX製)を入れ攪拌条件下に、3Nの苛性ソーダ溶液121mlを滴下しながら添加し、室温(25℃)にて30分間反応させて水酸化マグネシウム粒子サスペンション液を得た。
このサスペンション液を、下記条件下で水熱処理し、脱水後、水洗し(200ml)、105℃で24時間乾燥して水酸化マグネシウム粒子を得た。
それぞれの水熱処理条件で得られた水酸化マグネシウム粒子のサンプルをサンプルB−1、B−2と呼ぶ。
水熱処理条件 サンプル名
(1)180℃、2時間 B−1
(2)160℃、2時間 B−2
得られた各サンプルの平均2次粒子径、BET法比表面積、粒度分布幅およびアスペクト比を下記表1に示した。
【0050】
【表1】

【0051】
比較例2
オートクレーブに0.5mol/Lの濃度に調整された塩化マグネシウム水溶液(イオン苦汁)400mlを入れ攪拌条件下に、水酸化カルシウムのスラリー(3mol/L)60mlを滴下しながら添加し、室温(25℃)にて30分間反応させて水酸化マグネシウム粒子サスペンション液を得た。
このサスペンション液を、160℃、2時間の条件下で水熱処理し、脱水後、水洗し(200ml)、105℃で24時間乾燥して水酸化マグネシウム粒子を得た。
得られた各サンプルの平均2次粒子径、BET法比表面積、粒度分布幅およびアスペクト比を下記表2に示した。
【0052】
実施例3
比較例2において、塩化マグネシウム水溶液(イオン苦汁)にホウ酸(BORAX製)を塩化マグネシウムに対して0.2mol%添加する以外、比較例2と同様に水熱処理して水酸化マグネシウム粒子を得た。
得られた各サンプルの平均2次粒子径、BET法比表面積、粒度分布幅およびアスペクト比を下記表2に示した。
実施例4
比較例2において、塩化マグネシウム水溶液(イオン苦汁)にホウ酸(BORAX製)を塩化マグネシウムに対して0.4mol%添加する以外、比較例2と同様に水熱処理して水酸化マグネシウム粒子を得た。
得られた各サンプルの平均2次粒子径、BET法比表面積、粒度分布幅およびアスペクト比を下記表2に示した。
【0053】
【表2】

【0054】
比較例3
オートクレーブに0.5mol/Lの濃度に調整された塩化マグネシウム水溶液(和光純薬(株))400mlを入れ攪拌条件下に、水酸化カルシウムのスラリー(3mol/L)60mlを滴下しながら添加し、室温(25℃)にて30分間反応させて水酸化マグネシウム粒子サスペンション液を得た。
このサスペンション液を、160℃、2時間の条件下で水熱処理し、脱水後、水洗し(200ml)、105℃で24時間乾燥して水酸化マグネシウム粒子を得た。
得られた粒子の平均2次粒子径、BET法比表面積、粒度分布幅およびアスペクト比を下記表3に示した。
【0055】
実施例5
オートクレーブに0.5mol/Lの濃度に調整された塩化マグネシウム水溶液(和光純薬(株))400mlを入れ攪拌条件下に、水酸化カルシウムのスラリー(3mol/L)60mlを滴下しながら添加し、室温(25℃)にて30分間反応させて水酸化マグネシウム粒子サスペンション液を得た。
このサスペンション液に酢酸カルシウム(和光純薬(株))12.6g(水酸化マグネシウムに対し44mol%)を添加する。さらに下記条件下で水熱処理し、脱水後、水洗し(200ml)、105℃で24時間乾燥して水酸化マグネシウム粒子を得た。それぞれの水熱処理条件で得られた水酸化マグネシウム粒子のサンプルをサンプルC−1、C−2と呼ぶ。
水熱処理条件 サンプル名
(1)160℃、2時間 C−1
(2)120℃、2時間 C−2
得られた各サンプルの平均2次粒子径、BET法比表面積、粒度分布幅およびアスペクト比を下記表3に示した。
【0056】
実施例6
オートクレーブに0.5mol/Lの濃度に調整された塩化マグネシウム水溶液(和光純薬(株))400mlを入れ攪拌条件下に、水酸化カルシウムのスラリー(3mol/L)60mlを滴下しながら添加し、室温(25℃)にて30分間反応させて水酸化マグネシウム粒子サスペンション液を得た。
このサスペンション液に酢酸カルシウム(和光純薬(株))37.9g(水酸化マグネシウムに対し133mol%)を添加する。さらに下記条件下で水熱処理し、脱水後、水洗し(200ml)、105℃で24時間乾燥して水酸化マグネシウム粒子を得た。それぞれの水熱処理条件で得られた水酸化マグネシウム粒子のサンプルをサンプルD−1、D−2と呼ぶ。
水熱処理条件 サンプル名
(1)160℃、2時間 D−1
(2)120℃、2時間 D−2
得られた各サンプルの平均2次粒子径、BET法比表面積、粒度分布幅およびアスペクト比を下記表3に示した。
【0057】
【表3】

【0058】
比較例4
水酸化マグネシウム(協和化学工業:キスマ5)を1,050℃の温度で90分間焼成して得られた酸化マグネシウム8gを1.0mol/Lの濃度の塩化カルシウム水溶液(和光純薬(株)、25℃)500mlを含むオートクレーブ中に入れ、170℃、4時間、水和反応および水熱処理を行い脱水後、水洗し(200ml)、105℃で24時間乾燥して水酸化マグネシウム粒子を得た。
得られた各サンプルの平均2次粒子径、BET法比表面積、粒度分布幅およびアスペクト比を下記表4に示した。
【0059】
実施例7
比較例4において、塩化カルシウム水溶液(和光純薬(株)、25℃)にホウ酸(BORAX製)を水酸化マグネシウムに対して0.5mol%添加する以外、比較例4と同様に水和反応および水熱処理して水酸化マグネシウム粒子を得た。
得られた各サンプルの平均2次粒子径、BET法比表面積、粒度分布幅およびアスペクト比を下記表4に示した。
【0060】
実施例8
比較例4において、塩化カルシウム水溶液(和光純薬(株)、25℃)にホウ酸(BORAX製)を水酸化マグネシウムに対して1.0mol%添加する以外、比較例4と同様に水和反応および水熱処理して水酸化マグネシウム粒子を得た。
得られた各サンプルの平均2次粒子径、BET法比表面積、粒度分布幅およびアスペクト比を下記表4に示した。
【0061】
【表4】

【0062】
比較例5
ビーカーに4.0mol/Lの濃度に調整された塩化マグネシウム水溶液(ブライン;NEDMAG社製)75mlを入れ攪拌条件下に0.127mol/Lに調整された塩化カルシウム溶液(NEDMAG社製)225mlを滴下、室温にて1時間攪拌する。得られた溶液を脱水濾過し濾液を採取する。
オートクレーブにこの濾液を全量入れ攪拌条件下に、水酸化ナトリウム水溶液(3N)180mlを滴下しながら添加し、室温(25℃)にて20分間反応させて水酸化マグネシウム粒子サスペンション液を得た。
このサスペンション液を、170℃、2時間の条件下で水熱処理し、脱水後、水洗し(300ml)、105℃で24時間乾燥して水酸化マグネシウム粒子を得た。
得られたサンプルの平均2次粒子径、BET法比表面積、粒度分布幅およびアスペクト比を下記表5に示した。
【0063】
実施例9
比較例5において、採取した濾液にホウ酸(BORAX製)を塩化マグネシウムに対して0.3mol%添加する以外、比較例5と同様に水熱処理して水酸化マグネシウム粒子を得た。
得られたサンプルの平均2次粒子径、BET法比表面積、粒度分布幅およびアスペクト比を下記表5に示した。
【0064】
実施例10
比較例5において、採取した濾液にホウ酸(BORAX製)を塩化マグネシウムに対して0.4mol%添加する以外、比較例5と同様に水熱処理して水酸化マグネシウム粒子を得た。
得られたサンプルの平均2次粒子径、BET法比表面積、粒度分布幅およびアスペクト比を下記表5に示した。
【0065】
【表5】

【0066】
比較例6
オートクレーブに0.5mol/Lの濃度に調整された塩化マグネシウム水溶液(イオン苦汁)400mlを入れ攪拌条件下に、水酸化カルシウムのスラリー(3mol/L)60mlを滴下しながら添加し、室温(25℃)にて30分間反応させて水酸化マグネシウム粒子サスペンション液を得た。
このサスペンション液を、170℃、2時間の条件下で水熱処理し、脱水後、水洗し(200ml)、105℃で24時間乾燥して水酸化マグネシウム粒子を得た。
得られたサンプルの平均2次粒子径、BET法比表面積、粒度分布幅およびアスペクト比を下記表6に示した。
【0067】
実施例11
比較例6において、得られたサスペンション液にSiO=1.084g/lに調整された水ガラス(和光純薬(株))を水酸化マグネシウムに対して0.02mol%添加する以外、比較例6と同様に水熱処理して水酸化マグネシウム粒子を得た。
得られたサンプルの平均2次粒子径、BET法比表面積、粒度分布幅およびアスペクト比を下記表6に示した。
【0068】
実施例12
比較例6において、得られたサスペンション液にSiO=1.084g/lに調整された水ガラス(和光純薬(株))を水酸化マグネシウムに対して0.05mol%添加する以外、比較例6と同様に水熱処理して水酸化マグネシウム粒子を得た。
得られたサンプルの平均2次粒子径、BET法比表面積、粒度分布幅およびアスペクト比を下記表6に示した。
【0069】
【表6】

【0070】
比較例7
オートクレーブに0.5mol/Lの濃度に調整された塩化マグネシウム水溶液(イオン苦汁)400mlを入れ攪拌条件下に、水酸化カルシウムのスラリー(3mol/L)60mlを滴下しながら添加し、室温(25℃)にて30分間反応させて水酸化マグネシウム粒子サスペンション液を得た。
このサスペンション液を、170℃、2時間の条件下で水熱処理し、脱水後、水洗し(200ml)、105℃で24時間乾燥して水酸化マグネシウム粒子を得た。
得られたサンプルの平均2次粒子径、BET法比表面積、粒度分布幅およびアスペクト比を下記表7に示した。
【0071】
実施例13
比較例7において、得られたサスペンション液にシュウ酸ナトリウム(和光純薬(株))1.206g(水酸化マグネシウムに対し5mol%)添加する以外、比較例7と同様に水熱処理して水酸化マグネシウム粒子を得た。
得られたサンプルの平均2次粒子径、BET法比表面積、粒度分布幅およびアスペクト比を下記表7に示した。
【0072】
実施例14
比較例7において、得られたサスペンション液にシュウ酸ナトリウム(和光純薬(株))3.618g(水酸化マグネシウムに対し15mol%)添加する以外、比較例7と同様に水熱処理して水酸化マグネシウム粒子を得た。
得られたサンプルの平均2次粒子径、BET法比表面積、粒度分布幅およびアスペクト比を下記表7に示した。
【0073】
【表7】

【0074】
実施例15〜16および比較例8
前記比較例1、実施例1および実施例2により得られた水酸化マグネシウム粒子(水熱処理条件180℃〜2時間のもの)を、それぞれ水酸化マグネシウム粒子に対して、2重量%の付着量となるようにイソプロピルトリイソステアロイルチタネートにより表面処理した。表8に表面処理前の測定値を示した。
得られたそれぞれの水酸化マグネシウム粒子150重量部、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂100重量部、酸化防止剤(チバスペシャルケミカルズ社製のイルガノックス1010)0.2重量部の割合で混合したものを10kg用意した。その混合物を単軸押出機により220℃で混練しペレットを作成した。さらに、このペレットを圧縮成形機を用い220℃でシート状に成形しそれをテストピースに加工し物性および難燃性を測定した。その結果を表8に示す。
なお表8中、重金属の総含有量は、水酸化マグネシウム粒子中の重金属(Fe、Mn、Co、Cr、Cu、VおよびNi)の合計含有量を示す。
【0075】
【表8】

【0076】
比較例9
水酸化マグネシウム(重金属の総含量0.0351wt%)を1,050℃の温度で90分間焼成して得られた酸化マグネシウム8gを1.0mol/Lの濃度の塩化カルシウム水溶液(和光純薬(株)、25℃)500mlを含むオートクレーブ中に入れ、170℃、4時間、水和反応および水熱処理を行い脱水後、水洗し(200ml)、105℃で24時間乾燥して水酸化マグネシウム粒子を得た。
得られた各サンプルの平均2次粒子径、BET法比表面積、粒度分布幅およびアスペクト比を求めた。
【0077】
実施例17〜18および比較例10
前記比較例9、実施例7および実施例8により得られた水酸化マグネシウム粒子のそれぞれを水に乳化した。乳化物を80℃に加熱し水酸化マグネシウム粒子に対して2wt%のステアリン酸を加え表面処理した。つづいて、脱水、乾燥、粉砕した。表面処理前の各サンプルの平均2次粒子径、BET法比表面積、粒度分布幅およびアスペクト比を測定した。その結果を表9に示す。
得られたそれぞれの水酸化マグネシウム粒子150重量部、ポリプロピレン樹脂100重量部、酸化防止剤1重量部の割合で混合したものを10kg用意した。その混合物を2軸押出機により混練しぺレットを作成した。さらに、このペレットを用いて射出成形しテストピース作成後、物性、難燃性および熱安定性を測定した。その結果を表9に示す。
(i)テストピースの作成法、(ii)熱安定性の測定、(iii)引張強度試験、
および(iv)曲げ強度、曲げ弾性率試験は下記の方法により行った。
【0078】
(i)テストピースの作成法
表面処理された各試料の水酸化マグネシウム粒子を、付着水分をとるため105°×16hrs、さらに120°×2hrsの前処理乾燥後、樹脂(ポリプロピレン)および酸化防止剤とともに2軸押出機で230℃で混練し、そのサンプルを再び120°×2hrs乾燥を行い、射出成型機で230°で成型した。
2軸押出機:プラスチック工学研究所製
BT−30−S2−30−L
射出成型機:日清樹脂工業(株)製
FS 120S 18A SE
(ii)熱安定性の測定
装置:タバイエスペック製ギアオープンGPHH−100
設定条件:150℃、ダンパー開度50%
試験片2本を1組として上部を紙で挟んで金属製クリップでとめ、回轉リングに吊るし、経時的に抜き取る。
テストピース:1/12インチ
判定:テストピースに白化が認められるまでの時間を熱劣化の目安とした。また150℃におけるテストピースの10重量%が減少するまでの時間も調べた。
(iii)引張強度試験
JIS K 7113 による
(iv)曲げ強度、曲げ弾性率試験
JIS K 7203 による
【0079】
【表9】

【0080】
比較例11
オートクレーブに0.5mol/Lの濃度に調整された塩化マグネシウム水溶液(イオン苦汁)400mlを入れ攪拌条件下に、水酸化カルシウムのスラリー(3mol/L)60mlを滴下しながら添加し、室温(25℃)にて30分間反応させて水酸化マグネシウム粒子サスペンション液を得た。
このサスペンション液を、160℃、2時間の条件下で水熱処理し、脱水後、水洗し(200ml)、105℃で24時間乾燥して水酸化マグネシウム粒子を得た。
得られた粒子の平均2次粒子径、BET法比表面積、粒度分布幅およびアスペクト比を求めた。
【0081】
実施例19〜20および比較例12
前記比較例11、実施例5および実施例6により得られた水酸化マグネシウム粒子(水熱処理条件160℃〜2時間)を、それぞれ水洗後再乳化した。乳化物を80℃に加温し水酸化マグネシウムに対して3wt%のオレイン酸ソーダを加え表面処理をした。つづいて、脱水、乾燥、粉砕した。得られた表面処理前のサンプルの平均2次粒子径、BET法比表面積、粒度分布幅およびアスペクト比を測定した。その結果を表10に示す。
得られたそれぞれの水酸化マグネシウム粒子180重量部、ポリプロピレン樹脂100重量部、酸化防止剤1重量部の割合で混合したものを10kg用意した。その混合物を単軸押出機により混練しぺレットを作成した。さらに、このペレットを用いて射出成形しテストピース作成後、物性および難燃性を測定した。その結果を表10に示す。
【0082】
【表10】

【0083】
実施例21
下記(1)〜(3)の樹脂組成物をそれぞれ調製し、実施例15〜16と同様にテストピースを作成し、それぞれの難燃性を評価した。ただし、(1)のナイロン6の場合、混練および射出成形は250℃で行った。その結果、(1)および(2)のテストピースはUL94−V 1/16インチの難燃性はV−0であった。(3)のテストピースはUL94−V 1/8インチでV−0であった。
【0084】
(1)樹脂組成物
190重量部 水酸化マグネシウム粒子(実施例1のテストサンプルA−1)
100重量部 ナイロン6(比重1.14射出成形グレード)
0.2重量部 酸化防止剤(チバスペシャルケミカルズ社製 イルガノックス1098)
(2)樹脂組成物
210重量部 水酸化マグネシウム粒子(実施例1のテストサンプルA−1)
100重量部 高密度ポリエチレン(MFI 5.0g/10分の射出成形グレード)
0.25重量部 酸化防止剤(チバスペシャルケミカルズ社製 イルガノックス1010)
0.25重量部 酸化防止剤(吉富製薬製 DLTP)
(3)樹脂組成物
10重量部 水酸化マグネシウム粒子(実施例2のテストサンプルB−1において表面処理が水酸化マグネシウム粒子に対し0.3%のγ−アミノプロピルトリメトキシシランに変更されたもの)
10重量部 赤リン(燐化学工業製;ノーバエクセル140)
5重量部 カーボンブラック(オイルファーネス法 FEF)
95重量部 ABS樹脂(MFR/25g/10分の耐衝撃グレード)
5重量部 ナイロン6(比重1.14の射出成形グレード)
0.2重量部 酸化防止剤(チバスペシャルケミカルズ社製 イルガノックス1010)
【0085】
実施例22
下記樹脂組成物を調製し、オーブンロールで70℃で素練り(mastication)を行い、それを1日後に160℃で30分間加硫を行い、厚さ1/8インチの板を得た。得られた板よりUL94−V試験用の厚さ1/8インチのテストピースを作成した。このテストピースについて、UL94Vの試験を行った。試験の結果、難燃性はV−1であった。
組成
100重量部 EPDMゴム(エチレン/プロピレン比=50/50モル)
170重量部 水酸化マグネシウム粒子(実施例1のテストサンプルA−1)
3重量部 ディクミルパーオキサイド
0.5重量部 ポリ(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)
1重量部 シランカップリング剤(日本ユニチカ製 A−172)
1重量部 ステアリン酸
1重量部 イオウ
【0086】
実施例23
下記樹脂組成物を調製し、約30℃でニーダーで混練し、混練されたものを90℃で15分硬化させ、厚さ1/8インチの板を得た。得られた板によりUL94−V試験用の厚さ1/8インチテストピースを作成した。このテストピースについて、UL94Vの試験を行った。試験の結果、難燃性はV−0であった。
組成
100重量部 エポキシ樹脂(比重1.17)
100重量部 水酸化マグネシウム粒子(実施例1のテストサンプルA−1)
5重量部 赤リン(燐化学製 ノーバエクセル140)
1重量部 カーボンブラック(オイルファーネス法 FEF)
10重量部 硬化剤(チバスペシャルケミカルズ社製 HY951)
1重量部 ステアリン酸
0.2重量部 イルガノックス1010
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】水酸化マグネシウムの単一結晶粒子の正六角柱を模式的に示した斜視図およびその側面図を示す。
【符号の説明】
【0088】
X: 正六角形の一辺の長さ(μm)
Y: 柱の厚さ(μm)
A: 粒子径(μm)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
六角盤状の結晶形態を有しかつアスペクト比(H)が下記式(I)を満足し、かつ下記式(II)を満足する2次粒径(F)を有する水酸化マグネシウム粒子の体積割合が、全粒子の体積に対して60%以上である水酸化マグネシウム粒子。
0.45・A・B<H<1.1・A・B (I)
(ただし式中、Hはアスペクト比を示し、Aはレーザー回折散乱法で測定された全粒子の平均2次粒子径(μm)を示し、BはBET法で測定された全粒子の比表面積(m/g)を示す。)
0.3・A<F<1.7・A (II)
(ただし式中、Fは水酸化マグネシウム粒子の2次粒子経(μm)を示し、Aは前記式(I)と同じ定義を有する。)
【請求項2】
アスペクト比(H)が下記式(I−a)を満足する請求項1記載の水酸化マグネシウム粒子。
0.50・A・B<H<1.1・A・B (I−a)
(ただし式中、AおよびBは、前記式(I)と同じ定義を意味する。)
【請求項3】
レーザー回折散乱法で測定された平均2次粒子径(A)が0.15〜5.0μmである請求項1記載の水酸化マグネシウム粒子。
【請求項4】
レーザー回折散乱法で測定された平均2次粒子径(A)が0.50〜3.0μmである請求項1記載の水酸化マグネシウム粒子。
【請求項5】
BET法で測定された比表面積(B)が1〜150m/gである請求項1記載の水酸化マグネシウム粒子。
【請求項6】
BET法で測定された比表面積(B)が2〜130m/gである請求項1記載の水酸化マグネシウム粒子。
【請求項7】
鉄化合物およびマンガン化合物の含有量が合計で金属に換算して0.01重量%以下である請求項1記載の水酸化マグネシウム粒子。
【請求項8】
鉄化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、クロム化合物、銅化合物、バナジウム化合物およびニッケル化合物の合計含有量が、金属に換算して0.02重量%以下である請求項1記載の水酸化マグネシウム粒子。
【請求項9】
水酸化マグネシウム粒子が高級脂肪酸類、アニオン系界面活性剤、リン酸エステル類、カップリング剤および多価アルコールと脂肪酸のエステル類よりなる群から選ばれた少なくとも1種の表面処理剤により、表面処理されている請求項1記載の水酸化マグネシウム粒子。
【請求項10】
六角盤状の結晶形態を有しかつアスペクト比(H)が下記式(I)を満足し、かつ下記式(II)を満足する2次粒径(F)を有する水酸化マグネシウム粒子の体積割合が、全粒子の体積に対して60%以上である水酸化マグネシウム粒子よりなる難燃剤。
0.45・A・B<H<1.1・A・B (I)
(ただし式中、Hはアスペクト比を示し、Aはレーザー回折散乱法で測定された全粒子の平均2次粒子径(μm)を示し、BはBET法で測定された全粒子の比表面積(m/g)を示す。)
0.3・A<F<1.7・A (II)
(ただし式中、Fは水酸化マグネシウム粒子の2次粒子経(μm)を示し、Aは前記式(I)と同じ定義を有する。)
【請求項11】
アスペクト比(H)が下記式(I−a)を満足する請求項10記載の難燃剤。
0.50・A・B<H<1.1・A・B (I−a)
(ただし式中、AおよびBは、前記式(I)と同じ定義を意味する。)
【請求項12】
該水酸化マグネシウム粒子は、BET法で測定された比表面積(B)が30m/g以下である請求項10記載の難燃剤。
【請求項13】
該水酸化マグネシウム粒子は、BET法で測定された比表面積(B)が3〜20m/gである請求項10記載の難燃剤。
【請求項14】
該水酸化マグネシウム粒子は、BET法で測定された比表面積(B)が3〜10m/gである請求項10記載の難燃剤。
【請求項15】
該水酸化マグネシウム粒子は、鉄化合物およびマンガン化合物の含有量が合計で、金属に換算して0.01重量%以下である請求項10記載の難燃剤。
【請求項16】
該水酸化マグネシウム粒子は、鉄化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、クロム化合物、銅化合物、バナジウム化合物およびニッケル化合物の合計含有量が、金属に換算して0.02重量%以下である請求項10記載の難燃剤。

【図1】
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【公開番号】特開2006−160603(P2006−160603A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367804(P2005−367804)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【分割の表示】特願2000−588078(P2000−588078)の分割
【原出願日】平成11年12月13日(1999.12.13)
【出願人】(000162489)協和化学工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】