説明

水酸基含有化合物及び該化合物を含有してなる合成樹脂組成物

【課題】合成樹脂骨格の側鎖に対してイオン性基を導入することが可能な、新規で帯電防止能に優れた化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される水酸基含有化合物;式中のRは、少なくとも1つの水酸基を有したアルキル基、Rは水素原子、又は、水酸基で置換してもよいアルキル基、Rは水素原子、メチル基又はエチル基、Rは炭素原子数1〜8の直鎖又は分岐のアルキレン基、Aは−O−又は−N(H)−を表す。Bは−NR又は−(NRであり、R及びRは各々炭素原子数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基、Rは炭素原子数1〜8の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、Xはハロゲンイオン、メチル硫酸イオン(CHOSO)又はエチル硫酸イオン(COSO)を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸基を含有する新規な化合物に関し、特に、第3級アミン及び第4級アンモニウム塩化合物を包含する、帯電防止剤として有用な水酸基含有化合物及び該化合物を含有してなる合成樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂は、軽量であること、加工が容易であること、用途に応じて素材を設計することができる等の優れた特性を有しているため、現代では欠かすことのできない重要な素材である。例えば、合成樹脂は高い電気絶縁性を有するという特性を有することから、電気製品の各種部材として頻繁に利用されている。しかしながら、合成樹脂の絶縁性に起因して、摩擦等により合成樹脂成形品が容易に帯電するという問題があった。
【0003】
即ち、帯電した合成樹脂成形品は、周囲の埃やチリを引き付けるために汚れやすく、合成樹脂成形品の外観を損ねるという問題がある。また、電子製品、例えば、コンピューター等の精密機器は、合成樹脂成形部材の帯電が原因となって回路が誤作動することがある。更に、電撃による問題も存在し、例えば、合成樹脂成形品から人体に対して電撃が発生すると人に不快感を与えるし、また、可燃性気体や粉塵のあるところでは、爆発事故を誘発する可能性もある。
【0004】
従ってこのような問題を解消するために、通常、合成樹脂には帯電を防止する処理が施されている。最も一般的な処理方法は、合成樹脂に帯電防止剤を添加する方法である。帯電防止剤としては、合成樹脂の分子中に帯電防止ユニットを共重合(合成樹脂骨格に組込む)させる永久帯電防止剤と、合成樹脂を加工成形する際に添加する、いわゆる練り込み型帯電防止剤に大別することができる。
【0005】
これらのうち練り込み型帯電防止剤は、合成樹脂の表面にブリードして帯電防止効果を発揮するものであるが、摩擦や水洗などにより合成樹脂の表面から帯電防止剤が除去されるため、帯電防止効果の持続性が十分でないという問題があった。又、合成樹脂との相溶性が良くない場合には、内部の帯電防止剤がすぐに合成樹脂表面にブリードアウトするため、数日から数週間で効果が無くなるという問題があった。そこで、帯電防止効果の持続性を改善するために、高分子系の帯電防止剤が検討されている。実際、このような高分子系の帯電防止剤を使用した、ポリオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリル樹脂(例えば、特許文献1)やポリエーテルエステルアミド(例えば、特許文献2)は既に市販されているが、これらは前記問題点を解消するには至っておらず、更なる改良が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−101444号公報
【特許文献2】特開昭62−273252号公報
【0007】
そこで本発明者等は、ブリードアウトがなく、帯電防止能に優れた帯電防止剤を見出すべく鋭意検討を重ねた結果、分子の片末端に水酸基を有し、他方の分子片末端にイオン基であるアンモニウム塩を有する構造の分子を使用することによって、様々な合成樹脂骨格の側鎖にイオン基を導入することが可能となり、前記問題点を解決することができることを見出し本発明に到達した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって本発明の第1の目的は、ブリードアウトがなく、帯電防止能に優れた効果を発揮する、帯電防止剤(又はその前駆体)として有用な、水酸基含有化合物を提供することにある。
本発明の第2の目的は、ブリードアウトがないだけでなく帯電防止能にも優れた帯電防止剤(又はその前駆体)を提供することにある。
更に本発明の第3の目的は、帯電防止性に優れた合成樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち本発明は、下記化1の一般式(1)で表されることを特徴とする水酸基含有化合物、該化合物を含有する帯電防止剤、及び、該化合物を合成樹脂中に1〜60質量%となるように含有させてなる帯電防止性合成樹脂組成物である。
【化1】


但し、式中のRは、少なくとも1つの水酸基を有した炭素原子数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基、Rは水素原子、又は、水酸基で置換してもよい炭素原子数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基、Rは水素原子、又は、メチル基若しくはエチル基、Rは炭素原子数1〜8の直鎖又は分岐のアルキレン基、Aは−O−又は−N(H)−を表す。Bは−NR又は−(NRであり、R及びRは各々独立に炭素原子数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基を表し(但しRが水素原子の場合は、炭素原子数2〜8の直鎖又は分岐のアルキル基を表す)、Rは炭素原子数1〜8の直鎖、分岐又は環状のアルキル基又は置換基を有してもよいフェニル基若しくはベンジル基を表し、Xはハロゲンイオン、メチル硫酸イオン(CHOSO)又はエチル硫酸イオン(COSO)を表す。
【0010】
本発明においては、前記R及びRがヒドロキシエチル基であることが好ましい。また、R〜Rはメチル基又はエチル基であることが好ましく、Aは−N(H)−、Xは、塩素イオン、臭素イオン又はヨウ素イオンである事が好ましい。
【0011】
本発明の帯電防止性合成樹脂組成物に使用する合成樹脂は、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、ビニル樹脂又はアクリル樹脂から選択される1種、又は、少なくとも2種からなるアロイ樹脂であることが好ましく、特にウレタン樹脂である事が好ましい。またこのウレタン樹脂は、ウレタン樹脂を水分散させてなる水系ウレタン樹脂であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水酸基含有4級アンモニウム塩化合物は、合成樹脂骨格の側鎖に対してイオン性基を導入することが可能な、新規で帯電防止能に優れた化合物であるので、ブリードアウトのない帯電防止剤、或いは、帯電防止性に優れた合成樹脂組成物を提供するのに好適である。また、本発明の3級アミン化合物は4級アンモニウム塩の前駆体等として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
下記化1の一般式(1)
【化1】

で表される本発明の水酸基含有化合物は、文献未載の新規な化合物である。
但し、式中のRは、少なくとも1つの水酸基を有した炭素原子数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基、Rは水素原子、又は、水酸基で置換してもよい炭素原子数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基、Rは水素原子、又は、メチル基若しくはエチル基、Rは炭素原子数1〜8の直鎖又は分岐のアルキレン基、Aは−O−又は−N(H)−を表す。Bは−NR又は−(NRであり、R及びRは各々独立に炭素原子数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基を表し(但しRが水素原子の場合は、炭素原子数2〜8の直鎖又は分岐のアルキル基を表す)、Rは炭素原子数1〜8の直鎖、分岐又は環状のアルキル基又は置換基を有してもよいフェニル基若しくはベンジル基を表し、Xはハロゲンイオン、メチル硫酸イオン(CHOSO)又はエチル硫酸イオン(COSO)を表す。
【0014】
Bが−NRのとき、一般式(1)の化合物は下記一般式(2)で表される。
【化2】

【0015】
Bが−(NRのとき、一般式(1)の化合物は下記一般式(3)で表される。
【化3】

【0016】
上記一般式(1)におけるR又はRで表される炭素原子数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリブチル、ペンチル、イソペンチル、ターシャリペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル等が挙げられ、原料入手容易性及び合成容易性の観点から、炭素原子数1〜4のものが好ましく、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
【0017】
前記Rで表される炭素原子数1〜8の直鎖又は分岐のアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ターシャリブチレン、ペンチレン、イソペンチレン、ターシャリペンチレン、ネオペンチレン、ヘキシレン、イソヘキシレンン、ヘプチレン、オクチレン、2−エチルヘキシレン等が挙げられ、原料入手容易性及び合成容易性の観点から、炭素原子数1〜4のものが好ましく、特にプロピレン基であることが好ましい。
【0018】
前記R又はRで表される炭素原子数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基としては、前記R又はRで示した基と同様の基が挙げられるが、原料入手容易性及び合成容易性の観点からは、炭素原子数1〜4のアルキル基であることが好ましく、特にメチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0019】
前記Rで表される炭素原子数1〜8の直鎖、分岐又は環状のアルキル基としては、前記R又はRで示した基の他、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロヘキシル等が挙げられる。本発明においては、炭素原子数1〜4のアルキル基が好ましく、特にメチル基又はエチル基が好ましい。
【0020】
前記Xは、ハロゲンイオン、メチル硫酸イオン(CHOSO)又はエチル硫酸イオン(COSO)であるが、作業性安全性の面から、本発明に置いては特に、塩素イオン、臭素イオン又はヨウ素イオン等のハロゲンイオンが好ましい。
【0021】
本発明の一般式(1)のBが−NRで表される水酸基含有アミン化合物(一般式(2))の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、アルカノールアミン化合物とアミノアルキル(メタ)アクリレート又はアミノアルキル(メタ)アクリルアミドとのマイケル付加反応により容易に製造することができる。アルカノールアミン化合物は、反応性の観点から、1級又は2級アミン化合物であることが好ましい。また、反応温度は80〜120℃であることが好ましく、反応時間は5〜15時間であることが好ましい。更に、これらの反応に際しては、必要に応じて各種の溶媒及び触媒を用いることができる。
【0022】
上記アルカノールアミン化合物としては、例えば、エタノールアミン、n−プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、β−プロパノールアミン、n−ブタノールアミン、イソブタノールアミン、2,2−ジメチルエタノールアミン、ペンタノールアミン、ヘキサノールアミン、ヘプタノールアミン、オクタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルイソプロパノールアミン、N−メチルブタノールアミン、N−メチルペンタノールアミン、N−メチルヘキサノールアミン、N−メチルヘプタノールアミン、N−メチルオクタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−ターシャリブチルエタノールアミン等のモノアルカノールアミン;ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジブタノールアミン、ジ−第2ブタノールアミン等のジアルカノールアミンが挙げられる。入手容易性及び反応容易性の観点から、炭素原子数2〜4のアルカノールアミンが好ましく、ジアルカノールアミンがより好ましく、ジエタノールアミンが最も好ましい。
【0023】
前記アミノアルキル(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
前記アミノアルキル(メタ)アクリルアミド化合物としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノジメチルプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0025】
本発明の一般式(2)で表される化合物の具体例としては、以下のNo.1〜4の化合物が挙げられる。ただし、本発明はこれらの化合物によって何ら制限を受けるものではない。
【0026】
【化4】

【0027】
【化5】

【0028】
【化6】

【0029】
【化7】

【0030】
本発明の一般式(3)で表される水酸基含有4級アンモニウム化合物の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、アミノアルキル(メタ)アクリレート又はアミノアルキル(メタ)アクリルアミドを予め4級化剤を用いて4級化した後、アルカノールアミン化合物とのマイケル付加反応をさせることによって製造することができる。
【0031】
上記4級化剤としては、例えば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等のアルキル硫酸、アルキルベンジルクロライド、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、ベンジルヨーダイド、メチルクロライド、エチルクロライド、ブチルクロライド、プロピルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、ブチルブロマイド、メチルヨーダイド、エチルヨーダイド、プロピルヨーダイド、ブチルヨーダイド、ヘキシルヨーダイド、シクロペンチルクロライド、シクロペンチルヨーダイド、シクロヘキシルクロライド、シクロヘキシルブロマイド、シクロヘキシルヨーダイド等が挙げられる。これらの4級化剤は、通常単独で又は2種以上を混合して用いられる。本発明においては、作業安全性の観点からハロゲン化アルキルを用いることが好ましく、反応性等の観点からは、メチルクロライド又はエチルクロライドを用いることがより好ましい。
【0032】
前記4級化剤の使用量及び反応方法は特に限定されず、一般的な合成方法によって製造可能である。例えば使用量については、3級アミノ基に対して4級化剤を等モル使用し、4級化反応に際しては、反応物の着色を防止するために、窒素雰囲気下の15〜140℃で、具体的には、4級化剤の添加後約1〜6時間、70〜140℃で熟成する方法等が挙げられる。
【0033】
本発明の一般式(3)で表される化合物としては、例えば、前記No.1〜No.4の化合物の4級化アンモニウム塩化合物に対応する、以下のNo.5〜No.6の化合物が挙げられる。ただし、本発明はこれらの化合物によって何ら制限を受けるものではない。
【0034】
【化8】

【0035】
【化9】

【0036】
本発明の水酸基含有化合物は、合成樹脂用帯電防止剤として特に有用である。
本発明の水酸基含有化合物の合成樹脂への配合方法は、合成樹脂への練り込み法でも、合成骨格中への共重合による組込み法でも良いが、ブリード防止の観点から組込み法がより好ましいといえる。本発明の水酸基含有化合物は、水酸基と反応可能な官能基(例えばイソシアネート基等)を有する合成樹脂原料化合物との共重合反応により、合成樹脂骨格中に容易に組込むことができる。更に、2個の水酸基を有する本発明の水酸基含有化合物を用いた場合には、合成樹脂骨格の側鎖に容易にイオン基を導入することができるので、帯電防止能に顕著な効果を発現することが可能となる。
【0037】
本発明で使用する上記合成樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素(ウレア)樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、キシレン樹脂及びエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、ビニル樹脂及びアクリル樹脂からなる群の中から選択される1種、或いは、前記群の中から選択される2種以上の樹脂によるアロイ樹脂を挙げることができる。特に、共重合によって合成樹脂骨格中に組み入れることができるという観点から、溶剤系又は水系ウレタン樹脂が好適である。
【0038】
本発明の一般式(2)で表される水酸基含有3級アミン化合物は、例えば、水系ウレタン樹脂を用いる場合は、該3級アミン化合物を合成樹脂中に導入(合成骨格への組込み)した後、前記したような一般に用いられる4級化剤によって4級化することにより、帯電防止性を付与することができるが、リン酸等の不(低)揮発性の酸を用いた中和によるイオン形成によっても、帯電防止性を付与することが可能である。
【0039】
帯電防止性合成樹脂組成物中における、本発明の水酸基含有化合物の配合量は1〜60質量%であるが、好ましくは5〜40質量%であり、10〜30質量%であることが特に好ましい。本発明の水酸基含有化合物の配合量が1質量%未満であると帯電防止効果が充分に発揮されない場合があり、60質量%を超えると表面タック性等、合成樹脂としての物性面が劣る傾向となる。
【0040】
また、本発明の水酸基含有化合物を合成樹脂の帯電防止剤として用いる際には、汎用の添加剤を併用することができる。これらの添加剤としては、例えば、フェノール系抗酸化剤、チオエーテル系抗酸化剤、有機ホスファイト又はホスホナイト系抗酸化剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系又はトリアリールトリアジン系等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、金属石ケン類、造核剤、本発明の化合物以外の帯電防止剤、可塑剤、難燃剤、充填剤、顔料等が挙げられる。これらの添加剤は、必要に応じて一種または二種以上用いることができる。
【0041】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0042】
[製造例1−1〜1−5](水酸基含有3級アミン化合物(前記No.3)の合成)
ジエタノールアミン(三井化学(株)製):以下DEAと略す)とN,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド((株)興人製):以下「化合物a」と略す)を、下記表1に記載した配合比で、攪拌機付きの反応容器に入れ、表1に記載した反応温度及び反応時間で反応させ、淡黄色の液状物を得た。収量及び収率を併せて表1に示した。
【0043】
前記製造例1−1で得られた化合物のH−NMRスペクトルは、(400MHz,CDCl,ppm):8.01(t,1H,−NH),4.75(s,2H,−OH),3.34(t,4H,−CH),2.95(q,2H,−CH),2.54(d,2H,−CH),2.38(t,4H,−CH),2.07(m,4H,−CH),1.94(s,6H,−CH),1.40(quin,2H,−CH)であり、目的物(化合物No.3)であることを確認した。
【0044】
前記製造例1−1〜1−5の反応後の反応率、目的物含有量及び原料残存率をH−NMRにより算出した。結果を表1に併せて示した。
【0045】
[製造例2−1](水酸基含有4級アンモニウム塩化合物(前記No.5)の合成)
[アクリルアミド4級アンモニウム塩の合成]
156gの前記化合物a(1.0モル)を234gのテトラヒドロフランに溶解させ、25〜40℃で、化合物aの残存率が5%以下になるまでメチルクロライドを供給した。得られた白色沈殿物をろ過した後、減圧乾燥し、アクリルアミド4級アンモニウム塩化合物(下記化合物a-q)を得た。
【0046】
【化10】

【0047】
[水酸基含有4級アンモニウム塩化合物の合成]
DEA105g(1.0モル)と前記で得られた化合物a-qの227g(1.1モル)を攪拌機付きの反応容器に入れ、反応温度100℃で15時間反応させ、淡黄色の液状物を得た。収量及び収率を併せて表1に示した。
【0048】
前記製造例2−1で得られた化合物のH−NMRスペクトルは、(400MHz,DO,ppm):3.52(t,4H,−CH2),3.20(m,2H,−CH),3.13(t,2H,−CH2),2.97(s,9H,−CH),2.72(t,2H,−CH),2.54(t,4H,−CH),2.29(t,2H,−CH),1.87(q,2H,−CH)であり、目的物(化合物No.5)であることを確認した。
【0049】
前記製造例1の場合と同様にして、製造例2−1反応後の反応率、目的物含有量及び原料残存率をH−NMRによって算出した。結果を表1に示した。表1の結果から明らかなように、本発明の水酸基含有3級アミン化合物及び水酸基含有4級アンモニウム塩化合物は、緩い反応条件で、収率良く製造することのできることが確認された。
【0050】
【表1】

【0051】
[実施例1]
[水系ウレタン樹脂組成物の作製]
1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸及びイソフタル酸とのポリエステルポリオール(数平均分子量1750)46.8g(0.027モル)、アデカポリエーテルBPX-11((株)ADEKA製ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物)7.0g(0.019モル)、メラミン3.8g(0.030モル)、4、4‘−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート112.2g(0.428モル)及び前記No.5の化合物56.7g(0.182モル)、及びN-メチル-2-ピロリドン173.4gを反応フラスコに仕込み、窒素気流中の95〜125℃で、理論NCO含有量が1.47(%)になるまで、3〜6時間反応させ、ウレタンプレポリマー組成物を得た。得られたウレタンプレポリマー組成物450gを、SE−21(ワッカーシリコン社製シリコーン系消泡剤)0.5gを溶解したイオン交換水660gに添加し、室温で30分間攪拌した。次いで、25%エチレンジアミン水溶液25.7g、及び、水で25%に希釈したアジピン酸ジヒドラジド懸濁液12.4gを加え、室温で30分間攪拌して水系ウレタン樹脂組成物を得た。
【0052】
[試験塗膜の作製]
得られた水系ウレタン樹脂組成物を、バーコーターを用いてガラス板上に膜厚が200μmとなるように塗布し、25℃で24時間放置した後、120℃で1時間乾燥させて試験塗膜を作製した。
【0053】
[導電性評価]
作製した試験塗膜を23℃50%RHで1週間放置した後、表面抵抗率(Ω/□)を下記の条件に基づき測定した。結果を下記表2に記した。
【0054】
[表面抵抗率測定方法]
使用機器:三菱化学(株)製ハイレスタIP MCP−HT260、
電 圧:100V印加、
測定時間:10秒、プローブ:HA
【0055】
[比較例1]
実施例1で使用したNo.5の化合物の替わりにジメチロールプロピオン酸を同モル量用い、中和剤としてトリエチルアミン(ジメチロールプロピオン酸のモル数に対して1.01倍モル)を添加したこと以外は、実施例1と同様にして試験塗膜を作製し、導電性の評価を行った。結果を表2に記した。
【0056】
[比較例]
実施例1で使用したNo.5の化合物の替わりにN−メチルジエタノールアミンを同モル量用い、中和剤として、N−メチルジエタノールアミンのモル数に対して0.98倍モルの酢酸を添加したこと以外は、実施例1と同様にして試験塗膜を作製し、導電性の評価を行った。結果を表2に記した。
【0057】
【表2】

【0058】
表2の結果から明らかなように、本発明の水酸基含有化合物は顕著な導電性効果を有し、帯電防止剤として有用な化合物であること、更に、分子の末端に水酸基を有し、他方の片末端にイオン性基を有するため、合成樹脂骨格の側鎖に対してイオン性基を導入することが可能であり、これによって、ブリードアウトを起さない、帯電防止能に優れた合成樹脂組成物となることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の水酸基含有化合物は、合成樹脂骨格の側鎖に対してイオン性基を導入することが可能な、新規で帯電防止能に優れた化合物であり、ブリードアウトのない、帯電防止性に優れた合成樹脂組成物を提供することができるので、本発明は産業上極めて有意義である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とする水酸基含有化合物。
【化1】

但し、式中のRは、少なくとも1つの水酸基を有した炭素原子数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基、Rは水素原子、又は、水酸基置換してもよい炭素原子数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基、Rは水素原子、又は、メチル基若しくはエチル基、Rは炭素原子数1〜8の直鎖又は分岐のアルキレン基、Aは−O−又は−N(H)−を表す。Bは−NR又は−(NRであり、R及びRは各々独立に炭素原子数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基を表し(但しRが水素原子の場合は、炭素原子数2〜8の直鎖又は分岐のアルキル基を表す)、Rは炭素原子数1〜8の直鎖、分岐又は環状のアルキル基又は置換基を有してもよいフェニル基若しくはベンジル基を表し、Xはハロゲンイオン、メチル硫酸イオン(CHOSO)又はエチル硫酸イオン(COSO)を表す。
【請求項2】
前記Bが−NRである下記一般式(2)で表される、請求項1に記載された水酸基含有化合物。
【化2】

【請求項3】
前記Bが−(NRである一般式(3)の4級アンモニウム塩構造で表される、請求項1に記載された水酸基含有化合物。
【化3】

【請求項4】
前記R及びRがヒドロキシエチル基である、請求項1〜3の何れかに記載された水酸基含有化合物。
【請求項5】
前記R及びRがメチル基又はエチル基である、請求項1〜4の何れかに記載された水酸基含有化合物。
【請求項6】
前記Aが、−N(H)−である、請求項1〜5の何れかに記載された水酸基含有化合物。
【請求項7】
前記一般式(2)中のRがメチル基又はエチル基である、請求項1及び3〜6の何れかに記載された水酸基含有化合物。
【請求項8】
前記一般式(2)中のXが、塩素イオン、臭素イオン又はヨウ素イオンである、請求項1及び3〜7の何れかに記載された水酸基含有化合物。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかに記載された水酸基含有化合物を含有することを特徴とする帯電防止剤。
【請求項10】
請求項1〜8の何れかに記載された水酸基含有化合物を合成樹脂固形成分中に1〜60質量%含有させてなることを特徴とする、帯電防止性合成樹脂組成物。
【請求項11】
前記合成樹脂が、熱硬化性樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、ビニル樹脂、アクリル樹脂からなる群の中から選択された1種、又は、2種以上からなるアロイ樹脂である、請求項10に記載された帯電防止性合成樹脂組成物。
【請求項12】
前記合成樹脂がウレタン樹脂である、請求項11に記載された帯電防止性合成樹脂組成物。
【請求項13】
前記ウレタン樹脂がウレタン樹脂を水分散させてなる水系ウレタン樹脂である、請求項12に記載された帯電防止性合成樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−285404(P2010−285404A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141855(P2009−141855)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】