説明

水酸基変性ポリウレタン分散体結合剤を含む多層コーティング系

水酸基官能性ポリウレタン分散体を含む多層コーティング系が提供される。水酸基官能性ポリウレタンは、イソシアネートとポリエステルポリオールのような活性水素含有化合物との反応により形成されるプレポリマー中間体と、ジアミノアルコールのような少なくとも2個のアミン基と1個の水酸基とを有する化合物との反応生成物を含む。さらに、流動性やパターン管理に優れた水性ベースコート組成物が提供される。この水性ベースコート組成物は、水酸基官能性ポリウレタン分散体と、アクリルエマルジョン樹脂と、水希釈性ポリエステル樹脂とセルロースエステルとを含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2005年7月1日出願の米国仮出願番号60/695,942及び2005年7月7日出願の米国仮出願番号60/697,097の優先権をクレームするものであり、前記出願はともに参照によりその全文をもって本願に援用される。
本発明は、OEM生産又は自走車両補修塗装(VR)用途のいずれかで使用する、車両のベースコート/クリアコートのような多層コーティング系に関するものである。このコーティング系として、プライマー、ベースコート及びクリアコートの組合せを挙げることができる。また、3段階トップコート系でもよく、この場合のトップコートは、クリアコート、ミッドコート及びグランドコートで構成され、アンダーコートの上に重ねる。本発明の実施形態の1つとして、揮発性有機含有量(VOC)が低い新規なベースコート組成物が挙げられる。別の実施形態は塗料に用いる新規なバインダー組成物である。
自動車、トラック、機械類等の表面を覆うのに多層コーティングが長年にわたり用いられてきた。元来、この種のコーティング系は有機溶剤を使用していた。環境問題や環境規制が厳しくなってきたため、コーティング系の有機溶剤量を低減させる必要性が重要課題になった。近年、水性系の開発が盛んになっている。とりわけ、VOC準拠のベースコート/クリアコート系の一環として、水性系の開発が増えてきた。本発明は、OEM及びVR用途向けの多層コーティング系で有用な、低VOCベースコート及び/又はクリアコート組成物に関するものである。このベースコートは新規なバインダーを含んでいるので、VOCが低く、所望の塗工性が得られ、容易に入手でき、かつ、非メタリック顔料、メタリック顔料及び他の乳白色顔料をはじめとする自動車業界で使用される広範な顔料で着色することができる。
【0002】
通常、水性トナー組成物は、(a)1種以上の顔料分散体(顔料粉砕ペースト)と(b)レットダウンクリア(letdown clear)という2つの主要成分を混合することによって形成される。ベースコートの色の多くは、2種以上の着色トナーを組み合わせた結果であり、本願明細書に開示のトナー組成物の加重平均により最終使用の組成物となるもので、本願明細書に示す個々のトナー実施例とは異なることがある。トナーは様々な顔料を含む。顔料としては、二酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ等の有彩顔料、マイカ等の乳白色顔料、アルミニウム系等のメタリック顔料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一般に、こうした顔料は乾燥粉末の状態で入手され、塗料に混入させるには適切な分散が必要であるが、この技術については本願明細書で説明する。一方、顔料ペーストも市販されており、下記のとおり低VOC水性塗装技術には有用な場合もある。前述のような1種以上のトナーの組合せによって、OEM塗装業者又はVR補修業者は所望のベースコートの色が得られる。
本発明の実施形態において、基材に塗布する前、例えば梱包前に、1種以上の顔料分散体と1種以上のレットダウンクリア成分とを混合してトナーを作製する。本発明のこのような実施形態によるレットダウンクリア成分は、結合剤として水酸基官能性ポリウレタン分散体(PUD)を含む。また、レットダウンクリア成分は、本願明細書に記載したような所望の特性を得るために、水、有機溶媒、充填剤顔料、他の樹脂、さらに1種以上のこの他の添加剤を必要に応じた様々な量で、また、これらを組み合わせて含有していてもよい。本発明で使用できる他の樹脂としては、遊離基付加重合反応によって調製される水性乳化重合体、水希釈性樹脂及びセルロース樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0003】
本発明の水性ベースコートコーティング組成物は1種以上のトナー組成物を含み、かつ任意に(i)1種以上のレジューサー、(ii)ミキシングクリア、及び(iii)架橋剤を含んでいてもよく、架橋剤は塗装に先立って、例えば、ベースコート組成物の塗布前に、又は塗布直前にアプリケータなどによりトナーと混合される。
本発明は、特に記載のない限り、特定の合成方法又は特定の配合物に限定するものではなく、この開示からの変更も可能であると解釈される。また、使用する専門用語は特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではないと解釈すべきである。
特に記載のない限り、明細書及び請求の範囲で使用の成分量、分子量等の特性、反応条件等を表すすべての数値はいずれの場合も「約」という言葉で加減されると解釈する。したがって、逆の記載がない限り、後述の明細書及び添付の請求の範囲に記載の数値パラメータは、本発明が得ようとする所望の特性に応じて変わりうる近似値である。少なくとも、また、請求の範囲に対する均等論の適用を制限しようとするものでもないが、各数値パラメータは、記載の有効桁数を考慮したうえで、また、通常の数値の端数処理の丸め方を適用して少なくとも解釈すべきである。本発明の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータについては近似値であるが、特定の実施例で示す数値はできるだけ正確に記載してある。しかしながら、いずれの数値も、それぞれの試験測定に存在する標準偏差が必然的な原因となる誤差を本質的に含むものである。
【0004】
本願明細書で使用の「イソシアネート」は、1個以上のイソシアネート基又はチオイソシアネート基或いはそれらの組み合わせを含むいずれの化合物も意味する。本願明細書で使用の「ポリイソシアネート」という用語は、複数個(1個より多い)のイソシアネート基又はチオイソシアネート基を含む化合物、或いは、イソシアネート基及びチオイソシアネート基をそれぞれ1個以上含む化合物や付加物を意味するものである。
本発明の実施形態の1つはベースコートコーティング組成物で、該組成物には水酸基官能性ポリウレタン分散体を含む結合剤組成物が含まれる。本発明による水性の水酸基官能性PUDは、イソシアネートプレポリマー中間体(A)と連鎖延長剤(chain extender)(B)との反応性生物を含む。イソシアネートプレポリマーは、イソシアネート化合物(i)と活性水素含有化合物(ii)との反応生成物で構成することができる。活性水素がイソシアネート基と反応してウレタン基を形成する。実施形態の1つにおいては、モル過剰のイソシアネートを使用して遊離イソシアネート基を有するプレポリマーを作ることができる。成分(B)である連鎖延長剤は、少なくとも2個の活性水素と少なくとも1個の水酸基とを有する化合物で構成することができる。本発明の水酸基官能性PUDは、使用の際に、その水分を蒸発させ、個々のポリマー粒子を合体させて硬化させることができる。
【0005】
本発明において有用なイソシアネートプレポリマーは、イソシアネート化合物と活性水素含有化合物との反応生成物を含むことができる。本願明細書において有用なイソシアネートとは、脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート又は芳香族イソシアネート或いはこれらの混合物がよい。イソシアネートは、例えば、モノイソシアネート、ジイソシアネート又は高級ポリイソシアネートを挙げることができる。さらに、イソシアネートは、例えば、反応による無水マレイン酸/ネオペンチルグリコールオリゴマーのような化合物とイソシアネート化合物との反応で形成された、飽和又は不飽和の低重合イソシアネートから選択することができる。さらに、置換基が例えばニトロ、クロロ、アルコキシ、及び水酸基又は活性水素と反応しない他の基であり、該置換基の位置がイソシアネート基を不活性な状態にしないことを条件とした、置換基を有する有機置換イソシアネート類である。好適なイソシアネートの例としては、エチレンジイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、トルエンイソシアネート、1,2,4-ベンゼントリイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートのような純粋なジフェニルメタンジイソシアネート或いは高重合ジフェニルメタンジイソシアネート類、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチル1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4'-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,12-ドデカンジイソシアネート、シクロブタン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,3-及び/又は1,4-ジイソシアネート、1-イソシアント-2-イソシアントメチルシクロペンタン、2,4-及び/又は2,6-ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネート、2,4-及び/又は4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、α,α,α',α-テトラメチル-1,3-及び/又は-1,4-キシリレンジイソシアネート、1-イソシアント-1-メチル-4(3)-イソシアントメチル-シクロヘキサン、1/3-及び1,4-フェニレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、トリフェニルメタン-4,4',4"-トリイソシアネート、ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート、ならびに、塗料用途での使用が可能であることが公知又は発見されている他の同様なイソシアネート類、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0006】
イソシアネートは、イソシアネート基と反応/架橋が可能な反応成分を有する化合物と反応させて、プレポリマーを形成する。このような反応性成分としては、活性水素原子を有してもよい。遊離イソシアネート基を含むプレポリマーを形成するには、供給源であるイソシアネートのイソシアネート基の数を活性水素原子の数より多くすればよい。活性水素含有化合物の例としては、ポリヒドロキシル化ポリエーテル、ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリカーボネート、水酸基官能性アクリル樹脂、炭化水素化合物、水酸基官能性ポリブタジエン及び水酸基官能性水素化ポリブタジエン等の高分子ポリヒドロキシ化合物が挙げられる。有用な実施形態では、ポリエステルポリオールを使用してプレポリマーを作成する。別の実施形態では、ポリエーテルポリオールを使用することができる。この他、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ジプロピレングリコール等のポリヒドロキシ化合物も使用することができ、これらは単独で用いてもよいし、高分子ポリヒドロキシ化合物と一緒に使用してもよい。
ポリエステルポリオールは、1個以上のポリカルボン酸を有する多価アルコール1種以上を縮合することにより形成される。好適な多価アルコールとしては、グリセロール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、1,4,6-オクタントリオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ドデカンジオール、オクタンジオール、クロロペンタンジオール、グリセロールモノアリルエーテル、グリセロールモノエチルエーテル、ジエチレングリコール、2-エチルヘキサンジオール-1,4,シクロヘキサンジオール-1,4、1,2,6-ヘキサントリオール、1,3,5-ヘキサントリオール、1,3-ビス-(2-ヒドロキシエトキシ)プロパン、ネオペンチルグリコール、2-メチルプロパンジオール、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル-2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピオネート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリカルボン酸の例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、マレイン酸、ドデシルマレイン酸、オクタデセニルマレイン酸、フマル酸、アコニット酸、トリメリト酸、トリカルバリル酸、3,3'-チオジプロピオン酸、コハク酸、アジピン酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサジエン-1,2-ジカルボン酸及びこれらに対応する酸無水物、酸塩化物及び酸エステル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。有用な実施形態のポリカルボン酸は、炭素原子が14個以下の脂環式ジカルボン酸、ならびに、炭素原子が14個以下の芳香族ジカルボン酸であるが、水酸基が2個より多い多価アルコール又はカルボン酸基が2個より多いポリカルボン酸は極少量使用して架橋及びゲル化を防ぐとよい。
【0007】
また、様々なポリエーテルポリオールも使用することができる。通常、ポリエーテルポリオールは、エチレンオキシドやプロピレンオキシドのようなアルキレンオキシドを水酸化カリウムのような強塩基触媒を用いて、通常、水、グリコール類等の存在下で重合を行うことにより生成される。高度に分岐した鎖を有するポリエーテルは、アルキレンオキシド及び2個より多い活性水素官能基を有する開始剤により容易に調製される。前記アルキレンオキシドに対して有用な高級官能性開始剤としては、ポリオール、ポリアミン、及び、水酸基及び第一又は第二アミノ基に全部で3個以上の反応性水素原子を有するアミノアルコールが挙げられる。
ポリオールの例としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ヘキサントリオール、トリアルカノールアミン等のトリオール類、エリスリトールやペンタエリスリトール等の様々なジエチレントリアミン類、ペントール類、ジペンタエリスリトールやソルビトール等のヘキソール類、ならびに、アルキルグリコシド類、炭水化物類、ポリヒドロキシ脂肪酸エステル類、例えばひまし油(caster oil)、及び3個以上の反応性水素原子を有するポリオキシアルキル化誘導体又は多官能性化合物、例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール及び他のポリオールと、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、又はこれらのエポキシ化合物もしくは共重合体(例えばエチレン及びプロピレンオキシド共重合体)との反応生成物(エチレンオキシドはプロピレンオキシドのような他のアルキレンオキシドとくらべて20モル%を超えないモル量で使用される)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。高級官能性アミノアルコール及びポリアミンは、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2-(2-アミノ-エチルアミノ)エタノール、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン及び尿素ならびに4,4',4"-メチリジントリアニリン等の様々なアリールポリアミン類が挙げられる。
【0008】
また、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール又はテトラエチレングリコールと、炭酸ジフェニル等の炭酸ジアリール又はホスゲンとの反応生成物といったポリカーボネートポリオールも使用することができる。
この他、ヒマシ油、レスケレラ油(lesqurella oil)、セルロース誘導体及び他の天然のヒドロキシ化合物といった化合物も広く使われ、イソシアネートプレプリマーを合成する。
当該分野で公知の方法を用いてプレポリマーを調製することができる。例えば、1種以上のイソシアネートを適当な反応容器に充填した後、1種以上の活性水素含有化合物を添加する。イソシアネートが実質的にすべての活性水素原子と反応するまで、必要であれば混合物を加熱してもよい。通常、イソシアネート基の当量が一定の値に達した段階で、活性水素原子との反応が終了したとみなされる。
触媒を用いてプレポリマー形成反応を促進してもよい。好適な触媒の例としては、ジブチル錫ジラウレート、錫オクトアート等が挙げられる。反応物の反応性、温度、混合、触媒の存在、ならびに他の要因によって、この反応は数分で起こることも、あるいは、反応が終了するのに数時間から数日かかる場合もある。
【0009】
また、プレポリマー形成反応には溶媒を使用することもできる。あるいは、プレポリマー形成後に溶媒を添加してもよい。実施形態の1つは、活性水素原子を含有しない溶媒をイソシアネートプレポリマー中間体に添加する。別の実施形態では、好適な溶媒として、ケトン類、第三アルコール類、エーテル類、エステル類、炭化水素及びクロロカーボン類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。溶媒のさらに具体的な例として、アセトン、N−メチルピロリドン及びアセトニトリルが挙げられる。溶媒はプレポリマーを溶解したり、プレポリマーの粘度調整を助ける。プレポリマーの粘度は最終的な分散体の安定性に影響することがある。プレポリマーの粘度を低減するには数通りの方法があるが、例えば、プレポリマー溶融物をそのままの状態で加熱する方法、プレポリマーを好適な溶媒に溶解する方法、好適な溶媒中でイソシアネートとの反応を行う方法がある。実施形態の1つでは、プレポリマーの粘度を所望の値に低減するために、十分な量の溶媒を存在させる。実施形態によっては、ポリマーを水等の液体の担体媒体に分散させた後で、溶媒を取り除くことが望ましい場合もある。このような場合は、溶媒の除去を容易にするために蒸気圧が比較的高い溶媒を使用することが望ましい。実施形態により、溶媒とイソシアネート含有プレポリマーとの総質量を基準として、溶媒の量は約60質量%まで、例えば約3〜約40質量%で使用するとよい。
イソシアネートと活性水素含有化合物との量は、得られるプレポリマーが遊離イソシアネート基を有するようにするとよい。イソシアネート:活性水素含有化合物の当量比は、少なくとも約1.2:1がよい。実施形態の1つは、イソシアネート:活性水素のモル比が約7:1〜1.2:1、他の実施形態では、約6:1〜約1.2:1、さらに別の実施形態では約3:1〜1.2:1、さらなる実施形態では約1.5:1〜1.9:1、例えば1.7:1.0であるとよい。
【0010】
イソシアネートプレポリマーが調製されたら、水性媒体に分散すればよい。水性媒体又はプレポリマーに造塩剤を添加してもよい。造塩剤はプレポリマー溶液に添加してもよいし、プレポリマーの添加に先立って水性媒体に含有させてもよいし、あるいは、プレポリマーを水性媒体に投入した後で添加してもよい。また、造塩剤は、本願明細書記載の架橋剤/連鎖延長剤の添加後に加えてもよい。造塩剤は、プレポリマーのイオン性基と相互作用するように選択するとよい。例えば、このようなイオン性基がカルボン酸のような酸を含む場合、好適な造塩剤としては塩基が挙げられる。イオン性基が塩基を含む場合、酸の造塩基を利用することができる。好適な無機及び有機塩基の例としては、一官能価の第一、第二及び第三アミン類、例えば、メチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、アニリン及びトルイジン;水酸化アミン類、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン及びオレイルジエタノールアミン;個々のアミノ基が異なる塩基性を有していても、有していなくてもよい多官能価のポリアミン類、例えば、アクリロニトリルと第一又は第二アミンとの付加物を水素添加することによって得られたポリアミン、完全アルキル化又は部分アルキル化ポリアミン、例えばN,N'-ジメチルエチレンジアミン、ならびに、α-アミノピリジンやN,N-ジメチルヒドラジンのような化合物が挙げられる。アンモニアのような無機化合物ならびに一価の金属水酸化物、金属炭酸塩及び金属酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び重炭酸ナトリウム等も有用である。さらに、無機酸及び有機酸ならびに反応性ハロゲン原子を含む化合物も有用である。このような酸や化合物としては、塩酸、硝酸、アミドスルホン酸、ギ酸、酢酸、グリコール酸及び臭化ブチルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
水性媒体は、脱泡剤又は界面活性剤等の他の成分を含んでもよい。市販の様々な公知の脱泡剤及び界面活性剤を、本発明の水酸基官能性PUD用の水性媒体と一緒に使用することができる。
【0011】
通常、プレポリマーの水性媒体への分散は連鎖延長剤/架橋剤の添加に先立って行う。実施形態の1つは、微細分散された安定したポリウレタン組成物を形成するためには、イソシアネート官能性プレポリマーは、ブルックフィールド粘度計で測定した際の分散温度における粘度が約0.01〜約20Pa・s(約10〜約20,000cP)の範囲、例えば、約0.1〜約5Pa・s(約100〜5,000cP)であるとよい。プレポリマー溶液の粘度は、例えばアセトン等の追加の溶媒の添加及び/又は分散時の温度上昇により低下させることができ、一方、例えばアセトン等の溶媒使用量の少量化及び/又は分散時の温度下降により粘度を上昇させることができる。
水性媒体の量は、所望の物性を有する分散体を形成するのに十分な量にするとよい。例えば、水性媒体は全分散体質量の約15〜約80質量%、さらには例えば約50〜約80質量%であるとよい。水の量が少なくとも約30質量%、さらには例えば少なくとも約45質量%であるとよく、水性媒体の残りを補助溶剤で構成する。当該分野の当業者に公知の様々な補助溶剤をこの段階で使用することができる。有用な補助溶剤としては、例えば、ケトン類、第三アルコール類、エーテル類、エステル類、炭化水素及びクロロカーボン類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
プレポリマーを水性媒体に添加してもよいし、あるいは、水性媒体をプレポリマーに添加して本発明の分散体を形成することができる。プレポリマーは、様々な形態の混合及び/又は攪拌により水性媒体中に分散させることができる。本発明の有用な実施形態の1つは、高い剪断力で混合することで、水性媒体へのプレポリマーの分散を促進させる。
【0012】
連鎖延長剤は、前述のごとく形成されたプレポリマーと反応して、本発明のポリウレタンポリマーを形成する。本発明の実施形態の1つでは、ポリウレタンポリマーが水酸基官能性を有することが望ましい。このような実施形態においては、プレポリマー中間体と連鎖延長剤との反応により、水酸基をポリマー末端ではなくポリマー主鎖から側鎖として有するポリウレタン組成物となる。別の実施形態は、ポリウレタンに末端水酸基が実質的にない。別の有用な実施形態では、ポリウレタンが少なくとも2つの水酸基側鎖を有するが、末端には水酸基が実質的に付いていない。このような水酸基側鎖を有するポリウレタンポリマーを得るには、ジアミノアルコールを有する連鎖延長剤を使用すればよいことがわかった。有用な実施形態では、本発明に関連して用いられるジアミノアルコールが、第一又は第二アミンと水酸基の組合せを含んでいるとよく、例えば、2個の第一アミン基と1個の第二アルコール基を有するジアミノアルコールが本発明では有用である。実施形態の1つは、アミン基2個とプレポリマーのイソシアネートとの反応性が、水酸基とプレポリマーのイソシアネートとの反応性よりも大きいジアミノアルコール類から、1種以上のジアミノアルコールを選択すればよい。好適なジアミノアルコールの例としては、1,3-ジアミノ-2-プロパノール及びアミノエチルエタノールアミンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
実施形態の1つは、連鎖延長剤化合物が全ポリウレタン分散体の約0.1〜約10質量%、例えば、約2.5〜約10.0質量%、さらには例えば約2.5質量%の割合で含まれる。また、連鎖延長剤の量は、水酸基官能性ポリウレタンポリマーの所望のヒドロキシル価を基準に算出することもできる。本発明の水酸基官能性ポリウレタンポリマーのヒドロキシル価は、約0.62〜約62.3がよい。さらには、水酸基官能性ポリウレタンポリマーのヒドロキシル価は、約5〜約40、例えば、約10〜約20がよい。さらなる例として、本発明の水酸基官能性ポリウレタンポリマーのヒドロキシル価は約15であるとよい。
【0013】
本発明の実施形態の1つは、水酸基官能性ポリウレタンポリマーの分子量が少なくとも約5,000、さらには、少なくとも約10,000である。有用な実施形態の1つでは、ポリウレタンポリマーのMnが、ポリスチレンを標準としてゲル透過クロマトグラフィーで室温において測定した際に約20,000であるとよい。
有用な実施形態における連鎖を延長した水酸基官能性ポリウレタンポリマーは、高分子量を有し、かつ、安定した水性組成物の状態である。本願明細書で使用の「高分子量」とは、少なくとも5000の分子量を意味する。また、本願明細書で使用の「安定した」という用語は、本発明のポリウレタンポリマーが約120゜F(約49℃)で数週間の間、ゲル化せずにいる状態を意味するとみなされる。また、温度50℃で数週間にわたって、分散体からの固形分の分離沈降が見られず、また、分散体の極小さなpH値の変化も見られない場合、安定であることが示されている。実施形態の1つでは、水酸基官能性ポリウレタンポリマーを含む水性組成物が安定した分散体であり、ポリマーが分散相で水性媒体が連続相になっている。実施形態の1つでは、水酸基官能性ポリウレタンポリマーが沈殿のない状態である。他の有用な実施形態の水酸基官能性ポリウレタンポリマーは、沈殿していても混合又は攪拌により再分散が可能である。
本発明の有用な実施形態の1つは、本発明の水酸基官能性PUDの固形分が約33〜35%である。別の有用な実施形態では、ブルックフィールド粘度計で測定した際の分散体の最大粘度が約0.5Pa・s(約500cP)である。
【0014】
本発明の水酸基官能性PUDを塗料に含有させると、外部から架橋剤を加えなくても塗料は硬化する。しかしながら、架橋剤又は硬化剤を添加して本発明のポリウレタン分散体と共に使用し、塗料性能を向上させることができる。塗装工程の直前に又は塗装工程の最中に2成分噴霧器等を用いて、水酸基官能基と反応性のある架橋剤又は硬化剤化合物をさらに本発明の水酸基官能性PUDと混合してもよい。このような架橋剤又は硬化剤としてはイソシアネート類又はメラミン類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の実施形態の1つでは、前記の水酸基官能性PUDをビヒクルベースコート剤に含ませるとよい。例えば、水酸基官能性PUDをトナー組成物のレットダウンクリア成分に含ませるか、あるいは、コーティング組成物中で使用される練り顔料に含ませてもよい。実施形態の1つでは、水酸基官能性PUDがレットダウンクリア組成物の約10%〜約85%であるとよい。他の実施形態では、水酸基官能性PUDの量は、最終トナー組成物を基準に算出すればよい。一般に、水酸基官能性PUDはトナー組成物の約7%〜約60%であるとよい。本発明のこのような実施形態においては、トナー組成物が約7〜約10質量%の水酸基官能性PUDを含むとよい。別の実施形態のトナー組成物は、7〜10質量%の前記水酸基官能性PUDを含み、残りの樹脂マトリックスをアクリル乳化重合体、水希釈性ポリエステル樹脂及びセルロースエステルをあわせたもので構成する。別の例示実施形態では、トナー組成物に約15〜約40質量%の前記水酸基官能性PUDが含まれていてもよい。さらに別の実施形態のトナー組成物には、約30〜約60質量%の水酸基官能性PUDが含まれていてもよい。水酸基官能性ポリウレタン分散体と共に本願明細書で記載の様々な他の添加剤を添加して、本発明のレットダウンクリアを形成してもよい。下記にさらに詳細に記載のように、トナー組成物中の水酸基官能性PUDの量は、一緒に使用する個々の着色剤によって通常決まる。
【0015】
本発明のトナー及びベースコート剤を説明する場合、顔料の2つの概括的な分類(トナーとベースコートになる)である(1)有彩顔料と(2)光輝材顔料(effect)に言及することになる。有彩顔料には様々な有機及び無機の顔料があり、二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイトブラック、透明及び不透明の赤色酸化鉄と黄色酸化鉄、ニッケルチタネートイエロー、ビスマスバナデートイエロー、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンパープル、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、ナフタレノラト銅イエロー(naphthlenolato copper yellow)、イソインドリノンイエロー、ベンゾイミダゾロンイエロー及びベンゾイミダゾロンオレンジ、ジケトピロロピロールオレンジ及びジケトピロロピロールレッド、アントラキノンレッド、オキサジンバイオレット、ならびに、インダントロンブルーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。有彩顔料を含むベースコートの一般的な処方は基本的には同じである。光輝材顔料(effect pigment)としては、酸化鉄被覆アルミニウム等の被覆アルミニウム顔料をはじめとするアルミニウム顔料等のメタリック顔料、マイカ及び様々な金属酸化物で被覆された酸化アルミニウム小板等の乳白色顔料が挙げられる。また、メタリック顔料としては、微細アルミニウム、きめの粗いアルミニウム、コーンフレーク状からパンケーキ状のアルミニウム、着色アルミニウムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。光輝材顔料によるベースコートの配合は、所望の塗工特性を得るため、有彩顔料によるベースコート配合とは幾分異なることもある。さらに、マイカのベースコート配合は所望の塗工特性を得るため、メタリック顔料によるベースコート配合とは幾分異なることもある。
【0016】
本発明のトナー組成物は、前述のような水酸基官能性PUDを含み、さらに他の樹脂又は他の添加剤を1種以上含んでもよい。水酸基官能性PUDに加えてレットダウンクリアに含有させることができる他の樹脂とは、例えば、水性乳化重合体類、セルロースエステル類及び水希釈性樹脂類が挙げられる。水性乳化重合体としてアクリルラテックスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。セルロースエステル又は変性セルロースエステルとしてはカルボキシメチルセルロースアセテートブチレート(CMCAB)等を挙げることができる。セルロースエステルのCMCABは様々なものが市販品から入手できる。また、他の水希釈性樹脂、例えば水希釈性ポリエステルなどを含有させてもよい。また、前記ポリマー/ポリマー分散体を様々に組み合わせて、本発明のレットダウンクリア成分又は顔料分散体成分に利用することもできる。前記ポリマー類を加えることにより、ベースコートの特性を改善できる。例えば、前述のポリマーは流動性改質剤として作用することも可能であり、ベースコートの乾燥時間を改善したり、顔料濡れ性を向上させたり、また、水性ベースコートのパターン管理を良好にすることができる。
【0017】
また、本発明のトナー組成物は、水酸基官能性PUDに加えて他の添加剤を含んでもよく、添加剤として、脱泡剤、分散剤、流動性改質剤、不動態化剤、殺生物剤、界面活性剤、中和剤、溶剤、艶消剤、溶剤、紫外線安定剤をはじめとした当該分野で公知のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。脱泡剤は気泡を制御するために用い、塗膜中の欠陥をより少なくする。脱泡剤の例としては、有機変性シロキサンの水性エマルジョンが挙げられるが、例えばポリエーテルシロキサン共重合体又はポリエーテルポリメチルシロキサン共重合体等である。また、非油性の脱泡剤又は非シリコーン系脱泡剤組成物から選択される上記以外の脱泡剤も使用できる。分散剤は、顔料分散体をエントロピー的に安定させるために使うことができる。分散剤の例としては、アミン官能性分岐高分子共重合体(エチレン系不飽和モノマー及び/又は大分子量モノマーからなる場合が多い)、及び、エチレンホモポリマーとその官能性誘導体、例えば、エトキシ化第一アルコールの分散体が挙げられる。流動性改質剤としては、シリカ、クレー、会合性増粘剤(associative thickeners)、アルカリ膨潤性増粘剤、高機能性ポリウレタン及び/又は酵素化工デンプンの水性分散体、ならびに/あるいは有機変性ヘクトライトクレーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに、上記の他に、ポリエステルやセルロースエステル等の樹脂も同様に流動性改質剤として作用することができる。不動態化剤は、アルミニウム表面の酸化を抑えることができ、安定性を向上させガス生成を抑える。不動態化剤の例としてはリン酸エステル、例えばリン酸モノエステルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。殺生物剤を使用して有機物質の成長を阻止することにより、製造及び貯蔵期間中ならびに使用中の劣化や変質を防ぐために用いることができる。殺生物剤の例としては、5-ヒドロキシメチル-1-アザ-3,7-ジオキサビシクロ(3-3-0)オクタン及びそのアルコキシ誘導体が挙げられる。この分野では、界面活性剤が水性塗料の表面張力を低減することにより塗布性能を向上させることが知られている。性能の向上には、濡れ性、気泡の低減、塗膜外観の向上を挙げることができる。好適な界面活性剤の例としては、アセチレングリコール系界面活性剤及びアセチレンジオール系界面活性剤が挙げられ、例えばテトラメチルドデシンジオールが挙げられる。中和剤は、樹脂、中間体及び最終製品のpHを調整するために使用することができる。中和剤の例としては、ジメチルエタノールアミン(「DMEA」)、トリエチルアミン、アンモニア及びジエチルアミンが挙げられるが、この他、市販の中和剤も公知であり使用できる。溶剤は粘度を低減するのに使用するが、膜形成/合体等の特性や金属制御(metal control)に影響を及ぼすこともできる。好適な溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン、炭化水素系溶剤、グリコールエーテル類、例えば、プロピレングリコールN−プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテル及びジエチレングリコールブチルエーテルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、シリカを添加してもよい。前記に挙げた添加剤ならびに他の公知の添加剤は、レットダウンクリア、顔料含有分散体、又はレットダウンクリアと顔料含有分散体とを含む混合物のいずれに添加してもよい。
【0018】
通常、本発明のレットダウンクリア成分は、本願明細書記載の水酸基官能性PUDを約10〜約85質量%含むとよい。また、レットダウンクリアは、水、有機溶剤、艶低減剤、流動性改質剤、脱泡剤、界面活性剤、pH中和剤、殺生物剤、又は他の樹脂を様々な量で含んでもよい。水を含む場合、レットダウンクリアの約50質量%までがよい。また、有機溶剤を含む場合、レットダウンクリアの約15質量%までがよい。さらに、非晶質シリカ及び有機クレーのような成分を加えてコーティング組成物の様々な特性を向上させることもできる。非晶質シリカを加える場合、レットダウンクリアの約2質量%までがよい。有機クレーをレットダウンクリアに加える場合は、総質量の約1%までがよい。他の市販の添加剤を微量又は所望の特性を得るのに十分な量で、また、製造業者の指示にしたがって添加することができる。また、上記の他の樹脂はレットダウンクリアに混合してもよく、本願明細書で後述する。
通常、本発明の顔料分散体は、1種以上の樹脂、溶剤(例えば水又は有機溶剤)、顔料及び前記記載のものから通常選択される添加剤を含む。顔料分散体は顔料を約80質量%まで含むとよい。
【0019】
有用な実施形態の1つでは、本発明の顔料分散体が顔料、共粉砕樹脂(co-grind resin)、水を含み、さらにpH中和剤、分散助剤及び脱泡剤を含んでいてもよい。本発明の顔料分散体に関連した有用な共粉砕樹脂については、米国特許第6,057,400号(本出願の譲受人に譲渡)のコラム7、28-54行に記載されているが、この記載箇所は引用により本願明細書の記載に含まれるものとする。実施形態の1つは、共粉砕樹脂として有用な水酸基官能性樹脂は、約5〜約15%のメタクリル酸メチル、約5〜約15%のスチレン、約10〜約20%のアクリル酸ブチル、約35〜約45%のメタクリル酸ブチル、約10〜約20%のメタクリル酸ヒドロキシエチル及び約5〜約10%のアクリル酸をそれぞれ全モノマーに対する質量%で添加し、開始剤としてt-ブチルペルオクトアートを用い、2-ブトキシエタノール中で遊離基付加重合を行うことによって調製することができる。前記のように処方した共粉砕樹脂はわずかに酸性であるため、水中で中和させ溶液を作成してから他の成分を添加するとよい。アミンのようなpH中和剤を顔料粉砕組成物に加えて、共粉砕樹脂の中和を約100〜約130%にするとよい。このような中和レベルにすることで、分散された共粉砕樹脂をわずかながら塩基性とすることができる。
前記共粉砕樹脂を含む顔料分散体は、本願明細書記載のレットダウンクリアと混合しなくても通常単独で安定している。そのため、本願明細書記載の顔料分散体は梱包、保管及び出荷が可能であり、ベースコートの販売又は塗布に先立ってレットダウンクリアを添加すればよい。実施形態の1つは前記のような顔料分散体をレットダウンクリアに添加するものであるが、顔料分散体を収容する容器にレットダウンクリアを添加することも同様に可能である。
【0020】
本発明の別の実施形態では、顔料分散体が1種以上の樹脂と、1種以上の溶剤と、顔料と、1種以上の不動態化剤、1種以上の分散助剤、及び1種以上のpH中和剤とを含んでもよい。有用な実施形態では、顔料が顔料分散体の約10〜約50質量%、例えば約20〜約40質量%含むとよい。また、1種以上の樹脂は、共粉砕樹脂、水希釈性樹脂、水性乳化重合体及び酢酸酪酸セルロース(「CAB」)型樹脂、又はそれらの混合物から選択することができる。さらなる実施例として、該樹脂が水希釈性ポリエステル樹脂を含むとよい。
本発明の実施形態の1つは、トナー組成物が(a)顔料分散体と(b)レットダウンクリアを含み、さらに(c)水及び(d)流動性改質剤を任意でさらに含有していてもよい。例えば、顔料分散体が全トナー質量の約6〜約70%で、レットダウンクリアが全トナー質量の約30〜約94%であるとよい。レットダウンクリアに対する顔料分散体の割合は顔料の種類による。通常、密度が大きく被覆性が比較的乏しい無機の黄色及び白色顔料を有するトナーにおいて、レットダウンクリアに対する顔料分散体の割合が最も高くなる。この割合は、透明な青色、緑色及び赤色の有機顔料を含むトナーで低くなる。水と流動性改質剤の追加は、トナー及びベースコートの所望の特性次第である。
本発明にしたがって調合された少なくともいくつかのトナーは、顔料の含有率が他の市販のトナーに比べて高いことがわかった。例を挙げると、トナー組成物において、TiO2は約35〜約36%、カーボンブラックは約1〜約3.5%、有機オレンジ顔料は約15%、フタロシアニングリーン顔料は約7〜約9%、フタロシアニンブルー顔料は約5〜約7%、透明酸化物顔料は約6〜約7%、不透明酸化物顔料は約8〜約15%、有機赤色顔料は約5〜約12%、無機黄色顔料は約34〜約35.5%、アルミニウム系顔料は約3〜約6%、マイカ顔料は約22〜約26%(すべて、湿式トナー組成物の質量に対する%)含むとよい。
【0021】
本発明の別の実施形態のトナー配合は、顔料分散体とレットダウンクリアとを混合するという通常の方法に従うものではない。顔料によっては、本願明細書記載の顔料分散体又は顔料と他の添加剤とを水酸基官能性PUDを含むレットダウンクリアに添加し、トナーを形成するための所望の粘度を得るまで混合する。このようにして得たトナーを、塗装に先立ってミキシングクリア組成物と混合すればよい。ミキシングクリアは、前記のような水酸基官能性PUDと、共粉砕樹脂と、水性乳化重合体、水希釈性樹脂及びセルロースエステル(例えばCMCAB)等の1種以上の樹脂とを含んでもよい。また、ミキシングクリアは、水、脱泡剤、pH中和剤、殺生物剤、溶剤及び界面活性剤を含んでもよい。
一例であるが、約21.4〜約76.6%の水と、0.3〜約1.7%のpH中和剤と、約3.3〜約18.8%のアクリル樹脂(例えば、前記したような共粉砕樹脂)と、約0.1〜約0.3%の脱泡剤と、約0.3〜約23%の分散剤と、約10.4〜約73.2%の有彩顔料(すべて顔料分散剤の質量を基準とした%)とを混合して顔料分散体を調製することができる。顔料分散体は、上記成分を高速分散機(HSD)及び/又はメディアミルに投入し、粉砕物が十分微細になりヘグマングラインドゲージで7又は8に達するまで混合して調製することができる。その後、顔料分散体をレットダウンクリア組成物に添加すればよい。混合容器を水で洗い流し、洗い流した顔料分散体を含む水をレットダウンクリアに添加する。本実施例のレットダウンクリアは、約1.1〜約1.3%のシリカと、約0.5〜約4%の流動性改質剤と、約61.5〜約84.1%の水酸基官能性ポリウレタン分散体と、約0.4〜約1.4%の脱泡剤と、約2.1〜約12.8%の溶剤と、約2〜約6.6%の界面活性剤と、約0.2〜約0.4%の殺生物剤と、約0.2〜約1.6%の会合性増粘剤とを含んでもよい(すべてレットダウンクリアの質量を基準とした%)。レットダウン中に水を含む場合は約19.6質量%まで、pH中和剤(例えばDMEA)を含む場合は約0.1質量%まで添加するとよい。トナーを形成するには、約11.4〜約70.2%の前記顔料分散体を、約28.5〜約88.5%の前記レットダウンクリアに添加する(すべてトナーの質量を基準とした%)。また、約2〜約33.1質量%の水をトナーに添加してもよい。さらに、顔料分散体と、レットダウンクリアと水との混合が終了した後、トナーの約2.4%までの会合性増粘剤を添加してもよい。
【0022】
別の実施例では、アルミニウム顔料分散体とレットダウンクリアとを混合してトナーを作成することができる。該トナーは、約2.5〜約24.5質量%のアルミニウム顔料分散体と、約61.5〜約86.5質量%のレットダウンクリアと、約5〜約25%の水と、約0.5〜約3質量%の流動性改質剤とを含むとよい(すべて全トナー組成物の質量を基準とした%)。この実施例の目的のために、顔料分散体は、約32.3〜約38.2%のアルミニウム顔料と、約3.9〜約4.4%の分散助剤と、約1.1〜約1.6%のpH中和剤と、約1.3〜約1.8%の不動態化剤と、約27.1〜約30.7%の水希釈性ポリエステルと、約23.3〜約34.3%の有機溶剤とを含んでいるとよい(すべて顔料分散体の質量を基準とした%)。前述のようにして得られたスラリーを、約20〜約50%のアクリルラテックスと、約5〜約15%のセルロースエステル(例えばCMCAB)と、約0.15〜約0.16%の脱泡剤と、約30〜約50%の水と、約0.26〜0.28%のpH中和剤と、約0.05%の殺生物剤と、約10.4〜約11%の本願明細書記載の水酸基官能性PUDと、約0.1〜約0.75%の界面活性剤とを含むレットダウンクリアに添加する(すべてレットダウンクリアの質量を基準とした%)。
別の実施例では、約15〜約35%の水を、約0.17〜約0.19%の殺生物剤と、約0.13%のpH中和剤と、約1〜約3%の界面活性剤と、約1.5〜約1.6%の脱泡剤と、約7.5〜約7.9%の溶剤と、約45〜約70%の本願明細書記載の水酸基官能性PUDと混合することによりレットダウンクリアを調製することができる(すべてレットダウンクリアの質量を基準とした%)。さらに、約10〜約40%のマイカ顔料と、約0.5〜約6%のクレー(固形又は溶液状のいずれでもよい)と、約1〜約7%の分散助剤と、約0.1%のpH中和剤と、約0.5%の流動性改質剤とを、約25〜約75%のレットダウンクリアと一緒に混合することによりトナーを調製することができる(すべてトナーの質量を基準とした%)。ベースコート作成のためには、このマイカトナーを、約20〜約45%のアクリルラテックスと、約1.5〜約1.6%のクレー溶液と、約0.5〜約7%のセルロースエステル溶液(例えばCMCAB溶液)と、約25〜約50%の水と、約0.7%の脱泡剤と、約0.3%のpH中和剤と、約0.2〜約0.3%の殺生物剤と、約3〜約10%の本願明細書記載の水酸基官能性PUDと、約1〜約7%の水希釈性ポリエステル樹脂と、約1〜約4.5%の溶剤と、約1.5〜約1.6%の界面活性剤とを含むミキシングクリア組成物と混合すればよい。
【0023】
別の実施例では、トナーは、約20.21〜約40.68%の水と、約0.02〜約0.76%のpH中和剤と、約0.14〜約8.19%の共粉砕樹脂と、約30.29〜約60.58%の本願明細書記載の水酸基官能性PUDと、約0.53〜約35.47%の有彩顔料とを含んでいてもよい(すべてトナー全質量を基準とした%)。さらに、トナーは以下のものを1種以上含んでいてもよい:約0.01〜約6.03%の分散剤、約0.01〜約0.13%の脱泡剤、約0.01〜約8.69%の流動性改質剤、約0.11〜約1.42%の脱泡剤、約0.73〜約12.34%の溶剤、及び約0.17〜約6.65%の界面活性剤(すべてトナー全質量を基準とした%)。また、該トナーは0.37〜約1.26%のシリカ及び約0.05〜約0.28%の殺生物剤を含有してもよい。
別の実施例のトナー組成物は、約1〜約7%の水希釈性ポリエステルと、約3〜約5%の溶剤と、約2〜約7%の顔料と、約0.1〜約0.3%の不動態化剤と、約0.1〜約0.6%の分散剤と、約0.35〜約0.4%のpH中和剤と、約10〜約50%のアクリルラテックスと、約5〜約15%の水酸基官能性PUDと、約0.11〜約0.12%の脱泡剤と、約1〜約12%のセルロースエステル(例えばCMCAB)と、約25〜約55%の水と、約0.25〜約0.27%の界面活性剤と、約0.04%の殺生物剤と、約1.7%の流動性改質剤(例えばクレー)とを含んでいてもよい。
【0024】
本発明の実施形態の1つにおいて、ベースコートは、(a)1種以上のトナーと(b)水とを混合して調製するが、さらに(c)ミキシングクリア成分も混合してもよい。別の実施形態では、本発明により調合されたベースコートの揮発性有機含有量(VOC)が、逸散する溶剤分を含めず0.42kg/リットル(3.5lb/ガロン)以下である。別の実施形態では、本発明により調合されたベースコートの貯蔵性が少なくとも12ヶ月で、-28.9℃(-20゜F)という低温で好適な凍解安定性を有し、かつ、48.9℃(120゜F)という高温で数ヶ月にわたり安定している。
有用な実施形態の1つである本発明のベースコート組成物は、車両補修塗装業者又は自動車OEM業者に提供される。使用にあたり、ユーザーが所望の色特性を得られるようにトナーを混合することができる。ユーザーは、ベースコートとして使用するためにトナー又はトナー混合物を約35質量%までの水で希釈すればよい。また、必要であれば、ユーザーがトナー又はトナー混合物をミキシングクリア組成物及び/又は架橋剤と一緒に混合してもよい。
本願明細書に記載の水性コーティング組成物は、金属、木材、プラスチック又は複合材料等の様々な基材に使用することができる。有用な実施形態のコーティング組成物は、電着プライマーもしくはその他のプライマー又はプライマーサーフェイサーに直接塗装できる自動車用ベースコートとして使用される。
【0025】
有用な実施形態の本発明のベースコートは、強制的な乾燥又は紫外線もしくは赤外線照射を行うことなく周囲温度で乾燥し、約60分たらずで、例えば約45分未満で、さらに例えば約30分未満で、例えば、約20分未満で、さらには約15分かからずに塗膜が研磨できる状態になる。実施形態によっては、本発明にしたがって作製されたベースコートは、約10分以下で塗膜が研磨できる状態になる。また、本発明のベースコートは約2分〜約10分、例えば約5分以下で塗面にすり跡がつかない状態になる。別の実施形態では、本発明のベースコートは、現存する仕上げ剤の補修での使用において混合特性に優れている。
本願明細書記載のベースコートは多層コーティング系で有用である。多層コーティング系は通常、プライマー、着色ベースコート、及び透明トップコート(クリアコート)を含む。本発明のベースコートは、市販されている多くのプライマーや付着性促進剤等をはじめとする従来の自動車用仕上げ剤のほぼいずれとも使用可能である。本発明の多層コーティング系で使用するプライマーの望ましい特性は、VOCに準拠することと比較的短時間で表面乾燥すること(カスタマーの要求に応じて)である。プライマーの上にベースコートをウェットオンウェット塗りするには、未硬化のプライマー組成物の成分と反応性を有する成分がベースコート中にないことが望ましいということに留意しなければならない。実施形態の1つでは、本発明にしたがって調合されたベースコートをアクリルウレタンプライマーサーフェイサー上に塗布することができる。別の実施形態では、本願で調合したベースコートは、ケチミン-アセト-アセテート架橋プライマーサーフェイサー上に塗布することができる。
【0026】
プライマー塗装後、未硬化のプライマー上にベースコートをウェットオンウェット塗りで塗装することができる。しかしながら多くの場合、プライマーは、その上にベースコート又シーラーを塗装するための研磨ができるようになるまで硬化させる。(通常、シーラーは使用するベースコートと同様の組成を有するが、顔料濃度がベースコートよりも低く、研磨したプライマー上に塗布することができ、ベースコートの塗装に先立って実質的に滑らかな表面を得ることができる。)その後、表面研磨が施され、さらにシーラー塗装が施されていてもよい表面にベースコートを塗布することができる。
クリアコートは、研磨したベースコート表面に塗布してもよいし、あるいは、未硬化ベースコート上にウェットオンウェット塗りをしてもよい。本願が提供する多層コーティング系は、市販のクリアコートを使用することができる。実施形態の1つとして本発明にしたがって使用するクリアコートはVOC準拠しているとよく、例えば、逸散する溶剤を除いて0.42kg/リットル(3.5lb/ガロン)以下のVOCを有するとよい。別の実施形態は、ベースコートを溶解する可能性のある溶媒をクリアコートに含有させないか、最小限にすることにより、溶媒が滲みこまないようにすることが望ましい。さらに有用な実施形態は、クリアコートの透水度を低くしてクリアコートとベースコートを完全な状態で保護する。
本発明にしたがって作成されたベースコートは、イソシアネートのような追加の架橋剤成分を含む水希釈性又は水分散性硬化剤と一緒に使用することができる。外部から架橋剤を加えることにより、場合によっては塗料の性能を良好にすることができるが、本発明の水酸基官能性PUDを含むベースコートは水の蒸発により乾燥し、耐摩耗性、紫外線安定性ならびに耐水性及び耐薬品性に優れた強靭で柔軟性のある塗膜を形成することがわかっているので、前記追加の架橋剤の使用は任意である。
【0027】
本願明細書で論じたトナーは、塗装業界の他の分野でも同様に応用可能である。例えば、本願明細書記載のトナーは、元来の自動車装備品におけるプラスチックの内部又は外部塗料として、工場製品向けの木材やガラス繊維用の工業用塗料、ならびに、機器用化学的塗料としても使用できる。
本発明にしたがって作成された塗料は、吹付け塗布、ロール塗布、浸漬塗布を行うことができ、また、当該分野で公知の他の塗布手段でも塗布できる。
本発明のこれらの態様及びこの他の態様を下記の限定されない実施例によりさらに説明する。
実施例1
イソシアネート官能性プレポリマー溶液を以下のようにして調製することができる。
【0028】

【0029】
脂肪族ポリエステル、TMP、DMPA、IPDI及びDBTDLを反応釜に充填する。この混合物を約80℃に加熱し、約4.5時間維持する。4.5時間後、イソシアネート量を滴定により求める。アセトン(232.14g)を添加して完成したプレポリマーを溶解させる。
実施例2
イソシアネート官能性プレポリマー溶液を以下のようにして調製することができる。
【0030】

【0031】
脂肪族ポリエステル、TMP、DMPA、IPDI及びDBTDLを反応釜に充填する。この混合物を約80℃に加熱し、約4.5時間維持する。4.5時間後、イソシアネート量を滴定により求める。アセトン(243.24g)を添加して完成したプレポリマーを溶解させる。
実施例3
水酸基官能性ポリウレタン分散体を以下のようにして調製することができる。
【0032】

【0033】
プレポリマー溶液にTEAを添加する。次に、中和したポリマーを高剪断力をかけて混合しながら水に添加する。混合工程を約5分続けて安定した分散体を得る。連鎖延長剤溶液(アルカノールアミン、EDA及び水)を攪拌しながら添加する。プレポリマーと連鎖延長剤との反応が実質的に終了した後、アセトンを留去させる。
実施例4
水酸基官能性ポリウレタン分散体を以下のようにして調製することができる。
【0034】

【0035】
プレポリマー溶液にTEAを添加する。次に、中和したポリマーを高剪断力をかけて混合しながら水に添加する。混合工程を約5分続けて安定した分散体を得る。連鎖延長剤溶液(アルカノールアミン、EDA及び水)を攪拌しながら添加する。プレポリマーと連鎖延長剤との反応が実質的に終了した後、アセトンを留去させる。
実施例5
本発明のトナー組成物を下記の成分を混合して作製することができる。
【0036】

1*:米国特許第6,057,400号、コラム7、28-46行に従って調製。
【0037】
実施例6
本発明のトナー組成物を下記の成分を混合して作製することができる。
【0038】

1*:CMCAB溶液はCMCABと、水とエチレングリコールブチルエーテルとを含む。
【0039】
本発明をその実施形態の説明をとおして示し、また、該実施形態をかなり詳細に記載してきたが、そのような詳細な点に添付の請求の範囲を制限したり限定することは、本出願人の意図するところではない。付加的な利点や変更についてはこの分野の当業者には容易に明らかであろう。そこで、本発明は、そのより広い態様において、ここに示し記載した具体的な詳細や例示的な実施例に限定されない。したがって、本出願人の発明の概念全般の精神又は範囲から逸脱することがなければ、このような詳細な記載から離脱することができるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散体であって、以下、
(a)(i)イソシアネートと、少なくとも1個の活性水素を有する化合物との反応生成物を含む、イソシアネートプレポリマー中間体、及び
(ii)少なくとも2個のアミン基と1個の水酸基とを含む連鎖延長剤化合物であって、前記2個のアミン基の反応性が前記水酸基とよりもイソシアネートとの方が強い化合物、
の反応生成物を含む水酸基官能性ポリウレタン樹脂であって、前記水酸基官能性ポリウレタンの前記水酸基が、前記ポリウレタンの主鎖に付いているポリウレタン樹脂、及び
(b)水、
を含むことを特徴とする分散体。
【請求項2】
少なくとも1個の活性水素を有する前記化合物がポリヒドロキシ化合物である、請求項1記載の分散体。
【請求項3】
前記ポリヒドロキシ化合物が、ポリヒドロキシル化ポリエーテル、ポリヒドロキシル化ポリエステル、ポリヒドロキシル化ポリエステルアミド、ポリヒドロキシル化ポリカーボネート、ポリヒドロキシル化炭化水素及びポリヒドロキシル化アクリル樹脂から選択される、請求項1記載の分散体。
【請求項4】
前記連鎖延長剤化合物が、1,3-ジアミノ-2-プロパノール及びアミノエチルエタノールアミンから選択される、請求項1記載の分散体。
【請求項5】
前記水酸基官能性ポリウレタン樹脂のヒドロキシル価が、約0.62〜約62.3である、請求項1記載の分散体。
【請求項6】
前記水酸基官能性ポリウレタン樹脂のヒドロキシル価が、約10〜約20である、請求項1記載の分散体。
【請求項7】
前記水酸基官能性ポリウレタン樹脂の分子量が、少なくとも約10,000である、請求項1記載の分散体。
【請求項8】
前記分散体の粘度が約5Pa・s(約5000cP)未満である、請求項1記載の分散体。
【請求項9】
前記分散体の粘度が約0.5Pa・s(約500cP)以下である、請求項1記載の分散体。
【請求項10】
前記分散体の固形分が約33%〜約35%である、請求項1記載の分散体。
【請求項11】
ポリウレタン分散体の製造方法であって、以下の工程、
ポリイソシアネートを準備する工程、
ポリエステルポリオールを準備する工程、
モル過剰の前記ポリイソシアネートを前記ポリエステルポリオールと反応させてプレポリマー中間体を形成する工程、
少なくとも2個のアミン基と少なくとも1個の水酸基とを含む連鎖延長剤組成物を準備する工程であって、前記2個のアミン基の反応性が前記水酸基とよりもイソシアネートとの方が強いことを特徴とする工程、
前記連鎖延長剤を前記プレポリマー中間体と反応させて水酸基官能性ポリウレタンを形成する工程、及び
前記水酸基官能性ポリウレタンを水性媒体に分散させる工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記連鎖延長剤組成物が、1,3-ジアミノ-2-プロパノール及びアミノエチルエタノールアミンから選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記分散体の粘度が約5Pa・s(約5000cP)未満である、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記分散体の粘度が約0.5Pa・s (約500cP)以下である、請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記分散体の固形分が約33%〜約35%である、請求項11記載の方法。
【請求項16】
(a)(i)顔料、(ii)分散剤及び(iii)溶媒を含む顔料分散体、及び
(b)請求項1記載の分散体、
を含むことを特徴とするコーティング組成物。
【請求項17】
前記コーティング組成物の揮発性有機含有量が、0.42kg/リットル(3.5lb/ガロン)以下である、請求項16記載のコーティング組成物。
【請求項18】
前記コーティング組成物の研磨のための乾燥時間が約60分未満である、請求項16記載のコーティング組成物。
【請求項19】
セルロースエステル又は変性セルロースエステルをさらに含む、請求項16記載のコーティング組成物。
【請求項20】
カルボキシメチルセルロースアセテートブチレートをさらに含む、請求項16記載のコーティング組成物。
【請求項21】
アクリルラテックス樹脂をさらに含む、請求項16記載のコーティング組成物。
【請求項22】
前記顔料分散体が、水希釈性ポリエステル樹脂をさらに含む、請求項16記載のコーティング組成物。
【請求項23】
イソシアネート及びメラミンから選択される架橋剤をさらに含む、請求項16記載のコーティング組成物。
【請求項24】
前記顔料分散体が水酸基官能性共粉砕樹脂をさらに含む、請求項16記載のコーティング組成物。
【請求項25】
コーティング組成物であって、以下
(a)(i)水酸基官能性ポリウレタン主鎖に位置する複数のペンダント水酸基を有する水酸基官能性ポリウレタン樹脂であって、末端水酸基を実質的に有していない前記水酸基官能性ポリウレタン樹脂、及び、
(ii)水、
を含むレットダウンクリア、及び
(b)(i)共粉砕樹脂、
(ii)顔料、及び
(iii)水、
を含む顔料分散体、
を含むことを特徴とするコーティング組成物。
【請求項26】
前記共粉砕樹脂が、以下
(1)約5〜約15質量%のメタクリル酸メチル、
(2)約5〜約15質量%のスチレン、
(3)約10〜約20質量%のアクリル酸ブチル、
(4)約35〜約45質量%のメタクリル酸ブチル、
(5)約10〜約20質量%のメタクリル酸ヒドロキシエチル、及び
(6)約5〜約10質量%のアクリル酸、
の反応生成物を含む水酸基官能性樹脂を含む、請求項25記載のコーティング組成物。
【請求項27】
顔料が、二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイトブラック、透明赤色酸化鉄、透明黄色酸化鉄、不透明赤色酸化鉄、不透明黄色酸化鉄、ニッケルチタネートイエロー、ビスマスバナデートイエロー、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンパープル、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、ナフタレノラト銅イエロー、イソインドリノンイエロー、ベンゾイミダゾロンイエロー、ベンゾイミダゾロンオレンジ、ジケトピロロピロールオレンジ、ジケトピロロピロールレッド、アントラキノンレッド、オキサジンバイオレット及びインダントロンブルーから選択される、請求項25記載のコーティング組成物。
【請求項28】
前記水酸基官能性ポリウレタン樹脂が、イソシアネート官能性プレポリマーと連鎖延長剤化合物との反応生成物である、請求項25記載のコーティング組成物。
【請求項29】
前記イソシアネート官能性プレポリマーが、ポリヒドロキシル化ポリエーテル、ポリヒドロキシル化ポリエステル、ポリヒドロキシル化ポリエステルアミド、ポリヒドロキシル化ポリカーボネート、ポリヒドロキシル化炭化水素及びポリヒドロキシル化アクリル樹脂から選択される活性水素含有化合物と、イソシアネートとの反応生成物である、請求項28記載のコーティング組成物。
【請求項30】
前記イソシアネート官能性プレポリマーが、ポリイソシアネートとポリエステルポリオールとの反応生成物である、請求項28記載のコーティング組成物。
【請求項31】
前記連鎖延長剤化合物が、1,3-ジアミノ-2-プロパノール及びアミノエチルエタノールアミンから選択される、請求項28記載のコーティング組成物。
【請求項32】
水性コーティング組成物であって、以下、
(a)顔料、
(b)カルボキシメチルセルロースアセテートブチレート、
(c)アクリルラテックス樹脂、
(d)水希釈性ポリエステル樹脂、及び
(e)水酸基官能性ポリウレタンであって、(i)ポリイソシアネート、(ii)少なくとも1個の活性水素を有する化合物、及び(iii)少なくとも2個のアミン基と1個の水酸基とを含む連鎖延長剤化合物であって、前記2個のアミン基の反応性が前記水酸基とよりもイソシアネートとの方が強い化合物との反応生成物を含む水酸基官能性ポリウレタン、
を含むことを特徴とする水性コーティング組成物。
【請求項33】
少なくとも1個の活性水素を含む前記化合物がポリエステルポリオールである、請求項32記載の水性コーティング組成物。
【請求項34】
前記連鎖延長剤化合物が、1,3-ジアミノ-2-プロパノール及びアミノエチルエタノールアミンから選択される、請求項32記載の水性コーティング組成物。
【請求項35】
前記顔料がメタリック顔料である、請求項32記載の水性コーティング組成物。
【請求項36】
前記メタリック顔料がアルミニウム顔料から選択される、請求項35記載の水性コーティング組成物。
【請求項37】
コーティング組成物であって、以下、
(a)トナーであって、以下
(i)(1)ポリイソシアネート、(2)少なくとも1個の活性水素を有する化合物、及び(3)少なくとも2個のアミン基及び1個の水酸基を含む化合物であって、前記2個のアミン基の反応性が前記水酸基とよりもイソシアネートとの方が強い化合物の反応生成物を含む水酸基官能性ポリウレタン分散体、
(ii)顔料、
(iii)水、
を含むトナー、及び
(b)ミキシングクリアであって、
(i)(1)ポリイソシアネート、(2)少なくとも1個の活性水素を有する化合物、及び(3)少なくとも2個のアミン基及び1個の水酸基を含む化合物であって、前記2個のアミン基の反応性が、前記水酸基とよりもイソシアネートとの方が強い化合物、との反応生成物を含む水酸基官能性ポリウレタン分散体、
(ii)アクリルラテックス樹脂、
(iii)カルボキシメチルセルロースアセテートブチレート、
(iv)水希釈性ポリエステル樹脂、及び
(v)水、
を含むミキシングクリア、
を含むことを特徴とするコーティング組成物。
【請求項38】
前記顔料が乳白色顔料である請求項37記載のコーティング組成物。
【請求項39】
前記乳白色顔料が、マイカ及び被覆酸化アルミニウム小板から選択される、請求項38記載のコーティング組成物。
【請求項40】
トナーであって、
(a)約0.5〜約35.5質量%の顔料、
(b)約7〜約60質量%の水酸基官能性ポリウレタン樹脂と水とを含むポリウレタン分散体であって、前記水酸基官能性ポリウレタン樹脂が、ポリウレタン主鎖上の複数の水酸基を含み、かつ末端水酸基を実質的に有していない分散体、及び
(c)約6質量%以下の分散助剤、
を含むことを特徴とするトナー。
【請求項41】
前記水酸基官能性ポリウレタン樹脂が、
(i)少なくとも1個の活性水素を有する化合物とイソシアネートとの反応生成物を含むイソシアネートプレポリマー中間体、及び
(ii)ジアミノアルコール
の反応生成物である、請求項40記載のトナー。
【請求項42】
少なくとも1個の活性水素を含む前記化合物が、ポリエステルポリオールである、請求項41記載のトナー。
【請求項43】
前記連鎖延長剤化合物が、1,3-ジアミノ-2-プロパノール及びアミノエチルエタノールアミンから選択される、請求項42記載のトナー。
【請求項44】
多層コーティング組成物で被覆された基材であって、前記多層コーティング組成物が、
(a)水酸基官能性ポリウレタン樹脂であって、以下、
(i)少なくとも1個の活性水素を有する化合物とイソシアネートとの反応生成物を含むイソシアネートプレポリマー中間体、及び
(ii)少なくとも2個のアミン基と1個の水酸基とを含む連鎖延長剤化合物であって、前記2個のアミン基の反応性が前記水酸基とよりもイソシアネートとの方が強い化合物、
の反応生成物を含み、前記水酸基官能性ポリウレタンの前記水酸基は前記ポリウレタン主鎖に付き、前記水酸基官能性ポリウレタンのヒドロキシル価が約10〜約20である、水酸基官能性ポリウレタン樹脂、
(b)水、
(c)顔料、及び
(d)分散剤、
を含むことを特徴とする基材。

【公表番号】特表2008−545050(P2008−545050A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519680(P2008−519680)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/025940
【国際公開番号】WO2007/005808
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(591003150)ザ シャーウィン−ウィリアムズ カンパニー (7)
【Fターム(参考)】