説明

水銀を含まないガスが充填された低圧蒸気放電ランプ

低圧蒸気放電ランプは、充填ガスが充填された放電空間(3)を、気密状態で取り囲む放射線透過性の放電管(1)を有する。充填ガスは、実質的に水銀を含まず、インジウム化合物およびバッファガスを含む。放電管(1)は、前記放電空間(3)内でガス放電を持続させる放電手段(2)を有する。放電管(1)には、発光層(4)が設置される。発光層(4)は、珪窒化物またはオキソ珪窒化物をベースとする発光材料を含む。発光材料は、希土類のエミッタを有することが好ましい。発光材料は、ユーロピウム、セリウム、イッテリビウムのエミッタを有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水銀を含まないガスが充填された放射線透過性の放電管と、ガス放電を持続させる手段とを有する低圧蒸気放電ランプであって、放電管には、発光層が設置される低圧蒸気放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
低圧蒸気放電ランプにおける光発生は、ランプの電極間の電場によって、電荷担体、特に電子またはイオンが加速され、ランプの充填ガス中のガス原子もしくは分子と衝突し、これらのガス原子もしくは分子が励起され、または電離する原理に基づいている。充填ガス中の原子または分子が基底状態に戻る際に、ほぼ励起エネルギーに相当する部分が放射線に変換される。
【0003】
従来の低圧蒸気放電ランプは、充填ガス中に水銀を含んでいる。充填ガス中の水銀は、次第に環境的に有害で毒性のある物質であると見なされるようになってきており、水銀の使用、生産および廃棄は、環境を脅かすおそれがあるため、現在のような大量生産は、できる限り回避する必要がある。
【0004】
水銀低圧蒸気放電ランプの別の問題は、水銀蒸気が主として、電磁スペクトルの不可視UV−C領域にある高エネルギーかつ短波長の放射線を放射することであり、この放射線は、まず発光材料によって、より低エネルギーレベルの可視光線に変換する必要がある。この過程では、エネルギー差は、好ましくない熱放射線に変換されてしまう。
【0005】
低圧蒸気放電ランプのスペクトルは、充填ガス中の水銀を他の物質に変更することにより、変化することが知られている。
【0006】
国際公開第WO02/103748(=PH-DE010180)号には、インジウム化合物およびバッファガスを含むガスが充填されたガス放電管を有する低圧蒸気放電ランプが示されており、この低圧蒸気放電ランプは、可視スペクトル領域で発光する、少なくとも一つの発光材料を含む発光層を有する。この特許出願には、多数の好適な発光材料が示されている。
【特許文献1】国際公開第WO02/103748(=PH-DE010180)号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の低圧蒸気放電ランプの問題は、高効率放電管を製造するには、放電により放射される放射線を、発光材料で十分に吸収しなければならず、発光材料で所望の波長の可視光に十分に変換しなければならないことである。
【0008】
本発明では、前述の問題を完全にまたは部分的に解消することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題のため、本発明では、最初に示した種類の低圧蒸気放電ランプであって、
充填ガスが充填された放電空間を、気密状態で取り囲む放射線透過性の放電管を有し、
前記充填ガスは、実質的に水銀を含まず、インジウム化合物およびバッファガスを含み、
前記放電管は、前記放電空間内でガス放電を持続させる放電手段を有し、
前記放電管には、発光層が設置され、
該発光層は、珪窒化物またはオキソ珪窒化物をベースとする発光材料を含む、低圧蒸気放電ランプが提供される。
【0010】
本発明によるランプでは、低圧で分子ガス放電が生じ、このガス放電は、電磁スペクトルの可視領域および近UVA領域の放射線を放射する。約410および451nmのインジウムの特性線とは別に、前記放射線は、さらに320から450nmの領域に、広い連続スペクトルを有する。この放射線は、分子放電によるものであるため、インジウム化合物の種類、別の添加物の種類、ランプ内圧および作動温度によって、連続スペクトルの正確な位置を制御することができる。
【0011】
本発明による低圧蒸気放電ランプでは、水銀の使用が回避される。
【0012】
本発明では、発光層は、珪窒化物またはオキソ珪窒化物をベースとする発光材料を含む。一般式が(MI、MII、MIII)xSiaOzNb-z(MI=Mg、Ca、Sr、Ba、Zn;MII=La、Gd、Y、Sc、Lu;MIII=B、Al、Ga、C、Ge)の窒化物および酸窒化物は、主として共有アニオンの珪窒化物ネットワークとして形成され、比較的熱的および化学的に安定であるため、発光材料のホスト格子に適している。また、珪窒化物またはオキソ珪窒化物をベースとする発光材料では、発光材料のサスペンション溶媒として水が使用され、これは、環境上の観点から、当該生産処理プロセスにとって有意である。
【0013】
発光変換発光ダイオード(LED)では、LEDによって放射される青色光を、発光材料によって長波長の光に変換することができる。いかなる特定の理論に固執されるものでもないが、一方では、O2-よりも大きなN3-の形式電荷のため、および他方では、電子雲拡大効果のため、同様の酸素環境に比べて窒化物では、5dレベルの配位子場分裂はより大きくなり、5d状態の重心は、より低エネルギーで生じると考えられる。従って、適当なエミッタがドープされた発光窒化物材料は、青色光で効率的に活性化させることができる。
【0014】
本発明による発光層と低圧蒸気放電ランプの組み合わせでは、従来の低圧蒸気放電ランプに比べて、十分に高い発光効率が得られる。発光効率は、ルーメン/ワットで表され、特定の可視波長領域の放射線輝度と、放射線を発生させるエネルギーとの比で表される。本発明によるランプの発光効率が高いことは、低い電力消費で、相当量の光が得られることを意味する。
【0015】
また本発明による低圧蒸気放電ランプの発光材料の場合、ストークスの変位によって生じる損失は、比較的小さくなる。その結果、100ルーメン/ワットを超える比較的高い発光効率で、可視光が得られる。
【0016】
本発明による低圧蒸気放電ランプの好適実施例では、発光材料が、アルミニウムを含むオキソ珪窒化物を含むことに特徴がある。一般式が(MI、MII、MIII)xSia-yAlyOzNb-z(MI=Mg、Ca、Sr、Ba、Zn;MII=La、Gd、Y、Sc、Lu;MIII=B、Ga、C、Ge)のアルミニウム含有オキソ珪窒化物は、「サイアロン」またはSiAlONとも呼ばれる。
【0017】
好適な発光材料は、窒化物、酸窒化物およびSiAlON窒化物等のホスト格子を基本とした発光材料である。これらの発光材料の利点は、これらの材料が化学的に安定であり、スペクトルのUVおよび青色領域における吸収が、極めて良好であることである。後者の特性は、酸化物と比べて、窒化物および酸窒化物の共有結合が強いためである。また、これらの発光材料は、比較的高い焼き入れ温度を有する。
【0018】
希土類バンドエミッタがドープされた発光窒化物材料は、青色光で十分に活性化される。この目的のため、低圧蒸気放電ランプの好適実施例では、発光材料が希土類エミッタを含むことに特徴がある。特に、発光材料は、ユーロピウム、セリウムまたはイッテリビウムのエミッタを含むことが好ましい。そのようなエミッタは、Eu2+、Ce3+またはYb2+イオンによって活性化され、比較的強く広い吸収を示す。これらの多くのホスト格子では、吸収領域は、青からUV−Cの領域にわたり、これらの発光材料は、臭化インジウム(InBr)放電、および他の分子放電による放射スペクトルの変換にとって、極めて有益である。
【0019】
特に好適な発光材料は、
(Sr1-x-y-zBaxCay)Si2N2O2:Euz、ここで0<x<0.2、0<y<0.2、0<z<0.1;
Ca1-x-ySrxSi2N2O2:Euy、ここで0<x<0.5、0<y<0.1;
(Sr1-x-y-zCaxBay)2Si5N8:Euz、ここで0<x<1、0<y<1、0<z<0.1;
(Sr1-x-y-zBaxCay)2Si5-aAlaN8-aOa:Euz、ここで0<x<1、0<y<1、0<z<0.1、0<a<4;および
(Sr1-x-y-zBaxCay)Si2N2O2:Ybz、ここで0<x<0.2、0<y<0.2、0<z<0.1;
によって構成される群から選定される発光材料である。
【0020】
これらの発光材料の場合、エネルギー消費率Pvisible/Pdischargeは、0.4またはこれよりも大きな値であり、一方、従来の主な発光材料の変換率は、0.40未満である。
【0021】
本発明によって、発光層内の発光材料からの放射と、ガス放電による放射とが合わさって、白色光が形成される場合、従来技術に比べて特に有意な効果が得られる。
【0022】
窒化物、酸窒化物およびSiAlON系の発光材料は、
Y3Al5O12:Ce;
Lu3Al5O12:Ce;
(Y1-xGdx)3(Al1-yGay)5O12:Ce、ここで0<x<1、0<y<1;
Sr2CeO4:Eu、Y2O3:Eu,Bi;
(Y,Gd)2O3:Eu,Bi;
Y(V,P)O4:Eu;
Y(V,P)O4:Eu,Bi;
(Sr,Mg,Ca)S:Eu;
Y2O2S:Eu;
(Ba,Sr)MgAl10O17:Eu,Mn;
ZnS:Cu,Al,Au;SrGa2S4Eu;
(Sr,Ba,Ca)(Ga,Al)2S4:Eu;
(Y,Gd)BO3:Ce,Tb;
(Y,Gd)2O2S:Tb;
LaOBr:Ce,Tb;
(Ba,Sr)MgAl10O17:Eu;
(Ba,Sr)5(PO4)3(F,Cl):Eu;
Y2SiO5:Ce;
ZnS:Ag、および
La0.7Gd0.3OBr:Ce
によって構成される群から選定される発光材料との組み合わせであっても良い。
【0023】
0<x<1、0<y<1としたとき、Y3Al5O12:Ceおよび(Y1-xGdx)3(Al1-yGay)5O12:Ceによって構成される群は、520から590nmの範囲の光を放射する橙黄色の発光材料である。
【0024】
Sr2CeO4:Eu、Y2O3:Eu,Bi、(Y,Gd)2O3:Eu,Bi、Y(V,P)O4:Eu、Y(V,P)O4:Eu,Bi、(Sr,Mg,Ca)S:Eu、およびY2O2S:Euによって構成される群は、580から650nmの範囲の光を放射する赤色の発光材料である。
【0025】
Lu3Al5O12:Ce、(Ba,Sr)MgAl10O17:Eu,Mn、ZnS:Cu,Al,Au、SrGa2S4Eu、(Sr,Ba,Ca)(Ga,Al)2S4:Eu、(Y,Gd)BO3:Ce,Tb、(Y,Gd)2O2S:Tb、およびLaOBr:Ce,Tbによって構成される群は、510から630nmの範囲の光を放射する緑色の発光材料である。
【0026】
(Ba,Sr)MgAl10O17:Eu、(Ba,Sr)5(PO4)3(F,Cl):Eu、Y2SiO5:Ce、ZnS:Ag、およびLa0.7Gd0.3OBr:Ceによって構成される群は、420から460nmの範囲の光を放射する青色の発光材料である。
【0027】
放電管が外部電球によって覆われ、放電管の外表面が発光層でコーティングされている場合、発光効率のさらなる向上が可能となる。この場合、外部電球は、熱反射器としても機能する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明のこれらのおよび他の態様は、以下の実施例を参照することにより明らかとなろう。
【0029】
図面は、概略的なものであって、スケールは示されていない。明確化のため、ある寸法が著しく誇張して示されている場合がある。図面間において同様の部品には、できる限り同じ参照符号が付されている。
【0030】
図1には、本発明による低圧蒸気放電ランプを概略的に示す。低圧蒸気放電ランプは、管状放射線透過性の放電管1で構成される。放電管1の壁は、ガラスのような種類のもので構成されることが好ましく、波長300から450nmの範囲のUV放射線に対して透明である。この放電管1は、気密式に放電空間3を取り囲んでおり、この放電空間には、充填ガスが充填される。充填ガスは、実質的に水銀を含まず、インジウム化合物およびバッファガスを含む。放電管1は、放電空間3内でのガス放電を持続させる放電手段2を有する。図1の例では、放電手段2は、放電空間3内に配置された電極である。電極に好適な材料は、例えばニッケル、ニッケル合金、または比較的高融点の金属であり、特にタングステンおよびタングステン合金が好ましい。また、タングステンと酸化トリウムまたは酸化インジウムとの複合材料が、電極の製造に使用されても良い。電流供給導体12a、12bは、それぞれ電極20a、20bを支持し、放電管1から外部へ突出している。電流供給導線12a、12bは、接続ピン13a、13bに接続され、これらの接続ピンは、ランプキャップ14に固定されている。
【0031】
最も単純な例では、放電空間3に充填される充填ガスとして、不活性ガスと、1乃至10μg/cm3の量のハロゲン化インジウムとが使用される。
【0032】
不活性ガスは、バッファガスとして作用し、ガス放電の発生をより簡単にする。バッファガスは、アルゴンであることが好ましい。アルゴンは、完全にまたはその一部が、ヘリウム、ネオン、クリプトンまたはキセノンのような別の不活性ガスと置換されても良い。
【0033】
本発明による低圧蒸気放電ランプの発光効率は、充填ガスに添加される、タリウム、銅およびアルカリ金属のハロゲン化物からなる群から選定された添加剤によって有意に向上する。また発光効率は、ガス雰囲気中に含まれるハロゲン化インジウムを、2または3以上組み合わせることによっても向上する。さらに発光効率は、作動時のランプの内圧を最適化することによっても向上する。バッファガスの低温充填圧力は、最大500mbarである。前記圧力は、1から10mbarの範囲にあることが好ましい。
【0034】
低圧蒸気放電ランプの発光効率は、適切な構成手段を用いて、ランプの作動温度を制御することによって向上することが知られている。ランプの径および全長は、外気温が25℃での作動の際に、内部温度が170から285℃の範囲になるように選定される。この内部温度は、放電によってガス放電管内に温度勾配が生じる、いわゆるガス放電管の「コールドスポット」に関係する。
【0035】
また、放電空間の温度を高めるため、ガス放電管には、赤外放射線反射層をコーティングしても良い。赤外放射線反射コーティング層には、インジウムドープスズ酸化物を有するものが使用されることが好ましい。この場合、塩化インジウムを含む充填ガスを有する低圧蒸気放電ランプにおいて、作動時に最も低いコールドスポットの温度は、170から210℃の範囲とすることが好ましいことが知られており、特に温度は200℃であることがより好ましい。同様に、充填ガスに臭化インジウムが含まれる場合は、最も低いコールドスポットの温度は、210から250℃の範囲とすることが好ましく、約225℃であることがより好ましい。充填ガスにヨウ化インジウムが含まれる場合、最も低いコールドスポットの温度は、220から285℃の範囲とすることが好ましく、約255℃であることがより好ましい。
【0036】
また、前述の3種類の手段を組み合わせた場合も、有意な効果が得られる。
【0037】
図1に示す実施例では、ランプのガス放電管の内面には、発光層4がコーティングされている。発光層4は、珪窒化物またはオキソ珪窒化物をベースとする発光材料を含む。低圧蒸気放電ランプによって放射される放射線は、放射バンドが約304、325、410および451nmのところにあり、さらに可視青色領域に連続分子スペクトルを有する。この放射線は、発光層内の発光材料を励起し、可視領域の光5が放射される。
【0038】
希土類エミッタは、発光材料に極めて適している。特に、発光材料は、ユーロピウム、セリウム、またはイッテリビウムのエミッタを有する。そのようなエミッタは、Eu2+、Ce2+またはYb2+イオンによって活性化され、比較的強くて広い吸収を示す。これらの多くのホスト格子では、吸収領域が青色からUV−Cにわたるため、これらの発光材料は、臭化インジウム(InBr)放電および他の分子放電の発光スペクトルの変換にとって、極めて有益である。
【0039】
特に好適な発光材料は、
(Sr1-x-y-zBaxCay)Si2N2O2:Euz、ここで0<x<0.2、0<y<0.2、0<z<0.1;
Ca1-x-ySrxSi2N2O2:Euy、ここで0<x<0.5、0<y<0.1;
(Sr1-x-y-zCaxBay)2Si5N8:Euz、ここで0<x<1、0<y<1、0<z<0.1;
(Sr1-x-y-zBaxCay)2Si5-aAlaN8-aOa:Euz、ここで0<x<1、0<y<1、0<z<0.1、0<a<4;および
(Sr1-x-y-zBaxCay)Si2N2O2:Ybz、ここで0<x<0.2、0<y<0.2、0<z<0.1;
で構成される群から選定された発光材料である。
【0040】
発光層内の発光材料の化学組成および充填ガスの化学組成は、ともに発光スペクトルまたはその状態を定める。発光材料としての使用に適した材料は、発生放射線を吸収して、好適な波長範囲、例えば赤青緑の3原色の放射線を放射し、高い蛍光量が得られるものである。発光層内の発光材料に、本発明に合致した3つの観念が適用された場合、低圧蒸気放電ランプのUVおよび青色スペクトル領域での放射を利用することによって、白色光を得ることができる。
【0041】
本発明の実施例では、インジウム含有充填ガスによって生じる300から450nmの間のUV領域の放射線は、一般的なガラスによっては吸収されないため、発光材料または発光材料の組み合わせは、放電管1の内面ではなく、その外面に設置されることが好ましい。
【0042】
図2には、本発明による低圧蒸気放電ランプの別の実施例の概略図を示す。低圧蒸気放電ランプは、放電管1を有する。前記放電管1は、折り曲がった管状、コイル状および/または複数の湾曲部を有し、U型または他の適切な形状となっている。また、放電管1は、梨形外部電球6によって覆われている。放電管および外部電球6は、共通基部7に取り付けられる。図2の低圧蒸気放電ランプには、接続ピン13a、13bが設けられている。別の実施例では、低圧蒸気放電ランプには、いわゆるエジソンベースが設置され、従来の機械式および電気式の接続が可能となる。外部電球には、従来の白熱ランプのいかなる形状が選定されても良く、例えば球状、キャンドル状または小球状であっても良い。
【0043】
放電管1は、白熱ランプおよび蛍光灯の製造に一般に使用されている種類のガラスで構成されることが好ましく、例えば
69乃至73%のSiO2
1乃至2%のAl2O3
3乃至4%のMgO、
15乃至17%のNa2O、
4.2乃至4.6%のCaO、
0.1乃至2%のBaO、および
0.4乃至1.6%のK2O
を含むソーダライム珪酸ガラスである。これらの種類のガラスは、インジウム含有充填ガスによって生じる、300から450nmのUV領域にある放射線に対して透明である。また外部電球は、通常のランプ用ガラスで構成されても良い。また外部電球の壁は、高分子合成樹脂および1または2以上の発光材料を含む材料で構成されても良い。特に好ましい高分子合成樹脂は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(THV)、フルオロエチレンプロピレン(FEP)およびポリビニルジフルオライド(PVDF)である。
【0044】
ガス放電管または外部電球に発光コーティングを設置する場合、静電成膜法もしくは静電援用スパッタリング等の乾式コーティング法、および浸漬コーティングもしくはスプレー法のような湿式コーティング法が使用されても良い。
【0045】
湿式コーティング法の場合、発光材料は、水中に分散され、必要に応じて、これに分散剤、表面活性剤および抗発泡剤またはバインダ調合液が組み合わされる。本発明による発光材料にとって好適なバインダ調合液には、250℃の作動温度で分解、脆化または変色しない耐性を有する有機または無機バインダが含まれる。別の実施例では、例えば250乃至500℃の高温下で容易に焼失するバインダが使用される。
【0046】
発光材の調合液に使用される溶媒としては、ポリメタクリル酸またはポリプロピレン酸化物のような増粘剤が添加された水が好ましい。通常の場合、分散剤、脱泡剤、および酸化アルミニウム、酸窒化アルミニウムもしくはホウ酸等の粉末調整剤のような他の添加物が使用される。発光材の調合液は、流し込み、フラッシングまたはスプレーによって、外部電球の内側に設置される。その後、高温空気によってコーティングが乾燥される。通常、層の厚さは、1から50μmの範囲である。
【0047】
低圧蒸気放電ランプの作動時には、電極によって放射された電子が、充填ガス中の原子および分子を励起し、320から450nmの領域の連続スペクトルのUV線が放射される。放電によって、充填ガスが加熱され、所望の蒸気圧、および光出力が最適となる170〜285℃の間の所望の作動温度が得られる。インジウム含有充填ガスによって生じる、300から450nmのUV領域の放射線は、発光層に入射し、該層から可視光線が放射される。
【0048】
前述の発光材料の特性を評価するために、多くの実験を実施した。発光層の層厚および各種発光材料の放射スペクトルが異なるため、各種発光材料の特性を比較する最良の方法は、低圧蒸気放電ランプによって放射される「可視出力」を用いて、放電空間3での放電出力の変換率を比較することである。各種発光材料の発光層に対して、変換効率を比較した。発光層の厚さは、放電放射線のいわゆる視線透過が実質的に生じなくなる厚さに選定した。厚い層の調合液は、サスペンションの粘度による制限を受ける。このため、変換効率は、平均8粒子以上を有する層同士で比較した。発光材料を含む発光層がガラス管にコーティングされ、その中央には、適当な放電放射線を放射する適当なバーナーが設置される。このバーナーによって放射される放電放射線は、発光材料を励起し、発光層が設置されたガラス管の放射、および放電による残留放射が積算球内で測定される。放電出力は、310から360nmの間で集積され、可視出力は、380から782nmの間で集積されている。結果をまとめて表1に示す。
【0049】
【表1】

表1の結果から、従来の低圧蒸気放電ランプに使用される発光材料のエネルギー変換率PVIS/Pdischargeは、通常0.40未満である。窒化物または酸窒化物格子を持つ発光材料、すなわちSrSi2N2O2:EuおよびSr2Si5N8:Euでは、0.40またはこれを超えるオーダーの変換率が得られている。
【0050】
前述の実施例は、例示であって本発明を限定するものではなく、添付の特許請求の範囲から逸脱しないで、当業者には、多くの代替実施例を考案することが可能であることに留意する必要がある。請求項において、括弧内に示されているいかなる参照符号も、請求項を限定するものではない。「有する」という動詞およびその変化形は、請求項に記載されていない部品またはステップの存在を排斥するものではない。部品の前の「一つの」という冠詞は、そのような部品が複数存在することを排斥するものではない。本発明は、いくつかの異なる素子を有するハードウェアによって、および適当にプログラム化されたコンピュータによって実施されても良い。いくつかの手段が列挙された装置の請求項において、これらのいくつかの手段が、一つのハードウェアおよび同じ項目を含むハードウェアによって具体化されても良い。単にある手段が相互に異なる従属項に記載されていることによって、これらの手段の組み合わせが有意ではないと解してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明による、インジウム化合物を含む充填ガスおよび発光層を有する低圧蒸気放電ランプにおける光の発生を示す図である。
【図2】本発明による低圧蒸気放電ランプの別の実施例の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填ガスが充填された放電空間を、気密状態で取り囲む放射線透過性の放電管を有する低圧蒸気放電ランプであって、
前記充填ガスは、実質的に水銀を含まず、インジウム化合物およびバッファガスを含み、
前記放電管は、前記放電空間内でガス放電を持続させる放電手段を有し、
前記放電管には、発光層が設置され、
該発光層は、珪窒化物またはオキソ珪窒化物をベースとする発光材料を含む、低圧蒸気放電ランプ。
【請求項2】
前記発光材料は、希土類エミッタを有することを特徴とする請求項1に記載の低圧蒸気放電ランプ。
【請求項3】
前記発光材料は、ユーロピウム、セリウムまたはイッテリビウムのエミッタを有することを特徴とする請求項2に記載の低圧蒸気放電ランプ。
【請求項4】
前記発光材料は、アルミニウムを含むオキソ珪窒化物を有することを特徴とする請求項1または2に記載の低圧蒸気放電ランプ。
【請求項5】
前記発光層は、
(Sr1-x-y-zBaxCay)Si2N2O2:Euz、ここで0<x<0.2、0<y<0.2、0<z<0.1;
Ca1-x-ySrxSi2N2O2:Euy、ここで0<x<0.5、0<y<0.1;
(Sr1-x-y-zCaxBay)2Si5N8:Euz、ここで0<x<1、0<y<1、0<z<0.1;
(Sr1-x-y-zBaxCay)2Si5-aAlaN8-aOa:Euz、ここで0<x<1、0<y<1、0<z<0.1、0<a<4;および
(Sr1-x-y-zBaxCay)Si2N2O2:Ybz、ここで0<x<0.2、0<y<0.2、0<z<0.1;
によって構成される群から選定される発光材料を有することを特徴とする請求項1または2に記載の低圧蒸気放電ランプ。
【請求項6】
さらに、前記発光層は、
Y3Al5O12:Ce;
(Y1-xGdx)3(Al1-yGay)5O12:Ce、ここで0<x<1、0<y<1;
Sr2CeO4:Eu、Y2O3:Eu,Bi;
(Y,Gd)2O3:Eu,Bi;
Y(V,P)O4:Eu;
Y(V,P)O4:Eu,Bi;
(Sr,Mg,Ca)S:Eu;
Y2O2S:Eu;
(Ba,Sr)MgAl10O17:Eu,Mn;
ZnS:Cu,Al,Au;SrGa2S4Eu;
(Sr,Ba,Ca)(Ga,Al)2S4:Eu;
(Y,Gd)BO3:Ce,Tb;
(Y,Gd)2O2S:Tb;
LaOBr:Ce,Tb;
(Ba,Sr)MgAl10O17:Eu;
(Ba,Sr)5(PO4)3(F,Cl):Eu;
Y2SiO5:Ce;
ZnS:Ag、および
La0.7Gd0.3OBr:Ce
によって構成される群から選定される発光材料を有することを特徴とする請求項1または2に記載の低圧蒸気放電ランプ。
【請求項7】
前記発光層からの放射と、前記ガス放電からの放射とが合わさって、白色光が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の低圧蒸気放電ランプ。
【請求項8】
前記放電管は、外部電球に取り囲まれ、前記放電管の外表面には、前記発光層がコーティングされることを特徴とする請求項1または2に記載の低圧蒸気放電ランプ。
【請求項9】
前記放電管は、外部電球に取り囲まれ、該外部電球には、発光材料がコーティングされることを特徴とする請求項1または2に記載の低圧蒸気放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−513469(P2007−513469A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539007(P2006−539007)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052256
【国際公開番号】WO2005/045881
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】