説明

水銀分析のための加熱分解装置および水銀分析装置ならびにその方法

【課題】試料中の水銀を捕集した活性炭から沃素が発生しないようにする加熱分解装置および水銀分析装置ならびにその方法を提供し、水銀分析の感度と精度を向上させることを目的とする。
【解決手段】本発明の加熱分解装置10は、試料S中の水銀を捕集した活性炭Cを収容する試料容器12と、試料容器12に収容された活性炭Cを加熱する試料加熱炉11と、活性炭Cが試料加熱炉11で加熱されることによって生成される水銀ガスを運ぶためのキャリアガスGを流す第1のキャリアガス流路16とを有し活性炭Cから水銀ガスを生成し、
キャリアガスGとして、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガス、ヘリウムガスのうち少なくとも1つのガスを流しながら試料容器12に収容された活性炭Cを試料加熱炉11で所定の温度に加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中に含有される水銀を捕集する活性炭を加熱分解する加熱分解装置および水銀分析装置ならびにその水銀捕集方法および水銀分析方法に関する。特に、原子吸光分析または原子蛍光分析の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から原子吸光分析法による水銀分析は、長年にわたり環境分析や品質管理分析などで広く使用され、原子蛍光分析法による水銀分析もかなり以前から使用されている。例えば、廃棄物焼却炉や火力発電炉などの煙道排気ガス中の水銀測定が様々な方法でなされている。
【0003】
例えば、特許文献1では、ガス中の水銀の分析を連続測定している。ゴミ焼却炉の煙突から排出される排ガス中の水銀分析であり、その煙突内に、還元装置を構成する配管の先端を臨ませ、吸引ポンプを作動させることにより、前記排ガスが配管から導入されて還元反応器内を通過させ、還元された水銀は、排ガスとともに還元装置の配管を経て分析器に送られ、この分析器により水銀の分析が行われる。
【0004】
しかし、目的や用途によってオフライン測定であるバッチ測定も行われている。従来からバッチ測定用の加熱分解による水銀分析装置がある。例えば、試料を試料容器に入れ、その試料容器を試料加熱炉に挿入し、空気ポンプによって所定流量の空気を流しながら、試料加熱炉で試料を加熱分解し、試料から発生した水銀を水銀捕集管で捕集して、原子吸光分析法で測定する水銀分析装置がある。
【0005】
米国EPAの石炭排ガス中の水銀規制(Clean Air Mercury Rule) は石炭排ガス水銀測定法として捕集剤による捕集測定を規定している。この方法は特殊な処理を施した活性炭を詰めた水銀捕集カラムで、石炭排ガスを一定時間捕集し、捕集後、水銀捕集カラムの中のそれぞれの活性炭を湿式分解することよって溶液にし、還元気化法を用いた原子吸光分析法によって水銀を測定している。しかし、活性炭を湿式分解するには充分な知識と経験が必要であり、手間がかかる。また、石炭排ガスを捕集した活性炭を溶液にするため試料濃度が薄められ、高感度の測定をすることができない。
【特許文献1】特開2001−33434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の加熱分解による水銀分析装置を用いて、上記の米国EPAの方法によって排ガス中の水銀を一定時間捕集した活性炭をセラミックや石英製の試料容器に入れ、試料加熱炉に挿入し、空気ポンプによって所定の流量の空気を流しながら、試料加熱炉で活性炭を加熱し、酸化促進炉で活性炭から発生した化合物水銀を0価の水銀に分解し、これを水銀捕集管で金アマルガムとして捕集して原子吸光分析法で測定すると、水銀の測定信号を検出することができない状態になり測定不能となる。これは、水銀をより効率よく捕集するために活性炭に担持されている沃素が加熱されることにより気化して装置の空気流路の内壁に付着し、加熱気化された水銀と化合物を形成して水銀をトラップするためと考えられる。
【0007】
本発明は前記従来の問題に鑑みてなされたもので、試料中の水銀を捕集した活性炭から沃素が発生しないようにする加熱分解装置および水銀分析装置ならびにその方法を提供し、水銀分析の感度と精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の第1構成にかかる加熱分解装置は、試料中の水銀を捕集した活性炭を収容する試料容器と、前記試料容器に収容された前記活性炭を加熱する試料加熱炉と、前記活性炭が前記試料加熱炉で加熱されることによって生成される水銀ガスを運ぶためのキャリアガスを流す第1のキャリアガス流路とを有し前記活性炭から水銀ガスを生成する加熱分解装置であって、前記キャリアガスとして、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガス、ヘリウムガスのうち少なくとも1つのガスを流しながら前記試料容器に収容された前記活性炭を前記試料加熱炉で所定の温度に加熱する。
【0009】
本発明の第1構成の加熱分解装置によれば、試料中の水銀を捕集した活性炭から沃素が発生しないようにすることができる。
【0010】
第1構成の加熱分解装置に、さらに、前記第1のキャリアガス流路において前記試料加熱炉より下流側に設けられ、前記活性炭から発生したハロゲンを除去するハロゲン除去炉を有することが好ましい。試料中の水銀を捕集した活性炭から微量の沃素が発生した場合であってもその沃素を除去することができる。
【0011】
本発明の第2構成にかかる水銀分析装置は、第1構成の加熱分解装置と、前記加熱分解装置によって生成された水銀ガスを捕集する水銀捕集ユニットと、前記水銀捕集ユニットを加熱して水銀ガスを生成する加熱気化装置と、前記第1のキャリアガス流路に接続され、前記加熱分解装置によって生成された水銀ガスおよび前記水銀捕集ユニットを加熱して生成された水銀ガスを運ぶためのキャリアガスを流す第2のキャリアガス流路と、前記第1および第2のキャリアガス流路に流すキャリアガスの流量を制御するキャリアガス制御手段と、試料中の水銀の含有量を定量する分析器とを有する水銀分析装置。
【0012】
本発明の第2構成のユニットによれば、試料中の水銀を捕集した活性炭から沃素が発生しないようにすることができ、水銀分析の感度と精度を向上させることができる。
【0013】
本発明の第3構成にかかる水銀捕集方法は、試料容器に試料中の水銀を捕集した活性炭を収容し、前記試料容器に収容された前記活性炭を所定の温度に加熱し、前記活性炭が加熱されることによって生成される水銀ガスを運ぶためのキャリアガス流路に、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガス、ヘリウムガスのうち少なくとも1つのキャリアガスを流し、前記活性炭中に含有される水銀を水銀捕集ユニットに捕集する。
【0014】
本発明の第3構成の方法によれば、試料中の水銀を捕集した活性炭から沃素が発生しないようにすることにより試料中の水銀の捕集効率を向上させることができる。
【0015】
本発明の第4構成にかかる水銀分析方法は、第3構成の方法によって水銀捕集ユニットに捕集された水銀を加熱気化させ、気化された水銀ガスを運ぶためのキャリアガス流路に、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガス、ヘリウムガスのうち少なくとも1つのキャリアガスを流して分析器に前記水銀ガスを導入し、前記分析器で試料中の水銀の含有量を定量する。
【0016】
本発明の第4構成の方法によれば、試料中の水銀を捕集した活性炭から沃素が発生しないようにすることができ、高感度および高精度の分析を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の第1の実施形態である水銀分析装置について説明する。この水銀分析装置1は、例えば煙道排ガス中の水銀の含有量を定量する装置であり、図1に示すように、試料Sである煙道排ガス中の水銀を捕集した活性炭Cを加熱分解して水銀ガスを生成する加熱分解装置10と、生成された水銀ガスを運ぶキャリアガスG、例えば窒素ガスGとともに運ばれてくる水分を除去する除湿器2と、加熱分解装置10によって生成された水銀ガスを捕集する水銀捕集ユニット4と、水銀捕集ユニット4を加熱して水銀ガスを生成する加熱気化装置5と、加熱分解装置10の試料投入口13から除湿器2までのキャリアガスGの流路である第1のキャリアガス流路16に接続された第2のキャリアガス流路3と、窒素ガスGの流量を制御するキャリアガス制御手段6と、試料S中の水銀の含有量を定量する分析器である原子吸光分析装置20とを有する。
【0018】
加熱分解装置10は、試料S中の水銀を捕集した活性炭Cを収容する、例えばセラミック製である試料容器12と、試料容器12に収容された活性炭Cを加熱する試料加熱炉11と、活性炭Cが試料加熱炉11によって加熱されることにより生成される2価水銀を金属水銀に還元する触媒炉14と、活性炭Cが試料加熱炉11によって加熱されることにより生成される硫黄やハロゲンを捕集して除去するハロゲン除去炉15と、試料加熱炉11で生成されるこれらのガスや水銀ガスを運ぶための窒素ガスGを流す第1のキャリアガス流路16とを有する。水銀分析装置1はハロゲン除去炉15を備えることにより、沃素などのハロゲンがハロゲン除去炉15の下流側に流れることがなく試料S中の水銀の捕集効率を向上させて、高感度および高精度の分析を行うことができる。ハロゲン除去炉15にはハロゲン除去剤として、例えば粒状の酸化銀・酸化コバルトが充填されている。
【0019】
水銀捕集ユニット4は、充填材として、例えば金属水銀と反応してアマルガムを生成する金や銀などの粒状体やウール状細線、多孔質担体の表面に金や銀などをコーティングしたものなどが用いられ、第2のキャリアガス流路3に接続されている。加熱気化装置5は、加熱分解装置10によって生成された水銀を捕集する水銀捕集ユニット4を加熱炉内に収容しており、水銀捕集ユニット4を加熱して捕集された水銀を気化させる。キャリアガス制御手段6は、キャリアガス供給手段(図示なし)から供給されるキャリアガスGをキャリアガスGの導入部である試料加熱炉11の試料投入口13から吸引するポンプ61と、キャリアガスGの流量を制御する流量計62とを有する。キャリアガス供給手段は、例えば減圧弁が取り付けられた窒素ボンベなどである。前記キャリアガスGは窒素ガスに限らず、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガス、ヘリウムガスのうち少なくとも1つが流される。
【0020】
図2に示すように原子吸光分析装置20は、加熱気化装置5で加熱気化された水銀が導入される測定セル22に水銀の分析線を放射する水銀ランプ21と、測定セル22を透過した水銀の分析線強度を検出する検出器23と、その検出強度に基づいて試料S中の水銀の含有量を算出する検出処理部24とを備えている。
【0021】
次に、煙道排気ガス中の水銀測定の1つの例として、例えば米国EPAの石炭排ガス中の水銀規制の石炭排ガス水銀測定法で用いられている水銀の捕集方法について説明する。
【0022】
この方法は、市販の水銀捕集カラムを用いて水銀を捕集する方法であり、図3(a)に示すように沃素が担持された活性炭Cが3層に内部に充填された水銀捕集カラム40を用いて排ガス中の水銀を捕集する。水銀捕集カラム40は、試料捕集層41、リーク量表示層42、および水銀添加層43の3層の活性炭Cがそれぞれ同量充填されており、それぞれの活性炭Cには水銀をより効率的に捕集するために沃素が、例えば活性炭Cの重量に対して0.5wt%の量が担持されている。
【0023】
試料捕集層41は石炭排ガス中の水銀を捕集する活性炭Cが、例えば0.5グラム(g)充填されており、排ガス中の水銀を捕集後、前記の水銀分析装置1の試料容器12に入れられて測定される。
【0024】
リーク量表示層42は、試料捕集層41では捕集されずに漏れ出てきた水銀を捕集する活性炭Cが、試料捕集層41と同量の0.5グラム(g)が充填されており、排ガス中の水銀を捕集後、試料捕集層41と同様に測定され、試料捕集層41からのリーク量が検出され、この検出されたリーク量が前記の石炭排ガス中の水銀規制で決められた所定値を超える場合には、試料捕集層41で何らかの干渉作用が発生していると考えられ、試料捕集層41の測定値は有効な定量値として用いることはできない。
【0025】
水銀添加層43は、所定の水銀量、例えば1000ナノグラム(ng)が添加された活性炭Cが、試料捕集層41と同量の0.5グラム(g)が充填されており、排ガス中の水銀を捕集後、試料捕集層41と同様に測定され、添加されている水銀量の回収率が前記の石炭排ガス中の水銀規制で決められた所定値の範囲外の場合には、試料捕集層41で何らかの干渉作用が発生していると考えられ、試料捕集層41の測定値は有効な定量値として用いることはできない。
【0026】
上記では3層の活性炭Cを有する水銀捕集カラム40について説明したが、試料捕集層41とリーク量表示層42からなる2層の水銀捕集カラム50(図3(b)参照)、または試料捕集層41と水銀添加層43からなる2層の水銀捕集カラム60も市販されている(図3(c)参照)。また、活性炭Cの充填量が、0.2、0.5、1.0グラム(g)などの水銀捕集カラムが市販されている。
【0027】
次に、例えば煙道中の石炭排ガス中の水銀の捕集方法および分析方法について説明する。前記の石炭排ガス中の水銀規制で決められた方法により、試料捕集層41とリーク量表示層42からなる2層の水銀捕集カラム50を用いて煙道中の石炭排ガスから水銀を一定時間捕集した。この水銀捕集カラム50は各層にそれぞれ活性炭Cが1.0グラム(g)充填されており、0.2グラムや0.5グラム充填されている水銀捕集カラムより2〜5倍の量の活性炭Cが充填されているので、長時間にわたって捕集することができ、石炭排ガス中の水銀が低濃度であっても感度良く測定することができる。
【0028】
上記の方法で石炭排ガスから水銀を一定時間捕集した水銀捕集カラム50と水銀分析装置1を用いて石炭排ガス中の水銀を分析する。まず、水銀捕集カラム50の試料捕集層41の活性炭Cの1グラムの全量を、例えばセラミックや石英製のボート形状の試料容器12に入れ、試料投入口13から試料加熱炉11の位置まで挿入し、キャリアガス供給手段から試料投入口13に窒素ガスGを供給し、ポンプ61により所定の流量(例えば0.2L/min)を流しながら、試料加熱炉11で活性炭Cを室温から徐々に所定の温度である550〜650℃に、好ましくは600℃に一定時間加熱する。試料加熱炉11で加熱された活性炭Cから発生したガスは窒素ガスGによって運ばれ、触媒炉14、ハロゲン除去炉15、除湿器2すなわち第2のキャリアガス流路3を通り、加熱気化装置5の加熱炉内に収容され、150〜200℃に加熱された水銀捕集ユニット4に入り、水銀が捕集される。水銀捕集時には、水銀ガス以外の他のガスが捕集されないように水銀捕集ユニット4の加熱温度は150〜200℃が好ましい。
【0029】
キャリアガスである窒素ガスGには酸素が含まれていないので、活性炭Cは550〜650℃に加熱されても酸化反応が起こらないため、燃焼が起こらず、活性炭Cは蒸し焼き状態になり、活性炭Cに吸着されている水銀は加熱分解され金属水銀になるが、活性炭Cに担持されている沃素は気化されない。窒素ガス雰囲気で活性炭Cを約800℃に加熱すると少量の沃素が気化され、また約400℃で加熱すると水銀が充分に気化されないようであり、試料加熱炉11での加熱温度は550〜650℃が好ましく、600℃程度がより好ましい。
【0030】
試料加熱炉11で加熱された活性炭Cから発生したガス中に残存する2価の水銀は600℃に加熱された触媒炉14で金属水銀に還元されて400℃に加熱されたハロゲン除去炉15を通過するが、硫黄や残存する沃素などのハロゲンガスはハロゲン除去炉15で取除かれる。
【0031】
水銀捕集ユニット4で水銀が捕集された後、加熱気化装置5の加熱炉内の水銀捕集ユニット4を600〜700℃に加熱して加熱気化された水銀を、ポンプ61で窒素ガスGを吸引しながら流量計62で、例えば0.5L/minの流量になるように調節して原子吸光分析装置20の測定セル42に導入して測定する。水銀ガスが導入された測定セル22に水銀ランプ21から水銀の分析線を放射し、検出器23で測定セル22を透過した水銀の分析線強度を検出し、その検出強度に基づいて検出処理部24で活性炭C中の水銀の含有量を算出し、試料S中の水銀を定量する。
【0032】
次に、水銀捕集カラム50のリーク量表示層42の活性炭Cの1グラムの全量を、試料容器12に入れ、試料捕集層41と同様の方法によってリーク量表示層42の活性炭C中の水銀の含有量を測定する。このリーク量表示層42の含有量が前記の石炭排ガス中の水銀規制で決められた所定値を超えない場合には、試料捕集層41の定量値は有効な測定値として用いることができる。このようにして水銀捕集カラムに捕集した石炭排ガス中の水銀の含有量を定量する。
【0033】
このように本実施形態では、キャリアガスGに窒素ガスを用いており、試料捕集層41およびリーク量表示層42の活性炭Cは蒸し焼き状態になり、活性炭Cに吸着されている水銀は加熱分解され金属水銀になるが、活性炭Cに担持されている沃素は気化されないので、水銀分析装置1のキャリアガス流路の内壁に沃素が付着せず、活性炭Cの水銀が高感度かつ高精度で分析することができる。蒸し焼き状態の活性炭Cから微量の沃素が気化してもハロゲン除去炉15を備えているので、その微量の沃素も除去することができる。また、活性炭Cを0.2グラム(g)や0.5グラム(g)しか入れることができない試料容器の装置では、排ガス中の水銀の含有量が少量の場合には、1回の加熱分解だけでは十分な感度が得られないために、2〜5回繰り返し活性炭Cに捕集し加熱分解して水銀捕集ユニット4に水銀を捕集しなければならないが、本実施形態の装置では、1グラム(g)収容することができ、1回の捕集だけで測定することができる。
【0034】
以下、本発明の第2実施形態である水銀分析装置2について説明する。図1に示すように、この水銀分析装置2は、第1の実施形態に係る水銀分析装置1の分析器である原子吸光分析装置20が原子蛍光分析装置30に置き換えられた装置であり、その他の構成は水銀分析装置1と同じである。したがって、図1では、水銀分析装置には符号1と2が、分析器には符号20と30が付けられている。原子蛍光分析装置30は、図4に示されるように、加熱気化装置5で加熱気化された水銀が導入される測定セル32に水銀の分析線を放射する水銀ランプ31と、水銀ランプ31から放射される分析線が入射しない位置であり、かつ測定セル32に導入された試料ガスS中に存在する水銀から発生する水銀の蛍光を検出できる位置に配置された検出器33と、検出器33が検出した水銀の蛍光強度に応じて試料ガスS中の水銀の含有量を定量する検出処理部34を備えている。
【0035】
第2の実施形態の水銀分析装置2を用いた水銀の捕集方法および分析方法においては、例えば減圧弁が取り付けられたアルゴンボンベであるキャリアガス供給手段からキャリアガスとしてアルゴンガスGが供給され、検出器33が検出した水銀の蛍光強度に応じて、検出処理部34が試料ガスS中の水銀の含有量を定量する以外は第1の実施形態の方法と同様であるので、説明を省略する。
【0036】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用・効果を有しており、分析器が原子蛍光分析装置30であるので、キャリアガスGとしてアルゴンガスを用いると窒素ガスを用いるより高感度の分析を行うことができる。
【0037】
なお、前記の実施形態では、2層または3層の水銀捕集カラム40、50、60を用いた方法について説明したが、本発明においては試料捕集層41のみ有する水銀捕集カラムを用いて試料S中の水銀を捕集して測定してもよい。前記の実施形態では、キャリアガスGとして窒素ガスとアルゴンガスを用いたが、酸素を含まず反応性に乏しいガスであればよく、ネオンガス、ヘリウムガスを用いてもよく、これらの任意の組み合わせの混合ガスを用いてもよい。また、上記の第1および第2の実施形態では、波長非分散型の原子吸光または原子蛍光分析装置を図示しているが、本発明においては波長分散型の原子吸光または原子蛍光分析装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1および第2の実施形態である水銀分析装置の概略ブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態である水銀分析装置の原子吸光分析装置の概略ブロック図である。
【図3】(a)3層の水銀捕集カラムの概略図である。(b)1つの2層の水銀捕集カラムの概略図である。(c)他の1つの2層の水銀捕集カラムの概略図である。
【図4】本発明の第2の実施形態である水銀分析装置の原子蛍光分析装置の概略ブロック図である。
【符号の説明】
【0039】
1 2 水銀分析装置
3 第2のキャリアガス流路
4 水銀捕集ユニット
5 加熱気化装置
6 キャリアガス制御手段
10 加熱分解装置
11 試料加熱炉
12 試料容器
15 ハロゲン除去炉
16 第1のキャリアガス流路
20 原子吸光分析装置
30 原子蛍光分析装置
C 活性炭
G キャリアガス
S 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の水銀を捕集した活性炭を収容する試料容器と、
前記試料容器に収容された前記活性炭を加熱する試料加熱炉と、
前記活性炭が前記試料加熱炉で加熱されることによって生成される水銀ガスを運ぶためのキャリアガスを流す第1のキャリアガス流路と、
を有し前記活性炭から水銀ガスを生成する加熱分解装置であって、
前記キャリアガスとして、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガス、ヘリウムガスのうち少なくとも1つのガスを流しながら前記試料容器に収容された前記活性炭を前記試料加熱炉で所定の温度に加熱する加熱分解装置。
【請求項2】
請求項1において、
さらに、前記第1のキャリアガス流路において前記試料加熱炉より下流側に設けられ、前記活性炭から発生したハロゲンを除去するハロゲン除去炉を有する加熱分解装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の加熱分解装置と、
前記加熱分解装置によって生成された水銀ガスを捕集する水銀捕集ユニットと、
前記水銀捕集ユニットを加熱して水銀ガスを生成する加熱気化装置と、
前記第1のキャリアガス流路に接続され、前記加熱分解装置によって生成された水銀ガスおよび前記水銀捕集ユニットを加熱して生成された水銀ガスを運ぶためのキャリアガスを流す第2のキャリアガス流路と、
前記第1および第2のキャリアガス流路に流すキャリアガスの流量を制御するキャリアガス制御手段と、
試料中の水銀の含有量を定量する分析器と、
を有する水銀分析装置。
【請求項4】
試料容器に試料中の水銀を捕集した活性炭を収容し、
前記試料容器に収容された前記活性炭を所定の温度に加熱し、
前記活性炭が加熱されることによって生成される水銀ガスを運ぶためのキャリアガス流路に、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガス、ヘリウムガスのうち少なくとも1つのキャリアガスを流し、
前記活性炭中に含有される水銀を水銀捕集ユニットに捕集する水銀捕集方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法によって水銀捕集ユニットに捕集された水銀を加熱気化させ、
気化された水銀ガスを運ぶためのキャリアガス流路に、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガス、ヘリウムガスのうち少なくとも1つのキャリアガスを流して分析器に前記水銀ガスを導入し、
前記分析器で試料中の水銀の含有量を定量する水銀分析方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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