説明

水銀蒸気放電灯の製造方法

【課題】水銀蒸気放電灯が安定した品質で生産できるようにする。
【解決手段】アマルガム材13と金属部材14を小型気密容器11に封入し、この小型気密容器を発光気密容器1に挿入し、小型気密容器内のアマルガム材13をヒータ4で加熱して小型気密容器内で水銀蒸気を放出させ、さらに小型気密容器内の金属部材を高温加熱し、金属部材によって小型気密容器を開放させて中の水銀蒸気を発光気密容器内に放出させ、この発光気密容器の封をして水銀蒸気放電灯を得る。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水銀蒸気放電灯の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、水銀蒸気放電灯は、液晶バックライト用光源として使用されている。この水銀蒸気放電灯の従来の製造方法について説明する。
【0003】
図3(a)に示すように、長尺のガラス管1の一端(図では下端)を封止し、当該ガラス管1の放電灯ガラス管の長さLとなる位置に加熱してくびれ2を設けておく。そして矢印で示したように、このくびれ2の設けられたガラス管1の開口側の端部からアマルガム材のような水銀合金部材3を挿入してくびれ2の部分で受け止めさせる。
【0004】
次に、図3(b)に示すように、ヒータ4にガラス管1を挿入し、排気管5をガラス管1の開口端部に接続し、ガラス管1を加熱しながらガラス管1内を真空引きして真空状態にし、その中に希ガスを導入する。
【0005】
続いて、図3(c)に示すように、ヒータ6によってガラス管1を加熱するとともに高周波誘導加熱器7を用いて水銀合金部材3の部分を高周波誘導加熱して水銀合金部材3を溶融させて水銀蒸気を発生させ、その水銀蒸気をガラス管1のランプ容器10となる側、つまり図3(c)ではくびれ2から下側の部分の中に導入する。
【0006】
この後、図3(d)に示すように、ランプ容器10の部分を切り離すために、バーナー8によってくびれ2の部分を加熱して、ガラス管1からランプ容器10の部分をくびれ2において切り離し、同時のこのくびれ2側の端部を封止する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の水銀蒸気放電灯の製造方法によれば、図3(c)に示した高周波誘導加熱器7による水銀合金部材3を加熱する際、水銀合金部材3と高周波誘導加熱器7の誘導コイルとの位置の微妙な変化によって水銀合金部材3の上昇温度がばらつくために、その水銀放出率が変化しやすく、得られた水銀蒸気放電灯間で封入水銀量が大きくばらつく問題点があった。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、製造される水銀蒸気放電灯に封入する水銀蒸気量を安定させることができる水銀蒸気放電灯の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明の水銀蒸気放電灯の製造方法は、アマルガム材を小型気密容器に封入するステップと、前記小型気密容器を発光気密容器に挿入するステップと、前記小型気密容器内のアマルガム材を加熱して水銀蒸気を放出させるステップと、前記小型気密容器を開放させて前記水銀蒸気を前記発光気密容器内に放出させるステップと、前記発光気密容器の封をするステップとを有するものである。
【0010】
請求項1の発明の水銀蒸気放電灯の製造方法では、水銀蒸気源としてアマルガム材を用いることによって低温加熱でも水銀蒸気の放出率を高くし、小型気密容器内でアマルガム材から水銀蒸気を放出させた後、この小型気密容器を開放させその中から発光気密容器内に水銀蒸気を放出させることにより、水銀蒸気放電灯を安定した品質で製造する。
【0011】
請求項2の発明の水銀蒸気放電灯の製造方法は、アマルガム材と金属部材を小型気密容器に封入するステップと、前記小型気密容器を発光気密容器に挿入するステップと、前記小型気密容器内のアマルガム材を加熱して水銀蒸気を放出させるステップと、前記小型気密容器内の金属部材を加熱し、前記金属部材によって前記小型気密容器を開放させて前記水銀蒸気を前記発光気密容器内に放出させるステップと、前記発光気密容器の封をするステップとを有するものである。
【0012】
請求項2の発明の水銀蒸気放電灯の製造方法では、水銀蒸気源としてアマルガム材を用いることによって低温加熱でも水銀蒸気の放出率を高くし、小型気密容器内でアマルガム材から水銀蒸気を放出させた後、この小型気密容器を高温加熱することによって金属部材を高温にして小型気密容器を内側から開放させ、その中から発光気密容器内に水銀蒸気を放出させ、水銀蒸気放電灯を安定した品質で製造する。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2の水銀蒸気放電灯の製造方法において、前記小型気密容器を開放させて前記水銀蒸気を前記発光気密容器内に放出させるステップの前に、前記発光気密容器を真空にするステップを有することを特徴とするものであり、これにより希ガスと水銀蒸気を発光気密容器内へ所要の濃度で封入する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。図1(a)〜(d)は本発明の1つの実施の形態の水銀蒸気放電灯の製造方法を図示したものである。
【0015】
(1)まず、図1(a)に示すように長尺のガラス管1の一端(図において下端)を封止し、このガラス管1のランプ容器10になる長さLの位置に第1のくびれ21を設ける。そしてこの第1のくびれ21を設けた位置まで開口端部から図2に示すガラス製カプセル11を挿入する。さらに、第1のくびれ21の位置からこのガラス製カプセル11の長さD分だけ離れた位置においてもガラス管1に第2のくびれ22を設ける。この第2のくびれ22よりも上側に不純物蒸気を吸着除去するためのゲッター12を挿入する。これらの第1、第2のくびれ21,22は該当部分をバーナーで加熱した後に内側に変形させることによって形成する。
【0016】
図2に示すように、小型気密容器であるガラス製カプセル11は、内部が真空であり、水銀蒸気源としてのアマルガム材13と共に、屈曲させた金属部材14が封装されたものである。金属部材14としては、屈曲した棒体に代えて、リング状あるいはバネ性を有する金属部材を挿入しておくこともができる。このような金属部材を用いる場合、後述する高温加熱による熱膨張によってガラス製カプセル11の内壁に圧力を加え、開放させることができる。
【0017】
(2)次に、図1(b)に示すように、ヒータ4にガラス管1を挿入し、排気管5をガラス管1の開口端部に接続し、ガラス管1を加熱しながらガラス管1内を真空引きして真空状態にし、その中に希ガスを導入する。このヒータ4による加熱により、ガラス管1内のガラス製カプセル11も加熱され、その中でアマルガム材13から水銀蒸気が放出される。この際、アマルガム材13は水銀放出温度が低いため、ヒータ4の加熱によっても十分大量の水銀蒸気を放出する。
【0018】
(3)続いて、図1(c)に示すように、ヒータ6によってガラス管1を加熱するとともに高周波誘導加熱器7を用いてガラス製カプセル11の入っている部分を高周波誘導加熱する。この高周波誘導加熱によりガラス製カプセル11内の金属部材14が高温度に加熱され、これによって、金属部材14と接触しているガラス製カプセル11の一部分が急激に温度上昇してその壁にクラックが入り、あるいはその接触部分が溶融して穴があき、そのクラック部分あるいは穴から中の水銀蒸気がカプセル11外に放出される。この結果、ガラス管1のランプ容器10と成る側、つまり図1(c)では第1のくびれ21から下側の部分の中に水銀蒸気が導入される。
【0019】
なお、ガラス製カプセル11の高温加熱には、高周波誘導加熱器7に代えて、レーザー加熱器を用いることもできる。
【0020】
(4)この後、図1(d)に示すように、ランプ容器10の部分を切り離すために、バーナー8によって第1のくびれ21の部分を加熱して、ガラス管1からランプ容器10の部分を第1のくびれ21において切り離し、同時のこの第1のくびれ21側の端部を封止する。
【0021】
【実施例】
本発明の水銀蒸気放電灯の製造方法の実施例を説明する。
【0022】
外径4.0mm、内径3.0mmの長尺のホウ珪酸ガラスをガラス管1として用い、一端を封止し、その封止端からL=300mmの位置に第1のくびれ21を設け、ガラス製カプセル11を挿入した。
【0023】
ガラス製カプセル11は、ホウ珪酸ガラス製で、外径2.6mm、内径2.0mm、全長15mmのものであった。その内部にはアマルガム材13と金属部材14としての7.0mmのニッケル棒を封入しておいた。アマルガム材13は、Bi+An+Hgの合金であり、組成比は、Bi51.82:An39.57:Hg12.38である。
【0024】
次にガラス管1の第1のくびれ21からD=約20mm離れた部分に第2のくびれ22を設け、ゲッター12を挿入した。
【0025】
次に、図1(b)のようにヒータ4にガラス管1を挿入し、排気管5をガラス管1の開口端部に接続し、ガラス管1を加熱しながらガラス管1内を真空引きして真空状態にし、希ガスとしてネオンとアルゴンの混合ガス(組成比:ネオン/アルゴン=90モル%/10モル%)を60Torrの封入圧に封入した。
【0026】
続いて、図1(c)に示すように、ヒータ6によってガラス管1を加熱するとともに高周波誘導加熱器7を用いてガラス製カプセル11の入っている部分を高周波誘導加熱した。この高周波誘導加熱によりガラス製カプセル11内の金属部材14が高温度に加熱され、金属部材14と接触しているガラス製カプセル11の一部分にクラックが入った。
【0027】
この後、図1(d)に示すように、バーナー8によって第1のくびれ21の部分を加熱して、ガラス管1からランプ容器10の部分を第1のくびれ21において切り離し、同時のこの第1のくびれ21側の端部を封止した。
【0028】
以上の方法で、外径4.0mm、内径3.0mm、管長さ300mmのホウ珪酸ガラス製の水銀蒸気放電灯をそれぞれ10本ずつ試作し、それぞれについてランプ内水銀封入量を比較した。さらに、水銀供給源に残存している水銀量を測定して水銀放出率を計算したところ、表1に示すように、本発明の実施例において水銀放出率が平均98.7%と非常に高く安定していることが確認できた。
【0029】
【表1】



【0030】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、水銀蒸気源としてアマルガム材を用いることによって低温加熱でも水銀蒸気の放出率を高くでき、小型気密容器内でアマルガム材から水銀蒸気を放出させた後、この小型気密容器を開放させその中から発光気密容器内に水銀蒸気を放出させることにより、水銀蒸気放電灯を安定した品質で製造できる。
【0031】
また、小型気密容器にアマルガム材と共に金属部材を封入しておくことで、この小型気密容器内で水銀蒸気を放出させた後、高温加熱することによって金属部材を高温にして小型気密容器を内側から開放させ、その中から発光気密容器内に水銀蒸気を放出させることができ、水銀蒸気放電灯を安定した品質で製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1つの実施の形態の水銀蒸気放電灯の製造方法の各工程を示す説明図。
【図2】上記実施の形態で用いるガラス製カプセルの断面図。
【図3】従来の水銀蒸気放電灯の製造方法の各工程を示す説明図。
【符号の説明】
1 ガラス管
4 ヒータ
7 高周波誘導加熱器
10 ランプ容器
11 ガラス製カプセル
13 アマルガム材
14 金属部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アマルガム材を小型気密容器に封入するステップと、
前記小型気密容器を発光気密容器に挿入するステップと、
前記小型気密容器内のアマルガム材を加熱して水銀蒸気を放出させるステップと、
前記小型気密容器を開放させて前記水銀蒸気を前記発光気密容器内に放出させるステップと、
前記発光気密容器の封をするステップとを有する水銀蒸気放電灯の製造方法。
【請求項2】
アマルガム材と金属部材を小型気密容器に封入するステップと、
前記小型気密容器を発光気密容器に挿入するステップと、
前記小型気密容器内のアマルガム材を加熱して水銀蒸気を放出させるステップと、
前記小型気密容器内の金属部材を加熱し、前記金属部材によって前記小型気密容器を開放させて前記水銀蒸気を前記発光気密容器内に放出させるステップと、
前記発光気密容器の封をするステップとを有する水銀蒸気放電灯の製造方法。
【請求項3】
前記小型気密容器を開放させて前記水銀蒸気を前記発光気密容器内に放出させるステップの前に、前記発光気密容器を真空にするステップを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の水銀蒸気放電灯の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2004−281136(P2004−281136A)
【公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−68568(P2003−68568)
【出願日】平成15年3月13日(2003.3.13)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】