説明

水陸両用車両

【課題】簡単な構成としつつ、水上航行を効率よく行うことのできる水陸両用車両を提供すること。
【解決手段】中輪2M及び後輪2Rが水中にある状態から(a)、中輪2M及び後輪2Rを回転駆動させることで、水の抵抗により水掻きブレード12を起立させ(b)、水掻きブレード12がストッパ12cにより回動が停止した直立状態となって水を掻くことで推進力を生じさせる(c)水上航行機構4を車両1に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水上航行及び陸上走行が可能な水陸両用車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、陸上走行だけでなく水上航行も可能な水陸両用車両が開発されている。
一般の水陸両用車両では、陸上では車輪や履帯(クローラ)による走行を行い、水上では航行用のスクリューを用いて航行を行っている。つまり、陸上走行用及び水上航行用それぞれの駆動系統を備えた構成をなしている。
例えば、エンジンの一側に設けられた変速機から、差動装置を介して陸上走行用の各車輪を駆動可能であるとともに、当該エンジンの他側に航走推進ユニットを備えた水陸両用車両が従来技術として知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2004−507398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術では、陸上走行用の駆動系統に加えて水上航行用の駆動系統を備え、陸上走行時と水上航行時との間で駆動系統の切り換えを行う必要もあり、一般の陸上専用の車両よりも駆動系統等が複雑化するという問題がある。
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、簡単な構成としつつ、水上航行を効率よく行うことのできる水陸両用車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した目的を達成するために、請求項1の水陸両用車両では、駆動力の伝達される車輪を備えた水陸両用車両であって、前記車輪の側面にて車軸と離間した位置に配設され、当該車輪の回転とともに車軸周りに回転する取付軸と、前記車輪よりも側方にて前記取付軸に回転可能に支持されており、前記車両の前後方向に延びた形状で、前記車輪の回転とともに車軸回りに回転したときも下面が前記車輪の下端よりも上方に位置する支持体と、前記車輪の回転方向と同方向に回動可能に前記支持体に枢支され、水中で前記車輪が回転し当該支持体が前記車軸回りに回転したとき、当該支持体が車両の進行方向と同方向に移動する際には伏せた状態となり、当該支持体が車両の進行方向と逆方向に移動する際には伏せた状態よりも水の抵抗が大きい起立状態となる水掻き部材とを、備えることを特徴としている。
【0006】
請求項2の水陸両用車両では、請求項1において、前記水陸両用車両は前後に複数の前記車輪を備え、前記取付軸は、前記複数の車輪うち少なくとも2以上の車輪に設けられ、前記支持体は、前記2以上の車輪に亘って水平に架け渡されており、当該各車輪の前記取付軸に支持されていることを特徴としている。
請求項3の水陸両用車両では、請求項1において、前記支持体は、1つの前記車輪に対して1つ設けられており、さらに、前記支持体における前記取付軸周りの回転を制限する回転制限手段を備えていることを特徴としている。
【0007】
請求項4の水陸両用車両では、前記請求項3において、前記回転制限手段は、棒状をなし、一端が前記支持体における前記取付軸周りの回転を制限するよう前記支持体に連結された支持棒部材と、車体側面に前記車輪の回転と同方向に回転可能に固定され、前記支持棒部材を摺動可能に支持する棒支持部材とから構成されることを特徴としている。
請求項5の水陸両用車両では、前記請求項1から4のいずれかにおいて、前記支持体はグレーチング材であることを特徴としている。
【0008】
請求項6の水陸両用車両では、前記請求項1から5のいずれかにおいて、前記車輪に、前記支持体に対応したカウンターバランスを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
上記手段を用いる本発明の水陸両用車両によれば、車輪の側面に取付軸を介して、当該車軸回りに回転する支持体を設け、当該支持体に水掻き部材を設ける。そして、当該水掻き部材は水中で支持体が回転し、当該支持体が車両の進行方向と同方向に移動する際には伏せた状態となり、支持体が車両の進行方向とは逆方向に移動する際に起立状態となる。つまり、水掻き部材が伏せた状態のときには水の抵抗小さく支持体は円滑に回転し、水掻き部材が起立した状態のときには水の抵抗が大きくなり、この水掻き部材を進行方向と逆方向に移動させることで推進力を生じることとなる。
【0010】
このような構成により、車輪を回転駆動させることで水上航行を行うことができ、スクリュー等の水上航行用の駆動系統を新たに設ける必要なく、車輪走行の駆動系統をそのまま利用して水上航行を行うことができる。これにより、車両における駆動系統の複雑化を招くことはない。
また、当該支持体の下面は車輪の下端よりも常に上方に位置する構成であることから、当該支持体及び水掻き部材を取り外さずに平地を車輪走行することができ、切換操作等なしで効率的に陸上走行及び水上航行を行うことができる。
【0011】
このようにして第1実施形態における水陸両用車両は、簡単な構成としつつ、水上航行を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る水陸両用車両の全体構成図である。
【図2】図1の中輪、後輪部分の(a)側面図、(b)上面視図、(c)正面図である。
【図3】図1の水上航行機構の動作を(a)〜(d)の時系列で示した作動図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る水陸両用車両において水上航行機構の(a)使用時及び(b)収納時を示す全体構成図である。
【図5】図4の後輪の(a)側面図、(b)上面視図、(c)正面図である。
【図6】図4の水上航行機構の動作を(a)〜(d)の時系列で示した作動図である。
【図7】水上航行機構の変形例(a)、(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
まず、第1実施形態について説明する。
図1を参照すると、本発明の第1実施形態に係る水陸両用車両の全体構成図が示されている。
図1に示すように、車両1(水陸両用車両)は左右一対の駆動輪を前中後の3箇所に備えた6輪駆動車である。なお、図1では車両左側面のみを示しているが、右側面もほぼ同様の構成をなしており、以下車両左側側面の構成に基づき説明する。
【0014】
車両1の前輪2Fは操舵輪であり、中輪2M及び後輪2Rは車両後側にて近接して並設されている。そして、当該中輪2M及び後輪2Rには、水上航行のための水上航行機構4が取り付けられている。
以下、当該実施形態の車両における水上航行機構4について詳しく説明する。
図2には、図1の中輪、後輪部分の(a)側面図、(b)上面視図、(c)正面図が示されている。
【0015】
図2に示すように、中輪2M及び後輪2Rはそれぞれホイール部2aとタイヤ部2bからなり、水上航行機構4は、支持部材6、カウンターバランス8、及びシュー10(支持体)、水掻きブレード12(水掻き部材)から構成されている。なお、ホイール部2aの側面はタイヤ部2bの側面よりも内側に位置しており、水上航行機構4の支持部材6、カウンターバランス8はホイール部2aの側面であってタイヤ部2bより内側に設けられている。
【0016】
詳しくは、支持部材6は、固定部6aが、中輪2M及び後輪2Rのホイール部2aの側面中央部、即ち車軸3部分において、例えばボルト等で締結されている。そして、この固定部6aからは、車輪の径方向に向かって一対の支持腕部6b、6cが延びている。当該一対の支持腕部6b、6cは、固定部6aを中心に対称的に延びており、一方の支持腕部6bの先端にはカウンターバランス8が、他方の支持腕部6cの先端にはシュー10を取り付ける取付軸14がそれぞれ設けられている。
【0017】
カウンターバランス8は、図2(a)に示すように側面視三日月状をなしており、これはシュー10との重量バランスを整え、走行時における中輪2M及び後輪2Rの振動を打ち消すものである。
一方、取付軸14は、支持腕部6cの先端からタイヤ部2bの側面よりも外側に突出している。当該取付軸14は、シュー10を当該取付軸14周りに回転可能に支持するものである。
【0018】
シュー10は、シュー本体16が中輪2M及び後輪2Rに亘って水平方向に延びており、当該シュー本体16の前部及び後部の上面に取付部18a、18bが立設されている。このシュー本体16は、図2(b)に示すように、枠部の内側が網目状に組まれたグレーチング材である。そして、前部の取付部18aに中輪2M側の取付軸14が、後部の取付部18bに後輪2R側の取付軸14がそれぞれ回転可能に嵌入されている。
【0019】
このように前後2箇所の取付部16a、16bが取付軸14及び支持部材6を介して中輪2M及び後輪2Rに連結されていることで、シュー本体16は、中輪2M及び後輪2Rの回転に伴い、水平方向の姿勢を維持しつつ車軸周りに回転する。また、取付軸14はホイール部2aの周縁部分に位置しており、シュー本体16の厚さはタイヤ部2bの厚さよりも薄く、シュー本体16が下端位置にある場合でも、中輪2M及び後輪2Rの下端、すなわち各タイヤ部2bの接地面よりも常に上方に位置することとなり、当該シュー本体16は平地における車輪走行の際に地面に接触する等の干渉を生じることはない。つまり、当該水上航行機構4を取り付けた状態でも陸上走行可能である。
【0020】
また、水上航行機構4は、固定部6aにおける固定を解除することで、当該水上航行機構4を一体に取り外すことも可能である。したがって、長距離を高速走行する際等には、当該水上航行機構4を取り外し、水上航行する際に水上航行機構4を取り付けるというように使い分けることも可能である。
また、当該シュー本体16の上面には、前部の取付部18aと後部の取付部18bとの間に3つの水掻きブレード12、12、12が前後に並んで設けられている。
【0021】
当該水掻きブレード12は、ブレード本体12aが、図2(a)に示すように、伏した状態で上側に凸の側面視三日月状をなした湾曲板部材をなしている。また、当該水掻きブレード12の前端部には幅方向に延びた軸材12bが設けられており、当該軸材12bの両端がシュー本体16の枠部に回動自在に枢支されている。さらに当該水掻きブレード12の前部の湾曲外側面には、当該水掻きブレード12が直立した状態で回動を停止させるための三角板状のストッパ12cが形成されている。このように構成された水掻きブレード12は、図2(a)に示すような伏せた状態と、軸材12bを支点に回動しストッパ12cがシュー本体16の面と接する直立状態との間で回動可能である。
【0022】
次にこのように構成された本発明の第1実施形態に係る車両の作用について説明する。
図3には、第1実施形態における水上航行機構の動作を(a)〜(d)の時系列で示した作動図が示されており、同図に基づき水上航行時の水上航行機構4の作動について説明する。図3では、上記水上航行機構4を備えた車両1の水上航行時の状態を示しており、運転席等の車体の上部は水上に浮かび、車輪部分が水中にある。なお、当該図3では、図面左側を車両1の進行方向としている。
【0023】
図3(a)は、シュー10が車輪上部に位置しているときを示しており、このとき水掻きブレード12は伏せた状態にある。そして、中輪2M及び後輪2Rを回転駆動することでシュー本体16は進行方向と同方向に移動する。このとき、水掻きブレード12の外形が三日月状に湾曲していることで、水は湾曲外側面に沿って抵抗少なく通過し、シュー10は円滑に回転軸回りに回転する。
【0024】
続いて、図3(b)は、図3(a)の状態から中輪2M及び後輪2Rが90°回転した状態を示している。このとき、シュー本体16が下方に移動するが、シュー本体16はグレーチング材であることで網目の隙間を水が通過し、シュー10は抵抗少なく下方へと移動する。また、水掻きブレード12は、湾曲内側面においてシュー本体16を通り抜けた水の抵抗を受けることで、軸体12cを支点に起立する方向に回動する。
【0025】
次に図3(c)は、図3(b)の状態からさらに中輪2M及び後輪2Rが90°回転した状態を示している。このとき、シュー本体16は車輪下部において進行方向と逆方向に移動し、水掻きブレード12は湾曲内側面で受ける水の抵抗により、ストッパ12bがシュー本体16に接するまで回動し、直立状態で固定される。このような直立状態に固定された水掻きブレード16は、シュー本体16が後方に移動するのに応じて、湾曲内側面にて水の抵抗を受ける。これにより、当該水掻きブレード12が水を掻くこととなり、車体を進行方向へと移動させる推進力が生じる(白抜き矢印)。なお、当該水掻きブレード本体12aは、水を掻く面が湾曲していることで、十分に水の抵抗を受け、安定的に推進力を確保することができる。
【0026】
図3(d)は、図3(c)の状態からさらに中輪及び後輪が90°回転した状態を示している。このときには、シュー本体16は上方へと移動し、水掻きブレード12は湾曲外面にて水の抵抗を受けることで、軸体12cを支点に伏せる方向に回動する。
【0027】
このように、水上航行機構4は、シュー10が下部に移動して水掻きブレード12が直立状態にあるときに推進力を生じさせるものであり、少なくとも車輪の下半分が水中にあるときは水掻きブレード12による推進力を得ることができる。
そして、水上航行機構4は、車輪が接地して陸上走行が可能になるまで、図3(a)〜(d)の動作を繰り返して水上航行を行う。
【0028】
以上のように、第1実施形態における車両1は中輪2M及び後輪2Rの側面に水上航行機構4を設けることで、中輪2M及び後輪2Rの回転を利用して水掻きブレード12により水を掻いて水上航行を行うことができる。つまり、水上航行用の駆動系統を新たに設ける必要なく、車輪走行の駆動系統をそのまま利用して水上航行を行うことができ、車両における駆動系統の複雑化を招くことはない。
【0029】
また、当該水上航行機構4は、シュー本体16の下面はタイヤ部2bの接地位置よりも常に上方に位置することから、当該水上航行機構4を取り外さずに、平地を車輪走行することができ、切換操作等なしで効率的に陸上走行及び水上航行を行うことができる。
一方で、シュー10や水掻きブレード12以外の部分が車輪に収まるコンパクトな構成であり、水上航行機構4の取り付け及び取り外しの作業もジャッキアップ等することなく、固定部6aを固定または解除するだけの容易な作業で行うことができる。これにより、長距離の高速陸上走行を行うような場合には、当該水上航行機構4を取り外してより安定した陸上走行を実現することもできる。
【0030】
また、当該水上航行機構4には、カウンターバランス8が設けられていることで、水上航行機構4を取り付けた状態でも中輪2M及び後輪2Rの振動を軽減することができ、安定した走行を行うことができる。
また、水掻きブレード12は側面視三日月状に湾曲していることで伏せた状態では進行方向に対する水の抵抗が少なく、直立した状態では水の進行方向と逆側の移動に対して十分な水の抵抗を受けることができ、効率よく水を掻くことができる。
【0031】
このようにして第1実施形態における水陸両用車両は、簡単な構成としつつ、水上航行を効率よく行うことができる。
また、上記実施形態における水上航行機構4のシュー本体16は、グレーチング材であることで、軽量化を図るとともに水上航行時におけるシュー本体16の回転で生じる水の抵抗を減らしつつ、強度を保持することができる。
【0032】
次に第2実施形態について説明する。
図4及び図5を参照すると、図4には本発明の第2実施形態に係る車両において水上航行機構の(a)使用時及び(b)収納時を示す全体構成図、図5には図4の後輪の(a)側面図、(b)上面視図、(c)正面図がそれぞれ示されている。
図4に示すように、車両20は左右一対の車輪を前後の2箇所に備えた4輪駆動車である。
【0033】
車両20の前輪22Fは操舵輪であり、後輪22Rに当該第2実施形態における水上航行機構24が取り付けられている。
当該第2実施形態の車両20における水上航行機構24は、上記第1実施形態の車両1に取り付けられた水上航行機構4のように前後2輪に亘って架け渡されるものではなく、1輪ごとに取り付けることが可能な水上航行機構である。
【0034】
詳しくは、図5に示すように、後輪22Rはホイール部22a及びタイヤ部22bからなり、水上航行機構24は、支持部材26、カウンターバランス28、シュー30、支持棒32(回転制限手段)、棒支持部34(回転制限手段)、水掻きブレード36から構成されている。
支持部材26及びカウンターバランス28の構成は、上記第1実施形態における支持部材6及びカウンターバランス8と同様であることから詳しい説明は省略する。
【0035】
シュー30は、シュー本体38が車輪の径と同程度の長さで前後方向に延びたグレーチング材であり、中央部上面には取付部40が立設している。そして、当該取付部40に、支持部材26の支持腕部先端から側方に突出した取付軸42が嵌入されて、シュー30は回転可能に支持されている。
また、取付部40には支持棒32の一端部が連結されている。
【0036】
支持棒32の一端部は、取付部40に対しシュー本体38が取付軸42周りに回転するのを所定の角度以内に制限するよう構成されている。そして、支持棒32は、当該一端部からシュー本体38と略逆T字状をなすように上方に延び、他端側が棒支持部34において摺動可能に支持されている。棒支持部34は車軸23の直上に位置して、車体の側面に車輪の回転方向と同方向に回転可能に設けられている。
【0037】
さらに、シュー本体38の前部及び後部には水掻きブレード36が設けられており、当該水掻きブレード36の形状や機能等は上記第1実施形態と同様である。つまり、水掻きブレード36は、ブレード本体36aの前端部が軸体36bを介して回動可能にシュー本体38の枠部に枢支されおり、直立状態で回動を停止させるストッパ36cが設けられた構成をなしている。
【0038】
このように第2実施形態の水上航行機構24は、支持棒32によりシュー本体36の取付軸周りの回転が制限されていることで、当該シュー本体38の姿勢が略水平方向に維持される。そして、上記第1実施形態同様、シュー本体38の厚さはタイヤ部22bの厚さよりも薄く、シュー本体38の下面はタイヤ部22bの接地位置よりも常に上方に位置することとなり、当該シュー本体38が平地における車輪走行に干渉することはない。
【0039】
また、第1実施形態と同様に、当該水上航行機構24は、支持部材26の固定部におけるホイール部22aへの固定を解除することで、容易に取り外しも可能である。
さらに、支持部材26から外した取付軸40、シュー30、支持棒34、及び水掻きブレード36については、図4(b)に示すようにシュー30を支持棒34の長手方向に沿って棒支持部34の近くまで移動させ、この位置で車体に固定することで収納することも可能である。これより水上航行機構24の取り付け、取り外し作業をより簡略化することができる。
【0040】
次にこのように構成された本発明の第2実施形態に係る車両の作用について説明する。
図6には、第2実施形態における水上航行機構の動作を(a)〜(d)の時系列で示した作動図が示されており、同図に基づき水上航行時の水上航行機構24の作動について説明する。図6では、図3と同様に、上記水上航行機構24を備えた車両20の水上航行時の状態を示しており、運転席等の車体の上部は水上に浮かび、車輪部分が水中にあり、図面左側を車両20の進行方向としている。また、当該図6(a)〜(d)は図3(a)〜(d)と同様に、車輪を90°ごとに回転させた状態を順に示している。
【0041】
詳しくは、図6(a)は、シュー30が車輪上部に位置しているときを示しており、このとき水掻きブレード36は伏せた状態にある。したがって、上述した図3(a)の状態と同様に、水掻きブレード36の外形形状に沿って水の抵抗少なく、シュー30は円滑に回転軸回りに回転する。
続いて、図6(b)のときには、シュー本体38は支持棒32により取付軸回りの回転が規制されているため若干傾いた略水平姿勢をなして下方に移動する。そして、水掻きブレード36は、シュー本体38を通り抜けた水の抵抗を受けて、起立する方向に回動する。
【0042】
次に図6(c)のときには、シュー本体38は車輪下部において進行方向と逆方向に移動し、水掻きブレード36は直立状態となる。これにより、当該水掻きブレード36が水を掻き、進行方向への推進力を生じさせる(白抜き矢印)。
そして、図6(d)のときには、シュー本体が略水平姿勢をなして上方に移動し、水掻きブレード36は、伏せる方向に回動する。
【0043】
このようにして、水上航行機構24は、車輪での走行が可能になるまで、これら図6(a)〜(d)の動作を繰り返して水上航行を行う。
以上のように、第2実施形態における車両20は1輪ごとに設けた水上航行機構24により、水上航行用の駆動系統を新たに設けることなく、水上航行を行うことができ、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0044】
また、当該第2実施形態における水上航行機構24は、シュー本体38は支持棒32により取付軸周りの回転が制限され、当該シュー本体38の下面はタイヤ部2bの接地位置よりも常に上方に位置することから、当該水上航行機構24を取り外さずに陸上走行することもでき、切換作業なしで効率的に走行することもできる。
一方で、当該第2実施形態における水上航行機構24は、上記第1実施形態と同様にコンパクトな構成であり部品点数も多くなく軽量であり、取り付け及び取り外しの作業も容易である。さらに、当該水上航行機構24は図4(b)で示したように収納することも可能であり、取り付け及び取り外しの作業の効率をより向上させることができる。
【0045】
以上で本発明に係る水陸両用車両の実施形態についての説明を終えるが、実施形態は上記実施形態に限られるものではない。
例えば図7を参照すると上記実施形態の変形例が示されている。
図7に示す変形例は上記第1実施形態及び第2実施形態における水上航行機構4、24の支持部材6、36及びカウンターバランス8、38を備えていない水上航行機構である。
【0046】
図7(a)は第1実施形態において、図7(b)は第2実施形態において、それぞれ支持部材6、36、及びカウンターバランス8、38を排除した水上航行機構4'、24'であり、当該水上航行機構4'、24'では、各取付軸14'、42'がホイール部2a'、22a'の側面から直接突出している。
【0047】
これにより、水上航行機構のさらなる軽量化及び取り付け取り外し作業の簡略化を図ることができる。
また、上記第1実施形態の水上航行機構4では中輪2M及び後輪2Rの2輪に亘ってシュー10を設けているが、より多くの車輪を備える車両であれば、例えば前後3輪以上に亘って架け渡しても構わない。
【0048】
また、上記各実施形態では、水掻きブレード12、36は側面視三日月状をなしているが、水掻きブレードは伏せた状態では水の抵抗が少なく、起立した状態では水の抵抗を受けやすい形状であればよく、水掻きブレードの形状はこれに限られるものではない。例えば、側面視L字状に屈曲した形状や、平板の水掻きブレード等であっても構わない。
また、上記実施形態では、水掻きブレードはグレーチング材からなるシュー本体に取り付けられているが、当該水掻きブレードを取り付ける支持体はこれに限られるものではなく、例えば上記実施形態のシュー本体の枠体のみからなる支持体であっても構わない。
また、上記各実施形態では、カウンターバランス8、28が側面視三日月状をなしているが、当該カウンターバランスの形状はこれに限られるものではない。
【符号の説明】
【0049】
1、20 車両(水陸流用車両)
2F、22F 前輪
2M 中輪
2R、22R 後輪
2a、22a ホイール部
2b、22b タイヤ部
3、23 車軸
4、24 水上航行機構
6、26 支持部材
6a 固定部
6b、6c 支持腕部
8、28 カウンターバランス
10、30 シュー(支持体)
12、36 水掻きブレード(水掻き部材)
12a 軸体
12b ストッパ
14、42 取付軸
16、30 シュー本体
18a、18b、42 取付部
32 支持棒(回転規制手段)
34 棒支持部(回転規制手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力の伝達される車輪を備えた水陸両用車両であって、
前記車輪の側面にて車軸と離間した位置に配設され、当該車輪の回転とともに車軸周りに回転する取付軸と、
前記車輪よりも側方にて前記取付軸に回転可能に支持されており、前記車両の前後方向に延びた形状で、前記車輪の回転とともに車軸回りに回転したときも下面が前記車輪の下端よりも上方に位置する支持体と、
前記車輪の回転方向と同方向に回動可能に前記支持体に枢支され、水中で前記車輪が回転し当該支持体が前記車軸回りに回転したとき、当該支持体が車両の進行方向と同方向に移動する際には伏せた状態となり、当該支持体が車両の進行方向と逆方向に移動する際には伏せた状態よりも水の抵抗が大きい起立状態となる水掻き部材とを、
備えることを特徴とする水陸両用車両。
【請求項2】
前記水陸両用車両は前後に複数の前記車輪を備え、
前記取付軸は、前記複数の車輪うち少なくとも2以上の車輪に設けられ、
前記支持体は、前記2以上の車輪に亘って水平に架け渡されており、当該各車輪の前記取付軸に支持されていることを特徴とする請求項1記載の水陸両用車両。
【請求項3】
前記支持体は、1つの前記車輪に対して1つ設けられており、
さらに、前記支持体における前記取付軸周りの回転を制限する回転制限手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の水陸両用車両。
【請求項4】
前記回転制限手段は、
棒状をなし、一端が前記支持体における前記取付軸周りの回転を制限するよう前記支持体に連結された支持棒部材と、
車体側面に前記車輪の回転と同方向に回転可能に設けられ、前記支持棒部材を摺動可能に支持する棒支持部材と、から構成されることを特徴とする請求項3記載の水陸両用車両。
【請求項5】
前記支持体はグレーチング材であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の水陸両用車両。
【請求項6】
前記車輪に、前記支持体に対応したカウンターバランスを備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の水陸両用車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−35732(P2012−35732A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177143(P2010−177143)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(500302552)株式会社IHIエアロスペース (298)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)