説明

水難溶性もしくは水不溶性活性物質の水性懸濁液およびそれから調製される乾燥粉末

本発明は、a)少なくとも1種の水難溶性もしくは水不溶性の活性成分、b1)乳清タンパク質、および/またはb2)乳清タンパク質加水分解物、ならびにc)HLB値が10から18までの範囲にあるショ糖脂肪酸エステルを含有する水性懸濁液に関する。本発明はまた、そうした懸濁液、ならびにそれから生じる粉末を製造する方法に関する。この懸濁液および粉末は、食品、栄養補助食品、動物飼料、ならびに医薬品および化粧品において、添加物として使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
a) 少なくとも1種の水難溶性もしくは水不溶性の活性物質、
b1) 乳清タンパク質、および/または
b2) 乳清タンパク質加水分解物、ならびに
c) HLB値が10から18までの範囲にあるショ糖脂肪酸エステル、
を含んでなる水性懸濁液に関する。
【背景技術】
【0002】
動物飼料および食品分野に適した、または医薬品および化粧品用途に適した数多くの活性物質、たとえば、脂溶性ビタミンもしくはカロテノイド、さらにまた天然着色料クルクミンもしくはカルミン、ならびに多くの紫外線遮断剤は、水に不溶性であるため、かつ/また、酸化を受けやすいため、特別に安定化された組成物の形でのみ使用することができる。結晶性物質を、とりわけ水性食品を着色する目的で、飼料添加物として、または化粧品中の活性成分もしくは有効成分として直接使用することは、一般に不可能である。特に水性溶媒ならびに親油性溶媒中での、バイオアベイラビリティ、着色特性、および分散性に関する高い要求は、特別な製剤によってのみ満たすことができる。
【0003】
食品を直接着色する際に、満足できる着色効率は、活性物質、たとえばカロテノイドが細かく分割された形で存在し、保護コロイドによって酸化から保護される組成物によってのみ、得ることができる。動物飼料に使用されるこうした製剤は、結果として活性物質のバイオアベイラビリティの増加をもたらし、したがって間接的に、優れた着色効果、たとえば、卵黄もしくは魚の着色をもたらす。
【0004】
いずれも、活性物質の結晶サイズを小さくして10μm未満の粒径範囲にすることを目指す、いくつもの非常に多様な製剤化プロセスが、文献からすでに知られている。
【0005】
多くの方法、なかでもChimia 21, 329 (1967), WO 91/06292およびWO 94/19411に記載の方法は、上記に関連して、2から10μmまでの粒径を達成するように、コロイドミルによるカロテノイドの粉砕を用いる。
【0006】
そのほかに、たとえば、DE-A-12 11 911もしくはEP-A-0 410 236に記載のような、複合乳化剤/噴霧乾燥プロセスがある。
【0007】
欧州特許明細書EP-B-0 065 193によれば、細かく分割された微粉状のカロテノイド製剤は、たとえば、β-カロテンを、適切ならば加圧下で、10秒未満の時間内に、50℃から200℃の間の温度で揮発性水混和性有機溶媒に溶解することによって調製される。β-カロテンは、0℃から50℃の間の温度で、保護コロイドの水性溶液と即時急速混合することによって得られる分子分散液から、沈澱する。こうして、橙色〜黄色を呈するコロイド状に分散したβ-カロテンヒドロゾルが得られる。その後、その懸濁液を噴霧乾燥すると、黄橙色の透明な懸濁液を形成して水に溶解する自由流動性の乾燥粉末が得られる。
【0008】
細かく分割された微粉状カロテノイド製剤を調製する類似の方法がEP-A-0 937 412に記載されているが、これは水非混和性溶媒を使用する。
【0009】
WO 98/26008は、再分散可能なキサントフィル含有乾燥粉末の調製における、低分子量および高分子量保護コロイド混合物の使用に関する。
【0010】
DE 36 11 229は、微粉状カロテノイド組成物の調製における、保護コロイドとしての乳または粉乳の使用を記載する。
【0011】
US 2002/0107292 A1は、乳清タンパク質と共存する脂溶性生理活性物質の組成物を記載する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
疎水性で水難溶性もしくは水不溶性の、有効な活性物質を、安定な水性懸濁液に、または安定で十分に再分散可能な、高いバイオアベイラビリティを有する乾燥粉末に変換することが、本発明の目的であった。
【0013】
「安定な」とは、本発明では、それぞれの使用に十分な期間および温度にわたって、製剤が、特に、酸化、光、沈澱およびクリーム化に対して安定であることを意味するものと理解される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、
a) 少なくとも1種の水難溶性もしくは水不溶性の活性物質、
b1) 乳清タンパク質、および/または
b2) 乳清タンパク質加水分解物、ならびに
c) HLB値が10から18までの範囲にあるショ糖脂肪酸エステル、
を含んでなる水性懸濁液によって達成された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
好ましくは、分散相が少なくとも1種の水難溶性もしくは水不溶性活性物質をナノ粒子として含んでなる、水性懸濁液に言及することができる。加えて、上記水性懸濁液から調製される乾燥粉末もしくはエマルション、好ましくはダブルエマルション、とりわけO/W/Oエマルションも、本発明の最前線にある。
【0016】
これに関連して、「水難溶性有機活性物質」という用語は、5重量%未満の溶解度を有する、好ましくは1重量%未満、特に好ましくは0.1重量%未満、さらに特に好ましくは0.01重量%未満の溶解度を有する化合物を意味するものとして理解される。
【0017】
本発明との関連において、食料品および動物飼料分野に適した、ならびに医薬品および化粧品用途に適した活性物質として、たとえば以下の化合物を挙げることができる:
脂溶性ビタミン、その例としては、ビタミンK;ビタミンAおよび誘導体、たとえば、ビタミンA酢酸エステル、ビタミンAプロピオン酸エステル、もしくはビタミンAパルミチン酸エステル;ビタミンD2およびビタミンD3;ならびにビタミンEおよび誘導体。これに関連して、ビタミンEは天然もしくは合成α-、β-、γ-、またはδ-トコフェロールを表すが、好ましくは天然もしくは合成α-トコフェロール、およびトコトリエノールを表す。ビタミンE誘導体は、たとえば、酢酸トコフェリルもしくはパルミチン酸トコフェリルといったC1-C20-カルボン酸トコフェリルである。
【0018】
多価不飽和脂肪酸、たとえば、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、またはドコサヘキサエン酸。
【0019】
食品着色剤、たとえばクルクミン、カルミンまたはクロロフィル。
【0020】
カロテノイドには、カロテン類、たとえばβカロテンおよびリコペン、ならびにキサントフィル類、たとえば、ルテイン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、クリプトキサンチン、シトラナキサンチン、カンタキサンチン、ビキシン、β-アポ-4-カロテナール、β-アポ-8-カロテナール、およびβ-アポ-8-カロテン酸エチルエステル、の2種類がある。
【0021】
フィトステロール、コエンザイムQ10。
【0022】
水不溶性もしくは水難溶性有機紫外線遮断物質、たとえば、トリアジン、アニリド、ベンゾフェノン、トリアゾール、シンナミド、およびスルホン化ベンズイミダゾール。
【0023】
好ましい活性物質は、カロテン類、特にβ-カロテンもしくはリコペン、およびキサントフィル類、特にルテイン、アスタキサンチンおよびカンタキサンチン、さらにまたビタミンAおよびビタミンE、ならびに一連の紫外線遮断物質からトリアジン類、とりわけUvinul T150である。
【0024】
上記に関連して、本発明の水性懸濁液の特に好ましい実施形態は、β-カロテン、リコペン、ルテイン、アスタキサンチンおよびカンタキサンチンからなるカロテノイドの群から選択される、さらに特に好ましくはリコペンもしくはアスタキサンチンから選択される、少なくとも1種の水難溶性もしくは水不溶性活性物質をナノ粒子として含んでなる、水性懸濁液に関するものである。
【0025】
カロテン類を水難溶性もしくは水不溶性活性物質として使用する場合は、乳清タンパク質をショ糖ラウリン酸エステルと併用することが好ましく、キサントフィル類の水性懸濁液用には、乳清タンパク質加水分解物をショ糖ラウリン酸エステルと併用することが好ましい。
【0026】
本発明の水性懸濁液の固形分は、0.1から70重量%の範囲にあるが、好ましくは0.5から50重量%、特に好ましくは10から40重量%である。
【0027】
水性懸濁液中の活性物質粒子の平均粒径は、製剤化法のタイプに応じて、0.01から100μm、特に好ましくは0.01から2μm、特に非常に好ましくは0.02から1μmまでの範囲である。
【0028】
本発明の水性懸濁液は、成分b)として、乳清タンパク質(b1)および/または乳清タンパク質加水分解物(b2)を含有する。タンパク質含量が少なくとも80%、特に好ましくはタンパク質含量が少なくとも95%である噴霧乾燥乳清タンパク質分離物を、乳清タンパク質として使用することが好ましい。
【0029】
加水分解度が3から20、特に好ましくは加水分解度が4から16(OPA法により測定)である、精製された酵素分解乳清タンパク質を、乳清タンパク質加水分解物(b2)として使用することが好ましい。
【0030】
HLB値が10から18までの範囲にあるショ糖脂肪酸エステルc)は、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステルおよびショ糖オレイン酸エステルを包含する。これに関して、モノエステル、たとえば、ショ糖モノステアリン酸エステルの割合は、常に55%を超えるが、好ましくは70から85%までの範囲である。好ましいショ糖脂肪酸エステルとして、ショ糖モノラウリン酸エステルの割合が75から85%でHLB値が16である、ショ糖ラウリン酸エステルを挙げることができる。
【0031】
本発明の懸濁液のさまざまな成分の量は、その組成物が、0.1〜90重量%、好ましくは1〜50重量%、特に好ましくは3〜30重量%、特に非常に好ましくは5〜25重量%の、少なくとも1種の水難溶性もしくは水不溶性の活性物質、0.1〜50重量%、好ましくは0.1〜20重量%、特に好ましくは1〜10重量%の乳清タンパク質および/または乳清タンパク質加水分解物、ならびに0.1〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、特に好ましくは1〜5重量%の、HLB値が10から18までの範囲にあるショ糖脂肪酸エステルを含んでなるように選択される。重量パーセントはいずれの場合も懸濁液の乾重量に関するものである。
【0032】
本発明の意味する範囲内で好ましい水性懸濁液は、a) 0.1〜90重量%、好ましくは1〜50重量%、特に好ましくは3〜30重量%、特に非常に好ましくは5〜25重量%の、少なくとも1種のキサントフィル、b) 0.1〜50重量%、好ましくは0.1〜20重量%、特に好ましくは1〜10重量%の乳清タンパク質、ならびにc) 0.1〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、特に好ましくは1〜5重量%の、HLB値16のショ糖ラウリン酸エステルを含んでなり、すべてのパーセンテージは水性懸濁液の乾重量に関するものである。
【0033】
同様に好ましい水性懸濁液は、a) 0.1〜90重量%、好ましくは1〜50重量%、特に好ましくは3〜30重量%、特に非常に好ましくは5〜25重量%の、少なくとも1種のカロテン、b) 0.1〜50重量%、好ましくは0.1〜20重量%、特に好ましくは1〜10重量%の乳清タンパク質加水分解物、ならびにc) 0.1〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、特に好ましくは1〜5重量%の、HLB値16のショ糖ラウリン酸エステルを含んでなり、すべてのパーセンテージは水性懸濁液の乾重量に関するものである。
【0034】
乳清タンパク質およびショ糖脂肪酸エステルの他に、本発明の懸濁液は、成分d)として1つもしくは複数の保護コロイドを追加して含有することができる。
【0035】
本発明に適した追加のコロイドは、有利には、水溶性もしくは水膨潤性の保護コロイドであって、その例を挙げると、牛、豚もしくは魚ゼラチン、具体的には酸もしくは塩基で分解されたゼラチンでBloom数が0〜250の範囲のもの、特に非常に好ましくはゼラチンA 100、A 200、B 100およびB 200、さらにまたBloom数が0、分子量が15000〜25000 Dの酵素分解された低分子量ゼラチン、たとえばCollagel AおよびGelitasol P (Stoess, Eberbach,ドイツ)、ならびに上記ゼラチンの混合物があるが、さらにデンプン、デキストリン、ペクチン、アラビアゴム、リグノスルホン酸、キトサン、ポリスチレンスルホン酸、アルギン酸、カゼイン、カゼイン塩(たとえば、カゼインナトリウム)、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、加工デンプン(たとえば、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム(Capsul, National Starch))、植物性タンパク質(たとえば、大豆、米および/または小麦タンパク質、これらの植物性タンパク質は誘導体型もしくは天然型として存在しうる)、または合成親水コロイド(たとえば、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドン)がある。
【0036】
好ましい保護コロイドは、加工デンプン、カゼインおよび/またはカゼインナトリウム、大豆タンパク質ならびにゼラチンである;カゼインおよび/またはカゼインナトリウムが特に好ましい。
【0037】
追加して使用される保護コロイドの量は、製剤の乾重量に対して、0.1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%、特に好ましくは2〜20重量%、特にきわめて好ましくは3〜10重量%である。
【0038】
懸濁液はまた、活性物質を保護するために、抗酸化剤および/または防腐剤といった低分子量の安定化剤を追加して含有することができる。適当な抗酸化剤もしくは防腐剤はたとえば、α-トコフェロール、アスコルビン酸、tert-ブチルヒドロキシトルエン、tert-ブチルヒドロキシアニソール、レシチン、エトキシキン、メチルパラベン、プロピルパラベン、ソルビン酸もしくは安息香酸ナトリウムである。抗酸化剤もしくは防腐剤は、製剤の乾重量に対して、0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%、特に好ましくは0.5〜20重量%、特に非常に好ましくは1〜10重量%の量を使用することができる。
【0039】
それに加えて、懸濁液は、適当ならばその懸濁液から調製される乾燥粉末の機械的安定性を高めるために、流動化剤も含有することができる。適当な流動化剤の例を挙げると、糖および糖アルコール、たとえば、ショ糖、マルトース、ブドウ糖、乳糖、トレハロース、転化糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、グルコースシロップ、マルトデキストリンもしくはグリセロールがある。マルトデキストリンおよび/またはグルコースシロップを流動化剤として使用することが好ましい。含有することができる流動化剤の量は、製剤の乾重量に対して、0.1〜70重量%、好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは20〜50重量%である。
【0040】
さらに、懸濁液は、ショ糖脂肪酸エステルの他に、追加の低分子量界面活性化合物(乳化剤)を含有することができるが、その濃度は製剤の乾重量に対して、0.01〜70重量%、好ましくは0.1〜50重量%、特に好ましくは0.5〜20重量%である。両親媒性化合物もしくはそうした化合物の混合物が、上記の化合物として適当である。基本的に、HLB値が5〜20の界面活性剤はすべて適合する。下記は、適当な界面活性剤としてふさわしい:長鎖脂肪酸のアスコルビン酸とのエステル、脂肪酸のモノ-およびジ-グリセリドならびにそのオキシエチレン化物、モノ脂肪酸グリセリドの酢酸、クエン酸、乳酸もしくはジアセチル酒石酸とのエステル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、たとえば、トリグリセロールのモノステアリン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、およびレシチン。パルミチン酸アスコルビルの使用が好ましい。
【0041】
本発明はまた、b1) 乳清タンパク質、および/またはb2) 乳清タンパク質加水分解物、ならびにc) HLB値が10から18までの範囲にあるショ糖脂肪酸エステルを含んでなる水性分子分散液もしくはコロイド分散液中に、1種以上の水難溶性もしくは水不溶性活性物質a)を懸濁することによって、少なくとも1種の水難溶性もしくは水不溶性活性物質の水性懸濁液を調製する方法に関する。
【0042】
本発明の方法の好ましい実施形態において、懸濁化は下記のステップを含んでなる:
a1) 少なくとも1種の水難溶性もしくは水不溶性活性物質を、1種以上の水混和性有機溶媒中に、または水と1種以上の水混和性有機溶媒の混合溶媒中に、溶解するステップ、または
a2) 少なくとも1種の水難溶性もしくは水不溶性活性物質a)を、1種以上の水非混和性有機溶媒中に溶解するステップ、
b) a1)もしくはa2)により得られた溶液を、b1) 乳清タンパク質、および/またはb2) 乳清タンパク質加水分解物、ならびにc) HLB値が10から18までの範囲にあるショ糖脂肪酸エステルを含んでなる水性分子分散液もしくはコロイド分散液と、混合するステップ(水難溶性もしくは水不溶性活性物質の疎水相はナノ分散相として形成される)、ならびに
c) 有機溶媒を分離するステップ。
【0043】
ステップa1)で使用される水混和性溶媒は、特に、炭素、水素および酸素のみを含んでなる水混和性、熱安定性、揮発性溶媒であって、たとえばアルコール、エーテル、エステル、ケトンおよびアセタールである。次のような溶媒の使用が推奨される:水に少なくとも10%混和する;沸点が200℃未満である;および/または、10個未満の炭素原子を有する。メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、1-メトキシ-1,2-ブタンジオール、1-(n-プロポキシ)-1,2-プロパンジオール、テトラヒドロフランもしくはアセトンの使用が特に好ましい。
【0044】
「水非混和性有機溶媒」という用語は、本発明の意味する範囲内では、水への溶解度が標準気圧で10%未満である有機溶媒を意味する。これに関して可能性のある溶媒は、なかでも、ハロゲン化脂肪族炭化水素、たとえば塩化メチレン、クロロホルムおよび四塩化炭素;カルボン酸エステル、たとえば炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸プロピレン、ギ酸エチル、ギ酸メチル、酢酸エチルもしくは酢酸イソプロピル;ならびにエーテル、たとえばメチルtert-ブチルエーテルである。
【0045】
本発明によれば、水非混和性溶媒として、はじめに記載された油類も挙げることができる。
【0046】
好ましい水非混和性有機溶媒は、炭酸ジメチル、炭酸プロピレン、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、およびメチルtert-ブチルエーテルからなる群から選択される化合物である。
【0047】
分散/懸濁ステップのために特に好ましい溶媒として、少なくとも1種の水混和性有機溶媒、または水と少なくとも1種の水混和性有機溶媒の混合溶媒が使用されるが、イソプロパノールもしくはアセトンが特に好ましい。
【0048】
本発明の上記方法に関する有利な実施形態において、ステップa)では、少なくとも1種の水難溶性もしくは水不溶性活性物質の分子分散液を、30℃を超える温度で、好ましくは50〜240℃で、特に100〜200℃で、非常に好ましくは140〜180℃で、適当ならば加圧下で調製し、その後ただちに、ステップb)において保護コロイドの水性溶液で処理するが、35〜120℃の混合温度を達成する。
【0049】
その過程で、溶媒成分は水相に移り、1種以上の活性物質の疎水相はナノ分散相として形成される。
【0050】
上記分散化のための方法および装置の、より詳細な記述に関しては、EP-B-0 065 193を参照されたい。
【0051】
本発明はまた、少なくとも1種の水難溶性もしくは水不溶性活性物質をナノ粒子として含んでなる、乾燥粉末を調製する方法に関するが、この方法では上記水性懸濁液を脱水して乾燥する。
【0052】
これに関して、乾燥粉末への変換は、とりわけ、噴霧乾燥、噴霧冷却、凍結乾燥、もしくは流動層乾燥によって、適切ならばコーティング材の存在下で、行うことができる。コーンスターチもしくはシリカゲルはなかでもコーティング材として適している。
【0053】
上記の方法の好ましい実施形態において、調製された、少なくとも1種の水難溶性もしくは水不溶性活性物質の懸濁液は、乾燥粉末に変換する前に粉砕される。
【0054】
これについて、粉砕は、たとえばボールミルを用いるといった、それ自体公知の方法で行うことができる。これに関して、粉砕は、使用するミルのタイプによって、粒子が0.1〜100μmの平均粒径D[4,3](Fraunhofer回折により測定される)を示すのに十分な時間にわたって実施されるが、好ましくは0.2〜50μmであり、特に好ましくは0.2〜20μm、さらに非常に好ましくは0.2〜5μm、とりわけ0.2〜0.8μmである。"D[4,3]"という用語は、体積加重平均直径を表す(Malvern Mastersizer S (Malvern Instruments Ltd.、英国)のマニュアルを参照されたい)。
【0055】
粉砕およびそれに使用する装置に関する、これ以上の詳細は、特に、Ullmann‘s Encyclopedia of Industrial Chemistry, Sixth Edition, 2000, Electronic Release, Size Reduction, Chapter 3.6.: Wet Grinding、およびEP A 0 498 824に記載されている。
【0056】
上記乾燥粉末の1つを調製する、本発明の方法の特に好ましい実施形態において、
a) 少なくとも1種の水難溶性もしくは水不溶性活性物質a)を、水混和性有機溶媒、または水と水混和性有機溶媒の混合溶媒中に、30℃を超える温度で溶解する、
b) 得られた溶液を、b1) 乳清タンパク質、および/またはb2) 乳清タンパク質加水分解物、ならびにc) HLB値が10から18までの範囲にあるショ糖脂肪酸エステルを含んでなる水性分子分散液もしくはコロイド分散液と混合する、ならびに
c) 生成した懸濁液を乾燥粉末に変換する。
【0057】
これに関連して、ステップb)の懸濁液には、成分d)としてカゼインおよび/またはカゼイン塩を追加して含有することが、特に好ましい。
【0058】
本発明はまた、上記の方法のいずれかによって得られる、少なくとも1種の水難溶性もしくは水不溶性活性物質の粉末状組成物に関する。
【0059】
同様に、本発明は、少なくとも1種の水難溶性もしくは水不溶性活性物質を含んでなる油混和性組成物を二重分散系の形で調製する方法に関するが、この場合冒頭に記載の水性懸濁液が油中で乳化される。
【0060】
これに関連して、油中水型エマルションは、適切ならば乳化剤を用いて形成されるが、この水相は少なくとも1種の水難溶性もしくは水混和性有機紫外線遮断物質の、保護コロイドで安定化されたナノ粒子を含んでなる。乳化剤が必要ならば、それ自体よく知られているHLB値10未満のW/O乳化剤、とりわけ2〜6のW/O乳化剤(H.P. Fiedler, Lexikon der Hilfsstoffe fur Pharmazie, Kosmetik und angrenzende Gebiete [医薬品、化粧品および関連分野のための助剤事典], 1996, 753ページ以下を参照されたい)が適当である。こうしたタイプの乳化剤の代表的なものが、多価アルコールの部分脂肪酸エステル、たとえば、モノステアリン酸グリセロール、もしくはモノ-、ジ-、およびトリグリセリド、ソルビタン部分脂肪酸エステル、ならびに/または、好ましくは、ポリグリセロールの脂肪酸エステル、たとえば、ポリリシノール酸ポリグリセロールであって、これらは、1種以上の活性物質に対して、10〜1000重量%の濃度で、好ましくは100〜900重量%、特に好ましくは400〜800重量%の濃度で、使用される。
【0061】
分散媒は、合成、鉱物もしくは植物起源、ならびに動物起源のいずれでもよい。なかでも代表的なものは、ゴマ油、ヒマワリ油、コーン油、綿実油、大豆油もしくはピーナッツ油、中鎖植物性脂肪酸エステル、さらにまたパラフィン油、ステアリン酸グリセリル、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、2-エチルヘキサン酸セテアリル、水添ポリイソブテン、ワセリン、カプリル/カプリン酸トリグリセリド、マイクロクリスタリンワックス、ラノリン、およびステアリン酸である。分散媒の量は一般に、完成エマルションの総重量に対して、30〜95重量%、好ましくは50〜80重量%である。
【0062】
乳化は連続的に、またはバッチ式で行うことができる。
【0063】
二重分散系の物理的安定性、たとえば、沈降安定性は、油相中の水相のきわめて良好な分散化によって達成されるが、例を挙げると、20〜80℃、好ましくは40〜70℃でローター/ステータ分散装置で、またはAPV Gaulinのような高圧ホモジナイザーで、または700〜1000バールの範囲の圧力でMicrofluidizerのような超高圧ホモジナイザーを用いて、徹底的に処理される。それによって得られる水性分散相の平均直径は500μm未満であり、好ましくは100μm未満、特に好ましくは10μm未満、とりわけ1μm未満である。
【0064】
本発明はまた、粒径が500μm未満の水性分散相を二重分散系として含んでなる、上記の方法によって得られる、少なくとも1種の水難溶性もしくは水不溶性活性物質の油混和性液体組成物に関するが、この場合、保護コロイドによって安定化された、1種以上の水難溶性もしくは水不溶性活性物質の粒子は、分散媒としての油中に分散した形で存在する。
【0065】
本発明はまた、上記水性懸濁液を、食品、栄養補助食品、動物飼料、医薬組成物、および化粧品において添加物として使用することに関する。
【0066】
本発明はまた、上記粉末状組成物を、食品、栄養補助食品、動物飼料、医薬組成物、および化粧品において添加物として使用することに関する。
【0067】
本発明はまた、上記油混和性液体組成物を、食品、栄養補助食品、動物飼料、医薬組成物、および化粧品において添加物として使用することに関する。
【0068】
実施例を通して、本発明をより詳細に以下に説明する。
【実施例】
【0069】
実施例1(微粒子化)
乳清タンパク質(BiPro(登録商標)、Davisco、米国)およびショ糖ラウリン酸エステル(L-1695、三菱化学フーズ株式会社)の乳化剤混合物を用いたアスタキサンチン乾燥粉末の調製
結晶アスタキサンチン24.00gおよびα-トコフェロール9.60gを、加熱可能な容器内で、30℃にて、イソプロパノール/水の共沸混合物175g中に懸濁した。次にこの活性物質懸濁液を90℃に加熱し、2.1kg/時間の流速で、温度223℃および流速2.73kg/時間の追加のイソプロパノール/水共沸混合物と連続的に混合したところ、アスタキサンチンは55バールの圧力で、発散する混合温度165℃にて溶解した。その後この活性物質溶液を、ただちに、BiPro(登録商標)10.00g(乾重量に対して5%)、ショ糖ラウリン酸エステル10.00g(乾重量に対して5%)、Glucide(登録商標)47(Roquette Freres)138.24g、および防腐剤(混合物)3.16gを蒸留水5905g中に含む溶液で構成される水相(1M NaOHを用いてpH9.5に調整した)と、61.05kg/時間の流速で混合した。
【0070】
この混和において生成された活性物質粒子は、イソプロパノール/水混合物中で、E1/1値1)126で粒径94nmを示した。
【0071】
活性物質懸濁液はその後、薄膜エバポレータで、乾重量基準で、約23.3重量%の濃度に濃縮し、噴霧乾燥した。乾燥粉末は、アスタキサンチン含量11.6重量%を示した。水に再分散させた乾燥粉末は粒径281nmで、E1/1値68を示した。
【0072】
ちなみに、1)E1/1値は、吸収極大での1cmセル内の、10重量%乾燥粉末の1.0%水性分散液の比吸光係数を示す。
【0073】
実施例2(微粒子化)
乳清タンパク質およびショ糖ラウリン酸エステルの乳化剤混合物を用いたアスタキサンチン乾燥粉末の調製
結晶アスタキサンチン36gおよびα-トコフェロール14.4gを、加熱可能な容器内で、30℃にて、イソプロパノール/水共沸混合物262.64g中に懸濁した。次に活性物質懸濁液を90℃に加熱し、2.1kg/時間の流速で、温度223℃および流速2.73kg/時間の追加のイソプロパノール/水共沸混合物と連続的に混合したところ、アスタキサンチンは55バールの圧力で、発散する混合温度165℃にて溶解した。その後この活性物質溶液を、ただちに、BiPro(登録商標)30.0g(乾重量に対して10%)、ショ糖ラウリン酸エステルL-1695 15.0g(乾重量に対して5%)、Glucide(登録商標)47(Roquette Freres)192.36g、および防腐剤(混合物)4.74gを蒸留水8858.42g中に含む溶液で構成される水相(1M NaOHを用いてpH9.5に調整した)と、流速61.05kg/時間で混合した。
【0074】
この混和において生成された活性物質粒子は、イソプロパノール/水混合物中で、E1/1値126で粒径94nmを示した。
【0075】
活性物質懸濁液はその後、薄膜エバポレータで、乾燥重量基準で約22%の濃度に濃縮し、噴霧乾燥した。乾燥粉末は、アスタキサンチン含量11.0重量%を示した。水に再分散させた乾燥粉末は粒径242nmで、E1/1値は87を示した。
【0076】
実施例3(微粒子化)
乳清タンパク質、ショ糖ラウリン酸エステルおよび追加の保護コロイド(カゼインナトリウム、Emulac(登録商標)NA、Meggle)からなる乳化剤混合物を用いたアスタキサンチン乾燥粉末の調製
結晶アスタキサンチン36.00gおよびα-トコフェロール14.4gを、加熱可能な容器内で、30℃にて、イソプロパノール/水共沸混合物262.64g中に懸濁した。次に活性物質懸濁液を90℃に加熱し、2.1kg/時間の流速で、温度223℃および流速2.73kg/時間の追加のイソプロパノール/水共沸混合物と連続的に混合したところ、アスタキサンチンは55バールの圧力で、発散する混合温度165℃にて溶解した。続いて、この活性物質溶液をただちに、BiPro(登録商標)15.00g(乾重量に対して5%)、ショ糖ラウリン酸エステルL-1695を15.0g(乾重量に対して5%)、カゼインナトリウム15.00g(乾重量に対して5%)、Glucide(登録商標)47を192.36g、および防腐剤(混合物)4.74gを蒸留水8858.42g中に含む溶液で構成される水相(1M NaOHを用いてpH9.5に調整した)と、流速61.05kg/時間で混合した。
【0077】
この混和において生成された活性物質粒子は、イソプロパノール/水混合物中で、E1/1値133で粒径99nmを示した。
【0078】
活性物質懸濁液はその後、薄膜エバポレータで、乾重量基準で約37%の濃度に濃縮し、噴霧乾燥した。乾燥粉末は、アスタキサンチン含量11.5重量%を示した。水に再分散させた乾燥粉末は粒径196nmで、E1/1値は112を示した。
【0079】
実施例4(粉砕)
保護コロイド(カゼインナトリウム、Emulac(登録商標)NA、Meggle)および乳化剤系(ショ糖ラウリン酸エステルおよび乳清タンパク質)の混合物を用いたアスタキサンチン乾燥粉末の調製
下記の混合物を、水596.5g中で47〜52℃にて粉砕した(pH = 9.5、1M NaOH 39.2gで調整):
結晶アスタキサンチン 60.0g
Emulac(登録商標)NA 43.48g(8%の水を含む)
乾燥グルコースDE 40 256.0g
BiPro(登録商標) 10.0g
ショ糖ラウリン酸エステル 10.0g
トコフェロール 6.0g
Sipernat(登録商標)D17 (Degussa) 12.0g
【0080】
粉砕で生成した活性物質粒子は、水中で、さまざまな粉砕時間の後に次のような粒径およびE1/1値を示した:

乾燥粉末(噴霧乾燥後)は、14.38重量%のアスタキサンチン含量を示した。水に再分散させた乾燥粉末は、粒径が207nmで、E1/1値は111を示した。
【0081】
実施例5(微粒子化−比較例)
保護コロイド(大豆タンパク質)および乳化剤(パルミチン酸アスコルビル)の混合物を用いたアスタキサンチン乾燥粉末の調製
結晶アスタキサンチン48g、パルミチン酸アスコルビル1.60g(乾重量に対して0.4%)、およびα-トコフェロール20.00gを、加熱可能な容器内で、30℃にて、イソプロパノール/水共沸混合物350.00g中に懸濁した。次に活性物質懸濁液を90℃に加熱し、2.1kg/時間の流速で、温度223℃および流速2.73kg/時間の追加のイソプロパノール/水共沸混合物と連続的に混合したところ、アスタキサンチンは55バールの圧力で、発散する混合温度165℃にて溶解した。その後この活性物質溶液を、ただちに、誘導型大豆タンパク質67.68g(乾重量に対して20.2%)、乳糖187.18g、および防腐剤(混合物)16.20gを蒸留水10,818.69g中に含む溶液で構成される水相(1M NaOHを用いてpH9.5に調整した)と、60.00kg/時間の流速で混合した。
【0082】
この混和において生成された活性物質粒子は、イソプロパノール/水混合物中で、E1/1値126で粒径150nmを示した。
【0083】
活性物質懸濁液はその後、薄膜エバポレータで、乾重量基準で約25%の濃度に濃縮し、噴霧乾燥した。乾燥粉末は、アスタキサンチン含量13.4重量%を示した。水に再分散させた乾燥粉末は粒径220nmで、E1/1値は111を示した。
【0084】
実験結果(マスによるバイオアベイラビリティ試験、試験期間8週間):
相対バイオアベイラビリティ
実施例1 116%
実施例5(比較例) 100%
8週間保存(室温)後のフードペレット中での安定性:
保持率
実施例1 97%
実施例5(比較例) 93%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 少なくとも1種の水難溶性もしくは水不溶性の活性物質、
b1) 乳清タンパク質、および/または
b2) 乳清タンパク質加水分解物、ならびに
c) HLB値が10から18までの範囲にあるショ糖脂肪酸エステル、
を含んでなる水性懸濁液。
【請求項2】
ショ糖脂肪酸エステルが、HLB値16のショ糖ラウリン酸エステルである、請求項1に記載の水性懸濁液。
【請求項3】
乳清タンパク質加水分解物b2)が、加水分解度3〜20を示す、請求項1または2に記載の水性懸濁液。
【請求項4】
少なくとも1種の水難溶性もしくは水不溶性活性物質をナノ粒子として含んでなる、請求項1〜3のいずれか1つに記載の水性懸濁液。
【請求項5】
0.1〜70重量%の固形分を含んでなる、請求項1〜4のいずれか1つに記載の水性懸濁液。
【請求項6】
a)0.1〜90重量%の少なくとも1種の水難溶性もしくは水不溶性活性物質、b)0.1〜50重量%の乳清タンパク質および/または乳清タンパク質加水分解物、ならびにc)0.1〜20重量%の、HLB値が10から18までの範囲にあるショ糖脂肪酸エステルを含んでなり、すべてのパーセンテージは水性懸濁液の乾重量に対するものである、請求項1〜5のいずれか1つに記載の水性懸濁液。
【請求項7】
a)0.1〜90重量%の少なくとも1種のキサントフィル、b)0.1〜50重量%の乳清タンパク質、ならびにc)0.1〜20重量%の、HLB値16のショ糖ラウリン酸エステルを含んでなり、すべてのパーセンテージは水性懸濁液の乾重量に対するものである、請求項6に記載の水性懸濁液。
【請求項8】
a)0.1〜90重量%の少なくとも1種のカロテン、b)0.1〜50重量%の乳清タンパク質加水分解物、ならびにc)0.1〜20重量%の、HLB値16のショ糖ラウリン酸エステルを含んでなり、すべてのパーセンテージは水性懸濁液の乾重量に対するものである、請求項6に記載の水性懸濁液。
【請求項9】
成分d)として、少なくとも1種の水溶性もしくは水膨潤性保護コロイド、特に0.1〜50重量%のカゼインおよび/またはカゼイン塩を追加して含んでなる、請求項6〜8のいずれか1つに記載の水性懸濁液。
【請求項10】
b1) 乳清タンパク質、および/またはb2) 乳清タンパク質加水分解物、ならびにc) HLB値が10から18までの範囲にあるショ糖脂肪酸エステルを含んでなる水性分子分散液もしくはコロイド分散液中に、1種以上の水難溶性もしくは水不溶性活性物質a)を懸濁することによって、少なくとも1種の水難溶性もしくは水不溶性活性物質の水性懸濁液を調製する方法。
【請求項11】
懸濁化が、
a1) 少なくとも1種の水難溶性もしくは水不溶性活性物質を、1種以上の水混和性有機溶媒中に、または水と1種以上の水混和性有機溶媒の混合溶媒中に溶解するステップ、または
a2) 少なくとも1種の水難溶性もしくは水不溶性活性物質a)を、1種以上の水非混和性有機溶媒中に溶解するステップ、
b) a1)もしくはa2)により得られた溶液を、b1) 乳清タンパク質、および/またはb2) 乳清タンパク質加水分解物、ならびにc) HLB値が10から18までの範囲にあるショ糖脂肪酸エステルを含んでなる水性分子分散液もしくはコロイド分散液と混合し、水難溶性もしくは水不溶性活性物質の疎水相をナノ分散相として形成させるステップ、ならびに
c) 有機溶媒を分離するステップ、
を含んでなる、請求項10に記載の水性懸濁液を調製する方法。
【請求項12】
少なくとも1種の水混和性有機溶媒、または水と少なくとも1種の水混和性有機溶媒の混合溶媒が、有機溶媒として使用される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップa)において、少なくとも1種の水難溶性もしくは水不溶性活性物質の分子分散液を、30℃を超える温度で調製し、その後ただちに、ステップb)において保護コロイドの水性溶液で処理するが、その際35〜120℃の混合温度を達成する、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1種の水難溶性もしくは水不溶性活性物質をナノ粒子として含んでなる、乾燥粉末を調製する方法であって、請求項1に記載の水性懸濁液を脱水し、適切ならばコーティング材の存在下で乾燥する、前記方法。
【請求項15】
懸濁化された粒子を、乾燥粉末に変換する前に粉砕する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
a) 少なくとも1種の水難溶性もしくは水不溶性活性物質a)を、水混和性有機溶媒、または水と水混和性有機溶媒の混合溶媒中に、30℃を超える温度で溶解する、
b) 得られた溶液を、b1) 乳清タンパク質および/またはb2) 乳清タンパク質加水分解物、ならびにc) HLB値が10から18までの範囲にあるショ糖脂肪酸エステルを含んでなる水性分子分散液もしくはコロイド分散液と混合する、ならびに
c) 生成した懸濁液を乾燥粉末に変換する、
請求項14に記載の方法。
【請求項17】
ステップb)の懸濁液が、成分d)としてカゼインおよび/またはカゼイン塩を追加して含んでなる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項14〜17のいずれか1つに記載の方法により得られる、少なくとも1種の水難溶性もしくは水不溶性活性物質の粉末状組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の水性懸濁液を乳化剤の存在下に油中で乳化することを含んでなる、少なくとも1種の水難溶性もしくは水不溶性活性物質の油混和性組成物を調製する方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法によって得られる、少なくとも1種の水難溶性もしくは水不溶性活性物質の油混和性液体組成物であって、二重分散系として、粒径が500μm未満の水性分散相を含んでなり、ここで、保護コロイドによって安定化された、1種以上の水難溶性もしくは水不溶性活性物質の粒子が、分散媒としての油中に分散した形で存在する、前記油混和性液体組成物。
【請求項21】
食品、栄養補助食品、動物飼料、医薬組成物、および化粧品における添加物としての、請求項1〜9のいずれか1つに記載の水性懸濁液の使用。
【請求項22】
食品、栄養補助食品、動物飼料、医薬組成物、および化粧品における添加物としての、請求項18に記載の粉末状組成物の使用。
【請求項23】
食品、栄養補助食品、動物飼料、医薬組成物、および化粧品における添加物としての、請求項20に記載の油混和性液体組成物の使用。

【公表番号】特表2008−544973(P2008−544973A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518858(P2008−518858)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063739
【国際公開番号】WO2007/003598
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】