説明

水電解システム及びその排水制御方法

【課題】高圧水に溶存する水素を無駄に廃棄することがなく、経済的且つ効率的な水電解処理を安定して行うことを可能にする。
【解決手段】水電解システム10は、水を電気分解して酸素と前記酸素よりも高圧な高圧水素とを発生させる水電解装置12と、前記水電解装置12から前記高圧水素を排出する高圧水素配管20に配設され、前記高圧水素に含まれる水分を分離する気液分離装置22と、前記気液分離装置22から水が分離された前記高圧水素を導出する高圧水素導出ライン24と、前記気液分離装置22から水を排出する排水ライン26と、前記気液分離装置22から前記排水ライン26に排水を行う前に、前記気液分離装置22内の水温を上昇させるための加熱装置92とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を電気分解して酸素と前記酸素よりも高圧な高圧水素とを発生させる水電解装置と、前記水電解装置から前記高圧水素を排出する水素配管に配設され、前記高圧水素に含まれる水分を分離する気液分離装置と、前記気液分離装置から水が分離された前記高圧水素を導出する高圧水素導出ラインと、前記気液分離装置から水を排出する排水ラインとを備える水電解システム及びその排水制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、燃料電池の発電反応に使用される燃料ガスとして、水素が使用されている。この水素は、例えば、水電解装置により製造されている。水電解装置は、水を分解して水素(及び酸素)を発生させるため、固体高分子電解質膜(イオン交換膜)を用いている。固体高分子電解質膜の両面には、電極触媒層が設けられて電解質膜・電極構造体が構成されるとともに、前記電解質膜・電極構造体の両側には、給電体を配設して単位セルが構成されている。
【0003】
そこで、複数の単位セルが積層されたセルユニットには、積層方向両端に電圧が付与されるとともに、アノード側の給電体に水が供給される。このため、電解質膜・電極構造体のアノード側では、水が分解されて水素イオン(プロトン)が生成され、この水素イオンが固体高分子電解質膜を透過してカソード側に移動し、電子と結合して水素が製造される。一方、アノード側では、水素と共に生成された酸素が、余剰の水を伴ってセルユニットから排出される。
【0004】
上記の水電解装置では、水分を含んだ水素が製造されており、乾燥状態、例えば、水分5ppm以下の水素(以下、ドライ水素ともいう)を得るために、前記水素から水分を除去する必要がある。
【0005】
その際、カソード側に酸素よりも高圧(例えば、1MPa以上)の水素が得られる高圧水素製造装置では、高圧水素から水分を除去するための気液分離装置が大型化するという問題がある。
【0006】
そこで、例えば、特許文献1に開示されている気液分離装置が知られている。この気液分離装置は、図6に示すように、水素導管1が接続されている耐圧容器2と、前記耐圧容器2内の水位を検出する水位センサ3と、前記耐圧容器2の天井部に接続された水素取出手段4としての水素取出導管4aと、前記耐圧容器2の底部に接続された排水手段5としての排水導管5aとを備えている。
【0007】
水素取出導管4aには、第1背圧弁6が備えられるとともに、前記第1背圧弁6の下流側に電磁弁7が備えられている。排水導管5aには、第2背圧弁8が備えられている。
【0008】
第1背圧弁6は、例えば、35MPaで開弁するように設定されており、第2背圧弁8は、前記第1背圧弁6よりも高圧で、例えば、36MPaで開弁するように設定されている。電磁弁7は、水位センサ3の検出信号を受けて作動し、前記水位センサ3が検出する水位が所定の低水位になったときに開弁し、所定の高水位になったときに閉弁している。
【0009】
そして、電磁弁7が閉弁されると、水素取出導管4aからの高圧水素ガスの取出しが強制的に停止されるため、耐圧容器2内の圧力が第1背圧弁6の設定圧力である35MPaを超えて高くなってくる。この結果、第2背圧弁8は、耐圧容器2内の圧力がその設定圧力である36MPaに達する度に開弁し、液体の水が前記第2背圧弁8を介して排水導管5aから断続的に排出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−347779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記の水電解システムでは、第2背圧弁8が開弁することにより、耐圧容器2内の高圧水が排水導管5aから排出されている。その際、排水中には多くの水素が溶存しており、溶存水素は、第2背圧弁8の出口側で減圧されて気化する。
【0012】
このため、減圧弁等のデバイスのシール機構が損傷するおそれがあるとともに、溶存水素が無駄に廃棄されてしまう。従って、デバイスの性能及び耐久性が低下するとともに、水素の製造効率が低下してしまい、経済的ではないという問題がある。
【0013】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、高圧水に溶存する水素を無駄に廃棄することがなく、経済的且つ効率的な水電解処理を安定して行うことが可能な水電解システム及びその排水制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、水を電気分解して酸素と前記酸素よりも高圧な高圧水素とを発生させる水電解装置と、前記水電解装置から前記高圧水素を排出する水素配管に配設され、前記高圧水素に含まれる水分を分離する気液分離装置と、前記気液分離装置から水が分離された前記高圧水素を導出する高圧水素導出ラインと、前記気液分離装置から水を排出する排水ラインとを備える水電解システム及びその排水制御方法に関するものである。
【0015】
この水電解システムは、気液分離装置から排水ラインに排水を行う前に、前記気液分離装置内の水温を上昇させるための加熱装置を備えている。
【0016】
また、この排水制御方法は、気液分離装置による気液分離を行う気液分離工程と、前記気液分離装置内の水温を上昇させる加熱工程と、前記気液分離装置内の水温が設定温度を超えると判断された際、該気液分離装置から排水ラインに排水を行う排水工程とを有している。
【0017】
さらに、この排水制御方法は、気液分離装置内の水量が設定水量を超えるか否かを判断する工程と、前記水量が前記設定水量を超えたと判断された際、加熱工程を開始することが好ましい。
【0018】
さらにまた、この排水制御方法では、気液分離装置内の水量が下限設定水量に至った際、排水工程及び加熱工程を停止することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高圧水が貯留される気液分離装置から排水を行う前に、前記気液分離装置内の水温を上昇させている。このため、高圧水に溶け込んでいる水素の溶解度を低下させることができ、排水中の溶存水素量を有効に低減させることが可能になる。
【0020】
従って、高圧水に溶存する水素を排水と一体に無駄に廃棄することがなく、経済的であるとともに、高圧水排水時の急激な圧力低下により気化する水素の量を低減でき、デバイスの性能及び耐久性が低下することを抑制することができる。これにより、高圧水に溶存する水素を無駄に廃棄することがなく、経済的且つ効率的な水電解処理を安定して行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る水電解システムの概略構成説明図である。
【図2】前記水電解システムの排水制御方法を説明するフローチャートである。
【図3】前記排水制御方法を説明するタイミングチャートである。
【図4】高圧水の温度と溶解度との関係図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る水電解システムを構成する気液分離装置の概略断面説明図である。
【図6】特許文献1に開示されている気液分離装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る水電解システム10は、水(純水)を電気分解することによって酸素及び高圧水素(常圧である酸素圧力よりも高圧、例えば、1MPa〜70MPaの水素)を製造する差圧式水電解装置(高圧水素製造装置)12と、前記水電解装置12から排出される前記酸素及び余剰の水を分離し、前記水を貯留する水貯留装置14と、前記水貯留装置14に貯留される前記水を、前記水電解装置12に循環させる水循環装置16と、前記水貯留装置14に市水から生成された純水を供給する水供給装置18と、前記水電解装置12から高圧水素配管20に導出される前記高圧水素に含まれる水分を除去する気液分離装置22と、前記気液分離装置22から水が分離された前記高圧水素を導出する高圧水素導出ライン24と、前記気液分離装置22から水を排出する排水ライン26と、コントローラ(制御装置)28とを備える。
【0023】
水電解装置12は、複数の単位セル30を積層したセルユニットを備える。単位セル30の積層方向一端には、ターミナルプレート32a、絶縁プレート34a及びエンドプレート36aが外方に向かって、順次、配設される。単位セル30の積層方向他端には、同様にターミナルプレート32b、絶縁プレート34b及びエンドプレート36bが外方に向かって、順次、配設される。エンドプレート36a、36b間は、一体的に締め付け保持される。
【0024】
ターミナルプレート32a、32bの側部には、端子部38a、38bが外方に突出して設けられる。端子部38a、38bは、配線39a、39bを介して電解電源40に電気的に接続される。
【0025】
単位セル30は、円盤状の電解質膜・電極構造体42と、この電解質膜・電極構造体42を挟持するアノード側セパレータ44及びカソード側セパレータ46とを備える。アノード側セパレータ44及びカソード側セパレータ46は、円盤状を有するとともに、例えば、カーボン部材等で構成され、又は、鋼板、ステンレス鋼板、チタン板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属板をプレス成形して、あるいは切削加工した後に防食用の表面処理を施して構成される。
【0026】
電解質膜・電極構造体42は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜48と、前記固体高分子電解質膜48の両面に設けられるアノード側給電体50及びカソード側給電体52とを備える。
【0027】
固体高分子電解質膜48の両面には、アノード電極触媒層50a及びカソード電極触媒層52aが形成される。アノード電極触媒層50aは、例えば、Ru(ルテニウム)系触媒を使用する一方、カソード電極触媒層52aは、例えば、白金触媒を使用する。
【0028】
単位セル30の外周縁部には、積層方向に互いに連通して、水(純水)を供給するための水供給連通孔56と、反応により生成された酸素及び未反応の水を排出するための排出連通孔58と、反応により生成された水素を流すための水素連通孔60とが設けられる。
【0029】
アノード側セパレータ44の電解質膜・電極構造体42に対向する面には、水供給連通孔56及び排出連通孔58に連通する第1流路64が設けられる。この第1流路64は、アノード側給電体50の表面積に対応する範囲内に設けられるとともに、複数の流路溝や複数のエンボス等で構成される。第1流路64には、反応により生成された酸素及び未反応の水が流通する。
【0030】
カソード側セパレータ46の電解質膜・電極構造体42に向かう面には、水素連通孔60に連通する第2流路68が形成される。この第2流路68は、カソード側給電体52の表面積に対応する範囲内に設けられるとともに、複数の流路溝や複数のエンボス等で構成される。第2流路68には、反応により生成された高圧水素が流通する。
【0031】
水循環装置16は、水電解装置12の水供給連通孔56に連通する循環配管72を備え、この循環配管72は、循環ポンプ74及びイオン交換器76を配置して水貯留装置14を構成するタンク部78の底部に接続される。
【0032】
タンク部78の上部には、戻り配管80の一端部が連通するとともに、前記戻り配管80の他端は、水電解装置12の排出連通孔58に連通する。戻り配管80の一端部は、タンク部78内に貯留される水の中で、常時、開口する位置に設定される。
【0033】
タンク部78には、水供給装置18に接続された純水供給配管84と、前記タンク部78で純水から分離された酸素を排出するための酸素排気配管86とが連結される。
【0034】
水電解装置12の水素連通孔60には、高圧水素配管20の一端が接続され、この高圧水素配管20の他端が気液分離装置22に接続される。気液分離装置22で水分が除去された高圧水素は、ドライ水素として高圧水素導出ライン24に導出される。高圧水素導出ライン24には、第1圧力値(例えば、35MPa)に設定された第1背圧弁88が設けられる。
【0035】
気液分離装置22は、水を貯留するためのタンク部90を備える。気液分離装置22には、この気液分離装置22から排水ライン26に排水を行う前に、該気液分離装置22内の水温を上昇させるための加熱装置92が設けられる。加熱装置92は、タンク部90の外周を囲繞する絶縁材94を備えるとともに、前記絶縁材94内には、ヒータ96が埋設される。
【0036】
ヒータ96は、タンク部90の外周を周回するコイル状に構成させるとともに、図示しない電源に接続される。タンク部90には、このタンク部90内の水温を検出するための温度検出センサ98が設けられる。温度検出センサ98の検出信号は、コントローラ28に入力される。
【0037】
タンク部90には、前記タンク部90内の水位WSが設定高さであるか否かを検出する水位検出部、例えば、水位検出センサ100a〜100dが設けられる。水位検出センサ100a〜100dの検出信号は、コントローラ28に入力される。
【0038】
水位検出センサ100aは、水位WSが設定下方位置(L)に低下したか否かを検出し、水位検出センサ100bは、前記水位WSが設定上方位置(H)に上昇したか否かを検出し、水位検出センサ100cは、前記水位WSが下限限界高さ(LL)に低下したか否かを検出し、水位検出センサ100dは、前記水位WSが上限限界高さ(HH)に上昇したか否かを検出する。
【0039】
気液分離装置22の下部には、排水ライン26が接続される。排水ライン26は、フィルタ102と、前記フィルタ102の下流に設けられる第2背圧弁104と、前記第2背圧弁104の下流に設けられ、コントローラ28により開閉操作される排水弁106とを備える。第2背圧弁104は、第1背圧弁88の第1圧力値(例えば、35MPa)よりも低圧な第2圧力値(例えば、34MPa)に設定される。
【0040】
このように構成される水電解システム10の動作について、以下に説明する。
【0041】
先ず、水電解システム10の始動時には、水供給装置18を介して市水から生成された純水が、水貯留装置14を構成するタンク部78に供給される。
【0042】
水循環装置16では、循環ポンプ74の作用下に、タンク部78内の水が循環配管72を介して水電解装置12の水供給連通孔56に供給される。一方、ターミナルプレート32a、32bの端子部38a、38bには、電気的に接続されている電解電源40を介して電圧が付与される。
【0043】
このため、各単位セル30では、水供給連通孔56からアノード側セパレータ44の第1流路64に水が供給され、この水がアノード側給電体50内に沿って移動する。従って、水は、アノード電極触媒層50aで電気により分解され、水素イオン、電子及び酸素が生成される。この陽極反応により生成された水素イオンは、固体高分子電解質膜48を透過してカソード電極触媒層52a側に移動し、電子と結合して水素が得られる。
【0044】
これにより、カソード側セパレータ46とカソード側給電体52との間に形成される第2流路68に沿って水素が流動する。この水素は、水供給連通孔56よりも高圧に維持されており、水素連通孔60を流れて水電解装置12の外部に取り出し可能となる。
【0045】
一方、第1流路64には、反応により生成した酸素と、未反応の水とが流動しており、これらの混合流体が排出連通孔58に沿って水循環装置16の戻り配管80に排出される。この未反応ガスの水及び酸素は、タンク部78に導入されて分離された後、水は、循環ポンプ74を介して循環配管72からイオン交換器76を通って水供給連通孔56に導入される。水から分離された酸素は、酸素排気配管86から外部に排出される。
【0046】
水電解装置12内に生成された水素は、高圧水素配管20を介して気液分離装置22に送られる。この気液分離装置22では、水素に含まれる水蒸気(水分)が、この水素から分離されてタンク部90に貯留される一方、前記水素は、高圧水素導出ライン24に導出される。
【0047】
次に、水電解システム10の排水制御方法について、図2に示すフローチャート及び図3に示すタイミングチャートに沿って、以下に説明する。
【0048】
上記のように、水電解装置12による通常電解運転が行われると(ステップS1)、気液分離装置22では、前記水電解装置12から排出される高圧水素に含まれる水分を除去するとともに、この水分をタンク部90に貯留している。このため、タンク部90内の水位WSが上昇し、コントローラ28は、前記水位WSが設定水量である設定上方位置(H)に上昇したか否かを検出する。
【0049】
コントローラ28は、水位検出センサ100bにより、水位WSが設定上方位置(H)に上昇したことを検出すると(ステップS2中、YES)、ステップS3に進む。このステップS3では、加熱装置92を構成するヒータ96がオンされて、このヒータ96による加熱昇温が開始される(図3参照)。
【0050】
従って、タンク部90内の水は、ヒータ96を介して昇温される一方、このタンク部90内の水温は、温度検出センサ98により検出される。コントローラ28は、タンク部90内の水温が規定温度を超えたと判断すると(ステップS4中、YES)、ステップS5に進んで、排水弁106を開放させる。
【0051】
これにより、タンク部90内の水は、排水ライン26への排水が開始され、前記タンク部90の水位WSが低下する。タンク部90から排水が行われるため、このタンク部90内の水位WSが低下する。そして、コントローラ28は、水位検出センサ100aにより、水位WSが設定下方位置(L)まで低下したと判断すると(ステップS6中、YES)、ステップS7に進んで、排水弁106を閉塞する。このため、タンク部90からの排水が停止されるとともに、ステップS8に進んで、ヒータ96がオフされて昇温が停止される。
【0052】
上記の電解が継続される際には(ステップS9中、NO)、ステップS1に戻って通常電解運転を継続し、電解が終了した場合には(ステップS9中、YES)、排水制御処理が終了する。
【0053】
この場合、第1の実施形態では、高圧水が貯留されている気液分離装置22から排水ライン26に排水を行う前に、先ず、前記気液分離装置22を構成するタンク部90内の水温が、加熱装置92を介して上昇されている。
【0054】
ここで、図4に示すように、高圧水中の水素の溶解度と温度との関係が得られており、温度が上昇するのに伴って、水素の溶解度が低下している。従って、タンク部90内では、高圧水の水温を上昇させることにより、この高圧水に溶け込んでいる水素の溶解度を低下させることができる。これにより、排水ライン26に排水される排水中の溶存水素量が、有効に低減されるという効果が得られる。
【0055】
このため、高圧水中に溶存する水素を排水と一体に無駄に廃棄することがなく、経済的であるとともに、高圧水排水時の急激な圧力低下により気化する水素の量が低減される。従って、第2背圧弁104や排水弁106は、水素気化に伴うシール機構の損傷を低減することができ、性能及び耐久性が低下することを抑制することが可能になる。
【0056】
さらに、気液分離装置22内の水位WSが、設定上方位置(H)を超えた際に、加熱装置92による前記気液分離装置22の昇温処理が開始されている(図3参照)。これにより、加熱装置92は、タンク部90内の貯留水を排水する前にのみ昇温を行うため、前記タンク部90内の水温を常時規定温度に維持する場合に比べ、エネルギーの無駄を可及的に抑制することができる。
【0057】
さらにまた、加熱装置92は、気液分離装置22からの排水が完了するまで、すなわち、水位WSが設定下方位置(L)に低下するまで、ヒータ96をオンして昇温を行っている。このため、タンク部90から排水ライン26に排水される排水中の溶存水素量を可及的に削減することが可能になり、無駄に廃棄される水素が可及的に低減され、経済的であるという利点がある。
【0058】
なお、第1の実施形態では、加熱装置92がコイル状にタンク部90の外周を囲繞するヒータ96を備えているが、これに限定されるものではない。例えば、電熱器や触媒燃焼器を備える加熱装置を採用することもできる。
【0059】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る水電解システム110を構成する気液分離装置112の断面説明図である。なお、第1の実施形態に係る水電解システム10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0060】
気液分離装置112には、加熱装置114が設けられており、この加熱装置114は、タンク部90内の水に直接浸漬されるヒータ116を備える。タンク部90の外周には、絶縁材94が配設されるとともに、ヒータ116をオンすることにより、前記タンク部90内の水を直接加熱することができる。従って、第2の実施形態では、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0061】
10、110…水電解システム 12…水電解装置
14…水貯留装置 16…水循環装置
18…水供給装置 20…高圧水素配管
22、112…気液分離装置 24…高圧水素導出ライン
26…排水ライン 28…コントローラ
30…単位セル 42…電解質膜・電極構造体
44…アノード側セパレータ 46…カソード側セパレータ
48…固体高分子電解質膜 50…アノード側給電体
52…カソード側給電体 56…水供給連通孔
58…排出連通孔 60…水素連通孔
64、68…流路 88、104…背圧弁
90…タンク部 92、114…加熱装置
94…絶縁材 96、116…ヒータ
98…温度検出センサ 100a〜100d…水位検出センサ
106…排水弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を電気分解して酸素と前記酸素よりも高圧な高圧水素とを発生させる水電解装置と、
前記水電解装置から前記高圧水素を排出する水素配管に配設され、前記高圧水素に含まれる水分を分離する気液分離装置と、
前記気液分離装置から水が分離された前記高圧水素を導出する高圧水素導出ラインと、
前記気液分離装置から水を排出する排水ラインと、
を備える水電解システムであって、
前記気液分離装置から前記排水ラインに排水を行う前に、前記気液分離装置内の水温を上昇させるための加熱装置を備えることを特徴とする水電解システム。
【請求項2】
水を電気分解して酸素と前記酸素よりも高圧な高圧水素とを発生させる水電解装置と、
前記水電解装置から前記高圧水素を排出する水素配管に配設され、前記高圧水素に含まれる水分を分離する気液分離装置と、
前記気液分離装置から水が分離された前記高圧水素を導出する高圧水素導出ラインと、
前記気液分離装置から水を排出する排水ラインと、
を備える水電解システムの排水制御方法であって、
前記気液分離装置による気液分離を行う気液分離工程と、
前記気液分離装置内の水温を上昇させる加熱工程と、
前記気液分離装置内の水温が設定温度を超えると判断された際、該気液分離装置から前記排水ラインに排水を行う排水工程と、
を有することを特徴とする水電解システムの排水制御方法。
【請求項3】
請求項2記載の排水制御方法において、前記気液分離装置内の水量が設定水量を超えるか否かを判断する工程と、
前記水量が前記設定水量を超えたと判断された際、前記加熱工程を開始することを特徴とする水電解システムの排水制御方法。
【請求項4】
請求項3記載の排水制御方法において、前記気液分離装置内の水量が下限設定水量に至った際、前記排水工程及び前記加熱工程を停止することを特徴とする水電解システムの排水制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−219277(P2012−219277A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82721(P2011−82721)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】