説明

水電解システム及びその運転方法

【課題】排水中の溶存水素を有効に減少させることができ、排水ラインに高圧水が排水されることを阻止するとともに、前記排水ラインに配置されるデバイスの耐久性を向上させることを可能にする。
【解決手段】水電解システム10は、水を電気分解して酸素と前記酸素よりも高圧な高圧水素とを発生させる水電解装置12と、前記水電解装置12から前記高圧水素を排出する水素配管50に配設され、前記高圧水素に含まれる水分を分離する気液分離装置52と、前記気液分離装置52から水が分離された前記高圧水素を導出する高圧水素導出配管54と、前記気液分離装置52から水を排出する排水ライン56と、前記気液分離装置52から前記排水ライン56に排水を行う前に、前記気液分離装置52内の脱気を行うための気相脱圧ライン58とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を電気分解して酸素と前記酸素よりも高圧な高圧水素とを発生させる水電解装置と、前記水電解装置から前記高圧水素を排出する水素配管に配設され、前記高圧水素に含まれる水分を分離する気液分離装置と、前記気液分離装置から水が分離された前記高圧水素を導出する高圧水素導出配管と、前記気液分離装置から水を排出する排水ラインとを備える水電解システム及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、燃料電池の発電反応に使用される燃料ガスとして、水素が使用されている。この水素は、例えば、水電解装置により製造されている。水電解装置は、水を分解して水素(及び酸素)を発生させるため、固体高分子電解質膜(イオン交換膜)を用いている。固体高分子電解質膜の両面には、電極触媒層が設けられて電解質膜・電極構造体が構成されるとともに、前記電解質膜・電極構造体の両側には、給電体を配設して単位セルが構成されている。
【0003】
そこで、複数の単位セルが積層されたセルユニットには、積層方向両端に電圧が付与されるとともに、アノード側の給電体に水が供給される。このため、電解質膜・電極構造体のアノード側では、水が分解されて水素イオン(プロトン)が生成され、この水素イオンが固体高分子電解質膜を透過してカソード側に移動し、電子と結合して水素が製造される。一方、アノード側では、水素と共に生成された酸素が、余剰の水を伴ってセルユニットから排出される。
【0004】
上記の水電解装置では、水分を含んだ水素が製造されており、乾燥状態、例えば、水分量が5ppm以下の水素(以下、ドライ水素ともいう)を得るために、前記水素から水分を除去する必要がある。
【0005】
その際、カソード側に酸素よりも高圧(例えば、1MPa以上)の水素が得られる差圧式高圧水素製造装置では、高圧水素から水分を除去するための気液分離装置が大型化するという問題がある。
【0006】
そこで、例えば、特許文献1に開示されている気液分離装置が知られている。この気液分離装置は、図9に示すように、水素導管1が接続されている耐圧容器2と、前記耐圧容器2内の水位を検出する水位センサ3と、前記耐圧容器2の天井部に接続された水素取出手段4としての水素取出導管4aと、前記耐圧容器2の底部に接続された排水手段5としての排水導管(排水ライン)5aとを備えている。
【0007】
水素取出導管4aには、第1背圧弁6が備えられるとともに、前記第1背圧弁6の下流側に電磁弁7が備えられている。排水導管5aには、第2背圧弁8が備えられている。
【0008】
第1背圧弁6は、例えば、35MPaで開弁するように設定されており、第2背圧弁8は、前記第1背圧弁6よりも高圧で、例えば、36MPaで開弁するように設定されている。電磁弁7は、水位センサ3の検出信号を受けて作動し、前記水位センサ3が検出する水位が所定の低水位になったときに開弁し、所定の高水位になったときに閉弁している。
【0009】
そして、電磁弁7が閉弁されると、水素取出導管4aからの高圧水素ガスの取出しが強制的に停止されるため、耐圧容器2内の圧力が第1背圧弁6の設定圧力である35MPaを超えて高くなってくる。この結果、第2背圧弁8は、耐圧容器2内の圧力がその設定圧力である36MPaに達する度に開弁し、液体の水が前記第2背圧弁8を介して排水導管5aから断続的に排出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−347779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記の水電解システムでは、第2背圧弁8が開弁し、液体の水が前記第2背圧弁8を通過して排水導管5aから排出される際、前記水の圧力が一気に減圧されている。このため、第2背圧弁8にかかる負荷が大きくなり易く、前記第2背圧弁8の耐久性が低下するおそれがある。
【0012】
しかも、高圧水素状態で排水が行われると、この排水中には多くの水素が溶存している。従って、高圧水の排水時には、多量の水素が排出されてしまい、経済的ではないという問題がある。
【0013】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、排水中の溶存水素を有効に減少させることができ、排水ラインに高圧水が排水されることを阻止するとともに、前記排水ラインに配置されるデバイスの耐久性を向上させることが可能な水電解システム及びその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、水を電気分解して酸素と前記酸素よりも高圧な高圧水素とを発生させる水電解装置と、前記水電解装置から前記高圧水素を排出する水素配管に配設され、前記高圧水素に含まれる水分を分離する気液分離装置と、前記気液分離装置から水が分離された前記高圧水素を導出する高圧水素導出配管と、前記気液分離装置から水を排出する排水ラインとを備える水電解システムに関するものである。
【0015】
この水電解システムでは、気液分離装置には、前記気液分離装置から排水ラインに排水を行う前に、前記気液分離装置内の脱気を行うための気相脱圧ラインが設けられている。
【0016】
また、この水電解システムでは、気相脱圧ラインには、第1減圧弁及び第1開閉弁が配設されるとともに、排水ラインには、第2減圧弁及び第2開閉弁が配設されることが好ましい。
【0017】
さらに、この水電解システムでは、気液分離装置の上流側で水素配管から分岐する水電解装置脱圧ラインを備えることが好ましい。
【0018】
さらにまた、本発明は、水を電気分解して酸素と前記酸素よりも高圧な高圧水素とを発生させる水電解装置と、前記水電解装置から前記高圧水素を排出する水素配管に配設され、前記高圧水素に含まれる水分を分離する気液分離装置と、前記気液分離装置から水が分離された前記高圧水素を導出する高圧水素導出配管と、前記気液分離装置から水を排出する排水ラインと、前記気液分離装置から前記排水ラインに排水を行う前に、前記気液分離装置内の脱気を行うための気相脱圧ラインとを備える水電解システムの運転方法に関するものである。
【0019】
この運転方法は、気液分離装置内の水量が規定量以上であると判断された際、前記気液分離装置内の高圧水素を気相脱圧ラインに排出する気相脱圧工程と、前記気液分離装置内の圧力が規定圧力以下であると判断された際、前記気液分離装置内の水を排水ラインに排出する排水工程とを有している。
【0020】
また、この運転方法では、気液分離装置内の水量が規定量以上であると判断された際、水電解装置に印加する電流を制限する電流制限工程を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、気液分離装置から排水ラインに排水を行う前に、前記気液分離装置内が気相脱圧ラインを介して脱気(脱圧)されている。このため、気液分離装置から排水ラインに排水される排水中の溶存水素が有効に減少されるとともに、前記排水ラインに高圧水が排水されることを阻止することができる。
【0022】
これにより、簡単な構成及び工程で、排水ラインに配置されるデバイスの耐久性を容易に向上させることが可能になる。従って、経済的且つ効率的な水電解処理が、安定して行われる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る水電解システムの概略構成説明図である。
【図2】前記水電解システムの通常運転時の説明図である。
【図3】前記水電解システムの運転方法を説明するフローチャートである。
【図4】前記水電解システムの気相脱圧時の説明図である。
【図5】前記水電解システムの排水時の説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る水電解システムの概略構成説明図である。
【図7】前記水電解システムの運転方法を説明するフローチャートである。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る水電解システムの概略構成説明図である。
【図9】特許文献1に開示されている気液分離装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る水電解システム10は、水(純水)を電気分解することによって、酸素及び高圧水素(常圧である酸素圧力よりも高圧、例えば、1MPa〜70MPaの水素)を製造する差圧式水電解装置(高圧水素製造装置)12を備える。
【0025】
水電解装置12は、複数の単位セル14を積層したセルユニットを備える。単位セル14の積層方向一端には、ターミナルプレート16a、絶縁プレート18a及びエンドプレート20aが外方に向かって、順次、配設される。単位セル14の積層方向他端には、同様にターミナルプレート16b、絶縁プレート18b及びエンドプレート20bが外方に向かって、順次、配設される。エンドプレート20a、20b間は、一体的に締め付け保持される。
【0026】
ターミナルプレート16a、16bの側部には、端子部22a、22bが外方に突出して設けられる。端子部22a、22bは、電解電源24に電気的に接続される。
【0027】
単位セル14は、円盤状の電解質膜・電極構造体26と、この電解質膜・電極構造体26を挟持するアノード側セパレータ28及びカソード側セパレータ30とを備える。アノード側セパレータ28及びカソード側セパレータ30は、円盤状を有する。
【0028】
電解質膜・電極構造体26は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜32と、前記固体高分子電解質膜32の両面に設けられるアノード側給電体34及びカソード側給電体36とを備える。
【0029】
固体高分子電解質膜32の両面には、アノード電極触媒層34a及びカソード電極触媒層36aが形成される。アノード電極触媒層34aは、例えば、Ru(ルテニウム)系触媒を使用する一方、カソード電極触媒層36aは、例えば、白金触媒を使用する。
【0030】
単位セル14の外周縁部には、積層方向に互いに連通して、水(純水)を供給するための水供給連通孔38と、反応により生成された酸素及び未反応の水(混合流体)を排出するための排出連通孔40と、反応により生成された水素を流すための水素連通孔42とが設けられる。
【0031】
アノード側セパレータ28の電解質膜・電極構造体26に対向する面には、水供給連通孔38及び排出連通孔40に連通する第1流路44が設けられる。この第1流路44は、アノード側給電体34の表面積に対応する範囲内に設けられるとともに、複数の流路溝や複数のエンボス等で構成される。第1流路44には、反応により生成された酸素及び未反応の水が流通する。
【0032】
カソード側セパレータ30の電解質膜・電極構造体26に向かう面には、水素連通孔42に連通する第2流路46が形成される。この第2流路46は、カソード側給電体36の表面積に対応する範囲内に設けられるとともに、複数の流路溝や複数のエンボス等で構成される。第2流路46には、反応により生成された高圧水素が流通する。
【0033】
水素連通孔42には、水電解装置12から高圧水素を排出するための水素配管50の一端が接続されるとともに、前記水素配管50の他端は、気液分離装置52に接続される。
【0034】
気液分離装置52は、水電解装置12から排出される高圧水素に含まれる水分を除去する。気液分離装置52には、水から分離された高圧水素を水素タンク(図示せず)等に供給するために導出する高圧水素導出配管54と、分離された前記水を排出するための排水ライン56とが接続される。
【0035】
気液分離装置52の出口には、前記気液分離装置52から排水ライン56に排水を行う前に、前記気液分離装置52内の脱気を行うための気相脱圧ライン58が設けられる。気相脱圧ライン58は、実質的に気液分離装置52の近傍で高圧水素導出配管54から分岐する。
【0036】
水素配管50には、気液分離装置52の上流側で、前記水素配管50から分岐するとともに、水電解装置12の脱圧を行うための水電解装置脱圧ライン60が設けられる。
【0037】
気液分離装置52は、水を貯留するためのタンク部62を備える。タンク部62には、前記タンク部62内の水位WSが上限高さH以上であるか否か、及び下限高さL以下であるか否かを検出する水位検出センサ64が設けられる。
【0038】
水素配管50には、水電解装置脱圧ライン60の分岐部位と気液分離装置52との間に、第1背圧弁66a及び第1逆止弁68aが配置される。
【0039】
高圧水素導出配管54には、気相脱圧ライン58の分岐部位よりも下流に、第2背圧弁66b及び第2逆止弁68bが配置される。この第2逆止弁68bの下流には、流量計70が設けられる。
【0040】
水素配管50には、水電解装置12の出口側近傍に、第1圧力計72aが配置される一方、高圧水素導出配管54には、第2背圧弁66bと気相脱圧ライン58の分岐部位との間に、第2圧力計72bが配置される。気相脱圧ライン58には、第1減圧弁74a、絞り76及び第1開閉弁78aが配設される。絞り76は、例えば、オリフィスやニードル弁等により構成される。
【0041】
排水ライン56には、第2減圧弁74b及び第2開閉弁78bが配置されるとともに、水電解装置脱圧ライン60には、第3減圧弁74c及び第3開閉弁78cが配置される。これらの弁を含む各種デバイス及びシステム全体は、コントローラ80により制御される。
【0042】
このように構成される水電解システム10の動作について、以下に説明する。
【0043】
先ず、水電解システム10の通常運転時には、図2に示すように、第1開閉弁78a〜第3開閉弁78cが閉塞される。そして、水電解装置12には、図示しない水循環装置を介して純水が供給されるとともに、ターミナルプレート16a、16bの端子部22a、22b間には、電気的に接続されている電解電源24を介して電圧(電流)が印加される。
【0044】
このため、各単位セル14では、水供給連通孔38からアノード側セパレータ28の第1流路44に水が供給され、この水がアノード側給電体34内に沿って移動する。従って、水は、アノード電極触媒層34aで電気により分解され、水素イオン、電子及び酸素が生成される。この陽極反応により生成された水素イオンは、固体高分子電解質膜32を透過してカソード電極触媒層36a側に移動し、電子と結合して水素が得られる。
【0045】
これにより、カソード側セパレータ30とカソード側給電体36との間に形成される第2流路46に沿って水素が流動する。この水素は、水供給連通孔38よりも高圧に維持されており、水素連通孔42を流れて水電解装置12の外部に取り出し可能となる。
【0046】
次いで、第1の実施形態に係る運転方法について、図3に示すフローチャートに沿って、以下に説明する。
【0047】
水電解システム10では、上記のように、通常運転(水素製造工程)が行われている(ステップS1)。このため、高圧水素は、水素配管50を通って気液分離装置52に送られ、前記気液分離装置52のタンク部62には、前記高圧水素に含まれる水分が分離されて貯留される。一方、高圧水素は、気液分離装置52から高圧水素導出配管54に排出され、第2背圧弁66bの設定圧力を超えると、図示しない水素タンク等に供給可能になる。
【0048】
次いで、ステップS2に進んで、水電解装置12による水電解処理(運転)が終了すると判断されると(ステップS2中、YES)。ステップS3に進む。このステップS3では、第3開閉弁78cが開放されるため、電解停止が行われた水電解装置12内の第2流路46の圧力は、水電解装置脱圧ライン60を介して脱圧される。
【0049】
水電解装置12による水電解処理が継続されると(ステップS2中、NO)、タンク部62内の水位WSが上昇する。そして、タンク部62に設けられている水位検出センサ64を介して前記タンク部62の水位WSが検出される。この水位WSが上限高さH以上であると判断されると(ステップS4中、YES)、ステップS5に進む。
【0050】
ステップS5では、水電解装置12に印加される電解電流が制限されるとともに(電流制限工程)、第1開閉弁78aが開放される(図4参照)。なお、電解電流は、水電解装置12内でアノード側からカソード側に透過する水分量と前記カソード側から前記アノード側に戻される水分量とが均等になる電流値に設定される。なお、固体高分子電解質膜32の乾燥が懸念される際には、実質的にアノード側からカソード側に水が透過し得る最低限度の電流値に設定することも可能である。第1開閉弁78aが開放されることにより、気液分離装置52のタンク部62内の高圧水素は、気相脱圧ライン58に排出されるため、前記タンク部62内の圧力が低下する。
【0051】
その際、第2圧力計72bは、タンク部62内の圧力PT2を検出しており、この検出された圧力PT2が、設定圧力α以下となるか否かが検出される(ステップS6)。設定圧力αは、水電解装置12内でキャビテーションが惹起されない圧力に設定され、下流側が大気圧である際には、例えば、5MPa以下程度の値に設定される。
【0052】
タンク部62内の圧力PT2が、設定圧力α以下であると判断されると(ステップS6中、YES)、ステップS7に進んで、第2開閉弁78bが開放される一方、第1開閉弁78aが閉塞される。このため、図5に示すように、タンク部62内の水は、排水ライン56を介して排水される。その際、タンク部62には、水電解装置12により製造される水素が導入されており、この水素は前記タンク部62内に残留する水を排水ライン56に押し出す機能を有する。
【0053】
さらに、ステップS8に進んで、タンク部62内の水位WSが下限高さL以下であるか否か、すなわち、前記タンク部62内が空であるか否かが検出される。タンク部62内が略空であると検出されると(ステップS8中、YES)、ステップS9に進む。
【0054】
ステップS9では、第1及び第2開閉弁78a、78bが閉塞される一方、水電解装置12には、定格の電解電流が印加される。従って、図2に示すように、水電解システム10が通常運転時に移行し、上述したように、ステップS2移行の処理が行われる。
【0055】
この場合、第1の実施形態では、気液分離装置52のタンク部62内の水量が、規定上限量(上限高さH)に達した際、先ず、第1開閉弁78aが開放されて、前記タンク部62を気相脱圧ライン58に連通させている。これにより、タンク部62内の高圧水素は、気相脱圧ライン58に導入されて、前記タンク部62内の気相脱圧処理が施されている。
【0056】
このため、タンク部62内の内圧が低下し、例えば、大気圧近傍まで脱圧される。従って、タンク部62内の高圧水に溶存していた水素は、気化(発泡)して、気相脱圧ライン58に排出される。
【0057】
これにより、第2開閉弁78bが開放されて気液分離装置52から排水ライン56に排水される際、排水中の溶存水素が有効に減少されるとともに、前記排水ライン56に高圧水が排水されることを阻止することができる。
【0058】
このため、排水中の溶存水素が有効に減少されるとともに、前記排水中の水蒸気の発生も抑制することができる。従って、排水ライン56に配置されている、例えば、第2減圧弁74bの損傷を回避し、前記第2減圧弁74bの耐久性を向上させることが可能になる。
【0059】
これにより、簡単な構成及び工程で、排水ライン56に配置されるデバイス(第2減圧弁74b等)の耐久性を容易に向上させることができ、経済的且つ効率的な水電解処理が、安定して行われるという効果が得られる。
【0060】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る水電解システム90の概略構成説明図である。
【0061】
なお、第1の実施形態に係る水電解システム10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0062】
気液分離装置52を構成するタンク部62には、気相脱圧及び水電解装置脱圧を行うための脱圧ライン92が接続される。脱圧ライン92には、第1減圧弁74a及び第1開閉弁78aが配置される一方、第1の実施形態の水電解装置脱圧ライン60を用いていない。高圧水素導出配管54にのみ背圧弁66及び逆止弁68が配置され、水素配管50にのみ圧力計72が配置される。
【0063】
このように構成される水電解システム90の運転方法について、図7に示すフローチャートに沿って以下に説明する。
【0064】
水電解システム90では、第1及び第2開閉弁78a、78bが閉塞されることにより、水電解システム10と同様に、気液分離装置52による気液分離処理が施されて通常運転が行われる(ステップS11)。
【0065】
そして、ステップS12に進んで、システム停止判断がなされ、あるいは、タンク部62内の水位WSが上限高さH以上であると判断されると(ステップS12中、YES)、ステップS13に進む。このステップS13では、水電解装置12の印加電流の停止制御(微小電解による電解は継続する)及び第1開閉弁78aの開放処理が行われる。
【0066】
このため、タンク部62内の気相脱圧処理が行われ、圧力計72による検出圧力PT1が、設定圧力α以下になった際(ステップS14中、YES)、ステップS15に進む。このステップS15では、第2開閉弁78bが開放され、低圧となったタンク部62内の水が排水ライン56に排出される。
【0067】
さらに、タンク部62内の水面WSが下限高さL以下となると(ステップS16中、YES)、ステップS17に進み、電解が停止されるか否かの判断がなされる。電解が停止すると判断されると(ステップS17中、YES)、ステップS18に進み、第2開閉弁78bが閉塞される一方、第1開閉弁78aが開放される。
【0068】
これにより、電解停止が行われた水電解装置12内の圧力は、脱圧ライン92を介して低圧となり、この水電解装置12の残圧PT1が、設定圧力β以下(残圧なしと判断される圧力)となった際(ステップS19中、YES)、ステップS20に進む。このステップS20では、水電解装置12による水電解が完全に停止されて残圧PT1が除去された後、ステップS21に進んで、第1開閉弁78aが閉塞されてシステム停止が完了する(ステップS22)。
【0069】
一方、ステップS17では、電解が停止されない、すなわち、再度電解が開始されると判断されると(ステップS17中、NO)、ステップS23に進む。このステップS23では、第1及び第2開閉弁78a、78bが閉塞されるとともに、水電解装置12に定格の電解電流が印加される。さらに、ステップS11に戻って、通常運転が行われる。
【0070】
このように、第2の実施形態では、気液分離装置52の気相脱圧処理を行う際に、水電解装置12の残圧を脱圧する処理が同時に行われる他、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0071】
図8は、本発明の第3の実施形態に係る水電解システム100の概略構成説明図である。
【0072】
なお、第1の実施形態に係る水電解システム10及び第2の実施形態に係る水電解システム90と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0073】
水素配管50には、背圧弁はなく、第1逆止弁68aが配置される一方、高圧水素導出配管54には、背圧弁66及び第2逆止弁68bが配置される。
【0074】
このように構成される第3の実施形態では、実質的に、上記の第2の実施形態に係る水電解システム90と同様の運転制御が行われる。具体的には、気液分離装置52の気相脱圧処理を行う際には、必ず、水電解装置12の残圧脱圧処理も行われる。一方、水電解装置12の脱圧は、水電解装置脱圧ライン60を介して独立して行うことができる。従って、第3の実施形態では、上記の第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0075】
10、90、100…水電解システム 12…水電解装置
14…単位セル 24…電解電源
26…電解質膜・電極構造体 28…アノード側セパレータ
30…カソード側セパレータ 32…固体高分子電解質膜
34…アノード側給電体 36…カソード側給電体
38…水供給連通孔 40…排出連通孔
42…水素連通孔 44、46…流路
50…水素配管 52…気液分離装置
54…高圧水素導出配管 56…排水ライン
58…気相脱圧ライン 60…水電解装置脱圧ライン
62…タンク部 64…水位検出センサ
66、66a、66b…背圧弁 72、72a、72b…圧力計
74a、74b、74c…減圧弁 78a、78b、78c…開閉弁
80…コントローラ 92…脱圧ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を電気分解して酸素と前記酸素よりも高圧な高圧水素とを発生させる水電解装置と、
前記水電解装置から前記高圧水素を排出する水素配管に配設され、前記高圧水素に含まれる水分を分離する気液分離装置と、
前記気液分離装置から水が分離された前記高圧水素を導出する高圧水素導出配管と、
前記気液分離装置から水を排出する排水ラインと、
を備える水電解システムであって、
前記気液分離装置には、前記気液分離装置から前記排水ラインに排水を行う前に、前記気液分離装置内の脱気を行うための気相脱圧ラインが設けられることを特徴とする水電解システム。
【請求項2】
請求項1記載の水電解システムにおいて、前記気相脱圧ラインには、第1減圧弁及び第1開閉弁が配設されるとともに、
前記排水ラインには、第2減圧弁及び第2開閉弁が配設されることを特徴とする水電解システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の水電解システムにおいて、前記気液分離装置の上流側で前記水素配管から分岐する水電解装置脱圧ラインを備えることを特徴とする水電解システム。
【請求項4】
水を電気分解して酸素と前記酸素よりも高圧な高圧水素とを発生させる水電解装置と、
前記水電解装置から前記高圧水素を排出する水素配管に配設され、前記高圧水素に含まれる水分を分離する気液分離装置と、
前記気液分離装置から水が分離された前記高圧水素を導出する高圧水素導出配管と、
前記気液分離装置から水を排出する排水ラインと、
前記気液分離装置から前記排水ラインに排水を行う前に、前記気液分離装置内の脱気を行うための気相脱圧ラインと、
を備える水電解システムの運転方法であって、
前記気液分離装置内の水量が規定量以上であると判断された際、前記気液分離装置内の高圧水素を前記気相脱圧ラインに排出する気相脱圧工程と、
前記気液分離装置内の圧力が規定圧力以下であると判断された際、前記気液分離装置内の水を前記排水ラインに排出する排水工程と、
を有することを特徴とする水電解システムの運転方法。
【請求項5】
請求項4記載の運転方法において、前記気液分離装置内の水量が規定量以上であると判断された際、前記水電解装置に印加する電流を制限する電流制限工程を有することを特徴とする水電解システムの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−219293(P2012−219293A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83946(P2011−83946)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】