説明

水電解装置

【課題】各水通路に水を均等に分配することができ、前記水流路全体に前記水を均一且つ確実に供給して良好な水分解処理を行うことを可能にする。
【解決手段】水電解装置10は、アノード側セパレータ34を備え、前記アノード側セパレータ34には、水供給連通孔46及び排出連通孔48に連通する水流路54が設けられる。水流路54は、複数の水通路56、円弧状入口バッファ部58a及び円弧状出口バッファ部58bを備える。各水通路56の一端と円弧状入口バッファ部58aとは、複数の入口連結通路60aを介して連通するとともに、前記複数の入口連結通路60aは、前記円弧状入口バッファ部58aとの連結部位での接線に対して90度以上の角度に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質膜の両側に円形の給電体が設けられ、前記給電体にセパレータが積層されるとともに、一方の給電体と一方のセパレータとの間には、水を供給する水流路が形成され、他方の給電体と他方のセパレータとの間には、前記水が電気分解されて水素を得る水素流路が形成される水電解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、アノード側電極に燃料ガス(主に水素を含有するガス、例えば、水素ガス)が供給される一方、カソード側電極に酸化剤ガス(主に酸素を含有するガス、例えば、空気)が供給されることにより、直流の電気エネルギを得ている。
【0003】
一般的に、燃料ガスである水素ガスを製造するために、水電解装置(電気化学装置)が採用されている。この水電解装置は、水を分解して水素(及び酸素)を発生させるため、固体高分子電解質膜を用いている。固体高分子電解質膜の両面には、電極触媒層が設けられて電解質膜・電極構造体が構成されるとともに、前記電解質膜・電極構造体の両側には、給電体を配設してユニットが構成されている。すなわち、ユニットは、実質的には、上記の燃料電池と同様に構成されている。
【0004】
そこで、複数のユニットが積層された状態で、積層方向両端に電圧が付与されるとともに、アノード側給電体に水が供給される。このため、電解質膜・電極構造体のアノード側では、水が分解されて水素イオン(プロトン)が生成され、この水素イオンが固体高分子電解質膜を透過してカソード側に移動し、電子と結合して水素が製造される。一方、アノード側では、水素と共に生成された酸素が、余剰の水を伴ってユニットから排出される。
【0005】
この種の設備として、例えば、特許文献1に開示された水電解装置が知られている。この水電解装置は、図8に示すように、固体高分子電解質膜を円盤状の陽極給電板1及び陰極給電板で挟んだセル2を、分離板を介して複数個重合している。陽極給電板1は、ケーシングを構成するケーシングリング3に外嵌されている。
【0006】
陽極給電板1の電解質膜と接触しない側の面には、複数の溝4が互いに平行に設けられている。各溝4は、純水の流路を構成するとともに、発生する酸化剤ガスを流通させる流路も構成している。ケーシングリング3の内周面には、溝4に連通する周溝5が形成されるとともに、3つの貫通孔6a、6b及び6cが積層方向に貫通形成されている。
【0007】
純水供給用の貫通孔6aと周溝5との間、純水及び酸素ガス排出用の貫通孔6bと前記周溝5との間には、これらを連通するための通孔7a、7bが形成されている。水素ガス排出用の貫通孔6cは、貫通孔6b側に近接して設けられており、水の電気分解により陰極給電板に発生する水素が、前記貫通孔6cに導出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−95791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、水電解装置では、貫通孔6aから通孔7aを通って周溝5に供給された純水が、各溝4に分配される際、前記貫通孔6aから各溝4までの距離が異なっている。一方、各溝4から貫通孔6bまでの距離が異なるとともに、各溝4では、貫通孔6aから前記溝4までの距離と前記溝4から貫通孔6bまでの距離との合計距離が、それぞれ異なっている。例えば、貫通孔6a、6bに近接する溝4では、合計距離が最短になっている。
【0010】
このため、貫通孔6a、6bから各溝4までの圧力損失の差が大きくなり、各溝4への水の分配性が低下し易い。これにより、各溝4では、流量の差が増大してしまい、良好な水分解処理が遂行されないという問題がある。
【0011】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、各水通路に水を均等に分配することができ、水流路全体に前記水を均一且つ確実に供給して良好な水分解処理を行うことが可能な水電解装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、電解質膜の両側に円形の給電体が設けられ、前記給電体にセパレータが積層されるとともに、一方の給電体と一方のセパレータとの間には、水を供給する水流路が形成され、他方の給電体と他方のセパレータとの間には、前記水が電気分解されて水素を得る水素流路が形成される水電解装置に関するものである。
【0013】
この水電解装置は、セパレータの積層方向に延在し、水流路に水を供給する水供給連通孔と、前記セパレータの積層方向に延在し、前記水流路から残余の前記水を排出する排出連通孔とを備えている。
【0014】
そして、水流路は、水供給連通孔と排出連通孔とを繋ぐ仮想直線に交差する給電体面方向に延在し、給電体の面内に並列される複数の水通路と、前記給電体の外方を周回し、前記水供給連通孔に連通する円弧状入口バッファ部と、前記水通路と前記円弧状入口バッファ部とを連通する複数の入口連結通路とを有するとともに、前記複数の入口連結通路は、前記円弧状入口バッファ部との連結部位での接線に対して90度以上の角度に設定されている。
【0015】
また、複数の入口連結通路は、円弧状入口バッファ部との連結部位での接線に対してそれぞれ同一の角度に設定されることが好ましい。
【0016】
さらに、水流路は、給電体の外方を周回し、排出連通孔に連通する円弧状出口バッファ部と、水通路と前記円弧状出口バッファ部とを連通する複数の出口連結通路とを有し、前記複数の出口連結通路は、前記円弧状出口バッファ部との連結部位での接線に対して90度以上の角度に設定されることが好ましい。
【0017】
さらにまた、複数の出口連結通路は、円弧状出口バッファ部との連結部位での接線に対してそれぞれ同一の角度に設定されることが好ましい。
【0018】
また、各水通路は、水供給連通孔から入口連結通路までの距離と、出口連結通路から排出連通孔までの距離との合計が、同一の距離に設定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、水流路は、水供給連通孔と排出連通孔とを繋ぐ仮想直線に交差する方向に延在する複数の水通路を備えている。このため、水通路は、水供給連通孔からの距離が短尺化されても、排出連通孔までの距離が長尺化され、各水通路毎の圧力損失の差が良好に低減される。
【0020】
しかも、複数の水通路に連通する各入口連結通路は、円弧状入口バッファ部との連結部位での接線に対して90度以上の角度に設定されている。従って、円弧状入口バッファ部から各入口連結通路への水進入角度が大きくなり、前記入口連結通路に分岐する損失を低減させることができる。
【0021】
これにより、分岐損失が低減され、各水通路に水を均等に分配することが可能になり、水流路全体に前記水を均一且つ確実に供給して水分解処理を良好に遂行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る水電解装置の斜視説明図である。
【図2】前記水電解装置の一部断面側面図である。
【図3】前記水電解装置を構成する単位セルの分解斜視説明図である。
【図4】前記単位セルの、図3中、IV−IV線断面説明図である。
【図5】前記単位セルを構成するアノード側セパレータの正面説明図である。
【図6】第1の実施形態の圧力損失と比較例の圧力損失との説明図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る水電解装置を構成するアノード側セパレータの正面説明図である。
【図8】特許文献1に開示されている水電解装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る水電解装置(電気化学装置)10は、高圧水素製造装置を構成しており、複数の単位セル12が鉛直方向(矢印A方向)又は水平方向(矢印B方向)に積層された積層体14を備える。積層体14の積層方向一端には、ターミナルプレート16a、絶縁プレート18a及びエンドプレート20aが上方に向かって、順次、配設される。積層体14の積層方向他端には、同様にターミナルプレート16b、絶縁プレート18b及びエンドプレート20bが下方に向かって、順次、配設される。
【0024】
水電解装置10は、例えば、矢印A方向に延在する4本のタイロッド22を介して円盤形状のエンドプレート20a、20b間を一体的に締め付け保持する。4本のタイロッド22は、エンドプレート20a、20bの中心に対してそれぞれ等角度ずつ離間して配置される。
【0025】
なお、水電解装置10は、エンドプレート20a、20bを端板として含む箱状ケーシング(図示せず)により一体的に保持される構成を採用してもよい。また、水電解装置10は、全体として略円柱体形状を有している。
【0026】
図1に示すように、ターミナルプレート16a、16bの側部には、端子部24a、24bが外方に突出して設けられる。端子部24a、24bは、配線26a、26bを介して電源28に電気的に接続される。陽極(アノード)側である端子部24aは、電源28のプラス極に接続される一方、陰極(カソード)側である端子部24bは、前記電源28のマイナス極に接続される。
【0027】
図2及び図3に示すように、単位セル12は、略円盤状の電解質膜・電極構造体32と、この電解質膜・電極構造体32を挟持するアノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36とを備える。アノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36は、略円盤状を有するとともに、例えば、カーボン部材等で構成され、又は、鋼板、ステンレス鋼板、チタン板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属板をプレス成形して、あるいは切削加工した後に防食用の表面処理を施して構成される。
【0028】
電解質膜・電極構造体32は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜38と、前記固体高分子電解質膜38の両面に設けられる円形のアノード側給電体40及び円形のカソード側給電体42とを備える。固体高分子電解質膜38の周縁部は、アノード側給電体40及びカソード側給電体42の外周から外方に突出している。
【0029】
固体高分子電解質膜38の両面には、アノード電極触媒層40a及びカソード電極触媒層42aが形成される。アノード電極触媒層40aは、例えば、Ru(ルテニウム)系触媒を使用する一方、カソード電極触媒層42aは、例えば、白金触媒を使用する。
【0030】
アノード側給電体40及びカソード側給電体42は、例えば、球状アトマイズチタン粉末の焼結体(多孔質導電体)により構成される。アノード側給電体40及びカソード側給電体42は、研削加工後にエッチング処理される平滑表面部を設けるとともに、空隙率が10%〜50%、より好ましくは、20%〜40%の範囲内に設定される。
【0031】
図3に示すように、単位セル12の外周部には、セパレータ面方向外方に突出する第1突出部44a、第2突出部44b及び第3突出部44cが形成される。第1突出部44aには、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、第1流体である水(純水)を供給するための水供給連通孔46が設けられる。
【0032】
第2突出部44bには、矢印A方向に互いに連通して、反応により生成された酸素及び使用済みの水を排出するための排出連通孔48が設けられる。第3突出部44cには、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、反応により生成された水素(第2流体)を流すための水素連通孔50が設けられる。水供給連通孔46及び排出連通孔48は、断面長円形状を有するとともに、互いに点対称の位置に配置される。
【0033】
図3及び図4に示すように、アノード側セパレータ34には、水供給連通孔46に連通する供給通路52aと、排出連通孔48に連通する排出通路52bとが設けられる。アノード側セパレータ34の電解質膜・電極構造体32に向かう面34aには、供給通路52a及び排出通路52bに連通する水流路54が設けられる。
【0034】
図5に示すように、水流路54は、水供給連通孔46と排出連通孔48とを繋ぐ仮想直線L0に交差する給電体面方向(矢印L1方向)に延在し、アノード側給電体40の面内Hに並列される複数の水通路56と、前記アノード側給電体40の外方を周回し、前記水供給連通孔46に連通する円弧状入口バッファ部58aと、前記アノード側給電体40の外方を周回し、前記排出連通孔48に連通する円弧状出口バッファ部58bとを備える。
【0035】
各水通路56の一端と円弧状入口バッファ部58aとは、複数の入口連結通路60aを介して連通するとともに、各水通路56の他端と円弧状出口バッファ部58bとは、複数の出口連結通路60bを介して連通する。各水通路56は、水供給連通孔46から入口連結通路60aまでの距離S1a(S1b)と、出口連結通路60bから排出連通孔48までの距離S2a(S2b)との合計が、それぞれ同一の距離に設定される。
【0036】
複数の入口連結通路60aは、円弧状入口バッファ部58aとの連結部位での接線に対して90度以上の角度に設定される。第1の実施形態では、例えば、各入口連結通路60aは、それぞれ接線に対して90度の角度に設定される。
【0037】
複数の出口連結通路60bは、円弧状出口バッファ部58bとの連結部位での接線に対して90度以上の角度に設定される。第1の実施形態では、例えば、各出口連結通路60bは、それぞれ接線に対して90度の角度に設定される。
【0038】
図3及び図4に示すように、カソード側セパレータ36には、水素連通孔50に連通する排出通路62が設けられる。カソード側セパレータ36の電解質膜・電極構造体32に向かう面36aには、排出通路62に連通する水素流路64が形成される。この水素流路64は、カソード側給電体42の表面積に対応する範囲内に設けられるとともに、複数の流路溝や複数のエンボス等で構成される(図2及び図4参照)。
【0039】
アノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36の外周端部を周回して、シール部材66a、66bが一体化される。このシール部材66a、66bには、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材が用いられる。
【0040】
図3及び図4に示すように、カソード側セパレータ36の電解質膜・電極構造体32に向かう面36aには、水素流路64の外側を周回して第1シール溝68aが形成される。
【0041】
カソード側セパレータ36の面36aには、水供給連通孔46、排出連通孔48及び水素連通孔50の外側を周回して第2シール溝68b、第3シール溝68c及び第4シール溝68dが形成される。第1シール溝68a〜第4シール溝68dには、例えば、Oリングである第1シール部材70a〜第4シール部材70dが配設される。
【0042】
水素流路64と第1シール溝68aとは、複数、例えば4つの通路(開口部)72を介して連通する。通路72は、第1シール溝68aに対し、第1シール部材70aの配置位置よりも水素流路64側に近接する壁部(内側壁部)に開口する。通路72は、カソード側セパレータ36と固体高分子電解質膜38との境界部位を迂回して水素流路64と第1シール溝68aとを直接連通する。
【0043】
高圧水素連通孔である水素連通孔50と第4シール溝68dとは、1以上の通路(開口部)74を介して連通する。この通路74は、第4シール溝68dの内側壁部に開放される。通路74は、カソード側セパレータ36と固体高分子電解質膜38との境界部位を迂回して水素連通孔50と第4シール溝68dとを直接連通する。
【0044】
アノード側セパレータ34の電解質膜・電極構造体32に向かう面34aには、水流路54の外側を周回し、且つ第1シール溝68aに対向して第1シール溝76aが形成される。面34aには、水供給連通孔46、排出連通孔48及び水素連通孔50の外側を周回し、且つ第2シール溝68b、第3シール溝68c及び第4シール溝68dに対向して第2シール溝76b、第3シール溝76c及び第4シール溝76dが形成される。
【0045】
第1シール溝76a〜第4シール溝76dには、例えば、Oリングである第1シール部材78a〜第4シール部材78dが収容される。第4シール溝76dと水素連通孔50とは、1以上の通路(開口部)80を介して連通する。この通路80は、第4シール溝76dの内側壁部に開放される。通路80は、アノード側セパレータ34と固体高分子電解質膜38との境界部位を迂回して水素連通孔50と第4シール溝76dとを直接連通する。
【0046】
図1及び図2に示すように、エンドプレート20aには、水供給連通孔46、排出連通孔48及び水素連通孔50に連通する配管82a、82b及び82cが接続される。配管82cには、図示しないが、背圧弁(又は電磁弁)が設けられており、水素連通孔50に生成される水素の圧力を高圧に維持することができる。
【0047】
このように構成される水電解装置10の動作について、以下に説明する。
【0048】
図1に示すように、配管82aから水電解装置10の水供給連通孔46に水が供給されるとともに、ターミナルプレート16a、16bの端子部24a、24bに電気的に接続されている電源28を介して電圧が付与される。このため、図3に示すように、各単位セル12では、水供給連通孔46からアノード側セパレータ34の水流路54に水が供給され、この水がアノード側給電体40内に沿って移動する。
【0049】
従って、水は、アノード電極触媒層40aで電気により分解され、水素イオン、電子及び酸素が生成される。この陽極反応により生成された水素イオンは、固体高分子電解質膜38を透過してカソード電極触媒層42a側に移動し、電子と結合して水素が得られる。
【0050】
このため、カソード側セパレータ36とカソード側給電体42との間に形成される水素流路64に沿って水素が流動する。この水素は、水供給連通孔46よりも高圧に維持されており、水素連通孔50を流れて水電解装置10の外部に取り出し可能となる。一方、水流路54には、反応により生成した酸素と、使用済みの水とが流動しており、これらが排出連通孔48に沿って水電解装置10の外部に排出される。
【0051】
この場合、第1の実施形態では、図5に示すように、水流路54は、水供給連通孔46と排出連通孔48とを繋ぐ仮想直線L0に交差する方向(矢印L1方向)に延在する複数の水通路56を備えている。このため、水通路56は、水供給連通孔46からの距離S1aが短尺化されても、排出連通孔48までの距離S2aが長尺化され、各水通路56毎の圧力損失の差が、良好に低減される。
【0052】
特に、各水通路56は、水供給連通孔46から入口連結通路60aまでの距離S1a(S2b)と、出口連結通路60bから排出連通孔48までの距離S2a(S2b)との合計が、それぞれ同一の距離に設定されている。従って、各水通路56毎に圧力損失が均一化されるため、各水通路56における流量の差が有効に低減されるという利点がある。
【0053】
しかも、複数の入口連結通路60aは、円弧状入口バッファ部58aとの連結部位での接線に対して90度以上の角度に設定されている。このため、円弧状入口バッファ部58aから各入口連結通路60aへの水進入角度が大きくなり、前記入口連結通路60aに分岐する損失を低減させることができる。
【0054】
特に、第1の実施形態では、各入口連結通路60aは、それぞれ接線に対して90度の角度に設定されている。これにより、分岐損失の差が低減され、各水通路56に水を均等に分配することが可能になり、水流路54全体に前記水を均一且つ確実に供給して水分解処理を良好に遂行することができるという効果が得られる。
【0055】
また、第1の実施形態では、複数の出口連結通路60bは、円弧状出口バッファ部58bとの連結部位での接線に対して90度以上の角度に設定されている。このため、各出口連結通路60bから円弧状出口バッファ部58bへの水進入角度が大きくなり、前記円弧状出口バッファ部58bに合流する損失を低減させることが可能になる。
【0056】
特に、第1の実施形態では、各出口連結通路60bは、それぞれ接線に対して90度の角度に設定されている。これにより、合流損失の差が低減されるため、入口側に前記合流損失の差による影響を与えることがなく、各入口連結通路60aから各水通路56に水を均等に分配することができ、水流路54全体に前記水を均一且つ確実に供給して水分解処理を良好に遂行することが可能になる。
【0057】
図6には、第1の実施形態による水流路54全体の圧損と、比較例(特許文献1)による前記水流路54全体の圧損とが示されている。これにより、比較例では、連通孔に近接する中央側の分配圧損が大きく低下して水流路54全体の圧力損失が変動する一方、第1の実施形態では、前記水流路54全体の圧力損失が均一化されている。
【0058】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る水電解装置を構成するアノード側セパレータ90の正面説明図である。なお、第1の実施形態に係る水電解装置10を構成するアノード側セパレータ34と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0059】
アノード側セパレータ90には、水流路92が設けられるとともに、前記水流路92は、複数の水通路94、円弧状入口バッファ部96a及び円弧状出口バッファ部96bを備える。各水通路94の一端と円弧状入口バッファ部96aとは、複数の入口連結通路98aを介して連通するとともに、各水通路94の他端と円弧状出口バッファ部96bとは、複数の出口連結通路98bを介して連通する。
【0060】
複数の入口連結通路98aは、円弧状入口バッファ部96aとの連結部位での接線に対して90度以上の角度に設定される。第2の実施形態では、例えば、各入口連結通路98aは、それぞれ接線に対して120度の角度に設定される。
【0061】
複数の出口連結通路98bは、円弧状出口バッファ部96bとの連結部位での接線に対して90度以上の角度に設定される。第2の実施形態では、例えば、各出口連結通路98bは、それぞれ接線に対して120度の角度に設定される。
【0062】
このように構成される第2の実施形態では、各入口連結通路98aは、それぞれ接線に対して120度の角度に設定されるとともに、各出口連結通路98bは、それぞれ接線に対して120度の角度に設定されている。これにより、各水通路94に水を均等に分配することが可能になり、水流路92全体に前記水を均一且つ確実に供給して水分解処理を良好に遂行することができる等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0063】
10…水電解装置 12…単位セル
14…積層体 16a、16b…ターミナルプレート
18a、18b…絶縁プレート 20a、20b…エンドプレート
24a、24b…端子部 28…電源
32…電解質膜・電極構造体 34、90…アノード側セパレータ
36…カソード側セパレータ 38…固体高分子電解質膜
40…アノード側給電体 42…カソード側給電体
44a〜44c…突出部 46…水供給連通孔
48…排出連通孔 50…水素連通孔
54、92…水流路 56、94…水通路
58a、96a…円弧状入口バッファ部
58b、96b…円弧状出口バッファ部
60a、98a…入口連結通路 60b、98b…出口連結通路
62…排出通路 64…水素流路
74…通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の両側に円形の給電体が設けられ、前記給電体にセパレータが積層されるとともに、一方の給電体と一方のセパレータとの間には、水を供給する水流路が形成され、他方の給電体と他方のセパレータとの間には、前記水が電気分解されて水素を得る水素流路が形成される水電解装置であって、
前記セパレータの積層方向に延在し、前記水流路に前記水を供給する水供給連通孔と、
前記セパレータの積層方向に延在し、前記水流路から残余の前記水を排出する排出連通孔と、
を備え、
前記水流路は、前記水供給連通孔と前記排出連通孔とを繋ぐ仮想直線に交差する給電体面方向に延在し、前記給電体の面内に並列される複数の水通路と、
前記給電体の外方を周回し、前記水供給連通孔に連通する円弧状入口バッファ部と、
前記水通路と前記円弧状入口バッファ部とを連通する複数の入口連結通路と、
を有するとともに、
前記複数の入口連結通路は、前記円弧状入口バッファ部との連結部位での接線に対して90度以上の角度に設定されることを特徴とする水電解装置。
【請求項2】
請求項1記載の水電解装置において、前記複数の入口連結通路は、前記円弧状入口バッファ部との連結部位での接線に対してそれぞれ同一の角度に設定されることを特徴とする水電解装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の水電解装置において、前記水流路は、前記給電体の外方を周回し、前記排出連通孔に連通する円弧状出口バッファ部と、
前記水通路と前記円弧状出口バッファ部とを連通する複数の出口連結通路と、
を有し、
前記複数の出口連結通路は、前記円弧状出口バッファ部との連結部位での接線に対して90度以上の角度に設定されることを特徴とする水電解装置。
【請求項4】
請求項3記載の水電解装置において、前記複数の出口連結通路は、前記円弧状出口バッファ部との連結部位での接線に対してそれぞれ同一の角度に設定されることを特徴とする水電解装置。
【請求項5】
請求項3又は4記載の水電解装置において、各水通路は、前記水供給連通孔から前記入口連結通路までの距離と、前記出口連結通路から前記排出連通孔までの距離との合計が、同一の距離に設定されることを特徴とする水電解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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