説明

水電解装置

【課題】セパレータの押し付け力付与面積を有効に削減することができ、押し付け力付与装置の小型化が容易に図られるとともに、所望のシール面圧を確保することを可能にする。
【解決手段】水電解装置10を構成する単位セル12は、電解質膜・電極構造体32をアノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36により挟持する。カソード側セパレータ36には、第1シール溝68aの外方に位置し且つ固体高分子電解質膜38に対向する第1セパレータ平面部36aaに、前記固体高分子電解質膜38により閉塞される凹部70が形成される。第1セパレータ平面部36aaの凹部70以外の平坦部と、アノード側セパレータ34の第2セパレータ平面部34aaとは、固体高分子電解質膜38を挟んで積層方向の荷重を受ける受圧部72を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質膜の両側に給電体が設けられ、前記給電体にセパレータが積層されるとともに、一対の前記セパレータ間で前記電解質膜の周縁部を挟持する水電解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、燃料ガスである水素ガスを製造するために、水電解装置が採用されている。この水電解装置は、水を分解して水素(及び酸素)を発生させるため、固体高分子電解質膜を用いている。固体高分子電解質膜の両面には、電極触媒層が設けられて電解質膜・電極構造体が構成されるとともに、前記電解質膜・電極構造体の両側には、給電体を配設してユニットが構成されている。
【0003】
そこで、複数のユニットが積層された状態で、積層方向両端に電圧が付与されるとともに、アノード側給電体に水が供給される。このため、電解質膜・電極構造体のアノード側では、水が分解されて水素イオン(プロトン)が生成され、この水素イオンが固体高分子電解質膜を透過してカソード側に移動し、電子と結合して水素が製造される。一方、アノード側では、水素と共に生成された酸素が、余剰の水を伴ってユニットから排出される。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されている水電解装置では、図8に示すように、膜電極接合体1の両面に給電体2a、2bを配して構成された単位セルと、陽極室3a及び陰極室3bを備えたセパレータ4とを積層するとともに、両端に陽極側端板4aと陰極側端板4bとを配して構成されている。
【0005】
膜電極接合体1は、高分子電解質膜1bの両面に陽極触媒層1a及び陰極触媒層1cを備えるとともに、前記高分子電解質膜1bが外部に突出している。陽極室3aと陰極室3bとに導入された純水は、電気分解により前記陽極室3aで酸素ガスが発生する一方、前記陰極室3bで水素ガスが発生している。
【0006】
陽極室3aは、膜電極接合体1の高分子電解質膜1bに対向して形成された溝5に配設された陽極側シールパッキング6aによりガスシールされている。陰極室3bは、高分子電解質膜1bに対向してパッキング溝5に配設された陰極側シールパッキング6bによりガスシールされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−115860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1では、発生ガスの圧力が高くなって高圧運転になり易い。このため、高分子電解質膜1bが高面圧で押し付けられ、特に、陰極側端板4bでは、陰極側シールパッキング6bによりシールされている部位7に腐食が発生し易いという問題がある。
【0009】
しかも、高圧運転では、高圧シールを行うために、単位セルの積層方向に付与される押し付け圧力が相当に大きくなる。その際、セパレータ4、陽極側端板4a及び陰極側端板4bでは、押し付け力付与面積(付与面圧面積)が大きくなり易く、耐圧強度を維持するために、板厚が増加するという問題がある。
【0010】
その上、水電解装置全体には、外部から大きな押し付け圧力を付与する必要があり、押し付け力付与装置が相当に大型化する。これにより、設備全体のコンパクト化を容易に図ることができず、しかも、経済的ではないという問題がある。
【0011】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、セパレータの押し付け力付与面積を有効に削減することができ、押し付け力付与装置の小型化が容易に図られるとともに、所望のシール面圧を確保することが可能な水電解装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る水電解装置は、電解質膜の両側に設けられる給電体にセパレータが積層され、一対の前記セパレータ間で前記電解質膜の周縁部を挟持するとともに、一方の前記セパレータには、前記給電体の外方を周回して第1シール部材を配設するための第1シール部が形成され、且つ、他方の前記セパレータには、他方の前記給電体の外方を周回して第2シール部材を配設するための第2シール部が形成され、前記第1シール部と前記第2シール部とは、前記セパレータの積層方向に対し前記電解質膜を挟んで互いに異なる位置に設定されている。
【0013】
そして、少なくとも一方のセパレータには、第1シール部の外方に位置し且つ電解質膜に対向する第1セパレータ平面部に、前記電解質膜より閉塞される凹部が形成されるとともに、前記第1セパレータ平面部の前記凹部以外の平坦部と、他方のセパレータの前記第1セパレータ平面部に対向する第2セパレータ平面部とは、前記電解質膜を挟んで積層方向の荷重を受ける受圧部を構成している。
【0014】
また、水電解装置は、水を電気分解して酸素と常圧よりも高圧な水素とを生成する一方、一対のセパレータには、前記水を積層方向に流通させる水供給連通孔の外方を周回して第3シール部材を配設するための第3シール部と、未反応の前記水及び前記酸素を前記積層方向に流通させる排出連通孔の外方を周回して第4シール部材を配設するための第4シール部と、前記水素を前記積層方向に流通させる水素連通孔の外方を周回して第5シール部材を配設するための第5シール部とが形成されるとともに、少なくとも前記第1セパレータ平面又は第2セパレータ平面には、第1シール部と前記第3シール部、前記第4シール部及び前記第5シール部との間に位置して凹部が形成されることが好ましい。
【0015】
さらに、給電体は、円形状を有しており、水供給連通孔及び排出連通孔は、水素連通孔よりも開口断面積が大きく設定されるとともに、前記水供給連通孔と前記排出連通孔とは、セパレータの対称位置に配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1セパレータ平面部に、電解質膜により閉塞される凹部が形成されるとともに、前記第1セパレータ平面部の前記凹部以外の平坦部と、第2セパレータ平面部とは、前記解質膜を挟んで積層方向の荷重を受ける受圧部を構成している。
【0017】
このため、受圧部における押し付け力付与面積を有効に削減することができる。これにより、外部の押し付け力付与装置の小型化が容易に図られるとともに、所望のシール面圧を確保することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る水電解装置の斜視説明図である。
【図2】前記水電解装置の一部断面側面図である。
【図3】前記水電解装置を構成する単位セルの分解斜視説明図である。
【図4】前記単位セルの正面説明図である。
【図5】前記単位セルの、図3中、V−V線断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る水電解装置を構成する単位セルの断面説明図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る水電解装置を構成する単位セルの断面説明図である。
【図8】特許文献1に開示されている水電解装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る水電解装置10は、高圧水素製造装置を構成しており、複数の単位セル12が鉛直方向(矢印A方向)又は水平方向(矢印B方向)に積層された積層体14を備える。積層体14の積層方向一端には、ターミナルプレート16a、絶縁プレート18a及びエンドプレート20aが上方に向かって、順次、配設される。積層体14の積層方向他端には、同様にターミナルプレート16b、絶縁プレート18b及びエンドプレート20bが下方に向かって、順次、配設される。
【0020】
水電解装置10は、例えば、矢印A方向に延在する4本のタイロッド22を介して円盤形状のエンドプレート20a、20b間を一体的に締め付け保持する。なお、水電解装置10は、エンドプレート20a、20bを端板として含む箱状ケーシング(図示せず)により一体的に保持される構成を採用してもよい。また、水電解装置10は、全体として略円柱体形状を有しているが、立方体形状等の種々の形状に設定可能である。
【0021】
図1に示すように、ターミナルプレート16a、16bの側部には、端子部24a、24bが外方に突出して設けられる。端子部24a、24bは、配線26a、26bを介して電源28に電気的に接続される。陽極(アノード)側である端子部24aは、電源28のプラス極に接続される一方、陰極(カソード)側である端子部24bは、前記電源28のマイナス極に接続される。
【0022】
図2及び図3に示すように、単位セル12は、略円盤状の電解質膜・電極構造体32と、この電解質膜・電極構造体32を挟持するアノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36とを備える。アノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36は、略円盤状を有するとともに、例えば、カーボン部材等で構成され、又は、鋼板、ステンレス鋼板、チタン板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属板をプレス成形して、あるいは切削加工した後に防食用の表面処理を施して構成される。
【0023】
電解質膜・電極構造体32は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜38と、前記固体高分子電解質膜38の両面に設けられる円形状のアノード側給電体40及びカソード側給電体42とを備える。固体高分子電解質膜38の周縁部は、アノード側給電体40及びカソード側給電体42の外周から外方に突出している。
【0024】
固体高分子電解質膜38の両面には、アノード電極触媒層40a及びカソード電極触媒層42aが形成される。アノード電極触媒層40aは、例えば、Ru(ルテニウム)系触媒を使用する一方、カソード電極触媒層42aは、例えば、白金触媒を使用する。
【0025】
アノード側給電体40及びカソード側給電体42は、例えば、球状アトマイズチタン粉末の焼結体(多孔質導電体)により構成される。アノード側給電体40及びカソード側給電体42は、研削加工後にエッチング処理される平滑表面部を設けるとともに、空隙率が10%〜50%、より好ましくは、20%〜40%の範囲内に設定される。
【0026】
図3に示すように、単位セル12の外周部には、セパレータ面方向外方に突出する第1突出部44a、第2突出部44b及び第3突出部44cが形成される。第1突出部44aには、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、第1流体である水(純水)を供給するための水供給連通孔46が設けられる。
【0027】
第2突出部44bには、矢印A方向に互いに連通して、反応により生成された酸素及び使用済みの水を排出するための排出連通孔48が設けられる。第3突出部44cには、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、反応により生成された水素を流すための水素連通孔50が設けられる。
【0028】
図4に示すように、水供給連通孔46及び排出連通孔48は、断面長円形状を有するとともに、互いに点対称の位置に配置される。水供給連通孔46と排出連通孔48とを繋ぐ仮想直線L1は、単位セル12の中心Oを通るとともに、この仮想直線L1に直交し且つ中心Oを通る仮想直交線L2上には、断面円形状の水素連通孔50が配置される。水供給連通孔46及び排出連通孔48は、水素連通孔50よりも開口断面積が大きく設定される。
【0029】
図3及び図5に示すように、アノード側セパレータ34には、水供給連通孔46に連通する供給通路52aと、排出連通孔48に連通する排出通路52bとが設けられる。アノード側セパレータ34の電解質膜・電極構造体32に向かう面34aには、供給通路52a及び排出通路52bに連通する第1流路54が設けられる。この第1流路54は、アノード側給電体40の表面積に対応する範囲内に設けられるとともに、複数の流路溝や複数のエンボス等で構成される(図2及び図5参照)。
【0030】
図3及び図5に示すように、カソード側セパレータ36には、水素連通孔50に連通する排出通路56が設けられる。カソード側セパレータ36の電解質膜・電極構造体32に向かう面36aには、排出通路56に連通する第2流路58が形成される。この第2流路58は、カソード側給電体42の表面積に対応する範囲内に設けられるとともに、複数の流路溝や複数のエンボス等で構成される(図2及び図5参照)。
【0031】
アノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36の外周端部を周回して、シール部材60a、60bが一体化される。このシール部材60a、60bには、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材が用いられる。
【0032】
図3及び図5に示すように、アノード側セパレータ34の電解質膜・電極構造体32に向かう面34aには、第1流路54及びアノード側給電体40の外方を周回して第2シール部材62aを配設するための第2シール溝(第2シール部)64aが形成される。
【0033】
面34aには、水供給連通孔46、排出連通孔48及び水素連通孔50の外側を周回して、第3シール部材62b、第4シール部材62c及び第5シール部材62dを配置するための第3シール溝(第3シール部)64b、第4シール溝(第4シール部)64c及び第5シール溝(第5シール部)64dが形成される。第2シール部材62a〜第5シール部材62dは、例えば、Oリングである。
【0034】
カソード側セパレータ36の電解質膜・電極構造体32に向かう面36aには、第2流路58及びカソード側給電体42の外方を周回して、第1シール部材66aを配設するための第1シール溝(第1シール部)68aが形成される。
【0035】
図3及び図5に示すように、面36aには、水供給連通孔46、排出連通孔48及び水素連通孔50の外側を周回して、第3シール部材66b、第4シール部材66c及び第5シール部材66dを配置するための第3シール溝(第3シール部)68b、第4シール溝(第4シール部)68c及び第5シール溝(第5シール部)68dが形成される。第1シール部材66a、第3シール部材66b〜第5シール部材66dは、例えば、Oリングである。
【0036】
アノード側給電体40の外方を周回する第2シール溝64aと、カソード側給電体42の外方を周回する第1シール溝68aとは、セパレータ積層方向(矢印A方向)に対し固体高分子電解質膜38を挟んで互いに異なる位置に設定される。
【0037】
水素連通孔50の外方を周回する第5シール溝64dと前記水素連通孔50の外方を周回する第5シール溝68dとは、矢印A方向に対し固体高分子電解質膜38を挟んで互いに異なる位置に設定される。
【0038】
カソード側セパレータ36には、第1シール溝68aの外方に位置し且つ固体高分子電解質膜38に対向する第1セパレータ平面部36aaに、前記固体高分子電解質膜38により閉塞される凹部70が形成される。凹部70は、略リング状を有するとともに、第1シール溝68aと第3シール溝68b、第4シール溝68c及び第5シール溝68dとの間に位置して形成される。
【0039】
第1セパレータ平面部36aaの凹部70以外の平坦部と、アノード側セパレータ34の前記第1セパレータ平面部36aaに対向する第2セパレータ平面部34aaとは、固体高分子電解質膜38を挟んで積層方向の荷重を受ける受圧部72を構成する。受圧部72は、積層方向に対して、第5シール溝68dと第2シール溝64aとの距離Hに設定されるとともに、凹部70は、前記距離H内の所定の寸法範囲に形成される。
【0040】
図1及び図2に示すように、エンドプレート20aには、水供給連通孔46、排出連通孔48及び水素連通孔50に連通する配管76a、76b及び76cが接続される。配管76cには、図示しないが、背圧弁(又は電磁弁)が設けられており、水素連通孔50に生成される水素の圧力を高圧に維持することができる。エンドプレート20a、20b間には、図示しない押し付け力付与装置により押し付け力が付与され、この状態で、前記エンドプレート20a、20bがタイロッド22を介して締め付けられる。
【0041】
このように構成される水電解装置10の動作について、以下に説明する。
【0042】
図1に示すように、配管76aから水電解装置10の水供給連通孔46に水が供給されるとともに、ターミナルプレート16a、16bの端子部24a、24bに電気的に接続されている電源28を介して電圧が付与される。このため、図3に示すように、各単位セル12では、水供給連通孔46からアノード側セパレータ34の第1流路54に水が供給され、この水がアノード側給電体40内に沿って移動する。
【0043】
従って、水は、アノード電極触媒層40aで電気により分解され、水素イオン、電子及び酸素が生成される。この陽極反応により生成された水素イオンは、固体高分子電解質膜38を透過してカソード電極触媒層42a側に移動し、電子と結合して水素が得られる。
【0044】
このため、カソード側セパレータ36とカソード側給電体42との間に形成される第2流路58に沿って水素が流動する。この水素は、水供給連通孔46よりも高圧に維持されており、水素連通孔50を流れて水電解装置10の外部に取り出し可能となる。一方、第1流路54には、反応により生成した酸素と、使用済みの水とが流動しており、これらが排出連通孔48に沿って水電解装置10の外部に排出される。
【0045】
この場合、第1の実施形態では、図5に示すように、カソード側セパレータ36には、第1シール溝68aの外方に位置し且つ固体高分子電解質膜38に対向する第1セパレータ平面部36aaに、前記固体高分子電解質膜38により閉塞される凹部70が形成されている。そして、第1セパレータ平面部36aaの凹部70以外の平坦部と、アノード側セパレータ34の前記第1セパレータ平面部36aaに対向する第2セパレータ平面部34aaとは、固体高分子電解質膜38を挟んで積層方向の荷重を受ける受圧部72を構成している。
【0046】
このため、受圧部72では、押し付け力付与面積(付与面圧面積)を有効に削減することができる。特に、第2流路58に高圧水素が生成される高圧水素製造装置である水電解装置10では、高圧シールを行うために、単位セル12ルの積層方向に付与される押し付け圧力が相当に大きくなり易い。
【0047】
ここで、第1の実施形態では、上記のように受圧部72の押し付け力付与面積が有効に削減されるため、外部の押し付け力付与装置(図示せず)の小型化が容易に図られるとともに、所望のシール面圧を確保することが可能になるという効果が得られる。
【0048】
さらに、凹部70は、積層方向に対して、第5シール溝68dと第2シール溝64aとの距離H内に形成されており、第2シール部材62a〜第5シール部材62dと積層方向に重なり合うことがない。従って、シール不良の発生を良好に阻止することができる。
【0049】
さらにまた、図4に示すように、水供給連通孔46と排出連通孔48とは、点対称の位置に配置されるとともに、前記水供給連通孔46と前記排出連通孔48とを繋ぐ仮想直線L1に直交する仮想直交線L2上に、水素連通孔50が設けられている。このため、水素連通孔50に高圧水素が導出されることにより、アノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36に反力が作用する際、水供給連通孔46と排出連通孔48とに前記反力が均等に分散される。
【0050】
しかも、水供給連通孔46及び排出連通孔48は、水素連通孔50よりも開口断面積が大きく設定されている。従って、単位セル12は、水供給連通孔46のシール構造及び排出連通孔48のシール構造により、安定した状態で、良好なシール機能を有することができる。
【0051】
これにより、簡単な構成で、比較的低圧(常圧)な水供給連通孔46と排出連通孔48とのシール圧を均等に維持することができ、シール性能の低下を可及的に阻止することが可能になるという効果が得られる。
【0052】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る水電解装置80を構成する単位セル82の断面説明図である。
【0053】
なお、第1の実施形態に係る水電解装置10を構成する単位セル12と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3の実施形態においても同様に、その詳細な説明は省略する。
【0054】
単位セル82は、電解質膜・電極構造体32を挟持するアノード側セパレータ84及びカソード側セパレータ86を備える。アノード側セパレータ84には、第2シール溝64aの外方に位置し且つ固体高分子電解質膜38に対向する第2セパレータ平面部84aaに、前記固体高分子電解質膜38により閉塞される凹部88が形成される。凹部88は、略リング状を有するとともに、第2シール溝64aと第3シール溝64b、第4シール溝64c及び第5シール溝64dとの間に位置して形成される。
【0055】
第2セパレータ平面部84aaの凹部88以外の平坦部と、カソード側セパレータ86の前記第2セパレータ平面部84aaに対向する第1セパレータ平面部86aaとは、固体高分子電解質膜38を挟んで積層方向の荷重を受ける受圧部90を構成する。凹部88は、積層方向に対して、第5シール溝68dと第2シール溝64aとの距離H内の所定の寸法範囲に形成される。
【0056】
このように構成される第2の実施形態では、第2セパレータ平面部84aaの凹部88以外の平坦部と、カソード側セパレータ86の前記第2セパレータ平面部84aaに対向する第1セパレータ平面部86aaとは、固体高分子電解質膜38を挟んで積層方向の荷重を受ける受圧部90を構成している。
【0057】
これにより、受圧部90の押し付け力付与面積が有効に削減されるため、外部の押し付け力付与装置(図示せず)の小型化が容易に図られるとともに、所望のシール面圧を確保することが可能になる等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0058】
図7は、本発明の第3の実施形態に係る水電解装置100を構成する単位セル102の断面説明図である。
【0059】
単位セル102は、電解質膜・電極構造体32を挟持するアノード側セパレータ104及びカソード側セパレータ106を備える。カソード側セパレータ106には、第1シール溝68aの外方に位置し且つ固体高分子電解質膜38に対向する第1セパレータ平面部106aaに、前記固体高分子電解質膜38により閉塞される凹部70が形成される。
【0060】
アノード側セパレータ104には、第2シール溝64aの外方に位置し且つ固体高分子電解質膜38に対向する第2セパレータ平面部104aaに、前記固体高分子電解質膜38により閉塞される凹部88が形成される。第1セパレータ平面部106aaの凹部70以外の平坦部と、第2セパレータ平面部104aaの凹部88以外の平坦部とは、固体高分子電解質膜38を挟んで積層方向の荷重を受ける受圧部108を構成する。
【0061】
このように構成される第3の実施形態では、上記の第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0062】
10、80、100…水電解装置 12、82、102…単位セル
14…積層体 16a、16b…ターミナルプレート
18a、18b…絶縁プレート 20a、20b…エンドプレート
24a、24b…端子部 28…電源
32…電解質膜・電極構造体 34、84、104…アノード側セパレータ
34aa、36aa、84aa、86aa、104aa、106aa…セパレータ平面部
36、86、106…カソード側セパレータ
38…固体高分子電解質膜 40…アノード側給電体
42…カソード側給電体 44a〜44c…突出部
46…水供給連通孔 48…排出連通孔
50…水素連通孔 54、58…流路
62a〜62d、66a〜66d…シール部材
64a〜64d、68a〜68d…シール溝
70、88…凹部 72、90、108…受圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の両側に設けられる給電体にセパレータが積層され、一対の前記セパレータ間で前記電解質膜の周縁部を挟持するとともに、一方の前記セパレータには、前記給電体の外方を周回して第1シール部材を配設するための第1シール部が形成され、且つ、他方の前記セパレータには、他方の前記給電体の外方を周回して第2シール部材を配設するための第2シール部が形成され、前記第1シール部と前記第2シール部とは、前記セパレータの積層方向に対し前記電解質膜を挟んで互いに異なる位置に設定される水電解装置であって、
少なくとも一方の前記セパレータには、前記第1シール部の外方に位置し且つ前記電解質膜に対向する第1セパレータ平面部に、前記電解質膜により閉塞される凹部が形成されるとともに、
前記第1セパレータ平面部の前記凹部以外の平坦部と、他方の前記セパレータの前記第1セパレータ平面部に対向する第2セパレータ平面部とは、前記電解質膜を挟んで前記積層方向の荷重を受ける受圧部を構成することを特徴とする水電解装置。
【請求項2】
請求項1記載の水電解装置において、前記水電解装置は、水を電気分解して酸素と常圧よりも高圧な水素とを生成する一方、
前記一対のセパレータには、前記水を前記積層方向に流通させる水供給連通孔の外方を周回して第3シール部材を配設するための第3シール部と、
未反応の前記水及び前記酸素を前記積層方向に流通させる排出連通孔の外方を周回して第4シール部材を配設するための第4シール部と、
前記水素を前記積層方向に流通させる水素連通孔の外方を周回して第5シール部材を配設するための第5シール部と、
が形成されるとともに、
少なくとも前記第1セパレータ平面又は前記第2セパレータ平面には、前記第1シール部と前記第3シール部、前記第4シール部及び前記第5シール部との間に位置して前記凹部が形成されることを特徴とする水電解装置。
【請求項3】
請求項2記載の水電解装置において、前記給電体は、円形状を有しており、
前記水供給連通孔及び前記排出連通孔は、前記水素連通孔よりも開口断面積が大きく設定されるとともに、
前記水供給連通孔と前記排出連通孔とは、前記セパレータの対称位置に配置されることを特徴とする水電解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−149075(P2011−149075A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12705(P2010−12705)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】