説明

水電解装置

【課題】簡単且つ経済的に構成するとともに、良好なシール性と位置決め機能とを確保することを可能にする。
【解決手段】水電解装置10を構成する単位セル12は、電解質膜・電極構造体32と、この電解質膜・電極構造体32を挟持するアノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36とを備える。アノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36には、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、反応により生成された高圧水素を流すための水素排出連通孔50cが設けられる。水素排出連通孔50cには、前記水素排出連通孔50cをシールし且つアノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36の位置決めを行う円管状の絶縁性管部材70が配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質膜の両側に電解用給電体が配設される電解ユニットと、セパレータとが、複数積層されるとともに、水を電気分解して酸素及び水素が生成される水電解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、燃料電池を発電させるための燃料ガスとして、水素ガスが使用されている。一般的に、水素ガスを製造する際に、水電解装置が採用されている。この水電解装置は、水を電気分解して水素(及び酸素)を発生させるため、固体高分子電解質膜を用いている。固体高分子電解質膜の両面には、電極触媒層が設けられて電解質膜・電極構造体が構成されるとともに、前記電解質膜・電極構造体の両側には、それぞれ給電体を配設して電解ユニットが構成されている。
【0003】
そこで、電解ユニットとセパレータとが複数積層された状態で、積層方向両端に電圧が付与されるとともに、アノード側の給電体に水が供給される。このため、電解質膜・電極構造体のアノード側では、水が分解されて水素イオン(プロトン)が生成され、この水素イオンが固体高分子電解質膜を透過してカソード側に移動し、電子と結合して水素が製造される。一方、アノード側では、水素と共に生成された酸素が、余剰の水を伴って電解ユニットから排出される。
【0004】
この種の水電解装置として、例えば、特許文献1に開示されている固体高分子電解質水電解装置が知られている。この固体高分子電解質水電解装置は、図8に示すように、円形の固体高分子電解質膜1を円盤状の陽極給電板2a及び陰極給電板2bで挟んでなるセル3を備えるとともに、前記セル3が分離板4を介して複数個重合して構成されている。
【0005】
上記の重合体両端側には、図示しないが、内側から順に端子を具備する給電板、絶縁板を介して円盤状のフランジが配置されるとともに、ボルト及びナットによって、これらが積層方向に締め付けられている。
【0006】
陽極給電板2aの外周面には、ケーシングリング5aが嵌装されるとともに、前記ケーシングリング5aにおける固体高分子電解質膜1と接触しない側の面には、パッキン6aが当接している。陰極給電板2bの外周面には、ケーシングリング5bが嵌装されるとともに、前記ケーシングリング5bにおける固体高分子電解質膜1と接触しない側の面には、パッキン6bが当接している。
【0007】
固体高分子電解質膜1、ケーシングリング5a、5b、パッキン6a、6b及び分離板4の外周縁部には、電解用純水を供給するための孔部7a、電解によって生成される酸素を純水と共に排出するための孔部7b、及び電解によって生成される水素を排出するための孔部7cが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−95791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記の固体高分子電解質水電解装置では、連通孔である孔部7a、7b及び7cをシールするために、固体高分子電解質膜1の端縁面とケーシングリング5a、5bの端縁面との間に、パッキン6a、6bが介装されてシールする、所謂、面シール方式が採用されている。
【0010】
従って、水素や酸素がセル3の外部に漏れることを確実に阻止するために、ケーシングリング5a、5bの加工公差を相当に厳しく設定する必要がある。具体的には、ケーシングリング5a、5bにおいて、固体高分子電解質膜1に接する面の平行度、平面度及び表面粗さを厳しく設定しなければならず、コストの高騰及び加工作業の繁雑化が惹起されるという問題がある。
【0011】
しかも、固体高分子電解質水電解装置を構成する各部品同士を、正確に位置決めする必要がある。このため、通常、専用の位置決め装置が用いられており、設備コストが高騰するという問題がある。
【0012】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、簡単且つ経済的に構成するとともに、良好なシール性と位置決め機能とを確保することが可能な水電解装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、電解質膜の両側に電解用給電体が配設される電解ユニットと、セパレータとが、複数積層されるとともに、水を電気分解して酸素及び水素が生成される水電解装置に関するものである。
【0014】
この水電解装置では、セパレータには、水を積層方向に流通させる水供給連通孔、生成された酸素を前記積層方向に流通させる酸素排出連通孔、及び生成された水素を前記積層方向に流通させる水素排出連通孔が、電解用給電体の外側に形成されている。そして、少なくとも水素排出連通孔には、前記水素排出連通孔をシールし且つセパレータの位置決めを行う絶縁性管部材が配設されている。
【0015】
また、この水電解装置では、電解質膜は、少なくとも水素排出連通孔より内側で終端するとともに、前記電解質膜の端面には、絶縁性管部材を挿通させ且つ該電解質膜よりも肉薄な絶縁シートが連結されることが好ましい。
【0016】
さらに、この水電解装置では、電解質膜は、少なくとも水素排出連通孔より内側で終端するとともに、前記電解質膜を挟んで対向する一対のセパレータの各端縁部には、絶縁性管部材を挿通し且つ該電解質膜の終端位置より外側に位置する面に、絶縁コート層が設けられることが好ましい。
【0017】
さらにまた、この水電解装置では、水を電気分解して酸素及び前記酸素よりも高圧な水素を生成することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、水素排出連通孔に絶縁性管部材が配設されるだけで、前記水素排出連通孔が良好にシールされるとともに、セパレータの位置決めが容易に行われる。これにより、シール面の平行度、平面度及び表面粗さを厳しく設定する必要がなく、セパレータを簡単且つ経済的に構成するとともに、良好なシール性と位置決め機能とを確保することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る水電解装置の斜視説明図である。
【図2】前記水電解装置の一部断面側面図である。
【図3】前記水電解装置を構成する単位セルの分解斜視説明図である。
【図4】前記単位セルの、図3中、IV−IV線断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る水電解装置を構成する単位セルの断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る水電解装置を構成する単位セルの分解斜視説明図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る水電解装置を構成する単位セルの断面図である。
【図8】特許文献1に開示されている固体高分子電解質水電解装置の分解斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る水電解装置10は、複数の単位セル12が鉛直方向(矢印A方向)又は水平方向(矢印B方向)に積層された積層体14を備える。
【0021】
積層体14の積層方向一端(上端)には、ターミナルプレート16a、絶縁プレート18a及びエンドプレート20aが上方に向かって、順次、配設される。積層体14の積層方向他端(下端)には、同様にターミナルプレート16b、絶縁プレート18b及びエンドプレート20bが下方に向かって、順次、配設される。
【0022】
水電解装置10は、例えば、矢印A方向に延在する4本のタイロッド22を介して円盤形状のエンドプレート20a、20b間を一体的に締め付け保持する。なお、水電解装置10は、エンドプレート20a、20bを端板として含む箱状ケーシング(図示せず)により一体的に保持される構成を採用してもよい。また、水電解装置10は、全体として略円柱体形状を有しているが、立方体形状等の種々の形状に設定可能である。
【0023】
図1に示すように、ターミナルプレート16a、16bの側部には、端子部24a、24bが外方に突出して設けられる。端子部24a、24bは、配線26a、26bを介して電解電源28に電気的に接続される。
【0024】
図2〜図4に示すように、単位セル12は、略円盤状の電解質膜・電極構造体(電解ユニット)32と、この電解質膜・電極構造体32を挟持するアノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36とを備える。アノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36は、略円盤状を有するとともに、例えば、カーボン部材等で構成され、又は、鋼板、ステンレス鋼板、チタン板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属板をプレス成形して、あるいは切削加工した後に防食用の表面処理を施して構成される。
【0025】
電解質膜・電極構造体32は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜38と、前記固体高分子電解質膜38の両面に設けられる円形状のアノード側給電体40及びカソード側給電体42とを備える。固体高分子電解質膜38の外形寸法は、アノード側給電体40及びカソード側給電体42の外径寸法よりも大径に設定される(図3及び図4参照)。
【0026】
固体高分子電解質膜38の両面には、アノード電極触媒層40a及びカソード電極触媒層42aが形成される。アノード電極触媒層40aは、例えば、Ru(ルテニウム)系触媒を使用する一方、カソード電極触媒層42aは、例えば、白金触媒を使用する。
【0027】
アノード側給電体40は、例えば、球状アトマイズチタン粉末の焼結体(多孔質導電体)により構成される。アノード側給電体40は、研削加工後にエッチング処理される平滑表面部を設けるとともに、空隙率が10%〜50%、より好ましくは、20%〜40%の範囲内に設定される。
【0028】
カソード側給電体42は、例えば、純チタン粒子を溶射材として減圧プラズマ溶射によりプレート部材44に一体成形される多孔質導電体である。この多孔質導電体の気孔率は、10%〜50%の範囲内に設定される。
【0029】
プレート部材44は、円板状を有するとともに、カソード側給電体42が溶射される溶射面44aとは反対側の荷重付与面44bに、弾性部材、例えば、4枚の皿ばね46が配設される。皿ばね46は、皿ばねホルダであるプレート部材44を介してカソード側給電体42に荷重を付与する。
【0030】
図3に示すように、単位セル12の外周部には、セパレータ面方向外方に突出する第1突出部48a、第2突出部48b及び第3突出部48cが形成される。第1突出部48aには、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、水(純水)を供給するための水供給連通孔50aが設けられる。
【0031】
第2突出部48bには、矢印A方向に互いに連通して、反応により生成された酸素及び使用済みの水を排出するための酸素排出連通孔50bが設けられる。第3突出部48cには、矢印A方向に互いに連通して、反応により生成された高圧水素(後述する)を流すための水素排出連通孔50cが設けられる。水供給連通孔50a、酸素排出連通孔50b及び水素排出連通孔50cは、アノード側給電体40及びカソード側給電体42の外側に形成される。
【0032】
図3及び図4に示すように、アノード側セパレータ34には、水供給連通孔50aに連通する供給通路52aと、酸素排出連通孔50bに連通する排出通路52bとが設けられる。アノード側セパレータ34の電解質膜・電極構造体32に向かう面34aには、供給通路52a及び排出通路52bに連通する第1流路54が設けられる。この第1流路54は、アノード側給電体40の接触面積範囲に対応する範囲内に設けられる。
【0033】
カソード側セパレータ36には、水素排出連通孔50cに連通する水素排出通路56が設けられる。プレート部材44の溶射面44aには、水素排出通路56に連通する第2流路58が形成される。この第2流路58は、カソード側給電体42の接触面積範囲に対応する範囲内に設けられる。
【0034】
アノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36の外周端部を周回して、シール部材60a、60bが一体化される。このシール部材60a、60bには、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材が用いられる。
【0035】
図3及び図4に示すように、アノード側セパレータ34の電解質膜・電極構造体32に向かう面34aには、第1流路54及びアノード側給電体40の外方を周回して第1シール部材62aを配設するための第1シール溝64aが形成される。
【0036】
面34aには、水供給連通孔50a及び酸素排出連通孔50bの外側を周回して、第2シール部材62b及び第3シール部材62cを配置するための第2シール溝64b及び第3シール溝64cが形成される。第1シール部材62a〜第3シール部材62cは、例えば、Oリングである。
【0037】
カソード側セパレータ36の電解質膜・電極構造体32に向かう面36aには、第2流路58及びカソード側給電体42の外方を周回して、第1シール部材66aを配設するための第1シール溝68aが形成される。
【0038】
面36aには、水供給連通孔50a及び酸素排出連通孔50bの外側を周回して、第2シール部材66b及び第3シール部材66cを配置するための第2シール溝68b及び第3シール溝68cが形成される。第1シール部材66a〜第3シール部材66cは、例えば、Oリングである。
【0039】
アノード側給電体40の外方を周回する第1シール溝64aと、カソード側給電体42の外方を周回する第1シール溝68aとは、セパレータ積層方向(矢印A方向)に対して固体高分子電解質膜38を挟んで互いに異なる位置に設定される。
【0040】
水素排出連通孔50cには、前記水素排出連通孔50cをシールし且つアノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36の位置決めを行う円管状の絶縁性管部材70が配設される。
【0041】
絶縁性管部材70は、絶縁樹脂又はセラミックス等で構成され、単位セル12内のアノード側セパレータ34の水素排出連通孔50c及びカソード側セパレータ36の水素排出連通孔50cに一体に挿入される。絶縁性管部材70は、互いに隣接する一方の単位セル12のアノード側セパレータ34の水素排出連通孔50c及び他方の単位セル12のカソード側セパレータ36の水素排出連通孔50cに一体に挿入される。
【0042】
なお、アノード側セパレータ34の水素排出連通孔50c及びカソード側セパレータ36の水素排出連通孔50cには、絶縁性管部材70を突き当てて位置決めするために内方に突出するフランジ部(図示せず)を、連通孔内周面に固着又は一体形成することも可能である。
【0043】
また、絶縁性管部材70は、複数の単位セル12に跨ってアノード側セパレータ34の水素排出連通孔50c及びカソード側セパレータ36の水素排出連通孔50cに一体に挿入されるように、長尺に構成してもよい。その際、絶縁性管部材70の側部には、水素排出通路56を管内部に連通するための孔部が形成される。
【0044】
絶縁性管部材70の外周面には、周溝72a、72bが形成されるとともに、前記周溝72a、72bには、シール部材であるOリング74a、74bが配設される。
【0045】
図3及び図4に示すように、固体高分子電解質膜38は、第3突出部48cに対応する部分を有しておらず、水素排出連通孔50cより内側で終端する。固体高分子電解質膜38は、第3突出部48cに対応する部分に、絶縁性管部材70を挿通させるとともに、前記固体高分子電解質膜38よりも肉薄な絶縁シート75が連結される。
【0046】
絶縁シート75は、例えば、絶縁性樹脂シートにより構成され、単位セル12内の短絡を阻止するとともに、積層方向の荷重を削減するために、固体高分子電解質膜38よりも薄肉に構成される。
【0047】
図1及び図2に示すように、エンドプレート20aには、水供給連通孔50a、酸素排出連通孔50b及び水素排出連通孔50cに連通する配管76a、76b及び76cが接続される。配管76cには、図示しないが、背圧弁(又は電磁弁)が設けられており、水素排出連通孔50cに生成される水素の圧力を高圧(例えば、1MPa〜70MPa)に維持することができる。
【0048】
エンドプレート20a、20b間には、図示しない押し付け力付与装置により押し付け力が付与され、この状態で、前記エンドプレート20a、20bがタイロッド22を介して締め付けられる。
【0049】
このように構成される水電解装置10の動作について、以下に説明する。
【0050】
図1に示すように、配管76aから水電解装置10の水供給連通孔50aに水が供給されるとともに、ターミナルプレート16a、16bの端子部24a、24bに電気的に接続されている電解電源28を介して電圧が付与される。このため、図3及び図4に示すように、各単位セル12では、水供給連通孔50aからアノード側セパレータ34の第1流路54に水が供給され、この水がアノード側給電体40内に沿って移動する。
【0051】
従って、水は、アノード電極触媒層40aで電気により分解され、水素イオン、電子及び酸素が生成される。この陽極反応により生成された水素イオンは、固体高分子電解質膜38を透過してカソード電極触媒層42a側に移動し、電子と結合して水素が得られる。
【0052】
このため、カソード側給電体42の内部及びプレート部材44に形成される第2流路58に沿って、水素が流動する。この水素は、水供給連通孔50aよりも高圧に維持されており、水素排出連通孔50cを流れて水電解装置10の外部に取り出し可能となる。一方、第1流路54には、反応により生成した酸素と、使用済みの水とが流動しており、これらが酸素排出連通孔50bに沿って水電解装置10の外部に排出される。
【0053】
この場合、第1の実施形態では、図3及び図4に示すように、水素排出連通孔50cには、前記水素排出連通孔50cをシールするとともに、アノード側セパレータ34とカソード側セパレータ36との相対的な位置決めを行う絶縁性管部材70が配設されている。
【0054】
このため、絶縁性管部材70をアノード側セパレータ34の水素排出連通孔50c及びカソード側セパレータ36の水素排出連通孔50cに一体に挿入するだけで、前記水素排出連通孔50cが良好にシールされるとともに、前記アノード側セパレータ34及び前記カソード側セパレータ36の位置決めが容易且つ正確に行われる。
【0055】
従って、水電解装置10では、特に高圧水素が生成される水素排出連通孔50c側のシール面の平行度、平面度及び表面粗さを厳しく設定する必要がない。これにより、アノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36を、簡単且つ経済的に構成するとともに、良好なシール性と位置決め機能とを確保することが可能になるという効果が得られる。
【0056】
さらに、第1の実施形態では、固体高分子電解質膜38は、第3突出部48cに対応する部分を有しておらず、水素排出連通孔50cより内側で終端している。従って、特に高価な固体高分子電解質膜38の膜面積が小さくなり、経済的であるという利点がある。
【0057】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る水電解装置80を構成する単位セル82の断面図である。
【0058】
なお、第1の実施形態に係る水電解装置10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3の実施形態以降においても同様に、その詳細な説明は省略する。
【0059】
単位セル82では、アノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36の固体高分子電解質膜38を挟んで対向する各セパレータ端縁部に、絶縁性管部材70を挿通し且つ前記固体高分子電解質膜38の終端位置より外側に位置する面に、絶縁コート層84a、84bが設けられる。絶縁コート層84a、84bは、絶縁樹脂、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂を、各セパレータ面にコーティングすることにより形成される。
【0060】
このように構成される第2の実施形態では、アノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36を、簡単且つ経済的に構成するとともに、良好なシール性と位置決め機能とを確保することが可能になる等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0061】
図6は、本発明の第3の実施形態に係る水電解装置90を構成する単位セル92の分解斜視説明図である。
【0062】
水電解装置90では、水素排出連通孔50cに絶縁性管部材70aが配設されるとともに、酸素排出連通孔50bには、前記酸素排出連通孔50bをシールし且つアノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36の位置決めを行う絶縁性管部材70aが配設される。
【0063】
固体高分子電解質膜38は、第2突出部48b及び第3突出部48cに対応する部分を有しておらず、酸素排出連通孔50b及び水素排出連通孔50cより内側で終端する。
【0064】
このように、第3の実施形態では、水素排出連通孔50c及び酸素排出連通孔50bには、それぞれ絶縁性管部材70及び70aが配設されている。これにより、単位セル92の位置決めが一層容易且つ確実に遂行されるとともに、固体高分子電解質膜38の膜面積が一層小さくなり、経済的であるという効果が得られる。
【0065】
なお、固体高分子電解質膜38には、第2突出部48b及び第3突出部48cに対応する部分に、それぞれ絶縁シート(第1の実施形態)を連結して構成してもよい。
【0066】
図7は、本発明の第4の実施形態に係る水電解装置100を構成する単位セル102の断面図である。
【0067】
単位セル102は、電解質膜・電極構造体32を挟持するアノード側セパレータ104及びカソード側セパレータ106を備える。アノード側セパレータ104及びカソード側セパレータ106には、水素排出連通孔50cが設けられるとともに、前記水素排出連通孔50cは、同軸上に連通する大径孔部108aと小径孔部108bとを有する。
【0068】
アノード側セパレータ104の絶縁コート層84a側の面には、軸部材110aが溶接や接着等により固定される。軸部材110aは、小径孔部108bと略同一径の貫通孔112aが中央に設けられるとともに、外周部には、周溝114aが形成される。軸部材110aの外周面と大径孔部108aの内周面との間には、絶縁性管部材116aが配設される。この絶縁性管部材116aの外周部には、周溝118aが形成される。周溝114a、118aには、それぞれOリング120aが収容される。
【0069】
カソード側セパレータ106の絶縁コート層84b側とは反対の面には、軸部材110bが溶接や接着等により固定される。軸部材110bは、軸部材110aと同様に構成されており、同一の構成要素には、同一の参照数字に符号bを付してその詳細な説明は省略する。
【0070】
このように構成される第4の実施形態では、アノード側セパレータ104に固着された軸部材110a及びカソード側セパレータ106に固着された軸部材110bは、単位セル102の位置決めノックピンとしての機能、さらには各単位セル102毎の位置決めノックピンとしての機能を有することができる。
【0071】
これにより、第4の実施形態は、上記の第1〜第3の実施形態と同様の効果が得られるとともに、水電解装置100の位置決め作業が一層容易且つ正確に遂行されるという利点がある。
【符号の説明】
【0072】
10、80、90、100…水電解装置
12、82、92、102…単位セル 14…積層体
16a、16b…ターミナルプレート 18a、18a…絶縁プレート
20a、20b…エンドプレート 24a、24b…端子部
28…電解電源 32…電解質膜・電極構造体
34…アノード側セパレータ 36…カソード側セパレータ
38…固体高分子電解質膜 40…アノード側給電体
42…カソード側給電体 44…プレート部材
46…皿ばね 50a…水供給連通孔
50b…酸素排出連通孔 50c…水素排出連通孔
54、58…流路 70、70a、116a…絶縁性管部材
74a、74b、120a…Oリング 75…絶縁シート
84a、84b…絶縁コート層 104…アノード側セパレータ
106…カソード側セパレータ 108a…大径孔部
108b…小径孔部 110a、110b…軸部材
112a…貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の両側に電解用給電体が配設される電解ユニットと、セパレータとが、複数積層されるとともに、水を電気分解して酸素及び水素が生成される水電解装置であって、
前記セパレータには、前記水を積層方向に流通させる水供給連通孔、生成された前記酸素を前記積層方向に流通させる酸素排出連通孔、及び生成された前記水素を前記積層方向に流通させる水素排出連通孔が、前記電解用給電体の外側に形成されるとともに、
少なくとも前記水素排出連通孔には、該水素排出連通孔をシールし且つ前記セパレータの位置決めを行う絶縁性管部材が配設されることを特徴とする水電解装置。
【請求項2】
請求項1記載の水電解装置において、前記電解質膜は、少なくとも前記水素排出連通孔より内側で終端するとともに、
該電解質膜の端面には、前記絶縁性管部材を挿通させ且つ該電解質膜よりも肉薄な絶縁シートが連結されることを特徴とする水電解装置。
【請求項3】
請求項1記載の水電解装置において、前記電解質膜は、少なくとも前記水素排出連通孔より内側で終端するとともに、
前記電解質膜を挟んで対向する一対の前記セパレータの各端縁部には、前記絶縁性管部材を挿通し且つ該電解質膜の終端位置より外側に位置する面に、絶縁コート層が設けられることを特徴とする水電解装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の水電解装置において、前記水を電気分解して前記酸素及び該酸素よりも高圧な前記水素を生成することを特徴とする水電解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−97313(P2012−97313A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244960(P2010−244960)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】