説明

水面浮遊性粒状農薬製剤及びその製造法

【課題】 従来の水面浮遊性粒状農薬製剤の有する水面浮遊性の問題を改善した、確実に水面浮遊性が得られ、かつ、農薬有効成分の均一な散布が可能となる水面浮遊性粒状農薬製剤を提供すること。
【解決手段】 農薬有効成分、界面活性剤、固体担体、水面浮遊性付与剤および水を含有し、成形後の水の含有量が水面浮遊性粒状農薬製剤100重量部あたり0.3部〜6部であることを特徴とする水面浮遊性粒状農薬製剤およびその製造法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水田あるいは貯水池等に直接散布する粒状農薬製剤に関し、さらに詳しくは、省力的、かつ均一な農薬散布が可能な水面浮遊性粒状農薬製剤及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、水田で用いられる農薬製剤は、粒剤、粉剤、乳剤、水和剤、及びフロアブル剤が一般的である。これらの農薬製剤のなかで粒剤及び粉剤は、通常10アール当たり3〜4kgを水に希釈しないで直接散布されてきたが、近年、農薬散布の省力化が叫ばれており、これに対応するために、製剤中の農薬活性成分含有量を高めて製剤としての散布量を低減することや、あるいは水田に入らずに畦畔から投げ込むだけで散布可能な農薬製剤が検討されている。
【0003】以上の要求に対して種々の農薬製剤が検討され、その技術が公開されている。例えば、農薬活性成分を比重が1以下のロウ状物質に溶解あるいは分散し、水溶性増量剤に被覆あるいは含有させた農薬粒剤(特開昭55−154902号、特開昭56−30901号、特開平7−101805号)、軽石あるいはパーライトなどの水面浮遊性担体に殺菌成分を担持させた組成物(特公昭48−1181号)、パーライトにパラフィン石油樹脂等を用いて殺虫成分を付着させた組成物(特公昭48−1181号)、パーライトなど水に浮く無機担体に殺草成分を担持させた組成物(特公昭48−1182号)、48メッシュ以下の鉱物質粒状担体に農薬活性成分と撥水性物質を担持させた粒状農薬製剤(特開昭48−56831号)、比重1以下で粒径5mm以下の中空体に農薬活性成分を担持し成形した組成物(特開昭58−65203号)、カーバメート系農薬活性成分を水に対する分配係数が10以上の有機化合物と混合し、水浮遊性担体に撥水性物質とともに担持させた組成物(特開平2−174702号)等が開示されている。
【0004】しかし、いずれも農薬活性成分を含んだロウ状物質や農薬活性成分が担持された粒核が長時間水面に浮遊するため、風による吹き寄せにより農薬活性成分の濃度むらによる薬効不足や薬害の発生原因となることがある等の問題点があった。
【0005】最近、農薬活性成分と特定の界面活性剤、ベントナイト、水浮遊性中空粒子を含有する組成物(特開平7−82102号)や農薬活性成分と250μm以下のガラス質中空体と特定の界面活性剤を含有する組成物(特開平6−345603号)が開示されているが、必ずしも浮遊性が十分ではなく一部の粒は沈降し、また、浮遊している粒は良好な崩壊性を示さないため、処理地点の薬剤濃度が高くなることによる薬害、風下吹き寄せ部分の薬剤濃度が高くなることによる薬害の問題があった。
【0006】また、農薬活性成分と比重が1以下の粉末基剤、特定の性質を有する界面活性剤より成る組成物の水面浮遊性粒剤を水溶性フィルムに包装した製剤(特開平7−233002号)、農薬活性成分と焼成バーミキュライトあるいは発泡パーライト、発泡シラス、コルク及びアセチレン系界面活性剤を含有する製剤を水溶性フィルムに包装した製剤(特開平6−336403号)等が開示されている。これら製剤は水溶性フィルムに包装することを前提とした製剤であるが、水溶性フィルムに包装された粒状物の浮遊性は十分ではなく、一部が沈降するため、処理地点の薬剤濃度が高くなることによる薬害の問題が生じるおそれがあった。一方、水に投入すると一旦水底に沈降し、水溶性担体が溶解するとともに水面に浮上する粒状農薬組成物(特公昭63−30281号)も報告されているが、水温等の条件によっては全ての粒状農薬組成物が浮上しない場合があり、全ての粒状農薬組成物が浮上した場合でも、沈降していた水底の農薬土壌残留量が多い問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の水面浮遊性粒状農薬製剤の有する水面浮遊性の問題を改善した、確実に水面浮遊性が得られ、かつ、農薬有効成分の均一な散布が可能となる水面浮遊性粒状農薬製剤の提供をその課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、粒状農薬製剤の浮遊性について鋭意研究した結果、農薬有効成分、界面活性剤、固体担体、水面浮遊性付与剤等を含む粒状農薬製剤において、一定量の水を含有させることにより水面浮遊性が著しく改善されるとの知見を得、本発明に至った。
【0009】すなわち本発明は、農薬有効成分、界面活性剤、固体担体、水面浮遊性付与剤および水を含有し、成形後の水の含有量が水面浮遊性粒状農薬製剤100重量部あたり0.3部〜6部であることを特徴とする水面浮遊性粒状農薬製剤およびその製造法を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の粒状農薬製剤において、水面浮遊性とは水面に投入後、短時間水面に浮遊分散し、その後崩壊分散するような状態を意味し、数時間ないし数日間の浮遊性を意味するものでない。より好ましい浮遊性は、水面に投入直後は浮遊し、1から30分間程度、好ましくは1から15分間程度で実質的に崩壊分散する程度の浮遊性である。
【0011】本発明の水面浮遊性粒状農薬に用いることのできる農薬活性成分は、一般に農薬として用いられるものであれば特に限定されず、固体あるいは液体状の何れでも用いることができる。この農薬活性成分は、水に難溶性あるいは易溶性であってもよく、例えば、除草剤、殺菌剤、殺虫剤、植物成調節剤等が用いられる。とりわけ水面施用において有用な農薬活性成分が好適である。
【0012】本発明に用いることのできる農薬活性成分は、以下例示される農薬活性成分に限定されるものではないが、除草剤の例としては、2−メチル−4−クロロフェノキシチオ酢酸−S−エチル(フェノチオール)、α−(2−ナフトキシ)プロピオンアニリド(ナプロアニリド)、5−(2,4−ジクロロフェノキシ)−2−ニトロ安息香酸メチル(ビフェノックス)、S−(4−クロルベンジル)N,N−ジエチルチオカーバメート(ベンチオカーブ)、S−ベンジル=1,2−ジメチルプロピル(エチル)チオカルバマート(エスプロカルブ)、S−エチルヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−カーボチオエート(モリネート)、S−1−メチル−1−フェニルエチル=ピペリジン−1−カルボチオアート(ジメピペレート)、O−3−tert−ブチルフェニル=6−メトキシ−2−ピリジル(メチル)チオカルバマート(ピリブチカルブ)、2−クロロ−2',6'−ジエチル−N−(ブトキシメチル)アセトアニリド(ブタクロール)、2−クロロ−2',6'−ジエチル−N−(2−プロポキシエチル)アセトアニリド(プレチラクロール)、(RS)−2−ブロモ−N−(α,α−ジメチルベンジル)−3,3−ジメチルブチルアミド(ブロモブチド)、2−ベンゾチアゾール−2−イルオキシ−N−メチルアセトアニリド(メフェナセット)、1−(α,α−ジメチルベンジル)−3−(パラトリル)尿素(ダイムロン)、メチル=α−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イルカルバモイルスルファモイル)−O−トルアート(ベンスルフロンメチル)、1−(2−クロロイミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イルスルホニル)−3−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)尿素(イマゾスルフロン)、エチル=5−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イルカルバモイルスルファモイル)−1−メチルピラゾール−4−カルボキシラート(ピラゾスルフロンエチル)、2メチルチオ−4,6−ビス(エチルアミノ)−s−トリアジン(シメトリン)、2−メチルチオ−4,6−ビス(イソプロピルアミノ)−s−トリアジン(プロメトリン)、2−メチルチオ−4−エチルアミノ−6−(1,2−ジメチルプロピルアミノ)−s−トリアジン(ジメタメトリン)、2,4−ジクロロフェニル−3'−メトキシ−4'−ニトロフェニルエーテル(クロメトキシニル)、5−ターシャリ−ブチル−3−(2,4−ジクロロ−5−イソプロポキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾリン−2−オン(オキサジアゾン)、4−(2,4−ジクロロベンゾイル)−1,3−ジメチル−5−ピラゾリル−p−トルエンスルホネート(ピラゾレート)、2−[4−(2,4−ジクロロベンゾイル)−1,3−ジメチルピラゾール−5−イルオキシ]アセトフェノン(ピラゾキシフェン)、(RS)−2−(2,4−ジクロロ−m−トリルオキシ)プロピオンアニリド(クロメプロップ)、2−[4−[2,4−ジクロロ−m−トルオイル)−1,3−ジメチルピラゾール−5−イルオキシ]−4'−メチルアセトフェノン(ベンゾフェナップ)、S,S'−ジメチル=2−ジフルオロメチル−4−イソブチル−6−トリフルオロメチルピリジン−3,5−ジカルボチオアート(ジチオピル)、2−クロロ−N−(3−メトキシ−2−テニル)−2',6'−ジメチルアセトアニリド(テニルクロール)、n−ブチル−(R)−2−[4−(2−フルオロ−4−シアノフェノキシ)フェノキシ]プロピオネート(シハロホップブチル)、3−[1−(3,5−ジクロルフェニル)−1−メチルエチル]−2,3−ジヒドロ−6−メチル−5−フェニル−4H−1,3−オキサジン−4−オン(オキサジクロメホン)、3−(4−クロロ−5−シクロペンチルオキシ−2フリオロフェニル)−5−イソプロピリデン−1,3−オキサゾリジン−2,4−ジオン(ペントキサゾン)、1−(ジエチルカルバモイル)−3−(2,4,6−トリメチルフェニルスルフォニル)−1,2,4−トリアゾール(カフェンストロール)、N−{[(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)アミノカルボニル]}−1−メチル−4−(2−メチル−2H−テトラゾール−5−イル)(アジムスルフロン)、メチル 2−[(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)オキシ]−6−[(E)−1−(メトキシイミノ)エチル]ベンゾエイト(ピリミノバックメチル)等が挙げられる。
【0013】また、殺菌剤の例としては、O,O−ジイソプロピル−S−ベンジルチオフォスフェート(IBP)、3'−イソプロポキシ−2−メチルベンズアニリド(メプロニル)、α,α,α−トリフルオロ−3'−イソプロポキシ−O−トルアニリド(フルトラニル)、3,4,5,6−テトラクロロ−N−(2,3−ジクロロフェニル)フタルアミド酸(テクロフタラム)、1−(4−クロロベンジル)−1−シクロペンチル−3−フェニル尿素(ペンシクロン)、6−(3,5−ジクロロ−4−メチルフェニル)−3(2H)−ピリダジノン(ジクロメジン)、メチル=N−(2−メトキシアセチル)−N−(2,6−キシリル)−DL−アラニナート(メタラキシル)、(E)−4−クロロ−α,α,α−トリフルオロ−N−(1−イミダゾール−1−イル−2−プロポキシエチリデン)−o−トルイジン(トリフルミゾール)、カスガマイシン、バリダマイシン、3−アリルオキシ−1,2−ベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシド(プロベナゾール)、ジイソプロピル−1,3−ジチオラン−2−イリデン−マロネート(イソプロチオラン)、5−メチル−1,2,4−トリアゾロ[3,4−b]ベンゾチアゾール(トリシクラゾール)、1,2,5,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリン−4−オン(ピロキロン)、5−エチル−5,8−ジヒドロ−8−オキソ[1,3]ジオキソロ[4,5−g]キノリン−7−カルボン酸(オキソリニック酸)、(Z)−2'−メチルアセトフェノン=4,6−ジメチルピリミジン−2−イルヒドラゾン4,5,6,7−テトラクロロフタリド(フェリムゾン)、3−(3,5−ジクロロフェニル)−N−イソプロピル−2,4−ジオキソイミダゾリジン−1−カルボキサミド(イプロジオン)等が挙げられる。
【0014】更に、殺虫剤の例としてはO,O−ジメチル−O−(3−メチル−4−ニトロフェニル)チオホスフェート(MEP)、(2−イソプロピル−4−メチルピリミジル−6)−ジエチルチオホスフェート(ダイアジノン)、1−ナフチル−N−メチルカーバメート(NAC)、O,O−ジエチル−O−(3−オキソ−2−フェニル−2H−ピリダジン−6−イル)ホスホロチオエート(ピリダフェンチオン)、O,O−ジメチル−O−3,5,6−トリクロロ−2−ピリジルホスホロチオエート(クロルピリホスメチル)、ジメチルジカルベトキシエチルジオホスフェート(マラソン)、O,O−ジメチル−S−(N−メチルカルバモイルメチル)ジチオホスフェート(ジメトエート)、O,O−ジプロピル−O−4−メチルチオフェニルホスフェート(プロパホス)、O,S−ジメチル−N−アセチルホスホロアミドチオエート(アセフェート)、エチルパラニトロフェニルチオノベンゼンホスホネート(EPN)、2−セカンダリ−ブチルフェニル−N−メチルカーバメート(BPMC)、2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチル−7−ベンゾ[b]フラニル=N−ジブチルアミノチオ−N−メチルカルバマート(カルボスルファン)、エチル=N−[2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチルベンゾフラン−7−イルオキシカルボニル(メチル)アミノチオ]−N−イソプロピル−β−アラニナート(ベンフラカルブ)、(RS)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル=(RS)−2,2−ジクロロ−1−(4−エトキシフェニル)シクロプロパンカルボキシラート(シクロプロトリン)、2−(4−エトキシフェニル)−2−メチルプロピル=3−フェノキシベンジル=エーテル(エトフェンプロックス)、1,3−ビス(カルバモイルチオ)−2−(N,N−ジメチルアミノ)プロパン塩酸塩(カルタップ)、5−ジメチルアミノ−1,2,3−トリチアンシュウ酸塩(チオシクラム)、S,S'−2−ジメチルアミノトリメチレン=ジ(ベンゼンチオスルホナート)(ベンスルタップ)、2−タ−シャリ−ブチルイミノ−3−イソプロピル−5−フェニル−1,3,5,6テトラヒドロ−2H−1,3,5−チアジアジン−4−オン(ブプロフェジン)等が挙げられる。
【0015】更にまた、植物成長調節剤の例としては、4'−クロロ−2'−(α−ヒドロキシベンジル)イソニコチンアニリド(イナベンフィド)、(2RS,3RS)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペンタン−3−オール(パクロブトラゾール)、(E)−(S)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペンタ−1−エン−3−オール(ウニコナゾール)等を挙げることができる。
【0016】なお、これらの農薬活性成分は単独で、または2種以上を混合して用いることができ、これら農薬活性成分の配合割合の合計は、組成物100重量部に対して、通常、0.1重量部〜70重量部、好ましくは1重量部〜50重量部である。
【0017】本発明の水面浮遊性粒状農薬には、水面に浮遊した粒を崩壊させ、農薬有効成分を水中に拡散させるための界面活性剤を使用する。この界面活性剤としては、農薬製剤に一般的なものを用いることができ、例えば、ポリエチレングリコール高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル、ソルビタンモノアルキレート、アセチレンアルコールおよびアセチレンジオール並びにそれらのアルキレンオキシドを付加物等のノニオン性界面活性剤、アルキルアリールスルホン酸塩、ジアルキルスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩及びその縮合物、アルキル硫酸エステル塩、アルキル燐酸エステル塩、アルキルアリール硫酸エステル塩、アルキルアリール燐酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル燐酸エステル塩、ポリカルボン酸型高分子活性剤等のアニオン性界面活性剤等、さらにはシリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等を挙げることができる。これらの界面活性剤は単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。これらの界面活性剤の配合割合は、組成物100重量部に対して、通常、0.1重量部〜30重量部、好ましくは0.5重量部〜20重量部、さらに好ましくは2重量部〜10重量部である。
【0018】本発明の水面浮遊性粒状農薬には、固体担体を使用することが必要である。固体担体は水溶性担体あるいは非水溶性担体を用いることができ、これらを組み合わせて用いることもできる。水溶性担体としては、例えば、硫酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、クエン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の有機又は無機酸塩類、クエン酸、コハク酸等の有機酸類、蔗糖、ラクトース等の糖類、尿素等を挙げることができる。また、非水溶性担体としては一般的には鉱物質微粉が用いられ、例えば、クレー類、炭酸カルシウム、ベントナイト、タルク、珪藻土、ステアリン酸カルシウム、ホワイトカーボン等を挙げることができる。これら固体担体の配合割合は、組成物100重量部に対して、通常、5重量部〜80重量部、好ましくは10重量部〜70重量部である。
【0019】更に、本発明の水面浮遊性粒状農薬には、これを散布した際、粒が水中に沈むことなく、水面に浮遊させる性質を付与するための水面浮遊性付与剤が必要である。この水面浮遊性付与剤は、独立した1個または複数個の気室を有する物質であり、例えば、真珠岩や黒曜石よりなるパーライト、シラスよりなる発泡シラス、アルミノシリケート系で焼成してなるフィライト、珪酸ソーダあるいは硼砂を発泡させたマイクロバルーン、軽石、粒状珪藻土、粒状活性炭、木粉、コルク粉、フェノール樹脂よりなるフェノールマイクロバルーン、エポキシ樹脂よりなるエコスフェアー、ポリウレタンよりなるポリウレタンフォーム、ポリアクリロニトリルよりなるマイクロスフェアー等が挙げられるが、中でもマイクロスフェアーが好適である。マイクロスフェアーは、それ自体の浮力によって水面に浮遊させる性質を付与するのではなく、これを用いて成形する際、非常に多くの空気を造粒物に混入させることができ、即ち、非常に少ない含有量でも効果が高いこと、又、紫外線によって中空構造が容易に破壊されるため、いつまでも水面を漂うことがない点で好ましい。これら水面浮遊性付与剤は組成物100重量部に対して0.3重量部〜30重量部、望ましくは0.5重量部〜20重量部を含有させる。
【0020】本発明の水面浮遊性粒状農薬製剤において水は必須成分である。本発明の水面浮遊性粒状農薬製剤は、前出の水面浮遊性付与剤と水を含有することによってはじめて良好な水面浮遊性が得られる。水を含有することで水面浮遊性が得られることは、全く意外な知見である。本発明において水の含有量は水面浮遊性粒状農薬製剤100重量部あたり0.3部〜6部であり、望ましくは0.8部〜5部である。水が0.3部以下の場合、粒状農薬製剤を水に投入すると、数秒間は水面に浮遊するが、その後粒状物内部の空気が抜けて沈降する。一方、水が6部以上の場合、粒が脆くなり、散布時に粒が衝突、崩壊することにより微粉が発生するため望ましくない。水の含有量は、例えばカールフィッシャー方式の水分測定装置を用いて測定することができる。
【0021】本発明の水面浮遊性粒状農薬製剤においては、前記の成分の他に、その他補助剤として結合剤、有機溶剤等を必要に応じて配合することができる。
【0022】用いることのできる結合剤は農薬粒状組成物に一般的に用いられるもので、水溶性の物質が望ましい。例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、デキストリン、水溶性デンプン、キサンタンガム、グアシードガム、蔗糖、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム塩、平均分子量6000〜20000のポリエチレングリコール、平均分子量10万〜500万のポリエチレンオキサイド等を挙げることができる。これらの結合剤の配合割合は、組成物100重量部に対して、通常、0.01重量部〜10重量部、好ましくは0.1重量部〜5重量部である。
【0023】また、有機溶剤は農薬活性成分を溶解させる場合に用いられ、例えば、ジオクチルフタレート、メチルナフタレン、アルキルピロリドン、フニルキシリールエタン、グリセリン、アルキレングリコール等を用いることができるが、高沸点溶剤が望ましい。これら有機溶剤の配合量は、農薬活性成分に対して、通常10重量部〜200重量部である。
【0024】本発明の水面浮遊性粒状農薬製剤は、例えば、次のいずれかの方法により製造される。
(1)農薬有効成分、界面活性剤、固体担体、水面浮遊性付与剤および水を混合し、造粒後、水分が水面浮遊性粒状農薬製剤100重量部に対して0.3部〜6部となるまで乾燥させる方法。
(2)界面活性剤、固体担体、水面浮遊性付与剤および水を混合し、造粒後、水分が水面浮遊性粒状農薬製剤100重量部に対して0.3部〜6部となるまで乾燥し、次いで農薬有効成分を吸着せしめる方法。
【0025】第1の方法を実施するには、上で説明した農薬有効成分、界面活性剤、固体担体、水面浮遊性付与剤、水および必要に応じてその他補助剤を含有し、適当な形状、例えば、円柱状、球状、俵型、角柱状、レンズ状等に成形した後、水分を製剤100重量部に対して0.3部〜6部となるまで乾燥すればよい。各成分の添加順序は制限されるものではないが、他の原料を混合した後水を加えることが好ましい。
【0026】また、成形の方法も特に限定されないが、全成分を均一に混練した後、一定の大きさの穴を開けたプレートから押し出して、造粒する方法が好ましい。本発明においては、プレートに開けた穴の大きさは、一般に0.5mm〜10mmであることが好ましい。
【0027】得られた造粒物の乾燥は、公知の方法で実施することができるが、例えば、流動層乾燥、回転ドラム乾燥等、熱風を通気する方法により乾燥することが乾燥中の製剤の水分を管理する面から好ましい。乾燥中の製剤の水分を測定する方法としては、例えば、赤外線水分計により水分を随時測定する方法、予め排気温度と製剤の水分量との関係を求めておき、排気温度を測定する方法が挙げられる。
【0028】また、第2の方法を実施するには、まず、前記の界面活性剤、固体担体、水面浮遊性付与剤、水および必要に応じてその他補助剤を配合し、これを適当な形状に成形した後、水分を製剤100重量部に対して0.3部〜6部となるまで乾燥して農薬キャリアーとする。次いで、このキャリアーに、農薬有効成分を吸着させることにより水面浮遊性粒状農薬製剤が得られる。
【0029】農薬キャリアーを得るための各成分の添加順序は制限されないこと、他の成分を混合した後水を加えることが好ましいことは第1の方法と同じである。また、農薬有効成分を吸着させるにあたっては、適当な有機溶剤を用いても良い。
【0030】かくして得られる本発明の水面浮遊性粒状農薬製剤は、それ自体で水田等の水面に散布しても良く、また、適当な水溶性フィルムの袋で包装した水面投下型農薬製剤として散布しても良く、何れの場合でも適切な浮遊性と分散性を有し、農薬有効成分を均一に散布することができる。
【0031】
【実施例】次に実施例、比較例および試験例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。
【0032】実 施 例 1ベンスルフロンメチル1.5部、メフェナセット20部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル3部をホワイトカーボン3部に吸着させた界面活性剤、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル燐酸エステル塩3部をホワイトカーボン3部に吸着させた界面活性剤、アセチレンアルコール3部をホワイトカーボン3部に吸着させた界面活性剤、デキストリン2部および塩化カリウム55.8部を均一に混合後、衝撃式粉砕した。
【0033】得られた粉末と、マイクロスフェアー1.2部を高速攪拌機中で均一に混合し、適量の水を加えて混練後、1.2mmの孔より押し出し造粒を行った。得られた造粒物を水分が1.5部となるまで乾燥し、水面浮遊性粒状農薬製剤を得た。
【0034】実 施 例 2ベンスルフロンメチル1.5部、メフェナセット20部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル3部をホワイトカーボン3部に吸着させた界面活性剤、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル燐酸エステル塩3部をホワイトカーボン3部に吸着させた界面活性剤、アセチレンアルコール3部をホワイトカーボン3部に吸着させた界面活性剤、デキストリン2部、ベントナイト5部および塩化カリウム30.5部を均一に混合後、衝撃式粉砕した。
【0035】得られた粉末と、発泡シラス20部を高速攪拌機中で均一に混合し、適量の水を加えて混練後、5mmの孔より押し出し造粒を行った。得られた造粒物を水分が3部となるまで乾燥し水面浮遊性粒状農薬製剤を得た。
【0036】実 施 例 3ピロキロン30部、リグニンスルホン酸ナトリウム塩2部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル燐酸エステル塩3部をホワイトカーボン3部に吸着させた界面活性剤、デキストリン3部および硫安34部を均一に混合後、衝撃式粉砕した。
【0037】得られた粉末と発泡シラス20部を高速攪拌機中で均一に混合し、適量の水を加えて混練後、3mmの孔より押し出し造粒を行った。得られた造粒物を水分が5部となるまで乾燥し水面浮遊性粒状農薬製剤を得た。
【0038】実 施 例 4ホワイトカーボン4部、ポリカルボン酸ナトリウム塩3部、アルキルアリールスルホン酸塩2部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル3部をホワイトカーボン3部に吸着させた界面活性剤、ポリビニルアルコール1部、クレー10部、硫安48.5部均一に混合後、衝撃式粉砕した。
【0039】得られた粉末と発泡シラス25部を高速攪拌機中で均一に混合し、適量の水を加えて混練後、1.5mmの孔より押し出し造粒を行った。得られた造粒物を水分が2.5部となるまで乾燥したものに、エトフェンプロックス4部をフェニルキシリールエタン4部に溶解した液を吸着し水面浮遊性粒状農薬製剤を得た。
【0040】実 施 例 5ピリミノバックメチル1.2部、ベンスルフロンメチル2.1部、メフェナセット9部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル4部をホワイトカーボン4部に吸着させた界面活性剤、アセチレンアルコール2.5部をホワイトカーボン2.5部に吸着させた界面活性剤、ポリビニルアルコール1部、塩化カリウム10部および無水芒硝62部を均一に混合後、衝撃式粉砕した。
【0041】得られた粉末と、マイクロスフェアー1部を高速攪拌機中で均一に混合し、適量の水を加えて混練後、0.8mmの孔より押し出し造粒を行った。得られた造粒物を水分が0.7部となるまで乾燥し水面浮遊性粒状農薬製剤を得た。
【0042】実 施 例 6ピリミノバックメチル2.4部、ベンスルフロンメチル2.1部、カフェンストロール8.4部、ダイムロン18部、ポリカルボン酸ナトリウム塩5部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル3部をホワイトカーボン3部に吸着させた界面活性剤、ポリアクリル酸ナトリウム塩0.1部、ステアリン酸カルシウム2部および硫安54.2部を均一に混合後、高速気流中で粉砕した。
【0043】得られた粉末と、マイクロスフェアー0.8部を高速攪拌機中で均一に混合し、適量の水を加えて混練後、2mmの孔より押し出し造粒を行った。得られた造粒物を水分が1部となるまで乾燥し水面浮遊性粒状農薬製剤を得た。
【0044】実 施 例 7ピリミノバックメチル1.2部、ベンスルフロンメチル2部、オキサジクロメホン1.6部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル2部をホワイトカーボン2部に吸着させた界面活性剤、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル燐酸エステル塩1部をホワイトカーボン1部に吸着させた界面活性剤、アセチレンアルコール2部をホワイトカーボン2部に吸着させた界面活性剤、ポリアクリル酸ナトリウム塩0.1部、ベントナイト7部、塩化カリウム15部および無水芒硝59.9部を均一に混合後、衝撃式粉砕した。
【0045】得られた粉末と、マイクロスフェアー1.2部を高速攪拌機中で均一に混合し、適量の水を加えて混練後、5mmの孔より押し出し造粒を行った。得られた造粒物を水分が2部となるまで乾燥し水面浮遊性粒状農薬製剤を得た。
【0046】比 較 例 1ベンスルフロンメチル1.5部、メフェナセット20部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル3部をホワイトカーボン3部に吸着させた界面活性剤、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル燐酸エステル塩3部をホワイトカーボン3部に吸着させた界面活性剤、アセチレンアルコール3部をホワイトカーボン3部に吸着させた界面活性剤、デキストリン2部および塩化カリウム57.3部を均一に混合後、衝撃式粉砕した。
【0047】得られた粉末を、マイクロスフェアー1.2部を高速攪拌機中で均一に混合し、適量の水を加えて混練後、1.2mmの孔より押し出し造粒を行った。得られた造粒物の水分を完全に除去して粒状農薬製剤を得た。
【0048】比 較 例 2ベンスルフロンメチル1.5部、メフェナセット20部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル3部をホワイトカーボン3部に吸着させた界面活性剤、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル燐酸エステル塩3部をホワイトカーボン3部に吸着させた界面活性剤、アセチレンアルコール3部をホワイトカーボン3部に吸着させた界面活性剤、デキストリン2部および塩化カリウム57.1部を均一に混合後、衝撃式粉砕した。
【0049】得られた粉末と、マイクロスフェアー1.2部を高速攪拌機中で均一に混合し、適量の水を加えて混練後、1.2mmの孔より押し出し造粒を行った。得られた造粒物を水分が0.2部となるまで乾燥し粒状農薬製剤を得た。
【0050】比 較 例 3ピリミノバックメチル1.2部、ベンスルフロンメチル2部、オキサジクロメホン1.6部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル2部をホワイトカーボン2部に吸着させた界面活性剤、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル燐酸エステル塩1部をホワイトカーボン1部に吸着させた界面活性剤、アセチレンアルコール2部をホワイトカーボン2部に吸着させた界面活性剤、ポリアクリル酸ナトリウム塩0.1部、ベントナイト7部、塩化カリウム15部および無水芒硝61.9部を均一に混合後、衝撃式粉砕した。
【0051】得られた粉末と、マイクロスフェアー1.2部を高速攪拌機中で均一に混合し、適量の水を加えて混練後、5mmの孔より押し出し造粒を行った。得られた造粒物の水分を完全に除去して粒状農薬製剤を得た。
【0052】比 較 例 4ピリミノバックメチル1.2部、ベンスルフロンメチル2部、オキサジクロメホン1.6部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル2部をホワイトカーボン2部に吸着させた界面活性剤、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル燐酸エステル塩1部をホワイトカーボン1部に吸着させた界面活性剤、アセチレンアルコール2部をホワイトカーボン2部に吸着させた界面活性剤、ポリアクリル酸ナトリウム塩0.1部、塩化カリウム15部および無水芒硝61.7部を均一に混合後、衝撃式粉砕した。
【0053】得られた粉末と、マイクロスフェアー1.2部を高速攪拌機中で均一に混合し、適量の水を加えて混練後、6mmの孔より押し出し造粒を行いながら、スクレーパーにて15mmの長さに裁断した。得られた造粒物を横置きにしたドラムに入れ、曲面で構成された外的形状となるまでドラムを回転し造粒物に転がる動きを与えた後、水分が0.2部となるまで乾燥し粒状農薬製剤を得た。
【0054】比 較 例 5ピリミノバックメチル1.2部、ベンスルフロンメチル2部、オキサジクロメホン1.6部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル2部をホワイトカーボン2部に吸着させた界面活性剤、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル燐酸エステル塩1部をホワイトカーボン1部に吸着させた界面活性剤、アセチレンアルコール2部をホワイトカーボン2部に吸着させた界面活性剤、ポリアクリル酸ナトリウム塩0.1部、ベントナイト7部、塩化カリウム15部および無水芒硝53.9部を均一に混合後、衝撃式粉砕した。
【0055】得られた粉末と、マイクロスフェアー1.2部を高速攪拌機中で均一に混合し、適量の水を加えて混練後、5mmの孔より押し出し造粒を行った。得られた造粒物を水分が8部となるまで乾燥し水面浮遊性粒状農薬製剤を得た。
【0056】比 較 例 6ピリミノバックメチル2.4部、ベンスルフロンメチル2.1部、カフェンストロール8.4部、ダイムロン18部、ポリカルボン酸ナトリウム塩5部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル3部をホワイトカーボン3部に吸着させた界面活性剤、ポリアクリル酸ナトリウム塩0.1部、ステアリン酸カルシウム2部および硫安55.2部を均一に混合後、高速気流中粉砕した。
【0057】得られた粉末と、マイクロスフェアー0.8部を高速攪拌機中で均一に混合し、適量の水を加えて混練後、2mmの孔より押し出し造粒を行った。得られた造粒物の水分を完全に除去して粒状農薬製剤を得た。
【0058】比 較 例 7ピリミノバックメチル1.2部、ベンスルフロンメチル2部、オキサジクロメホン1.6部、ジオクチルスルホサクシネート10部およびデキストリン5部を均一に混合後、衝撃式粉砕した。
【0059】得られた粉末と、パーライト80.2部を高速攪拌機中で均一に混合し、適量の水を加えて混練後、高速攪拌機中で均一に混合し、適量の水を加えて混練後、1.5mmの孔より押し出し造粒を行った。得られた造粒物の水分を完全に除去して粒状農薬製剤を得た。
【0060】比 較 例 8ピリミノバックメチル1.2部、ベンスルフロンメチル2部、オキサジクロメホン1.6部、ラウリル硫酸ナトリウム塩2部、アルキルアリールスルホン酸塩2部、ポリビニルアルコール4部および塩化カリウム57.2部を均一に混合後、衝撃式粉砕した。
【0061】得られた粉末と、発泡シラス30部を高速攪拌機中で均一に混合し、適量の水を加えて混練後、1.5mmの孔より押し出し造粒を行った。得られた造粒物の水分を完全に除去して粒状農薬製剤を得た。
【0062】試 験 例 1前記実施例1〜7および比較例1〜8で調製した粒状農薬製剤について、下記方法により製剤中の水分含量、水面浮遊・崩壊性および粉塵発生率を調べた。この結果を表1に示す。
【0063】[ 試 験 方 法 ]
(1)製剤中の水分含量測定:カールフィッシャー方式の水分測定装置(平沼産業製:AQ−7型)を用い、各粒状農薬製剤の水分含量を120℃の温度条件で測定した。測定は各10回行い、平均の水分含量を算出した。
【0064】(2)水面浮遊性・崩壊性試験:各粒状農薬製剤を任意に100粒選び、水を張った直径30cmのシャーレに投下し、1分後に水面に浮遊している粒の個数を数え、水面に投下した粒数に対する百分率を水面浮遊性とした。また、水を張った直径30cmのシャーレに1粒ずつ投下し、水面の粒が崩壊分散するまでの時間を測定し、崩壊性を調べた。崩壊性の試験は水面に浮遊することができる20粒について行い、1粒当たりの平均崩壊分散時間を算出した。
【0065】(3)粉塵発生試験:各粒状農薬製剤を直径50mm、高さ300mmの円柱状紙製容器に精秤して100g入れ、上下に50回振った後、150メッシュの篩を用いて篩分し、150メッシュ以下の部分の重量を測定し、供試した粒状農薬製剤量に対する100分率を粉塵発生率とした。
【0066】[ 結 果 ]
【表1】


【0067】この結果、水面浮遊性・崩壊性試験において、実施例1〜7の製剤は全ての粒が浮遊したが、比較例1〜4、6〜8の製剤は沈降する粒が認められた。特に、比較例3、6の製剤は200粒について測定を行ったが、全粒水没したため粒が崩壊分散するまでの時間は測定できなかった。また、粉塵発生試験においては、実施例1〜7、比較例1〜4、比較例6〜8の製剤の粉塵発生量は少なかったが、比較例5の粉塵発生量は多かった。
【0068】試 験 例 2成分の均一性および土壌表層濃度の測定:実施例1、7及び比較例1、3の水面浮遊性粒状農薬製剤各6gを、水深を5cmとした図1に示す5m×5mの水田のA地点に散布した。散布24時間後に図1に示す各地点(A〜I)より水を採取して分析し、理論上農薬活性成分が均一に水に分散した場合の水中濃度を100%とした時の比率を求め、さらに各地点の水中濃度の標準偏差を平均値で除し変動率を算出した。
【0069】また、散布24時間後に各地点の土壌を半径10cm、深さ5cmの範囲で一部の水とともに採取して分析し、理論上農薬活性成分が均一に散布された場合の土壌中の成分濃度を100%とした時の比率を求めた。なお、試験の期間中はA地点からI地点に向って、風速3〜4m/sの風が吹いていた。この結果を表2および表3に示す。
【0070】
【表2】


【0071】
【表3】


【0072】実施例1、7の成分の水中均一性、土壌表層濃度の均一性は良好であったが、比較例1、3は散布地点の土壌表層濃度が極めて高く薬害の発生が懸念された。
【0073】
【発明の効果】本発明の水面浮遊性粒状農薬製剤は、従来の水面浮遊性粒状農薬製剤の水面浮遊性を改善したもので、早期に水中に沈降する粒がなく、また、長時間にわたって浮遊し続け、吹き寄せられる粒もない。このように、本発明によれば適切な水面浮遊性が得られるため、処理地点の農薬成分濃度が極端に高くなったり、また極端に低くなることがないので、薬害や効果不足の心配がない。また、水面に浮遊した粒は水面上で崩壊分散し、水田中に均一に拡散するため、省力的な農薬散布が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 成分の均一性を試験するために用いた水田の平面図である。
以 上

【特許請求の範囲】
【請求項1】 農薬有効成分、界面活性剤、固体担体、水面浮遊性付与剤および水を含有し、成形後の水の含有量が水面浮遊性粒状農薬製剤100重量部あたり0.3部〜6部であることを特徴とする水面浮遊性粒状農薬製剤。
【請求項2】 水面に浮遊する粒状農薬製剤が、水面に投与後1ないし30分間で実質的に崩壊分散するものである請求項第1項記載の水面浮遊性粒状農薬製剤。
【請求項3】 農薬有効成分、界面活性剤、固体担体、水面浮遊性付与剤および水を混合し、造粒後、水分が水面浮遊性粒状農薬製剤100重量部に対して0.3部〜6部となるまで乾燥させることを特徴とする水面浮遊性粒状農薬製剤の製造法。
【請求項4】 界面活性剤、固体担体、水面浮遊性付与剤および水を混合し、造粒後、水分が水面浮遊性粒状農薬製剤100重量部に対して0.3部〜6部となるまで乾燥し、次いで農薬有効成分を吸着せしめることを特徴とする水面浮遊性粒状農薬製剤の製造法。

【図1】
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【公開番号】特開2000−319103(P2000−319103A)
【公開日】平成12年11月21日(2000.11.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−132709
【出願日】平成11年5月13日(1999.5.13)
【出願人】(000000169)クミアイ化学工業株式会社 (86)
【Fターム(参考)】