説明

水面浮遊性農薬固形製剤

【課題】本発明は短時間で農薬活性成分を田水中に安定的に均一に拡散し、その結果、作物への薬害が軽減され、病害虫や、雑草などに高い防除効果を有する水面浮遊性農薬固形製剤を得るにある。
【解決手段】農薬活性成分、ポリカルボン酸型高分子活性剤、ジアルキルスルホコハク酸ナトリム及び水面浮遊性中空体として天然ガラス質の鉱物を加熱して発泡させて得られたガラス質中空体を含有してなり、ポリカルボン酸型高分子活性剤とジアルキルスルホコハク酸ナトリムの添加量の重量比が1:1〜1:4であることを特徴とする、構成要件とで水面浮遊性農薬固形製剤を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田等に発生する病害虫、雑草等を防除するために水田に施用する農薬固形製剤に関する。更に詳細には、農薬活性成分の拡散性が優れ、農薬散布が省力化された水面浮遊性農薬固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水田等における農薬散布の省力化が進み、農薬製剤中に農薬活性成分を高濃度に含有させることで散布量を低減させたり、水田に入らずに畦畔から薬剤を投げ込むだけで散布可能な農薬製剤が開発され使用されている。しかし、このような農薬製剤は、農薬活性成分を局所的に高濃度で散布するため、農薬活性成分が田水中に均一に拡散するまでに長い時間を要したり、水田全体での農薬活性成分の均一な拡散が得られず、その結果、作物への薬害や農薬活性成分の土壌残留などの問題が発生することがあった。したがって、農薬製剤を水田へ投入後は、農薬活性成分を速やかに短時間で、且つ、均一に拡散させることが要求される。
【0003】
上記の要求に対して、種々の方法が提案されている。例えば、
(1)農薬活性成分を油状物質、糊状物質、樹脂などを用いて水面浮遊性の担体へ被覆保持させ、粒剤を水面に浮遊させる方法が報告されている(特許文献1、2、3、4、5及び6)。これらの方法は、農薬活性成分を含んだ粒剤が水面上に長時間浮遊しており、且つ、農薬活性成分の拡散性も乏しいため、局所的に農薬活性成分が偏り易い。その結果、作物への薬害や農薬活性効果が十分でないという欠点があった。
(2)特定の界面活性剤および/または有機溶剤を用いることで水面浮遊性の粒剤に拡散性を付与する方法が報告されている(特許文献7、8、9、10、11及び12)。これらの中で、本発明に係るポリカルボン酸型高分子活性剤を用いた方法も提案されており、例えば、特定の有機溶剤とイソブチレン−マレイン酸共重合物、ポリカルボン酸塩およびポリアクリル酸塩を併用する方法(特許文献11)、並びに、ポリアクリル酸ナトリウムと1%水溶液が50dyne/cm以上のアニオン性およびノニオン性活性剤を併用する方法(特許文献12)が報告されている。しかし、これらの方法も、農薬活性成分の拡散性の向上はあるものの、田水面に発生している藻、浮き草などの障害物による拡散性の阻害や、風による吹き寄せなど環境要因による影響を受け易く、十分な拡散性を得られないという問題があった。
なお、ポリカルボン酸型高分子活性剤は、一般的に、粒剤および顆粒水和剤の崩壊を目的として用いることが多く、それ自体の拡散性は弱い。したがって、拡散性向上を目的に使用する例は極めて少なく、使用例も前記に示した特徴的な使用方法に限定されている。
(3)本特許に係るジアルキルスルホコハク酸ナトリムは、表面張力が低く、拡散性が優れている界面活性剤として知られており、それを利用した方法が報告されている(特許文献13、14、15、16,17、18及び19)。これらの中で、水底より水面へ粒が浮上して拡散する農薬製剤(特許文献13及び14)は、一時的に水底へ粒が留まるため、散布地点での土壌残留や農薬活性成分の局在化が発生しやすいという問題があった。また、水面浮遊性の粒剤(特許文献15、16、17、18及び19)では、拡散性は向上しているが、やはり、田水面に発生している藻、浮き草などの障害物による拡散性の阻害や、風による吹き寄せなど環境要因による影響を受け易く、2、3時間程度の短時間では、農薬活性成分を田水中に安定的に均一に拡散させるには十分ではないという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特公昭44−8600号公報
【特許文献2】特公昭48−1179号公報
【特許文献3】特公昭48−1181号公報
【特許文献4】特公昭48−1182号公報
【特許文献5】特公平2−56323号公報
【特許文献6】特開昭53−99327号公報
【特許文献7】特開平6−345603号公報
【特許文献8】特開平6−336403号公報
【特許文献9】特開2000−351701号公報
【特許文献10】特開2004−123623号公報
【特許文献11】特開2003−261401号
【特許文献12】特開平9−295903号公報
【特許文献13】特開平9−118602号公報
【特許文献14】特開平11−1402号公報
【特許文献15】特開平6−279204号公報
【特許文献16】特開平7−82102号公報
【特許文献17】特開平9−183701号公報
【特許文献18】特開平10−182303号公報
【特許文献19】特開平11−315004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上のような従来の問題点に鑑み、田水面に発生している藻、浮き草などの障害物による拡散性の阻害や、風による吹き寄せなどの環境要因による影響を受けにくく、短時間で農薬活性成分を田水中に安定的に均一に拡散し、その結果、作物への薬害が軽減され、病害虫や、雑草などに高い防除効果を有する水面浮遊性農薬固形製剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を解決するべく鋭意研究した。その結果、ポリカルボン酸型高分子活性剤とジアルキルスルホコハク酸ナトリムを所定の重量比率にて併用することで、水面浮遊性農薬固形製剤の拡散性を飛躍的に向上させることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は以下の内容をその要旨とするものである。
(1)農薬活性成分、ポリカルボン酸型高分子活性剤、ジアルキルスルホコハク酸ナトリム及び水面浮遊性中空体として天然ガラス質の鉱物を加熱して発泡させて得られたガラス質中空体を含有してなり、ポリカルボン酸型高分子活性剤とジアルキルスルホコハク酸ナトリムの添加量の重量比が1:1〜1:4であることを特徴とする、水面浮遊性農薬固形製剤
(2)ポリカルボン酸型高分子活性剤として、アクリル酸重合物、メタアクリル酸重合物、アクリル酸とメタアクリル酸との共重合物、アクリル酸とメタアクリル酸メチルエステルとの共重合物、アクリル酸と酢酸ビニルとの共重合物、並びに、それら重合物のアルカリ金属塩、アンモニウム塩および有機塩より選ばれる1種あるいは2種以上の化合物を含有することを特徴とする、前記(1)に記載の水面浮遊性農薬固形製剤
(3)水面浮遊性農薬固形製剤を水溶性高分子フィルムで包装してなることを特徴とする、前記(1)又は前記(2)に記載の水面浮遊性農薬固形製剤に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水面浮遊性農薬固形製剤を実施すると次のような効果がもたらされる。すなわち、
(1)水田に散布されると水面浮遊性農薬固形製剤から溶出した農薬活性成分が田面水中へ短時間で、均一に拡散するので、優れた殺菌、殺虫、除草活性効果を発揮する。
(2)水田中での拡散性が優れるため、畦畔から水田へ散布するだけでよく、省力的である。
(3)また本発明の水面浮遊性農薬固形製剤は水田で使用される農薬活性成分の種類を特定のものに限定されずに幅広い種類の農薬活性成分(除草剤、殺菌剤、殺虫剤)に適用できる点にも特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の水面浮遊性農薬固形製剤についてより詳しく説明する。
本発明の水面浮遊性農薬固形製剤は、農薬活性成分、ポリカルボン酸型高分子活性剤、ジアルキルスルホコハク酸ナトリム及び水面浮遊性中空体として天然ガラス質の鉱物を加熱して発泡させて得られたガラス質中空体を含有してなり、ポリカルボン酸型高分子活性剤とジアルキルスルホコハク酸ナトリムの添加量の重量比率が1:1〜1:4であることを必須とした粉状物、粒状物、錠剤成型物の固形製剤である。また、必要に応じて、それらを水溶性高分子フィルムで包装することができる。なお、本発明の農薬固形製剤は、田水中に散布すると水面上を浮遊・拡散する。
【0009】
<農薬活性成分について>
本発明の農薬活性成分は、通常水田に使用される農薬活性成分であれば何れも使用できる。その様な殺虫活性成分の例としては、MPP、MEP、ダイアジノン、イソキサチオン、ピリダフェンチオン、クロルピリホスメチル、マラソン、PAP、DEP、NAC、BPMC、XMC、カルボスルファン、ベンフラカルブ、フラチオカルブ、チオジカルブ、ペルメトリン、シクロプロトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェン、カルタップ、チオシクラム、ベンスルタップ、イミダクロプリド、ニテンピラム、クロチアニジン、ジノテフラン、テブフェノジド、クロマフェノジド、メトキシフェノジド、ブプロフェジン、フィプロニル、エチプロール、ピメトロジンなどが挙げられる。
殺菌活性成分の例としては、塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅、チウラム、IPB、EDDP、フサライド、トリシクラゾール、ピロキノン、カルプロパミド、ジクロシメット、フェノキサニル、チオファネートメチル、ベノミル、メプロニル、フルトラニル、フラメトピル、チフルザミド、トリフルミゾール、プロクロラズ、ぺフラゾエート、シメコナゾール、アゾキシストロビン、メトミノストロビン、テクロフタラム、オキソリニック酸、プロベナゾール、イソプロチオラン、フェリムゾン、ジクロメジン、ペンシクロン、チアジニル、カスガマイシン、ポリオキシン、バリダマイシンなどが挙げられる。
除草活性成分の例としては、MCPA、クロメプロップ、シハロホップブチル、フルジアホップ、ベンチオカーブ、エスプロカルブ、モリネート、ピリブチカルブ、DCPA、プレチラクロール、ブタクロール、テニルクロール、ブロモブチド、エトベンザニド、メフェナセット、カフェンストロール、アニロホス、ダイムロン、クミルロン、ベンスルフロンメチル、エトキシスルフロン、ピラゾスルフロンエチル、アジムスルフロン、イマゾスルフロン、シクロスルファムロン、ピリミノバックメチル。ビスピリバックナトリム塩、シメトリン、プロメトリン、ジメタメトリン、ベンタゾン、ピラゾレート、ピラゾキシフェン、ベンゾフェナップ、オキサジアゾン、パラコート、フェントラザミド、ACN、ブタミホス、インダノファン、ベンフレセート、ペントキサゾン、オキサジクロメホン、テフリルトリオン、ベンゾビシクロン、ピリフタリドなどが挙げられる。
そして、これらの農薬活性成分は、1種または2種以上を併用しても何ら問題がない。
【0010】
農薬活性成分の製剤中への添加量は、特に限定されないが、製剤100重量部中に通常0.1〜70重量部、好ましくは0.3〜60重量部である。
また、本発明においては、農薬活性成分のほかに、植物成長調整成分などを添加してもかまわない。
なお、上記農薬性成分の具体例は、それぞれ単剤、2種以上の混合剤ともに「農薬ハンドブック2005年版」(社団法人日本植物防疫協会発行)に記載(p.2−111、274−472、475−674参照)されている。
【0011】
<ポリカルボン酸型高分子活性剤およびジアルキルスルホコハク酸ナトリムについて>
本発明では、ポリカルボン酸型高分子活性剤とジアルキルスルホコハク酸ナトリムを所定の重量比率にて併用することにより、水面浮遊性農薬固形製剤の拡散性を飛躍的に向上させることができる。
【0012】
本発明で使用されるポリカルボン酸型高分子活性剤の例として、アクリル酸重合物、メタアクリル酸重合物、アクリル酸とメタアクリル酸の共重合物、アクリル酸とメタアクリル酸メチルエステルの共重合物、アクリル酸と酢酸ビニルの共重合物、マレイン酸とスチレンの共重合物、イソブチレンとマレイン酸の共重合物、並びにそれら重合物のアルカリ金属塩、アンモニウム塩および有機塩などが挙げられる。それらポリカルボン酸型高分子活性剤の中でも、アクリル酸重合物、メタアクリル酸重合物、アクリル酸とメタアクリル酸の共重合物、アクリル酸とメタアクリル酸メチルエステルの共重合物、アクリル酸と酢酸ビニルの共重合物がジアルキルスルホコハク酸ナトリムとの併用で拡散性に優れており、好ましい。なお、重合物の平均分子量(以下、分子量は平均分子量を示す)については、特に限定はされないが、0.1万〜40万が拡散性に優れており好ましく、さらには1万〜20万が好ましい。上記のポリカルボン酸型高分子活性剤は、1種または2種以上を併用しても何ら問題ない。
【0013】
本発明で使用されるジアルキルスルホコハク酸ナトリムのアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、通常、炭素数6〜12の範囲が拡散性に優れており好ましく、それらの中でも、炭素数6〜9の範囲が特に好ましい。上記のジアルキルスルホコハク酸ナトリムは、1種または2種以上を併用しても何ら問題がない。
【0014】
ポリカルボン酸型高分子活性剤とジアルキルスルホコハク酸ナトリムとを併用した具体例として、分子量40万のポリアクリル酸ナトリムとジオクチルスルホコハク酸ナトリム(実施例5)、分子量20万のポリアクリル酸ナトリムとジオクチルスルホコハク酸ナトリム(実施例6)、分子量5万のポリアクリル酸ナトリムとジノニルスルホコハク酸ナトリム(実施例10)、分子量3万のポリアクリル酸ナトリムとジオクチルスルホコハク酸ナトリム(実施例8)、分子量2万のポリアクリル酸ナトリムとジオクチルスルホコハク酸ナトリム(実施例2、9、16、17)、分子量2万のポリアクリル酸カリウムとジヘキシルスルホコハク酸ナトリム(実施例4)、分子量1万のポリアクリル酸ナトリムとジオクチルスルホコハク酸ナトリム(実施例15)、分子量0.1万のポリアクリル酸ナトリムとジオクチルスルホコハク酸ナトリム(実施例7)、分子量2万のポリメタアクリル酸ナトリムとジオクチルスルホコハク酸ナトリム、分子量40万のポリメタアクリル酸カリウムとジドデシルスルホコハク酸ナトリム、分子量5万のアクリル酸とメタアクリル酸メチルエステルの共縮合物ナトリム塩とジオクチルスルホコハク酸ナトリム、分子量1万のアクリル酸とメタアクリル酸の共縮合物アンモニウム塩とジオクチルスルホコハク酸ナトリム(実施例11)、分子量2万のアクリル酸と酢酸ビニルの共縮合物ナトリム塩とジノニルスルホコハク酸ナトリム(実施例3)、分子量30万のアクリル酸と酢酸ビニルの共縮合物カリウム塩とジオクチルスルホコハク酸ナトリム、分子量5万のマレイン酸とスチレンの共縮合物ナトリム塩とジオクチルスルホコハク酸ナトリム(実施例1)、分子量10万のイソブチレンとマレイン酸の共縮合物ナトリム塩とジオクチルスルホコハク酸ナトリム、分子量1万のポリアクリル酸ナトリムとジブチルスルホコハク酸ナトリム(実施例14)、分子量1万のポリアクリル酸ナトリムとジノニルスルホコハク酸ナトリム(実施例12)、分子量1万のポリアクリル酸ナトリムとジドデシルスルホコハク酸ナトリム(実施例13)などが挙げられる。
【0015】
これらの中でも拡散性の点では、分子量20万のポリアクリル酸ナトリムとジオクチルスルホコハク酸ナトリム(実施例6)、分子量5万のポリアクリル酸ナトリムとジノニルスルホコハク酸ナトリム(実施例10)、分子量3万のポリアクリル酸ナトリムとジオクチルスルホコハク酸ナトリム(実施例8)、分子量2万のポリアクリル酸ナトリムとジオクチルスルホコハク酸ナトリム(実施例2、9、16、17)、分子量1万のポリアクリル酸ナトリムとジオクチルスルホコハク酸ナトリム(実施例15)、分子量2万のポリメタアクリル酸ナトリムとジオクチルスルホコハク酸ナトリム、分子量5万のアクリル酸とメタアクリル酸メチルエステルの共縮合物ナトリム塩とジオクチルスルホコハク酸ナトリム、分子量1万のアクリル酸とメタアクリル酸の共縮合物アンモニウム塩とジオクチルスルホコハク酸ナトリム(実施例11)、分子量2万のアクリル酸と酢酸ビニルの共縮合物ナトリム塩とジノニルスルホコハク酸ナトリム(実施例3)、分子量1万のポリアクリル酸ナトリムとジノニルスルホコハク酸ナトリム(実施例12)が好ましい。なお、これらの例示に限定されるものではない。
【0016】
ポリカルボン酸型高分子活性剤とジアルキルスルホコハク酸ナトリムの製剤中への添加量は、重量比率が1:1〜1:4の範囲内にあると水面浮遊性農薬固形製剤中の農薬活性成分の拡散性を飛躍的に向上させることができる。この範囲外の重量比率にて製剤中に添加した場合、すなわち、ジアルキルスルホコハク酸ナトリムの重量比率が1未満では、水面浮遊性固形製剤が水面上に広がるまでに時間を要し、拡散性が劣る傾向があり、4を超過するとポリカルボン酸高分子活性剤を添加している効果がなくなり、ジアルキルスルホコハク酸ナトリムを単独で添加している製剤と拡散性がほぼ同じになる傾向にある。なお、ポリカルボン酸型高分子活性剤とジアルキルスルホコハク酸ナトリムを所定の重量比率内で製剤中に添加する際に、ポリカルボン酸型高分子活性剤として、製剤100重量部中に0.1重量部以上を添加すれば拡散性は向上するが、0.5〜5重量部の範囲が好ましい。
【0017】
<水面浮遊性中空体について>
本発明に使用される水面浮遊性中空体は、天然ガラス質の鉱物を加熱して発泡させて得られたガラス質中空体であり、散布した農薬固形製剤を田水表面に浮遊させる働きを付与している。
本発明に使用されるガラス質中空体の例としては、黒曜石、真珠岩、松脂岩及びシラスなどの天然ガラス質の鉱物を加熱して発泡させた発泡パーライト、シラスバルーン(商品名:登録商標、以下同じ)、並びにタイセツバルーンなどがあげられるが、これらに限定されるわけではない。
上記の水面浮遊性中空体は、1種または2種以上を併用しても何ら問題ない。
水面浮遊性中空体の製剤中への添加量は、製剤100重量部中に通常0.5〜98重量部、好ましくは1〜95重量部である。
【0018】
水面浮遊性農薬固形製剤(粉状物、粒状物、錠剤成型物)中には、分散剤、湿潤剤、崩壊・造粒性向上を目的としたその他の界面活性剤、水面浮遊性中空体以外の浮遊性担体、溶剤、水面浮遊性を有しない固体担体、結合剤、防菌・防かび剤及び安定化剤などの助剤を添加することができる。
【0019】
崩壊・造粒性向上を目的としたその他の界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤および両性界面活性剤などがあげられ、これらの界面活性剤を1種または2種以上を併用してもかまわない。
【0020】
このような非イオン界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキレート、ポリオキシエチレンフェニルエーテルポリマー、ポリオキシエチレンアルキレンアリールフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレングリコール、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーなどがあげられるが、これらの例示のみに限定されるものではない。
【0021】
また、陰イオン界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルフォスフェート、リグニンスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルサルフェート、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルサルフェート、アルキルベンゼンスルホン酸塩、及びアルキルスルホン酸塩などがあげられるが、これらの例示のみに限定されるものではない。
【0022】
また、陽イオン界面活性剤および両性界面活性剤の例としては、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アルキルベタイン及びアミンオキサイドなどがあげられるが、これらの例示のみに限定されるものではない。
【0023】
溶剤としては、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオレイル、アジピン酸ジイソデシル、フタル酸ジエチルヘキシル、フタル酸ジデシル、トリメット酸2−エチルヘキシル、トリメット酸トリデシルなどの多塩基酸アルコールエステル、2−エチルヘキサン酸セチル、ヤシ脂肪酸セチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、オレイン酸メチル、オレイン酸オクチルなどの脂肪酸アルコールエステル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエートなどの多価アルコール脂肪酸エステル、オクチルアルコール、ラウリルアルコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールなどの高級アルコール、メチルジグリコール、メチルトリグリコール、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテルなどのグリコールエーテル、1,2−ジメチル−4−エチル−ベンゼン、メチルナフタレン、1−フェニル−1−キシリルエタン、1−キシリル−1−(3−α−メチルベンジルフェニル)エタンなどの芳香族炭化水素、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、流動パラフィンなどのパラフィン系炭化水素、大豆油、ヤシ油、ナタネ油、キリ油、ヒマシ油及び綿実油などの植物油が挙げられるが、これらの例示のみに限定されるわけではない。
また、溶剤は、1種または2種以上を併用しても何ら問題ない。
【0024】
本発明では担体として水面浮遊性中空体を必須として使用するが、水面浮遊性中空体以外の浮遊性担体を併用してもかまわない。例として、木紛、オガクズ、ケナフ、籾殻、籾殻粉末及びコルクなど植物質担体があげられるが、これらの例示のみに限定されるわけではない。
【0025】
また、水面浮遊性でない担体でも水面浮遊性中空体と混合するなどして、製剤全体が水面浮遊性を有するなら添加してもかまわない。このような固体担体の例として、クレー、タルク、炭酸カルシウム、ベントナイト、ジークライト、セリサイト、酸性白土、珪石、ケイソウ土、ゼオライト、カオリン、ホワイトカーボン、塩化カルシウム、鋸鉄、パルプ、グルコース、フルクトース、マルトース、シュークロース、ラクトースなどの単糖類、二糖類及び多糖類などがあげられるが、これらの例示のみに限定されるものではない。上記の担体は、1種または2種以上を併用しても何ら問題がない。
【0026】
結合剤の例としては、ポリビニルアルコール、デンプン、デキストリン、カルボキシメチルセルロース及び結晶セルロースなどがあげられるが、これらの例示のみに限定されるものではない。
【0027】
防菌・防かび剤の例としては、ソルビン酸カリウム、及びパラクロロメタキシレノールなどがあげられるが、これらの例示のみに限定されるものではない。
【0028】
農薬活性成分の安定化剤の例として、酸化防止剤、紫外線防止剤、結晶析出防止剤及び効果増強剤があげられるが、これらの例示のみに限定されるものではない。
【0029】
本発明の水面浮遊性農薬固形製剤は、粉状物、粒状物、錠剤成型物に調製することができるが、製剤の粉立ちの点から粒状物、錠剤成型物の方が好ましい。また、製剤を水田に散布する際は、直接水田へ散布してもよいし、作業者への安全性を配慮して、直接製剤を手で触らないように、水溶性高分子フィルムにより包装して散布してもよい。
水溶性高分子フィルムの例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、または、それらにグリセリンなどの可塑剤を配合して得られた水溶性の薄膜状フィルムであるが、これらの例示のみに限定されるものではない。
水溶性高分子フィルムにより包装し水田に散布する場合には、投入のしやすさおよび省力性を考慮すると、水溶性高分子フィルムで1個あたり5〜100gに包装するのが好ましく、また、水田中へは、3〜40個程度投入するのが好ましい。ここでの、包装形状は特に限定されるものではなく、例えば、球状、円柱状、箱状、不定形のいずれでもよい。
【0030】
本発明の水面浮遊性農薬固形製剤の調製方法は特に限定されないが、例えば次の方法によって調製できる。水面浮遊性農薬固形製剤は、農薬活性成分、ポリカルボン酸型高分子活性剤、ジアルキルスルホコハク酸ナトリム、水面浮遊性中空体として天然ガラス質の鉱物を加熱して発泡させて得られたガラス質中空体および必要であればその他補助剤を添加し、よく混合して粉状物が得られる。また、それら粉状物に対して、押出し造粒機、転動造粒機、噴霧乾燥造粒機にて粒状成型物を製造するか、または錠剤成型機などで成型して、錠剤成型物を製造してもよく、製造工程において、水や溶剤を使用したり、乾燥してもよい。また、予め、粒状成型物、錠剤成型物を製造後、それらの成型物にポリカルボン酸型高分子活性剤とジアルキルスルホコハク酸ナトリムを1種または2種以上を混合してスプレーにて含浸させて調製してもかまわない。また、溶剤にて農薬活性成分を溶解または分散させてスプレーにて含浸させてもよい。本発明の水面浮遊性農薬固形製剤では粒剤および錠剤の大きさ、重量、形状については特に制限はなく、目的を達成しうる範囲内で適宜変更して実施できる。
上記の方法により製剤化した本発明の水面浮遊性農薬固形製剤は、水田に処理すると田水面に浮遊し、田水面上を速やかに拡散する。その間に農薬活性成分を田水中に広く均一に拡散させることができる。
【実施例】
【0031】
以下に、実施例で本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、部とあるのは、すべて重量部を示す。
なお、以下に示した農薬活性成分を前述した各種の系統の水田用農薬活性成分から1種または2種以上の混合農薬活性成分に置換して製剤化することによって、農薬活性成分の異なる種々の本発明の水面浮遊性農薬製剤を得ることができる。
[実施例1]
シメトリン9.0部、分子量5万のマレイン酸とスチレンの共重合物のナトリウム塩3.0部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリム(1%水溶液の表面張力26.8mN/m、20℃)3.0部、シラスバルーン50.0部、カルボキシメチルセルロース3.0部、炭酸カルシム32.0部をハンマーミル(不二パウダル株式会社製)で混合後、この混合物100部に対し、水20部を添加し、双腕ニーダー(不二パウダル株式会社製)で混練混合する。次に、1.5mm径のスクリーンを付けた押出し造粒機(日本薬業株式会社製)で造粒し、さらに流動層乾燥機(不二パウダル株式会社製)で乾燥した後、目開き1.7mmと1.18mmの篩を用いて篩別した粒状物をポリビニルアルコールからなる水溶性高分子フィルム(厚さ40μm)で1個当り50gに包装して、本発明の水面浮遊性農薬固形製剤(粒剤)を得た。
【0032】
[実施例2]
シメトリン9.0部、分子量2万のポリアクリル酸ナトリム2.0部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリム2.0部、シラスバルーン40.0部、デキストリン3.0部、クレー44.0部を実施例1に準じて調製し、包装した本発明の水面浮遊性農薬固形製剤(粒剤)を得た。
【0033】
[実施例3]
シメトリン9.0部、分子量2万のアクリル酸と酢酸ビニルの共重合物ナトリウム塩2.0部、ジノニルスルホコハク酸ナトリム2.0部、シラスバルーン50.0部、デキストリン3.0部、クレー34.0部を実施例1に準じて調製し、包装した本発明の水面浮遊性農薬固形製剤(粒剤)を得た。
【0034】
[実施例4]
シメトリン9.0部、分子量2万のポリアクリル酸カリウム2.0部、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリム6.0部、シラスバルーン50.0部、デキストリン3.0部、ホワイトカーボン10.0部、クレー20.0部を実施例1に準じて調製し、包装した本発明の水面浮遊性農薬固形製剤(粒剤)を得た。
【0035】
[実施例5]
シメトリン9.0部、分子量40万のポリアクリル酸ナトリム2.0部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリム2.0部、シラスバルーン40.0部、デキストリン3.0部、クレー44.0部を実施例1に準じて調製し、包装した本発明の水面浮遊性農薬固形製剤(粒剤)を得た。
【0036】
[実施例6]
シメトリン9.0部、分子量20万のポリアクリル酸ナトリム2.0部、ジオクチルルスルホコハク酸ナトリム2.0部、シラスバルーン40.0部、デキストリン3.0部、クレー44.0部を実施例1に準じて調製し、包装した本発明の水面浮遊性農薬固形製剤(粒剤)を得た。
【0037】
[実施例7]
シメトリン9.0部、分子量0.1万のポリアクリル酸ナトリム2.0部、ジオクチルルスルホコハク酸ナトリム2.0部、シラスバルーン40.0部、デキストリン3.0部、クレー44.0部を実施例1に準じて調製し、包装した本発明の水面浮遊性農薬固形製剤(粒剤)を得た。
【0038】
[実施例8]
シメトリン9.0部、分子量3万のポリアクリル酸ナトリム5.0部、ジオクチルルスルホコハク酸ナトリム20.0部、シラスバルーン40.0部、デキストリン3.0部、ホワイトカーボン10.0部、クレー13.0部を実施例1に準じて調製し、包装した本発明の水面浮遊性農薬固形製剤(粒剤)を得た。
【0039】
[実施例9]
シメトリン9.0部、分子量2万のポリアクリル酸ナトリム0.2部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリム0.2部、シラスバルーン40.0部、デキストリン3.0部、クレー47.6部を実施例1に準じて調製し、包装した本発明の水面浮遊性農薬固形製剤(粒剤)を得た。
【0040】
[実施例10]
シメトリン9.0部、分子量5万のポリアクリル酸ナトリム0.5部、ジノニルスルホコハク酸ナトリム0.5部、発泡パーライト45.0部、デキストリン5.0部、ホワイトカーボン10.0部、クレー30.0部を実施例1に準じて調製し、本発明の粒状物の水面浮遊性農薬固形製剤(粒剤)を得た。
【0041】
[実施例11]
シメトリン9.0部、分子量1万のアクリル酸とメタアクリル酸の共重合物のアンモニウム塩1.0部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリム4.0部、シラスバルーン40.0部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリム3.0部、結晶セルロース43.0部をハンマーミルで混合後、打錠機にて厚さ3mm、直径10mmの円柱状に20kg/cmの圧力で成型した錠剤をカルボキシメチルセルロースからなる水溶性高分子フィルム(厚さ30μm)で1個当り50gに包装し、包装した本発明の水面浮遊性農薬固形製剤(錠剤)を得た。
【0042】
[実施例12]
MCPAチオエチル7.2部、分子量1万のポリアクリル酸ナトリム1.0部、ジノニルスルホコハク酸ナトリム2.0部、シラスバルーン50.0部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0部、デキストリン5.0部、タルク32.8部を実施例1に準じて調製し、包装した本発明の水面浮遊性農薬固形製剤(粒剤)を得た。
【0043】
[実施例13]
MCPAチオエチル7.2部、分子量1万のポリアクリル酸ナトリム1.0部、ジドデシルスルホコハク酸ナトリム2.0部、シラスバルーン50.0部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0部、デキストリン5.0部、タルク32.8部を実施例1に準じて調製し、包装した本発明の水面浮遊性農薬固形製剤(粒剤)を得た。
【0044】
[実施例14]
MCPAチオエチル7.2部、分子量1万のポリアクリル酸ナトリム1.0部、ジブチルスルホコハク酸ナトリム2.0部、シラスバルーン50.0部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0部、デキストリン5.0部、タルク32.8部を実施例1に準じて調製し、包装した本発明の水面浮遊性農薬固形製剤(粒剤)を得た。
【0045】
[実施例15]
MCPAチオエチル7.2部、分子量1万のポリアクリル酸ナトリム0.1部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリム0.1部、シラスバルーン85.0部、ホワイトカーボン2.0部、ラクトース5.6部をハンマーミルで混合した粉状物をポリビニルアルコールからなる水溶性高分子フィルム(厚さ40μm)で1個当り50gに包装し、本発明の水面浮遊性農薬固形製剤(粉状物)を得た。
【0046】
[実施例16]
カスガマイシン2.4部、分子量2万のポリアクリル酸ナトリム2.0部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリム2.0部、シラスバルーン40.0部、デキストリン3.0部、珪藻土30.0部、クレー20.6部を実施例1に準じて調製し、包装した本発明の水面浮遊性農薬固形製剤(粒剤)を得た。
【0047】
[実施例17]
ダイアジノン18.0部、分子量2万のポリアクリル酸ナトリム2.0部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリム2.0部、発泡パーライト45.0部、デキストリン5.0部、タルク26.0部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル2.0部を実施例1に準じて調製し、包装した本発明の水面浮遊性農薬固形製剤(粒剤)を得た。
【0048】
次に、比較例を具体的に示す。また、部とあるのは、すべて重量部を示す。
[比較例1]
シメトリン9.0部、シラスバルーン40.0部、デキストリン3.0部、クレー48.0部を実施例1に準じて調製し、包装した水面浮遊性農薬固形製剤を得た。
[比較例2]
シメトリン9.0部、分子量2万のポリアクリル酸ナトリム2.0部、シラスバルーン40.0部、デキストリン3.0部、クレー46.0部を実施例1に準じて調製し、包装した水面浮遊性農薬固形製剤を得た。
[比較例3]
シメトリン9.0部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリム2.0部、シラスバルーン40.0部、デキストリン3.0部、クレー46.0部を実施例1に準じて調製し、包装した水面浮遊性農薬固形製剤を得た。
[比較例4]
シメトリン9.0部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリム10.0部、シラスバルーン40.0部、デキストリン3.0部、クレー38.0部を実施例1に準じて調製し、包装した水面浮遊性農薬固形製剤を得た。
[比較例5]
シメトリン9.0部、分子量2万のポリアクリル酸ナトリム2.0部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリム2.0部、デキストリン3.0部、クレー84.0部を実施例1に準じて調製し、包装した水面浮遊性農薬固形製剤を得た。
[比較例6]
シメトリン9.0部、分子量2万のポリアクリル酸ナトリム4.0部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリム2.0部、シラスバルーン40.0部、デキストリン3.0部、クレー42.0部を実施例1に準じて調製し、包装した水面浮遊性農薬固形製剤を得た。
[比較例7]
シメトリン9.0部、分子量2万のポリアクリル酸ナトリム2.0部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリム10.0部、シラスバルーン40.0部、デキストリン3.0部、クレー36.0部を実施例1に準じて調製し、包装した水面浮遊性農薬固形製剤を得た。
【0049】
[比較例8]
シラスバルーン40.0部に対して、シメトリン9.0部と珪藻土49.0部の混合物を20%ポリビニルアルコール(ケン化度88mol%、重合度500)水溶液10.0部にて粉衣乾燥して粉状物の水面浮遊性固形製剤を得た。
[比較例9]
シメトリン9.0部、シラスバルーン40.0部、カルボキシメチルセルロース5.0部、ラウリル硫酸ナトリム3.0部、オレイン酸ナトリム3.0、珪藻土40.0部をハンマーミル(不二パウダル株式会社製)で混合後、この混合物100部に対し、水30部を添加し、双腕ニーダー(不二パウダル株式会社製)で混練混合する。次に、1.5mm径のスクリーンを付けた押出し造粒機(日本薬業株式会社製)で造粒し、さらに流動層乾燥機(不二パウダル株式会社製)で乾燥した後、目開き1.7mmと1.18mmの篩を用いて篩別した粒状物をポリビニルアルコールからなる水溶性高分子フィルム(厚さ40μm)で1個当り50gに包装して、水面浮遊性農薬固形製剤を得た。
[比較例10]
双腕ニーダー(不二パウダル株式会社製)にてバーミキュライト(2.0〜0.5mm区分)35.0部と流動パラフィン35.0部を混合する。その中に、シメトリン9.0部、サーフィノール104S(日信化学(株)製、アセチレン系ノニオン界面活性剤)2.0部、クレー19.0部をハンマーミル(不二パウダル株式会社製)で混合した粉体を徐々に添加混合して、被覆した粒状物を得られた。その粒状物をポリビニルアルコールからなる水溶性高分子フィルム(厚さ40μm)で1個当り50gに包装して、水面浮遊性農薬固形製剤を得た。
【0050】
[比較例11]
シメトリン9.0部、分子量200万のイソブチレンとマレイン酸共重合物のナトリム塩2.0部、シラスバルーン50.0部、カルボキシメチルセルロース8.0部、珪藻土29.0部、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート2.0部を実施例1に準じて調製し、包装した水面浮遊性農薬固形製剤を得た。
[比較例12]
シメトリン9.0部、分子量100万のポリアクリル酸ナトリム5.0部、シラスバルーン40.0部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル(1%水溶液の表面張力51.2mN/m、20℃)3.0部、尿素43.0部を実施例1に準じて調製し、包装した水面浮遊性農薬固形製剤を得た。
[比較例13]
シメトリン9.0部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリム2.0部、キサンタンガム0.5部、塩化カリウム88.5部を実施例1に準じて調製し、包装した水面浮上性農薬固形製剤を得た。
[比較例14]
双腕ニーダー(不二パウダル株式会社製)にてシラスバルーン(1.4〜0.5mm区分)72.0部と流動パラフィン15.0部を混合する。その中に、シメトリン9.0部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリム2.0部、リグニンスルホン酸ナトリウム2.0部をハンマーミル(不二パウダル株式会社製)で混合した粉体を徐々に添加混合して、被覆した粒状物を得られた。その粒状物をポリビニルアルコールからなる水溶性高分子フィルム(厚さ40μm)で1個当り50gに包装して、水面浮遊性農薬固形製剤を得た。
【0051】
次に、本発明の拡散性試験、並びに除草効果、殺菌効果および殺虫効果の試験例を示す。
[試験例1] 拡散性試験
1区画の面積が100平方メートル(10m×10m)の試験区(湛水深3cm)を作り、その中央(1か所)に実施例、比較例に準じて調製した試料50gを処理した。処理3時間後に試験区の中央(A区)および四隅(B区〜E区)より水面下1.5cmの5か所にて水を各50ml採水し、農薬活性成分の濃度を分析し、下記の式にて計算して拡散率を求めた。結果は表1(実施例)、表2(比較例)に示す。
農薬活性成分がシメトリン、MCPAチオエチル、ダイアジノンの場合は、「厚生労働省 残留農薬試験方法」に準じてガスクロマトグラフィーにより濃度を分析し、カスガマイシンの場合は、「厚生労働省 残留農薬試験方法」に準じて生物検定法により濃度を分析した。
【0052】
【数1】

【0053】
[試験例2] 除草効果試験
1区画の面積が100平方メートル(10m×10m)の試験区(湛水深3cm)を作り、アゼナの種子50gを土壌表層に播種した。アゼナ4.0葉時期にその中央(1か所)に実施例、比較例に準じて調製した試料50gを処理した。薬剤散布40日後に試験区内に残存する雑草を抜き取り、その乾燥重量(g)を測定し、下記式にて除草効果(%)を求めた。結果は表1(実施例)、表2(比較例)に示す。
【0054】
【数2】

【0055】
[試験例3] 殺菌効果試験
いもち病が毎年発生する水田にて1区画の面積が100平方メートル(10m×10m)の試験区(湛水深3cm)を作り、稲苗の移植と同時に、その中央(1か所)に実施例、比較例に準じて調製した試料50gを処理した。薬剤処理から60日後に各試験区内より任意の5箇所を選び、それぞれ50株につき、いもち病の発病程度を下記基準にて調査して、発病度を求め、無処理区と試験区の発病度から防除価(%)を求めた。結果は表1(実施例)、表2(比較例)に示す。

【0056】
【数3】

【0057】
【数4】

【0058】
[試験例4] 殺虫効果試験
ニカメイチュウが毎年発生する水田にて1区画の面積が100平方メートル(10m×10m)の試験区(湛水深3cm)を作り、稲苗の移植と同時に、その中央(1か所)に実施例、比較例に準じて調製した試料50gを処理した。薬剤処理から60日後に書く試験区内より任意の5箇所を選び、それぞれ100株につき、被害株数を調査して、被害株率を求め、無処理区と試験区の被害株率から防除価(%)を求めた。結果は表1(実施例)、表2(比較例)に示す。
【0059】
【数5】

【0060】
【数6】

【0061】
【表1】

【0062】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
農薬活性成分、ポリカルボン酸型高分子活性剤、ジアルキルスルホコハク酸ナトリム及び水面浮遊性中空体として天然ガラス質の鉱物を加熱して発泡させて得られたガラス質中空体を含有してなり、ポリカルボン酸型高分子活性剤とジアルキルスルホコハク酸ナトリムの添加量の重量比が1:1〜1:4であることを特徴とする、水面浮遊性農薬固形製剤。
【請求項2】
ポリカルボン酸型高分子活性剤として、アクリル酸重合物、メタアクリル酸重合物、アクリル酸とメタアクリル酸との共重合物、アクリル酸とメタアクリル酸メチルエステルとの共重合物、アクリル酸と酢酸ビニルとの共重合物、並びに、それら重合物のアルカリ金属塩、アンモニウム塩および有機塩より選ばれる1種あるいは2種以上の化合物を含有することを特徴とする、請求項1に記載の水面浮遊性農薬固形製剤。
【請求項3】
水面浮遊性農薬固形製剤を水溶性高分子フィルムで包装してなることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の水面浮遊性農薬固形製剤。

【公開番号】特開2009−191011(P2009−191011A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33140(P2008−33140)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000242002)北興化学工業株式会社 (182)
【Fターム(参考)】