説明

水頭症治療用シャントバルブ

【課題】 シャントバルブ設置後、脳室内の圧力が異常になったとき、脳室内の圧力を急激に変化させることなく、脳室内から排出する脳脊髄液の流量を多くのバリエーションに微調節することのできる水頭症治療用シャントバルブを提供すること。
【解決手段】 脳室内から脳脊髄液の排出量を調整してする水頭症治療用シャントバルブであって,所定の位置に安定させる硬化プラスチック基板と,筒状に形成され脳室カテーテルの後端を接続する流入側コネクタと,脳室内の圧の変化に応じて脳脊髄液の流量の増減を第1の開閉弁の調整によって行い、開閉圧を複数段に可変することのできる第1のバルブ圧可変器と,前記第1のバルブ圧可変器の流出路から流出される脳脊髄液の流圧の変化に応じて脳脊髄液の流量の増減を第2の開閉弁の調整によって行い、開閉圧を複数段に可変することのできる第2のバルブ圧可変器と,筒状に形成され腹腔カテーテルの後端を接続する流出側コネクタとによって構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水頭症治療用シャントバルブに係り、特に、設置後、脳室内での脳脊髄液の産生に異常を来したときに、脳室内の圧力を急激に変化させることなく、脳脊髄液を腹腔カテーテル内に緩やかに流すように流量を調整することができる水頭症治療用シャントバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水頭症は、脳脊髄液が頭の内側(脳室)に過剰に溜まり、脳を圧迫して種々の症状を併発する病気のことで、年齢を問わずに発症する病気である。
脳室は、脳の内側にある空洞のことで、一般に左右一対の側脳室と、第三脳室、第四脳室の4つに分かれている。
側脳室は、左右の大脳半球の内部に一対あり、透明中隔によって仕切られ、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉と広範囲に及んでおり、室間孔(モンロー孔)によって、第三脳室へと繋がっている。
また、第三脳室は、間脳の内部にある脳室で、間脳を経て、側壁は視床、腹壁と腹側壁は視床下部に接し、中脳の中を貫通する細い管状の脳室である中脳水道を経て第四脳室に接続されている。
さらに、第四脳室は、菱脳内の脳室であり、上方で中脳水道と、下方で延髄の第四脳室の下方につながる細い管状の脳室である中心管につながっており、中脳水道から中心管へと続き、第四脳室正中孔(マジャンディ孔)と左右の第四脳室外側孔(ルシュカ孔)でくも膜下腔と交通するようになっている。
【0003】
4つに分かれて存在する脳室は、内部が常に脳脊髄液に満たされており、それぞれが通路によって連通して、一定量が各室に貯蔵され、それぞれの室を流通循環している。
このように脳室内を循環する脳脊髄液は、側脳室→モンロー孔→第3脳室→中脳水道→第4脳室→ルシュカ孔・マジャンディー孔→脳槽→上矢状静脈洞と流れると考えられている。
そして、この脳脊髄液は、脳室に存在する脈絡叢よって産生され、側脳室、第三脳室、第四脳室から脳表のくも膜下腔に入り、頭頂部のくも膜下腔のくも膜顆粒で静脈に吸収されるとされている。このように脳脊髄液は、くも膜の内側にあり、脳全体を覆うように存在し、脳を浮かせて急激な頭部の動きに対して脳への衝撃を和らげ、部分的な脳の活動によって産生される物質を取り除くなどの働きも併せ持つ無色透明な体液で、脳保護液としての作用を有している。
【0004】
水頭症は、この脳脊髄液が何らかの原因で、頭の内側(脳室)に過剰に溜まることにより発症するものである。この頭の内側(脳室)に脳脊髄液が過剰に溜まる原因には、脈絡叢よって脳脊髄液が通常よりも過剰に産生されたり、脈絡叢よる脳脊髄液の産生は通常と変化ないが通常よりも吸収され難くなったり、あるいは、脳脊髄液の流れる循環経路に明らかな障害が発生し脳脊髄液の流れが悪くなったり場合がある。
この水頭症には、例えば、中脳水道が狭くなっている場合等、脳室内のどこかで脳脊髄液の流れる循環経路に明らかな障害が発生して脳脊髄液の循環不全が起こり、発症する特発性正常圧水頭症と、くも膜下出血、頭部外傷、髄膜炎など特定できる原因によって脳脊髄液の循環不全が起こり、発症する続発性正常圧水頭症とがある。
【0005】
水頭症は、現在の医療では薬などの内科的治療のみでは、治癒することは困難であり、外科的治療の併用が不可欠である。この外科的治療の方法としては、ドレナージと呼ばれる余分な脳脊髄液の一部分を頭蓋骨の外へ流す処置や、シャントバルブを用いることによる。脳脊髄液の排泄路を新たに作るシャント術が一般的である。
通常のシャントは、カテーテルと単一のシャントバルブにて構築されている。シャントバルブは、脳室内(頭蓋内)の脳脊髄液の量、及び圧力を調節することを目的としている。一般に、脳室内の脳脊髄液圧が高くなると、シャントバルブを通じて、過剰な分の脳脊髄液が流出する仕組みとなっている。
【0006】
このようにシャント術は、自然吸収されず、過剰ととなった脳脊髄液をシャントバルブを用いて他の部位で吸収させるためのものであり、数種類の方法が確立されているある。
(1)脳室腹腔短絡術(脳室−腹腔シャント)
これは、拡大した脳室にカテーテルを挿入し、末端をお腹の中(腹腔内)に入れ、脳脊髄液を腹膜で吸収させる方法である。
(2)腰椎腹腔短絡術(腰椎−腹腔シャント)
これは、腰の部分でくも膜下腔にカテーテルを挿入し、末端を腹腔内に入れて腹膜で吸収させる方法である。
(3)脳室心房短絡術(脳室−心房シャント)
これは、拡大した脳室からのカテーテルを、頚部の静脈から右心房内に挿入して脳脊髄液を血液に帰す方法である。
これらの内、最も多く採用されているのが、脳室腹腔短絡術(脳室−腹腔シャント)である。
【0007】
このシャント術に用いられる従来の水頭症治療用シャントバルブは、頭の内側(脳室)に過剰に溜まり、脳で吸収されなくなった脳脊髄液を身体の別の場所に管で短絡させて体内の他の部位で吸収させるバルブである。
この水頭症治療用シャントバルブは、脳脊髄液の流量をバルブの圧によって管理する圧管理型バルブと、脳脊髄液の圧により自動的に流量を調節する流量調節型バルブとがある。圧管理型バルブは、一般的には圧の変動範囲によって低圧(例えば、髄液の流量によって15−50mm水柱の範囲で圧が変動)、中圧(例えば、髄液の流量によって50−90mm水柱の範囲で圧が変動)、高圧(例えば、髄液の流量によって90−150mm水柱の範囲で圧が変動)の3種類あり、どの圧のバルブを使用するかは手術前の脳脊髄液の圧、手術までの経過、脳室の大きさ、年齢などによって決められる。
流量調節型バルブは、脳脊髄液の圧によって弁機構部の脳脊髄液の流れる断面積を自動的に変化させ、脳室内圧をできるだけ一定の範囲内で調節しようとするものである。この流量調節型バルブは、脳室内と腹腔の高さの違いによる水圧差が原因で生じるサイフォン効果を、完全に取り除くことはできず、低圧性の水頭症では充分な脳脊髄液の流量が得れないという欠点を有している。
【0008】
近年、水頭症の治療用に、磁気を用いてバルブの調節を行い、脳脊髄液の流量を調節する圧可変式シャントが提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)本願発明は、この圧可変式の水頭症治療用シャントバルブを対象としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−13727号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】日本メドトロニック株式会社 製品カタログ「PSメディカル ストラータ 水頭症用圧可変式シャントバルブ」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような非特許文献1に示されるような圧可変式の水頭症治療用シャントバルブ500は、図43に示す如く、硬化プラスチック基板510にシャント本体520を取り付け、可撓性を有するシリコーンエラストマーの被膜530によって全体を覆い、一体成形で製造されている。シリコーンエラストマーというのは、分子中に−Si−O−Si−結合を持ち、過酸化物や白金化合物などの硬化触媒を加えることによりゴム状に硬化したり、部分結晶化により硬化するシリコーンの総称である。
硬化プラスチック基板510は、例えば、ポリプロピレン(PP)によって構成されている。このポリプロピレン(PP)は、プロピレンの付加重合により得られる高分子化合物(ポリマー)で、高密度ポリエチレンと良く似た熱可塑性樹脂であり、比重が小さく、耐熱性に優れ、酸、アルカリに強く、くり返し曲げに強く、引張強度が大きい樹脂である。
このシャント本体520は、リザーバー540と、1個のバルブ圧可変器550を備え、リザーバー540の脳脊髄液の流入側に流入側コネクタ530を取り付け、バルブ圧可変器550の脳脊髄液の流出側にチャンバー560が設けられており、このチャンバー560から脳脊髄液を流出する流出側に流出用コネクタ570を取り付けて構成されている。この流入側コネクタ530には、脳室側カテーテルを、流出用コネクタ570には、腹腔カテーテルを接続してなっている。
【0012】
バルブ圧可変器550には、リザーバー540に一定量貯溜された脳脊髄液が、脳室内で産生された脳脊髄液の圧力で流入してくるようになっている。このバルブ圧可変器550は、蓋部551と、ボール552とスプリング553とローター554を収納し底面に階段状のプレートが形成されているケース状に形成される本体555とによって構成されている。そして、この本体555は、蓋部551と螺合し、蓋部551によって密閉できるようになっている。
蓋部551は、円形に形成され、中心にリザーバー540から流出してくる脳脊髄液が通過させるための穴556がテーパー状に形成されている。また、ボール552は、蓋部551の穴556の出口側、蓋部551の内壁面側に開口する穴556を開閉する弁の作用を有しており、穴開口部に対するボール551の押圧力によって脳脊髄液の流量の調整を行うようになっている。
【0013】
ローター554は、円板状に形成されており、その上面には、ボール552を蓋部551の内壁面側の穴開口部に押圧するコイル状に形成されるスプリング553が収納載置されている。ローター554は、ケースのプレート面上を摺動可能に構成されており、下面には、下側に突出する脚が複数個設けられており、この複数個の脚によってローター554とプレート面との滑り抵抗が小さくなるように形成されている。すなわち、本体555のプレートの上には、ローター554が載置されており、ローター554の下面に形成される脚によってプレート面との接触抵抗を小さくして、ローター554が本体155のプレート上を回転し易くしてある。
本体555のプレートは、複数段(例えば、5段)の階段状に形成されており、各階段は、それぞれ高さが一定量ずつ異なって形成されている。したがって、ローター554の上面の位置は、ローター554の下面に形成される脚が載る本体555のプレートに応じて高さ位置が変化する。
【0014】
リザーバー540から流出する脳脊髄液は、蓋部551に形成される穴556の開口部にコイル状のスプリング553によって押圧されているボール552を押し下げてバルブ圧可変器550内に流入するようになっている。
すなわち、リザーバー540から流出する脳脊髄液の圧力、すなわち脳室内の圧力と、ボール552を蓋部551の穴556の開口部に押圧するスプリング553の圧力とのバランスが取れているときは、スプリング553の弾性力によってボール552が押圧されて、蓋部551の穴556の開口部を閉塞し、リザーバー540から流出する脳脊髄液は、蓋部551の穴556からバルブ圧可変器550内に流入することはない。
脳室内の脳脊髄液が増加すると脳室内の圧力が高くなり、リザーバー540から流出する脳脊髄液の流圧が高くなる。この脳室内の圧力が高くなると、蓋部551の穴156の開口部にボール552を押圧するスプリング553の圧力に変化がないので、リザーバー540から流出する脳脊髄液の流圧は、ボール552を蓋部551の穴556の開口部に押圧するスプリング553の圧力より高くなる。
【0015】
このリザーバー540から流出する脳脊髄液の流圧が、ボール552を押圧するスプリング553の圧力より高くなると、蓋部151の穴556の開口部を閉塞しているボール552は、スプリング553の弾性力に抗して押し下げられる。このボール552は、脳室内の圧力が高くなった圧力に応じてスプリング553の弾性力に抗して押し下げられる。このボール552が押し下げられると、脳脊髄液は、蓋部551の穴556の開口部が脳室内の圧力が高くなった圧力に応じて開口して生じた穴556の開口部とボール552との隙間から、バルブ圧可変器550内に、脳室内の圧力がボール552を押圧するスプリング553の圧力とがバランスするまで流れ続ける。
バルブ圧可変器550内に流れ出した脳脊髄液は、バルブ圧可変器550内に流出することによってリザーバー540内の容量が減少し、脳室内の脳脊髄液も減少する。この脳室内の脳脊髄液の減少によって、脳室内の圧力が低下し始めると、ボール552を押し下げる圧力が低下し始め、スプリング553の弾性力によって少しずつボール552が押し上げられてくる。そして、脳室内の圧力と、ボール552を蓋部551の穴156の開口部に押圧するスプリング553の圧力とがバランスすると、蓋部551の穴156の開口部は、ボール552によって閉塞される。
【0016】
このように、バルブ圧可変器550は、脳室内の圧力が高くなったときに、脳脊髄液のリザーバー540からの流出圧によってボール552を押し下げ、蓋部551の穴556の開口部を開き、脳脊髄液を流入し、脳室内の圧力と、ボール552を蓋部551の穴556の開口部に押圧するスプリング553の圧力とがバランスしたところで、ボール552を蓋部551の穴556の開口部に押し当てて、穴556の開口部を閉塞し、脳室内の脳脊髄液の流出を停止するようになっている。
この蓋部551の穴556の開口部にスプリング553の弾性力によって押圧するボール552の蓋部551の穴開口部への押圧力は、スプリング553の圧力を調整することによって調整している。スプリング553は、コイル状に形成されているため、圧縮していくと弾性力は増加していく。したがって、ローター554の上面に載置収納されているスプリング553の弾性力の調整は、ローター554の上面と蓋部551の内壁面との距離を変化させることによって行っている。
【0017】
すなわち、ローター554が本体555のプレート上を所定角度回転し、本体555のプレートの階段の最下段から1段ずつ上がっていくと、本体555のプレートの階段を1段上がる毎にローター554の上面の位置が1段分ずつ上がるようになっている。逆に、本体555のプレートの階段の最上段から1段ずつ下がっていくと、本体555のプレートの階段を1段下がる毎にローター554の上面の位置が1段分ずつ下がるようになっている。このローター554の上面の位置が変化すると、ローター554の上面に収納載置されているスプリング553の伸縮が変化する。このスプリング553の伸縮が変化すると、ボール552の蓋部551の内壁面側の穴開口部への押圧力は、スプリング553の伸縮によって変化するスプリング553の弾性力に応じて変化する。
すなわち、このローター554の下面の脚がプレートを1段上がる(または、下がる)と、ローター554の上面の位置が本体555のプレートの高さ位置に応じて上がり(または、下がり)、ローター554の上面と蓋部551の内壁上部との間に介在されるスプリング553が圧縮され(または、伸長され)、スプリング553の先端で支持されるボール552へスプリング553の弾性作用による押圧力が大きく(または、小さく)なる。
【0018】
リザーバー540から流出して蓋部551の穴556に流入する脳脊髄液の流入圧力が一定(変化がないの状態)のときに、ローター554を回転してプレートを1段上げる(または、下げる)と、スプリング553の弾性作用によるボール552への押圧力は、ローター554を回転して本体555のプレート1段上げる(または、下げる)前に比して、本体555のプレート1段分の高さ位置の変化に応じて変化するスプリング553の弾性力に比例した分だけ大きく(または、小さく)なる。
すなわち、蓋部551に形成される穴556にリザーバー540に貯溜されている脳脊髄液からの圧力に変化しなければ、スプリング553によるボール552への押圧力が大きくなり、穴556とボール552との開口面積がローター554が本体555のプレートを1段上がる前より小さくなり、リザーバー540からバルブ圧可変器550の内部に流入する脳脊髄液の量は減少する。
【0019】
バルブ圧可変器550の本体555の脳脊髄液の流出側にチャンバー160が設けられている。シャント本体120を設置した患者は、寝たきりの人ばかりでなく、起き上がって日常の生活を行う人も大勢いる。このようにシャント本体120を設置した状態で、患者が、寝た状態から立ち上がると、重力の影響で腹腔カテーテル内の脳脊髄液が急激に腹腔内に流れ込もうとする。すると、腹腔カテーテル内は負圧になり、腹腔カテーテルが接続されているバルブ圧可変器550の本体555の脳脊髄液の流出側に負圧がかかる。
この負圧は、蓋部551の穴556の開口部からボール552を引き下げる方向の圧力であるので、本体555の脳脊髄液の流出側に負圧がかかると、ボール552には、ボール552を蓋部551の穴556の開口部に押圧するスプリング553の弾性力による陽圧とは反対に、ボール552を本体555の脳脊髄液の流出側に引っ張る(ボール552を引き下げる)作用(負圧)が働く。
【0020】
患者が寝ている状態でバルブ圧可変器550の作用によって、脳室内の圧力と、ボール552を蓋部551の穴556の開口部に押圧するスプリング553の圧力とがバランスしている状態から、急に起き上がったときに、上記負圧の作用が働くことにより、脳室内の脳脊髄液が減少し、脳室内の圧力が急激に低下する状態となる。
この脳室内の脳脊髄液が減少し、脳室内の圧力が急激に低下すると、脳室は、小さく狭くなり、いわゆる細隙脳室(slit ventricle)の状態への移行が始まり、急激な頭痛、時に急激な意識障害を生じるといった症状が生じる。そして、脳室内の脳脊髄液が減少すると、脳脊髄液圧の極端な減少、硬膜下血腫、硬膜下水腫または側脳室の崩壊(スリット脳室症候群)が生じ、脳室サイズの極端な縮小によるカテーテル先端の脳室壁への干渉及び、シャントの閉塞といった問題が生じる原因となる。
【0021】
チャンバー160は、このように患者が寝ている状態から急に起き上がったときに、脳室内の脳脊髄液が急激に流出するのを防止し、脳室内の圧力が急激に低下するのを防止するためのものである。このチャンバー160は、高い脳室内圧によって脳脊髄液が押し出されて流れている状態の場合は、開弁し、腹腔カテーテル内に負圧が生じると閉弁して脳脊髄液を吸い出す作用を止めるような逆流防止弁を備え、負圧で閉弁した際に、脳室内から正常に押し出されてきた脳脊髄液を一次貯溜する空洞を有して構成されている。
このチャンバー160は、患者が寝たきりの状態の場合は、なくても問題はない。
【0022】
このような従来の水頭症治療用シャントバルブは、脳室内で産生された脳脊髄液が脳室内で過剰となり、脳室内の圧力が高くなったときに、リザーバー540から流出する脳脊髄液の流出圧によってバルブ圧可変器550の脳脊髄液の流入口に内側から押圧されているボール552を押し下げ、蓋部551の穴556の開口部を開く。そして、脳室内で過剰となった脳脊髄液は、バルブ圧可変器550内へ脳脊髄液を流入し始め、脳室内の脳脊髄液は減少していき、脳室内の圧力が低下していく。
すると、リザーバー540から流出する脳脊髄液の流出圧は、脳室内の脳脊髄液の減少とともに下がり、蓋部551の穴556の開口部に押圧されているボール552を下に押し下げる力も弱くなる。やがて、脳室内の圧力と、蓋部551の穴556の開口部にボール552を押圧するスプリング553の圧力とが、バランスしたところで、蓋部551の穴556の開口部は、ボール552によって閉塞される。
【0023】
水頭症治療用シャントバルブを設置した患者に対しては、脳室内の圧力を一定に保つことが理想である。ところが、従来の水頭症治療用シャントバルブにあっては、脳室内の圧力と蓋部551の穴556の開口部に流入する脳脊髄液の流量とが一対一に対応しているため、脳室内の圧力が高くなり、脳室から脳脊髄液が流出し、バルブ圧可変器550の蓋部551の穴556の開口部に流入して、脳室内の圧力が正常値になっても精度良く停止することなく、脳脊髄液が流れ過ぎてしまうことにより、脳室内の圧力が正常値より更に低下してしまう症例が散見される。
また、従来の水頭症治療用シャントバルブにあっては、脳室内の圧力と蓋部551の穴556の開口部に流入する脳脊髄液の流量とが一対一に対応しているため、脳室内の圧力が低くなったときに、脳室内の圧力を上げて正常値にするため、開口部に押圧されるボール552の押圧力を調整し、穴556の開口部に流入する脳脊髄液が少なく流れるように流量を調整して、脳室内の圧力が正常値のところで、精度良く脳脊髄液の流量を正常にすることなく、脳室内の圧力が正常値より上昇してしまう症例が散見される。
【0024】
このように従来の水頭症治療用シャントバルブは、脳室内の圧力を脳室からリザーバー540を介して流出する脳脊髄液の流出圧によって、ボール552を上下動して蓋部551の穴556の開口部の開口面積を調整して脳脊髄液の流量を調整することによって減圧している。
このため、従来の水頭症治療用シャントバルブにあっては、脳室内の圧力を正常値の安定した状態に保ったままで、脳室内からリザーバー140を介して流出する脳脊髄液の流量を微調整できないという問題点を有している。
【0025】
本発明の目的は、シャントバルブを設置した後、脳室内の圧力が異常になったとき、脳室内の圧力を急激に変化させることなく、脳室内から排出する脳脊髄液の流量を自由に調整することのできる水頭症治療用シャントバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明に係る水頭症治療用シャントバルブは、従来の水頭症シャントバルブ同様、頭部の頭皮と頭蓋骨との間に設置する。脳室内で産生された脳脊髄液が十分吸収されずに脳室内に貯溜し、脳室内の圧が一定圧を超えたときに脳室内の圧がバルブ設定圧になるように脳室内から脳脊髄液の排出量を調整してする。水頭症治療用シャントバルブであって,
頭部の頭皮の内側で頭蓋骨の外周の所定の位置に安定させる硬化プラスチック基板と,
筒状に形成され、脳室内に穿刺する針を先端に取り付けた脳室カテーテルの後端を接続する流入側コネクタと,
脳室内の圧の変化に応じて第1の開閉弁の開度を変化させ前記脳室カテーテルを通り前記流入側コネクタを介して前記第1の開閉弁から流入する脳脊髄液の流量の増減を前記第1の開閉弁の調整によって行い、前記第1の開閉弁を通過する基準の脳脊髄液の流量を設定する前記第1の開閉弁の開閉圧を複数段に可変することのできる第1のバルブ圧可変器と,
前記第1のバルブ圧可変器の流出路から流出される脳脊髄液を第2の開閉弁を介して流入し、前記第1のバルブ圧可変器から流出される脳脊髄液の流圧の変化に応じて前記第2の開閉弁の開度を変化させ前記第1のバルブ圧可変器の流出路を介して前記第2の開閉弁から流入する脳脊髄液の流量の増減を前記第2の開閉弁の調整によって行い、前記第2の開閉弁を通過する基準の脳脊髄液の流量を設定する前記第2の開閉弁の開閉圧を複数段に可変することのできる第2のバルブ圧可変器と,
筒状に形成され、先端を腹腔内に挿入する腹腔カテーテルの後端を接続する流出側コネクタと,
を備え,
前記硬化プラスチック基板の上に、前記流入側コネクタと前記第1のバルブ圧可変器と前記第2のバルブ圧可変器と前記流出側コネクタとを載置し、前記流入側コネクタと前記流出側コネクタとの間に、前記流入側コネクタから流入する脳脊髄液が第1のバルブ圧可変器の前記第1の開閉弁を通り前記第1のバルブ圧可変器の流出路から流出され、第2のバルブ圧可変器の前記第2の開閉弁を通り該第2のバルブ圧可変器の流出路から流出され、前記流出側コネクタから流出するように脳脊髄液の流路を形成するように可撓性を有するシリコーンエラストマーの被膜によって覆い、前記硬化プラスチック基板に前記シリコーンエラストマーの被膜の下端部を密に接着して一体に成形してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、水頭症治療用シャントバルブを設置した後、脳室内の圧力が異常値になったとき、従来の単一シャントバルブ回路では、治療が困難であった水頭症に対して、脳室内の圧力を急激に変化させることなく、脳室内から排出する脳脊髄液の流量を、より多段的に微調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第1実施例を示す図であり、水頭症治療用シャントバルブの全体斜視図である。
【図2】図1に図示の水頭症治療用シャントバルブの縦断面図である。
【図3】図1に図示の水頭症治療用シャントバルブの第1のバルブ圧可変器の一部を断面した全体図である。
【図4】図3に図示の水頭症治療用シャントバルブの第1のバルブ圧可変器の組立斜視図である。
【図5】図1に図示の水頭症治療用シャントバルブの第2のバルブ圧可変器の一部を断面した全体図である。
【図6】図5に図示の水頭症治療用シャントバルブの第2のバルブ圧可変器の組立斜視図である。
【図7】図1に図示の水頭症治療用シャントバルブの設置状態を示す図である。
【図8】本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第2実施例を示す水頭症治療用シャントバルブの縦断面図である。
【図9】図8に図示の水頭症治療用シャントバルブの設置状態を示す断面図である。
【図10】本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第3実施例を示す水頭症治療用シャントバルブの全体斜視図である。
【図11】図10に図示の水頭症治療用シャントバルブの縦断面図である。
【図12】本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第4実施例を示す水頭症治療用シャントバルブの全体斜視図である。
【図13】図12に図示の水頭症治療用シャントバルブの縦断面図である。
【図14】本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第5実施例を示す水頭症治療用シャントバルブの全体斜視図である。
【図15】図14に図示の水頭症治療用シャントバルブの縦断面図である。
【図16】本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第6実施例を示す水頭症治療用シャントバルブの全体斜視図である。
【図17】図16に図示の水頭症治療用シャントバルブの縦断面図である。
【図18】本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第7実施例を示す水頭症治療用シャントバルブの断面図である。
【図19】本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第8実施例を示す水頭症治療用シャントバルブの全体斜視図である。
【図20】図19に図示の水頭症治療用シャントバルブの水平断面図である。
【図21】本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第9実施例を示す水頭症治療用シャントバルブの全体斜視図である。
【図22】図21に図示の水頭症治療用シャントバルブの縦断面図である。
【図23】本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第10実施例を示す水頭症治療用シャントバルブの全体斜視図である。
【図24】図23に図示の水頭症治療用シャントバルブの縦断面図である。
【図25】本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第11実施例を示す水頭症治療用シャントバルブの全体斜視図である。
【図26】図25に図示の水頭症治療用シャントバルブの水平断面図である。
【図27】図25に図示の水頭症治療用シャントバルブの縦断面図である。
【図28】本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第12実施例を示す水頭症治療用シャントバルブの断面図である。
【図29】本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第13実施例を示す水頭症治療用シャントバルブの全体斜視図である。
【図30】図29に図示の水頭症治療用シャントバルブの縦断面図である。
【図31】本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第14実施例を示す水頭症治療用シャントバルブの全体斜視図である。
【図32】図30に図示の水頭症治療用シャントバルブの縦断面図である。
【図33】本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第15実施例を示す水頭症治療用シャントバルブの全体斜視図である。
【図34】図33に図示の水頭症治療用シャントバルブの縦断面図である。
【図35】本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第16実施例を示す水頭症治療用シャントバルブの全体斜視図である。
【図36】図35に図示の水頭症治療用シャントバルブの縦断面図である。
【図37】図35に図示の水頭症治療用シャントバルブの水平断面図である。
【図38】本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第17実施例を示す水頭症治療用シャントバルブの全体斜視図である。
【図39】図38に図示の水頭症治療用シャントバルブの水平断面図である。
【図40】図38に図示の水頭症治療用シャントバルブの縦断面図である。
【図41】本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第18実施例を示す水頭症治療用シャントバルブの縦断面図である。
【図42】図41に図示の水頭症治療用シャントバルブの水平断面図である。
【図43】従来の水頭症治療用シャントバルブの断面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係る水頭症治療用シャントバルブは、圧可変式シャントバルブを2個以上の複数個を直列に多連内蔵する構成により実現する。
以下、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0030】
図1〜6には、本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第1実施例が示されている。
図1は本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第1実施例を示す水頭症治療用シャントバルブの全体斜視図で、図2は図1に図示の水頭症治療用シャントバルブの縦断面図で、図3は図1に図示の水頭症治療用シャントバルブの第1のバルブ圧可変器の一部を断面した全体図で、図4は図3に図示の水頭症治療用シャントバルブの第1のバルブ圧可変器の組立斜視図で、図5は図1に図示の水頭症治療用シャントバルブの第2のバルブ圧可変器の一部を断面した全体図で、図6は図5に図示の水頭症治療用シャントバルブの第2のバルブ圧可変器の組立斜視図である。
【0031】
図1において、水頭症治療用シャントバルブ1は、硬化プラスチック基板2にシャント本体3を取り付け、可撓性を有するシリコーンエラストマーの被膜4によって全体を覆い、一体成形で製造されている。シリコーンエラストマーは、分子中に−Si−O−Si−結合を持ち、過酸化物や白金化合物などの硬化触媒を加えることによりゴム状に部分結晶化により硬化するシリコーンの総称である。
硬化プラスチック基板2は、例えば、ポリプロピレン(PP)によって構成されている。このポリプロピレン(PP)は、プロピレンの付加重合により得られる高分子化合物(ポリマー)で、高密度ポリエチレンと良く似た熱可塑性樹脂であり、比重が小さく、耐熱性に優れ、酸、アルカリに強く、くり返し曲げに強く、引張強度が大きい樹脂である。
【0032】
シャント本体3には、図2に示す如く、脳室内から流出する脳脊髄液が流入する流入側に流入側コネクタ5が設けられており、シャント本体3に流入した脳脊髄液をシャント本体3内から流出する脳脊髄液の流入側に流出側コネクタ6が設けられている。そして、このシャント本体3は、シリコーンエラストマーの被膜4によって全体を覆い、シリコーンエラストマーの被膜4の下端部が硬化プラスチック基板2に密に接着されている。
流入側コネクタ5は、筒状に形成されており、シャント本体3の内部に脳脊髄液を取り込む入口側に設けられ、体内に植設されたカテーテルを接続する接続部である。すなわち、流入側コネクタ5は、脳室内に穿刺する針を先端に取り付けた脳室カテーテルの後端を接続するもので、先端部に外側に突出する突出部5Aが形成されている。この膨張部5Aは、流入側コネクタ5に脳室カテーテルの後端を接続し、流入側コネクタ5に脳室カテーテルを接続し、この脳室カテーテルの接続部を手術糸で縛り付けた後、脳室カテーテルが流入側コネクタ4から容易に離脱することがないようにするためのものである。
【0033】
流出側コネクタ6は、筒状に形成されており、シャント本体3の内部から脳脊髄液を外部に排出する出口側に設けられ、体内に植設された腹腔カテーテルを接続する接続部である。すなわち、流出側コネクタ6は、先端が腹腔内に挿入される脳室カテーテルの後端を接続するもので、先端部に外側に突出する突出部6Aが形成されている。
流入側コネクタ5の下流側には、第1のバルブ圧可変器7が設けられている。第1のバルブ圧可変器7の脳脊髄液を排出する出力流路側に第1のバルブ圧可変器7から排出される脳脊髄液を流入する第2のバルブ圧可変器8が設けられている。
この第2のバルブ圧可変器8の脳脊髄液を排出する出力側には、流出側コネクタ6が取り付けられている。
【0034】
第1のバルブ圧可変器7は、図3,4に示す構成を有している。第2のバルブ圧可変器8については、図5,6によって後に説明する。
図3,4において、第1のバルブ圧可変器7は、第1の蓋部9と、第1のバルブ本体10とからなっている。
第1の蓋部9は、円形の蓋体で構成されており、中心に流入側コネクタ5から流入してくる脳脊髄液を通過させるための穴9Aが形成されている。この穴9Aは、脳脊髄液が内部に流入する流入口を構成しており、第1の蓋部9の外壁表面に形成される径から、内壁表面に向かって径が大きくなるテーパー状に形成されている。この流入口を構成している穴9Aの第1の蓋部9の外表面側は、後に説明するオクルーダーとしての機能を有している。
また、第1の蓋部9の側壁の内周面には、雌ねじ9Bが設けられている。この第1の蓋部9の雌ねじ9Bは、第1のバルブ本体10のケース14の側壁の外周面に設けられている雄ねじ14Aと密に螺合し、穴9A以外の箇所から第1のバルブ本体10内に脳脊髄液が浸入することがないように構成されている。
【0035】
第1のバルブ本体10は、ボール11と、磁石を内蔵するローター12と、ボール11とローター12を収納し底面に階段状のプレート13が形成されているケース14とからなっており、第1の蓋部9と螺合し、第1の蓋部9によって密閉するようになっている。
第1のバルブ本体10のケース14内に収納されるボール11は、長期間に渡って脳脊髄液に浸しても変形、摩耗、劣化することのない材質で構成されている。このボール11には、例えば、合成ルビーが用いられている。ボール11に合成ルビーを用いるのは、長期間に渡って脳脊髄液に浸しても変形、摩耗、劣化することのないことは勿論であるが、被膜4が半透明のシリコーンエラストマーによって全体が覆われるシャント本体3を外部から観察したときに容易に目視できるためである。
【0036】
また、このボール11は、第1の蓋部9に形成される穴9Aを内側から開閉する弁の作用を有しており、ボール11の穴9Aへの押圧力によって脳脊髄液の流量の調整を行うようになっている。したがって、第1の蓋部9に形成される穴9Aを通過する脳脊髄液の流量は、ボール11と穴9Aの内壁面との離間距離、すなわち穴9Aの内壁面とボール11の穴9Aの内壁面に最も近い外表面との距離によって決定される開口面積で決まる。このように第1の蓋部9に形成される穴9Aとボール11とによって、開閉弁が構成されており、第1の蓋部9に形成される穴9Aへのボール11との離間距離が開閉弁の開度を形成している。
ローター12は、円板状に形成されており、下面に下側に突出する脚12Aが複数個設けられており、この脚12Aによって、ローター12が回転するときの滑り抵抗を小さくしてある。また、このローター12には、強力な磁石が任意の1箇所に埋設されており、シャント本体3を頭蓋骨と頭皮との間に設置した後、頭部皮膚の外側から調整器によって、ローター12に埋設されている磁石のN極又はS極と反対の磁極(S極又はN極)との吸引力を利用して、ローター12に埋設されている磁石の磁極と反対の磁極を有する調整器に設けられている磁石によって、ケース14の底面に押し付けるローター用スプリング16の弾性力に抗してローター12を持ち上げられるようになっている。このローター12は、調整器によって持ち上げた後、調整器の回転器を回転させることによって、回転できるように構成されている。
なお、ローター12に埋設される強力な磁石は、必ずしも1箇所である必要はなく、2個、3個と複数個設けてもよい。
【0037】
このローター12の上面には、ボール用スプリング15を収納載置するボール用スプリング収納部12Bと、ローター用スプリング16を収納載置するローター用スプリング収納部12Cとが設けられている。
このボール用スプリング収納部12Bにボール用スプリング15が、ローター用スプリング収納部12Cにローター用スプリング16がそれぞれ載置されるようになっている。ボール用スプリング収納部12Bと、ローター用スプリング収納部12Cに収納されるにボール用スプリング15とローター用スプリング16は、互いに干渉することがないように、それぞれの径の大きさが異なって構成されている。
【0038】
ボール用スプリング15は、コイルスプリングで構成されており、後端から先端に向かって径の大きさが漸次小さくなっていく螺旋状のスプリングで構成されている。このボール用スプリング15は、最も径の小さい先端部によってボール11を支持し、弾性力によってボール11が第1の蓋部9の穴9Aに押圧されるようになっている。ボール用スプリング15の最も径の大きい後端部は、ボール用スプリング収納部12Bに収納されて、ボール用スプリング15が、ローター12の上面に載置されている。
ローター用スプリング16は、ボール用スプリング15同様、コイルスプリングで構成されており、後端から先端に向かって径の大きさが漸次小さくなっていく螺旋状のスプリングで構成されている。このローター用スプリング16は、伸縮したときに、ボール用スプリング11と干渉しないように、ボール用スプリング11の外側に設けられ、最も径の小さい先端部が第1の蓋部9の上部内壁面の当接部9Cに当接されており、最も径の大きい後端部がローター12のローター用スプリング収納部12Cに収納されて、ローター用スプリング16が、ローター12の上面に載置されている。
【0039】
ローター用スプリング16は、第1の蓋部9の上部内壁面の当接部9Cに当接されており、ローター用スプリング16の弾性力によってローター12をケース14のプレート13側に押圧している。
このようにして、ローター12と、プレート13と、ケース14と、ボール用スプリング15と、ローター用スプリング16とによって、第1の蓋部9の穴9Aとボール11で構成される開閉弁の開閉を操作する操作機構が構成されている。
ケース14は、断面円形の有底筒状体で構成されており、第1のバルブ本体10、すなわち、ボール11と、磁石を内蔵するローター12とを収納するもので、底面に階段状のプレート13が設けられている。このケース14の側壁の外周面の上部には、雄ねじ14Aが形成されており、第1の蓋部9の側壁の内周面に形成されている雌ねじ9Bに密に螺合し、穴9A以外の箇所から第1のバルブ本体10内に脳脊髄液が浸入することがないように構成されている。
【0040】
プレート13は、複数段(例えば、5段、この段数は、一例で、理論的には何段でも可能であるが、ローター12に埋設された磁石を利用して調整器によってローター12を回転するための段数としては、5段が最適な段数である)の階段状に形成されており、各階段は、それぞれ高さが異なって形成されている。このプレート13の各階段は、それぞれ高さが一定量ずつ異なった高さに設定されている。このプレート13の上には、ローター12が載置されており、ローター12の下面に形成される脚12Aによって接触抵抗を小さくして、ローターがプレート上を回転し易くしてある。
また、プレート13の各階段の境界部には、段差部13Aが形成されている。この段差部13Aは、プレート13の上面側に突出する突起部で、ローター12が回転して特定の階段位置に移動した後、元のプレート13上に戻ることがないようにするためのものである。
【0041】
ローター12がプレート13上を所定角度回転し、プレート13の階段の最下段から1段ずつ上がっていくと、プレート13の階段を1段上がる毎にローター12の上面の位置が1段分ずつ上がるようになっている。また、逆にローター12がプレート13上を所定角度回転し、プレート13の階段の最上段から1段ずつ下がっていくと、プレート13の階段を1段下がる毎にローター12の上面の位置が1段分ずつ下がるようになっている。
このローター12がプレート13を1段上がる(または、下がる)と、ローター12の上面の位置が1段上がり(または、下がり)、プレート13の階段面によって、ローター12の上面と第1の蓋部9の上部内壁面の当接部9Cとの間に介在されるローター用スプリング16が圧縮(または、伸長)される。
このローター12の上面の高さ位置が1段分上がる(または、下がる)と、ローター12の上面と第1の蓋部9の上部内壁面の当接部9Cとの間に介在されるボール用スプリング15も圧縮(または、伸長)されボール用スプリング15の先端部で支持するボール11への押圧力が大きくなる。
【0042】
第1の蓋部9に形成される穴9Aに、脳室内から流入側コネクタ5を介して流入してくる脳脊髄液の流圧に変化が無ければ、ボール用スプリング15によるボール11への押圧力に変化はない。
いま、脳室内の圧力が高い値に変化すると、脳室内から流入側コネクタ5を介して流入してくる脳脊髄液の流圧が高くなる。すると、脳室内から流入側コネクタ5を介して流入してくる脳脊髄液の流圧によって、第1の蓋部9に形成される穴9Aに嵌合しているボール11は、ボール用スプリング15による押圧力に抗して押し下げられる。これによって穴9Aとボール11との開口面積が大きくなり、脳脊髄液が多く通過する。これによって脳室内の圧力を一定に保つようになっている。
【0043】
ケース14の側壁の外周面の下部には、穴9Aとボール11との間を通過して第1のバルブ本体10内に流入した脳脊髄液を第1のバルブ本体10外に排出する流出路14Bが設けられている。このケース14の流出路14B側に第2のバルブ圧可変器8が設けられている。
なお、図4中、17はシール、18はガイドリングである。
【0044】
第2のバルブ圧可変器8は、第1のバルブ圧可変器7と同様の構成で、図5,6に示す如き構成を有している。
図5,6において、第2のバルブ圧可変器8は、第2の蓋部20と、第2のバルブ本体21とからなっている。
第2の蓋部20は、円形の蓋体で構成されており、中心に流入側コネクタ5から流入してくる脳脊髄液を通過させるための穴20Aが形成されている。この穴20Aは、脳脊髄液が内部に流入する流入口を構成しており、第2の蓋部20の外壁表面に形成される径から、内壁表面に向かって径が大きくなるテーパー状に形成されている。この流入口を構成している穴20Aの第2の蓋部20の外表面側は、後に説明するオクルーダーとしての機能を有している。
また、第2の蓋部20の側壁の内周面には、雌ねじ20Bが設けられている。この第2の蓋部20の雌ねじ20Bは、第2のバルブ本体21のケース25の側壁の外周面に設けられている雄ねじ25Aと密に螺合し、穴20A以外の箇所から第2のバルブ本体21内に脳脊髄液が浸入することがないように構成されている。
【0045】
第2のバルブ本体21は、ボール22と、磁石を内蔵するローター23と、ボール22とローター23を収納し底面に階段状のプレート24が形成されているケース25とからなっており、第2の蓋部20と螺合し、第2の蓋部20によって密閉するようになっている。
第2のバルブ本体21のケース25内に収納されるボール22は、長期間に渡って脳脊髄液に浸しても変形、摩耗、劣化することのない材質で構成されている。このボール22には、例えば、合成ルビーが用いられている。ボール22に合成ルビーを用いるのは、長期間に渡って脳脊髄液に浸しても変形、摩耗、劣化することのないことは勿論であるが、被膜4が半透明のシリコーンエラストマーによって全体が覆われるシャント本体3を外部から観察したときに容易に目視できるためである。
【0046】
また、このボール22は、第2の蓋部20に形成される穴20Aを内側から開閉する弁の作用を有しており、ボール22の穴20Aへの押圧力によって脳脊髄液の流量の調整を行うようになっている。したがって、第2の蓋部20に形成される穴20Aを通過する脳脊髄液の流量は、ボール22と穴20Aの内壁面との離間距離、すなわち穴20Aの内壁面とボール22の穴20Aの内壁面に最も近い外表面との距離によって決定される開口面積で決まる。このように第2の蓋部20に形成される穴20Aとボール22とによって、開閉弁が構成されており、第2の蓋部20に形成される穴20Aへのボール22との離間距離が開閉弁の開度を形成している。
ローター23は、円板状の部材によって形成されており、下面に下側に突出する脚23Aが複数個設けられており、この脚23Aによって、ローター23が回転するときの滑り抵抗を小さくしてある。また、このローター23には、強力な磁石が任意の1箇所に埋設されており、シャント本体3を頭蓋骨と頭皮との間に設置した後、頭部皮膚の外側から調整器によって、ローター23に埋設されている磁石のN極とS極と反対の磁極(S極又はN極)との吸引力を利用して、ローター23に埋設されている磁石の磁極と反対の磁極を有する調整器に設けられている磁石によって、ローター23に埋設されている磁石を吸引することによって、ケース25の底面に押し付けるローター用スプリング27の弾性力に抗してローター23を持ち上げられるようになっている。このローター23は、調整器によって持ち上げた後、調整器の回転器を回転させることによって、回転できるように構成されている。
なお、ローター23に埋設される強力な磁石は、必ずしも1箇所である必要はなく、2個、3個と複数個設けてもよい。
【0047】
このローター23の上面には、ボール用スプリング26を収納載置するボール用スプリング収納部23Bと、ローター用スプリング27を収納載置するローター用スプリング収納部23Cとが設けられている。
このボール用スプリング収納部23Bにボール用スプリング26が、ローター用スプリング収納部23Cにローター用スプリング27がそれぞれ載置されるようになっている。ボール用スプリング収納部23Bと、ローター用スプリング収納部23Cに収納されるにボール用スプリング26とローター用スプリング27は、互いに干渉することがないように、それぞれの径の大きさが異なって構成されている。
【0048】
ボール用スプリング26は、コイルスプリングで構成されており、後端から先端に向かって径の大きさが漸次小さくなっていく螺旋状のスプリングで構成されている。このボール用スプリング26は、最も径の小さい先端部によってボール22を支持し、弾性力によってボール22が第2の蓋部20の穴20Aに押圧されるようになっている。ボール用スプリング26の最も径の大きい後端部は、ボール用スプリング収納部23Bに収納されて、ボール用スプリング26が、ローター23の上面に載置されている。
ローター用スプリング27は、ボール用スプリング26同様、コイルスプリングで構成されており、後端から先端に向かって径の大きさが漸次小さくなっていく螺旋状のスプリングで構成されている。このローター用スプリング27は、伸縮したときに、ボール用スプリング11と干渉しないように、ボール用スプリング11の外側に設けられ、最も径の小さい先端部が第2の蓋部20の上部内壁面の当接部20Cに当接されており、最も径の大きい後端部がローター23のローター用スプリング収納部23Cに収納されて、ローター用スプリング27が、ローター23の上面に載置されている。
【0049】
ローター用スプリング27は、第2の蓋部20の上部内壁面の当接部20Cに当接されており、ローター用スプリング27の弾性力によってローター23をケース25のプレート24側に押圧している。
このようにして、ローター23と、プレート24と、ケース25と、ボール用スプリング26と、ローター用スプリング27とによって、第2の蓋部20の穴20Aとボール22で構成される開閉弁の開閉を操作する操作機構が構成されている。
ケース25は、第2のバルブ本体21、すなわち、ボール22と、磁石を内蔵するローター23とを収納するもので、底面に階段状のプレート24が設けられている。このケース25の側壁の外周面の上部には、雄ねじ25Aが形成されており、第2の蓋部20の側壁の内周面に形成されている雌ねじ20Bに密に螺合し、穴20A以外の箇所から第2のバルブ本体21内に脳脊髄液が浸入することがないように構成されている。
【0050】
プレート24は、複数段(例えば、5段、この段数は、一例で、理論的には何段でも可能であるが、ローター23に埋設された磁石を利用して調整器によってローター23を回転するための段数としては、5段が最適な段数である)の階段状に形成されており、各階段は、それぞれ高さが異なって形成されている。このプレート24の各階段は、それぞれ高さが一定量ずつ異なった高さに設定されている。このプレート24の上には、ローター23が載置されており、ローター23の下面に形成される脚23Aによって接触抵抗を小さくして、ローターがプレート上を回転し易くしてある。
また、プレート24の各階段の境界部には、段差部24Aが形成されている。この段差部24Aは、プレート24の上面側に突出する突起部で、ローター23が回転して特定の階段位置に移動した後、元のプレート24上に戻ることがないようにするためのものである。
【0051】
ローター23がプレート24上を所定角度回転し、プレート24の階段の最下段から1段ずつ上がっていくと、プレート24の階段を1段上がる毎にローター23の上面の位置が1段分ずつ上がるようになっている。また、逆にローター23がプレート24上を所定角度回転し、プレート24の階段の最上段から1段ずつ下がっていくと、プレート24の階段を1段下がる毎にローター23の上面の位置が1段分ずつ下がるようになっている。
このローター23がプレート24を1段上がる(または、下がる)と、ローター23の上面の位置が1段上がり(または、下がり)、プレート24の階段面によって、ローター23の上面と第2の蓋部20の上部内壁面の当接部20Cとの間に介在されるローター用スプリング27が圧縮(または、伸長)される。
このローター23の上面の高さ位置が1段分上がる(または、下がる)と、ローター23の上面と第2の蓋部20の上部内壁面の当接部20Cとの間に介在されるボール用スプリング26も圧縮(または、伸長)されボール用スプリング26の先端部で支持するボール22への押圧力が大きくなる。
【0052】
第2の蓋部20に形成される穴20Aに、第1のバルブ圧可変器7内を通り、第1のバルブ圧可変器7のケース14の側壁の外周面の下部に形成されている流出路14Bから流出される脳脊髄液の流圧に変化が無ければ、第2のバルブ圧可変器8のボール用スプリング26によるボール22への押圧力に変化はない。
いま、脳室内の圧力が高い値に変化すると、脳室内から流入側コネクタ5を介して第1のバルブ圧可変器7内に流入してくる脳脊髄液の流圧が高くなる。すると、脳室内から流入側コネクタ5を介して流入してくる脳脊髄液の流圧によって、第1のバルブ圧可変器7の第1の蓋部9に形成される穴9Aに嵌合しているボール11が、ボール用スプリング15の押圧力に抗して押し下げられる。これによって穴9Aとボール11との開口面積は、大きくなり、穴9Aとボール11の間隙を脳脊髄液がより多く流出する。
【0053】
この第1のバルブ圧可変器7の穴9Aとボール11との開口面積が大きくなり、穴9Aとボール11の間隙を脳脊髄液が多く通過すると、第1のバルブ圧可変器7内を通りケース14の下部に形成される流出路14Bから流出される脳脊髄液の流圧が高い値に変化する。すると、第1のバルブ圧可変器7内を通り、ケース14の下部に形成される流出路14Bから流出され、第2のバルブ圧可変器8の第2の蓋部20に形成される穴20Aに流入する脳脊髄液の流圧が高くなる。
ケース14の下部に形成されている流出路14Bから流出される脳脊髄液の流圧が高くなると、第2のバルブ圧可変器8の第2の蓋部20の穴20Aに嵌合しているボール22は、高くなった流出路14Bから流出される脳脊髄液の流圧によって、ボール用スプリング26の押圧力に抗して押し下げられる。これによって穴20Aとボール22との開口面積が大きくなり、脳脊髄液の流出量が多くなる。
【0054】
ケース25の側壁の外周面の下部には、穴20Aとボール22との間を通過して第2のバルブ本体21内に流入した脳脊髄液を第2のバルブ本体21外に排出する流出路14Bが設けられている。このケース25の流出路14B側に第2のバルブ圧可変器8が設けられている。
なお、図6中、28はシール、29はガイドリングである。
【0055】
このように構成される水頭症治療用シャントバルブ1は、図7に示す如く、頭部の所定の位置に設置されている。この水頭症治療用シャントバルブ1の設置に当たっては、手術によって頭蓋骨に小さな穴を開け、頭蓋骨と脳の間の硬膜を開き、この穴から脳室カテーテルを側脳室内に挿入し、その後端を流入側コネクタ5に接続する。その後、耳介後ろ、頭部、胸部の皮下を通し、腹膜を小切開して腹腔内に腹腔カテーテルの先端を腹腔内に挿入する。この先端が腹腔内に挿入されている腹腔カテーテルの後端を水頭症治療用シャントバルブ1の流出側コネクタ6に接続する。そして、水頭症治療用シャントバルブ1は、頭部の所定の位置に設置される。
【0056】
次に、このように構成される本発明に係る第1実施例の水頭症治療用シャントバルブ1の作用について説明する。
本発明に係る第1実施例の水頭症治療用シャントバルブ1は、第1のバルブ圧可変器7と第2のバルブ圧可変器8の2つのバルブ圧可変器を備えている。そして、この第1のバルブ圧可変器7と第2のバルブ圧可変器8は、脳脊髄液の流れに対して直列に接続されており、共に流圧調整弁としての作用を有している。したがって、第1のバルブ圧可変器7の上流側になる脳室内の圧力、及び脳室内から流出する脳脊髄液の流量は、第1のバルブ圧可変器7と第2のバルブ圧可変器8の2つのバルブ圧可変器によって行っている。
【0057】
第1のバルブ圧可変器7の上流側の脳室内の圧力は、第1のバルブ圧可変器7のローター12の上面と第1の蓋部9の上部内壁面の当接部9Cとの高さ位置を、ローター12を回して調整することによって調整することができる。また、同様に、第1のバルブ圧可変器7を通過する単位時間あたりの脳脊髄液の流量は、第1のバルブ圧可変器7のローター12の上面と第1の蓋部9の上部内壁面の当接部9Cとの高さ位置を、ローター12を回して調節することによって調整することができる。
また、第2のバルブ圧可変器8の流入側の圧力は、第2のバルブ圧可変器8のローター23の上面と第2の蓋部20の上部内壁面の当接部20Cとの高さ位置を、ローター23を回して調節することができる。また、同様に、第2のバルブ圧可変器8を通過する単位時間あたりの脳脊髄液の流量は、第2のバルブ圧可変器8のローター23の上面と第2の蓋部20の上部内壁面の当接部20Cとの高さ位置を、ローター23を回して調節することによって調整することができる。
【0058】
この第1のバルブ圧可変器7と第2のバルブ圧可変器8の関係は、次のような関係を有している。
第1のバルブ圧可変器7の上流側の脳室内の圧力は、第1のバルブ圧可変器7のローター12の上面と第1の蓋部9の上部内壁面の当接部9Cとの高さ位置を、ローター12を回して調節することができる。また、同様に、第1のバルブ圧可変器7を通過する単位時間あたりの脳脊髄液の流量は、第1のバルブ圧可変器7のローター12の上面と第1の蓋部9の上部内壁面の当接部9Cとの高さ位置を、ローター12を回して調節することによって調整することができる。
そこで、まず、患者に設置する水頭症治療用シャントバルブ1の2つのバルブ圧可変器のそれぞれを設置する患者の脳室内の圧力の状態に合わせて設定する。この設定によって、脳室内の圧力は、第1のバルブ圧可変器7と第2のバルブ圧可変器8によって安定する。
【0059】
この水頭症治療用シャントバルブ1を患者に設置した後に、脳室内の圧力に変化があった場合には、第1のバルブ圧可変器7と第2のバルブ圧可変器8を調節して脳室内の圧力、脳室内からの単位時間あたりに流出する髄液流量を調節する。この場合、設置したときの第1のバルブ圧可変器7と第2のバルブ圧可変器8の設定値が基準となる。
いま、脳室内の脳脊髄液の量が多くなり、脳室内の圧力が高くなった場合を考える。脳室内の圧力を下げるには、第1のバルブ圧可変器7のローター12を回して、ローター12の上面と第1の蓋部9の上部内壁面の当接部9Cとの距離を大きく取ってローター12の上面位置を例えば、1段階下げる。これによってボール11を押し上げるボール用スプリング15の押圧力が下がり、脳室内から流入側コネクタ5を介して第1のバルブ圧可変器7内に流入する脳脊髄液の流量が多くなる。この脳脊髄液の流量の増量に伴って脳室内の圧力は、低下する。このとき、第2のバルブ圧可変器8のローター23の設定を調節しなければ、第2のバルブ圧可変器8の第2の蓋部20の穴20Aとボール22との開口面積に変化はなく、単位面積当たりの流量が増加するだけである。
【0060】
ところが、第1のバルブ圧可変器7のローター12を変更して脳室内の圧力を下げることによって、患者に不具合が生じたような場合、脳室内の圧力を下げることによる患者の不具合を無くすため第1のバルブ圧可変器7のローター12の調整をしない(第1のバルブ圧可変器7のローター12の調整位置を元に戻す)場合がある。しかし、これでは第1のバルブ圧可変器7のローター12を調整しないで脳室内の圧力を下げないと、患者の不具合が解消されない。
一方、第1のバルブ圧可変器7のローター12を調整しないで脳室内の圧力を下げなくても、脳室内から流出する脳脊髄液の単位時間当たりの流量を多くすることによって患者の症状が改善されることがある。このような場合に、第1のバルブ圧可変器7のローター12の位置を調節せずに、第2のバルブ圧可変器8のローター23を回して、ローター23の上面と第2の蓋部20の上部内壁面の当接部0Cとの距離を大きく取ってローター23の上面位置を例えば、1段階下げる。
【0061】
これによって第2のバルブ圧可変器8のボール22を押し上げるボール用スプリング26の押圧力が下がり、第1のバルブ圧可変器7のケース25の流出路14Bから第2のバルブ圧可変器8内に流入する脳脊髄液の流量が多くなる。この脳脊髄液の流量の増量に伴って第2のバルブ圧可変器8内を流れる脳脊髄液の単位面積当たりの流量が増加し、第1のバルブ圧可変器7内を流れる脳脊髄液の流量が増加する。この第1のバルブ圧可変器7内を流れる脳脊髄液の流量の増加に伴って、脳室内から流入側コネクタ5を介して第1のバルブ圧可変器7内に流入する脳脊髄液の流量が多くなる。
この脳室内から流入側コネクタ5を介して第1のバルブ圧可変器7内に流入する脳脊髄液の流量の増量は、第1のバルブ圧可変器7のローター12を調整しないで脳室内の圧力を下げる調整をしなくても、ゆっくりと脳室内の圧力を降下させていく作用がある。
このような微調節によって、本発明に係る第1実施例の水頭症治療用シャントバルブによれば、脳室内の脳脊髄液の量が多くなり、脳室内の圧力が高くなった場合に、第1のバルブ圧可変器7によるバルブ圧を固定することにより、頭蓋内脳脊髄液圧を極端に下げることなく、第2のバルブ圧可変器8によるバルブ調節を行うことにより、単位時間あたりに流出する脳脊髄液の流量を至適頭蓋内圧環境を構築することができた。
【0062】
また、脳室内の脳脊髄液の量が少なくなり、脳室内の圧力が低くなった場合を考える。脳室内の圧力を上げるには、第1のバルブ圧可変器7のローター12を回して、ローター12の上面と第1の蓋部9の上部内壁面の当接部9Cとの距離を小さく取ってローター12の上面位置を例えば、1段階上げる。これによってボール11を押し上げるボール用スプリング15の押圧力が上がり、脳室内から流入側コネクタ5を介して第1のバルブ圧可変器7内に流入する脳脊髄液の流量が少なくなる。この脳脊髄液の流量の減量に伴って脳室内の圧力は、上昇する。このとき、第2のバルブ圧可変器8のローター23の設定を変更しなければ、第2のバルブ圧可変器8の第2の蓋部20の穴20Aとボール22との開口面積に変化はなく、単位面積当たりの流量が減少するだけである。
【0063】
ところが、第1のバルブ圧可変器7のローター12を調整して脳室内の圧力を上げることによって、患者に不具合が生じたような場合、脳室内の圧力を上げることによる患者の不具合を無くすため第1のバルブ圧可変器7のローター12の調整をしない(第1のバルブ圧可変器7のローター12の調整位置を元に戻す)場合がある。しかし、これでは第1のバルブ圧可変器7のローター12を調整しないで脳室内の圧力を上げないと、患者の不具合が解消されない。
一方、第1のバルブ圧可変器7のローター12を調整しないで脳室内の圧力を上げなくても、脳室内から流出する脳脊髄液の単位時間あたりの流量を少なくすることによって患者の症状が改善されることがある。このような場合に、第1のバルブ圧可変器7のローター12の位置を変更せずに、第2のバルブ圧可変器8のローター23を回して、ローター23の上面と第2の蓋部20の上部内壁面の当接部0Cとの距離を小さく取ってローター23の上面位置を例えば、1段階上げる。これによって第2のバルブ圧可変器8のボール22を押し上げるボール用スプリング26の押圧力が上がり、第1のバルブ圧可変器7のケース25の流出路14Bから第2のバルブ圧可変器8内に流入する脳脊髄液の流量が少なくなる。この脳脊髄液の流量の減量に伴って第2のバルブ圧可変器8内を流れる脳脊髄液の単位面積当たりの流量が減少し、第1のバルブ圧可変器7内を流れる脳脊髄液の流量が低下する。この第1のバルブ圧可変器7内を流れる脳脊髄液の流量の減少に伴って、脳室内から流入側コネクタ5を介して第1のバルブ圧可変器7内に流入する単位時間あたりの脳脊髄液の流量が減少する。
【0064】
この脳室内から流入側コネクタ5を介して第1のバルブ圧可変器7内に流入する脳脊髄液の流量の減量は、第1のバルブ圧可変器7のローター12を調整しないで脳室内の圧力を上げる調整をしなくても、緩徐に脳室内の圧力を上昇させていく作用がある。
このような調整によって、本発明に係る第1実施例の水頭症治療用シャントバルブによれば、脳室内の脳脊髄液の量が少なくなり、脳室内の圧力が低くなった場合に、第1のバルブ圧可変器7によるバルブ調節を行わないで脳脊髄液の流圧を変化させることなく、脳室内から流入側コネクタ5を介して第1のバルブ圧可変器7内に流入する脳脊髄液の流量を、第2のバルブ圧可変器8によるバルブ調節を行うことにより減少させることができる。
【0065】
さらに、脳室内の脳脊髄液の量が多く(又は、少なく)なり、脳室内の圧力が高く(又は、低く)なった場合に、脳室内の圧力を下げ(又は、上げ)るのに、第1のバルブ圧可変器7のローター12を回して、ローター12の上面と第1の蓋部9の上部内壁面の当接部9Cとの距離を大きく(又は、小さく)取ってローター12の上面位置を例えば、2段階下げる(又は、上げる)必要がある場合がある。
このような場合に、第1のバルブ圧可変器7のローター12を回して、ローター12の上面と第1の蓋部9の上部内壁面の当接部9Cとの距離を大きく(又は、小さく)取ってローター12の上面位置を例えば、1段階下げ(又は、上げ)、脳室内の圧力を急激に高く(又は、低く)せず、第2のバルブ圧可変器8のローター23を回して、ローター23の上面と第2の蓋部20の上部内壁面の当接部0Cとの距離を大きく(又は、小さく)取ってローター23の上面位置を例えば、1段階下げる(又は、上げる)。
【0066】
このように、本発明に係る第1実施例の水頭症治療用シャントバルブ1における第1のバルブ圧可変器7と第2のバルブ圧可変器8の調節による脳室内の圧力と脳室内から流出する脳脊髄液の流量との関係は、次のようになる。
すなわち、水頭症治療用シャントバルブ1による脳室内の圧力は、第1のバルブ圧可変器7のバルブ調節と第2のバルブ圧可変器8のバルブ調節を行った場合には、バルブ調節当初は、第1のバルブ圧可変器7のバルブ調節による調節圧と、第2のバルブ圧可変器8のバルブ調節による調節圧との2つの調節圧の高い方の圧に準拠し、このときの脳室内から流出する脳脊髄液の流量は、第1のバルブ圧可変器7のバルブと、第2のバルブ圧可変器8のバルブ設定値の総和に応じて決定する。この脳脊髄液の流量は、第1のバルブ圧可変器7のバルブ調節と、第2のバルブ圧可変器8のバルブ調節による脳脊髄液の単位時間あたりの流速に基づき決定される。
【0067】
こうすることにより、水頭症治療用シャントバルブ1によって、脳室内の圧力をゆっくり下げ(又は、上げ)、脳脊髄液の単位面積当たりの流量を増加(又は、減少)させることができ、水頭症治療用シャントバルブ1を設置した患者の状態に合わせた調整を行うことができる。
このように本発明に係る第1実施例の水頭症治療用シャントバルブによれば、第1のバルブ圧可変器7のバルブ調整と第2のバルブ圧可変器8のバルブ調整とを独立して行うことができるため、従来の水頭症治療用シャントバルブが、5通りに変換が可能であれば、5×5=25通りの組合せ調節が可能となり、水頭症の患者に対して、従来の単一シャントバルブでは不可能とされていた、微調整を可能とする。
【実施例2】
【0068】
図8には、本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第2実施例が示されている。
図8において、水頭症治療用シャントバルブ1は、硬化プラスチック基板2にシャント本体3を取り付け、可撓性を有するシリコーンエラストマーの被膜4によって全体を覆い、一体に成形されている。
図8に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第2実施例が、図1に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第1実施例と異なる点は、図1に図示の第1実施例が、流入側コネクタ5を、シリコーンエラストマーの被膜4によって全体を覆われて構成されるシャント本体3に、水頭症治療用シャントバルブ1の硬化プラスチック基板2の長手方向に設けているのに対し、図8に図示の第2実施例が、シリコーンエラストマーの被膜4によって全体を覆われて構成されるシャント本体3から、水頭症治療用シャントバルブ1の硬化プラスチック基板2を貫通して流入側コネクタ30を設けてある点である。
他に図1に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第1実施例と異なる点はない。
図8中、30Aは、流入側コネクタ30の先端部に外側に突出する突出部で、脳室内に穿刺する脳室カテーテルの後端を接続するものである。
【0069】
このように構成される図8に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブ1は、流入側コネクタ30を、硬化プラスチック基板2から貫通して、下向きに設けてあるため、図9に示す如く装着する。
すなわち、ます、手術によって頭蓋骨31に小さな穴31Aを開け、頭蓋骨31と脳の間の硬膜を開き、この穴31Aから脳室カテーテルを側脳室内に挿入し、脳室カテーテルの後端を流入側コネクタ30に接続する。その後、硬化プラスチック基板2の下側に突出する流入側コネクタ30を頭蓋骨31に明けた穴31Aに挿入して、シャントバルブを頭皮と頭蓋骨31との間の設置する。
したがって、図8に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブ1によれば、頭皮と頭蓋骨31との間の設置した水頭症治療用シャントバルブ1を安定させることができる。
【実施例3】
【0070】
図10、図11には、本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第3実施例が示されている。
図10において、水頭症治療用シャントバルブ40は、硬化プラスチック基板41にシャント本体42を取り付け、可撓性を有するシリコーンエラストマーの被膜43によって全体を覆い、一体に成形されている。
シリコーンエラストマーの被膜43によって全体を覆われて構成されるシャント本体42には、脳脊髄液の流入側に流入側コネクタ44が設けられている。また、シャント本体42には、第1のバルブ圧可変器45と第2のバルブ圧可変器46とを備えている。
第2のバルブ圧可変器46の脳脊髄液の流出側にチャンバー47が設けられており、このチャンバー47から脳脊髄液を流出する流出側に流出側コネクタ48を取り付けて構成されている。
この流入側コネクタ44には、脳室カテーテルを、流出側コネクタ48には、腹腔カテーテルが接続されている。
【0071】
流入側コネクタ44は、図2に図示の流入側コネクタ5と同様の構成を有しており、流出側コネクタ48は、図2に図示の流出側コネクタ6と同様の構成を有している。
また、第1のバルブ圧可変器45は、図3,図4に図示の第1のバルブ圧可変器7と同様の構成を有しており、第2のバルブ圧可変器46は、図3,図4に図示の第2のバルブ圧可変器8と同様の構成を有している。
チャンバー47は、患者が寝ている状態から急に起き上がったときに、脳室内の脳脊髄液が急激に腹腔側へ流出するのを防ぎ、脳室内の圧力が急激に低下するのを防止するためのものである。このチャンバー47は、高い脳室内圧によって脳脊髄液が押し出されて流れている正圧の状態の場合は、開弁し、腹腔カテーテル内に負圧が生じると閉弁して脳脊髄液を吸い出す作用を止めるような逆流防止弁機能を備え、負圧で閉弁した際に、脳室内から正常に押し出されてきた脳脊髄液を一次貯溜する空洞を有して構成されている。
【0072】
図10、図11に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第3実施例が、図1、図2に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第1実施例と異なる点は、図1、図2に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第1実施例が第2のバルブ圧可変器8の脳脊髄液を排出する出力側に、流出側コネクタ6を取り付けてあるのに対し、図10、図11に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第3実施例は、第2のバルブ圧可変器46の脳脊髄液を排出する出力側に、チャンバー47が設けられ、チャンバー47の脳脊髄液を排出する出力側に、流出側コネクタ48を取り付けている点である。
このように構成することにより、図10、図11に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第3実施例によれば、図1、図2に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第1実施例の作用に加え、脳室内の圧力が水頭症治療用シャントバルブによって一定に保たれた状態から、患者が急に起き上がったときに、脳室内の脳脊髄液が腹腔内へ流出するために、脳室内の圧力が急激に低下する状態となり、脳室内の脳脊髄液が減少し、脳室内の圧力が急激に低下によって脳室が小さく狭くなり、いわゆる細隙脳室(slit ventricle)の状態への移行が始まり、急激な頭痛、意識障害といった症状が生じるのを防止することができる。
【実施例4】
【0073】
図12、図13には、本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第4実施例が示されている。
図12、図13において、水頭症治療用シャントバルブ50は、硬化プラスチック基板51にシャント本体52を取り付け、可撓性を有するシリコーンエラストマーの被膜53によって全体を覆い、一体成形で製造されている。
図12、図13に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第4実施例が、図10,図11に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第3実施例と異なる点は、図10,図11に図示の第3実施例が、流入側コネクタ44を、シリコーンエラストマーの被膜43によって全体を覆われて構成されるシャント本体42に、水頭症治療用シャントバルブ40の硬化プラスチック基板41の長手方向に設けているのに対し、図12、図13に図示の第4実施例が、シリコーンエラストマーの被膜53によって全体を覆われて構成されるシャント本体52から、水頭症治療用シャントバルブ50の硬化プラスチック基板51を貫通して流入側コネクタ54を設けてある点である。
【0074】
他に図10,図11に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第3実施例と異なる点はない。
図8中、54Aは、流入側コネクタ54の先端部に外側に突出する突出部で、脳室内に穿刺する脳室カテーテルの後端を接続するものである。58Aは、流出側コネクタ58の先端部に外側に突出する突出部で、腹腔内に挿入する腹腔カテーテルの後端を接続するものである。
シリコーンエラストマーの被膜53によって全体を覆われて構成されるシャント本体52には、第1のバルブ圧可変器55と、第2のバルブ圧可変器56と、チャンバー57を備えている。
第2のバルブ圧可変器56の脳脊髄液の流出側にチャンバー57が設けられており、このチャンバー57から脳脊髄液を流出する流出側に流出側コネクタ58を取り付けて構成されている。この流入側コネクタ54には、脳室側カテーテルを、流出側コネクタ58には、腹腔カテーテルが接続されている。
【0075】
流入側コネクタ54は、図8に図示の流入側コネクタ30と同様の構成を有しており、流出側コネクタ58は、図2に図示の流出側コネクタ6と同様の構成を有している。
また、第1のバルブ圧可変器55は、図3,図4に図示の第1のバルブ圧可変器7と同様の構成を有しており、第2のバルブ圧可変器56は、図3,図4に図示の第2のバルブ圧可変器8と同様の構成を有している。
チャンバー57は、図10,図11に図示のチャンバー47と同様の構成を有している。
したがって、図12、図13に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第4実施例によれば、図8に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第2実施例の作用に加え、図10、図11に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第3実施例の作用を有している。
【実施例5】
【0076】
図14、図15には、本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第5実施例が示されている。
図14、図15において、水頭症治療用シャントバルブ60は、硬化プラスチック基板61にシャント本体62を取り付け、可撓性を有するシリコーンエラストマーの被膜63によって全体を覆い、一体に成形されている。
図14、図15に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第5実施例が、図1に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第1実施例と異なる点は、図1に図示の第1実施例が、流入側コネクタ5を、シリコーンエラストマーの被膜4によって全体を覆われて構成されるシャント本体3の第1のバルブ圧可変器7に脳脊髄液を取り込む入口側に設けているのに対し、図14、図15に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第5実施例が、流入側コネクタ64に、流入側コネクタ64のシリコーンエラストマーの被膜63によって全体を覆われて構成されるシャント本体62との間に、脳室側オルクーダー68、リザーバー69を設けている点である。
【0077】
他に図10,図11に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第3実施例と異なる点はない。
図14,図15中、64Aは、流入側コネクタ54の先端部に外側に突出する突出部で、脳室内に穿刺する針を先端に取り付けた脳室カテーテルの後端を接続するものである。67Aは、流出側コネクタ67の先端部に外側に突出する突出部で、腹腔内に挿入する腹腔カテーテルの後端を接続するものである。
シリコーンエラストマーの被膜63によって全体を覆われて構成されるシャント本体62には、第1のバルブ圧可変器65と、第2のバルブ圧可変器66と、脳室側オクルーダー68と、リザーバー69を備えている。
第1のバルブ圧可変器65の脳脊髄液の流入側にリザーバー69が設けられており、このリザーバー69から脳脊髄液を流入する流入側に脳室側オクルーダー68を介して流入側コネクタ64を取り付けて構成されている。この流入側コネクタ54には、脳室側カテーテルを、流出側コネクタ67には、腹腔カテーテルが接続されている。
【0078】
流入側コネクタ64は、図8に図示の流入側コネクタ30と同様の構成を有しており、流出側コネクタ67は、図2に図示の流出側コネクタ6と同様の構成を有している。
また、第1のバルブ圧可変器65は、図3,図4に図示の第1のバルブ圧可変器7と同様の構成を有しており、第2のバルブ圧可変器66は、図3,図4に図示の第2のバルブ圧可変器8と同様の構成を有している。
脳室側オクルーダー68は、シャント本体62の、脳室内の脳脊髄液が流出する側に設けられており、脳脊髄液を流す通路を圧閉するためのもので、圧閉することによって脳脊髄液の流れを一時的に止めるためのものである。この脳室側オクルーダー68は、流入側コネクタ64の後端の開口部に形成され、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜63と一体に、上方が開口する有底筒状に形成されている。
【0079】
リザーバー69は、カテーテルの先端(脳室端)から流入側コネクタ64を介して脳室内から流出してくる脳脊髄液を一定量貯溜しておく部屋(空間)である。すなわち、リザーバー69は、脳室側オクルーダー68の開口側と第1のバルブ圧可変器65との間に脳脊髄液を一定量貯溜しておく部屋(空間)が形成されている。このリザーバー69の上壁は、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜63をドーム状に盛り上げて形成されるシリコーンドーム63Aで構成されており、シリコーンドーム63Aを押圧するとリザーバー内に貯溜されていた脳脊髄液をリザーバー69外に押し出す作用を有している。
また、このリザーバー69は、頭部皮膚の下で頭蓋骨膜上に水頭症治療用シャントバルブ60を設置した後に、頭部皮膚の外側からシリコーンドーム63Aを形成する被膜63に針を穿刺し、内部の脳脊髄液を採取したり、内部に造影剤等の薬液を注入することができるようになっている。
一旦、頭部皮膚の下で頭蓋骨膜上に水頭症治療用シャントバルブ60を埋設した後は、頭部皮膚の外側からではシリコーンドーム63Aの位置を目視によって確認することはできない。しかし、シリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜63は、可撓性を有しているため、頭部皮膚の上から指で触診することによって、その位置を確認することができ、頭部皮膚の外側からシリコーンドーム63Aを形成する被膜63に針を穿刺することは容易にできる。
【0080】
このリザーバー69には、脳脊髄液が流入する第1のバルブ圧可変器65の第1の蓋部9の穴9Aが開口している。
したがって、図14,図15に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第5実施例によれば、図1に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第1実施例の作用に加え、頭部皮膚の下で頭蓋骨膜上に水頭症治療用シャントバルブ60を設置した後に、頭部皮膚の外側からシリコーンドーム63Aを形成する被膜63に針を穿刺し、内部の脳脊髄液を採取したり、内部に造影剤等の薬液を注入することができる。
また、頭部皮膚の下で頭蓋骨膜の近くに水頭症治療用シャントバルブ60を設置した後に、頭部皮膚の外側から被膜63を押圧し、脳室側オクルーダー68の上方開口部を閉塞し、頭部皮膚の外側からシリコーンドーム63Aを押圧することにより、ポンピングすることができ、これによって第1のバルブ圧可変器65、第2のバルブ圧可変器66に詰まりが生じたときに、第1のバルブ圧可変器65、第2のバルブ圧可変器66の詰まりを解消することができる。
【実施例6】
【0081】
図16、図17には、本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第6実施例が示されている。
図16、図17において、水頭症治療用シャントバルブ70は、硬化プラスチック基板71にシャント本体62を取り付け、可撓性を有するシリコーンエラストマーの被膜73によって全体を覆い、一体成形で製造されている。
図16、図17に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第6実施例が、図14,図15に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第5実施例と異なる点は、図14,図15に図示の第5実施例が、第1のバルブ圧可変器65の脳脊髄液の流入側にリザーバー69を設け、このリザーバー69内に脳室内の脳脊髄液が流出してくる脳脊髄液を案内する流入側コネクタ64の後端の開口部に脳室側オクルーダー68を設けて構成されているのに対し、図16、図17に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第6実施例が、第1のバルブ圧可変器75の脳脊髄液の流入側にリザーバー78を設け、このリザーバー78内に脳室内の脳脊髄液が流入してくる脳脊髄液を案内する流入側コネクタ74の後端の開口部を直接にリザーバー78内に覗かせて設けている点と、第1のバルブ圧可変器75の脳脊髄液の流入側と脳脊髄液を腹腔カテーテルに流出する流出側コネクタ77との間にチャンバー79を設けている点である。
【0082】
他に図14,図15に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第5実施例と異なる点は、ない。
図16、図17中、74Aは、流入側コネクタ74の先端部に外側に突出する突出部で、脳室内に穿刺する脳室カテーテルの後端を接続するものである。77Aは、流出側コネクタ77の先端部に外側に突出する突出部で、腹腔内に挿入する腹腔カテーテルの後端を接続するものである。
図16、図17中、71は、硬化プラスチック基板で、図14、図15に図示の第5実施例の硬化プラスチック基板61と同様の構成を有している。図16、図17中、72は、シャント本体、図14、図15に図示の第5実施例のシャント本体62と同様に構成されている。図16、図17中、73は、可撓性を有するシリコーンエラストマーの被膜で、図14、図15に図示の第5実施例の可撓性を有するシリコーンエラストマーの被膜63と同様に構成され、シャント本体72の全体を覆い、一体に成形されている。
【0083】
図16、図17中、75は第1のバルブ圧可変器で、76は第2のバルブ圧可変器で、78はリザーバーで、79はチャンバーある。
第1のバルブ圧可変器75の脳脊髄液の流入側にリザーバー78が設けられており、このリザーバー78から脳脊髄液を流入する流入側に流入側コネクタ74を取り付けて構成されている。この流入側コネクタ74には、脳室側カテーテルを、流出側コネクタ77には、腹腔カテーテルが接続されている。
流入側コネクタ74は、図14、図15に図示の第5実施例の流入側コネクタ64と同様の構成を有しており、流出側コネクタ77は、図14、図15に図示の第5実施例の流出側コネクタ68と同様の構成を有している。
また、第1のバルブ圧可変器75は、図14、図15に図示の第5実施例の第1のバルブ圧可変器65と同様の構成を有しており、第2のバルブ圧可変器76は、図14、図15に図示の第5実施例の第2のバルブ圧可変器66と同様の構成を有している。
【0084】
リザーバー78は、脳室側カテーテルに接続されている流入側コネクタ74を介して脳室内から流出してくる脳脊髄液を一定量貯溜しておく部屋(空間)である。すなわち、リザーバー78は、脳室側オクルーダー68の開口側と第1のバルブ圧可変器65との間に脳脊髄液を一定量貯溜しておく部屋(空間)として形成されている。このリザーバー78の上壁は、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜73をドーム状に盛り上げて形成されるシリコーンドーム73Aが構成されており、シリコーンドーム63Aを押圧するとリザーバー69外に押し出す作用を有している。
また、このリザーバー78は、頭部皮膚の下で頭蓋骨膜上に水頭症治療用シャントバルブ70を設置した後に、頭部皮膚の外側からシリコーンドーム73Aを形成する被膜73に針を穿刺し、内部の脳脊髄液を採取したり、内部に造影剤等の薬液を注入することができるようになっている。
【0085】
そして、リザーバー78は、図14、図15に図示の第5実施例のリザーバー69と同様の構成を有しており、チャンバー79は、図10、図11に図示の第3実施例のチャンバー47と同様の構成を有している。
したがって、図16、図17に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第6実施例によれば、図10、図11に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第3実施例の作用に加え、頭部皮膚の下で頭蓋骨膜上に水頭症治療用シャントバルブ60を設置した後に、頭部皮膚の外側からシリコーンドーム63Aを形成する被膜63に針を穿刺し、内部の脳脊髄液を採取したり、内部に造影剤等の薬液を注入することができる。
【実施例7】
【0086】
図18には、本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第7実施例が示されている。
図18において、水頭症治療用シャントバルブ80は、硬化プラスチック基板81にシャント本体82を取り付け、可撓性を有するシリコーンエラストマーの被膜83によって全体を覆い、一体成形で製造されている。
図18に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第7実施例が、図16,図17に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第6実施例と異なる点は、図16,図17に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第6実施例が、第1のバルブ圧可変器75の脳脊髄液の流入側にリザーバー78を設け、このリザーバー78内に脳室内の脳脊髄液が流入してくる脳脊髄液を案内する流入側コネクタ74の後端の開口部を直接にリザーバー78内に覗かせて設けて構成しているのに対し、図18に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第7実施例が、流入側コネクタ84の後端部に上方が開口する有底筒状に形成され、脳室内から流出する脳脊髄液を流す通路を一時的に圧閉するための脳室側オクルーダー87を設けて構成している点である。
【0087】
他に図16,図17に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第6実施例と異なる点はない。
図18中、84は脳室内に穿刺する脳室カテーテルの後端を接続する流入側コネクタで、84Aは流入側コネクタ84の先端部に外側に突出する突出部である。図18中、90は腹腔内に挿入する腹腔カテーテルの後端を接続する流出側コネクタで、90Aは流出側コネクタ90の先端部に外側に突出する突出部である。
図18中、85は第1のバルブ圧可変器で、86は第2のバルブ圧可変器で、87は脳室側オクルーダーで、88はリザーバーで、89はチャンバーある。
第1のバルブ圧可変器85の脳脊髄液の流入側にリザーバー88が設けられており、このリザーバー88から脳脊髄液を流入する流入側に流入側コネクタ84を取り付けて構成されている。この流入側コネクタ84には、脳室側カテーテルを、流出側コネクタ90には、腹腔カテーテルが接続されている。
【0088】
流入側コネクタ84は、図16、図17に図示の第6実施例の流入側コネクタ74と同様の構成を有しており、流出側コネクタ90は、図16、図17に図示の第6実施例の流出側コネクタ77と同様の構成を有している。
また、第1のバルブ圧可変器85は、図16、図17に図示の第6実施例の第1のバルブ圧可変器75と同様の構成を有しており、第2のバルブ圧可変器86は、図16、図17に図示の第6実施例の第2のバルブ圧可変器76と同様の構成を有している。
【0089】
リザーバー88は、カテーテルの先端(脳室端)から流入側コネクタ84を介して脳室内から流出してくる脳脊髄液を一定量貯溜しておく部屋(空間)である。すなわち、リザーバー88は、脳室側オクルーダー87の開口側と第1のバルブ圧可変器85との間に脳脊髄液を一定量貯溜しておく部屋(空間)として形成されている。このリザーバー88の上壁は、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜73をドーム状に盛り上げて形成されるシリコーンドーム83Aが構成されており、シリコーンドーム83Aを押圧するとリザーバー88から外に押し出す作用を有している。
また、このリザーバー88は、頭部皮膚の下で頭蓋骨膜上に水頭症治療用シャントバルブ80を設置した後に、頭部皮膚の外側からシリコーンドーム83Aを形成する被膜83に針を穿刺し、内部の脳脊髄液を採取したり、内部に造影剤等の薬液を注入することができるようになっている。
【0090】
リザーバー88は、図16、図17に図示の第6実施例のリザーバー78と同様の構成を有しており、チャンバー79は、図16、図17に図示の第6実施例のチャンバー79と同様の構成を有している。
したがって、図18に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第7実施例によれば、図16、図17に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第6実施例の作用に加え、頭部皮膚の下で頭蓋骨膜上に水頭症治療用シャントバルブ80を設置した後に、頭部皮膚の外側から被膜83を押圧し、脳室側オクルーダー87の上方開口部を閉塞し、頭部皮膚の外側からシリコーンドーム83Aを押圧することにより、ポンピングすることができ、これによって第1のバルブ圧可変器85、第2のバルブ圧可変器86に詰まりが生じたときに、第1のバルブ圧可変器85、第2のバルブ圧可変器86の詰まりを解消することができる。
【実施例8】
【0091】
図19,図20には、本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第8実施例が示されている。
図19,図20において、水頭症治療用シャントバルブ100は、硬化プラスチック基板101にシャント本体102を取り付け、可撓性を有するシリコーンエラストマーの被膜103によって全体を覆い、一体に成形されている。
図19,図20に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第8実施例が、図16,図17に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第6実施例と異なる点は、図16,図17に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第6実施例が、第1のバルブ圧可変器75と流入側コネクタ74の後端の開口部との間に、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜73をドーム状に盛り上げてシリコーンドーム83Aを形成して上壁を構成しているリザーバー88を設けてあるのに対し、図19,図20に図示の第8実施例が、流入側コネクタ104と第1のバルブ圧可変器105の第1の蓋部9の穴9Aとのとの間に形成されるリザーバー109を、流入側コネクタ104の後端の開口部に開口し、第1のバルブ圧可変器105の側面を囲むように可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜103をドーム状に膨出してシリコーンサイドドーム103A,103Bによって構成している点である。
【0092】
図19、図20に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第8実施例の特徴は、第1のバルブ圧可変器の側面を囲むように可撓性を有するシリコーンエラストマーの被膜をドーム状にシャント本体の長軸方向両側に膨出してシリコーンサイドドームを配置形成した点にある。
他に図16,図17に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第6実施例と異なる点はない。
【0093】
図19,図20中、104は、筒状に形成されており、脳室内に穿刺する脳室カテーテルの後端を接続する流入側コネクタで、104Aは流入側コネクタ104の先端部に外側に突出する突出部である。図19,図20中、108は、筒状に形成されており、腹腔内に挿入する腹腔カテーテルの後端を接続する流出側コネクタで、108Aは流出側コネクタ108の先端部に外側に突出する突出部である。
図19,図20中、105は第1のバルブ圧可変器で、106は第2のバルブ圧可変器で、107はチャンバーで、109はリザーバーである。
第1のバルブ圧可変器105の脳脊髄液の流入側にリザーバー109が設けられており、このリザーバー109から脳脊髄液を流入する流入側に流入側コネクタ104を取り付けて構成されている。この流入側コネクタ104には、脳室側カテーテルを、流出側コネクタ107には、腹腔カテーテルが接続されている。
流入側コネクタ104は、図14、図15に図示の第5実施例の流入側コネクタ64と同様の構成を有しており、流出側コネクタ107は、図14、図15に図示の第5実施例の流出側コネクタ68と同様の構成を有している。
【0094】
また、第1のバルブ圧可変器105は、図14、図15に図示の第5実施例の第1のバルブ圧可変器65と同様の構成を有しており、第2のバルブ圧可変器106は、図14、図15に図示の第5実施例の第2のバルブ圧可変器66と同様の構成を有している。
第1のバルブ圧可変器105の流出路14Bには、第2のバルブ圧可変器106の脳脊髄液の流入側となる第2の蓋部20の穴20A(図5,6を参照)が開口している。そして、第2のバルブ圧可変器106の脳脊髄液を排出する出力側である流出路25Bには、流出側コネクタ108が取り付けられている。
リザーバー109は、第1のバルブ圧可変器105の側面を囲むように隣接して、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜103をドーム状に膨出してシリコーンサイドドーム103A,103Bを形成して、構成されている。このリザーバー109は、脳室カテーテルの先端(脳室端)に接続されている針から流入側コネクタ104を介して脳室外に流出してくる脳脊髄液を一定量貯溜しておく空間として形成されている。
【0095】
このリザーバー109の上壁とシャント本体102の長軸方向の側壁は、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜103をドーム状に盛り上げると共に第1のバルブ圧可変器105の側壁周囲に膨出して、第1のバルブ圧可変器105の両サイドにシリコーンサイドドーム103A,103Bが形成されている。そして、このシリコーンサイドドーム103A,103Bを押圧するとリザーバー109から、接続されている第1のバルブ圧可変器105、流入側コネクタ104に脳脊髄液を押し出す作用を有している。
このリザーバー109は、頭部皮膚の下で頭蓋骨膜上に水頭症治療用シャントバルブ100を設置した後に、頭部皮膚の外側からシリコーンサイドドーム103A,103Bを形成する被膜103に針を穿刺し、内部の脳脊髄液を採取したり、内部に造影剤等の薬液を注入することができるようになっている。
【0096】
また、図19,図20に図示の水頭症治療用シャントバルブ100は、頭部皮膚の下で頭蓋骨膜上に埋設した後は、頭部皮膚の外側からではシリコーンサイドドーム103A,103Bの位置を目視によって確認することはできない。しかし、シリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜103は、可撓性を有しているため、頭部皮膚の上から指で触診することによって、その位置を確認することができ、頭部皮膚の外側から水頭症治療用シャントバルブ100の第1のバルブ圧可変器105の両サイドを挟むようにしてシリコーンサイドドーム103A,103Bの位置を容易に確認することができ、シリコーンサイドドーム103A,103Bを形成する被膜103に針を穿刺することを容易に行うことができる。
【0097】
このリザーバー109には、第1のバルブ圧可変器105の脳脊髄液が流入する第1の蓋部9の穴9A(図3,4を参照)が開口している。
したがって、図19,図20に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第8実施例によれば、図16、図17に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第6実施例の作用に加え、第1のバルブ圧可変器105の両サイドに2つのシリコーンサイドドーム103A,103Bを形成して構成してあるため、水頭症治療用シャントバルブの長軸方向に大きくなるのを防止することができ、コンパクトに構成することができ、手術によって切開部分を小さくすることができ、患者の負担を軽減することができる。
【実施例9】
【0098】
図21,図22には、本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第9実施例が示されている。
図21,図22において、水頭症治療用シャントバルブ110は、硬化プラスチック基板111にシャント本体112を取り付け、可撓性を有するシリコーンエラストマーの被膜113によって全体を覆い、一体に成形されている。
図21,図22に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第9実施例が、図1に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第1実施例と異なる点は、図1に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第1実施例が、第1のバルブ圧可変器7の流出路14Bに、第2のバルブ圧可変器8の脳脊髄液の流入側となる第2の蓋部20の穴20A(図5,6を参照)を開口して構成しているのに対し、図21,図22に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第10実施例が、第1のバルブ圧可変器116の流出路14Bにリザーバー119を設け、このリザーバー119から脳脊髄液を流入するリザーバー119の流出側に第2のバルブ圧可変器117を設けて構成している点と、流入側コネクタ114の後端部に上方が開口する有底筒状に形成され、脳室内から流出する脳脊髄液を流す通路を一時的に圧閉するための脳室側オクルーダー118を設けて構成している点である。
他に、図1に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第1実施例と異なる点はない。
【0099】
図21,図22中、114は、筒状に形成されており、脳室内に穿刺する脳室カテーテルの後端を接続する流入側コネクタで、114Aは流入側コネクタ114の先端部に外側に突出する突出部である。図21,図22中、115は、筒状に形成されており、腹腔内に挿入する腹腔カテーテルの後端を接続する流出側コネクタで、115Aは流出側コネクタ115の先端部に外側に突出する突出部である。
図21,図22中、116は第1のバルブ圧可変器で、117は第2のバルブ圧可変器で、118は脳室側オクルーダーで、119はリザーバーである。
第1のバルブ圧可変器116の脳脊髄液の流入側に流入側コネクタ114を取り付けて構成されている。この流入側コネクタ114には、脳室側カテーテルを、流出側コネクタ115には、腹腔カテーテルが接続されている。
流入側コネクタ114は、図14、図15に図示の第5実施例の流入側コネクタ64と同様の構成を有しており、流出側コネクタ115は、図14、図15に図示の第5実施例の流出側コネクタ68と同様の構成を有している。
【0100】
また、第1のバルブ圧可変器116は、図3、図4に図示の第1のバルブ圧可変器7と同様の構成を有しており、第2のバルブ圧可変器117は、図5、図6に図示の第2のバルブ圧可変器8と同様の構成を有している。
脳室側オクルーダー118は、図14、図15に図示の第5実施例の脳室側オクルーダー68と同様の構成を有し、流入側コネクタ114の脳室内の脳脊髄液が流入してくる側に設けられており、脳脊髄液を流す通路を圧閉するためのもので、圧閉することによって脳脊髄液の流れを一時的に止めるためのものである。この脳室側オクルーダー118は、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜113と一体に、前記流入側コネクタ114の後端に、上方が開口する有底筒状に形成されている。そして、この脳室側オクルーダー118は、前記流入側コネクタ114を介して流入してくる脳脊髄液の流路を圧閉して脳脊髄液の流入を一時的に止める作用を有している。
【0101】
リザーバー119は、図16、図17に図示の第6実施例のリザーバー78と同様の構成を有し、第1のバルブ圧可変器116と第2のバルブ圧可変器117との間に脳脊髄液を一定量貯溜しておく部屋(空間)として形成されている。このリザーバー119の上壁は、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜113をドーム状に盛り上げて形成されるシリコーンドーム113Aが構成されており、シリコーンドーム113Aを押圧すると、リザーバー119から脳脊髄液をリザーバー119の外に押し出す作用を有している。
また、このリザーバー119は、頭部皮膚の下で頭蓋骨膜上に水頭症治療用シャントバルブ110を設置した後に、頭部皮膚の外側からシリコーンドーム113Aを形成する被膜113に針を穿刺し、内部の脳脊髄液を採取したり、内部に造影剤等の薬液を注入することができるようになっている。
したがって、本発明に係る第9実施例の水頭症治療用シャントバルブによれば、図1に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第1実施例の作用に加え、頭部皮膚の下で頭蓋骨膜の近くに水頭症治療用シャントバルブ110を設置した後に、頭部皮膚の外側からシリコーンドーム113Aを形成する被膜113に針を穿刺し、内部の脳脊髄液を採取したり、内部に造影剤等の薬液を注入することができる。
【実施例10】
【0102】
図23,図24には、本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第10実施例が示されている。
図23,図24において、水頭症治療用シャントバルブ120は、硬化プラスチック基板121にシャント本体122を取り付け、可撓性を有するシリコーンエラストマーの被膜123によって全体を覆い、一体に成形されている。
図23,図24に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第10実施例が、図21,図22に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第9実施例と異なる点は、図21,図22に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第9実施例の第2のバルブ圧可変器117と流出側コネクタ115との間に、チャンバー130を設けた点である。
他に、図21,図22に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第9実施例と異なる点はない。
【0103】
図23,図24中、124は、筒状に形成されており、脳室内に穿刺する脳室カテーテルの後端を接続する流入側コネクタで、124Aは流入側コネクタ124の先端部に外側に突出する突出部である。図23,図24中、125は、筒状に形成されており、腹腔内に挿入する腹腔カテーテルの後端を接続する流出側コネクタで、125Aは流出側コネクタ125の先端部に外側に突出する突出部である。
図23,図24中、126は第1のバルブ圧可変器で、127は第2のバルブ圧可変器で、128は脳室側オクルーダーで、129はリザーバーで、130はチャンバーである。
第1のバルブ圧可変器126の脳脊髄液の流入側に流入側コネクタ124を取り付けて構成されている。この流入側コネクタ124には、脳室側カテーテルを、流出側コネクタ125には、腹腔カテーテルが接続されている。
流入側コネクタ124は、図14、図15に図示の第5実施例の流入側コネクタ64と同様の構成を有しており、流出側コネクタ125は、図14、図15に図示の第5実施例の流出側コネクタ68と同様の構成を有している。
【0104】
また、第1のバルブ圧可変器126は、図3、図4に図示の第1のバルブ圧可変器7と同様の構成を有しており、第2のバルブ圧可変器127は、図5、図6に図示の第2のバルブ圧可変器8と同様の構成を有している。
脳室側オクルーダー128は、図14、図15に図示の第5実施例の脳室側オクルーダー68と同様の構成を有し、流入側コネクタ124の脳室内の脳脊髄液が流入してくる側に設けられており、脳脊髄液を流す通路を圧閉するためのもので、圧閉することによって脳脊髄液の流れを一時的に止めるためのものである。この脳室側オクルーダー128は、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜123と一体に、前記流入側コネクタ124の後端に、上方が開口する有底筒状に形成されている。そして、この脳室側オクルーダー128は、前記流入側コネクタ124を介して流入してくる脳脊髄液の流路を圧閉して脳脊髄液の流入を一時的に止める作用を有している。
【0105】
リザーバー129は、図16、図17に図示の第6実施例のリザーバー78と同様の構成を有し、第1のバルブ圧可変器126と第2のバルブ圧可変器127との間に脳脊髄液を一定量貯溜しておく部屋(空間)として形成されている。このリザーバー129の上壁は、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜123をドーム状に盛り上げて形成されるシリコーンドーム123Aが構成されており、シリコーンドーム123Aを押圧すると、リザーバー129から脳脊髄液をリザーバー129の外に押し出す作用を有している。
また、このリザーバー129は、頭部皮膚の下で頭蓋骨膜上に水頭症治療用シャントバルブ120を設置した後に、頭部皮膚の外側からシリコーンドーム163Aを形成する被膜123に針を穿刺し、内部の脳脊髄液を採取したり、内部に造影剤等の薬液を注入することができるようになっている。
【0106】
チャンバー130は、患者が寝ている状態から急に起き上がったときに、脳室内の脳脊髄液が急激に流出するのを防止し、脳室内の圧力が急激に低下するのを防止するためのものである。このチャンバー130は、高い脳室内圧によって脳脊髄液が押し出されて流れている状態の場合は、開弁し、腹腔カテーテル内に負圧が生じると閉弁して脳脊髄液を吸い出す作用を止めるような逆流防止弁様機能を備え、負圧で閉弁した際に、脳室内から正常に押し出されてきた脳脊髄液を一次貯溜する空洞を有して構成されている。
したがって、本発明に係る第10実施例の水頭症治療用シャントバルブによれば、図21,図22に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第9実施例の作用に加え、脳室内の圧力が水頭症治療用シャントバルブによって一定に保たれた状態から、患者が急に起き上がったときに、脳室内の脳脊髄液が減少し、脳室内の圧力が急激に低下する状態となり、脳室内の脳脊髄液が減少し、脳室内の圧力が急激に低下によって脳室が小さく狭くなり、いわゆる細隙脳室(slit ventricle)の状態への移行が始まり、急激な頭痛、時に急激な意識障害を生じるといった症状が生じるのを防止することができる。
【実施例11】
【0107】
図25〜図27には、本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第11実施例が示されている。
図25〜図27において、水頭症治療用シャントバルブ140は、硬化プラスチック基板141にシャント本体142を取り付け、可撓性を有するシリコーンエラストマーの被膜143によって全体を覆い、一体に成形されている。
図25〜図27に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第11実施例が、図23、図24に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第10実施例と異なる点は、図23、図24に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第10実施例が、第1のバルブ圧可変器126の流出路14Bにリザーバー129を設け、このリザーバー129から脳脊髄液を流入するリザーバー129の流出側に第2のバルブ圧可変器127を設けて構成しているのに対し、図25〜図27に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第11実施例が、流入側コネクタ144からシャント本体142内に流入する脳脊髄液を第1のバルブ圧可変器145の第1の蓋部9の穴9Aから第1のバルブ本体10内に直接供給し、第1のバルブ圧可変器145の流出路14Bと第2のバルブ圧可変器146との間にシャント本体142の長軸方向両側に、連接する第1のバルブ圧可変器145と第2のバルブ圧可変器146の2つの側面を、シャント本体142の長軸方向に跨ぐように、第1のバルブ圧可変器145と第2のバルブ圧可変器146の並び方向に隣接して、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜143をドーム状にシャント本体142の長手方向両側に膨出するシリコーンサイドドーム143A,143Bによって構成するリザーバー149を設けている点である。
【0108】
図25〜図27に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第11実施例の特徴は、図21、図22に図示の第9実施例、図23、図24に図示の第10実施例の各リザーバーが、いずれも第1のバルブ圧可変器と第2のバルブ圧可変器と間隔を広げて、第1のバルブ圧可変器の流入側と第2のバルブ圧可変器との間に空間を形成して構成しているのを、第1のバルブ圧可変器と第2のバルブ圧可変器と間隔を広げて配置することなく、第1のバルブ圧可変器の側面と第2のバルブ圧可変器の側面にシャント本体の長軸方向に跨って隣接するように、可撓性を有するシリコーンエラストマーの被膜をドーム状にシャント本体の長軸方向両側に膨出してシリコーンサイドドームを形成し配置した点にある。
【0109】
図25〜図27中、144は、筒状に形成されており、脳室内に穿刺する脳室カテーテルの後端を接続する流入側コネクタで、144Aは流入側コネクタ144の先端部に外側に突出する突出部である。図25〜図27中、148は、筒状に形成されており、腹腔内に挿入する腹腔カテーテルの後端を接続する流出側コネクタで、148Aは流出側コネクタ148の先端部に外側に突出する突出部である。
図25〜図27中、145は第1のバルブ圧可変器で、146は第2のバルブ圧可変器で、147はチャンバーで、149はリザーバーである。
第1のバルブ圧可変器145の脳脊髄液の流入側には、脳室内に穿刺する針を先端に取り付けた脳室カテーテルの後端を接続する流入側コネクタ144の後端部が連結されており、流出側コネクタ148の後端部から流入する脳脊髄液を第1のバルブ圧可変器145の第1の蓋部9の穴9Aから第1のバルブ本体10内(図3,4を参照)に直接供給するようになっている。
【0110】
第1のバルブ圧可変器145の流出路14Bには、リザーバー149が設けられており、このリザーバー149から脳脊髄液を流入する流入側に第2のバルブ圧可変器146の脳脊髄液の流入側となる第2の蓋部20の穴20A(図5,6を参照)が開口している。そして、第2のバルブ圧可変器146の脳脊髄液を排出する出力側である流出路25Bには、流出側コネクタ148が取り付けられている。
リザーバー149は、長軸方向両側に第1のバルブ圧可変器145の側面と第2のバルブ圧可変器146の側面をシャント本体142の長手方向に跨ぐように隣接して、可撓性を有するシリコーンエラストマーによって構成される被膜143をドーム状にシャント本体142の長軸方向両側に膨出して、シリコーンサイドドーム143A,143Bが形成されている。このリザーバー149は、脳室カテーテルの先端(脳室端)に接続されている流入側コネクタ84を介して脳室外に流出してくる脳脊髄液を第1のバルブ圧可変器145で流圧の一次調整を行った後に一定量貯溜しておく空間として形成されている。
【0111】
このリザーバー149の上壁とシャント本体142の長軸方向の側壁は、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜143をドーム状に盛り上げると共にシャント本体142の長軸方向両側に膨出して、長軸方向の両サイドにシリコーンサイドドーム143A,143Bが形成されている。そして、このシリコーンサイドドーム143A,143Bを押圧するとリザーバー149から、接続されている第1のバルブ圧可変器145、第2のバルブ圧可変器146に脳脊髄液を押し出す作用を有している。
このリザーバー149は、頭部皮膚の下で頭蓋骨膜上に水頭症治療用シャントバルブ140を設置した後に、頭部皮膚の外側からシリコーンサイドドーム143A,143Bを形成する被膜143に針を穿刺し、内部の脳脊髄液を採取したり、内部に造影剤等の薬液を注入することができるようになっている。
【0112】
また、図25〜図27に図示の水頭症治療用シャントバルブ140は、頭部皮膚の下で頭蓋骨膜上に埋設した後は、頭部皮膚の外側からではシリコーンサイドドーム143A,143Bの位置を目視によって確認することはできない。しかし、シリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜143は、可撓性を有しているため、頭部皮膚の上から指で触診することによって、その位置を確認することができ、頭部皮膚の外側から水頭症治療用シャントバルブ140を挟むようにしてシリコーンサイドドーム143A,143Bの位置を容易に確認することができ、シリコーンサイドドーム143A,143Bを形成する被膜143に針を穿刺することを容易に行うことができる。
【0113】
このリザーバー149には、第2のバルブ圧可変器146の脳脊髄液が流入する第2の蓋部20の穴20A(図5,6を参照)が開口している。
したがって、図25〜図27に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第11実施例によれば、図21、図22に図示の第9実施例、図23、図24に図示の第10実施例の各実施例の作用に加え、図21、図22に図示の第9実施例、図23、図24に図示の第10実施例の各リザーバーのように第1のバルブ圧可変器の流出路と第2のバルブ圧可変器の第2の蓋部の穴との間に第1のバルブ圧可変器と第2のバルブ圧可変器と間隔を広げてシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜143をドーム状に盛り上げて、リザーバーを形成配置するのではなく、第1のバルブ圧可変器145と第2のバルブ圧可変器146の両サイドに2つのシリコーンサイドドーム143A,143Bを形成して構成してあるため、コンパクトに構成することができ、水頭症治療用シャントバルブの長軸方向に大きくなるのを防止することができ、手術によって切開部分を小さくすることができ、患者の負担を軽減することができる。
【実施例12】
【0114】
図28には、本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第12実施例が示されている。
図28において、水頭症治療用シャントバルブ150は、硬化プラスチック基板151にシャント本体152を取り付け、可撓性を有するシリコーンエラストマーの被膜153によって全体を覆い、一体に成形されている。
図28に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第12実施例が、図21,図22に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第9実施例と異なる点は、図21,図22に図示の第9実施例が、流入側コネクタ114を、シリコーンエラストマーの被膜113によって全体を覆われて構成されるシャント本体112に、水頭症治療用シャントバルブ114の硬化プラスチック基板111の長軸方向に設けているのに対し、図28に図示の第12実施例が、シリコーンエラストマーの被膜153によって全体を覆われて構成されるシャント本体152から、水頭症治療用シャントバルブ150の硬化プラスチック基板151を貫通して流入側コネクタ154を設けてある点である。
他に図21,図22に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第9実施例と異なる点はない。
図28中、154Aは、流入側コネクタ154の先端部に外側に突出する突出部で、脳室内に穿刺する脳室カテーテルの後端を接続するものである。
【0115】
このように構成される図28に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブ150は、流入側コネクタ154を、硬化プラスチック基板151から貫通して、下向きに設けてあるため、図9に示す如く装着する。
すなわち、まず、手術によって頭蓋骨31に小さな穴31Aを開け(図9を参照)、頭蓋骨31と脳の間の硬膜を開き、この穴31Aから脳室カテーテルを側脳室内に挿入し、脳室カテーテルの後端を流入側コネクタ154に接続し、しかる後、硬化プラスチック基板151の下側に突出する流入側コネクタ154を頭蓋骨31に明けた穴31Aに挿入して、頭皮と頭蓋骨31との間に設置する。
したがって、図28に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブ150によれば、頭皮と頭蓋骨31との間の設置した水頭症治療用シャントバルブ150を、従来のバルブと比較して、より安定させて固定することができる。
【実施例13】
【0116】
図29,図30には、本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第13実施例が示されている。
図29,図30において、水頭症治療用シャントバルブ160は、硬化プラスチック基板161にシャント本体162を取り付け、可撓性を有するシリコーンエラストマーの被膜163によって全体を覆い、一体に成形されている。
図29,図30に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第13実施例が、図1に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第1実施例と異なる点は、図1に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第1実施例が、第1のバルブ圧可変器7と、第2のバルブ圧可変器8の2連式であるのに対し、図29,図30に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第13実施例が、第1のバルブ圧可変器166と、第2のバルブ圧可変器167と、第3のバルブ圧可変器168の3連式となっている点である。
【0117】
図29,図30中、164は、筒状に形成されており、脳室内に穿刺する脳室カテーテルの後端を接続する流入側コネクタで、164Aは流入側コネクタ164の先端部に外側に突出する突出部である。図29,図30中、165は、筒状に形成されており、腹腔内に挿入する腹腔カテーテルの後端を接続する流出側コネクタで、165Aは流出側コネクタ165の先端部に外側に突出する突出部である。
図29,図30中、166は第1のバルブ圧可変器で、167は第2のバルブ圧可変器で、168は第3のバルブ圧可変器で、169は脳室側オクルーダーである。
第1のバルブ圧可変器166の脳脊髄液の流入側に流入側コネクタ164を取り付けて構成されている。この流入側コネクタ164には、脳室側カテーテルを、流出側コネクタ165には、腹腔カテーテルが接続されている。
流入側コネクタ164は、図14、図15に図示の第5実施例の流入側コネクタ64と同様の構成を有しており、流出側コネクタ165は、図14、図15に図示の第5実施例の流出側コネクタ68と同様の構成を有している。
【0118】
また、第1のバルブ圧可変器166は、図14、図15に図示の第5実施例の第1のバルブ圧可変器65と同様の構成を有しており、第2のバルブ圧可変器167は、図14、図15に図示の第5実施例の第2のバルブ圧可変器66と同様の構成を有しており、第3のバルブ圧可変器168は、図14、図15に図示の第5実施例の第2のバルブ圧可変器66と同様の構成を有している。
脳室側オクルーダー169は、図14,図15に図示の第5実施例の脳室側オクルーダー68と同様の構成を有している。
第1のバルブ圧可変器166の流出路14Bには、第2のバルブ圧可変器167の脳脊髄液の流入側となる第2の蓋部20の穴20A(図5,6を参照)が開口している。そして、第2のバルブ圧可変器167の脳脊髄液を排出する出力側である流出路25Bには、第3のバルブ圧可変器168の脳脊髄液の流入側となる第2の蓋部20の穴20A(図5,6を参照)が開口している。さらに、第3のバルブ圧可変器168の脳脊髄液を排出する出力側である流出路25Bには、流出側コネクタ165が取り付けられている。
【0119】
本発明に係る第13実施例の水頭症治療用シャントバルブ160における第1のバルブ圧可変器166と、第2のバルブ圧可変器167と、第3のバルブ圧可変器168との調節による脳室内の圧力と脳室内から流出する脳脊髄液の流量との関係は、次のようになる。
すなわち、水頭症治療用シャントバルブ160による脳室内の圧力は、第1のバルブ圧可変器166のバルブ調節と第2のバルブ圧可変器167のバルブ調節と第3のバルブ圧可変器168のバルブ調節を行った場合には、バルブ調節当初は、第1のバルブ圧可変器166のバルブ調節による調節圧と、第2のバルブ圧可変器167のバルブ調節による調節圧と、第3のバルブ圧可変器168のバルブ調節による調節圧との3つの調節圧の最も高い方の設定値に準拠する。このときの脳室内から流出する単位時間あたりの脳脊髄液の流量は、第1のバルブ圧可変器166の量と、第2のバルブ圧可変器167の量と、第3のバルブ圧可変器168のそれぞれの設定値の総和に依存して調節され、脳脊髄液の排出流速の変化となって現れる。
【0120】
こうすることにより、水頭症治療用シャントバルブ160によって、脳室内の圧力をゆっくり下げ(又は、上げ)、脳脊髄液の単一時間当たりの流量を増加(又は、減少)させることができ、水頭症治療用シャントバルブ160を設置した患者の状態に合わせた調節を行うことができる。
このように本発明に係る第13実施例の水頭症治療用シャントバルブによれば、第1のバルブ圧可変器166のバルブ調節と第2のバルブ圧可変器167と第3のバルブ圧可変器168のバルブ調節とを独立して行うことが可能となるため、従来の水頭症治療用シャントバルブで5通りに設定が可能であるものが、理論上5×5×5=125通りの調節が可能となり、従来のシャントバルブでは不可能であった水頭症の患者に対して、より微調整治療を施すことができる。
【実施例14】
【0121】
図31,図32には、本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第14実施例が示されている。
図31,図32において、水頭症治療用シャントバルブ170は、硬化プラスチック基板171にシャント本体172を取り付け、可撓性を有するシリコーンエラストマーの被膜173によって全体を覆い、一体に成形されている。
図31,図32に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第14実施例が、図14、図15に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第5実施例と異なる点は、図14、図15に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第5実施例が、第1のバルブ圧可変器65と、第2のバルブ圧可変器66の2連式であるのに対し、図31,図32に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第14実施例が、第1のバルブ圧可変器176と、第2のバルブ圧可変器177と、第3のバルブ圧可変器178の3連式となっている点である。
他は、図14、図15に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第5実施例の構成と異なる点はない。
【0122】
図31,図32中、174は、筒状に形成されており、脳室内に穿刺する脳室カテーテルの後端を接続する流入側コネクタで、174Aは流入側コネクタ174の先端部に外側に突出する突出部である。図31,図32中、175は、筒状に形成されており、腹腔内に挿入する腹腔カテーテルの後端を接続する流出側コネクタで、175Aは流出側コネクタ175の先端部に外側に突出する突出部である。
図31,図32中、176は第1のバルブ圧可変器で、177は第2のバルブ圧可変器で、178は第3のバルブ圧可変器で、179は脳室側オクルーダーでで、180はリザーバーで、181はチャンバーである。
第1のバルブ圧可変器176の脳脊髄液の流入側に流入側コネクタ174を取り付けて構成されている。この流入側コネクタ174には、脳室側カテーテルを、流出側コネクタ175には、腹腔カテーテルが接続されている。
流入側コネクタ174は、図14、図15に図示の第5実施例の流入側コネクタ64と同様の構成を有しており、流出側コネクタ175は、図14、図15に図示の第5実施例の流出側コネクタ68と同様の構成を有している。
【0123】
また、第1のバルブ圧可変器176は、図16、図17に図示の第6実施例の第1のバルブ圧可変器75と同様の構成を有しており、第2のバルブ圧可変器177は、図16、図17に図示の第6実施例の第2のバルブ圧可変器76と同様の構成を有しており、第3のバルブ圧可変器178は、図16、図17に図示の第6実施例の第2のバルブ圧可変器76と同様の構成を有している。
脳室側オクルーダー179は、図14、図15に図示の第5実施例の脳室側オクルーダー68と同様の構成を有し、流入側コネクタ174の脳室内の脳脊髄液が流入してくる側に設けられており、脳脊髄液を流す通路を圧閉するためのもので、圧閉することによって脳脊髄液の流れを一時的に止めるためのものである。この脳室側オクルーダー179は、流入側コネクタ174の後端の開口部に形成され、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜173と一体に、上方が開口する有底筒状に形成されている。
【0124】
リザーバー180は、図16、図17に図示の第6実施例のリザーバー78と同様の構成を有し、第1のバルブ圧可変器176と第2のバルブ圧可変器177との間に脳脊髄液を一定量貯溜しておく部屋(空間)として形成されている。このリザーバー180の上壁は、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜173をドーム状に盛り上げて形成されるシリコーンドーム173Aが構成されており、シリコーンドーム173Aを押圧すると、リザーバー180から脳脊髄液をリザーバー180の外に押し出す作用を有している。
また、このリザーバー180は、頭部皮膚の下で頭蓋骨膜の近くに水頭症治療用シャントバルブ170を設置した後に、頭部皮膚の外側からシリコーンドーム173Aを形成する被膜173に針を穿刺し、内部の脳脊髄液を採取したり、内部に造影剤等の薬液を注入することができるようになっている。
【0125】
また、チャンバー181は、図16、図17に図示の第6実施例のチャンバー79と同様の構成を有している。
このチャンバー181は、患者が寝ている状態から急に起き上がったときに、脳室内の脳脊髄液が急激に腹腔側へ流出するのを防止し、脳室内の圧力が急激に低下するのを防止するためのものである。このチャンバー181は、高い脳室内圧によって脳脊髄液が押し出されて流れている状態の場合は、開弁し、腹腔カテーテル内に負圧が生じると閉弁して脳脊髄液を吸い出す作用を止めるような逆止弁を備え、負圧で閉弁した際に、脳室内から正常に押し出されてきた脳脊髄液を一次貯溜する空洞を有して構成されている。
第1のバルブ圧可変器176の流出路14Bには、第2のバルブ圧可変器177の脳脊髄液の流入側となる第2の蓋部20の穴20A(図5,6を参照)が開口している。そして、第2のバルブ圧可変器177の脳脊髄液を排出する出力側である流出路25Bには、第3のバルブ圧可変器178の脳脊髄液の流入側となる第2の蓋部20の穴20A(図5,6を参照)が開口している。さらに、第3のバルブ圧可変器178の脳脊髄液を排出する出力側である流出路25Bには、流出側コネクタ175が取り付けられている。
【0126】
本発明に係る第14実施例の水頭症治療用シャントバルブ170における第1のバルブ圧可変器176と、第2のバルブ圧可変器177と、第3のバルブ圧可変器178との調節による脳室内の圧力と脳室内から流出する脳脊髄液の流量との関係は、図29,図30に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第13実施例と同様になる。
したがって、本発明に係る第14実施例の水頭症治療用シャントバルブによれば、第1のバルブ圧可変器176のバルブ調節と第2のバルブ圧可変器177と第3のバルブ圧可変器178のバルブ調節とを独立して行うことができるため、従来の水頭症治療用シャントバルブの5通りの設定が可能であるものが、5×5×5=125通りの調節が可能となり、水頭症の患者に対して、より微調節可能な治療を施すことができる。
【実施例15】
【0127】
図33,図34には、本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第15実施例が示されている。
図33,図34において、水頭症治療用シャントバルブ190は、硬化プラスチック基板191にシャント本体192を取り付け、可撓性を有するシリコーンエラストマーの被膜193によって全体を覆い、一体に成形されている。
図33,図34に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第15実施例が、図31、図32に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第14実施例と異なる点は、図31、図32に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第14実施例が、流入側コネクタ174と、第1のバルブ圧可変器176との間にリザーバー180を設けているのに対し、図33,図34に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第15実施例が、第1のバルブ圧可変器196と流入側コネクタ194との間にリザーバーを設けずに、第1のバルブ圧可変器196と第2のバルブ圧可変器197との間に第1のリザーバー200を設け、第2のバルブ圧可変器197と第3のバルブ圧可変器198との間に第1のリザーバー201を設けている点である。
他に、図31、図32に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第14実施例の構成と異なる点はない。
【0128】
図33,図34中、194は、筒状に形成されており、脳室内に穿刺する脳室カテーテルの後端を接続する流入側コネクタで、194Aは流入側コネクタ194の先端部に外側に突出する突出部である。図33,図34中、195は、筒状に形成されており、腹腔内に挿入する腹腔カテーテルの後端を接続する流出側コネクタで、195Aは流出側コネクタ195の先端部に外側に突出する突出部である。
図33,図34中、196は第1のバルブ圧可変器で、197は第2のバルブ圧可変器で、198は第3のバルブ圧可変器で、199は脳室側オクルーダーでで、200,201は第1,第2のリザーバーで、202はチャンバーである。
第1のバルブ圧可変器196の脳脊髄液の流入側に流入側コネクタ194を取り付けて構成されている。この流入側コネクタ194には、脳室側カテーテルを、流出側コネクタ195には、腹腔カテーテルが接続されている。
流入側コネクタ194は、図31、図32に図示の第14実施例の流入側コネクタ174と同様の構成を有しており、流出側コネクタ195は、図31、図32に図示の第14実施例の流出側コネクタ175と同様の構成を有している。
【0129】
また、第1のバルブ圧可変器196は、図31、図32に図示の第14実施例の第1のバルブ圧可変器176と同様の構成を有しており、第2のバルブ圧可変器197は、図31、図32に図示の第14実施例の第2のバルブ圧可変器177と同様の構成を有しており、第3のバルブ圧可変器198は、図31、図32に図示の第14実施例の第3のバルブ圧可変器178と同様の構成を有している。
脳室側オクルーダー199は、図31、図32に図示の第14実施例の脳室側オクルーダー179と同様の構成を有し、流入側コネクタ194の脳室内の脳脊髄液が流入してくる側に設けられており、脳脊髄液を流す通路を圧閉するためのもので、圧閉することによって脳脊髄液の流れを一時的に止めるためのものである。この脳室側オクルーダー199は、流入側コネクタ194の後端の開口部に形成され、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜193と一体に、上方が開口する有底筒状に形成されている。
【0130】
第1,第2のリザーバー200,201は、図31、図32に図示の第14実施例のリザーバー180と同様の構成を有し、第1のリザーバー200は、第1のバルブ圧可変器196と第2のバルブ圧可変器197との間に脳脊髄液を一定量貯溜しておく部屋(空間)として形成されている。また、第2のリザーバー201は、第2のバルブ圧可変器197と第3のバルブ圧可変器198との間に脳脊髄液を一定量貯溜しておく部屋(空間)として形成されている。
この第1,第2のリザーバー200,201の上壁は、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜193をドーム状に盛り上げて形成されるシリコーンドーム193A,193Bが構成されており、シリコーンドーム193A,193Bを押圧すると、第1,第2のリザーバー200,201から脳脊髄液を第1,第2のリザーバー200,201の外に押し出す作用を有している。
また、この第1,第2のリザーバー200,201は、頭部皮膚の下で頭蓋骨膜上に水頭症治療用シャントバルブ190を設置した後に、頭部皮膚の外側からシリコーンドーム193A,193Bを形成する被膜193に針を穿刺し、内部の脳脊髄液を採取したり、内部に造影剤等の薬液を注入することができるようになっている。
【0131】
また、チャンバー202は、図31、図32に図示の第14実施例のチャンバー181と同様の構成を有している。
このチャンバー202は、患者が寝ている状態から急に起き上がったときに、脳室内の脳脊髄液が急激に腹腔側に流出するのを防止し、脳室内の圧力が急激に低下するのを防止するためのものである。このチャンバー202は、高い脳室内圧によって脳脊髄液が押し出されて流れている状態の場合は、開弁し、腹腔カテーテル内に負圧が生じると閉弁して脳脊髄液を吸い出す作用を止めるような逆流防止弁様機能を備え、負圧で閉弁した際に、脳室内から正常に押し出されてきた脳脊髄液を一次貯溜する空洞を有して構成されている。
第1のバルブ圧可変器196の流出路14Bは、第1のリザーバー200に開口しており、第1のリザーバー200の脳脊髄液の流出側に第2のバルブ圧可変器197の脳脊髄液の流入側となる第2の蓋部20の穴20A(図5,6を参照)が開口している。そして、第2のバルブ圧可変器197の脳脊髄液を排出する出力側である流出路25Bは、第2のリザーバー201に開口しており、第2のリザーバー201の脳脊髄液の流出側に第3のバルブ圧可変器198の脳脊髄液の流入側となる第2の蓋部20の穴20A(図5,6を参照)が開口している。
そして、第3のバルブ圧可変器198の脳脊髄液を排出する出力側である流出路25Bに、流出側コネクタ195が取り付けられている。
【0132】
本発明に係る第15実施例の水頭症治療用シャントバルブ190における第1のバルブ圧可変器196と、第2のバルブ圧可変器197と、第3のバルブ圧可変器198との調節による脳室内の圧力と脳室内から流出する脳脊髄液の流量との関係は、図31、図32に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第14実施例と同様になる。
したがって、本発明に係る第15実施例の水頭症治療用シャントバルブによれば、第1のバルブ圧可変器196のバルブ調節と第2のバルブ圧可変器197と第3のバルブ圧可変器198のバルブ調節とを独立して行うことができ、従来の水頭症治療用シャントバルブで5通りに設定可能であるが、理論上5×5×5=125通りの調節が可能となり、水頭症の患者に対して、より微調節可能な治療対応が可能となる。
さらに、第1のバルブ圧可変器196と第2のバルブ圧可変器197との間に第1のリザーバー200を、第2のバルブ圧可変器197と第3のバルブ圧可変器198との間に第2のリザーバー201を、それぞれ独立して設けてあるため、第1のバルブ圧可変器196、第2のバルブ圧可変器197、第3のバルブ圧可変器198のいずれの詰まりに対しても独立して対応することができる。
【実施例16】
【0133】
図35〜図37には、本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第16実施例が示されている。
図35〜図37において、水頭症治療用シャントバルブ210は、硬化プラスチック基板211にシャント本体212を取り付け、可撓性を有するシリコーンエラストマーの被膜213によって全体を覆い、一体に成形されている。
図35〜図37に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第16実施例が、図33,図34に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第15実施例と異なる点は、次の点にある。
すなわち、図33,図34に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第15実施例は、第1のバルブ圧可変器196と第2のバルブ圧可変器197との間に、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜193をドーム状に盛り上げてシリコーンドーム193Bを形成して上壁を構成してなる第1のリザーバー200を配置して形成し、第2のバルブ圧可変器197と第3のバルブ圧可変器198との間に、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜193をドーム状に盛り上げてシリコーンドーム193Aを形成して上壁を構成してなる第2のリザーバー201を配置して形成している。
【0134】
これに対し、図35〜図37に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第16実施例は、流入側コネクタ214からシャント本体212内に流入する脳脊髄液を第1のバルブ圧可変器216の第1の蓋部9の穴9Aから第1のバルブ本体10内に直接供給し、第1のバルブ圧可変器216の流出路14Bと第2のバルブ圧可変器217との間にシャント本体212の長軸方向両側に第1のバルブ圧可変器216の側面と第2のバルブ圧可変器217の側面をシャント本体212の長軸方向に跨ぐように隣接して、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜213をドーム状にシャント本体212の長軸方向両側に膨出する第1のシリコーンサイドドーム213A,213Bによって構成する第1のリザーバー220を設けている点が異なる。また、図35〜図37に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第16実施例は、第2のバルブ圧可変器217の流出路14Bと第3のバルブ圧可変器218との間にシャント本体212の長軸方向両側に第2のバルブ圧可変器217の側面と第3のバルブ圧可変器218の側面をシャント本体212の長軸方向に跨ぐように隣接して、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜213をドーム状にシャント本体212の長軸方向両側に膨出する第2のシリコーンサイドドーム213C,213Dによって構成する第2のリザーバー221を設け、この第2のリザーバー221は、第1のリザーバー220とは、仕切られた状態に構成してある点が異なる。
他に、図33,図34に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第15実施例の構成と異なる点はない。
【0135】
図33,図34に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第15実施例が、第1のリザーバー200を第1のバルブ圧可変器196と第2のバルブ圧可変器197との間に配置し、第2のリザーバー201を第2のバルブ圧可変器197と第3のバルブ圧可変器198との間に配置している。これに対し、図35〜図37に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第16実施例の特徴は、第1のバルブ圧可変器216と第2のバルブ圧可変器217との間のリザーバーのスペース分、第1のバルブ圧可変器216と第2のバルブ圧可変器217との間隔を詰めて、第1のバルブ圧可変器216の側面と第2のバルブ圧可変器217の側面にシャント本体の長軸方向に跨って隣接するように可撓性を有するシリコーンエラストマーの被膜をドーム状にシャント本体の長軸方向両側に膨出して2つの第1のシリコーンサイドドームによって第1のリザーバー220を形成するようにした点と、第2のバルブ圧可変器217と第3のバルブ圧可変器218との間のリザーバーのスペース分、第2のバルブ圧可変器217と第3のバルブ圧可変器218との間隔を詰めて、第2のバルブ圧可変器217の側面と第3のバルブ圧可変器218の側面にシャント本体の長軸方向に跨って隣接するように可撓性を有するシリコーンエラストマーの被膜をドーム状にシャント本体の長軸方向両側に膨出して2つの第2のシリコーンサイドドームによって第2のリザーバー221を形成するようにした点にある。
【0136】
図35〜図37中、214は、筒状に形成されており、脳室内に穿刺する脳室カテーテルの後端を接続する流入側コネクタで、214Aは流入側コネクタ214の先端部に外側に突出する突出部である。図35〜図37中、215は、筒状に形成されており、腹腔内に挿入する腹腔カテーテルの後端を接続する流出側コネクタで、215Aは流出側コネクタ215の先端部に外側に突出する突出部である。
図35〜図37中、216は第1のバルブ圧可変器で、217は第2のバルブ圧可変器で、218は第3のバルブ圧可変器で、219は脳室側オクルーダーでで、220,221は第1、第2のリザーバーである。
第1のバルブ圧可変器216の脳脊髄液の流入側に流入側コネクタ214を取り付けて構成されている。この流入側コネクタ214には、脳室側カテーテルを、流出側コネクタ215には、腹腔カテーテルが接続されている。
流入側コネクタ214は、図33,図34に図示の第15実施例の流入側コネクタ194と同様の構成を有しており、流出側コネクタ215は、図33,図34に図示の第15実施例の流出側コネクタ195と同様の構成を有している。
【0137】
また、第1のバルブ圧可変器216は、図33,図34に図示の第15実施例の第1のバルブ圧可変器196と同様の構成を有しており、第2のバルブ圧可変器217は、図33,図34に図示の第15実施例の第2のバルブ圧可変器197と同様の構成を有しており、第3のバルブ圧可変器218は、図33,図34に図示の第15実施例の第3のバルブ圧可変器198と同様の構成を有している。
脳室側オクルーダー219は、図33,図34に図示の第15実施例の脳室側オクルーダー199と同様の構成を有し、流入側コネクタ214の脳室内の脳脊髄液が流入してくる側に設けられており、脳脊髄液を流す通路を圧閉するためのもので、圧閉することによって脳脊髄液の流れを一時的に止めるためのものである。この脳室側オクルーダー219は、流入側コネクタ214の後端の開口部に形成され、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜213と一体に、上方が開口する有底筒状に形成されている。
【0138】
第1、第2のリザーバー220,221は、図33,図34に図示の第15実施例のリザーバー180と同様の構成を有し、第1のリザーバー220は、第1のバルブ圧可変器216と第2のバルブ圧可変器217とに架けて設けられる脳脊髄液を一定量貯溜しておく部屋(空間)として形成されている。また、第2のリザーバー221は、第2のバルブ圧可変器217と第3のバルブ圧可変器218とに架けて設けられる脳脊髄液を一定量貯溜しておく部屋(空間)として形成されている。
この第1のリザーバー220の上壁とシャント本体212の長軸方向の側壁は、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜213をドーム状に盛り上げると共にシャント本体212の長軸方向両側に膨出して、長軸方向の両サイドに第1のシリコーンサイドドーム213A,213Bが形成されている。そして、この第1のシリコーンサイドドーム213A,213Bを押圧すると第1のリザーバー200から、接続されている第1のバルブ圧可変器216、第2のバルブ圧可変器217に脳脊髄液を押し出す作用を有している。
【0139】
また、第2のリザーバー221の上壁とシャント本体212の長軸方向の側壁は、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜213をドーム状に盛り上げると共にシャント本体212の長軸方向両側に膨出して、長軸方向の両サイドに第2のシリコーンサイドドーム213C,213Dが形成されている。そして、この第2のシリコーンサイドドーム213C,213Dを押圧すると第2のリザーバー221から、接続されている第2のバルブ圧可変器217、第2のバルブ圧可変器218に脳脊髄液を押し出す作用を有している。
そして、このリ第1、第2のザーバー220,221は、頭部皮膚の下で頭蓋骨膜上に水頭症治療用シャントバルブ210を設置した後に、頭部皮膚の外側から第1、第2のシリコーンサイドドーム213A,213B,213C,213Dを形成する被膜213に針を穿刺し、内部の脳脊髄液を採取し、内部に造影剤等の薬液を注入することができるようになっている。
【0140】
第1のバルブ圧可変器216の流出路14Bは、第1のリザーバー220に開口しており、第1のリザーバー220の脳脊髄液の流出側に第2のバルブ圧可変器217の脳脊髄液の流入側となる第2の蓋部20の穴20A(図5,6を参照)が開口している。そして、第2のバルブ圧可変器217の脳脊髄液を排出する出力側である流出路25Bは、第2のリザーバー221に開口しており、第2のリザーバー221の脳脊髄液の流出側に第3のバルブ圧可変器218の脳脊髄液の流入側となる第2の蓋部20の穴20A(図5,6を参照)が開口している。
そして、第3のバルブ圧可変器218の脳脊髄液を排出する出力側である流出路25Bに、流出側コネクタ215が取り付けられている。
【0141】
本発明に係る第16実施例の水頭症治療用シャントバルブ210における第1のバルブ圧可変器216と、第2のバルブ圧可変器217と、第3のバルブ圧可変器218との調節による脳室内の圧力と脳室内から流出する脳脊髄液の流量との関係は、図33,図34に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第15実施例と同様になる。
したがって、本発明に係る第16実施例の水頭症治療用シャントバルブによれば、第1のバルブ圧可変器216のバルブ調節と第2のバルブ圧可変器217と第3のバルブ圧可変器218のバルブ調節とを独立して行うことができ、従来の水頭症治療用シャントバルブで5通りに設定が可能であるものが、理論上5×5×5=125通りの設定が可能となり、水頭症の患者に対して、より微調整可能な治療対応をすることができる。
さらに、第1のバルブ圧可変器216と第2のバルブ圧可変器217との間に第1のリザーバー220を、第2のバルブ圧可変器217と第3のバルブ圧可変器218との間に第2のリザーバー221を、それぞれ独立して設けてあるため、第1のバルブ圧可変器216、第2のバルブ圧可変器217、第3のバルブ圧可変器218のいずれの詰まりに対しても独立して対応することができる。
【実施例17】
【0142】
図38〜図40には、本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第17実施例が示されている。
図38〜図40において、水頭症治療用シャントバルブ230は、硬化プラスチック基板231にシャント本体232を取り付け、可撓性を有するシリコーンエラストマーの被膜233によって全体を覆い、一体に成形されている。
図38〜図40に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第17実施例が、図35〜図37に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第16実施例と異なる点は、図35〜図37に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第16実施例が、第3のバルブ圧可変器238の脳脊髄液を排出する出力側である流出路25Bに、流出側コネクタ235が取り付けているのに対し、図38〜図40に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第17実施例が、第3のバルブ圧可変器238の脳脊髄液を排出する出力側である流出路25Bに、チャンバー242を設け、チャンバー242の脳脊髄液を排出する出力側に、流出側コネクタ235を取り付けている点である。
他に、図35〜図37に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第16実施例の構成と異なる点はない。
このように、図38〜図40に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第17実施例の特徴は、図35〜図37に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第16実施例の第3のバルブ圧可変器198と流出側コネクタ215との間にチャンバー242を設けた点にある。
【0143】
図38〜図40中、234は、筒状に形成されており、脳室内に穿刺する脳室カテーテルの後端を接続する流入側コネクタで、234Aは流入側コネクタ234の先端部に外側に突出する突出部である。図38〜図40中、235は、筒状に形成されており、腹腔内に挿入する腹腔カテーテルの後端を接続する流出側コネクタで、235Aは流出側コネクタ235の先端部に外側に突出する突出部である。
図38〜図40中、236は第1のバルブ圧可変器で、237は第2のバルブ圧可変器で、238は第3のバルブ圧可変器で、239は脳室側オクルーダーでで、240,241は第1、第2のリザーバーで、242はチャンバーである。
第1のバルブ圧可変器236の脳脊髄液の流入側に流入側コネクタ234を取り付けて構成されている。この流入側コネクタ234には、脳室側カテーテルを、流出側コネクタ235には、腹腔カテーテルが接続されている。
流入側コネクタ234は、図35〜図37に図示の第16実施例の流入側コネクタ194と同様の構成を有しており、流出側コネクタ235は、図35〜図37に図示の第16実施例の流出側コネクタ195と同様の構成を有している。
【0144】
また、第1のバルブ圧可変器236は、図35〜図37に図示の第16実施例の第1のバルブ圧可変器196と同様の構成を有しており、第2のバルブ圧可変器237は、図35〜図37に図示の第16実施例の第2のバルブ圧可変器197と同様の構成を有しており、第3のバルブ圧可変器238は、図35〜図37に図示の第16実施例の第3のバルブ圧可変器198と同様の構成を有している。
脳室側オクルーダー239は、図35〜図37に図示の第16実施例の脳室側オクルーダー199と同様の構成を有し、流入側コネクタ234の脳室内の脳脊髄液が流入してくる側に設けられており、脳脊髄液を流す通路を圧閉するためのもので、圧閉することによって脳脊髄液の流れを一時的に止めるためのものである。この脳室側オクルーダー239は、流入側コネクタ234の後端の開口部に形成され、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜233と一体に、上方が開口する有底筒状に形成されている。
【0145】
第1、第2のリザーバー240,241は、図35〜図37に図示の第16実施例の第1、第2のリザーバー220,221と同様の構成を有し、第1のリザーバー240は、第1のバルブ圧可変器236と第2のバルブ圧可変器237とに架けて設けられる脳脊髄液を一定量貯溜しておく部屋(空間)として形成されている。また、第2のリザーバー241は、第2のバルブ圧可変器237と第3のバルブ圧可変器238とに架けて設けられる脳脊髄液を一定量貯溜しておく部屋(空間)として形成されている。
この第1のリザーバー240の上壁とシャント本体232の長軸方向の側壁は、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜233をドーム状に盛り上げると共にシャント本体232の長軸方向両側に膨出して、長軸方向の両サイドに第1のシリコーンサイドドーム233A,233Bが形成されている。そして、この第1のシリコーンサイドドーム233A,233Bを押圧すると第1のリザーバー240から、接続されている第1のバルブ圧可変器236、第2のバルブ圧可変器237に脳脊髄液を押し出す作用を有している。
【0146】
また、第2のリザーバー241の上壁とシャント本体232の長軸方向の側壁は、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜233をドーム状に盛り上げると共にシャント本体232の長軸方向両側に膨出して、長軸方向の両サイドに第2のシリコーンサイドドーム233C,233Dが形成されている。そして、この第2のシリコーンサイドドーム233C,233Dを押圧すると第2のリザーバー241から、接続されている第2のバルブ圧可変器237、第2のバルブ圧可変器238に脳脊髄液を押し出す作用を有している。
そして、この第1、第2のリザーバー240,241は、頭部皮膚の下で頭蓋骨膜上に水頭症治療用シャントバルブ230を設置した後に、頭部皮膚の外側から第1、第2のシリコーンサイドドーム233A,233B,233C,233Dを形成する被膜233に針を穿刺し、内部の脳脊髄液を採取したり、内部に造影剤等の薬液を注入することができるようになっている。
【0147】
また、チャンバー242は、図31、図32に図示の第14実施例のチャンバー181と同様の構成を有している。
このチャンバー242は、患者が寝ている状態から急に起き上がったときに、脳室内の脳脊髄液が急激に腹腔内に流出するのを防止し、脳室内の圧力が急激に低下するのを防止するためのものである。このチャンバー242は、高い脳室内圧によって脳脊髄液が押し出されて流れている状態の場合は、開弁し、腹腔カテーテル内に負圧が生じると閉弁して脳脊髄液を吸い出す作用を止めるような逆止弁を備え、負圧で閉弁した際に、脳室内から正常に押し出されてきた脳脊髄液を一次貯溜する空洞を有して構成されている。
【0148】
第1のバルブ圧可変器236の流出路14Bは、第1のリザーバー240に開口しており、第1のリザーバー240の脳脊髄液の流出側に第2のバルブ圧可変器237の脳脊髄液の流入側となる第2の蓋部20の穴20A(図5,6を参照)が開口している。そして、第2のバルブ圧可変器237の脳脊髄液を排出する出力側である流出路25Bは、第2のリザーバー241に開口しており、この第2のリザーバー241の脳脊髄液の流出側に第3のバルブ圧可変器238の脳脊髄液の流入側となる第2の蓋部20の穴20A(図5,6を参照)が開口している。
そして、第3のバルブ圧可変器198の脳脊髄液を排出する出力側である流出路25Bに、チャンバー242が設けられている。
本発明に係る第17実施例の水頭症治療用シャントバルブ230における第1のバルブ圧可変器236と、第2のバルブ圧可変器237と、第3のバルブ圧可変器238との調節による脳室内の圧力と脳室内から流出する脳脊髄液の流量との関係は、図35〜図37に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第16実施例と同様になる。
【0149】
したがって、本発明に係る第17実施例の水頭症治療用シャントバルブによれば、図33,図34に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第15実施例の作用に加え、脳室内の圧力が水頭症治療用シャントバルブによって一定に保たれた状態から、患者が急に起き上がったときに、脳室内の脳脊髄液が腹腔内に流出し、脳室内の圧力が急激に低下する状態となり、脳室内の脳脊髄液が減少し、脳室内の圧力が急激に低下によって脳室が小さく狭くなり、いわゆる細隙脳室(slit ventricle)の状態への移行が始まり、急激な頭痛、意識障害を生じるといった症状が生じるのを防止することができる。
【実施例18】
【0150】
図41,図42には、本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第18実施例が示されている。
図41,図42において、水頭症治療用シャントバルブ250は、硬化プラスチック基板251にシャント本体252を取り付け、可撓性を有するシリコーンエラストマーの被膜253によって全体を覆い、一体に成形されている。
図41,図42に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第18実施例が、図38〜図40に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第17実施例と異なる点は、図38〜図40に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第17実施例が、流入側コネクタ234を、シリコーンエラストマーの被膜233によって全体を覆われて構成されるシャント本体232に、水頭症治療用シャントバルブ230の硬化プラスチック基板231の長軸方向に設けているのに対し、図41,図42に図示の第18実施例が、シリコーンエラストマーの被膜253によって全体を覆われて構成されるシャント本体252から、水頭症治療用シャントバルブ250の硬化プラスチック基板251を貫通して流入側コネクタ254を設けてある点である。
他に、図38〜図40に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第17実施例の構成と異なる点はない。
【0151】
図41,図42中、254は、筒状に形成されており、脳室内に穿刺する脳室カテーテルの後端を接続する流入側コネクタで、254Aは流入側コネクタ254の先端部に外側に突出する突出部である。図41,図42中、255は、筒状に形成されており、腹腔内に挿入する腹腔カテーテルの後端を接続する流出側コネクタで、255Aは流出側コネクタ255の先端部に外側に突出する突出部である。
図41,図42中、256は第1のバルブ圧可変器で、257は第2のバルブ圧可変器で、258は第3のバルブ圧可変器で、259,260は第1、第2のリザーバーで、261はチャンバーである。
第1のバルブ圧可変器256の脳脊髄液の流入側に流入側コネクタ254を取り付けて構成されている。この流入側コネクタ254には、脳室側カテーテルを、流出側コネクタ255には、腹腔カテーテルが接続されている。
流入側コネクタ254は、図38〜図40に図示の第17実施例の流入側コネクタ234と同様の構成を有しており、流出側コネクタ255は、図38〜図40に図示の第17実施例の流出側コネクタ235と同様の構成を有している。
【0152】
また、第1のバルブ圧可変器256は、図38〜図40に図示の第17実施例の第1のバルブ圧可変器236と同様の構成を有しており、第2のバルブ圧可変器257は、図38〜図40に図示の第17実施例の第2のバルブ圧可変器237と同様の構成を有しており、第3のバルブ圧可変器258は、図38〜図40に図示の第17実施例の第3のバルブ圧可変器238と同様の構成を有している。
第1、第2のリザーバー259,260は、図38〜図40に図示の第17実施例の第1、第2のリザーバー220,221と同様の構成を有し、第1のリザーバー259は、第1のバルブ圧可変器256と第2のバルブ圧可変器257とに架けて設けられる脳脊髄液を一定量貯溜しておく部屋(空間)として形成されている。また、第2のリザーバー260は、第2のバルブ圧可変器257と第3のバルブ圧可変器258とに架けて設けられる脳脊髄液を一定量貯溜しておく部屋(空間)として形成されている。
この第1のリザーバー259の上壁とシャント本体252の長軸方向の側壁は、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜253をドーム状に盛り上げると共にシャント本体252の長軸方向両側に膨出して、長軸方向の両サイドに第1のシリコーンサイドドーム253A,253Bが形成されている。そして、この第1のシリコーンサイドドーム253A,253Bを押圧すると第1のリザーバー259から、接続されている第1のバルブ圧可変器256、第2のバルブ圧可変器257に脳脊髄液を押し出す作用を有している。
【0153】
また、第2のリザーバー260の上壁とシャント本体252の長軸方向の側壁は、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜253をドーム状に盛り上げると共にシャント本体252の長軸方向両側に膨出して、長軸方向の両サイドに第2のシリコーンサイドドーム253C,253Dが形成されている。そして、この第2のシリコーンサイドドーム253C,253Dを押圧すると第2のリザーバー241から、接続されている第2のバルブ圧可変器257、第2のバルブ圧可変器258に脳脊髄液を押し出す作用を有している。
そして、この第1、第2のリザーバー259,260は、頭部皮膚の下で頭蓋骨膜上に水頭症治療用シャントバルブ250を設置した後に、頭部皮膚の外側から第1、第2のシリコーンサイドドーム253A,253B,253C,253Dを形成する被膜253に針を穿刺し、内部の脳脊髄液を採取したり、内部に造影剤等の薬液を注入することができるようになっている。
【0154】
また、チャンバー261は、図38〜図40に図示の第17実施例のチャンバー242と同様の構成を有している。
このチャンバー261は、患者が寝ている状態から急に起き上がったときに、脳室内の脳脊髄液が急激に腹腔内に流出するのを防止し、脳室内の圧力が急激に低下するのを防止するためのものである。このチャンバー261は、高い脳室内圧によって脳脊髄液が押し出されて流れている状態の場合は、開弁し、腹腔カテーテル内に負圧が生じると閉弁して脳脊髄液を吸い出す作用を止めるような逆流防止弁様機能を備え、負圧で閉弁した際に、脳室内から正常に押し出されてきた脳脊髄液を一次貯溜する空洞を有して構成されている。
【0155】
第1のバルブ圧可変器256の流出路14Bは、第1のリザーバー259に開口しており、第1のリザーバー259の脳脊髄液の流出側に第2のバルブ圧可変器257の脳脊髄液の流入側となる第2の蓋部20の穴20A(図5,6を参照)が開口している。そして、第2のバルブ圧可変器257の脳脊髄液を排出する出力側である流出路25Bは、第2のリザーバー260に開口しており、この第2のリザーバー260の脳脊髄液の流出側に第3のバルブ圧可変器258の脳脊髄液の流入側となる第2の蓋部20の穴20A(図5,6を参照)が開口している。
そして、第3のバルブ圧可変器258の脳脊髄液を排出する出力側である流出路25Bに、チャンバー260が設けられている。
本発明に係る第18実施例の水頭症治療用シャントバルブ250における第1のバルブ圧可変器256と、第2のバルブ圧可変器257と、第3のバルブ圧可変器258との調節による脳室内の圧力と脳室内から流出する脳脊髄液の流量との関係は、図38〜図40に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第17実施例と同様になる。
【0156】
このように構成される図41,図42に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブ250は、流入側コネクタ254を、硬化プラスチック基板251から貫通して、下向きに設けてあるため、図9に示す如く装着する。
すなわち、ます、手術によって頭蓋骨31に小さな穴31Aを開け、頭蓋骨31と脳の間の膜を開き、この穴31Aから脳室カテーテルを側脳室内に挿入し、脳室カテーテルの後端を流入側コネクタ254に接続し、しかる後、硬化プラスチック基板251の下側に突出する流入側コネクタ254を頭蓋骨31に明けた穴31Aに挿入して、頭皮と頭蓋骨31との間の設置する(図9参照)。
したがって、本発明に係る第18実施例の水頭症治療用シャントバルブによれば、図38〜図40に図示の本発明に係る水頭症治療用シャントバルブの第17実施例の作用に加え、頭皮と頭蓋骨31との間の設置した水頭症治療用シャントバルブ250をより安定させて固定することができる。
【0157】
その他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0158】
1………水頭症治療用シャントバルブ,2………硬化プラスチック基板,3………シャント本体,4………被膜,5………流入側コネクタ,6………流出側コネクタ,7………第1のバルブ圧可変器,8……………第2のバルブ圧可変器,9………第1の蓋部,9A………穴,10………第1のバルブ本体,11………ボール,12………ローター,12A………脚,12B………ボール用スプリング収納部,12C………ローター用スプリング収納部,13………プレート,13A………段差部,14………ケース,15………ボール用スプリング,16………ローター用スプリング,20………第2の蓋部,20A………穴,21………第2のバルブ本体,22………ボール,23………ローター,23A………脚,23B………ボール用スプリング収納部,23C………ローター用スプリング収納部,24………プレート,25………ケース,26…………ボール用スプリング,27………ローター用スプリング,47………チャンバー,63A………シリコーンドーム,68………脳室側オクルーダー,69………リザーバー,103A,103B,113A,113B………シリコーンサイドドーム,168………第3のバルブ圧可変器,200…………第1のリザーバー,201…………第2のリザーバー,213A,213B…………第1のシリコーンサイドドーム,213C,213D…………第2のシリコーンサイドドーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部の頭皮と頭蓋骨との間に設置するもので、脳室内で産生された脳脊髄液が十分吸収されずに脳室内に滞溜し、脳室内の圧が一定圧を超えたときに脳室内の圧が所定の圧になるように脳室内から脳脊髄液の排出量を調節してする水頭症治療用シャントバルブであって,
頭部の頭皮の内側で頭蓋骨の外周の所定の位置に安定させる硬化プラスチック基板と,
筒状に形成され、脳室内に穿刺する脳室カテーテルの後端を接続する流入側コネクタと,
脳室内の圧の変化に応じて第1の開閉弁の開度を変化させ前記脳室カテーテルを通り前記流入側コネクタを介して前記第1の開閉弁から流入する脳脊髄液の流量の増減を前記第1の開閉弁の調節によって行い、前記第1の開閉弁を通過する基準の脳脊髄液の流量を設定する前記第1の開閉弁の開閉圧を複数段に可変することのできる第1のバルブ圧可変器と,
前記第1のバルブ圧可変器の流出路から流出される脳脊髄液を第2の開閉弁を介して流入し、前記第1のバルブ圧可変器から流出される脳脊髄液の流圧の変化に応じて前記第2の開閉弁の開度を変化させ前記第1のバルブ圧可変器の流出路を介して前記第2の開閉弁から流入する脳脊髄液の流量の増減を前記第2の開閉弁の調節によって行い、前記第2の開閉弁を通過する基準の脳脊髄液の流量を設定する前記第2の開閉弁の開閉圧を複数段に可変することのできる第2のバルブ圧可変器と,
筒状に形成され、先端を腹腔内に挿入する腹腔カテーテルの後端を接続する流出側コネクタと,
を備え,
前記硬化プラスチック基板の上に、前記流入側コネクタと前記第1のバルブ圧可変器と前記第2のバルブ圧可変器と前記流出側コネクタとを載置し、前記流入側コネクタと前記流出側コネクタとの間に、前記流入側コネクタから流入する脳脊髄液が第1のバルブ圧可変器の前記第1の開閉弁を通り前記第1のバルブ圧可変器の流出路から流出され、第2のバルブ圧可変器の前記第2の開閉弁を通り該第2のバルブ圧可変器の流出路から流出され、前記流出側コネクタから流出するように脳脊髄液の流路を形成するように可撓性を有するシリコーンエラストマーの被膜によって覆い、前記硬化プラスチック基板に前記シリコーンエラストマーの被膜の下端部を密に接着して一体に成形してなることを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項2】
請求項1に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記硬化プラスチック基板は,
プロピレンの付加重合により得られる高分子化合物(ポリマー)で、高密度ポリエチレンと良く似た熱可塑性樹脂であり、比重が小さく、耐熱性に優れ、酸、アルカリに強く、くり返し曲げに強く、引張強度が大きい樹脂ポリプロピレン(PP)によって構成したものであることを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記流入側コネクタは,
筒状の後端部の外周面を前記シリコーンエラストマーの被膜によって封止し、該後端部の端面を前記第1のバルブ圧可変器の第1の開閉弁に連通してなり、
先端部の外側に突出する突出部を設け、前記脳室カテーテルの後端の接続部を手術糸で縛り付けた後、該脳室カテーテルが容易に離脱することがないようにしたことを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項4】
請求項1,2又は3に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記第1のバルブ圧可変器は,
第1の蓋部と、第1のバルブ本体とによって構成されており,
前記第1の蓋部は、円形の蓋体で構成され、脳脊髄液が内部に流入する流入口を構成してなり,
前記第1のバルブ本体は、前記第1の蓋部に形成される前記流入口を開閉する開閉弁と、該開閉弁の開閉を行う操作機構とを備える
ことを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項5】
請求項4に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記第1の蓋部の流入口は、
円形の蓋体の中心に前記流入側コネクタから流入してくる脳脊髄液を通過させるための表裏に貫通する穴で、該穴は、第1の蓋部の外壁表面に形成される径より内壁表面に向かって径が大きくなるテーパー状に形成されている
ことを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記第1のバルブ本体の開閉弁は、
前記第1の蓋部に形成される前記穴と、前記第1の蓋部の内壁側から該穴に嵌合押圧するボールとによって構成するものである
ことを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項7】
請求項4,5又は6に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記第1のバルブ本体の操作機構は、
脳室内で産生された脳脊髄液の滞溜による脳室内からの脳脊髄液の流圧の変化に応じて、前記ボールの前記第1の蓋部に形成される前記穴への押圧力を変化させて前記穴の内壁面と前記ボールとの離間距離を変化させるものである
ことを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項8】
請求項7に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記第1のバルブ本体の操作機構は、
磁石を内蔵するローターと、ボール用スプリングと、ローター用スプリングと、前記ボールと前記ローターと前記ボール用スプリングと前記ローター用スプリングとを収納し底面に階段状のプレートが形成されているケースとによって構成してなり,
前記ローターは、
任意の1箇所に磁石を埋設する円板状の部材によって形成し、下面に下側に突出する複数の脚を設け、上面に前記ボール用スプリングの下部を収納載置するボール用スプリング収納部と前記ローター用スプリングの下部を収納載置するローター用スプリング収納部とを設け、前記ケース内に収納して前記プレート上に載置し、前記埋設する磁石の磁極と反対の磁極による吸引力を利用して調節器を用いて回転できるように構成してなり,
前記ボール用スプリングは、下端部を前記ローターの上面に形成されるボール用スプリング収納部に収納し、上端に前記ボールを支持し、該ボールを前記第1の蓋部の前記穴に嵌合押圧するように構成してなり,
前記ローター用スプリングは、
コイルスプリングで構成してなり、下端部を前記ローター用スプリング収納部に収納し、上端部を前記第1の蓋部の内部上壁に当接し、前記ローターを前記ケースのプレート側に押圧するように構成してなり,
前記ケースは、
断面円形の有底筒状体で形成され、底壁は、それぞれ高さが一定量ずつ異なった複数の階段状に形成するとともに、前記各階段の境界部に前記ローターが特定の階段位置に載置された後、隣接する階段位置に移動しないように前記ローターの複数の脚を係止する段差部を設けてなるプレートによって構成し、側壁には、下部に前記ケース内に流入した脳脊髄液を排出する流出路を設けて構成し、前記第1の蓋部と密に螺嵌してなり,
前記ローターを所定角度回転し、プレートの階段を上がることによって前記ボール用スプリングを圧縮し、前記ボールの前記第1の蓋部の前記穴に嵌合する押圧力を高め、前記ローターを所定角度回転し、プレートの階段を下がることによって前記ボール用スプリングを伸長し、前記ボールの前記第1の蓋部の前記穴に嵌合する押圧力を弱め、前記ボールの前記第1の蓋部に形成される前記穴への押圧力を変化させて前記穴の内壁面と前記ボールとの離間距離を変化させるようにした
ことを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項9】
請求項1,2,3,4,5,6,7又は8に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記第2のバルブ圧可変器は,
第2の蓋部と、第2のバルブ本体とによって構成されており,
前記第2の蓋部は、円形の蓋体で構成され、脳脊髄液が内部に流入する流入口を構成してなり,
前記第2のバルブ本体は、前記第1の蓋部に形成される前記流入口を開閉する開閉弁と、該開閉弁の開閉を行う操作機構とを備える
ことを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項10】
請求項9に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記第2の蓋部の流入口は、
円形の蓋体の中心に、前記第1のバルブ圧可変器の流出路から流出してくる脳脊髄液を通過させるための表裏に貫通する穴で、該穴は、第2の蓋部の外壁表面に形成される径より内壁表面に向かって径が大きくなるテーパー状に形成されている
ことを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記第2のバルブ本体の開閉弁は、
前記第2の蓋部に形成される前記穴と、前記第2の蓋部の内壁側から該穴に嵌合押圧するボールとによって構成するものである
ことを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項12】
請求項9,10又は11に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記第2のバルブ本体の操作機構は、
脳室内で産生された脳脊髄液の滞溜による脳室内からの脳脊髄液の流圧の変化に応じて、前記ボールの前記第2の蓋部に形成される前記穴への押圧力を変化させて前記穴の内壁面と前記ボールとの離間距離を変化させるものである
ことを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項13】
請求項12に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記第2のバルブ本体の操作機構は、
磁石を内蔵するローターと、ボール用スプリングと、ローター用スプリングと、前記ボールと前記ローターと前記ボール用スプリングと前記ローター用スプリングとを収納し底面に階段状のプレートが形成されているケースとによって構成してなり,
前記ローターは、
任意の1箇所に磁石を埋設する円板状の部材によって形成し、下面に下側に突出する複数の脚を設け、上面に前記ボール用スプリングの下部を収納載置するボール用スプリング収納部と前記ローター用スプリングの下部を収納載置するローター用スプリング収納部とを設け、前記ケース内に収納して前記プレート上に載置し、前記埋設する磁石の磁極と反対の磁極による吸引力を利用して調節器を用いて回転できるように構成してなり,
前記ボール用スプリングは、下端部を前記ローターの上面に形成されるボール用スプリング収納部に収納し、上端に前記ボールを支持し、該ボールを前記第2の蓋部の前記穴に嵌合押圧するように構成してなり,
前記ローター用スプリングは、
コイルスプリングで構成してなり、下端部を前記ローター用スプリング収納部に収納し、上端部を前記第2の蓋部の内部上壁に当接し、前記ローターを前記ケースのプレート側に押圧するように構成してなり,
前記ケースは、
断面円形の有底筒状体で形成され、底壁は、それぞれ高さが一定量ずつ異なった複数の階段状に形成するとともに、前記各階段の境界部に前記ローターが特定の階段位置に載置された後、隣接する階段位置に移動しないように前記ローターの複数の脚を係止する段差部を設けてなるプレートによって構成し、側壁には、下部に前記ケース内に流入した脳脊髄液を排出する流出路を設けて構成し、前記第2の蓋部と密に螺嵌してなり,
前記ローターを所定角度回転し、プレートの階段を上がることによって前記ボール用スプリングを圧縮し、前記ボールの前記第2の蓋部の前記穴に嵌合する押圧力を高め、前記ローターを所定角度回転し、プレートの階段を下がることによって前記ボール用スプリングを伸長し、前記ボールの前記第2の蓋部の前記穴に嵌合する押圧力を弱め、前記ボールの前記第2の蓋部に形成される前記穴への押圧力を変化させて前記穴の内壁面と前記ボールとの離間距離を変化させるようにした
ことを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項14】
請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12又は13に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記流出側コネクタは、
筒状の後端部の外周面を前記シリコーンエラストマーの被膜によって封止し、該後端部の端面を前記第2のバルブ圧可変器の流出路に連通してなり、
先端部の外側に突出する突出部を設け、先端が腹腔内に挿入される腹腔テーテルの後端の接続部を手術糸で縛り付けた後、該腹腔カテーテルが容易に離脱することがないようにした
ことを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項15】
請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12、13又は14に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記流出側コネクタは、
後端部を前記第2のバルブ圧可変器の流出路に開口し、先端部を前記硬化プラスチック基板を貫通して該硬化プラスチック基板の下側に突出して該硬化プラスチック基板に設けたものである
ことを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項16】
請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12、13,14又は15に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記第2のバルブ圧可変器の脳脊髄液を流出する流出路と前記流出側コネクタの後端部との間に、
高い脳室内圧によって脳脊髄液が押し出されて流れている正圧の状態の場合に開弁し、腹腔カテーテル内に負圧が生じると閉弁して脳脊髄液を吸い出す作用を止めるような逆止弁を備え、負圧で閉弁した際に、脳室内から正常に押し出されてきた脳脊髄液を一次貯溜する空洞を有して構成するチャンバーを設けた
ことを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項17】
請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12、13,14,15又は16に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記流入側コネクタと前記第1のバルブ圧可変器の第1の開閉弁との間の該流入側コネクタの後端に、脳室側オルクーダーを設けると共にリザーバーを設けて構成し,
前記脳室側オルクーダーは、可撓性を有するシリコーンエラストマーによって構成される被膜と一体に、前記流入側コネクタの後端に、上方が開口する有底筒状に形成し、前記流入側コネクタを介して流入してくる脳脊髄液の流路を圧閉して脳脊髄液の流入を一時的に止めるもので,
前記リザーバーは、
上壁を可撓性を有するシリコーンエラストマーによって構成される被膜をドーム状に盛り上げたシリコーンドームによって構成してなり、前記脳室側オクルーダーの開口側と前記第1のバルブ圧可変器との間に前記流入側コネクタを介して流入して該脳室側オクルーダーから流入してくる脳脊髄液を一定量貯溜しておく空間を形成して構成した
ことを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項18】
請求項17に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記リザーバーは、
前記流入側コネクタの後端の開口部を開口し、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜をドーム状に膨出して前記第1のバルブ圧可変器の側面を囲むようにシリコーンサイドドームを形成して構成したものである
ことを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項19】
請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12、13,14,15又は16に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
第1のバルブ圧可変器の流出路と前記第2のバルブ圧可変器の第2の開閉弁との間に、
上壁を可撓性を有するシリコーンエラストマーによって構成される被膜をドーム状に盛り上げたシリコーンドームによって空間を形成し構成してなり、前記流入側コネクタを介して前記第1のバルブ圧可変器の第1の開閉弁から流入してくる脳脊髄液を一定量貯溜しておくリザーバーを設けた
ことを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項20】
請求項19に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記第2のバルブ圧可変器の脳脊髄液を流出する流出路と前記流出側コネクタの後端部との間に、
高い脳室内圧によって脳脊髄液が押し出されて流れている正圧の状態の場合に開弁し、腹腔カテーテル内に負圧が生じると閉弁して脳脊髄液を吸い出す作用を止めるような逆流防止弁様機能を備え、負圧で閉弁した際に、脳室内から正常に押し出されてきた脳脊髄液を一次貯溜する空洞を有して構成するチャンバーを設けた
ことを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記リザーバーは、
前記第1のバルブ圧可変器の流出路と第2のバルブ圧可変器の第2の開閉弁とが開口し、連接する前記第1のバルブ圧可変器と前記第2のバルブ圧可変器の2つのの側面を跨ぐようにして、前記第1のバルブ圧可変器と前記第2のバルブ圧可変器の並び方向に隣接して、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜を前記第1のバルブ圧可変器と前記第2のバルブ圧可変器の並び方向両側にドーム状に膨出するシリコーンサイドドームを形成して構成したものである
ことを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項22】
請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12、13,14又は15に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記第1のバルブ圧可変器の流出路側に、前記第2のバルブ圧可変器の流出路から流出される脳脊髄液を第3の開閉弁を介して流入し、前記第2のバルブ圧可変器から流出される脳脊髄液の流圧の変化に応じて前記第2の開閉弁の開度を変化させ前記第2のバルブ圧可変器の流出路を介して前記第3の開閉弁から流入する脳脊髄液の流量の増減を前記第3の開閉弁の調節によって行い、前記第3の開閉弁を通過する基準の脳脊髄液の流量を設定する前記第3の開閉弁の開閉圧を複数段に可変することのできる第3のバルブ圧可変器を設け,
前記硬化プラスチック基板の上に、前記流入側コネクタと前記第1のバルブ圧可変器と前記第2のバルブ圧可変器と前記第3のバルブ圧可変器と前記流出側コネクタとを載置し、前記流入側コネクタと前記流出側コネクタとの間に、前記流入側コネクタから流入する脳脊髄液が、第1のバルブ圧可変器の前記第1の開閉弁を通り前記第1のバルブ圧可変器の流出路から流出され、第2のバルブ圧可変器の前記第2の開閉を通り該第2のバルブ圧可変器の流出路から流出され、第3のバルブ圧可変器の前記第3の開閉を通り該第3のバルブ圧可変器の流出路から流出され、前記流出側コネクタから流出するように脳脊髄液の流路を形成するように可撓性を有するシリコーンエラストマーの被膜によって覆い、前記硬化プラスチック基板に前記シリコーンエラストマーの被膜の下端部を密に接着して一体に成形してなることを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項23】
請求項22に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記第3のバルブ圧可変器は,
第3の蓋部と、第3のバルブ本体とによって構成されており,
前記第3の蓋部は、円形の蓋体で構成され、脳脊髄液が内部に流入する流入口を構成してなり,
前記第3のバルブ本体は、前記第3の蓋部に形成される前記流入口を開閉する開閉弁と、該開閉弁の開閉を行う操作機構とを備える
ことを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項24】
請求項23に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記第3の蓋部の流入口は、
前記第2のバルブ圧可変器の流出路から流出される脳脊髄液を通過させるための円形の蓋体の中心に形成する表裏に貫通する穴で、該穴は、第3の蓋部の外壁表面に形成される径より内壁表面に向かって径が大きくなるテーパー状に形成されている
ことを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項25】
請求項23又は24に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記第3のバルブ本体の開閉弁は、
前記第3の蓋部に形成される前記穴と、前記第3の蓋部の内壁側から該穴に嵌合押圧するボールとによって構成するものである
ことを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項26】
請求項23,24又は25に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記第3のバルブ本体の操作機構は、
脳室内で産生された脳脊髄液の滞溜による脳室内からの脳脊髄液の流圧の変化に応じて、前記ボールの前記第3の蓋部に形成される前記穴への押圧力を変化させて前記穴の内壁面と前記ボールとの離間距離を変化させるものである
ことを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項27】
請求項26に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記第3のバルブ本体の操作機構は、
磁石を内蔵するローターと、ボール用スプリングと、ローター用スプリングと、前記ボールと前記ローターと前記ボール用スプリングと前記ローター用スプリングとを収納し底面に階段状のプレートが形成されているケースとによって構成してなり,
前記ローターは、
任意の1箇所に磁石を埋設する円板状の部材によって形成し、下面に下側に突出する複数の脚を設け、上面に前記ボール用スプリングの下部を収納載置するボール用スプリング収納部と前記ローター用スプリングの下部を収納載置するローター用スプリング収納部とを設け、前記ケース内に収納して前記プレート上に載置し、前記埋設する磁石の磁極と反対の磁極による吸引力を利用して調節器を用いて回転できるように構成してなり,
前記ボール用スプリングは、下端部を前記ローターの上面に形成されるボール用スプリング収納部に収納し、上端に前記ボールを支持し、該ボールを前記第3の蓋部の前記穴に嵌合押圧するように構成してなり,
前記ローター用スプリングは、
コイルスプリングで構成してなり、下端部を前記ローター用スプリング収納部に収納し、上端部を前記第1の蓋部の内部上壁に当接し、前記ローターを前記ケースのプレート側に押圧するように構成してなり,
前記ケースは、
断面円形の有底筒状体で形成され、底壁は、それぞれ高さが一定量ずつ異なった複数の階段状に形成するとともに、前記各階段の境界部に前記ローターが特定の階段位置に載置された後、隣接する階段位置に移動しないように前記ローターの複数の脚を係止する段差部を設けてなるプレートによって構成し、側壁には、下部に前記ケース内に流入した脳脊髄液を排出する流出路を設けて構成し、前記第3の蓋部と密に螺嵌してなり,
前記ローターを所定角度回転し、プレートの階段を上がることによって前記ボール用スプリングを圧縮し、前記ボールの前記第3の蓋部の前記穴に嵌合する押圧力を高め、前記ローターを所定角度回転し、プレートの階段を下がることによって前記ボール用スプリングを伸長し、前記ボールの前記第3の蓋部の前記穴に嵌合する押圧力を弱め、前記ボールの前記第3の蓋部に形成される前記穴への押圧力を変化させて前記穴の内壁面と前記ボールとの離間距離を変化させるようにした
ことを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項28】
請求項22,23,24,25,26又は27に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記流入側コネクタと前記第1のバルブ圧可変器の第1の開閉弁との間の該流入側コネクタの後端に、脳室側オルクーダーを設けとリザーバーを設けると共に、前記第3のバルブ圧可変器の脳脊髄液を流出する流出路と前記流出側コネクタの後端部との間にチャンバーを設けて構成し,
前記脳室側オルクーダーは、可撓性を有するシリコーンエラストマーによって構成される被膜と一体に、前記流入側コネクタの後端に、上方が開口する有底筒状に形成し、前記流入側コネクタを介して流入してくる脳脊髄液の流路を圧閉して脳脊髄液の流入を一時的に止めるもので,
前記リザーバーは、
上壁を可撓性を有するシリコーンエラストマーによって構成される被膜をドーム状に盛り上げたシリコーンドームによって構成してなり、前記脳室側オクルーダーの開口側と前記第1のバルブ圧可変器との間に前記流入側コネクタを介して流入して該脳室側オクルーダーから流入してくる脳脊髄液を一定量貯溜しておく空間を形成して構成してなるもので,
前記チャンバーは、
高い脳室内圧によって脳脊髄液が押し出されて流れている正圧の状態の場合に開弁し、腹腔カテーテル内に負圧が生じると閉弁して脳脊髄液を吸い出す作用を止めるような逆流防止弁様機能を備え、負圧で閉弁した際に、脳室内から正常に押し出されてきた脳脊髄液を一次貯溜する空洞を有して構成してなる
ことを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項29】
請求項22,23,24,25,26又は27に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記流入側コネクタと前記第1のバルブ圧可変器の第1の開閉弁との間の該流入側コネクタの後端に、脳室側オルクーダーを設けと第1のリザーバーを設け、
前記第1のバルブ圧可変器の流出路と前記第2のバルブ圧可変器の第2の開閉弁との間と、前記第2のバルブ圧可変器の流出路と前記第3のバルブ圧可変器の第3の開閉弁との間に第2のリザーバーを設け、
前記第3のバルブ圧可変器の脳脊髄液を流出する流出路と前記流出側コネクタの後端部との間にチャンバーを設けて構成し,
前記脳室側オルクーダーは、
可撓性を有するシリコーンエラストマーによって構成される被膜と一体に、前記流入側コネクタの後端に、上方が開口する有底筒状に形成し、前記流入側コネクタを介して流入してくる脳脊髄液の流路を圧閉して脳脊髄液の流入を一時的に止めることができるように構成してなり、
前記第1のリザーバーは、
上壁を可撓性を有するシリコーンエラストマーによって構成される被膜をドーム状に盛り上げたシリコーンドームによって構成してなり、前記第1のバルブ圧可変器の流出路と前記第2のバルブ圧可変器の第2の開閉弁との間に、前記第1のバルブ圧可変器内を流通し前記第2のバルブ圧可変器の第2の開閉弁から流入してくる脳脊髄液を一定量貯溜しておく空間によって構成してなり,
前記第2のリザーバーは、
上壁を可撓性を有するシリコーンエラストマーによって構成される被膜をドーム状に盛り上げたシリコーンドームによって構成してなり、前記第2のバルブ圧可変器の流出路と前記第3のバルブ圧可変器の第3の開閉弁との間に、前記第2のバルブ圧可変器内を流通し前記第3のバルブ圧可変器の第3の開閉弁から流入してくる脳脊髄液を一定量貯溜しておく空間によって構成してなり,
前記チャンバーは、
高い脳室内圧によって脳脊髄液が押し出されて流れている正圧の状態の場合に開弁し、腹腔カテーテル内に負圧が生じると閉弁して脳脊髄液を吸い出す作用を止めるような逆流防止弁様機能を備え、負圧で閉弁した際に、脳室内から正常に押し出されてきた脳脊髄液を一次貯溜する空洞を有して構成してなる
ことを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項30】
請求項22,23,24,25,26又は27に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記流入側コネクタと前記第1のバルブ圧可変器の第1の開閉弁との間の該流入側コネクタの後端に、脳室側オルクーダーを設けと第1のリザーバーを設け、
前記第1のバルブ圧可変器の流出路と前記第2のバルブ圧可変器の第2の開閉弁との間と、前記第2のバルブ圧可変器の流出路と前記第3のバルブ圧可変器の第3の開閉弁との間に第2のリザーバーを設け構成し,
前記脳室側オルクーダーは、
可撓性を有するシリコーンエラストマーによって構成される被膜と一体に、前記流入側コネクタの後端に、上方が開口する有底筒状に形成し、前記流入側コネクタを介して流入してくる脳脊髄液の流路を圧閉して脳脊髄液の流入を一時的に止めることができるように構成してなり、
前記第1のリザーバーは、
前記第1のバルブ圧可変器の流出路と第2のバルブ圧可変器の第2の開閉弁とが開口し、連接する前記第1のバルブ圧可変器と前記第2のバルブ圧可変器の2つのの側面を跨ぐようにして、前記第1のバルブ圧可変器と前記第2のバルブ圧可変器の並び方向に隣接して、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜を前記第1のバルブ圧可変器と前記第2のバルブ圧可変器の並び方向両側にドーム状に膨出する第1のシリコーンサイドドームを形成し、前記第1のバルブ圧可変器内を流通し、前記第1のバルブ圧可変器の流出路から流出する脳脊髄液を一定量貯溜しておく空間によって構成してなり,
前記第2のリザーバーは、
前記第2のバルブ圧可変器の流出路と第3のバルブ圧可変器の第3の開閉弁とが開口し、連接する前記第2のバルブ圧可変器と前記第3のバルブ圧可変器の2つのの側面を跨ぐようにして、前記第2のバルブ圧可変器と前記第3のバルブ圧可変器の並び方向に隣接して、可撓性を有するシリコーンエラストマー(軟化シリコーン樹脂)によって構成される被膜を前記第2のバルブ圧可変器と前記第3のバルブ圧可変器の並び方向両側にドーム状に膨出する第2のシリコーンサイドドームを形成し、前記第2のバルブ圧可変器内を流通し、前記第2のバルブ圧可変器の流出路から流出する脳脊髄液を一定量貯溜しておく空間によって構成してなり,
前記第2のリザーバーと前記第1のリザーバーとが連通することなく分離独立して構成してなっている
ことを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項31】
請求項30に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記第3のバルブ圧可変器の脳脊髄液を流出する流出路と前記流出側コネクタの後端部との間に、
高い脳室内圧によって脳脊髄液が押し出されて流れている正圧の状態の場合に開弁し、腹腔カテーテル内に負圧が生じると閉弁して脳脊髄液を吸い出す作用を止めるような逆流防止弁様機能を備え、負圧で閉弁した際に、脳室内から正常に押し出されてきた脳脊髄液を一次貯溜する空洞を有して構成するチャンバーを設けた
ことを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。
【請求項32】
請求項22,23,24,25,26,27,28,29,30又は31に記載の水頭症治療用シャントバルブにおいて,
前記流出側コネクタは、
後端部を前記第3のバルブ圧可変器の流出路に開口し、先端部を前記硬化プラスチック基板を貫通して該硬化プラスチック基板の下側に突出して該硬化プラスチック基板に設けたものである
ことを特徴とする水頭症治療用シャントバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【公開番号】特開2011−229601(P2011−229601A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100831(P2010−100831)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(310007782)
【Fターム(参考)】