説明

氷層を活用した温度差発電システム

【課題】 ランニングコストが安価で発電効率の良好な温度差発電システムを提供することである。
【解決手段】 地下に位置する高温部と、地上に設置された発電設備と、発電設備より高所に設置された低温部とを備え、高温部と発電設備が第1管路(10)によって連結され、発電設備と低温部が第2管路(12)によって連結され、低温部と高温部が第3管路(14)によって連結されている温度差発電システムにおいて、低温部が、数十cm程度の水を張って氷層を形成し、これを繰り返すことによって形成された必要厚さの氷層の内部に、第3管路を通過させることによって構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、氷層を活用した温度差発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
温度差発電システムとしては、海洋温度差発電システムや温泉水温度差発電システム等が実用化されている。このうち海洋温度差発電システムは、海面(30°C以上)と深海(10°C)との間の20°C以上の温度差を利用するものであり、赤道付近の温暖な海域で実績がある。
【0003】
一方、北海道は、外気温が夏期に30°C以上、冬期に−20°C以下になる年較差の大きな地域であり、一年を通じて大きな温度差を確保することにより、温度差発電が可能となる。また、地域特性として、北海道には温泉や石炭坑道(廃坑)があり、温泉水や坑道内部の熱により1年を通じて比較的高い温度を確保することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、北海道は温度差発電を実施しやすい環境下にあるが、効率的に発電を行うためには、1年を通じて低い温度をどのようにして確保するのかが問題となる。すなわち、北海道のような寒冷地において低い温度を確保する方法として雪や冷水の利用が考えられるが、例えば、冬期以外に冷水を確保するのは困難であるし、野積みした雪(雪ダム)を利用しようとすると毎年大量の雪を堆積させる必要があるため発電効率の割にランニングコストが大きくなるという課題がある。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みて開発されたものであって、ランニングコストが安価で発電効率の良好な温度差発電システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
北海道の空知支庁管内には多くの石炭が埋蔵されており、石炭坑道が地下数百mにおよび、その総延長は計り知れないものがある。例えば、三笠幌内炭坑には地下約1000mの立坑があり、付近に火山等の熱異常の原因となるものがないところでも、地温勾配が0.03°C/m前後であることから、700mの深度で約20°C以上も上昇することになる。したがって、坑道深部は地熱により一年を通じて、30°C以上の高温があることが予想される。また、北海道をはじめとして我が国には多数の温泉があるため、温度差発電として必要な条件の一方(高温)は、いずれの地域でも比較的容易に確保することができる。したがって、もう一方の条件(低温)の確保が課題となるが、北海道は寒冷地であり、南部を除いて毎年数mの降雪があり、山間部の湖沼表面は1m程度凍結する。したがって、冬期に厚い氷層を造成し、氷層内にパイプを通せば、1年を通して冷所を確保することが可能となる。
【0007】
本発明者は、温度差発電に不可欠な低温を定常的に確保する方法を開発した。寒冷地のダム湖や湖沼などに形成される氷層の厚さは、最大でも1m程度にしかならない。この原因は、水の最大密度が水温4°Cにおいて得られ、冬期の垂直方向の温度分布が湖面に比較して湖底の方が温度が高いため、窪地に水を張ったのみでは、厚い氷層の形成が困難であることによる。しかしながら、本発明者は、氷層を徐々に形成することにより、その結果として厚い氷層が形成されることを見い出した。すなわち、例えば数十cm程度の水を張って氷層を形成し、これを繰り返すことによって、結果として数mの氷層が形成される。1年で形成される氷層厚さが計画厚さ以下である場合には、数年をかけて計画厚の氷層を形成する。このようにして形成された氷層の春〜秋にかけての保全方法として、氷層の表面に貯水する。これは、水が4°Cにおいて最大密度となるため、氷層の表面に貯水することにより、夏期に水表面が温度上昇しても下部(氷層表面)の低温が保持され、氷の融解の抑制が期待されるからである。また、融解した氷の再生方法として、冬期の冷たい外気を利用する。すなわち、冬期において外気温が0°C以下となるため、冬期に冷却設備配管に冷たい外気を通すことにより、配管周囲の結氷の復元を図ることが可能となる。
【0008】
本願請求項1に記載された、地下に位置する高温部と、地上に設置された発電設備と、前記発電設備より高所に設置された低温部とを備え、前記高温部と前記発電設備が第1管路によって連結され、前記発電設備と前記低温部が第2管路によって連結され、前記低温部と前記高温部が第3管路によって連結されている温度差発電システムは、前記低温部が、数十cm程度の水を張って氷層を形成し、これを繰り返すことによって形成された必要厚さの氷層の内部に、前記第3管路を通過させることによって構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
本願請求項2に記載された温度差発電システムは、前記請求項1のシステムにおいて、前記低温部の前記必要厚さの氷層の表面に貯水されていることを特徴とするものである。
【0010】
本願請求項3に記載された温度差発電システムは、前記請求項1又は2のシステムにおいて、前記低温部が、前記第3管路に外気を導入したり外気の導入を遮断したりする切替え装置を有していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低温部として氷層を利用し、氷層の融解防止対策として氷層表面への貯水を行い、融解した氷の再生に冬期の冷気を利用することにより、ランニングコストを極めて低廉に抑えた状態で、発電効率の良好な温度差発電を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係る温度差発電システムの実施例について詳細に説明する。図1は、本発明の好ましい実施の形態に係る温度差発電システムを模式的に示した図である。
【0013】
本発明の温度差発電システムは、地下に位置する高温部を備えている。高温部は、地下坑道や温泉源が利用される。
【0014】
本発明の温度差発電システムは又、地上に設置された発電設備を備えており、発電設備と高温部は、第1管路10によって連結されている。発電設備としては、例えば発電タービンがあげられる。
【0015】
本発明の温度差発電システムは更に、発電設備より高所に設置された低温部すなわち冷却設備を備えている。発電設備と冷却設備は、第2管路12によって連結されており、低温部と高温部は、第3管路14によって連結されている。
【0016】
冷却設備としては、氷層が利用される。冷却設備として利用される氷層は、良好な発電効率を得るには一定厚さ以上のものが必要となるが、本発明のシステムでは、数十cm程度の水を張って氷層を形成し、これを繰り返すことによって、必要厚さの氷層を形成する。1年で必要厚さの氷層を形成することができない場合には、数年をかけて必要厚さの氷層を形成する。
【0017】
好ましくは、氷層の表面に貯水される。これにより、春から秋にかけて水表面の温度が上昇しても氷層表面の低温が維持されるので、氷層の表面の融解が抑制される。
【0018】
さらに、好ましくは、配管周囲の結氷の復元を図るため、冬期に冷却設備配管に冷たい外気を通すための装置が配置されている。
【0019】
図2は、春期から秋期における冷却設備の一例を模式的に示した図である。図2に示される例では、窪地に設けられた堰と窪地との間に上述のようにして必要厚さの氷層が形成され、氷層表面の融解を抑制するため、氷層の表面に貯水されている。また、氷層内にはパイプAが配置されており、パイプAと連通するパイプBが空気中に配置されている。さらに、パイプAとパイプBを連通させたり連通を遮断したりする切替え装置(例えば、バルブ)が配置されている。
【0020】
以上のように構成された本発明の温度差発電システムによる発電方法について説明する。まず、アンモニア又はフロンのような低沸点の媒体を第3管路14を通して高温部に供給する。すると、低沸点媒体は、高温部の熱により加熱されて気化して蒸気となる。蒸気となった低沸点媒体は、第1管路10を介して発電設備に到達し、発電設備を作動させる。次いで、低沸点媒体(蒸気)は、第2管路12を介して、発電設備より高所に位置する冷却設備に到達する。低沸点媒体は、冷却設備において液化された後、第3管路14を介して、地下に位置する高温部に自然流下する。そして、低沸点媒体は再び加熱されて、同様のサイクルが繰り返される。
【0021】
本発明の温度差発電システムでは、低沸点媒体を、必要厚さの氷層中を通過させることにより液化する。なお、必要厚さの氷層を維持するため、氷層の表面に貯水される。また、冷却設備配管周囲の結氷を復元するため、冬期間において配管に冷気が導入される。
【0022】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の好ましい実施の形態に係る温度差発電システムを模式的に示した図である。
【図2】春期から秋期における冷却設備の一例を模式的に示した図である。
【図3】冬期における発電形態を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0024】
10 第1管路
12 第2管路
14 第3管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下に位置する高温部と、地上に設置された発電設備と、前記発電設備より高所に設置された低温部とを備え、前記高温部と前記発電設備が第1管路によって連結され、前記発電設備と前記低温部が第2管路によって連結され、前記低温部と前記高温部が第3管路によって連結されている温度差発電システムにおいて、
前記低温部が、数十cm程度の水を張って氷層を形成し、これを繰り返すことによって形成された必要厚さの氷層の内部に、前記第3管路を通過させることによって構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記低温部の前記必要厚さの氷層の表面に貯水されていることを特徴とする請求項1に記載されたシステム。
【請求項3】
前記低温部が、前記第3管路に外気を導入したり外気の導入を遮断したりする切替え装置を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載されたシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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