説明

氷点下で硬化可能な水性エマルションエポキシド組成物

【課題】本発明の目的は、氷点下においても比較的短時間に硬化可能であり、且つ、優れた外観と塗膜性能を与える水性エマルションエポキシド組成物を提供することである。
【解決手段】前記課題は、(A)分子内に平均1個より多くのエポキシ基を有するエポキシド、(B)活性水素を有する窒素原子を分子内に1個以上有するポリアミン誘導体の硬化剤、及び(C)分子内に1個以上の水酸基を有するグリコール又はグリセリン又はそれらの誘導体を含む水性エマルションエポキシド組成物、又は更に(D)分子内に1個以上のアミノ基を有するポリアミン化合物を含む水性エマルションエポキシド組成物によって解決することができる。特には、前記組成物中の水とグリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)との合計量又は水とグリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)及び前記ポリアミン化合物(D)との合計量を基準として、グリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)又はグリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)及び前記ポリアミン化合物(D)が、それぞれ1.5重量%を超え40重量%未満の濃度範囲で含有されることが好ましく、(C)/(D)の比が1/99から99/1の範囲にあることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水性エマルションエポキシド組成物に関する。本発明によれば、氷点下でも短時間で硬化可能で、塗料として良好な塗膜外観を与えることができる。
【背景技術】
【0002】
従来から使用されている有機溶剤系エポキシド組成物(揮発性の有機化合物を含有)は、大気中への揮発性の有機化合物の放散が問題視(VOC規制等)され、環境にも優しい水性エマルションエポキシド組成物が注目されるようになってきた(特許文献1)。この環境問題を背景にして、水性エマルションエポキシド組成物は、接着、塗料及びコーティング剤として広く用いられる様になってきたが、作業場気温が氷点下となる冬季及び寒冷地においては、硬化速度が遅く作業後から実使用出来るまでの時間(施工時間)が長いこと、及び前記エマルションエポキシド組成物自体が凍結するため、施工ができない状況に頻繁に遭遇することから、冬季及び寒冷地における氷点下でも施工が可能な水性エマルションエポキシド組成物が望まれている。
【0003】
この一つの問題点である前記組成物の凍結を防止する目的では、エタノール、プロパノール、ブタノール等の水溶性の揮発性有機溶剤を水性エマルションエポキシド組成物に添加することで不凍化効果を得るといったことが行われている。
【0004】
しかし、前記の有機溶剤類を水性エマルションエポキシド組成物に添加することで不凍化効果は認められるが、塗膜外観が悪化するといった弊害が生じている。また、同時に、前記の有機溶剤の添加により水性エマルションエポキシド組成物の安定性が損なわれ、作業性が著しく悪化するという問題も生じている。
【0005】
もう一つの問題点である、冬季及び寒冷地での施工時間を短縮する目的では、水性エマルションエポキシド組成物の硬化時間を短くする手法として、その固形分濃度を高めることも検討されてはいるが、水性エマルションエポキシド組成物が高粘度になり、実用上有効なエマルション粒子が得られないなど、製造上、及び作業性の面からも限界がある。
【0006】
また、この固形分濃度を高める手法では、問題点である不凍化効果は得られず、前記有機溶剤類の添加を行う必要性があり、塗膜外観が悪化するといった弊害を改善できないばかりか、短時間硬化にも限界がある。更には、昨今、重要視されだした環境への揮発性有機化合物の放散抑制にも逆行するものである。更に、上記組成物の硬化時間を短くすることを目的として、硬化促進剤の併用も検討されてはいるが、氷点下においても良好な外観を達成するものは未だ見いだされていない。
【0007】
一方、塗膜外観を改良する手段としては、表面改質剤等を添加する検討も行われているが、水性エマルションにおいては、氷点下で満足できる外観を得る添加剤の選定は難しく、未だ、氷点下で良好な塗膜外観を発現させうる表面改質剤は見いだされていないのが実情である。
【特許文献1】特開平10−130372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、水性エマルションエポキシド組成物に、分子内に1個以上の水酸基を有するグリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体を添加することにより、氷点下において凍結することなく、良好な塗膜外観を与えることのできる水性エマルションエポキシド組成物を見出した。更に、水性エマルションエポキシド組成物に、分子内に1個以上の水酸基を有するグリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体、及び分子内に1個以上のアミノ基を有するポリアミン化合物を添加することにより、氷点下において凍結することなく、24時間以内に硬化し、更に良好な塗膜外観を与えることのできる水性エマルションエポキシド組成物を見出した。
本発明は、このような知見に基づくものである。
【0009】
従って、本発明の課題は、本発明は氷点下でも硬化可能で良好な塗膜外観を与える水性エマルションエポキシド組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本発明は、
(A)分子内に平均1個より多くのエポキシ基を有するエポキシド、
(B)活性水素を有する窒素原子を分子内に1個以上有するポリアミン誘導体の硬化剤、及び
(C)分子内に1個以上の水酸基を有するグリコール又はグリセリン又はそれらの誘導体
を含む水性エマルションエポキシド組成物に関する。
【0011】
本発明の水性エマルションエポキシド組成物の好ましい態様においては、前記グリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)が、前記水性エマルションエポキシド組成物中の水とグリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)との合計量を基準として、1.5重量%を超え40重量%未満である。
また、本発明の水性エマルションエポキシド組成物の好ましい態様においては、前記グリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)が、前記水性エマルションエポキシド組成物中の水とグリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)との合計量を基準として、2重量%〜37.5重量%である。
また、本発明の水性エマルションエポキシド組成物の好ましい態様においては、(D)分子内に1個以上のアミノ基を有するポリアミン化合物を更に含む。
【0012】
また、本発明の水性エマルションエポキシド組成物の好ましい態様においては、前記グリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)及び前記ポリアミン化合物(D)が、前記水性エマルションエポキシド組成物中の水とグリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)及び前記ポリアミン化合物(D)との合計量を基準として、1.5重量%を超え40重量%未満である。
また、本発明の水性エマルションエポキシド組成物の好ましい態様においては、前記グリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)及び前記ポリアミン化合物(D)が、前記水性エマルションエポキシド組成物中の水と前記グリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)及び前記ポリアミン化合物(D)との合計量を基準として、2重量%〜37.5重量%である。
また、本発明の水性エマルションエポキシド組成物の好ましい態様においては、前記グリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)と前記ポリアミン化合物(D)との重量比が、99/1〜1/99である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水性エマルションエポキシド組成物によれば、グリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)を含むことにより、氷点下で凍結せず、低温条件下においても比較的に短時間に硬化可能であり、優れた塗膜外観を得ることができる。また、グリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)、及びポリアミン化合物(D)を含むことにより、氷点下で凍結せず、低温条件下においても24時間以内に硬化可能であり、優れた塗膜外観を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の水性エマルションエポキシド組成物に用いることのできるエポキシド(A)(以下、成分(A)と称することがある)は、分子内に平均1個より多くのエポキシ基を持つエポキシド類である。具体的には、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ヘキサヒドロビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、カテコール、レゾルシン、クレゾールノボラック、テトラブロモビスフェノールA、トリヒドロキシビフェニル、ベンゾフェノン、ビスレゾルシノール、ビスフェノールヘキサフルオロアセトン、ハイドロキノン、トリフェニルメタン、テトラフェニルエタン、ビキシレノールなどの多価フェノールとエピクロルヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテル;グリセリン、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの脂肪族多価アルコールとエピクロルヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテル;p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル;フタル酸、メチルフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラハイドロフタル酸、ヘキサハイドロフタル酸、エンドメチレンテトラハイドロフタル酸、エンドメチレンヘキサハイドロフタル酸、トリメリット酸、重合脂肪酸のようなポリカルボン酸から得られるポリグリシジルエステル;アミノフェノール、アミノアルキルフェノールから得られるグリシジルアミノグリシジルエーテル;アミノ安息香酸から得られるグリシジルアミノグリシジルエステル;アニリン、トルイジン、トリブロムアニリン、キシリレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンなどから得られるグリシジルアミン;エポキシ化ポリオレフィン;グリシジルヒダントイン;グリシジルアルキルヒダントイン、トリグリシジルシアヌレート;あるいはブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル、スチレンオキサイドなどに代表されるモノエポキシド等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。また、本発明の水性エマルションエポキシド組成物として混合する場合は、これらのエポキシドを水に分散した水性エマルションとして用いることが好ましい。
前記エポキシドのエポキシ基は、分子中に平均1個より多く有していれば、上限は特に限定されないが、8個以下が好ましく、6個以下が特に好ましい。
【0015】
本発明の水性エマルションエポキシド組成物に用いることのできるポリアミン誘導体の硬化剤(B)(以下、成分(B)と称することがある)は、活性水素を有する窒素原子を分子内に1個以上有し、例えばメタキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、フェニレンジアミン、トルイレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、ポリエチレンポリアミンなどのポリアミン類から、例えばアミド化、マンニッヒ化、エポキシアダクト化、シアノエチル化などの方法により誘導されたポリアミン誘導体を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。
また、本発明の水性エマルションエポキシド組成物として混合する場合は、これらのポリアミン誘導体が水に分散された水性エマルションとして用いることが好ましい。
前記ポリアミン誘導体の硬化剤の活性水素を有する窒素原子は、分子中に1個以上有していれば、上限は特に限定されない。
【0016】
本発明の水性エマルションエポキシド組成物に用いることのできる、分子内に1個以上の水酸基を有する水溶性のグリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)(以下、成分(C)と称することがある)としては、例えば、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、モノプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール誘導体類、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル誘導体類等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらのグリコール又はグリセリン又はそれらの誘導体は、水性エマルションとして使用するため、水溶性である。これらの中で、ジプロピレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールが好ましく、ジプロピレングリコールがより好ましい。
前記グリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体の水酸基は、分子中に1個以上有していれば、上限は特に限定されない。
【0017】
本発明の分子内に平均1個より多くのアミノ基を有するポリアミン化合物(D)(以下、成分(D)と称することがある)は、例えば、メタキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、フェニレンジアミン、トルイレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、ポリエチレンポリアミンなどのポリアミン類、及びアルキルアミン類などのモノアミン化合物を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらのポリアミン化合物は、水性エマルションとして使用するため、水溶性であることが望ましい。
これらの中で、メタキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジンが好ましい。
前記ポリアミン化合物のアミノ基は、分子中に1個以上有していれば、上限は特に限定されない。
【0018】
前記グリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)は、前記水性エマルションエポキシド組成物中の水とグリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)との合計量を基準として、好ましくは1.5重量%を超え40重量%未満であり、より好ましくは2重量%〜37.5重量%である。1.5重量%を超える濃度であると、エポキシド組成物が氷点下においても凍結しない点で好ましく、40重量%未満の濃度であると、平滑な塗膜を得ることができる点において好ましい。
前記グリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)及び前記ポリアミン化合物(D)が、前記水性エマルションエポキシド組成物中の水とグリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)及び前記ポリアミン化合物(D)との合計量を基準として、好ましくは1.5重量%を超え40重量%未満であり、より好ましくは、2重量%〜37.5重量%である。1.5重量%を超える濃度であると、エポキシド組成物が氷点下においても凍結しない点、及び24時間以内に完全硬化する点で好ましく、40重量%未満の濃度であると、平滑な塗膜を得ることができる点において好ましい。
【0019】
本発明の水性エマルションエポキシド組成物に、グリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)と水溶性のポリアミン化合物(D)とが含まれる場合、水溶性のグリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)と水溶性のポリアミン化合物(D)との重量比(C/D)は、良好な外観をもち24時間以内に完全硬化するために、1/99〜99/1であることが好ましい。
【0020】
本発明の水性エマルションエポキシド組成物において、成分(A)及び成分(B)は、組成物を硬化させるための成分であるが、前記組成物における成分(A)及び成分(B)の含量は、組成物を硬化させることができる限り、特に限定されるものではない。また、前記成分(D)は、硬化剤としての機能も有しているため、成分(D)の量に応じて、成分(B)の量を調整することが好ましく、このような成分(B)の量の調整は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有するものは、過度の実験を行うことなく可能である。
【0021】
本発明の水性エマルションエポキシド組成物は、前記の成分(A)、(B)、(C)、及び(D)の他に、必要に応じて粘着付与剤や増粘剤、乳化分散剤、消泡剤、防腐剤、可塑剤、着色剤、増量剤、有機溶剤等が添加される場合がある。
【0022】
本発明の水性エマルションエポキシド組成物は、硬化性の組成物であり、接着剤用、塗装用、又はコーティング剤用として用いることができる。
【実施例】
【0023】
以下に氷点下で硬化可能な水性エマルションエポキシド組成物における発明を実施するための最良の形態と、本発明の実施例とを、比較例と共に示すが、本発明はそれらの実施例の範囲に限定されるものではない。
【0024】
《実施例1》
成分(A)として、EM−101−50を100重量部(アデカ社製 水系エマルションエポキシド、水分50%)、成分(B)としてFXS−918−FA(富士化成工業社製 ポリアミン誘導体の水系エマルション、水分40%)を30重量部、水を21.1部、及び成分(C)としてジプロピレングリコール(DPGと略す)を1.8部混合して、水系エマルションエポキシド組成物を得た。
【0025】
《実施例2》
成分(C)としてジプロピレングリコール(DPGと略す)を9.2部用いたことを除いては、実施例1の手順を繰り返した。
【0026】
《実施例3》
成分(C)としてジプロピレングリコール(DPGと略す)を35.6部用いたことを除いては、実施例1の手順を繰り返した。
【0027】
《実施例4》
成分(C)としてジプロピレングリコール(DPGと略す)を49.9部用いたことを除いては、実施例1の手順を繰り返した。
【0028】
《実施例5》
成分(C)としてグリセリン(GLYと略す)を9.2部用いたことを除いては、実施例1の手順を繰り返した。
【0029】
《実施例6》
成分(C)としてグリセリン(GLYと略す)を35.6部用いたことを除いては、実施例1の手順を繰り返した。
【0030】
《実施例7》
成分(C)としてエチレングリコール(EGと略す)を9.2部用いたことを除いては、実施例1の手順を繰り返した。
【0031】
《実施例8》
成分(C)としてジエチレングリコール(DEGと略す)を9.2部用いたことを除いては、実施例1の手順を繰り返した。
【0032】
《実施例9》
成分(C)としてプロピレングリコール(PGと略す)を9.2部用いたことを除いては、実施例1の手順を繰り返した。
【0033】
《実施例10》
成分(A)として、EM−101−50を100重量部(アデカ社製 水系エマルションエポキシド、水分50%)、成分(B)としてFXS−918−FA(富士化成工業社製 ポリアミン誘導体の水系エマルション、水分40%)を28.2重量部、水を20.6部、成分(C)としてジプロピレングリコール(DPGと略す)を1.7部及び成分(D)としてメタキシリレンジアミン(MXDAと略す)を0.2部混合して、水系エマルションエポキシド組成物を得た。
【0034】
《実施例11》
成分(B)としてFXS−918−FA(富士化成工業社製 ポリアミン誘導体の水系エマルション、水分40%)を15重量部、水を16.1部、成分(C)としてジプロピレングリコール(DPGと略す)を6.3部、成分(D)としてメタキシリレンジアミン(MXDAと略す)を1.7部用いたことを除いては、実施例10の手順を繰り返した。
【0035】
《実施例12》
成分(C)としてジプロピレングリコール(DPGと略す)を29.2部用いたことを除いては、実施例11の手順を繰り返した。
【0036】
《実施例13》
成分(C)としてジプロピレングリコール(DPGと略す)を41.6部用いたことを除いては、実施例11の手順を繰り返した。
【0037】
《実施例14》
成分(C)としてジプロピレングリコール(DPGと略す)を6.2部、成分(D)として1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(BACと略す)を1.8部用いたことを除いては、実施例11の手順を繰り返した。
【0038】
《実施例15》
成分(C)としてジプロピレングリコール(DPGと略す)を5.8部、成分(D)としてN−アミノエチルピペラジン(AEPと略す)を2.2部用いたことを除いては、実施例11の手順を繰り返した。
【0039】
《実施例16》
成分(B)としてFXS−918−FA(富士化成工業社製 ポリアミン誘導体の水系エマルション、水分40%)を29.7重量部、水を21.0部、成分(C)としてジプロピレングリコール(DPGと略す)を9.1部、成分(D)としてメタキシリレンジアミン(MXDAと略す)を0.1部用いたことを除いては、実施例10の手順を繰り返した
【0040】
《実施例17》
成分(B)としてFXS−918−FA(富士化成工業社製 ポリアミン誘導体の水系エマルション、水分40%)を3.0重量部、水を12.1部、成分(C)としてジプロピレングリコール(DPGと略す)を0.1部、成分(D)としてメタキシリレンジアミン(MXDAと略す)を13.5部用いたことを除いては、実施例10の手順を繰り返した。
【0041】
《比較例1》
成分(A)として、EM−101−50を100重量部(アデカ社製 水系エマルションエポキシド、水分50%)、成分(B)としてFXS−918−FA(富士化成工業社製 ポリアミン誘導体の水系エマルション、水分40%)を30重量部、水を21.1部混合して、水系エマルションエポキシド組成物を得た。
【0042】
《比較例2》
成分(C)としてジプロピレングリコール(DPGと略す)を1.2部用いたことを除いては、実施例1の手順を繰り返した。
【0043】
《比較例3》
成分(C)としてグリセリン(GLYと略す)を48.1部用いたことを除いては、実施例1の手順を繰り返した。
【0044】
《比較例4》
成分(C)の代わりに、水溶性のアルコールであるノルマルプロパノール(NPAと略す)を9.2部用いたことを除いては、実施例1の手順を繰り返した。
【0045】
《比較例5》
成分(C)としてジプロピレングリコール(DPGと略す)を1.2部用いたことを除いては、実施例10の手順を繰り返した。
【0046】
《比較例6》
成分(C)としてジプロピレングリコール(DPGと略す)を46.4部用いたことを除いては、実施例11の手順を繰り返した。
【0047】
《比較例7》
成分(A)として、EM−101−50を100重量部(アデカ社製 水系エマルションエポキシド、水分50%)、水を11.1部、成分(C)としてジプロピレングリコール(DPGと略す)を3.4部及び成分(D)としてメタキシリレンジアミン(MXDAと略す)を3.4部混合して、水系エマルションエポキシド組成物を得た。
【0048】
《比較例8》
成分(C)としてジプロピレングリコール(DPGと略す)を3.2部、成分(D)として1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(BACと略す)を3.6部用いたことを除いては比較例7の手順を繰り返した。
【0049】
《比較例9》
成分(C)としてジプロピレングリコール(DPGと略す)を2.5部、成分(D)としてN−アミノエチルピペラジン(AEPと略す)を4.3部用いたことを除いては、比較例7の手順を繰り返した。
【0050】
硬化性、表面状態及び組成物外観の評価結果を表1に示す。添加した水溶性グリコールとアミンの組成物中の水に対する濃度をC+D%として、水溶性グリコールとアミンとの比をC/D比として記載した。
【0051】
【表1】

【0052】
硬化性の評価
得られた水性エマルションエポキシド組成物を200μmのアプリケーターでガラス板に塗布して、−5℃における硬化時間をRCI型硬化乾燥試験器により測定した。
d1:一次線条痕開始時間(指触硬化時間)
d2:二次線条痕開始時間(半硬化時間)
d3:二次線条痕消滅時間(完全硬化時間)
なお、表1において、d3の「測定不能」との記載は、塗装面の塗膜が比較的柔らかく、針による瘢痕がわずかに見られるため、完全硬化時間が明確に判定できなかったことを示す。
【0053】
表面状態の評価
硬化性の評価と同じく得られた水性エマルションエポキシド組成物を200μmのアプリケーターでガラス板に塗布して−5℃で24時間硬化した後の透明性及び平滑性について目視及びタックについて指触で観察した。
◎:非常に良好な場合
○:良好な場合
△:やや悪い場合
×:著しく悪い場合
【0054】
組成物外観観察
得られた水性エマルションエポキシド組成物10gを容量20mlのガラス瓶に入れて密封し、−5℃で6時間放置した際の凍結の有無及び分離の有無を観察した。
◎:非常に良好な場合
○:良好な場合
△:やや悪い場合
×:著しく悪い場合
【0055】
実施例1では水溶性グリコール成分のジプロピレングリコール(DPG)を2%の濃度で使用したが、−5℃においても比較的良好な外観をもつ塗膜を得ることができた。実施例2及び実施例3ではジプロピレングリコール(DPG)をそれぞれ10%及び30%の濃度で使用したが、良好な外観をもつ塗膜を得ることができた。実施例4ではジプロピレングリコール(DPG)を37.5%の濃度で使用したが、比較的良好な外観をもつ塗膜を得ることができた。
実施例5及び実施例6はグリセリン(GLY)を10%及び30%で使用したが、実施例2及び実施例3よりも得られた硬化塗膜の外観は若干劣るものの比較的良好な塗膜を得ることができた。実施例7から9では、水溶性のグリコール成分を変えて10%の濃度で試験を行ったが、同様に比較的に満足の得られる外観の硬化塗膜は得られた。
実施例10では水溶性グリコールのジプロピレングリコール(DPG)と水溶性アミンのメタキシリレンジアミン(MXDA)との合計が2%の濃度で、DPG/MXDA比が89/11となる量で使用したが、硬化も速く比較的良好な外観をもつ塗膜を得ることができた。実施例11では、DPGとMXDAとの合計が10%の濃度で、DPG/MXDA比が79/21となる量で使用したが、18時間以内で硬化が完結しており、塗膜の外観も優れたものであった。実施例12ではDPGとMXDAとの合計が30%の濃度で、DPG/MXDA比が95/5となる量で使用したが、塗膜の外観も良好で硬化も24時間以内で進行した。実施例13ではDPGとMXDAとの合計が37.5%の濃度で、DPG/MXDA比が96/4となる量で使用したが、ほぼ良好な塗膜が得られた。
実施例14及び実施例15では水溶性アミンの種類を1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(BAC)とN−アミノエチルピペラジン(AEP)に置き換え、水溶性ポリオールのジプロピレングリコール(DPG)との合計が10%の濃度となる量で試験を行ったが、硬化時間も20時間以内と短く良好な硬化塗膜が得られた。
実施例16では水溶性アミンのメタキシリレンジアミン(MXDA)の相対量を減らし、DPG/MXDA比が99/1となる量で試験したが、塗膜の外観も良好で硬化も24時間以内で進行した。実施例17では水溶性アミンのメタキシリレンジアミン(MXDA)相対量を増やして、DPG/MXDA比が1/99となる量で試験したが、透明性もほぼ良好で平滑な塗膜が得られ、硬化時間も16.5時間と短かった。
比較例1及び2は組成物中に水溶性グリコール成分を含まない系と1.5%を含む系であるが、組成物は凍結してしまい硬化塗膜が形成されなかった。比較例3はグリセリン(GLY)を40%で使用したが、得られた塗膜の透明性及び平滑性は満足いくものではなかった。
比較例4では一般的な水溶性のアルコールであるノルマルプロパノール(NPA)を10%で使用したが、エマルションが分離してしまい評価塗膜を得ることはできなかった。
比較例5はジプロピレングリコール(DPG)と水溶性アミンのメタキシリレンジアミン(MXDA)との合計が1.5%の濃度となる量で使用したが、組成物は凍結してしまい塗膜が形成されなかった。比較例6はジプロピレングリコール(DPG)と水溶性アミンのメタキシリレンジアミン(MXDA)との合計が40%の濃度となる量で使用したが得られた塗膜の透明性及び平滑性は満足できるものではなかった。
比較例7から比較例9までは、水性エマルション系の硬化剤を使用せずに水溶性グリコールとしてジプロピレングリコール(DPG)を用い、種々の水溶性アミンを使用して試験を行ったが、いずれも満足の得られる透明性は達成されなかった。
【0056】
以上の説明により、本発明は氷点下条件においても良好な外観をもつ塗膜を得ることが可能であり、短時間硬化を達成できる氷点下で硬化可能な水性エマルションエポキシド組成物を提供し得るものであることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の水性エマルションエポキシド組成物は、氷点下条件においても優れた塗膜を形成するため、従来使用できなかった冬期や寒冷地での施工が可能となり、低温での硬化する時間が短くなることから大幅な工期の短縮が望めるほか、季節による気温要因に左右されない施工計画を可能にするものである。また、従来から使用されてきた有機溶剤系の塗料組成物とは異なり、有害な揮発性の有機化合物を含有しないことから作業者や周辺環境に対する負荷が少ないという優位性も得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子内に平均1個より多くのエポキシ基を有するエポキシド、
(B)活性水素を有する窒素原子を分子内に1個以上有するポリアミン誘導体の硬化剤、及び
(C)分子内に1個以上の水酸基を有するグリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体
を含む水性エマルションエポキシド組成物。
【請求項2】
前記グリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)が、前記水性エマルションエポキシド組成物中の水とグリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)との合計量を基準として、1.5重量%を超え40重量%未満である、請求項1に記載の水性エマルションエポキシド組成物。
【請求項3】
前記グリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)が、前記水性エマルションエポキシド組成物中の水とグリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)との合計量を基準として、2重量%〜37.5重量%である、請求項1又は2に記載の水性エマルションエポキシド組成物。
【請求項4】
(D)分子内に1個以上のアミノ基を有するポリアミン化合物を更に含む、請求項1に記載の水性エマルションエポキシド組成物。
【請求項5】
前記グリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)及び前記ポリアミン化合物(D)が、前記水性エマルションエポキシド組成物中の水とグリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)及び前記ポリアミン化合物(D)との合計量を基準として、1.5重量%を超え40重量%未満である、請求項4に記載の水性エマルションエポキシド組成物。
【請求項6】
前記グリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)及び前記ポリアミン化合物(D)が、前記水性エマルションエポキシド組成物中の水と前記グリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)及び前記ポリアミン化合物(D)との合計量を基準として、2重量%〜37.5重量%である、請求項4又は5に記載の水性エマルションエポキシド組成物。
【請求項7】
前記グリコール又はグリセリンあるいはそれらの誘導体(C)と前記ポリアミン化合物(D)との重量比が、99/1〜1/99である、請求項4〜6のいずれか一項に記載の水性エマルションエポキシド組成物。

【公開番号】特開2010−77176(P2010−77176A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243764(P2008−243764)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(592042255)富士化成工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】