説明

氷蓄熱タンク

【課題】 氷蓄熱タンクを地下や中層階に設置した場合であっても、製氷部をタンク本体内から容易に取り出すことができるようにする。
【解決手段】 水Wが収容されたタンク本体1内に、冷媒配管2からなる製氷部3を配設してなる氷蓄熱タンクにおいて、前記タンク本体1の側面1bに、前記製氷部3を取り出すことができる大きさの開口部6と該開口部6を開閉する蓋体7とを設けて、氷蓄熱タンクZをビルの地下スペースや中層階に設置していた場合であっても、製氷部3を構成する冷媒配管2,2・・に局部腐食(腐食形態としては孔食)が発生した場合には、蓋体7を取り外して開口部6を開放すれば、タンク本体1の側面1bに形成された開口部6から製氷部3を容易に取り出すことができるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、氷蓄熱タンクに関し、空気調和装置における冷房熱源として使用される氷蓄熱タンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、蓄熱タンクに貯留した水等の蓄熱媒体を冷却して凍らせ、蓄熱媒体の潜熱として冷熱を蓄える氷蓄熱タンクが知られている。この氷蓄熱タンクは、空気調和装置と組み合わせて利用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この氷蓄熱タンクにおいては、夜間に製氷を行って冷熱を蓄える一方、昼間には夜間に蓄えた冷熱を利用して冷房運転を行うことによって、安価な深夜電力を利用して空気調和装置の運転コストを低減するとともに、夜間と昼間の電力需要の平準化を図っている。
【0004】
上記技術は、大幅な電力料金の低減や、昼間の都市部におけるヒートアイランド問題を緩和できる優れた技術であり、今後ますます採用が増えて行く傾向にあるが、氷蓄熱タンクの設置場所によってはトラブル発生時の補修が容易でないという課題がある。
【0005】
【特許文献1】特開2004−3749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的な氷蓄熱タンクZでは、図7(イ)に示すように、タンク本体1の中に冷媒配管2,2・・(例えば、銅管2,2・・)を水平および垂直に多数接続した構造の製氷部3を収納した構造となっており、製氷部3を構成する冷媒配管2,2・・(例えば、銅管2,2・・)内に液冷媒を供給して過冷却し、製氷部3の外周に氷を生成させて蓄冷するようになっている。符号4は冷媒分流器である。蓄熱効率を高めるためには、製氷部3を構成する冷媒配管2,2・・(例えば、銅管2,2・・)はタンク本体1内に均一に配置されており、高圧冷媒の気密保持のため、配管接続はロウ付けが採用されている。このような状況のため、タンク本体1内に設置されている多数の冷媒配管2,2・・(例えば、銅管2,2・・)は、一体ものの製氷部3を構成することとなっているのが通例である。
【0007】
タンク本体1内の製氷部3を構成する冷媒配管2,2・・(例えば、銅管2,2・・)は、耐食性に優れており、腐食を受けることは少ないのであるが、稀に局部腐食(腐食形態としては孔食)が発生し、冷媒配管2,2・・(例えば、銅管2,2・・)が侵食されて内部から冷媒が漏洩するケースが生じている。このような場合、製氷部3をタンク本体1から取り出して、漏れ個所を探し、ロウ付け等で修理することとなる。
【0008】
一方、氷蓄熱タンクZの設置場所は、ビルの屋上や地下スペースである場合が多い。例えば、図7(イ)に示すように、氷蓄熱タンクZがビルの屋上に設置されている場合には、図7(ロ)に示すように、タンク本体1の上蓋1aを取り外し、製氷部3をタンク本体1から取り出すことは、さほど困難ではない。ところが、図8に示すように、氷蓄熱タンクZがビルの地下スペースやビルの中層階に設置されている場合には、タンク本体1と天井Tとの間隔が充分でない状況では、タンク本体1から製氷部3を引き上げることが難しい場合が生ずる。高層建築物では、氷蓄熱タンクを地下や中層階に設置するケースが多く、上記のような課題が潜在している。
【0009】
本願発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、氷蓄熱タンクを地下や中層階に設置した場合であっても、製氷部をタンク本体内から容易に取り出すことができるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明では、上記課題を解決するための第1の手段として、水Wが収容されたタンク本体1内に、冷媒配管2,2・・からなる製氷部3を配設してなる氷蓄熱タンクにおいて、前記タンク本体1の側面1bに、前記製氷部3を取り出すことができる大きさの開口部6と該開口部6を開閉する蓋体7とを設けている。
【0011】
上記のように構成したことにより、氷蓄熱タンクZをビルの地下スペースや中層階に設置していた場合であっても、製氷部3を構成する冷媒配管2,2・・に局部腐食(腐食形態としては孔食)が発生した場合には、タンク本体1の側面1bに形成された開口部7から製氷部3を容易に取り出すことが可能となり、製氷部3のメンテナンス(即ち、冷媒配管2の修理)が容易に行えることとなる。
【0012】
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第2の手段として、上記第1の手段を備えた氷蓄熱タンクにおいて、前記製氷部3を、機械的接続手段11,11・・を介して分解可能に接続された複数の分割製氷部3A,3A・・により構成するとともに、前記開口部おを、前記分割製氷部3Aを取り出し得る大きさとなすこともでき、そのように構成した場合、開口部6を小さくできるため、製作コストを低減することが可能となる。
【0013】
本願発明では、さらに、上記課題を解決するための第3の手段として、上記第1又は第2の手段を備えた氷蓄熱タンクにおいて、前記製氷部3を構成する冷媒配管2,2・・を、銅管により構成することもでき、そのように構成した場合、冷媒配管2,2・・の伝熱特性が高くなって、製氷部3における製氷能力が向上するとともに、銅管2,2・・の耐食性により腐食発生頻度を低減できる。
【発明の効果】
【0014】
本願発明の第1の手段によれば、水Wが収容されたタンク本体1内に、冷媒配管2からなる製氷部3を配設してなる氷蓄熱タンクにおいて、前記タンク本体1の側面1bに、前記製氷部3を取り出すことができる大きさの開口部6と該開口部6を開閉する蓋体7とを設けて、氷蓄熱タンクZをビルの地下スペースや中層階に設置していた場合であっても、製氷部3を構成する冷媒配管2,2・・に局部腐食(腐食形態としては孔食)が発生した場合には、蓋体7を取り外して開口部6を開放すれば、タンク本体1の側面1bに形成された開口部6から製氷部3を容易に取り出すことができるようにしたので、製氷部3のメンテナンス(即ち、冷媒配管2,2・・の修理)を容易に行うことができるという効果がある。
【0015】
本願発明の第2の手段におけるように、上記第1の手段を備えた氷蓄熱タンクにおいて、前記製氷部3を、機械的接続手段11,11・・を介して分解可能に接続された複数の分割製氷部3A,3A・・により構成するとともに、前記開口部6を、前記分割製氷部3Aを取り出し得る大きさとなすこともでき、そのように構成した場合、開口部6を小さくできるため、製作コストを低減することが可能となる。
【0016】
本願発明の第3の手段におけるように、上記第1又は第2の手段を備えた氷蓄熱タンクにおいて、前記製氷部3を構成する冷媒配管2,2・・を、銅管により構成することもでき、そのように構成した場合、冷媒配管2,2・・の伝熱特性が高くなって、製氷部3における製氷能力が向上するとともに、銅管2,2・・の耐食性により腐食発生頻度を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照して、本願発明を幾つかの好適な実施の形態について説明する。
【0018】
第1の実施の形態
図1には、本願発明の第1の実施の形態にかかる氷蓄熱タンクが示されている。
【0019】
この氷蓄熱タンクZは、水Wが収容された直方体形状の鉄製のタンク本体1内に、冷媒配管となる銅管2,2・・からなる製氷部3を配設して構成されており、ビルの地下スペースあるいは中層階に設置され、夜間に氷蓄熱タンクZにより製氷を行って冷熱を蓄える一方、昼間には夜間に蓄えた冷熱を利用して冷房運転を行うことによって、安価な深夜電力を利用して空気調和装置の運転コストを低減するとともに、夜間と昼間の電力需要の平準化を図ることとなっている。前記製氷部3は、銅管2,2・・を水平および垂直に多数接続した一体構造とされている。符号4は冷媒分流器、5はタンク本体1内の水Wをメンテナンス時に排出するための水抜き栓、Tは天井である。
【0020】
また、本実施の形態の場合、前記タンク本体1は、直方体形状とされており、その一側面1bには、前記製氷部3を取り出すことができる大きさの開口部6と該開口部6を開閉する蓋体7とが設けられている。この開口部6は、図2に示すように、タンク本体1の一つの側面1bを開放することにより形成される場合もあるが、図3に示すように、タンク本体1の一側面1aに製氷部3を取り出すことができる大きさの開口部6を形成する場合もある。そして、前記蓋体7は、図4に示すように、前記開口部6の口縁に対してボルト8とナット9とにより着脱可能に取り付けられる鉄製のものとされている。符号10はゴム製パッキンである。
【0021】
上記のように構成したことにより、氷蓄熱タンクZをビルの地下スペースや中層階に設置していた場合であっても、製氷部3を構成する冷媒配管2,2・・(即ち、銅管2,2・・)に局部腐食(腐食形態としては孔食)が発生した場合には、蓋体7を取り外して開口部6を開放すれば、タンク本体1の側面に形成された開口部6から製氷部3を容易に取り出すことができることとなる。従って、製氷部3のメンテナンス(即ち、銅管2,2・・の修理)を容易に行うことができる。なお、本実施の形態の場合、製氷部3を構成する冷媒配管2,2・・を、銅管により構成したことにより、冷媒配管2,2・・の伝熱特性が高くなって、製氷部3における製氷能力が向上するとともに、銅管2,2・・の耐食性により腐食発生頻度を低減できる。
【0022】
第2の実施の形態
図5には、本願発明の第2の実施の形態にかかる氷蓄熱タンクが示されている。
【0023】
本実施の形態の場合、製氷部3は、機械的接続手段であるチューブ継手11,11・・を介して分解可能に接続された複数の分割製氷部3A,3A・・により構成されており、開口部6は、前記分割製氷部3Aを取り出し得る大きさされている。この場合、蓋体7は省略されている。前記チューブ継手11は、セージロックと称されるものとされ、図6に示すように、両端に銅管2,2を嵌挿し得るように構成された継手本体12と、該継手本体12に対して前記銅管2,2を固定するためのナット13とからなっている。図6において、符号14はフロントフエルール、15はバックフェルールである。
【0024】
本実施の形態の場合、開口部6を小さくできるため、製作コストを低減することが可能となる。
【0025】
その他の構成および作用効果は、第1の実施の形態におけると同様なので説明を省略する。
【0026】
なお、上記各実施の形態においては、タンク本体1を直方体形状としているが、タンク本体1の形状は、これに限定されることはなく、円筒体形状、楕円筒体形状、多角形筒体形状等とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本願発明の第1の実施の形態にかかる氷蓄熱タンクをビルの地下スペースや中層階に設置した場合を示す縦断面図である。
【図2】本願発明の第1の実施の形態にかかる氷蓄熱タンクをビルの地下スペースや中層階に設置した場合における製氷部の取出状態を示す縦断面図である。
【図3】本願発明の第1の実施の形態にかかる氷蓄熱タンクの変形例を示す正面図である。
【図4】図3のIV−IV断面図(内部構造およびタンク本体の一部を省略)である。
【図5】本願発明の第2の実施の形態にかかる氷蓄熱タンクの正面図である。
【図6】本願発明の第2の実施の形態にかかる氷蓄熱タンクにおける機械的接続手段の具体例を示す側面図である。
【図7】従来例としての氷蓄熱タンクを屋上に設置した場合を示す縦断面図であり、(イ)は屋上設置状態を示し、(ロ)は製氷部取出状態を示す。
【図8】従来例としての氷蓄熱タンクをビルの地下スペースや中層階に設置した場合における製氷部取出状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1はタンク本体
2は冷媒配管(銅管)
3は製氷部
6は開口部
7は蓋体
11は機械的接続手段(チューブ継手)
Tは天井
Wは水
Zは氷蓄熱タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水(W)が収容されたタンク本体(1)内に、冷媒配管(2),(2)・・からなる製氷部(3)を配設してなる氷蓄熱タンクであって、前記タンク本体(1)の側面(1b)には、前記製氷部(3)を取り出すことができる大きさの開口部(6)と該開口部(6)を開閉する蓋体(7)とを設けたことを特徴とする氷蓄熱タンク。
【請求項2】
前記製氷部(3)を、機械的接続手段(11),(11)・・を介して分解可能に接続された複数の分割製氷部(3A),(3A)・・により構成するとともに、前記開口部(6)を、前記分割製氷部(3A)を取り出し得る大きさとなしたことを特徴とする請求項1記載の氷蓄熱タンク。
【請求項3】
前記製氷部(3)を構成する冷媒配管(2),(2)・・を、銅管により構成したことを特徴とする請求項1および2のいずれか一項記載の氷蓄熱タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−71473(P2010−71473A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236021(P2008−236021)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)