説明

氷蓄熱式冷凍機ユニット

【課題】 蓄熱運転中においても空調を行なうことができ、又、夜間の蓄熱運転中に水熱交換器に至る経路中の調節弁に漏れが生じた場合にも熱交換器で冷水が凍結することがない氷蓄熱式冷凍機ユニットを提供する。
【解決手段】 氷蓄熱槽2に蓄熱しておき、放熱時には、氷蓄熱槽2にてブラインを冷却してブラインを水熱交換器3に導き冷房能力を取り出すユニットであって、水熱交換器3のブライン出口側経路からブライン入口側経路へブラインを流すためのブラインポンプ7を接続したブライン経路を設け、水熱交換器3の冷水出口側経路中に冷水温度センサS1と、水熱交換器3のブライン入口側経路中にブライン温度センサS2とを設け、これらセンサS1,S2で検出した温度によって、水熱交換器3のブライン出口側経路からブライン入口側経路へブラインを流すためブラインポンプ7の運転および運転停止制御を行う制御装置12を設けた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は氷蓄熱式冷凍機ユニットに係り、特に氷蓄熱槽を備えオフィスビル等の一般のビルに好適に使用される氷蓄熱式冷凍機ユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】氷蓄熱式冷凍機ユニットは経済的な夜間電力を利用する冷房システムとして開発されており、省エネルギ、省スペースのビル冷房として利用されている。従来、氷蓄熱槽を使用した氷蓄熱式冷凍機ユニットでは、夜間に水熱交換器を迂回する経路の調節弁を開として、水熱交換器に至る経路の調節弁を閉とし、冷凍機でブラインを冷却してそのブラインで氷蓄熱槽の水を凍結させることで蓄熱を行い、昼間の空調運転時に氷蓄熱槽の氷の融解熱を使用してブラインを冷却し、水熱交換器に至る経路の調節弁を閉としてブラインを水熱交換器に導き、冷水を冷却して冷房能力を取り出していた。この場合、夜間は氷蓄熱槽に氷を作るため、ブラインを水の凍結温度(0℃)以下にする必要がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従って、夜間の蓄熱運転中に空調を行おうとした場合、水熱交換器に至る経路の調節弁を開として、ブラインを水熱交換器に導き、冷水を冷却して空調運転を行う必要があるが、ブラインが凍結温度(0℃)以下のため、水熱交換器内で冷水が凍結してしまうという問題があった。また、水熱交換器に至る経路中の調節弁に漏れが生じた場合、夜間の蓄熱運転中に凍結温度(0℃)以下のブラインが水熱交換器に流入し、水熱交換器内で冷水が凍結してしまう危険性があった。
【0004】本発明は上述の事情に鑑みなされたもので、蓄熱運転中においても空調を行なうことができ、又、夜間の蓄熱運転中に水熱交換器に至る経路中の調節弁に漏れが生じた場合にも水熱交換器で冷水が凍結することがない氷蓄熱式冷凍機ユニットを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上述した課題を達成するため、本発明は、冷凍機、氷蓄熱槽、水熱交換器、ブライン循環ポンプ及び調節弁を配管で接続したブライン経路と、水熱交換器を迂回する調節弁を備えたブライン経路と、水熱交換器、複数台の空気調和機及び冷水ポンプを配管で接続した冷水経路とを有し、前記冷凍機でブラインを冷却し、該ブラインにて氷蓄熱槽の水を凍結させて蓄熱しておき、放熱時には、氷蓄熱槽の氷の融解熱にて前記ブラインを冷却し、該ブラインを水熱交換器に導き、冷水を冷却して冷房能力を取り出す氷蓄熱式冷凍機ユニットであって、水熱交換器のブライン出口側経路からブライン入口側経路へブラインを流すためのブラインポンプを接続したブライン経路を設け、水熱交換器の冷水出口側経路中に冷水温度センサと、水熱交換器のブライン入口側経路中にブライン温度センサとを設け、該冷水温度センサ及びブライン温度センサで検出した温度によって、水熱交換器のブライン出口側経路からブライン入口側経路へブラインを流すためブライン経路中に設けたブラインポンプの運転および運転停止制御を行う制御装置を設けたことを特徴とする。
【0006】本発明によれば、水熱交換器の冷水出口側経路中に設けた冷水温度センサと、水熱交換器のブライン入口側経路中に設けたブライン温度センサとで検出した温度に基づいて、ブラインポンプの運転を行ない、水熱交換器のブライン出口側経路から水熱交換器によって温められたブラインの一部をブライン入口側経路へ流すことができる。これによって、蓄熱運転中にも、水熱交換器内の冷水を凍結させることなく、空調を行なうことができる。また、夜間の純粋な蓄熱運転中に、水熱交換器に至るブライン経路中の調節弁に漏れが生じて、水熱交換器にブラインが流入したとしても、水熱交換器内の冷水の凍結を防止することができる。
【0007】
【実施例】以下、本発明に係る氷蓄熱式冷凍機ユニットの一実施例を図面を参照して説明する。図1は本発明の氷蓄熱式冷凍機ユニットのフロー構成図を示す。図1に示すように、氷蓄熱式冷凍機ユニットは、冷凍機1、氷蓄熱槽2、水熱交換器3、ブライン循環ポンプ4及び調節弁5を配管6で接続したブライン経路と、水熱交換器3を迂回する調節弁8を備えたブライン経路と、水熱交換器3、複数の空気調和機(空調機)9及び冷水ポンプ10を配管11で接続した冷水経路とを有している。
【0008】氷蓄熱式冷凍機ユニットは、水熱交換器3のブライン出口側経路からブライン入口側経路へブラインを流すためのブラインポンプ7を接続したブライン経路を備えている。また氷蓄熱式冷凍機ユニットは、水熱交換器3の冷水出口側経路中に冷水温度センサS1を備え、水熱交換器3のブライン入口側経路中にブライン温度センサS2を備えている。そして、冷水温度センサS1及びブライン温度センサS2で検出した温度によって、水熱交換器3のブライン出口側経路からブライン入口側経路へブラインを流すためブライン経路中に設けたブラインポンプ7の運転および運転停止制御を行う制御装置12をさらに具備している。
【0009】また、各空調機9は、冷温水弁13を備えるとともに、リモコン(図示せず)にて運転/停止が可能になっている。またブラインポンプ7、冷水温度センサS1およびブライン温度センサS2は制御装置12に接続され、調節弁5,8はそれぞれ制御装置12に接続されている。
【0010】上述の構成において、夜間の蓄熱運転時には、冷凍機1を運転してブラインを冷却し、該ブラインを調節弁8により水熱交換器3をバイパスする経路を経由して氷蓄熱槽2に導き、氷蓄熱槽2内に氷を作ることで蓄熱を行う。また、昼間の冷房運転を行う時には、氷蓄熱槽2内の氷の融解熱を利用してブラインを冷却し、該ブラインを水熱交換器3に導き、冷水を冷却し、該冷水を空調機9に導き、各空調機9にて居室の冷房を行う。
【0011】本実施例では、冷水温度センサS1と、ブライン温度センサS2と、制御装置12とを備えている。この構成により、空調設備を運用する場合の具体例を以下に説明する。
(1)冷水温度センサS1で検出した温度が、所定の設定温度(例えば2℃)以下となった場合に、水熱交換器3のブライン出口側経路からブライン入口側経路へブラインを流すためブライン経路中に設けたブラインポンプ7の運転を開始し、水熱交換器3によって温められたブラインを水熱交換器3の入口側に流すことによって、冷水の凍結を防止する。
(2)夜間の純粋な蓄熱運転(水熱交換器にはブラインを流さない蓄熱運転)中にブライン温度センサS2で検出した温度が、所定の設定温度(例えば2℃)以下となった場合に、水熱交換器3のブライン出口側経路からブライン入口側経路へブラインを流すためブライン経路中に設けたブラインポンプ7の運転を開始し、水熱交換器3によって温められたブラインを水熱交換器3の入口側に流すことによって、冷水の凍結を防止する。
【0012】以上のように本実施例によれば、水熱交換器3の冷水出口側経路中に設けた冷水温度センサS1と、水熱交換器3のブライン入口側経路中に設けたブライン温度センサS2とで検出した温度に基づいて、ブラインポンプ7の運転を行ない、一部のブラインを水熱交換器3を迂回して水熱交換器3のブライン出口側経路からブライン入口側経路へ流すことができる。これによって、蓄熱運転中にも、水熱交換器3内の冷水を凍結させることなく、空調を行なうことができる。また、夜間の純粋な蓄熱運転中に、水熱交換器3に至るブライン経路中の調節弁5に漏れが生じて、水熱交換器3にブラインが流入したとしても、水熱交換器3内の冷水の凍結を防止することができる。
【0013】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、水熱交換器の冷水出口側経路中に設けた冷水温度センサと、水熱交換器のブライン入口側経路中に設けたブライン温度センサとで検出した温度に基づいて、ブラインポンプの運転を行ない、水熱交換器のブライン出口側経路からブライン入口側経路へブラインを流すことができる。従って、蓄熱運転中にも、水熱交換器内の冷水を凍結させることなく、空調を行なうことができる。また、夜間の蓄熱運転中に、水熱交換器に至るブライン経路中の調節弁に漏れが生じて、水熱交換器にブラインが流入したとしても、水熱交換器内の冷水の凍結を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る氷蓄熱式冷凍機ユニットの一実施例を示すフロー構成図である。
【符号の説明】
1 冷凍機
2 氷蓄熱槽
3 水熱交換器
4 ブライン循環ポンプ
5,8 調節弁
7 ブラインポンプ
9 空調機
10 冷水ポンプ
12 制御装置
13 冷温水弁
S1 冷水温度センサ
S2 ブライン温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 冷凍機、氷蓄熱槽、水熱交換器、ブライン循環ポンプ及び調節弁を配管で接続したブライン経路と、水熱交換器を迂回する調節弁を備えたブライン経路と、水熱交換器、複数台の空気調和機及び冷水ポンプを配管で接続した冷水経路とを有し、前記冷凍機でブラインを冷却し、該ブラインにて氷蓄熱槽の水を凍結させて蓄熱しておき、放熱時には、氷蓄熱槽の氷の融解熱にて前記ブラインを冷却し、該ブラインを水熱交換器に導き、冷水を冷却して冷房能力を取り出す氷蓄熱式冷凍機ユニットであって、水熱交換器のブライン出口側経路からブライン入口側経路へブラインを流すためのブラインポンプを接続したブライン経路を設け、水熱交換器の冷水出口側経路中に冷水温度センサと、水熱交換器のブライン入口側経路中にブライン温度センサとを設け、該冷水温度センサ及びブライン温度センサで検出した温度によって、水熱交換器のブライン出口側経路からブライン入口側経路へブラインを流すためブライン経路中に設けたブラインポンプの運転および運転停止制御を行う制御装置を設けたことを特徴とする氷蓄熱式冷凍機ユニット。
【請求項2】 前記制御装置は、前記冷水温度センサで検出した温度が所定の設定温度以下となった場合に水熱交換器のブライン出口側経路からブライン入口側経路へブラインを流すためブライン経路中に設けたブラインポンプの運転を開始することを特徴とする請求項1記載の氷蓄熱式冷凍機ユニット。
【請求項3】 前記制御装置は、前記ブライン温度センサで検出した温度が所定の設定温度以下となった場合に水熱交換器のブライン出口側経路からブライン入口側経路へブラインを流すためブライン経路中に設けたブラインポンプの運転を開始することを特徴とする請求項1記載の氷蓄熱式冷凍機ユニット。

【図1】
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【公開番号】特開平9−112972
【公開日】平成9年(1997)5月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−293413
【出願日】平成7年(1995)10月17日
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)