説明

氷蓄熱装置

【目的】 本発明は非水溶性液体と水との接触により氷を生成する製氷手段を備えた氷蓄熱装置において、冷凍機効率,氷の充填率,および解氷性能の向上をはかり、蓄熱槽内に連続的にシャーベット状の氷を製作できる非水溶性液中に直接水を噴射する方式の氷蓄熱装置を提供する。
【構成】 本発明において、蓄熱水槽1の底部に設けた水より重い非水溶性液体2を貯溜する貯溜部と該液体を0℃以下に冷却する冷凍機装置6とを備えた製氷部を有し、前記液体2内に蓄熱水槽1内の水を直接噴出し、前記液体を水との直接接触により氷を製造する手段を備えた氷蓄熱装置において、前記液体2貯溜部から非水溶性液体2を抽出し、冷凍機6で冷却した後再び前記液体貯溜部に戻す非水溶性液体循環系4からなる非水溶性液体冷却部と、水3貯溜部から水3を抽出し非水溶性液体1底部から水3を噴出させる水循環系5とを備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は伝熱媒体としての、非水溶性高比重液体中に水を噴出し、該液体と水との直接接触により前記水を冷却し、その全て、または一部を氷化させる製氷手段を有する氷蓄熱装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、工業プラントやビル等における比較的大規模な空調システムには蓄熱空調システムが利用され、昼間の冷房負荷のピーク時における電力需要の軽減並びに夜間のオフピーク時における電力需要の拡大をはかるようにしている。
【0003】この蓄熱空調システムの蓄熱方式には顕熱を利用した水蓄熱システムと、潜熱を利用した氷蓄熱方式があるが、前者の水蓄熱方式では十分な蓄熱容量を確保する為に蓄熱槽を大きくしなければ、有効な効果を発揮させることができないという欠点があり、また、その安全性および経済性の面から、氷蓄熱方式の需要が高まりつつある。
【0004】この氷蓄熱方式を採用した空調システムにおいて、特開平1−244225号公報に示されるように、0℃以下の冷却された水よりも比重の大きい非水溶性液体で満たされた容器下部より水を噴き出し、水が上昇する間に、非水溶性液体より冷熱を奪い、氷結させる製氷法などが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した方式の氷蓄熱装置においては、非水溶性液体容器底部より噴き出した水が、容器壁面に付着し、そこで氷結するため、生成した氷が上昇せず生成した氷の一部が回収できなくなるという欠点を有する。また、水の噴き出しノズル部で水が凍りつきノズルが詰まってしまうなどという問題がある。さらに、非水溶性液体を冷却する際、非水溶液冷却用熱交換器に水が付着すると熱交換器表面に氷着するという問題も生じる。
【0006】本発明は上記の欠点に鑑みなされたもので、冷凍機の効率、氷の充填率向上および、解氷性能の向上をはかり蓄熱水槽内に連続的にシャーベット状の氷を製作する性能を有する非水溶性液中に直接水を噴射する方式の氷蓄熱装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の氷蓄熱装置は蓄熱媒体として蓄熱水槽内に氷を貯溜させ、冷房負荷時にその融解による吸熱作用を利用する冷房負荷対応の氷蓄熱装置であって、蓄熱水槽に隣接する位置で、かつ蓄熱水槽の底部より更に低位置に、非水溶性の水より重い液体を貯溜し、かつ、該非水溶性液体を0℃以下に冷却する冷凍装置を備えた製氷部を有し、該非水溶性液体内に、蓄熱水槽内の水を直接噴出し、該非水溶性液体と水との直接接触により、水の一部を氷とする製氷手段を有する氷蓄熱装置において、非水溶性液体貯溜部より非水溶性液体を抽出し、冷凍機で冷却し、再び非水溶性液貯溜部に戻す循環系により成る非水溶性液体冷却部と、水貯溜部より水を抽出し、非水溶性液体底部より噴き出す循環系とを備えた構成とする。
【0008】
【作用】本発明は上記のように構成されており、氷蓄熱装置の循環系の改良による非水溶性液体冷却効率の上昇を図り、さらに非水溶性液体容器の底部に設置した水およびフロリナート噴出ノズル形状の改良により、水−非水溶性液体の熱交換性能の向上がはかれると同時に噴き出された水の壁面方向への拡散が防止でき、壁面での氷着を防止することができる。また、ノズル部に加熱ヒータを設置することにより、ノズルの水噴出口の凍結が防止できる。
【0009】
【実施例】本発明の一実施例について図を参照しながら説明する。
【0010】図1は本発明の氷蓄熱装置の一実施例を示すものである。蓄熱水槽1に非水溶性液体2を満たし、さらに、その上に水3を満たす。また、非水溶性液体循環系4と、水循環系5を設け、非水溶性液体循環系4には、途中冷凍機6を設け、非水溶性液体を連続的に冷却する。非水溶性液循環系4および水循環系5において、蓄熱水槽1への戻り口を、ともに図2に示す構造のノズル7に接続し両者を噴き出す。図2において内側の管は水噴出孔8、外側の管は非水溶性液噴出孔9である。さらにノズル7に加熱装置(図示せず)を設ける。
【0011】このような構成とすることにより、非水溶性液を連続的に冷却できるようになり、またノズル7より水と同時に、水を囲むように被冷却直後の非水溶性液を噴き出すことにより、非水溶性液と水との熱交換が効率よく行えるようになり、蓄熱槽1内に連続的に氷10を生成することができる。また、水の蓄熱槽壁面方向への拡散が防止され、壁面での氷着を防ぐことができる。また、何らかの原因で、水循環系が止まった時の水噴出孔における練結による水噴出孔の閉そくが起きた場合に、加熱ヒータを作動するようにすれば閉そくを解除できる。また、図3に示すように水噴出孔8を囲むように何本かの非水溶性噴出孔を配置することにより、ノズル部形状を簡単にできる。
【0012】また、図4に示すように、ノズル部形状を非水溶性液噴出孔より、非水溶性液がらせん状に噴き出すように形成することにより、水を効果的に囲むことができる。
【0013】
【発明の効果】以上述べたように本発明による氷蓄熱装置によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)非水溶性液冷却装置を蓄熱水槽の外に設けたので、槽内の水が熱交換器等に氷着し、効率を落とさない。
(2)被冷却直後の非水溶性液と水とを同時に噴き出すので、両者の熱交換の効率がよい。
(3)水噴出孔より噴き出す水の壁面方向への拡散が防止されるため、壁面において水が氷着せず、生成した氷がスムースに上昇する。
(4)水噴出孔に加熱ヒータを設けたため、凍結による閉そくを解除できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の氷蓄熱装置の一実施例を示す全体構成図
【図2】図1のノズル部の詳細図
【図3】本発明の他の実施例を示す図
【図4】本発明の他の実施例を示す図
【符号の説明】
1…蓄熱水槽 2…非水溶性液体
3…水 4…非水溶性液体循環系
5…水循環系 6…冷凍機
7…ノズル 8…水噴出孔
9…非水溶性液噴出孔 10…氷

【特許請求の範囲】
【請求項1】 蓄熱媒体として蓄熱水槽内に氷を貯溜させ、冷房負荷時にその融解による吸熱作用を利用する冷房負荷対応の氷蓄熱装置であって、蓄熱水槽に隣接する位置で、かつ蓄熱水槽の底部より更に低位置に、非水溶性の水より重い液体を貯溜し、かつ、該非水溶性液体を0℃以下に冷却する冷凍装置を備えた製氷部を有し、該非水溶性液体内に、蓄熱水槽内の水を直接噴出し、該非水溶性液体と水との直接接触により、水の一部を氷とする製氷手段を有する氷蓄熱装置において、非水溶性液体貯溜部より非水溶性液体を抽出し、冷凍機で冷却し、再び非水溶性液貯溜部に戻す循環系により成る非溶性液体冷却部と、水貯溜部より水を抽出し、非水溶性液体底部より水を噴き出す循環系とを備えたことを特徴とする氷蓄熱装置。
【請求項2】 請求項1記載の氷蓄熱装置において、製氷部の非水溶性液体中へ水を噴き出す際の非水溶性液噴出孔を水噴出孔外周部に設置したことを特徴とする氷蓄熱装置。
【請求項3】 請求項1に記載の氷蓄熱装置において、水噴出孔の凍結を防ぐ制御可能な電気的加熱装置を設置したことを特徴とする氷蓄熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平5−18562
【公開日】平成5年(1993)1月26日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−170263
【出願日】平成3年(1991)7月11日
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)