説明

永久磁石の着磁方法

【課題】着磁処理における生産効率を向上することができる永久磁石の着磁方法を提供すること。
【解決手段】磁石素材7を保持する保持体2が連続して設けられた合成樹脂製の連続体1を用いて永久磁石を着磁する場合において、まず、保持体2に磁石素材7を保持させる。次に、保持体2で磁石素材7を保持した状態の連続体1を着磁装置に配置して着磁を行う。保持体2に磁石素材7を保持させる際には、保持体2に設けられた磁石素材7を収納する収納部21の突出片27を変形させて磁石素材7を保持体2に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石の着磁方法に関し、特に、磁石素材を保持する保持体が連続して設けられた合成樹脂製の連続体を用いた永久磁石の着磁方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着磁を行う円環状永久磁石素材(磁石素材)の円環内に2極着磁ヨークを挿入して、当該磁石素材をパルス電流が形成される外部着磁磁界内に設置することで、コギングトルクを小さく抑えるようにした永久磁石の着磁方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−248216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したような従来の永久磁石の着磁方法においては、その着磁処理の際、磁石素材に1つずつ2極着磁ヨークを挿入して、外部着磁磁界内に設置する構成を採ることから、その生産効率を向上することが困難であるという問題がある。
【0004】
本発明はかかる問題点に鑑みて為されたものであり、着磁処理における生産効率を向上することができる永久磁石の着磁方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の永久磁石の着磁方法は、磁石素材を保持する保持体が連続して設けられた合成樹脂製の連続体を用いた永久磁石の着磁方法であって、前記保持体に前記磁石素材を保持させる工程と、前記保持体で前記磁石素材を保持した前記連続体を着磁装置に配置して着磁を行う工程とを具備することを特徴とする。
【0006】
上記永久磁石の着磁方法によれば、連続体に設けられた保持体に保持させた状態で磁石素材を着磁することができるので、1つずつ磁石素材を着磁装置にセットし、着磁された磁石を取り外す必要がなく、着磁処理における生産効率を向上することが可能となる。また、連続体を合成樹脂で形成していることから、着磁後に残存する構成部分を再利用することができるので、着磁処理におけるコストを低減することが可能となる。さらに、例えば、着磁された磁石を保持体に保持させた状態で製品に組み込むことにより、別途、磁石を保持体に取り付ける場合に発生し得る着磁精度の低下を防止することが可能となる。
【0007】
上記永久磁石の着磁方法においては、前記磁石素材を保持した前記保持体の一部を変形させて当該磁石素材を固定する工程を具備することが好ましい。この場合には、接着剤や両面テープ等の別部材を必要とすることなく、磁石素材を容易に保持体に固定することが可能となる。また、接着剤や両面テープ等で取り付ける場合と異なり、保持体の一部を基準に磁石素材を固定できるので、効果的に保持体における磁石素材の位置決めを行うことが可能となる。
【0008】
上記永久磁石の着磁方法において、前記保持体は、前記磁石素材を収納する収納部を有し、当該収納部を構成する壁部の一部を変形させて前記磁石素材を固定することが好ましい。この場合には、磁石素材を収納する収納部を構成する壁部の一部で磁石素材を固定することができるので、確実且つ容易に磁石素材の位置決めを行うことが可能となる。
【0009】
上記永久磁石の着磁方法においては、前記収納部を構成する壁部を弾性的に変形可能とし、当該壁部で前記磁石素材を挟持することが好ましい。この場合には、壁部を弾性変形させて磁石素材を挟持するようにしたことから、収納部に磁石素材を押し込むだけで磁石素材を保持させることができるので、保持体に磁石素材を保持させる際の作業効率を向上することが可能となる。
【0010】
上記永久磁石の着磁方法においては、前記連続体における複数の前記保持体に保持された複数の前記磁石素材に対して同時に着磁を行うことが好ましい。この場合には、1回の着磁処理により複数の磁石素材に着磁することができるので、これを連続して行うことにより飛躍的に着磁処理における生産効率を向上することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、連続体に設けられた保持体に保持させた状態で磁石素材を着磁することができるので、1つずつ磁石素材を着磁装置にセットし、着磁された磁石を取り外す必要がなく、着磁処理における生産効率を向上することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態に係る永久磁石(以下、単に「磁石」という)の着磁方法においては、磁石素材を保持する保持体が連続して設けられた合成樹脂製の連続体を用いて着磁処理における生産効率を向上するものである。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態に係る磁石の着磁方法において用いられる連続体1の構成を示す平面図である。本実施の形態に係る磁石の着磁方法において用いられる連続体1は、成形金型に合成樹脂材料を射出成形して製造されるものである。この連続体1においては、図1に示すように、後述する磁石素材7を保持する複数の保持体2が設けられると共に、これらの保持体2を同図に示す左右方向に等間隔に配置する外枠部3が設けられている。
【0014】
保持体2は、外枠部3を構成する一辺の中央部で連結部4により連結され、外枠部3の内部に形成される開口部5内に配置されている。外枠部3の所定位置には、後述する着磁装置8に対する連続体1の搬送を行うための複数の孔6が形成されている。例えば、連続体1は、不図示の搬送装置における係合ピンがこれらの孔6に挿通されて、着磁装置8における着磁位置に搬送されるものとなっている。
【0015】
図2は、本実施の形態に係る連続体1に設けられる保持体2の構成を示す平面図(同図(a))及び斜視図(同図(b))である。図3は、本実施の形態に係る磁石の着磁方法によって着磁される磁石素材7の構成を示す平面図(同図(a))及び斜視図(同図(b))である。図2においては、連結部4から取り外すと共に、図1に示す保持体2の左方側端部を上方側に配置した状態の保持体2を示している。なお、これらの保持体2及び磁石素材7の構成については一例を示すものであり、その構成については適宜変更が可能である。
【0016】
図2に示すように、保持体2は、概して円盤形状を有しており、その上面中央に磁石素材7を収納する小判形状の収納部21が設けられている。収納部21は、磁石素材7が配置される内底面部22と、互いに平行に設けられ対向して配置された側壁部23と、円弧形状を有し対向して配置された円弧状壁部24とから構成されている。すなわち、保持体2は、二対の壁部で囲まれた収納部21を備えると共に、図2(a)に示す紙面手前側に開口する形状を有しており、この開口部から磁石素材7が取り付けられるように構成されている。
【0017】
内底面部22の中央には、平面視にて概して矩形状の突出片25が設けられている。この突出片25は、後述する磁石素材7の挿通孔71に挿通され、磁石素材7を位置決めする役割を果たす部分である。なお、この突出片25は、一部が切り欠かれていると共に、その中央には、開口部25aが形成されている。この開口部25aには、例えば、着磁後の磁石素材7(すなわち、磁性体)を固定した状態で保持体2を製品に組み込む場合に、当該製品の一部が挿通されるものとなっている。従って、着磁後の磁石素材7を保持体2から取り外して使用する場合には、必ずしも必要ではない。また、内底面部22における側壁部23近傍の位置には、側壁部23に沿って長い長孔からなる開口部26が形成されている。この開口部26は、磁石素材7を保持体2に取り付ける際に側壁部23を弾性的に変形し易くするために設けられたものである。
【0018】
側壁部23の内壁面には、磁石素材7の取り付け方向に沿って延出した突出部23aが設けられている。この突出片23aは、側壁部23の中央部に設けられており、収納部21に取り付けられる磁石素材7の外壁面と接触する部分である。また、側壁部23の外部側には、その中央に切り欠き部23bが形成されている。この切り欠き部23bは、内底面部22に形成された開口部26と同様に、磁石素材7を保持体2に取り付ける際に側壁部23を弾性的に変形し易くするために設けられたものである。
【0019】
側壁部23と円弧状壁部24との接続部分である収納部21の4隅に対応した部分の上面には、上方側に突出した突出片27が設けられている。すなわち、保持体2には、4つの突出片27が設けられている。これらの複数の突出片27は、収納部21に収納された磁石素材7を保持体2に固定するために用いられるものであり、磁石素材7が取り付けられた後において、その端部上面に被さるように熱を加えるなどして変形されるものとなっている。なお、これらの突出片27の変形した状態については後述する。
【0020】
磁石素材7は、図3に示すように、概して平板形状を有し、同図に示す上下部分において円弧状面を有すると共に、側方部分に平行面を有している。これらの円弧状面及び平行面の寸法は、保持体2の収納部21の内壁面と略同一の寸法に設けられている。また、磁石素材7の中央には、保持体2の突出片25が挿通される矩形状の挿通孔71が設けられている。この挿通孔71の周囲であって、磁石素材7の上面には突出面72が設けられている。この突出面72の周囲には、上述した保持体2の突出片27が変形されることによって支持される支持面73が設けられている。なお、図示していないが、磁石素材7の下面は水平面で構成されている。
【0021】
なお、本実施の形態に係る磁石の着磁方法に適用される磁石素材7としては、例えば、所謂、ネオジムボンド磁石が好適に採用されるが、これに限定されるものではなく、フェライト磁石、或いは、焼結ネオジム磁石等を採用するようにしても良い。
【0022】
本実施の形態に係る磁石の着磁方法においては、このような形状を有する磁石素材7を連続体1の保持体2に保持させる。図4は、保持体2に磁石素材7を保持させた状態の連続体1の平面図である。図5は、図2に示す保持体2に磁石素材7を保持させた状態の平面図(同図(a))及び斜視図(同図(b))である。
【0023】
図4に示すように、本実施の形態に係る磁石の着磁方法においては、外枠部3に連結された状態の保持体2に対して磁石素材7が取り付けられる。保持体2においては、図5に示すように、磁石素材7は、挿通孔71に突出片25が挿通された状態で収納部21に収納するように取り付けられる。このように磁石素材7を取り付ける際、磁石素材7の外壁面には、保持体2の側壁部23の突出片23aが接触する。このため、磁石素材7は、僅かに側壁部23を外部側に押し退けるようにして取り付けられる一方、側壁部23の復元力により挟持されることとなる。このように本実施の形態に係る磁石の着磁方法においては、側壁部23を弾性的に変形させて磁石素材7を挟持するようにしていることから、収納部21に磁石素材7を押し込むだけで磁石素材7を保持させることができるので、保持体2に磁石素材7を保持させる際の作業効率を向上することが可能となっている。
【0024】
そして、本実施の形態に係る磁石の着磁方法においては、このように磁石素材7を保持した保持体2の一部を変形させて収納部21内に磁石素材7を固定する。具体的には、保持体2の側壁部23と円弧状壁部24との接続部分の上面に形成された突出片27を熱変形させて磁石素材7を固定する。図6は、磁石素材7を保持した保持体2の一部を変形させた状態の連続体1の平面図である。図7は、図5に示す保持体2の一部を変形させた状態の平面図(同図(a))及び斜視図(同図(b))である。
【0025】
図6に示すように、本実施の形態に係る磁石の着磁方法においては、外枠部3に連結された状態において、保持体2の一部(突出片27)が変形される。保持体2においては、図7に示すように、4ヵ所に設けられた突出片27を内側に倒すように、言い換えると、突出片27を磁石素材7の支持面73に被せるように熱変形される。これにより、磁石素材7は、その4隅部分で変形後の突出片27で係止された状態となり、収納部21内に固定されることとなる。このように本実施の形態に係る磁石の着磁方法においては、磁石素材7を収納する収納部21を構成する側壁部23及び円弧状壁部24の突出片27で磁石素材7を固定することができるので、確実且つ容易に磁石素材7の位置決めを行うことが可能となる。また、接着剤や両面テープ等で取り付ける場合と異なり、保持体2の一部を基準に磁石素材7を固定できるので、効果的に保持体2における磁石素材7の位置決めを行うことが可能となる。
【0026】
次に、本実施の形態に係る磁石の着磁方法においては、このように保持体2に磁石素材7を固定した状態の連続体1を着磁装置8に配置して着磁を行う。図8は、保持体2に磁石素材7を固定した状態の連続体1が配置された着磁装置8の斜視図である。図9は、保持体2に磁石素材7を固定した状態の連続体1が配置された着磁装置8の平面図(同図(a))及び側面図(同図(b))である。なお、本実施の形態に係る磁石の着磁方法においては、連続体1を不図示の搬送装置により着磁装置8の上方に配置するが、着磁装置8に対する連続体1の配置の態様については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。
【0027】
図8及び図9(a)に示すように、着磁装置8は、例えば、軟磁性材料を機械加工することで形成される着磁ヨーク81と、この着磁ヨーク81の上部に配設された着磁用コイル82と、この着磁用コイル82が接続される不図示の着磁電源装置(例えば、パルス着磁電源装置)とを含んで構成される。着磁ヨーク81は、連続体1の長手方向に対応するように長尺形状を有しており、着磁用コイル82は、着磁ヨーク81の上部に長手方向に沿って配設されている。特に、着磁装置8においては、保持体2に保持された磁石素材7が図9(a)に示す上下方向に異なる磁極が着磁される、所謂、面2極着磁が行われるように着磁用コイル82が配設されている。なお、この着磁装置8においては、連続体1における8個の保持体2に保持された磁石素材7を同時に着磁できるように着磁用コイル82が配設されている。
【0028】
なお、本発明における磁石の着磁方法は、本実施の形態のような面2極着磁に好適に適用することができるが、これに限られるものではない。すなわち、着磁ヨークの配置や、着磁用コイルの態様を変更することにより、種々の着磁仕様に対応することが可能である。
【0029】
このような着磁装置8に対して、本実施の形態に係る磁石の着磁方法においては、保持体2に保持された磁石素材7が着磁用コイル82側に対向して配置されるようにして連続体1を配置する。この場合、連続体1は、着磁されていない磁石素材7を保持する8個の保持体2が着磁用コイル82に対向配置されるように着磁装置8に配置される。そして、このように連続体1が配置された状態でコイル82に通電することにより着磁処理が行われる。この場合において、コイル82には、着磁電源装置から所定のタイミングでパルス大電流が流される。これにより、保持体2に保持されている8個の磁石素材7における図9(a)に示す上方側部分がN極(S極)に着磁される一方、下方側部分がS極(N極)に着磁されることとなる。すなわち、着磁用コイル82の上方領域に配置された全ての磁石素材7が一括して着磁されることとなる。
【0030】
なお、上述した着磁装置8においては、連続体1の下方側にのみ着磁ヨーク81を配置した場合について示しているが、連続体1の上方側の領域に一定距離だけ離間させて異なる着磁ヨークを配設することは実施の形態として好ましい。このように異なる着磁ヨークを配設した状態で着磁処理を行う場合には、当該異なる着磁ヨークがバックヨークとして機能し、着磁用コイル82に通電することにより発生した磁束の漏れを防ぎ、磁石素材7を通過する磁束密度を高めることができることから、着磁後の磁石における磁力を向上することが可能となる。
【0031】
以上説明したように、本実施の形態に係る磁石の着磁方法においては、連続体1に設けられた保持体2に保持させた状態で磁石素材7を着磁するようにしたことから、従来の着磁方法のように、1つずつ磁石素材7を着磁装置8にセットし、着磁された磁石を取り外す必要がなく、着磁処理における生産効率を向上することが可能となる。また、連続体1を合成樹脂で形成していることから、着磁後に残存する構成部分を再利用することができるので、着磁処理におけるコストを低減することが可能となる。
【0032】
特に、本実施の形態に係る磁石の着磁方法においては、連続体1に設けられた複数の保持体2に保持された複数の磁石素材7に対して同時に着磁を行うようにしていることから、1回の着磁処理により複数の磁石素材に着磁することができるので、これを連続して行うことにより飛躍的に着磁処理における生産効率を向上することが可能となる。
【0033】
ところで、このように本実施の形態に係る着磁方法により着磁された磁石は、保持体2の保持させた状態で製品に組み込むことが可能である。すなわち、着磁された磁石を保持した状態の保持体2を連結部材4から取り外し、この保持体2自体を製品に組み込むのである。本実施の形態に係る着磁方法に用いられる連続体1においては、このような使用を想定しており、上述したように、保持体2の突出片25に開口部25aを設けている。
【0034】
以下、本実施の形態に係る着磁方法により着磁された磁石を保持した状態の保持体2が組み込まれる製品の具体例について説明する。ここでは、磁石を保持した状態の保持体2を、操作部材に対する周囲の任意方向への操作に応じて各種信号の入力を行う多方向入力装置に組み込む場合について説明する。
【0035】
図10は、本実施の形態に係る磁石の着磁方法により着磁された磁石を保持した状態の保持体2が組み込まれる多方向入力装置11の分解斜視図である。図11は、図10に示す多方向入力装置11が有する回動検出機構16aの拡大図である。図12は、図10に示す多方向入力装置11を組み立てた状態の斜視図である。なお、図12においては、説明の便宜上、図10における装置本体の奥側から見た場合の斜視図について示している。
【0036】
図10に示すように、多方向入力装置11は、箱状のケース12内に、同図に示す上下方向に延在する操作部材としての操作軸13と、操作軸13に対する傾動操作に応じて回動する第1の駆動部材(以下、「第1駆動部材」という)14及び第2の駆動部材(以下、「第2駆動部材」という)15と、第1駆動部材4及び第2駆動部材15の回動を検出する回動検出機構16a及び16bと、操作軸13に対する押下操作を検出するスイッチ素子17とを含んで構成され、操作軸13に対する傾動操作及び押下操作に応じた信号出力を行うことが可能となっている。
【0037】
ケース12は、図10に示すように、装置本体の底面部を構成する下側ケース121と、装置本体の所定の構成部品が取り付けられた状態の下側ケース121に上側から被せられる上側ケース122とから構成されている。このような下側ケース121と、上側ケース122との内部には一定の空間が形成される。この空間内に本多方向入力装置11の所定の構成部品が収納される。
【0038】
下側ケース121は、操作軸13の下端部を収容する軸収容部1210が移動可能に支持される底面部1211と、この底面部1211の一辺から装置本体の側方側に突出形成され、スイッチ素子17を収容するスイッチ収容部1212とを有している。底面部1211におけるスイッチ収容部1212が形成された一辺以外の3辺には、後述する第1駆動部材14及び第2駆動部材15の突起部1402等を支持する支持部1213a〜1213cが立設されている。
【0039】
軸収容部1210の上端部には、後述する操作軸13の半球状の凸部1304を収容する凹部1214が形成されている。また、軸収容部1210には、操作軸13を図10に示す上方側に付勢する大径及び小径のスプリング1215a及び1215bが取り付けられている。大径のスプリング1215aは、軸収容部1210の周囲に取り付けられ、小径のスプリング1215bは、凹部1214の周囲に取り付けられる。スイッチ収容部1212には、スイッチ素子17の形状に応じた凹部1212aが形成されている。凹部1212aの角部には、後述するスイッチ素子17の端子1702が貫通する穴部1212bが形成されている。
【0040】
上側ケース122は、図10に示す下方側に開口した形状を有し、円形状の開口部1220が形成された上面部1221と、同図に示す下方側に開口した切り欠き部1222が形成された側面部1223とから構成される。なお、切り欠き部1222は、第1駆動部材14及び第2駆動部材15、並びに、回動検出機構16a、16bの一部を受け入れるようになっている。側面部1223の下端部における角部には、上側ケース122を下側ケース121に固定するための固定片1224が形成されている。これらの固定片1224を下側ケース121の下面側に折り曲げることによって、上側ケース122が下側ケース121に固定される。
【0041】
操作軸13は、例えば、合成樹脂材料などで構成され、胴体部1301と、胴体部1301から図10に示す上方側に延在する軸部1302と、胴体部1301から同図に示す側方側に突出形成された軸支部1303と、胴体部1301から同図に示す下方側に突出する凸部1304とを有している。詳細について後述するように、軸支部1303が第2駆動部材15に軸支されることにより、操作軸13が図10に示す矢印A−B方向及びC−D方向に傾動(揺動)できるように構成されている。
【0042】
第1駆動部材14は、例えば、リン青銅板などで構成される。第1駆動部材14は、プレス加工などにより図10に示す上方側に向かってアーチ状に湾曲形成されており、そのアーチ状部分の長手方向に沿ってスリット孔1401が打ち抜き形成されている。また、第1駆動部材14の長手方向の両端部は、図10に示す下方側に折り曲げられており、その折り曲げられた面から装置本体の側方側に向けて突起部1402が突出形成されている。
【0043】
スリット孔1401は、操作軸13の軸部1302の径と略同一の幅に設定され、この軸部1302が挿通される。突起部1402は、下面が円弧形状を有しており、下側ケース121の支持部1213b及び1213cに収容される。なお、図10に示す装置本体の奥側の突起部1402には、第1駆動部材14と回動検出機構16aとを連結する連結片1403が設けられている。
【0044】
第2駆動部材15は、第1駆動部材14の下方側に、第1駆動部材14に対して直交するように配設されている。第2駆動部材15は、例えば、合成樹脂材料で構成され、外形が略矩形の支持部1501を略中央部に有している。支持部1501は、周囲が4つの側壁1502によって囲まれており、これらの側壁1502に囲まれた内側には、第1駆動部材14のスリット孔1401の長手方向と直交する方向に延びる略矩形状の長溝1503が貫通形成されている。
【0045】
長溝1503の延在方向に沿って延びる(スリット孔1401の長手方向で対向する)一対の側壁1502には、操作軸13の軸支部1303が係合可能な係合部1504が貫通、或いは、所定の深さで凹状に形成されている。係合部1504を有さない残りの一対の側壁1502からは、装置本体の側方側に向けて水平に延びる一対のアーム部1505が設けられている。アーム部1505は、下面が円弧形状を有しており、下側ケース1212の支持部1213aに収容されると共に、後述するスイッチ素子17のボタン部1701の上に載置される。なお、図10に示す装置本体の奥側のアーム部1505には、第2駆動部材15と回動検出機構16bとを連結する連結片1506が設けられている(図10に不図示、図13参照)。
【0046】
回動検出機構16a及び16bは、図10及び図12に示すように、ケース12における直交する側面部1223に取り付けられる。本多方向入力装置11においては、回動検出機構16a及び16bが有する複数の突出片を側面部1223に形成された複数の孔に挿入すると共に、回動検出機構16a及び16bが有する一対の係止片を側面部1223に形成された一対のスリット部に挿入することにより、回動検出機構16a及び16bがケース12の側面部1223に取り付けられる。以下、回動検出機構16aの構成について図11を用いて説明する。なお、回動検出機構16bは、第2駆動部材15に連結されている点を除き、回動検出機構16aと同様の構成を有するため、その説明を省略する。
【0047】
図11に示すように、回動検出機構16aは、本実施の形態に係る着磁方法により着磁された磁石Mと、上述した連続体1から取り外された保持体2と、この保持体2を回転可能に収容するカバー1603と、このカバー1603に取り付けられる基板1604と、基板1604の所定位置に実装される、磁気検出素子としてのGMR素子(巨大磁気抵抗効果素子)1605と、回動検出機構16aによる検出結果を外部に出力するための端子1606とを含んで構成される。
【0048】
回動検出機構16a(16b)においては、保持体2に形成された開口部25aに連結片1403(連結片1506)が係合することで、第1駆動部材14(第2駆動部材15)と連結されるものとなっている。そして、第1駆動部材14の回動に伴って保持体2が回転し、保持体2と共に磁石Mも回転するように構成されている。この場合において、保持体2に保持された磁石Mは、基板1604に実装されるGMR素子1605に対向配置されている。
【0049】
カバー1603は、略矩形状に設けられており、保持体2側の面の中央部分に、磁石Mを一体的に保持した状態の保持体2を回転可能に収容する収容部1603aが形成されている。収容部1603aの中央部分には、円形状の開口部1603bが形成されている。また、カバー1603の角部近傍には、図11に示す左方側に向けて、上側ケース122の側面部1223に形成される孔に挿入される複数の突出片1603cが設けられている。一方、カバー1603の角部近傍には、図11に示す右方側に向けて、基板1604に形成される孔1604aに挿入されてかしめられる複数の挿入片1603dが設けられている。
【0050】
また、収容部1603aの側方側の位置には、図11に示す左方側に向けて延びる一対の係止片1603eが設けられている。係止片1603eの両脇には、図11に示す右方側に延びる切り欠き1603fが形成されており、係止片1603eが一定範囲で揺動可能に構成されている。また、係止片1603eの先端には、テーパ面1603gが形成されており、このテーパ面1603gの終端部にフック部1603hが形成されている。このような構成により、係止片1603eは、ケース12の側面部1223に形成されたスリット部に撓みながら挿入された後に初期位置に復帰し、フック部1603hがスリット部近傍の周縁部と係合する。これにより、カバー1603が上側ケース122の側面部1223に固定される。
【0051】
基板1604は、カバー1603に対応する略矩形状に設けられており、その中央部には、GMR素子1605が実装されている。GMR素子1605は、カバー1603の開口部1603bを介して磁石Mと対向する基板1604上の位置に実装されている。特に、磁石Mにおける中心位置と、GMR素子1605とが一致するように基板1604上の位置に実装されている。また、基板1604の角部近傍には、カバー1603の挿入片1603dに対応する位置に複数の孔1604aが形成されている。また、基板1604の下端部には、端子1606が取り付けられる孔1604bが形成されている。
【0052】
多方向入力装置11においては、保持体2に保持される磁石Mと、この磁石Mと組み合わされるGMR素子1605とで磁気センサを構成している。この磁気センサにおいては、磁石Mによる外部磁界をGMR素子1605に作用させる。そして、GMR素子1605の電気抵抗値の変化を、磁石Mによる外部磁界の向きにより生じさせ、当該GMR素子1605の出力信号からGMR素子1605と磁石Mとの相対変位量(変位角度)を検出する。多方向入力装置11に接続された制御装置は、当該磁気センサで検出される上記相対変位量に基づいて、第1駆動部材14の回動角度を検出することが可能となる。
【0053】
ここで、例えば、磁気に感応して出力信号を出力するGMR素子1605は、基本的な構成として、交換バイアス層(反強磁石層)、固定層(ピン止め磁性層)、非磁性層及び自由層(フリー磁性層)をウエハー(図示せず)上に積層して形成され、巨大磁気抵抗効果を利用したGMR(Giant Magneto Resistance)素子の一種である磁気抵抗効果素子として構成されている。
【0054】
なお、GMR素子1605が巨大磁気抵抗効果(GMR)を発揮するためには、例えば、交換バイアス層がα−Fe層、固定層がNiFe層、非磁性層がCu層、自由層がNiFe層から形成されることが好ましいが、これらのものに限定されるものではなく、磁気抵抗効果を発揮するものであれば、いずれのものであってもよい。また、GMR素子1605は、磁気抵抗効果を発揮するものであれば、上記の積層構造のものに限定されるものではない。
【0055】
スイッチ素子17は、図10に示すように、方形状に設けられており、その上面にボタン部1701が設けられると共に、その下面部から下方側に伸びる複数の端子1702が設けられている。ボタン部1701は、操作軸13に対する押下操作に応じて一定範囲で上下方向に移動可能である。また、端子1702は、スイッチ収容部1212の穴部1212bを介して不図示の基板に挿入される。
【0056】
このような構成を有する多方向入力装置11を組み立てると、図12に示すように、操作軸13の軸部1302の上端部、並びに、第1駆動部材14の上方側の一部をケース12の開口部1220から露出した状態で、各構成部品がケース12内に収納される。また、上側ケース122の直交する側面部1223に、回動検出機構16a及び16bが取り付けられる。なお、これらの回動検出機構16a及び16bを取り付ける際には、上述したように、磁石Mを保持した保持体2をカバー1603に収容した状態で、このカバー1603が有する突出片1603c及び係止片1603eが、側面部1223に形成された孔及びスリット部に挿入される。そして、係止片1603eのフック部1603fがスリット部の周縁と係合することで、回動検出機構16a及び16bが側面部1223に固定される。
【0057】
図13は、図12に示す多方向入力装置11から上側ケース122を取り外した場合の斜視図である。図13に示すように、上側ケース122の内部においては、第1駆動部材14の下方に第2駆動部材15が直交して配設されている。第1駆動部材14の突起部1402の下面が下側ケース121の支持部1213b及び1213cにより支持される一方、第2駆動部材15のアーム部1505の下面が下側ケース121の支持部1213aにより支持されている。そして、これらの突起部1402及びアーム部1505に設けられた連結片1403及び連結片1506が、それぞれ回動検出機構16a及び16bが有する保持体2の開口部25aに係合する。
【0058】
このような構成を有する多方向入力装置11において、操作軸13に対するA−B方向の傾動操作は、第2駆動部材15における図13に示すX−Y方向の回転運動に変換される。一方、操作軸13に対するC−D方向の傾動操作は、第1駆動部材14における同図に示すM−N方向の回転運動に変換される。そして、回動検出機構16a及び16bにより、このような回転運動に応じた磁石Mの回転に基づいて第1駆動部材14及び第2駆動部材15の回動量が検出され、不図示の制御装置にこれに応じた信号出力が行われることとなる。
【0059】
また、操作軸13に対する押下操作が行われると、軸支部1303を介して第2駆動部材15が押し下げられる。これに伴い、第2駆動部材15のアーム部1505によってスイッチ素子17のボタン部1701が押し下げられる。そして、このようなスイッチ素子17により、このような押下操作が検出され、不図示の制御装置にこれに応じた信号出力が行われることとなる。
【0060】
このように多方向入力装置11においては、本実施の形態に係る着磁方法により着磁された磁石Mを保持した状態の保持体2が組み込まれ、保持体2における開口部25aにおいて第1駆動部材14、第2駆動部材15に連結されている。このように、保持体2に保持された状態で着磁された磁石Mを保持体2と共に多方向入力装置11に組み込む場合には、保持体2に別工程で着磁された磁石Mを後から保持させる場合に発生し得る着磁精度の低下を防止することができるので、第1駆動部材14及び第2駆動部材15の回動量の検出精度を高めることが可能となる。
【0061】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0062】
例えば、上記実施の形態においては、保持体2の収納部21の一部を構成する突出片27を変形させて磁石素材7を固定する場合について説明しているが、磁石素材7を固定するために変形させる保持体2の部分については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。このように他部分で磁石素材7を固定する場合においても、接着剤や両面テープ等で取り付ける場合と異なり、保持体2の一部を基準に磁石素材を固定できるので、効果的に保持体2における磁石素材7の位置決めを行うことができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施の形態に係る磁石の着磁方法において用いられる連続体の構成を示す平面図である。
【図2】上記実施の形態に係る連続体に設けられる保持体の構成を示す平面図(同図(a))及び斜視図(同図(b))である。
【図3】上記実施の形態に係る磁石の着磁方法によって着磁される磁石素材の構成を示す平面図(同図(a))及び斜視図(同図(b))である。
【図4】上記実施の形態に係る保持体に磁石素材を保持させた状態の連続体の平面図である。
【図5】図2に示す保持体に磁石素材を保持させた状態の平面図(同図(a))及び斜視図(同図(b))である。
【図6】上記実施の形態に係る磁石素材を保持した保持体の一部を変形させた状態の連続体の平面図である。
【図7】図5に示す保持体の一部を変形させた状態の平面図(同図(a))及び斜視図(同図(b))である。
【図8】上記実施の形態に係る保持体に磁石素材を固定した状態の連続体が配置された着磁装置の斜視図である。
【図9】上記実施の形態に係る保持体に磁石素材を固定した状態の連続体が配置された着磁装置の平面図(同図(a))及び側面図(同図(b))である。
【図10】上記実施の形態に係る磁石の着磁方法により着磁された磁石を保持した状態の保持体が組み込まれる多方向入力装置の分解斜視図である。
【図11】図10に示す多方向入力装置が有する回動検出機構の拡大図である。
【図12】図10に示す多方向入力装置を組み立てた状態の斜視図である。
【図13】図12に示す多方向入力装置から上側ケースを取り外した場合の斜視図である。
【符号の説明】
【0064】
1 連続体
2 保持体
21 収納部
22 内底面部
23 側壁部
23a 突出部
23b 切り欠き部
24 円弧状壁部
25 突出片
25a 開口部
26 開口部
27 突出片
3 外枠部
4 連結部
5 開口部
6 孔
7 磁石素材
71 挿通孔
72 突出面
73 支持面
8 着磁装置
81 着磁ヨーク
82 着磁用コイル
11 多方向入力装置
12 ケース
121 下側ケース
122 上側ケース
13 操作軸
1302 軸部
1303 軸支部
14 第1駆動部材
1401 スリット孔
1402 突起部
1403 連結片
15 第2駆動部材
1501 支持部
1502 側壁
1503 長溝
1504 係合部
1505 アーム部
1506 連結片
16a、16b 回動検出機構
1603 カバー
1604 基板
1605 GMR素子
1606 端子
17 スイッチ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石素材を保持する保持体が連続して設けられた合成樹脂製の連続体を用いた永久磁石の着磁方法であって、
前記保持体に前記磁石素材を保持させる工程と、前記保持体で前記磁石素材を保持した前記連続体を着磁装置に配置して着磁を行う工程とを具備することを特徴とする永久磁石の着磁方法。
【請求項2】
前記磁石素材を保持した前記保持体の一部を変形させて当該磁石素材を固定する工程を具備することを特徴とする請求項1記載の永久磁石の着磁方法。
【請求項3】
前記保持体は、前記磁石素材を収納する収納部を有し、当該収納部を構成する壁部の一部を変形させて前記磁石素材を固定することを特徴とする請求項2記載の永久磁石の着磁方法。
【請求項4】
前記収納部を構成する壁部を弾性的に変形可能とし、当該壁部で前記磁石素材を挟持することを特徴とする請求項3記載の永久磁石の着磁方法。
【請求項5】
前記連続体における複数の前記保持体に保持された複数の前記磁石素材に対して同時に着磁を行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の永久磁石の着磁方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−147214(P2010−147214A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322065(P2008−322065)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)