説明

永久磁石回転電機

【課題】回転電機の形状を軸方向に薄くし軽量化を図り、しかも高出力が得られる永久磁石回転電機を提供することである。
【解決手段】電機子巻線を有する固定子と、前記固定子に対し回転可能に支持されハルバッハ配列された永久磁石を有する回転子からなる回転電機において、前記回転子が回転中心から周方向にハルバッハ配列された2列の永久磁石列を設け、前記永久磁石列の間に前記固定子の電機子巻き線を設け、前記永久磁石列は、それぞれ略三角形の磁石の組み合わせにより構成され、永久磁石列の外側永久磁石の磁極の向きと永久磁石列の内側永久磁石の磁極の向きとが、径方向の磁極の向きについては同一方向で、周方向の磁極向きについては逆方向に向いている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子巻線を有する固定子に対し回転可能に支持された回転子にハルバッハ配列された永久磁石を有する永久磁石回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石をハルバッハ配列した永久磁石回転電機は、径方向にN極とS極を交互に配置した主磁極磁石と、この主磁極磁石の周方向両面に径方向以外(例えば周方向)に着磁された補助磁石を備えたものである(例えば、特許文献1、2参照)。永久磁石をハルバッハ配列した永久磁石回転電機の主磁極磁石と補助磁石とは、全体で略円筒状をなしており、永久磁石をハルバッハ配列にすると、特定の方向の磁力を強めることができる。このハルバッハ配列された永久磁石を有する回転電機は、大きくすることなく高出力化を図ることが可能になる。
【0003】
図14は、従来のハルバッハ配列した永久磁石列を有する回転電機の磁束密度分布を示した磁束密度分布図である。ヨーク鉄心15に電機子巻線4が巻かれており、永久磁石16、電機子巻線4、ヨーク鉄心15の間に磁束が形成される。
【特許文献1】特開2006−320109号公報(第1図)
【特許文献2】特開2004−350427号公報(第1乃至2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のものでは、固定子や回転子に鉄心を用いているため回転電機の質量が重くなり、高出力を図るには、回転電機の軸方向若しくは径方向に長くする必要がある。また、特許文献2のものにおいても、固定子に鉄心を用いているため回転電機の質量が重くなり、高出力を図るには、回転電機の軸方向若しくは径方向に長くする必要がある。
【0005】
この発明の目的は、回転電機の形状を軸方向に薄くし軽量化を図り、しかも高出力が得られる永久磁石回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の永久磁石回転電機は、電機子巻線を有する固定子と、前記固定子に対し回転可能に支持されハルバッハ配列された永久磁石を有する回転子とからなる永久磁石回転電機において、前記回転子が回転中心から周方向にハルバッハ配列された2列の永久磁石列を設け、前記永久磁石列の間に前記固定子の電機子巻線を設け、前記永久磁石列は、それぞれ略三角形の磁石の組み合わせにより構成され、永久磁石列の外側永久磁石の磁極の向きと永久磁石列の内側永久磁石の磁極の向きとが、径方向の磁極の向きについては同一方向で、周方向の磁極向きについては逆方向に向いていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、回転電機の形状を軸方向に薄くし軽量化を図り、しかも高出力化が得られる永久磁石回転電機を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明の実施の形態に係わる永久磁石回転電機1の一例の軸方向断面図である。永久磁石回転電機1は、固定子6に電機子巻線4及びシャフト7が形成され、回転子5に永久磁石列2および永久磁石列3及び軸受14が形成されて構成される。
【0009】
固定子6には、中心にシャフト7と電機子巻線4を取付けるための凸部とが形成されている。電機子巻線4は、例えば三相交流を用いる場合、U相−V相−W相の順に巻かれている。固定子6と回転子5との間には、軸受14が構成されており、回転子5は固定子6の上で回転する構造になっている。回転子5にはハルバッハの配列で構成された略円筒形状の2列の永久磁石列2および永久磁石列3が周方向に設けられている。回転子5は、固定子6に対向する側に凸部を2列有し、回転子5の外側の凸部には永久磁石列(外側)2の永久磁石16を、内側の凸部には永久磁石列(内側)3の永久磁石16が例えば接着等により取付けられている。そして、回転子5に取り付けられた永久磁石列2および永久磁石列3の間に電機子巻線4を配置するように構成されている。
【0010】
図2は、本発明の実施の形態の永久磁石回転電機1の一例の径方向断面図である。回転子5に取り付けられた永久磁石列2および永久磁石列3は、図2に示すような磁極の配列とする。ハルバッハ配列された永久磁石列2および永久磁石列3は、断面形状が略三角形の永久磁石16の組み合わせによって略円筒形状を構成している。永久磁石列2と永久磁石列3は、磁極の向きを径方向、周方向交互に配置されている
永久磁石列2と永久磁石列3は、磁極の向きが径方向の永久磁石16の略三角形の底辺が電機子巻線4側を向くよう配置されることにより構成される。また、永久磁石列2と永久磁石列3は、周方向に隣り合う磁極の向きが径方向の永久磁石16の径方向の磁極が交互になるように配置されることにより構成される。そして、永久磁石列2と永久磁石列3の磁極の向きが径方向の対向する永久磁石16同士は、同方向を向くように配置される。
【0011】
磁極の向きが径方向の永久磁石16の間に配置された磁極の向きが周方向の永久磁石16は、断面形状が略三角形で構成されている。永久磁石列2と永久磁石列3は、磁極の向きが周方向の永久磁石16の略三角形の底辺が永久磁石回転電機1の外側を向くよう配置されることにより構成される。また、永久磁石列2と永久磁石列3は、周方向に隣り合う磁極の向きが周方向の永久磁石16の周方向の磁極が交互になるように配置されることにより構成される。そして、永久磁石列2と永久磁石列3の磁極の向きが周方向の永久磁石16同士は、逆方向を向くように配置される。
【0012】
図3は、略三角形の永久磁石16によりハルバッハ配列の永久磁石列2および永久磁石列3が構成された場合における永久磁石回転電機1の軸方向断面の磁束線の分布図である。これにより、永久磁石列2および永久磁石列3に挟まれた空間の磁束密度の変化は滑らかになり、正弦波状の磁束密度分布を得ることができる。また正弦波状の磁束密度分布により、永久磁石回転電機1の回転時の振動を減少することができる。
【0013】
ここで図17は、従来の永久磁石回転電機1における径方向の磁束密度分布である。従来例の図17と対比すると、図3の磁束密度分布は、多くの磁束が得られることが分かる。また、従来の永久磁石回転電機1ではヨーク鉄心15に電機子巻線を巻いた結果であり、質量増大の要因になっている。このように、回転子5にハルバッハ配列した略円筒形状の2列の永久磁石列2および永久磁石列3を設け、略円筒形状の永久磁石列2および永久磁石列3の間に固定子6の電機子巻線4を設け、永久磁石回転電機1の軸方向の幅を薄くすることができる。
【0014】
ハルバッハ配列した略円筒形状の2列の永久磁石列2および永久磁石列2を構成することで、従来例に比べ磁束密度が大きいことから、永久磁石回転電機1の形状を大きくすることなく高出力化が可能になる。
【0015】
また、永久磁石列2と永久磁石列3は、それぞれ略三角形状の永久磁石16の組合せにより、隣り合う永久磁石16同士が反発することなく略円筒形状を構成することができる。したがって、取付けサポートを使用することなく永久磁石列2と永久磁石列3を製造することが可能となり、製造コストの低減が図れる。
【0016】
次に、永久磁石列2を構成する磁極の向きが径方向の永久磁石16と磁極の向きが周方向の永久磁石16の断面積の関係について説明する。永久磁石列3についても同様である。
【0017】
磁極の向きが径方向の永久磁石16と磁極の向きが周方向の永久磁石16の断面積が同じ、または、磁極の向きが径方向の永久磁石16が磁極の向きが周方向の永久磁石16の断面積よりも小さい場合、図3に示すように、永久磁石列2の外側、及び、永久磁石列3の内側の径方向向きの磁束が減少し、漏れ磁束を減少させることができる
磁極の向きが径方向の永久磁石16が磁極の向きが周方向の永久磁石16の断面積よりも大きい場合、任意の磁路を形成できる。そのため、後述するように、永久磁石回転電機1は、永久磁石列2の外側に強磁性部材12、及び永久磁石列3の内側に強磁性部材13を配置する場合にも、高出力が得られる。
【0018】
図4は本発明の実施の形態に係わる永久磁石回転電機1の他の一例の軸方向断面図である。この図4に示した一例は、図1に示した一例に対し、回転子5にハルバッハ配列した略円筒形状の永久磁石列2および永久磁石列3において、外側の永久磁石列2の径方向の寸法を内側の永久磁石列3の径方向の寸法より長くしたものである。図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0019】
外側の永久磁石列2の径方向の寸法を内側の永久磁石列3の径方向の寸法より長くしたことで、外側の永久磁石列2の永久磁石16の磁束密度を大きくできるため、永久磁石回転電機1の出力(トルク)を大きくすることができる。
【0020】
図5は本発明の実施の形態に係わる永久磁石回転電機1の別の他の一例の軸方向断面図である。この図5に示した一例は、図1に示した一例に対し、回転子5にハルバッハ配列した略円筒形状の永久磁石列2および永久磁石列3の永久磁石16の体積をほぼ同じになるように内側の永久磁石列3の径方向の寸法を外側の永久磁石列2の径方向の寸法より長くしたものである。図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0021】
回転子5にハルバッハ配列した略円筒形状の永久磁石列2および永久磁石列3の体積をほぼ同じになるようにしたことで、それぞれの永久磁石列2および永久磁石列3のエネルギー密度がほぼ同じになり、電機子巻線4を鎖交する磁束が均一化される。これにより、大きい出力(トルク)を得ることができる。
【0022】
次に、ハルバッハ配列された永久磁石列2および永久磁石列3を配置した回転子5は、非磁性金属部材や樹脂部材で形成される。一般的には回転子5は薄い電磁鋼板を積層して構成されるが、加工が容易な非磁性金属部材や樹脂部材とし、回転子5への永久磁石列2および永久磁石列3の取付けを容易にし、さらに軽量化を図るとともに製造コストを削減する。
【0023】
また、電機子巻線4を配置した固定子6についても、非磁性金属部材または樹脂部材で形成する。一般的には固定子6は回転子5と同様に薄い電磁鋼板を積層して構成されるが、加工が容易な非磁性金属部材や樹脂部材とし、軽量化を図るとともに製造コストを削減する。
【0024】
次に、固定子6に配置した電機子巻線4は、集中巻きの巻線またはプリント基板で形成する。図6は、電機子巻線4を集中巻きで形成した場合の永久磁石回転電機1の一部切欠径方向断面図である。図6に示すように、電機子巻線4を集中巻にすることで、巻線を永久磁石列2と永久磁石列3との間に収めることが可能になる。これにより永久磁石回転電機1は電機子巻線4が軸方向に広がらない。また、永久磁石回転電機1の軸方向の長さを薄くすることができる。さらに、予めボビン(図示省略)に電機子巻線4を巻いて置き、固定子6に装着することができるので、製造コストを削減することができる。
【0025】
図7は、電機子巻線4をプリント基板で形成した場合の永久磁石回転電機1の軸方向断面図である。図7に示すように、電機子巻線4をプリント基板11で形成しているので、従来例で用いられる銅線に比べ軽量化することができる。従って、永久磁石回転電機1の小型化や軽量化が図れる。
【0026】
また、固定子6に配置した電機子巻線4は、その電機子巻線に対向する永久磁石面の幅より広く形成してもよい。図8は、電機子巻線4をそれに対向する永久磁石面の幅より広く形成した場合の永久磁石回転電機1の軸方向断面図である。図8に示すように、電機子巻線4の軸方向長さを対向する永久磁石列2および永久磁石列3面の幅より長く(広く)形成している。電機子巻線4の軸方向長さを対向する永久磁石列2および永久磁石列3面の幅より長く(広く)したことで、電機子巻線4に対し、永久磁石列2および永久磁石列3の磁界が鎖交する量を多くすることができ、永久磁石列2および永久磁石列3の磁束を効率よく得ることができる。従って、永久磁石回転電機1の高出力化が図れる。
【0027】
さらに、固定子6に配置した電機子巻線6は、炭素線、超電導線または高温超電導線のいずれかを用いて形成する。電機子巻線4の巻線材料に炭素線を用いた場合には、従来例で用いられる銅線に比べ軽量化することができるため、永久磁石回転電機1の軽量化が図れる。図9は電機子巻線4に超電導線もしくは高温超電導線を用いた場合の永久磁石回転電機1の軸方向断面図である。図9に示すように、超電導線または高温超電導線の電機子巻線は、クライオ8の中に配置されており、クライオ8には低温配管9が接続されている。低温配管9の端部は冷凍機10に接続され、冷凍機10を駆動することでクライオ8の内部が超電導状態を維持できる構成になっている。電機子巻線4の巻線材料に超電導線もしくは高温超電導線を用いていることで、電機子巻線4の電気抵抗をゼロにでき、電流の損失をなくすことができ、永久磁石回転電機1の高出力化が図れる。
【0028】
次に、ハルバッハ配列の永久磁石列に漏れ磁束を減少させるための強磁性部材を設けるようにしてもよい。図10は外側に配置したハルバッハ配列の永久磁石列2の外側に強磁性部材12を備えた場合の永久磁石回転電機1の軸方向断面図である。図10に示すように、外側に配置したハルバッハ配列の永久磁石列2の外側に強磁性部材12が設けられている。
【0029】
図11は内側に配置したハルバッハ配列の永久磁石列3の内側に強磁性部材13を備えた場合の永久磁石回転電機1の軸方向断面図である。図11に示すように、内側に配置したハルバッハ配列の永久磁石列3の内側に強磁性部材13が設けられている。
【0030】
また、図12は外側に配置したハルバッハ配列の永久磁石列2の外側及び内側に配置したハルバッハ配列の永久磁石列3の内側の双方に強磁性部材12、13を備えた場合の永久磁石回転電機1の軸方向断面図である。図12に示すように、外側に配置したハルバッハ配列の永久磁石列2の外側、及び内側に配置したハルバッハ配列の永久磁石列3の内側の双方に強磁性部材12、13が設けられている。強磁性部材12、13及び永久磁石列2および永久磁石列3は、例えば接着により回転子5に接続されている。
【0031】
永久磁石列2の径方向外側と、永久磁石列2の径方向内側とに漏れ磁束が生じる場合、外側強磁性部材12と内側強磁性部材13とを永久磁石列2および永久磁石列3に取付けることで、漏れ磁束は強磁性部材12、13を経由するため、磁束の漏れを減少させることができる。漏れ磁束が減少すれば永久磁石列2および永久磁石列3と電機子巻線4間のギャップ中の磁束を増やすことができる。これにより、漏れ磁束が減少し、ギャップ中の磁束が増加するので、永久磁石回転電機1の高出力化が図れる。
【0032】
次に、永久磁石列2および永久磁石列3が回転による遠心力で回転子5から剥がれを防止するため非磁性部材で形成した永久磁石押さえ機構17を設けてもよい。図13はハルバッハ配列の永久磁石列2および永久磁石列3の永久磁石16に非磁性部材で形成した永久磁石押さえ機構17を備えた場合の永久磁石回転電機1の軸方向断面図である。図13に示すように、ハルバッハ配列の永久磁石列2および永久磁石列3に非磁性部材で形成した永久磁石押さえ機構17が設けられている。
【0033】
また、永久磁石押さえ機構17は、非磁性部材で形成された帯状の板もしくはワイヤーで構成されている。これにより、永久磁石回転電機1が回転中に永久磁石16が固定子6から剥がれたりすることを防止でき、安定的に高出力が得られる。
【0034】
次に、永久磁石列2および永久磁石列3の永久磁石16は、非磁性部材で形成されたケース18の中に収められてもよい。図14はハルバッハ配列の永久磁石列2および永久磁石列3の永久磁石16が非磁性部材で形成されたケース18の中に収められた場合の永久磁石回転電機1の軸方向断面図である。図14に示すように、ハルバッハ配列の永久磁石列2および永久磁石列3が非磁性部材で形成されたケース18の中に収められている。ケースは回転子5に取り付けられている。この場合、永久磁石16をケース18に挿入し製造することから、製造コストの低減が図れる。さらに、ケース18を容易に固定子6に取付けられるため、製造コストの低減が図れる。
【0035】
次に、電機子巻線4は、非磁性部材で形成された巻線の巻取り部材19に集中巻きされ、集中巻きされた巻取り部材19ごと固定子6に取付けられるようにしてもよい。図15は永久磁石16と巻線の巻取り部材19の配置の一例を示した永久磁石回転電機1の径方向断面図である。予め電機子巻線4を非磁性部材で形成された巻取り部材19に集中巻きし、その後、固定子6に取付ける事で製造が容易になり、製造コストの低減が図れる。
【0036】
また、集中巻きされた複数の電機子巻線4は、樹脂で含浸して一体化してもよい。一体化することで取扱いを容易にできるとともに、固定子6への固定も容易にできる。
【0037】
次に、永久磁石列2および永久磁石列3の永久磁石16は、希土類磁石(例えばネオジム磁石)で形成してもよい。または、ネオジム磁石の中にジスプロシウムを添加させたもので形成してもよい。永久磁石に希土類磁石を用いることで磁力が増し、高出力を得ることができる。さらにジスプロシウムはネオジム磁石の磁力を高める働きがあり、ネオジム磁石の中にジスプロシウムを添加した永久磁石16を用いることで高出力化が図れる。
【0038】
次に、永久磁石列2および永久磁石列3の個々の永久磁石16は、磁極の向きが周方向に向いた磁石と磁極の向きが径方向に向いた磁石を別々に回転子5に取付ける製造方法としてもよい。一例として回転子5に永久磁石16の磁極の向きが周方向の永久磁石16を接着等により取付ける。そして、周方向の永久磁石16が回転子5に取付いた後、径方向の永久磁石16を接着等により取付ける。この製造方法によれば、隣接する永久磁石16の磁力の影響を受けることなく永久磁石16を回転子5に取付けることができ、製造コストの削減が図れる。
【0039】
また、一例として、磁極の向きが周方向に向いた永久磁石16を回転子5に取付ける場合、磁極の向きが径方向に向いた永久磁石16を取付ける位置に非磁性部材で形成された磁石取付けサポート20、21を備え、磁石取付けサポート20、21をガイドに永久磁石16を取付ける製造方法としてもよい。図16は周方向の永久磁石列2として永久磁石16を回転子5に取付けるための磁石取付けサポート20、21の一例を示した永久磁石回転電機1の径方向断面図である。上記説明したように、本実施形態では、略三角形状の磁石の組合せにより、隣り合う磁石同士が反発することなく略円筒形状を構成することができるが、磁石取付けサポート20、21をガイドに周方向の永久磁石列2として永久磁石16を取付ける製造方法を用いることでさらに容易に永久磁石16を回転子5に取付けることができる。
【0040】
本発明の実施の形態によれば、永久磁石回転電機1の回転子5と固定子6に鉄心を用いないので軽量化が図れる。ハルバッハ配列された略三角形の永久磁石を配置し、その永久磁石列2および永久磁石列3の間に電機子巻線4を配置するので軸方向の幅を薄くすることができる。また、ハルバッハ配列された略略三角形の永久磁石を2列配置し、効率の良い磁束密度分布にしたことで高出力化が図れる。回転子5と固定子6に鉄心を用いないので、製造が容易になり製造コストを低減することができる。
【0041】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態に係わる永久磁石回転電機の一例の軸方向断面図。
【図2】本発明の実施の形態の永久磁石回転電機の一例の径方向断面図。
【図3】本発明の実施の形態に係わる永久磁石回転電機の磁力線分布の一例を示す磁力線分布図。
【図4】本発明の実施の形態に係わる永久磁石回転電機の他の一例の軸方向断面図。
【図5】本発明の実施の形態に係わる永久磁石回転電機の別の他の一例の軸方向断面図。
【図6】本発明の実施の形態における電機子巻線を集中巻きで形成した場合の永久磁石回転電機の一部切欠径方向断面図。
【図7】本発明の実施の形態における電機子巻線をプリント基板で形成した場合の永久磁石回転電機の軸方向断面図。
【図8】本発明の実施の形態における電機子巻線をそれに対向する永久磁石面の幅より広く形成した場合の永久磁石回転電機の軸方向断面図。
【図9】本発明の実施の形態における電機子巻線に超電導線もしくは高温超電導線を用いた場合の永久磁石回転電機の軸方向断面図。
【図10】本発明の実施の形態における外側に配置したハルバッハ配列の永久磁石列の外側に強磁性部材を備えた場合の永久磁石回転電機の軸方向断面図。
【図11】本発明の実施の形態における内側に配置したハルバッハ配列の永久磁石列の内側に強磁性部材を備えた場合の永久磁石回転電機の軸方向断面図。
【図12】本発明の実施の形態における外側に配置したハルバッハ配列の永久磁石列の外側及び内側に配置したハルバッハ配列の永久磁石の内側の双方に強磁性部材を備えた場合の永久磁石回転電機の軸方向断面図。
【図13】本発明の実施の形態における永久磁石押さえ機構を有する永久磁石回転電機の軸方向断面図。
【図14】本発明の実施の形態における永久磁石を収めるケースを有する永久磁石回転電機の軸方向断面図。
【図15】本発明の実施の形態における永久磁石と巻線の巻取り部材を有する永久磁石回転電機の径方向断面図。
【図16】本発明の実施の形態における永久磁石列の製造方法の一例の永久磁石回転電機の径方向断面図。
【図17】従来のハルバッハ配列した永久磁石列を有する永久磁石回転電機の磁束密度分布を示した磁束密度分布図。
【符号の説明】
【0043】
1…永久磁石回転電機、2…永久磁石列(外側)、3…永久磁石列(内側)、4…電機子巻線、5…回転子、6…固定子、7…シャフト、8…クライオ、9…低温配管、10…冷凍機、11…プリント基板、12…外側強磁性部材、13…内側強磁性部材、14…軸受、15…ヨーク鉄心、16…永久磁石、17…永久磁石押さえ機構、18…ケース、19…巻線の巻取り部材、20…永久磁石取付けサポート(外側)、21…永久磁石取付けサポート(内側)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電機子巻線を有する固定子と、前記固定子に対し回転可能に支持されハルバッハ配列された永久磁石を有する回転子からなる回転電機において、
前記回転子が回転中心から周方向にハルバッハ配列された2列の永久磁石列を設け、前記永久磁石列の間に前記固定子の電機子巻き線を設け、前記永久磁石列は、それぞれ略三角形の磁石の組み合わせにより構成され、永久磁石列の外側永久磁石の磁極の向きと永久磁石列の内側永久磁石の磁極の向きとが、径方向の磁極の向きについては同一方向で、周方向の磁極向きについては逆方向に向いていることを特徴とする永久磁石回転電機。
【請求項2】
前記永久磁石列の個々の永久磁石は、磁極の向きが径方向の永久磁石の略三角形の底辺が、電機子巻線側に向くように配置していることを特徴とする、請求項1に記載の永久磁石回転電機。
【請求項3】
前記永久磁石列の個々の永久磁石は、磁極の向きが径方向のものと、磁極の向きが周方向のものの体積が同じであることを特徴とする、請求項1乃至2のいずれか1項に記載の永久磁石回転電機。
【請求項4】
前記永久磁石列の個々の永久磁石は、磁極の向きが径方向のものの体積が、磁極の向きが周方向のものの体積よりも小さいことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の永久磁石回転電機。
【請求項5】
前記永久磁石列の個々の永久磁石は、磁極の向きが径方向のものの体積が、磁極の向きが周方向のものの体積よりも大きいことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の永久磁石回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−110128(P2010−110128A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280282(P2008−280282)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】