説明

永久磁石型電動機及び圧縮機

【課題】回転子を高イナーシャ化して振動を抑制するとともに、コイルエンドの磁束も利用して出力トルクを高めることができ、小型・高出力・低振動の永久磁石型電動機を提供する。
【解決手段】この発明に係る永久磁石型電動機は、固定子と、固定子の内側に空隙を介して設けられ、永久磁石が設けられる界磁部を有する回転子とを備える永久磁石型電動機であって、回転子は、界磁部の軸方向端部の少なくともいずれか一方の近傍に設けられ、界磁部の外径よりも大きく、固定子のコイルエンドと対向する位置まで拡張され、磁性体で構成される磁性体部を備え、磁性体部と対向する固定子のコイルエンドは、固定子のバックヨーク方向に倒されているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、界磁が電機子の内側に配置され、界磁及び電機子の構造に特徴を有する永久磁石型電動機に関する。また、その永久磁石型電動機が搭載される圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
負荷トルク変動の大きなモータ圧縮機の振動を、トルク制御により低減する方法では、モータトルクTMを負荷トルクTLに近づけるために、電流波形が歪んだ波形となり、モータの効率が低下し、また、制御も複雑になるという課題を有していた。そこで、複雑な制御が無くても、安価で効率が良く、振動の少ないモータ圧縮機を提供することを目的として、モータ圧縮機の駆動軸にモータ部、メカ部以外にイナーシャを追加した構成にしたモータ圧縮機が提案されている。このモータ圧縮機は、慣性モーメントの大きな回転体が大きなエネルギーをもち、速度変動が少なくなるように自動調整が行われ、モータに供給する電流、電圧の変動も少なくなり、効率のよいモータ圧縮機が得られるというものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、トルク及びエネルギー効率を向上させることができる電動機及びその製造方法を提供するために、円周方向に複数のスロットが形成されたステータコア、およびスロットの中に巻装されたステータコイルを有するステータと、ステータにより形成される回転磁界によってモータシャフトのまわりに回転されるロータとを備えた同期モータにおいて、ステータコアの軸方向両外方に位置するステータコイルの両方のコイルエンドの少なくとも一方を、その先端がロータに近接するように、曲げたことを特徴とする電動機が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−304121号公報
【特許文献2】特開2000−278903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、あらゆる製品への適用が増えつつある永久磁石型電動機において、高効率化・高品質化が求められている傾向にある。
【0006】
特に、家電製品として使用される空気調和機などは、屋内外で使用される、もしくは生活に密着している等の理由から、高効率化かつ低騒音化の要求が高く、さらに空気調和機の据付・意匠面などへの要求もある。
【0007】
空気調和機の中で要となる重要な構成要素が、冷媒を圧縮する圧縮機であり、この圧縮機には、回転式圧縮機、スクロール圧縮機、往復式圧縮機等がある。これらの圧縮機は、圧縮機構と、この圧縮機構を駆動する電動機とを備えるが、電動機には一般的に永久磁石型電動機が用いられる。空気調和機に求められる上記のような要求から、圧縮機及び永久磁石型電動機には、高効率・低振動・小型化が常に要求される。
【0008】
ところで、圧縮機は、冷媒を圧縮する工程と、冷媒を吸入する工程とを繰り返すため負荷トルクの変動が大きいとう特徴がある。負荷トルクの変動が大きいと振動・騒音の原因となりやすいが、従来例(例えば、上記特許文献1)では負荷トルクの変動を抑えるため、ロータの軸上にイナーシャを設けている。イナーシャを設けることでロータの慣性モーメントを大きくすることができ、電動機の速度変動(慣性モーメントの逆数に比例)を抑えている。
【0009】
しかしながら、上記ロータに設けられたイナーシャは、ロータに慣性モーメントを付与する機能のみに留まり、モータサイズを短縮した割には圧縮機サイズが大きくなるなど、大型化の要因の一つとなっていた。
【0010】
また、上記特許文献2のように、モータのステータコイルエンドをロータ側に倒した例においては、ロータへの磁束供給量を増やせるものの、フレーム側に磁性部材を取り付ける、もしくは両側を倒す場合にはロータを組込み後にコイルエンドを決まった角度まで倒す等、複雑な構造になる。そのため、コイルの角度調整や磁性部材との位置固定などが困難であった。さらに、軸方向のコイルエンド付近にフレーム等の壁が設けられないような機器(例えば、前述の圧縮機等)においては磁性部材の取り付けそのものが困難となっていた。
【0011】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、回転子を高イナーシャ化して振動を抑制するとともに、コイルエンドの磁束も利用して出力トルクを高めることができ、小型・高出力・低振動の永久磁石型電動機及び圧縮機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係る永久磁石型電動機は、固定子と、固定子の内側に空隙を介して設けられ、永久磁石が設けられる界磁部を有する回転子とを備える永久磁石型電動機であって、
回転子は、界磁部の軸方向端部の少なくともいずれか一方の近傍に設けられ、界磁部の外径よりも大きく、固定子のコイルエンドと対向する位置まで拡張され、磁性体で構成される磁性体部を備え、
磁性体部と対向する固定子のコイルエンドは、固定子のバックヨーク方向に倒されているものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係る永久磁石型電動機は、界磁部の外径よりも大きく、固定子のコイルエンドと対向する位置まで拡張され、磁性体で構成される磁性体部を、回転子の界磁部の軸方向端部の少なくともいずれか一方の近傍に設けることにより、回転子を高イナーシャ化して振動を抑制するとともに、コイルエンドの磁束も利用して出力トルクを高めることができ、小型・高出力・低振動化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態1を示す図で、永久磁石型電動機100の縦断面図。
【図2】実施の形態1を示す図で、永久磁石型電動機100の平面図。
【図3】実施の形態1を示す図で、固定子10の縦断面図。
【図4】実施の形態1を示す図で、固定子10の平面図。
【図5】実施の形態1を示す図で、固定子鉄心11の平面図。
【図6】実施の形態1を示す図で、コイル12の斜視図。
【図7】実施の形態1を示す図で、回転子20の縦断面図。
【図8】実施の形態1を示す図で、界磁部30の平面図。
【図9】実施の形態1を示す図で、ヨーク31の平面図。
【図10】実施の形態1を示す図で、磁性体部40の平面図。
【図11】実施の形態1を示す図で、ロータリ圧縮機500の縦断面図。
【図12】実施の形態1を示す図で、変形例の永久磁石型電動機200の縦断面図。
【図13】実施の形態1を示す図で、磁性体部240の分解正面図。
【図14】実施の形態1を示す図で、磁性体部240の平面図。
【図15】実施の形態1を示す図で、変形例の永久磁石型電動機300の縦断面図。
【図16】実施の形態1を示す図で、コイル312の斜視図。
【図17】実施の形態1を示す図で、変形例の永久磁石型電動機400の縦断面図。
【図18】実施の形態1を示す図で、変形例の永久磁石型電動機600の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
図1、図2は実施の形態1を示す図で、図1は永久磁石型電動機100の縦断面図、図2は永久磁石型電動機100の平面図である。
【0016】
図1、図2を参照しながら永久磁石型電動機100について説明する。永久磁石型電動機100は、例えば、9スロット・6極の磁石埋め込み型(IPM)のブラシレスDCモータである。
【0017】
永久磁石型電動機100は、固定子10と、固定子10の内側に空隙60(例えば、径方向寸法が0.2〜2.0mm程度)を介して配置される回転子20と、を備える。尚、図1、図2におけるその他の符号については、後述する。
【0018】
先ず、固定子10から説明する。図3、図4は実施の形態1を示す図で、図3は固定子10の縦断面図、図4は固定子10の平面図である。固定子10は、固定子鉄心11と、固定子鉄心11に絶縁部(図示せず)を介して巻回されるコイル12と、を備える。コイルエンド12aについては、後述する。
【0019】
図5は実施の形態1を示す図で、固定子鉄心11の平面図である。固定子鉄心11は、全体形状が略ドーナツ状である。固定子鉄心11は、板厚が0.1〜1.5mm程度の電磁鋼板を所定の形状に打ち抜いた後、所定枚数軸方向に積層し、抜きカシメや溶接等により固定して製作される。
【0020】
図5に示すように、固定子鉄心11は、円筒状のコアバック14が外周部に形成されている。このコアバック14から内側に、複数個(ここでは、9個)のティース13が放射状に形成されている。各ティース13の周方向の幅は、略一定である。ティース13の先端部(空隙60側)は、周方向両側に張り出し、張り出し部13aが形成されている。
【0021】
隣接する二つのティース13の間にスロット15(空間)が形成されている。各ティース13の周方向の幅が略一定であるので、スロット15は、内側からコアバック14に向かって周方向の幅が徐々に大きくなっている。スロット15は、空隙60に開口していて、ここをスロット開口部15aと呼ぶ。
【0022】
図6は実施の形態1を示す図で、コイル12の斜視図である。コイル12は、固定子鉄心11のスロット15に収まるように巻回される。コイル12は、後述する回転子20の磁性体部40側の軸方向端部(コイルエンド12a)が、コアバック14側に折り曲げられている。他方の軸方向端部(コイルエンド12b)は、コアバック14側に折り曲げられていない。
【0023】
このように、コイル12は、後述する回転子20の磁性体部40側の軸方向端部(コイルエンド12a)が、コアバック14側に折り曲げられているので、図示しない絶縁部のコアバック14側には、軸方向に向かう壁を設けないのが好ましい。一般の集中巻コイルに使われている絶縁部は、コイル12の巻き乱れを防ぐために壁を設けることが多いが、本実施の形態では、巻線時に、コアバック14側から壁となる治具を当てるなどして、コイル12の巻き乱れを防ぐのが好ましい。
【0024】
図7乃至図10は実施の形態1を示す図で、図7は回転子20の縦断面図、図8は界磁部30の平面図、図9はヨーク31の平面図、図10は磁性体部40の平面図である。
【0025】
次に、図7乃至図10を参照しながら回転子20について説明する。図7に示すように、回転子20は、界磁部30と、界磁部30の一方の軸方向端部の近傍に設けられる磁性体部40と、界磁部30及び磁性体部40を貫通して夫々に固定された軸50と、を備える。
【0026】
図8に示すように、界磁部30は、ヨーク31と、ヨーク31に埋め込まれる複数個(ここでは、6個)の永久磁石32と、を備える。永久磁石32には、希土類焼結磁石(ネオジウム、鉄、ボロンを主成分とする)、フェライト焼結磁石等が用いられる。
【0027】
図9に示すように、ヨーク31は、全体形状が略円筒状である。ヨーク31は、板厚が0.1〜1.5mm程度の電磁鋼板を所定の形状に打ち抜いた後、所定枚数軸方向に積層し、抜きカシメや溶接等により固定して製作される。ヨーク31には、外周縁に沿って、永久磁石32を挿入する複数(ここでは、6個)の磁石挿入孔33が形成されている。6個の磁石挿入孔33は、略六角形をなす。ヨーク31の中心部に、軸50が嵌合する軸孔34が形成されている。
【0028】
磁性体部40は、図7に示すように、界磁部30の一方の軸方向端部の近傍に設けられる。そして、磁性体部40は、界磁部30よりも外径が大きい。磁性体部40の外径は、固定子10の一方のコイルエンド12aと対向する位置まで拡張されている。
【0029】
図10に示すように、磁性体部40は周方向に凹凸形状であり、凸部40aが界磁部30の極間と同位相になるように配置されている。界磁部30は6極であるから、凸部40aも6個形成されている。磁性体部40の中心部に、軸50が嵌合する軸孔40bが形成されている。
【0030】
以上のような構成により、固定子10のコイルエンド12aの磁束を有効に利用することができる。即ち、コイルエンド12aを倒す(コアバック14側に折り曲げる)ことで、電機子電流(固定子電流)が流れたときのコイルエンド12aの鎖交磁束が軸方向を向くことになる。コイルエンド12aの鎖交磁束を、コイルエンド12a近くまで外径を伸ばした回転子20の磁性体部40が拾うことになり、トルクを出力することができる。
【0031】
また、コイルエンド12aをコアバック14側に倒すことにより、固定子鉄心11端面とコイルエンド12aとが近付くので、別途新たな磁性体を設けることなくコイルエンド12a中の透磁率を高めることができ、より多くの磁束を流すことができる。
【0032】
コイルエンド12aと磁性体部40とで発生されるトルクは、リラクタンストルクとなる。一般的に、分布巻の方が大きな突極比を作ることができるため、このケースでは、コイル12は分布巻(例えば、重ね巻)の方がより好ましい。
【0033】
また、回転子20に大径の磁性体部40を設けることで、回転子20の慣性モーメントを容易に向上させることができ、従来のイナーシャの役割(回転数変動を低減する)を十分に果たすことができる。
【0034】
図11は実施の形態1を示す図で、ロータリ圧縮機500の縦断面図である。例えば、図1に示す永久磁石型電動機100を、冷凍空調用圧縮機の一例のロータリ圧縮機500(圧縮機の一例)に搭載する。当該永久磁石型電動機100は、回転子20に磁性体部40を備えることにより、回転子20を高イナーシャ化して振動を抑制するとともに、コイルエンド12aの磁束も利用して出力トルクを高めることができ、小型・高出力・低振動の永久磁石型電動機であるため、優れたロータリ圧縮機500が得られる。
【0035】
以下、図11を参照しながら、図1に示す永久磁石型電動機100を搭載したロータリ圧縮機500(圧縮機の一例)について説明する。
【0036】
図11に示すロータリ圧縮機500は、密閉容器70内が高圧の縦型のものである。密閉容器70内の下部に圧縮要素501が収納される。密閉容器70内の上部で、圧縮要素501の上方に圧縮要素501を駆動する電動要素である永久磁石型電動機100が収納される。
【0037】
密閉容器70内の底部に、圧縮要素501の各摺動部を潤滑する冷凍機油90が貯留されている。
【0038】
先ず、圧縮要素501の構成を説明する。内部に圧縮室が形成されるシリンダ1は、外周が平面視略円形で、内部に平面視略円形の空間であるシリンダ室(図示せず)を備える。シリンダ室は、軸方向両端が開口している。シリンダ1は、側面視で所定の軸方向の高さを持つ。
【0039】
シリンダ1の略円形の空間であるシリンダ室に連通し、半径方向に延びる平行なベーン溝(図示せず)が軸方向に貫通して設けられる。
【0040】
また、ベーン溝の背面(外側)に、ベーン溝に連通する平面視略円形の空間である背面室(図示せず)が設けられる。
【0041】
シリンダ1には、冷凍サイクルからの吸入ガスが通る吸入ポート(図示せず)が、シリンダ1の外周面からシリンダ室に貫通している。
【0042】
シリンダ1には、略円形の空間であるシリンダ室を形成する円の縁部付近(永久磁石型電動機100側の端面)を切り欠いた吐出ポート(図示せず)が設けられる。
【0043】
シリンダ1の材質は、ねずみ鋳鉄、焼結、炭素鋼等である。
【0044】
ローリングピストン2が、シリンダ室内を偏心回転する。ローリングピストン2はリング状で、ローリングピストン2の内周が軸50の偏心軸部50aに摺動自在に嵌合する。
【0045】
ローリングピストン2の外周と、シリンダ1のシリンダ室の内壁との間は、常に一定の隙間があるように組立られる。
【0046】
ローリングピストン2の材質は、クロム等を含有した合金鋼等である。
【0047】
ベーン3がシリンダ1のベーン溝内に収納され、背圧室に設けられるベーンスプリング8でベーン3が常にローリングピストン2に押し付けられている。ロータリ圧縮機500は、密閉容器70内が高圧であるから、運転を開始するとベーン3の背面(背圧室側)に密閉容器70内の高圧とシリンダ室の圧力との差圧による力が作用するので、ベーンスプリング8は主にロータリ圧縮機500の起動時(密閉容器70内とシリンダ室の圧力に差がない状態)に、ベーン3をローリングピストン2に押し付ける目的で使用される。
【0048】
ベーン3の形状は、平たい(周方向の厚さが、径方向及び軸方向の長さよりも小さい)略直方体である。
【0049】
ベーン3の材料には、高速度工具鋼が主に用いられている。
【0050】
主軸受け4は、軸50の主軸部50b(偏心軸部50aより上の部分で、回転子20に嵌合する部分)に摺動自在に嵌合するとともに、シリンダ1のシリンダ室(ベーン溝も含む)の一方の端面(永久磁石型電動機100側)を閉塞する。
【0051】
主軸受け4は、吐出弁(図示せず)を備える。但し、主軸受け4、副軸受け5のいずれか一方、または、両方に付く場合もある。
【0052】
主軸受け4は、側面視略逆T字状である。
【0053】
副軸受け5が、軸50の副軸部50c(偏心軸部50aより下の部分)に摺動自在に嵌合するとともに、シリンダ1のシリンダ室(ベーン溝も含む)の他方の端面(冷凍機油90側)を閉塞する。
【0054】
副軸受け5は、側面視略T字状である。
【0055】
主軸受け4、副軸受け5の材質は、シリンダ1の材質と同じで、ねずみ鋳鉄、焼結、炭素鋼等である。
【0056】
主軸受け4には、その外側(永久磁石型電動機100側)に吐出マフラ7が取り付けられる。主軸受け4の吐出弁から吐出される高温・高圧の吐出ガスは、一端吐出マフラ7に入り、その後吐出マフラ7から密閉容器70内に放出される。但し、副軸受け5側に吐出マフラ7を持つ場合もある。
【0057】
密閉容器70の横に、冷凍サイクルからの低圧の冷媒ガスを吸入し、液冷媒が戻る場合に液冷媒が直接シリンダ1のシリンダ室に吸入されるのを抑制する吸入マフラ51が設けられる。吸入マフラ51は、シリンダ1の吸入ポートに吸入管52を介して接続する。吸入マフラ51本体は、溶接等により密閉容器70の側面に固定される。
【0058】
密閉容器70には、電力の供給源である電源に接続する端子74(ガラス端子という)が、溶接により固定されている。図11の例では、密閉容器70の上面に端子74が設けられる。端子74には、電動要素である永久磁石型電動機100からのリード線73が接続される。
【0059】
密閉容器70の上面に、両端が開口した吐出管75が嵌挿されている。圧縮要素501から吐出される吐出ガスは、密閉容器70内から吐出管75を通って外部の冷凍サイクルへ吐出される。
【0060】
ロータリ圧縮機500の一般的な動作について説明する。端子74、リード線73から電動要素である永久磁石型電動機100の固定子10に電力が供給されることにより、回転子20が回転する。すると回転子20に固定された軸50が回転し、それに伴いローリングピストン2はシリンダ1のシリンダ室内で偏心回転する。シリンダ1のシリンダ室とローリングピストン2との間の空間は、ベーン3によって2分割されている。軸50の回転に伴い、それらの2つの空間の容積が変化し、片側はだんだん容積が広がることにより吸入マフラ51より冷媒を吸入し、他側は容積が除々に縮小することにより、中の冷媒ガスが圧縮される。圧縮された吐出ガスは、吐出マフラ7から密閉容器70内に一度吐出され、更に電動要素である永久磁石型電動機100を通過して密閉容器70の上面にある吐出管75より密閉容器70外へ吐出される。
【0061】
電動要素である永久磁石型電動機100を通過する吐出ガスは、例えば、図示しない永久磁石型電動機100の回転子20の風穴部(貫通孔)、固定子10のスロット開口部(図示せず)含む空隙60(図1参照)等を通る。
【0062】
図12は実施の形態1を示す図で、変形例の永久磁石型電動機200の縦断面図である。図12に示す変形例の永久磁石型電動機200は、磁性体部240が永久磁石型電動機100と異なる。その他の構成は、同じである。
【0063】
変形例の永久磁石型電動機200は、固定子210と、回転子220と、を備える。
【0064】
固定子210は、永久磁石型電動機100の固定子10と同様の構成である。従って、説明は省略する。
【0065】
回転子220は、界磁部230と、界磁部230の一方の軸方向端部の近傍に設けられる磁性体部240と、界磁部230及び磁性体部240を貫通して夫々に固定された軸250と、を備える。
【0066】
界磁部230、軸250は、回転子20(図7)の界磁部30、軸50と同じである。
【0067】
図13、図14は実施の形態1を示す図で、図13は磁性体部240の分解正面図、図14は磁性体部240の平面図である。磁性体部240は、円板状で界磁部230に対向する面に第2の永久磁石255を収納する複数(界磁部の極数分:6個)の凹部240cが形成されている。第2の永久磁石255は、界磁部230の極中心と同位相になるように配置される。
【0068】
コイルエンド212aと磁性体部240とで発生するトルクは、マグネットトルクである。
【0069】
図15、図16は実施の形態1を示す図で、図15は変形例の永久磁石型電動機300の縦断面図、図16はコイル312の斜視図である。
【0070】
図15、図16を参照しながら、変形例の永久磁石型電動機300について説明する。変形例の永久磁石型電動機300は、回転子320が界磁部330の軸方向両端部の近傍に、磁性体部340を備える。磁性体部340は、図10に示す磁性体部40と同じものである。
【0071】
図16に示すように、コイル312は、二つのコイルエンド312aがコアバック314(図示せず、コアバック14と同じ)側に折り曲げられている。
【0072】
以上のような構成により、固定子310のコイルエンド312aの磁束をさらに有効に利用することができる。コイルエンド312aの鎖交磁束を、コイルエンド312a近くまで外径を伸ばした回転子320の二つの磁性体部340が拾うことになり、永久磁石型電動機100よりも大きなリラクタンストルクを出力することができる。
【0073】
また、回転子320に大径の磁性体部340を設けることで、回転子320の慣性モーメントをさらに向上させることができ、従来のイナーシャの役割(回転数変動を低減する)を十分に果たすことができる。
【0074】
尚、変形例の永久磁石型電動機300の場合は、いずれか一方の磁性体部340は、固定子310と回転子320とを組込み後に組み合わせる必要がある。
【0075】
図17は実施の形態1を示す図で、変形例の永久磁石型電動機400の縦断面図である。永久磁石型電動機400は、回転子420が界磁部430の軸方向両端部の近傍に、磁性体部440を備える。磁性体部440は、図13に示す磁性体部240と同じものである。即ち、磁性体部440は、円板状で界磁部430に対向する面に第2の永久磁石455を収納する複数(界磁部の極数分:6個)の凹部440cが形成されている。第2の永久磁石455は、界磁部430の極中心と同位相になるように配置される。
【0076】
コイルエンド412aと磁性体部440とで発生するマグネットトルクは、永久磁石型電動機200に比べ倍増する。
【0077】
また、永久磁石型電動機200に比べ、回転子420の慣性モーメントをさらに向上させることができる。
【0078】
図18は実施の形態1を示す図で、変形例の永久磁石型電動機600の縦断面図である。変形例の永久磁石型電動機600は、回転子620が界磁部630の軸方向両端部の近傍に、二種類の磁性体部640を備える。一方の磁性体部640は、図10に示す磁性体部40と同じものである。磁性体部640は周方向に凹凸形状であり、凸部640a(図示せず)が界磁部630の極間と同位相になるように配置されている。界磁部630は6極であるから、凸部640aも6個形成されている。
【0079】
また、他方の磁性体部640は、図13に示す磁性体部240と同じものである。図13に示す磁性体部240と同様の他方の磁性体部640は、円板状で界磁部630に対向する面に第2の永久磁石655を収納する複数(界磁部の極数分:6個)の凹部640cが形成されている。第2の永久磁石655は、界磁部630の極中心と同位相になるように配置される。
【0080】
以上のような構成により、コイルエンド612aの鎖交磁束を、コイルエンド612a近くまで外径を伸ばした回転子620の一方の磁性体部640が拾うことになり、リラクタンストルクを出力することができる。
【0081】
また、コイルエンド612aと他方の磁性体部640(第2の永久磁石655を有する)とでマグネットトルクを発生する。
【0082】
また、永久磁石型電動機100に比べ、回転子620の慣性モーメントをさらに向上させることができる。
【0083】
尚、本実施の形態では、回転子が磁石埋め込み型(IPM)の例を示したが、表面配置型(SPM)でも良い。
【符号の説明】
【0084】
1 シリンダ、2 ローリングピストン、3 ベーン、4 主軸受け、5 副軸受け、7 吐出マフラ、8 ベーンスプリング、10 固定子、11 固定子鉄心、12 コイル、12a コイルエンド、12b コイルエンド、13 ティース、13a 張り出し部、14 コアバック、15 スロット、15a スロット開口部、20 回転子、30 界磁部、31 ヨーク、32 永久磁石、33 磁石挿入孔、34 軸孔、40 磁性体部、40a 凸部、40b 軸孔、50 軸、50a 偏心軸部、50b 主軸部、50c 副軸部、51 吸入マフラ、52 吸入管、60 空隙、70 密閉容器、73 リード線、74 端子、75 吐出管、90 冷凍機油、100 永久磁石型電動機、200 永久磁石型電動機、210 固定子、212a コイルエンド、220 回転子、230 界磁部、240 磁性体部、250 軸、255 第2の永久磁石、300 永久磁石型電動機、312 コイル、312a コイルエンド、314 コアバック、320 回転子、330 界磁部、340 磁性体部、400 永久磁石型電動機、420 回転子、430 界磁部、440 磁性体部、440c 凹部、455 第2の永久磁石、500 ロータリ圧縮機、501 圧縮要素、600 永久磁石型電動機、620 回転子、630 界磁部、640 磁性体部、640a 凸部、640c 凹部、655 第2の永久磁石。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と、前記固定子の内側に空隙を介して設けられ、永久磁石が設けられる界磁部を有する回転子とを備える永久磁石型電動機であって、
前記回転子は、前記界磁部の軸方向端部の少なくともいずれか一方の近傍に設けられ、当該界磁部の外径よりも大きく、前記固定子のコイルエンドと対向する位置まで拡張され、磁性体で構成される磁性体部を備え、
前記磁性体部と対向する前記固定子のコイルエンドは、前記固定子のバックヨーク方向に倒されていることを特徴とする永久磁石型電動機。
【請求項2】
前記磁性体部は周方向に凹凸形状であり、前記界磁部の極間と同位相になるように配置される、前記界磁部の極数と同数の凸部を備えることを特徴とする請求項1記載の永久磁石型電動機。
【請求項3】
前記磁性体部は、前記界磁部側の面に前記界磁部の極数と同数の凹部を有し、前記凹部に第2の永久磁石が前記界磁部の極中心と同位相になるように設けられることを特徴とする請求項1記載の永久磁石型電動機。
【請求項4】
前記固定子のコイルは、重ね巻の分布巻であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の永久磁石型電動機。
【請求項5】
前記固定子のコイルは、集中巻であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の永久磁石型電動機。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の永久磁石型電動機が搭載されたことを特徴とする圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−124976(P2012−124976A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271092(P2010−271092)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】