説明

汎用エンジン用気化器

【課題】汎用エンジン用気化器について、ダブルメインノズル構造のエンジン始動性を確保しつつ、より部品点数の少ない簡易な気化器とすることにより、製造工程の簡易化とコストカットを実現する。
【解決手段】吸気通路2が形成された胴体1の下方の定燃料室20に垂設されたメインノズル32が先端開口部を前記吸気通路2のベンチュリ部4に配置されており、且つ、前記定燃料室20における前記メインノズル32の下端に連通したメインジェット34の下方にニードル弁体31を進退可能に挿入した燃料遮断弁28が設けられている汎用エンジン用気化器において、前記遮断弁28を形成する前記ニードル弁体31が、前記メインジェット34に差し込まれて燃料遮断の状態のときに、その先端が、前記メインノズル32の少なくともメインウェル室35の位置を越えて更に上方に位置する長さとすることで、ニードル弁としての弁機能とメインノズル32における燃料の導杆の役割を兼ね備えたものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汎用エンジンの燃料供給に用いられる気化器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図2に示すような気化器が汎用エンジン用の気化器として用いられている。
【0003】
前記図2に示した汎用エンジン用の気化器は、胴体1上側には、前後に貫通した横向きの吸気通路2を有しており、この吸気通路2には、入口から出口に向かって順にチョーク弁3、ベンチュリ4、絞り弁5が設けられている。
【0004】
チョーク弁3および絞り弁5の各弁軸3a,5a、は胴体1に形成した軸受孔に嵌装支持されており、これらの軸端に団結したチョーク弁レバー(図示せず)、絞り弁レバー(図示せず)によってチョーク弁3、絞り弁5が開閉動作する。
【0005】
また、胴体1上側には、吸気通路2の通路長を直径とする円形の下面が形成されている。
【0006】
次に、胴体1下側の燃料容器21は、吸気通路2の通路長を直径とする円形の下面と略同一径を有する碗形であって、前記吸気通路部分とは、例えば、ねじを挿通して締め付けることによって、燃料容器21が胴体1に結合されている。
【0007】
燃料容器21の内部は定燃料室20を形成しており、その中心部分に主燃料通路33を有する柱状部分が差し込まれている。定燃料室20には、ピン23に片持ち式に支持させた浮子24が装入されており、この浮子24に取り付けた燃料弁25が弁座体26に嵌め込まれている。
【0008】
また、燃料タンク(図示せず)から燃料ポンプ(図示せず)を経て送られてくる燃料は、胴体1の側方に突出させた接手管(図示せず)から接続される燃料供給通路によって弁座体26の入口に達し、定燃料室20の油面変化に伴って上下動する浮子24に連動した燃料弁25の開閉動作に応じて定燃料室20に供給される。このことにより、定燃料室20に一定量の燃料が保有される。
【0009】
次に、主な燃料の流れとしては、燃料遮断弁がイグニッションスイッチと連動して作動し、磁力によりニードル弁部が押し下げられることで、主燃料通路は開放状態になる。ここで、メインジェット34において計量された燃料はメインウェル室35を通過し、ダブルメインノズルのインナーパイプ36に流入し、メインノズル32にて空気とミキシングされ、チョーク弁3によりベンチュリ4に供給される空気により生じた負圧によりエンジンに吸気される。
【0010】
ここで、燃料供給路において、メインノズルを二重構造として、内側に挿入したインナーパイプが導管の役割を果たすことによって、燃料の供給と空気とのミキシングが向上し、エンジンの始動性が向上すること、更には、霧化性の向上や高負荷運転後のソーク中に、メインウェル内で発生するベーパロックの発生を抑制する効果があることは知られている(実開平6−60753号公報)。
【0011】
しかしながら、図2に示したメインノズルとインナーパイプにした結果、部品点数が増加し、組み込み作業の複雑化を招き、生産性の低下や、全体的なコストの上昇を避けるこ
とができないなどの問題から、ダブルメインノズルを用いた気化器の導入が進んでいないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実開平6−60753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記のような問題点を解決することを課題としてなされたものであり、従来気化器のメインノズルにインナーパイプを挿設したのと同じ機能性を維持した状態で、部品点数及び組み立て工数を減らし、より安価で高性能の気化器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するため、本発明は、吸気通路が形成された胴体の下方に配置された定燃料室に垂設されるメインノズルが先端開口部を前記吸気通路のベンチュリ部に配置されており、且つ、前記定燃料室における前記メインノズルの下端に連通したメインジェットの下方にニードル弁体を進退可能に挿入した燃料遮断弁が設けられている汎用エンジン用気化器において、前記遮断弁を形成する前記ニードル弁体が、前記メインジェットに差し込まれて燃料遮断の状態のときに、その先端が、少なくとも前記メインノズルの下端のメインウェル位置を越えて更に上方に位置する長さを有していることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記ニードル弁体が、前記メインジェットとの間で弁機能を発揮するニードル弁下部と、その上方に連設して前記メインノズルにおいて、燃料の導杆としての機能を発揮するニードル弁上部とからなることを特徴とする。
【0016】
更に、本発明は、前記メインノズルが、大径のメインノズル本体とその上端に連設された小径の吸気通路への突出管とからなり、前記ニードル弁体は、前記メインジェットを遮断した状態で、その先端が前記メインノズル本体の上方に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、従来の気化器と異なり、ニードル部とインナーパイプを別々に製造し組み込む必要が無いため、加工工程を減らすことができるとともに、部品点数も少なくなることから、エンジンの始動性を維持した状態で製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかる気化器の断面図。
【図2】従来のダブルメインノズル構造を持った汎用エンジン用気化器。
【図3】本発明品と従来品とのエンジン始動比較試験のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面に基づいて、本発明の実施例を説明する。なお、本発明の気化器全体の構成については、図2に示した従来例と同様の構成である。
【0020】
図1に示した本発明の気化器は、一般にアルミニウムのダイカスト鋳造品で作られた胴体1からなり、前後に貫通した横向きの吸気通路2を有し、この吸気通路2には、入口から出口に向かって順にチョーク弁3、ベンチュリ4、絞り弁5が設けられている。チョーク弁3および絞り弁5の各弁軸3a,5a、は胴体1に形成した軸受孔に嵌装支持されており、これらの軸端に団結したチョーク弁レバー(図示せず)、絞り弁レバー(図示せず
)によってチョーク弁3、絞り弁5が開閉動作することは、従来の図2に示した気化器と同様であり、また、胴体1には吸気通路2の通路長を直径とする円形の下面が形成されている。
【0021】
燃料容器21は、吸気通路2の通路長を直径とする円形の下面と略同一径を有する碗形であって、前記吸気通路部分とは、例えば、ねじを挿通して締め付けることによって、燃料容器21が胴体1上側に結合されている。
【0022】
燃料容器21の内部は定燃料室20を形成しており、その中心部分に主燃料通路33を有する柱状部分が差し込まれている。定燃料室20には、ピン23に片持ち式に支持させた浮子24が装入されており、この浮子24に取り付けた燃料弁25が弁座体26に嵌め込まれている。
【0023】
燃料タンク(図示せず)から燃料ポンプ(図示せず)を経て送られてくる燃料は、胴体1の側方に突出させた接手管(図示せず)から接続される燃料供給通路によって弁座体26の入口に達し、定燃料室20の油面変化に伴って上下動する浮子24に連動した燃料弁25の開閉動作に応じて定燃料室20に供給される。このことにより、定燃料室20に一定量の燃料が保有されることは図2に示した気化器と同様である。
【0024】
定燃料室の中心部にメインノズル32の、主燃料通路33が形成されているメインノズル本体33aと吸気通路への突出管32bとからなる構造は、図2と同様である。
【0025】
本発明においては、図2のダブルメインノズル構造の特徴であるインナーパイプ36をなくし、その代わりに燃料遮断弁28の上端に位置するニードル弁部31をメインジェット34を突出して延長し、メインノズル32aの上方までの高さとしている。本実施例においては、図2の従来例においてインナーパイプ36が設置されていた高さまでニードル弁を延ばして実施したが、燃料の導管としてのインナーパイプと同様の働きが可能であれば、この位置に限定されるものではない。
【0026】
ここで、ニードル弁部31は、メインジェット34に挿入され弁機能を発揮する上部31aとその上方に連設してメインノズルにおいて燃料の導杆としての機能を発揮する下部31bから形成され、燃料カット弁28の上端から、メインジェットを突出してメインノズル上方へ達している。
【0027】
エンジン停止時においては、燃料遮断弁により、ニードル弁31aがメインジェット34を閉塞し燃料を遮断することで、エンジンは停止状態となる。
【0028】
エンジン稼動時には、気化器の燃料遮断弁に通電が起こり、ニードル弁部31が磁力により、押し下げられ、ニードル弁31aが下がり、メインジェット34を開放し燃料がメインウェル室35を満たす。
【0029】
加えて、チョーク弁3からベンチュリ4に供給される空気により生じた負圧でエンジンに吸気される。燃料は前記ベンチュリ4から生じた負圧により、ニードル弁上部31bを伝いながら、ダブルメインノズルのインナーパイプ36と同様の効果を得て、メインノズル32にて空気と混合され、エンジンに吸気される。
【0030】
なお、燃料遮断弁28のニードル部31をセンタリングする為、エンジン停止時はニードル弁下部31aにて、エンジン稼動時は燃料遮断弁28のシート29にて、テーパータッチとなるようにした。
【0031】
図3は、同一の空燃比(A/F12.0)にセットされた図2に示すダブルメインノズル構造を有する従来品と、本発明品にて、エンジン始動性の試験の結果をまとめたグラフである。
【0032】
この結果、本発明の気化器においても、従来のダブルメインノズル構造を有する気化器と同様のエンジン始動性がみられた。具体的には、本発明の気化器を用いたエンジンは、エンジン始動試験開始後、約7秒後にエンジンの回転数が3600回転を越え、その後は安定した運転状態を保つことができた。この結果は、従来のダブルメインノズル構造を有する気化器を用いて行ったエンジン始動実験の結果とほぼ同一の結果を示した。
【0033】
したがって、従来品と本発明品で、エンジンの始動性能に差異が見られなかったことから、本発明の気化器の性能が従来品に同程度であると判断できた。
【0034】
ニードル弁31を上記のような構成とした本発明の実施の形態によれば、従来のダブルメインノズル構造のように、インナーパイプを必要とすることなく、始動性にすぐれた気化器を部品点数の増加を伴うことなく製造することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 胴体、2 吸気通路、3 チョーク弁、3a 弁軸(チョーク弁)、4 ベンチュリ、5 絞り弁、5a 弁軸(絞り弁)、20 定燃料室、21 燃料容器、23 ピン、24 浮子、25 燃料弁、26 弁座体、28 燃料遮断弁(メインカットソレイド)、29 メインカットソレイドシート、30 弁室、31 ニードル弁、31a ニードル弁上部、31b ニードル弁下部、32 メインノズル、32a メインノズル上部、32b メインノズル下部、33 主燃料通路、34 メインジェット、35 メインウェル室、36 インナーパイプ、41 低速燃料通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気通路が形成された胴体の下方に配置された定燃料室に垂設されるメインノズルが先端開口部を前記吸気通路のベンチュリ部に配置されており、且つ、前記定燃料室における前記メインノズルの下端に連通したメインジェットの下方にニードル弁体を進退可能に挿入した燃料遮断弁が設けられている汎用エンジン用気化器において、前記遮断弁を形成する前記ニードル弁体が、前記メインジェットに差し込まれて燃料遮断の状態のときに、その先端が、少なくとも前記メインノズルの下端のメインウェル位置を越えて更に上方に位置する長さを有していることを特徴とする汎用エンジン用気化器。
【請求項2】
前記ニードル弁体が、前記メインジェットとの間で弁機能を発揮するニードル弁下部と、その上方に連設して前記メインノズルにおいて、導杆としての機能を発揮するニードル弁上部とからなることを特徴とする請求項1に記載の汎用エンジン用気化器。
【請求項3】
前記メインノズルが、大径のメインノズル本体とその上端に連設された小径の吸気通路への突出管とからなり、前記ニードル弁体は、前記メインジェットを遮断した状態で、その先端が前記メインノズル本体の上方に位置することを特徴とする請求項1または2に記載の汎用エンジン用気化器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−87737(P2013−87737A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231158(P2011−231158)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000153122)株式会社ニッキ (296)