説明

汎用バイスユニット

【課題】 種々の形状で重量のある種々の被加工物を確実に把持することができる汎用バイスユニットを目的とする。
【解決手段】 クランプピン7を装着する多数のクランプユニット5を、ワークのサイズや形状に応じてアタッチメント6に位置変更自在に取付ける汎用バイスユニットであって、アタッチメント6に挟持されるクランプユニット5の上面に鋸歯状の上部係合溝5aを形成し、クランプユニット5の下面に前記上部係合溝5aと直交する鋸歯状の下部係合溝5bを形成するとともに、アタッチメント6の天井面にクランプユニット5の上部係合溝5aと位置調整自在に係合できる鋸歯状の下向き係合溝6aを形成し、アタッチメント6の床面にクランプユニット5の下部係合溝5bと位置調整自在に係合できる鋸歯状の上向き係合溝6bを形成するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に鋳造品のような重量のある被加工物を把持するのに最適な汎用バイスユニットである。
【背景技術】
【0002】
従来、多種多様な形状の被加工物を把持するバイス装置としては、複数のスプリングバイスをベース部材に任意位置に着脱自在に固定するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、スプリングバイスはベース部材に形成されたねじ孔にねじ止めされるため、種々の形状で重量がある被加工物をバランスよく確実に把持するには多数のスプリングバイスを形状に応じて配設する必要がある。しかし、このためにスプリングバイス取付用のねじ孔をベース部材に多数適正な位置に形成しなければならず、加工数が増し製造コストの上昇を招くという問題がある。また、ベース部材に形成されるねじ孔が近接しすぎるとベース部材の強度が不足して重量物の把持に適さなくなるという問題があるうえに、スプリングバイスの取付位置は変更できないので被加工物の形状に応じた専用のバイス装置となり汎用性がないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−71176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、種々の形状で重量のあるワークを確実に把持することができるバイス装置を構成することができる汎用バイスユニットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、クランプピンを装着する多数のクランプユニットを、ワークのサイズや形状に応じてアタッチメントに位置変更自在に取付ける汎用バイスユニットであって、アタッチメントに挟持されるクランプユニットの上面に上部係合溝を形成し、クランプユニットの下面に前記上部係合溝と直交する下部係合溝を形成するとともに、アタッチメントの天井面にクランプユニットの上部係合溝と位置調整自在に係合できる下向き係合溝を形成し、アタッチメントの床面にクランプユニットの下部係合溝と位置調整自在に係合できる上向き係合溝を形成したことを特徴とする汎用バイスユニットである。
【0007】
なお、クランプユニットに装着されるクランプピンを突き出し方向に付勢する与圧機構を設けたものとしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、アタッチメントに挟持されるクランプユニットの上面に上部係合溝を形成し、クランプユニットの下面に前記上部係合溝と直交する下部係合溝を形成するとともに、アタッチメントの天井面にクランプユニットの上部係合溝と位置調整自在に係合できる下向き係合溝を形成し、アタッチメントの床面にクランプユニットの下部係合溝と位置調整自在に係合できる上向き係合溝を形成したものとしているため、多数のクランプユニットの位置を前後左右細かく調整して組み合わせることにより、種々の形状のワークを多数のクランプユニットのクランプピンで確実にクランプすることができる。また、アタッチメントやクランプユニットは同じでよいので、製造コストを大幅に低減できるうえに、部品管理や修理作業も容易なものとなる。
【0009】
また、クランプユニットに装着されるクランプピンを突き出し方向に付勢する与圧機構を設けて、アタッチメントに係合溝を介してクランプユニットを配置することにより各クランプピンが全て一定の押圧力でワークをクランプできず、クランプピンがワークに必要以上に強く圧接されてワークを傷つけたり、ワークへの圧接力が弱くなってクランプが不安定になったりすることを防止する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の好ましい実施形態を示す平面図である。
【図2】同じく縦断面図である。
【図3】アタッチメントの縦断面図である。
【図4】同じく正面図である。
【図5】同じく横断面図である。
【図6】アタッチメントの分解斜視図である。
【図7】シリンダブロックのクランプ状態を示す平面図である。
【図8】同じくクランプ状態を示す側面図である。
【図9】与圧機構を油圧式とした場合の油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の好ましい実施形態を組み込んだバイス装置に基づいて詳細に説明する。
図1、2において、1はシリンダブロック等の重量のあるワークWをクランプするバイス装置であり、該バイス装置1は対向する一対のバイスユニット2を減速機付モータ3により駆動される偏心カム機構4により連動させて接離させることによりワークWをクランプしたり、クランプ解除したりする。
【0012】
前記バイスユニット2は多数のクランプユニット5と、該クランプユニット5を上下から位置調整自在に挟持するアタッチメント6とからなり、クランプユニット5の上面には鋸歯状の上部係合溝5aが形成されるとともに、クランプユニット5の底面には前記上部係合溝5aと直交する方向に鋸歯状の下部係合溝5bが形成される。実施形態においては、クランプユニット5の上部係合溝5aはY方向(図面上前後方向)に形成され、下部係合溝5bはX方向(図面上左右方向)に形成されるが、交差する斜め溝としてもよいことはいうまでもない。
【0013】
また、クランプユニット5を位置調整自在に挟持する天板と底板とからなるアタッチメント6の天井面には鋸歯状の下向き係合溝6aがY方向に形成され、アタッチメント6の床面には鋸歯状の上向き係合溝6bがX方向に形成されるので、クランプユニット5は上面の上部係合溝5aによりアタッチメント6の天井面に対してY方向に位置調整自在とされる。また、クランプユニット5は下面の下部係合溝5bによりアタッチメント6の床面に対してはX方向に位置調整自在とされる。各クランプユニット5の上部及び下部に形成される係合溝の始端と終端を同形状とすれば、隣接するクランプユニット5同士を密接させる位置まで近接させて配置することができる。
【0014】
また、アタッチメント6の下向き係合溝6aと上向き係合溝6bに係合する上部係合溝5aと下部係合溝5bとを断面形状を鋸歯状とすることにより表面積を小さくし、摩擦抵抗を減少させて位置調整スライドが円滑に行えるようにしているが、断面形状をレンチキュラー状としても同様の効果があるが、断面形状を必ずしも表面積を減らした鋸歯状あるいはレンチキュラー形状とする必要はなく凹凸状としてもよい。また、下向き係合溝6aと上向き係合溝6bを交差する斜め溝としてもよいことはいうまでもない。
【0015】
クランプユニット5の上部係合溝5aとアタッチメント6の下向きの係合溝6aとにより、天板のアタッチメント6に対してクランプユニット5のY方向位置を自由に調整し、クランプユニット5の下部係合溝5bとアタッチメント6の上向き係合溝6bとにより、底板のアタッチメント6に対してクランプユニット5のX方向位置を自由に調整することにより、クランプユニット5をアタッチメント6のX−Y上の任意の場所に位置決めすることができる。なお、この位置決めは偏心カム機構4によるバイスユニット2の移動量を考慮して設定される。
【0016】
7はクランプユニット5の貫通孔5c内にスライド自在に嵌挿されるクランプピンであり、該クランプピン7は基部に抜け止め部を形成している。8aは与圧機構8としてのばねであり、該ばね8aによりクランプピン7に一定の押圧力を付勢している。9は貫通孔5cの後方に形成される拡孔部であり、該拡孔部9内にクランプピン7の抜け止め部は配置されて抜け止めされる。10はばね8aの前後端を当接させるばね押さえであり、ばね8aの前端を受けるばね押さえ10はクランプピン7の抜け止め部に取付けられている。
【0017】
また、前記与圧機構8はクランプピン7を付勢するものであり、与圧機構8により、アタッチメント6に係合溝を介してクランプユニット5を配置することにより各クランプピン7が全て一定の押圧力でワークWをクランプできず、クランプピン7がワークWに必要以上に強く圧接されてワークWを傷つけたり、ワークWへの圧接力が弱くなってクランプが不安定になったりすることを防止する。与圧機構8としては図9に示されるように、クランプユニット5を油圧シリンダとし、クランプピン7をピストンとするとともに圧力計を介してアキュムレータ11に接続したものとして、アキュムレータ11の油圧をクランプピン7に与えるものとしている。12はアキュムレータ11により進出されたクランプピン7を旧位置に戻す復帰用ばねである。さらに、与圧機構8にボールねじを用いてもよいことはいうまでもない。
【0018】
偏心カム機構4は前後に対向配置される対のアタッチメント6、6を連動して近接させたり離隔させたりするものであり、該偏心カム機構4は減速機付モータ3と、該減速機付モータ3により駆動される回動軸15と、該回動軸15に偏心して取り付けられる偏心カム16、17と、該偏心カム16、17と一体のリンク18、19と、該リンク18、19に一端を枢着させたスライダ20、21とからなり、該各スライダ20、21はアタッチメント6の左右に取り付けられている。
【0019】
偏心カム16、17は前後のアタッチメント6、6を水平方向に連動してスライドさせるものであり、偏心カム16、17は位相を180°ずらして回動軸15に取付けられて前後のアタッチメント6、6の接離運動を行うものである。また、偏心カム16、17の死点でクランプ力を発揮するようにしているので、停電時にもクランプ力を失うことがないので安全である。
【0020】
また、前記スライダ20、21はバイス装置1のベース1aにボルト止めされる左右一対のガイドレール22にガイドされる。スライダ20、21は断面形状を略横H字状とし、断面形状を略横T字状とした左右一対のガイドレール22により挟み込むことにより前後スライドできるが上下方向には抜け止めされる。図2に示されるように、ガイドレール22はベース1aにボルト止めされ、ガイドレール22にガイドされるスライダ20、21は下側のアタッチメント6にボルト止めされる。
【0021】
23は天板のアタッチメント6とクランプユニット5とを動き止めする締付機構であり、該締付機構23は図3に示されるように、各クランプユニット5を貫通して底板のアタッチメント6と一体の側板に軸支される連結軸24と、前記連結軸24に枢着される偏心溝25を形成したカム板26と、天板のアタッチメント6から張出されて偏心溝25に係合される係合ピン27と、カム板26に取り付けられた操作ハンドル28とからなり、係合ピン27を偏心溝25に係合させたうえ、操作ハンドル28を枢動することにより、偏心溝25に係合される係合ピン27により天板のアタッチメント6をクランプユニット5に押圧して両者を一体化したり、アタッチメント6を自由状態にしてクランプユニット5を着脱したりスライドさせたりできる。
【0022】
また、図3に一点鎖線で示される締付機構23は他の実施例を示すもので、該締付機構23は底板のアタッチメント6と一体の側板に固着させたブラケット29を設け、該ブラケット29に偏心カム板30を枢着するとともに、該偏心カム板30に取付けた操作ハンドル31とからなり、操作ハンドル31を枢動させることにより、偏心カム板30を天板のアタッチメント6の上面に押圧させたり、押圧を解いたりすることにより、天板のアタッチメント6をクランプユニット5に押圧して両者を一体化したり、アタッチメント6を自由状態にしてクランプユニット5を着脱したりスライドさせたりできる。なお、アタッチメント6とクランプユニット5とを締付機構を23を用いずボルト止めしてもよいことはいうまでもない。
【0023】
このように構成されたものは、図1に示されるように、クランプするワークWとしてのシリンダブロックの凹凸形状に合わせて、アタッチメント6に取付けられる各クランプユニット5の位置調整を行う。この位置調整は偏心カム機構4によるバイスユニット2の移動量を考慮したものとしている。このようにしてクランプユニット5の位置調整が行われたバイスユニット2を組み込んだバイス装置1をワークWのクランプ位置まで移動させる。
【0024】
バイス装置1がワークWのクランプ位置に移動されたら、減速機付モータ3を駆動して回動軸15を180°右回動させれば、偏心カム機構4の偏心カム16、17はリンク18、19を中央に引き寄せることとなり、多数のクランプユニット5を取り付けた左右のバイスユニット2は同時に近接する。この近接により各バイスユニット2の各クランプピン7はワークWの前後面に圧接してワークWを挟持することとなる。このとき各クランプピン7には与圧機構8により付勢されているので、クランプユニット5の取り付け位置とワークWとの寸法とが精確に一致していなくともワークWは各クランプピン7に適正な圧力でクランプされることとなり、ワークWが落下したり、ワークWが滑って傾いたりすることがない。
【0025】
また、バイスユニット2からワークWを外す際には、前記とは逆に減速機付モータ3を回動させて回動軸15を逆回動させれば、偏心カム機構4の偏心カム16、17はリンク18、19を離隔させることとなり、ワークWのクランプを解除することとなる。
【符号の説明】
【0026】
1 バイス装置
2 バイスユニット
3 減速機付モータ
4 偏心カム機構
5 クランプユニット
5a 上部係合溝
5b 下部係合溝
5c 貫通孔
6 アタッチメント
6a 下向き係合溝
6b 上向き係合溝
7 クランプピン
8 与圧機構
8a ばね
9 拡孔部
10 ばね押さえ
11 アキュムレータ
12 復帰用ばね
15 回動軸
16 偏心カム
17 偏心カム
18 リンク
19 リンク
20 スライダ
21 スライダ
22 ガイドレール
23 締付機構
24 連結軸
25 偏心溝
26 カム板
27 係合ピン
28 操作ハンドル
29 ブラケット
30 偏心カム板
31 操作ハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランプピンを装着する多数のクランプユニットを、ワークのサイズや形状に応じてアタッチメントに位置変更自在に取付ける汎用バイスユニットであって、アタッチメントに挟持されるクランプユニットの上面に上部係合溝を形成し、クランプユニットの下面に前記上部係合溝と直交する下部係合溝を形成するとともに、アタッチメントの天井面にクランプユニットの上部係合溝と位置調整自在に係合できる下向き係合溝を形成し、アタッチメントの床面にクランプユニットの下部係合溝と位置調整自在に係合できる上向き係合溝を形成したことを特徴とする汎用バイスユニット。
【請求項2】
クランプユニットに装着されるクランプピンを突き出し方向に付勢する与圧機構を設けたことを特徴とする請求項1に記載の汎用バイスユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−104710(P2011−104710A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261767(P2009−261767)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(393011038)菱栄エンジニアリング株式会社 (59)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】