説明

汎用航空の航空機用羽布

本発明は航空機を覆う羽布に関する。その布は、架橋されたアニオン脂肪族ポリエステル−ポリウレタン分散体の1層以上の層で被覆され、および/または、被覆された繊維またはフィラメントから編まれる。本発明の羽布は、熱活性化熱架橋接着剤で接着される。本発明の羽布の利点は、覆った後にさらに被覆をする必要がなく、よって、覆う過程で極めて少ない重量しか加わらないことである。さらに、ユーザは、接着剤、張り誘起ワニス、シンナー、フィラーあるいは着色ワニスに有機溶媒を用いることなく航空機に覆いを付けることができ、よって航空機を被覆するに当たって環境にやさしい方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汎用航空の航空機用羽布およびその羽布の製造方法に関し、さらにそのような航空機を羽布で覆う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重量を軽減するために、汎用航空での航空機製造および遠隔操作される航空機の建造では、航空機の全体またはその一部分をけた(スパー)とリブで作るような設計を今でも用いている。これらの部材は、金属製、木製および/またはプラスチック製であり、覆われなければならない。その覆いは、構造体に付ける箔あるいは羽布に関係していることが好ましい。
【0003】
国際公開WO96/14208A1には、航空機の覆いに適した箔が開示されている。この文献は、ポリエステルキャリア箔を備え、キャリア箔の上にポリウレタン樹脂系の樹脂層を設け、キャリア箔から離間する側の樹脂層の面に加圧接着の粘着層を有する、多層材料を対象にする。この文献は、航空機構造を覆うための箔を開示しているが、覆うのに適した羽布は開示していない。
【0004】
米国特許出願公開第2006/0084336A1には、航空機構造用の多層で柔軟な羽布が開示されている。この羽布は、積層した層で構成され、特に低いガス透過性という特徴を有する。したがって、この羽布はツェッペリン型飛行船の建造を特に意図したものである。
【0005】
さらに、航空機を覆う用途で、リンネル、綿、ポリエステル製の羽布が知られている。これらの羽布は、覆われるべき航空機の部品にニトロセルロース接着剤あるいは塩化ゴム接着剤で接着され、接着剤が乾燥すると羽布中に引張力が生ずる。そのようにするために、ポリエステル羽布は熱で縮められ、ワニスを塗布される。種々のワニス・コーティングの後に、1層あるいは2層のシルバー・ワニスを紫外線保護のために塗布する。最後に仕上げワニスを塗布する。
【0006】
独国特許849051号では、航空機の覆いが開示され、その覆いは、縦糸が互いにある角度を持って伸び、互いに重ねられた少なくとも2枚のシートからなる。それぞれの羽布シートは、別々に伸ばされ、それから樹脂での処理により接続される。羽布シートは、溶媒含有含浸で処理され、伸ばされた後に引張力を励起するワニスで処理される。
【0007】
先行技術で既知の羽布とその処理方法の欠点は、ポリエステル羽布の使用において、羽布の繊維はニトロセルロース接着剤で覆われているが、接着剤がその繊維を結合するわけではないことである。
【0008】
さらに、ニトロセルロース接着剤とワニスは、時間の経過でさらに硬化し、接着剤全体および覆いを脆化する。このことにより、覆いは機械的損傷を受けやすくなり、覆いの一部分が外力なしで外れることもあり得る。最後に、先行技術で既知の航空機を覆うための解決策を用いる場合には、数年の後には新しい覆いが必要となる。
【0009】
航空機の覆いに関する従来技術の解決策の別の欠点は、塗布されるカラー塗装と層数による重量の増加がコントロールできないことにある。先行技術で開示された羽布の平方メートル当たり重量を量ると、100g/mから400g/mの重量のバラツキが計測された。
【0010】
さらに、溶媒を基材とする表層被覆を有するポリエステル繊維が模型飛行機組立てから知られており、そこでは裏側にヒートシール可能な接着剤が塗布される。被覆は、GB2215746Aに従ったPVC/PVA共重合体あるいはポリウレタンから作られた樹脂溶液から成り、樹脂は架橋剤および触媒染料あるいは金属顔料と一緒に加えられてもよい。さらに、高強度であるが、縮みが少なくさらに引裂抵抗が小さいことに特徴がある、溶媒を基材とする表層被覆付き航空機用ポリエステル羽布が、既知である。これらの製品は熱活性化接着剤で接着され、高温では軟化し、被覆が引張力を喪失してしわを生じたり、接着剤上で浮き始めるという欠点を有し、有用な性質を顕著に制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これら先行技術によれば、先行技術の欠点を回避する航空機用覆い材料を提供することが本発明の課題である。
【0012】
本発明の課題は、独立請求項の特徴により解決される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は汎用航空の航空機用羽布を提供することにあり、航空機用羽布は、ポリエステルあるいはポリエーテルエーテルケトン布を備え、その布は架橋された耐熱アニオン脂肪族ポリエステル−ポリウレタン分散体で被覆される。好適な実施の形態では、被覆は、0.5未満の好適なOH数を有するアニオン脂肪族分散体を、17から18の好適なNCO値を有する、好ましくはヘキサメチレン・ジイソシアネートを基礎にした、親水性の脂肪族ポリイソシアネートと架橋することで製造される。
【0014】
このように被覆された本発明による羽布は、第1の被覆を形成する。この第1の被覆にさらなる層を重ねることもでき、このような第1の被覆は、本発明によればプライマ被覆として記述される。
【0015】
本発明の別の目的は汎用航空の航空機用羽布を提供することにあり、航空機用羽布は、ポリエステルあるいはポリエーテルエーテルケトン布を有し、その布は、リング糸、フィラメント糸あるいはより糸から編まれ、それらは前もって架橋された耐熱アニオン脂肪族ポリエステル−ポリウレタン分散体で被覆される。好適な実施の形態では、繊維あるいはフィラメント、またはリング糸、フィラメント糸あるいはより糸、の被覆は、0.5未満の好適なOH数を有するアニオン脂肪族分散体を、17から18の好適なNCO値を有する、好ましくはヘキサメチレン・ジイソシアネートを基礎にした、親水性の脂肪族ポリイソシアネートと架橋することで製造される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明によれば、繊維あるいはフィラメントは、編む前にリング糸、フィラメント糸あるいはより糸へと加工される。当業者にとって、本発明が加工済みの繊維やフィラメントの被覆に明らかに関することは明白である。
【0017】
繊維やフィラメント、またはリング糸、フィラメント糸あるいはより糸が、編物加工の前に被覆されるとして、本発明では着色顔料を耐熱アニオン脂肪族ポリエステル−ポリウレタン分散体に加える。本発明による着色顔料は、着色顔料分散体だけの使用となることもあるが、二酸化チタンや着色剤を含有する場合をも包含する。
【0018】
本発明では、被覆されあるいは被覆されていない繊維およびフィラメントから製造された布の被覆に加え、布が被覆された繊維およびフィラメント、またはリング糸、フィラメント糸あるいはより糸で製造される。それぞれの場合に、着色顔料、疎水性物質、UV保護および/または可燃性を妨げる物質の添加も考慮される。
【0019】
本発明の羽布の別の実施の形態では、アニオン脂肪族分散体が着色され、または顔料で着色される。好適な実施の形態では、顔料は羽布の経年劣化を促進する紫外線や他の光線に対して羽布を安定化させるアルミニウム粒子または追加の添加剤を含む。さらに、疎水性物質をポリエステル布の被覆に加えることもできる。
【0020】
プライマ被覆が追加のアルミニウム粒子、紫外線安定化のための添加剤および疎水性物質を含有するならば、本発明によれば、添加剤の保護のため、被覆は長持ちし、耐久性がよい。そのような被覆は、環境の影響による経年劣化の過程に対し、特に耐久性がよい。
【0021】
本発明による羽布のさらなる進展によれば、羽布には少なくとも1層の、好ましくは2層の着色被覆が塗布される。これらの被覆は、上記したようにアニオン脂肪族ポリエステル−ポリウレタン分散体を含有し、着色顔料がその分散体に添加されるのが、好ましい。
【0022】
上記のように被覆された羽布は、したがって、第1の被覆(プライマ被覆)と、着色顔料を含む第2の被覆を有する。第2の被覆は、本発明による着色被覆とも呼ばれる。
【0023】
本発明の羽布のさらに好適な実施の形態では、静電を放電する導電性顔料を有する追加の被覆、および/または、導電材料の追加の被覆が塗布される。いずれの場合でも、導電性被覆の抵抗値は10−7オームと10−8オームの間であるのが好ましい。そのような被覆を通じて覆われた部分への損傷なしで帯電を放電することができる。特に、落雷を防止でき、または、帯電を放電できる。本発明は、プライマ被覆へ導電性顔料を添加することを包含する。
【0024】
覆いに導電性被覆が存在するならば、空気に対する覆いをした後の航空機の外側端部(昇降舵/水平方向舵、オプションの垂直安定板/垂直方向舵に加え、遷移領域、後縁/翼端及び補助翼)に導電性ロッドを取り付ける必要がある。導電性被覆が被覆と導電性ロッドの接続点で露出し、被覆と導電性ロッド間の密着が確保されていることを確かにしなければならない。たとえば、導電性銅ペーストを使うことにより、このことを行うことができる。導電性ロッドを内面の電流の方向で適切な場所に取り付ける。
【0025】
さらに、羽布は、表面層が塗布されてもよい。表面層は、上記のようにアニオン脂肪族ポリエステル−ポリウレタン分散体で構成され、UV遮蔽物または吸収材および/または疎水性物質と共に用いられてもよい。
【0026】
本発明による羽布は、オプションとして(意図された目的とは別に)多層被覆を有し、全ての被覆が羽布に塗布される必要はなく、対応化合物の複数塗布により単一被覆を得ることもできる。布に塗布される被覆の接着性を高めるために、本発明では、被覆が塗布される布の表面に、オプションとしてプラズマ処理、またはコロナ放電処理をしてもよい。被覆同士の接着性も、プラズマ処理、またはコロナ放電処理により最適化される。
【0027】
既に説明したように、繊維とフィラメント、またはリング糸、フィラメント糸あるいはより糸の多層の被覆は、被覆構成がプライマ被覆、着色被覆および表層被覆から構成されてもよい。そのように被覆された繊維とフィラメント、またはリング糸、フィラメント糸あるいはより糸は布に織り込まれ、布は上記のようにさらに被覆されてもよい。
【0028】
本発明によれば、ポリエステルまたはポリエーテルエーテルケトン布を備える羽布は、寿命の短い航空機用羽布であり、そこではその布は架橋され顔料で着色された耐熱アニオン脂肪族ポリエステル−ポリウレタン分散体だけで被覆される。被覆は、0.5未満の好適なOH数を有する、顔料で着色されたアニオン脂肪族分散体を、好ましくは17から18の好適なNCO値のヘキサメチレン・ジイソシアネートを基礎にした、親水性の脂肪族ポリイソシアネートで架橋することにより製造される。
【0029】
寿命の短い羽布では、被覆される布が、編む前に架橋され顔料で着色された耐熱アニオン脂肪族ポリエステル−ポリウレタン分散体で被覆された、繊維およびフィラメント、またはリング糸、フィラメント糸あるいはより糸を有してもよい。
【0030】
本発明による羽布は、DIN53830T3による30〜350dtexの測定繊度を有する。本書では、DINはドイツ規格協会による「Deutsche Industrienorm」すなわち、ドイツ工業規格の略称である。このような国家工業規格は、要覧で調べることができ、規定された規格を示す。以下では、DIN番号は、明示された規格を示す。
【0031】
DIN EN 12127による本発明の羽布の被覆されていないときのグラム重、すなわち秤量は、30g/m〜250g/mの間の単位面積当たりの重量を有する。
【0032】
本発明のさらなる実施の形態では、糸が構成される単一フィラメントの数は、縦糸と横糸で、15から80の間が好ましく、DIN EN 1049−2による糸の数は、縦糸で15〜60、横糸で15〜60が好ましい。さらに、本発明では、縦糸または縦糸と横糸が仕上げられた羽布を提供する。仕上げにより、互いに平行に置かれた単一フィラメントが組み合わされ、延性に影響を与える。
【0033】
羽布の縦糸および/または横糸の高強度を得るために、縦糸の単一フィラメントは、互いに撚られフィラメントの束を形成する。
【0034】
本発明の羽布では、布の縮みは、150℃の好適な温度で、縦方向と横方向に約10%であることが好ましい。この計測により、羽布の最適な処理が可能となる。
【0035】
本発明では、好適な約10%の横方向の縮みは、フレームで引き延ばして乾燥チャネル内で被覆を乾燥する間に得られ、すなわち維持されてもよい。
【0036】
さらに、織り方は、平織りあるいはリップストップとして織られる。
【0037】
本発明の羽布の被覆は、水性ポリウレタン構成を基礎にする。この方法は、環境保全に役立ち、製造中の二酸化炭素排出防止につながる。そうであっても、本発明は、溶媒含有構成を基礎にした被覆も含有する。
【0038】
本発明の主題の好適な実施の形態では、羽布は、記載した被覆の1つまたは複数を有し、追加で接着剤にて被覆されてもよく、接着剤は、カプセル化イソシアネートで作られた好適な15%硬化剤を有し0.5未満の好適なOH数を有する高分子量ポリウレタンの水性アニオン分散体を基礎にした熱活性化熱架橋接着物質で構成され、40℃を超える入熱があるとポリウレタン接着剤は架橋する。
【0039】
最後に、汎用航空の航空機用羽布の製造方法もまた、本発明の目的であり、プライマ被覆されたポリエステル布またはポリエーテルエーテルケトン布が製造され、そこでは架橋された耐熱アニオン脂肪族ポリエステル−ポリウレタン分散体が、0.5未満の好適なOH数のアニオン脂肪族ポリイソシアネートを、好ましくは17〜18の好適なNCO値のヘキサメチレン・ジイソシアネートを基礎にした、親水性の脂肪族ポリイソシアネートと架橋することで製造され、その後、ポリエステル布またはポリエーテルエーテルケトン布が上述の被覆で被覆される。あるいは、繊維あるいはフィラメント、またはリング糸、フィラメント糸あるいはより糸が加工されてポリエステル布またはポリエーテルエーテルケトン布が形成され、そこでは、繊維あるいはフィラメントは、布に加工される前に架橋された耐熱アニオン脂肪族ポリエステル−ポリウレタン分散体で被覆され、そこでは被覆は、0.5未満の好適なOH数のアニオン脂肪族分散体を、好ましくは17〜18の好適なNCO値のヘキサメチレン・ジイソシアネートを基礎にした、親水性の脂肪族ポリイソシアネートと架橋することで製造される。
【0040】
本発明によれば、布、布が製造される繊維あるいはフィラメント、またはリング糸、フィラメント糸あるいはより糸は、架橋され顔料で着色された耐熱アニオン脂肪族ポリエステル−ポリウレタン分散体だけで被覆されてもよい。
【0041】
さらに、布、繊維あるいはフィラメント、またはリング糸、フィラメント糸あるいはより糸は、追加で接着剤で被覆されてもよく、接着剤は、高分子量ポリウレタンの、好ましくは0.5未満のOH数の、好ましくはカプセル化イソシアネートで作られた15%硬化剤を有する、水性アニオン分散体を基礎にした熱活性化熱架橋接着物質で構成される。
【0042】
本発明のある実施の形態では、顔料で着色されたアニオン脂肪族分散体、好ましくはアルミニウム粒子で着色されたアニオン脂肪族分散体を用いてもよい。
【0043】
本発明によれば、布、繊維あるいはフィラメントにプライマ被覆を塗布する前に、疎水性を加える物質が布の被覆に添加され、もしくは、疎水性のある層が塗布されてもよい。
【0044】
羽布の着色がなされるのであれば、布、または、繊維あるいはフィラメント、またはリング糸、フィラメント糸あるいはより糸に、追加で少なくとも1層、好ましくは2層の着色被覆が塗布され、そこから覆いを作ることもできる。これらの被覆は、パターン、数字および文字がマーキングとして使われるように、異なった色を有してもよい。
【0045】
落雷または帯電を放電するために、本発明では追加の被覆を塗布してもよく、好ましくは、少なくとも1つの導電性顔料を含む請求項1によるアニオンポリエステル−ポリウレタン分散体を含有するのが好ましく、および/または、導電性材料を含有する追加の被覆が塗布される。そのような被覆でなされる放電は、大気に対する導電ロッドにより効果的となる。
【0046】
上記の製造工程で製造された覆いの寿命改善のため、紫外線遮蔽体または紫外線吸収体と疎水性物質を含有する、好ましくは請求項1によるアニオン脂肪族ポリエステル−ポリウレタン分散体を含有する、表面層を塗布することも、本発明の目的である。
【0047】
本発明によれば、好ましくはDIN53830T3による繊度が30〜350dtexを有する布が用いられる。さらに、この布は、単位面積当たりの重量である、被覆なしのグラム重が、DIN EN 12127によれば、30g/mから250g/mの間であり、そこでは、糸が構成される単一フィラメントの数は縦糸と横糸で15と80の間である糸が好ましい。
【0048】
好適な実施の形態では、約150℃における布の縮みが縦方向と横方向でほぼ10%であり、および/または、好適な約10%の横方向の縮みがフレームで引き延ばして乾燥チャネル内で被覆を乾燥する間に得られる布が用いられる。
【0049】
得られた布、あるいはその布で覆われる構造物の破壊を防止するために、自己消火性の被覆が追加で塗布されてもよい。
【0050】
結果として、本発明の主題には、汎用航空の航空機、特に飛行機、を覆うためのプロセスを含み、そのプロセスは以下の工程により特徴付けられる。
a.請求項1〜20のいずれか1項の本発明の羽布を、羽布が構造体に接続される領域で、接着剤に接触させ、接着剤は熱活性化熱架橋接着物質を有し、熱活性化熱架橋接着物質は、0.5未満の好適なOH数の、カプセル化イソシアネートで作られた15%硬化剤を有する、高分子量ポリウレタンの水性アニオン分散体を基礎にし、そこでは構造体も接着剤で被覆あるいは塗装される、
b.接着剤の乾燥後、羽布は構造体にアイロン掛けされる、
c.羽布が構造体にアイロン掛けされた領域が適切な熱源(アイロン)により約95〜105℃、好ましくは100℃に加熱される、
d.接着剤が冷えたらすぐに、適切な熱源(たとえば、クオーツ放射体またはホットエアガン)により150℃ほどの表面温度で張る、ここで、
e.接着剤の活性化を防ぐために、へこんだ部品に加え、編み目や重なりがこの段階で約100℃の表面温度を超えないことを確認する必要がある、そうしないと、活性化により編み目や重なりがへこんだ部品から離れてしまう。
【0051】
それゆえ、接着剤は、前述の被覆された羽布とは別の被覆用でもある。処理するのに、覆われる構造体に接着剤をスプレーしてもよい。このことは、羽布が構造体にくっつけられる領域で行ってもよい。
【0052】
乾燥後、覆いは構造体上でアイロン掛けされる。その後、アイロン掛けされた全ての領域がホットエアガン、放射熱源あるいはアイロンで約100℃に加熱され、接着剤のしっかりと固定した架橋を確かなものとし、そこでは、カプセル化イソシアネートが結合状態を変化させてポリウレタン接着剤を架橋する。接着剤の冷却後、覆われた全領域がホットエアガン、または熱源で、約150℃にて張られる。
【0053】
本発明で特に有利なのは、布がその層状のために、個々の被覆を全て含んでいることで、そうでなければ別々に塗布することになる。多くの層、特にワニスや着色層を塗布する作業は、布が既に顔料で着色された被覆を含むので、これを必要としない。
【0054】
本書で説明した分散体の使用により、蒸発する溶媒と比べて、環境にやさしい覆いとなる。しかし、本発明は、溶媒を基礎にした接着剤や覆い構造の使用も明らかに含有する。
【0055】
覆いと構造体との間のしっかり固定され温度に依存しない接続は、本発明の接着剤の使用により確かなものとなる。先行技術で述べられた解決法と対照的に、温度の上昇が、布は柔らかい接着剤上に浮き始める接着剤の軟化や布のしわにつながらない。
【0056】
接着剤の反応は100℃を超える温度で可逆であり、取替えや修理の目的で熱を特別に加えることによってのみなされうる。よって、本発明で用いられる接着剤は、継続的な持ちのよい強度を確かなものにする。
【0057】
被覆用添加剤としての本発明の物質により、たとえば紫外線や他の自然要因による羽布の経年劣化の進行は、顕著に遅められる。
【0058】
布を被覆するのに、調整可能な引っ張りフレーム付きの製造設備が使用され、布の好適な10%横縮みを達成し維持するために、乾燥中に布はフレームで交差方向に引っ張られる。
【0059】
本発明のさらなる主題は、航空機の覆いのキットであり、キットは、本発明の羽布と布を被覆するための接着剤とを有し、接着剤は、0.5未満のOH数の、カプセル化イソシアネートで作られた15%硬化剤を有する高分子量ポリウレタンの水性アニオン分散体を基礎にした熱活性化熱架橋接着物質を有する。さらにキットは溝付きベルトあるいは溝付きテープおよび/または補強テープを含んでもよい。
【0060】
そのようなキットは、飛行機であっても模型飛行機であっても、航空機を本発明の羽布で覆うのに必要な全ての手段を提供する。
【0061】
本発明の羽布と接着剤の全体によれば、かなり少ない重量が覆われる航空機に付加されるということになる。このことは、遠隔操作航空機、無人偵察航空機、超軽量航空機およびカテゴリ−E航空機のような小型あるいは軽量航空機に適用するには、特に有利となる。
【0062】
被覆が塗布され、繊維やフィラメント、またはリング糸、フィラメント糸あるいはより糸に染み込まないことは、布の被覆にとって根本的に重要なことである。布の被覆の厚さは、水や他の液体から布を保護し気密な被覆とするために、布の厚さのおおよそ3分の1の厚さに合計でなるのがよい。
【0063】
本発明の布の被覆のさらなる利点は、布自身が弾力性を保つことである。先行技術で知られた方法では、布は樹脂に浸される。それでは、布が作られる繊維やフィラメントの構造への浸入が起きる。布に浸み込んだ樹脂や他の液体が乾燥することは、布の弾力性を喪失させる。このため、航空機の運行中に存在する外力による覆いの損傷の危険が、特に翼で、高まる。そのような浸み込みは、引裂抵抗にも悪影響を及ぼす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汎用航空の航空機用羽布であって:
ポリエステル布またはポリエーテルエーテルケトン布を有し;
前記布は架橋された耐熱アニオン脂肪族ポリエステル−ポリウレタン分散体で被覆されたことを特徴とする;
羽布。
【請求項2】
前記被覆は、0.5未満の好適なOH数のアニオン脂肪族分散体を、好ましくは17〜18の好適なNCO値のヘキサメチル・ジイソシアネートを基礎にした、親水性の脂肪族ポリイソシアネートと架橋することにより製造されることを特徴とする;
請求項1の羽布。
【請求項3】
汎用航空の航空機用羽布であって:
ポリエステル布またはポリエーテルエーテルケトン布を有し;
前記布は、架橋された耐熱アニオン脂肪族ポリエステル−ポリウレタン分散体で前もって被覆された繊維あるいはフィラメント、またはリング糸、フィラメント糸もしくはより糸から編まれることを特徴とする;
羽布。
【請求項4】
前記被覆は、0.5未満の好適なOH数のアニオン脂肪族分散体を、好ましくは17〜18の好適なNCO値のヘキサメチル・ジイソシアネートを基礎にした、親水性の脂肪族ポリイソシアネートと架橋することにより製造されることを特徴とする;
請求項3の羽布。
【請求項5】
前記耐熱アニオン脂肪族ポリエステル−ポリウレタン分散体は、顔料で着色されることを特徴とする;
請求項1ないし請求項4のいずれか1項の羽布。
【請求項6】
前記布が作られる繊維あるいはフィラメント、またはリング糸、フィラメント糸あるいはより糸は、架橋され顔料で着色された耐熱アニオン脂肪族ポリエステル−ポリウレタン分散体だけで被覆され、前記被覆は、0.5未満のOH数のアニオン脂肪族分散体を、17〜18の好適なNCO値のヘキサメチル・ジイソシアネートを基礎にした、親水性の脂肪族ポリイソシアネートと架橋することにより製造されることを特徴とする;
請求項1ないし請求項5のいずれか1項の汎用航空の航空機用羽布。
【請求項7】
前記布は追加で接着剤で被覆され、接着剤は、好ましくは0.5未満のOH数の、好ましくはカプセル化イソシアネートで作られた15%硬化剤を含む、高分子量ポリウレタンの水性アニオン分散体を基礎にした熱活性化熱架橋接着物質から構成される;
請求項1ないし請求項6のいずれか1項の羽布。
【請求項8】
前記アニオン脂肪族分散体は、好ましくはアルミニウム粒子で、着色された;
請求項1ないし請求項7のいずれか1項の羽布。
【請求項9】
前記ポリエステル布の使用において、追加の疎水性物質を前記被覆に添加することを特徴とする;
請求項1ないし請求項8のいずれか1項の羽布。
【請求項10】
前記布が、好ましくは請求項1のアニオン脂肪族ポリエステル−ポリウレタン分散体を含む着色被覆として少なくとも1層の、好ましくは2層の追加の被覆を含み、追加の着色顔料が前記分散体に添加されることを特徴とする;
請求項1ないし請求項9のいずれか1項の羽布。
【請求項11】
好ましくは請求項1のアニオン脂肪族ポリエステル−ポリウレタンを有し、少なくとも1つの導電性顔料を含む追加被覆が塗布され、および/または、導電性材料を有する追加被覆が塗布されることを特徴とする;
請求項1ないし請求項10のいずれか1項の羽布。
【請求項12】
好ましくは請求項1のアニオン脂肪族ポリエステル−ポリウレタンを有し、紫外線遮蔽体または紫外線吸収体と疎水性物質を含む表層被覆が塗布されることを特徴とする;
請求項1ないし請求項11のいずれか1項の羽布。
【請求項13】
前記布はDIN53830T3による30〜350dtexの繊度を有することを特徴とする;
請求項1ないし請求項12のいずれか1項の羽布。
【請求項14】
DIN EN 12127による被覆なしのグラム重が30g/m〜250g/mの間の単位面積当たりの重量であることを特徴とする;
請求項1ないし請求項13のいずれか1項の羽布。
【請求項15】
前記糸が備える単一フィラメントの数は、縦糸と横糸で好ましくは15と50の間、または80までであることを特徴とする;
請求項1ないし請求項14のいずれか1項の羽布。
【請求項16】
DIN EN 1049−2による糸の数は、縦糸で20〜50または15〜60で、横糸で15〜40または60までである;
請求項1ないし請求項15のいずれか1項の羽布。
【請求項17】
前記縦糸あるいは縦糸と横糸が仕上げられていることを特徴とする;
請求項1ないし請求項16のいずれか1項の羽布。
【請求項18】
前記縦糸および/または横糸の個々のフィラメントが互いに撚られフィラメントの束を形成することを特徴とする;
請求項1ないし請求項17のいずれか1項の羽布。
【請求項19】
前記布の縮みは、縦方向と横方向とで約150℃の温度で約10%のとなることを特徴とする;
請求項1ないし請求項18のいずれか1項の羽布。
【請求項20】
前記布が、乾燥チャネル中での被覆の乾燥中にフレームでの引っ張りにより好ましくは約10%の縦方向の縮みを呈する;
請求項1ないし請求項19のいずれか1項の羽布。
【請求項21】
織り方は、平織りあるいはリップストップで織られることを特徴とする;
請求項1ないし請求項20のいずれか1項の羽布。
【請求項22】
前記被覆は、水性ポリウレタン構成を基礎にした;
請求項1ないし請求項21のいずれか1項の羽布。
【請求項23】
前記布が自己消火性被覆を含むことを特徴とする;
請求項1ないし請求項22のいずれか1項の羽布。
【請求項24】
前記布あるいは繊維あるいはフィラメントあるいはリング糸、フィラメント糸もしくはより糸が、塗布される第1の被覆として、疎水性用被覆を有することを特徴とする;
請求項1ないし請求項23のいずれか1項の羽布。
【請求項25】
全ての被覆、あるいは最後に塗布された被覆が、前記被覆の接着を硬化し改善するためにカレンダ加工されることを特徴とする;
請求項1ないし請求項24のいずれか1項の羽布。
【請求項26】
前記布が、編む前にリング糸、フィラメント糸あるいはより糸に加工された繊維あるいはフィラメントを備えることを特徴とする;
請求項1ないし請求項25のいずれか1項の羽布。
【請求項27】
汎用航空の航空機用羽布の製造方法であって、
プライマ被覆されたポリエステル布またはポリエーテルエーテルケトン布が製造され、そこでは:
a.架橋された耐熱アニオン脂肪族ポリエステル−ポリウレタン分散体が、0.5未満の好適なOH数のアニオン脂肪族分散体を、好ましくは17〜18の好適なNCO値のヘキサメチル・ジイソシアネートを基礎にした、親水性の脂肪族ポリイソシアネートと架橋することにより製造され、その後にポリエステル布またはポリエーテルエーテルケトン布を前記分散体で被覆する、または
b.架橋された耐熱アニオン脂肪族ポリエステル−ポリウレタン分散体で前もって被覆された、繊維あるいはフィラメントあるいはリング糸、フィラメント糸もしくはより糸がポリエステル布またはポリエーテルエーテルケトン布に加工され、前記被覆は、0.5未満の好適なOH数のアニオン脂肪族分散体を、好ましくは17〜18の好適なNCO値のヘキサメチル・ジイソシアネートを基礎にした、親水性の脂肪族ポリイソシアネートと架橋することにより製造される、
のいずれかである;
方法。
【請求項28】
前記布が製造される前記繊維あるいはフィラメントあるいはリング糸、フィラメント糸もしくはより糸は架橋され顔料で着色された耐熱アニオン脂肪族ポリエステル−ポリウレタン分散体だけで被覆されることを特徴とする;
請求項27の方法。
【請求項29】
前記繊維あるいはフィラメントあるいはリング糸、フィラメント糸もしくはより糸は、追加で接着剤で被覆され、接着剤は、好ましくは0.5未満のOH数の、カプセル化イソシアネートで作られた好ましくは15%硬化剤を有する、高分子量ポリウレタンの水性アニオン分散体を基礎にした熱活性化熱架橋接着物質で構成されることを特徴とする;
請求項27または請求項28の方法。
【請求項30】
好ましくはアルミニウム粒子で着色された、着色されたアニオン脂肪族分散体が用いられることを特徴とする;
請求項27ないし請求項29のいずれか1項の方法。
【請求項31】
前記布の被覆において疎水性物質が追加で添加され、または前記プライマ被覆を前記布あるいは前記繊維あるいはフィラメントに塗布する前に疎水性の層が塗布されることを特徴とする;
請求項27ないし請求項30のいずれか1項の方法。
【請求項32】
着色被覆として、少なくとも1層、好ましくは2層の追加被覆が前記布、または前記布を製造するのに用いられる繊維あるいはフィラメントに塗布されることを特徴とする;
請求項27ないし請求項31のいずれか1項の方法。
【請求項33】
好ましくは請求項1のアニオン脂肪族ポリエステル−ポリウレタン分散体を有し、少なくとも1つの導電性顔料を有する追加被覆が塗布され、および/または導電性材料を有する追加被覆が塗布されることを特徴とする;
請求項27ないし請求項32のいずれか1項の方法。
【請求項34】
好ましくは請求項1のアニオン脂肪族ポリエステル−ポリウレタン分散体を有し、紫外線遮蔽体および疎水性物質を有する表層被覆が塗布されることを特徴とする;
請求項27ないし請求項33のいずれか1項の方法。
【請求項35】
DIN53830T3による30〜350dtexの繊度の布を用いることをことを特徴とする;
請求項27ないし請求項34のいずれか1項の方法。
【請求項36】
被覆なしのグラム重が用いられ、DIN EN 12127による30g/m〜250g/mの単位面積当たりの重量を有することを特徴とする;
請求項27ないし請求項35のいずれか1項の方法。
【請求項37】
糸が構成される単一フィラメントの数は縦糸と横糸で15から50の間、または80までである糸が用いられることを特徴とする;
請求項27ないし請求項36のいずれか1項の方法。
【請求項38】
150℃の温度での縮みが好ましくは縦方向でも横方向でも約10%である布を用いることを特徴とする;
請求項27ないし請求項37のいずれか1項の方法。
【請求項39】
乾燥チャネルでの乾燥の間、フレームで引っ張ることで好ましくは約10%の横方向縮みが達成することを特徴とする;
請求項27ないし請求項38のいずれか1項の方法。
【請求項40】
自己消火性被覆が追加で塗布されることを特徴とする;
請求項27ないし請求項39のいずれか1項の方法。
【請求項41】
全ての被覆、あるいは最後に塗布された被覆は、被覆の接着が改善されるカレンダ加工により硬化されることを特徴とする;
請求項27ないし請求項40のいずれか1項の方法。
【請求項42】
汎用航空の航空機、特に飛行機を被覆する方法であって;
a.請求項1ないし請求項26のいずれか1項の羽布を構造体に取り付ける領域で接着剤と接触させる工程であって、前記接着剤は好ましくは0.5未満のOH数の、カプセル化イソシアネートで作られた好ましくは15%硬化剤を有する高分子量ポリウレタンの水性アニオン分散体を基礎にした熱活性化熱架橋接着物質を有し、前記構造体も前記接着剤で被覆される、工程と、
b.前記接着剤の乾燥後、前記羽布を前記構造体上でアイロン掛けする工程と、
c.前記羽布が前記構造体上でアイロン掛けされた領域を適切な熱源により約95〜100℃に加熱する工程と、
d.前記接着剤が冷えると、全ての覆いの領域を適切な熱源により約150℃の表面温度で張る工程と、
e.前記接着剤を活性化することを防止するためであって、そうしないと編み目と重なりがへこんだ部品から離れてしまうので、前記へこんだ部品に加えて、前記編み目と重なりとをこの段階で100℃の表面温度を超えて加熱しないことを確かにする工程とを備えることを特徴とする;
方法。
【請求項43】
航空機を覆うための請求項1ないし請求項26のいずれか1項の羽布の使用。
【請求項44】
請求項1ないし請求項26のいずれか1項の羽布の使用であって、汎用航空の航空機、特に飛行機から静電気を放電するために、導電性被覆で覆われ、および/または、被覆は導電性材料を有し、前記布からの放電は導電性ロッドにより空気に対して効果的となる;
使用。
【請求項45】
汎用航空の航空機を覆うためのキットであって、
請求項1ないし請求項26のいずれか1項の羽布と、前記羽布を被覆する接着剤とを有し、
前記接着剤は、0.5未満の好適なOH数の、カプセル化イソシアネートで作られた好適な15%硬化剤を有する高分子量ポリウレタンの水性アニオン分散体を基礎にした熱活性化熱架橋接着物質で作られ、前記ポリウレタン接着剤は40℃を超える熱を供給することで架橋される;
キット。
【請求項46】
溝付きのベルトあるいは溝付きのテープおよび/または補強テープをさらに含む;
請求項45のキット。

【公表番号】特表2010−526709(P2010−526709A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507791(P2010−507791)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際出願番号】PCT/DE2008/000836
【国際公開番号】WO2008/138331
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(509312466)
【Fターム(参考)】