説明

汚れ剥離組成物

本発明は、硬化または架橋ポリシロキサンおよびフッ素化ポリマーまたはオリゴマーを含む汚れ剥離組成物に関する。本発明は、また、海水に沈められる物品への適用のための汚れ剥離塗料における該汚れ剥離組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化または架橋ポリシロキサンおよびフッ素化ポリマーまたはオリゴマーを含む汚れ剥離組成物、並びに水環境における汚れを防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海水中に沈められる表面は、緑藻類、褐藻類、蔓脚類の甲殻動物、ムラサキガイ、棲管虫等のような海洋生物による汚れを受けやすい。船舶、石油掘削用プラットホームおよびブイ等々のような海洋構造物表面では、この汚れは負荷を増加させたり、腐蝕を速めたりという結果をもたらし得る。船舶では、この汚れは操縦性を低下させ、かつ速度の低下および増加した燃料消費を引き起こす摩擦抵抗を増加させる。
【0003】
このような海洋生物の付着と成長を防止するために防汚塗料が使用される。在来の防汚塗料は、表面上の汚れを水生汚損生物に対して有毒である物質の放出によって防止する。
【0004】
環境的により優しい解決法は殺生物剤を含まない汚れ剥離塗料の使用である。これらの系は上記表面の物理的性質のために有効である。表面の低表面エネルギー、低ガラス転移温度(T)および低弾性率が、海洋生物が上記表面に堅固に付着するのを困難にし、このことが海洋生物の蓄積を低下させるのである。
【0005】
US 2,986,474、GB 1 307 001およびUS 3,702,778明細書に開示されるように、汚れ剥離塗料に対するシリコーンエラストマー、即ちシリコーンゴムの使用が知られるようになって相当長い期間が経った。このシリコーン塗料の汚れ剥離性能を改善するために、化学的に不活性な液体添加剤が使用される。これらの添加剤は塗料表面に移行し、そしてそれら添加剤が剥離性を増進する表面層を作る。GB 1 470 465明細書は硬化性シリコーンゴム配合物中でのシリコーン油の使用を開示する。GB 1 581 727明細書は、加硫シリコーンゴム配合物中での、シリコーン不含液体有機化合物、例えば低分子量ポリオレフィン、低分子量ポリジエン、鉱油および可塑剤の使用を開示する。US 6,107,381明細書は、少なくとも1つのポリオキシアルケン部分を含む非硬化性ポリシロキサンの使用を開示する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
汚れ剥離塗料は汚れを防止するわけではないが、表面に対する汚損生物の付着を低下させる。その表面から付着した汚損生物を除去するのには多少の力が必要とされる。船体では、汚損生物の効果的剥離には進行している船舶の液体力学的力が十分に大きくなければならない。従って、上記のシリコーン汚れ剥離塗料は少なくとも15ノットの速度をもつ速く進行する船舶に限られてしまう。これら塗料の汚れ剥離性を改善する必要が存在するが、本発明はこのような改善の方法を提供する。
【0007】
ペルフルオロ化合物およびペルフルオロ化部分を含んでいるポリマーはそれらの表面エネルギーが非常に低いことが知られており、したがってそれらはシリコーンに基づく系の汚れ剥離性を改善するために使用することができる。シリコーン系において、フッ素化成分は表面に自然に移行してポリマー−空気界面に蓄積する。ペルフルオロアルキル基は表面上に自己集合し、このことがその表面を水中での再構成(reconstruction)に対して安定化する。
【0008】
フッ素化ポリマーおよび添加剤は汚れ剥離組成物における使用について記述されている。US 6,265,515 B1明細書(優先権1999年、US海軍)は、硬化性フッ素化シリコーン樹脂、およびこの硬化性フッ素化シリコーン樹脂の低表面エネルギー汚れ剥離組成物を与えるブレンドを開示する。硬化または架橋ポリシロキサンおよびフッ素化ポリマーまたはオリゴマーの使用は述べられていない。EP 1 042 413 B1明細書(優先権、英国、1997年、Akzo社)は、外層が硬化性の高分子汚れ抑制物質、有利には硬化性ポリシロキサンを含むが、他の硬化性物質、特にフッ素含有ポリマーを用いてもよい2層汚れ剥離塗料系を開示する。フッ素含有ポリマーを硬化性のポリシロキサンと組み合わせて使用することは述べられていない。
【0009】
Arias E.M.等のPolymer Reprints(1997年)、第28巻、512−513頁は、純粋な全フッ素化(メタ)アクリレート汚れ剥離ポリマーについて記述する。硬化性ポリシロキサンと組み合わせての上記フッ素化ポリマーの汚れ剥離組成物またはそのポリマーの使用は述べられていない。US 6,899,955 B2明細書(優先権、EP、2000年、Akzo社)は、シリコーン末端基を有する2官能性フッ素化ポリエーテルを含む硬化性フッ素化樹脂を開示する。その塗料組成物中で使用することができる添加剤の例は、非官能性または1官能性フッ素化ポリエーテルである。フッ素含有ポリマーを硬化性ポリシロキサンと組み合わせて使用することは述べられていない。EP 1 377 643 B1/US 2002/0192181明細書(優先権、EP、2001年、Akzo社)は、硬化または架橋ポリマーおよび非反応性の、液体フッ素化アルキルまたはアルコキシ含有ポリマーまたはオリゴマーを開示する。ポリシロキサンが好ましいバインダーである。エチレン性不飽和モノマーからのフッ素化ポリマーまたはオリゴマーの使用は記述されていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、硬化または架橋ポリシロキサンおよびフッ素化ポリマーまたはオリゴマーを含む、改善された汚れ剥離性を有する汚れ剥離組成物を提供する。上記フッ素化ポリマーまたはオリゴマー中へのポリシロキサンペンダント基の導入はポリシロキサン塗料組成物との相溶性を改善してフッ素化表面層の形成を促進する。そのペルフルオロアルキル基が表面上に自己集合し、このことがその表面を水中での再構成に対して安定化する。このフッ素化層は、ポリシロキサン塗料の硬化反応に関わることができるフッ素化ポリマーまたはオリゴマー中にシラン反応性基を導入することによってさらに安定化され得る。
【0011】
本発明は、フッ素化ポリマーおよびオリゴマーを市販の製品から出発して製造する容易な方法を述べるものである。モノマー比およびペンダント基の鎖長を変えることによって、ポリシロキサンブレンドにおける、表面エネルギー、相溶性および反応性のようなフッ素化ポリマーまたはオリゴマーの性質を制御することが可能である。
【0012】
フッ素化化合物は比較的高い費用を要する。本発明は最低限の量のフッ素化ポリマーにより汚れ剥離塗料の性質を改善する方法を述べるものである。
【0013】
本発明は硬化または架橋ポリシロキサンおよびフッ素化ポリマーまたはオリゴマーを含む、汚れ剥離組成物を提供する。本発明は、また、海水中に沈められる物品に適用するための汚れ剥離塗料における上記汚れ剥離組成物の使用に関する。
【0014】
詳細な説明:
本発明のフッ素化ポリマーまたはオリゴマーは、(A)フッ素官能基を含んでいる重合性のエチレン性不飽和モノマー、随意に(B)ポリオルガノシロキサン官能基を含んでいる重合性のエチレン性不飽和モノマー、および随意に(C)シラン官能基を含んでいる重合性のエチレン性不飽和モノマー、並びに随意に他の重合性のエチレン性不飽和モノマーから選ばれた単位を含む、ポリマーまたはオリゴマーに関する。
【0015】
好ましくは、フッ素化ポリマーまたはオリゴマーは、一般式(I)
【化1】


(式中、
はアクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、ビニルまたはビニルオキシカルボニルのような、エチレン性不飽和基であり、
は置換されたまたは非置換の、線状または分枝C−C10アルキルであり、
mは0または1であり、
はペルフルオロ化された線状または分枝C−C20アルキルである。)
のモノマー(A)、
【0016】
随意に、一般式(II)
【化2】


(式中、
はアクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシまたはビニルのような、エチレン性不飽和基であり、
は線状または分枝C−C10アルキルであり、
はC−C10アルキルから独立に選ばれ、
mは0または1であり、
nは1〜200の整数である。)
のモノマー(B)、
【0017】
および、随意に、一般式(III)
【化3】


(式中、
はアクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシまたはビニルのような、エチレン性不飽和基であり、
は線状または分枝C−C10アルキルであり、
mは0または1であり、
はC−C10アルキルであり、
はC−C10アルコキシおよびC−C10アルキルから独立に選ばれ、
はC−C10アルコキシであり、
pは0または1である。)
のモノマー(C)、
【0018】
並びに、随意に、1種または2種以上の他の重合性のエチレン性不飽和化合物から選ばれる単位を含む。
【0019】
本発明のフッ素化ポリマーまたはオリゴマーは1−99重量%のモノマーA、好ましくは1−50重量%のモノマーA、特に好ましくは1−25重量%のモノマーAを含んでいる。本発明のフッ素化ポリマーまたはオリゴマーは0−99重量%のモノマーB、好ましくは1−99重量%のモノマーBを含んでいる。モノマーB(一般式(II)のモノマー)について、nは好ましくは>1であり、さらに好ましくはnは>4であり、特に好ましくはnは>8である。本発明のフッ素化ポリマーまたはオリゴマーは0−25重量%のモノマーCを含んでいる。
【0020】
モノマーAの例に次のものがある:
1H,1H−ペルフルオロプロピルアクリレート、1H,1H−ペルフルオロブチルアクリレート、1H,1H−ペルフルオロオクチルアクリレート、1H,1H−ペルフルオロオクチルメタクリレート、1H,1H−ペルフルオロデシルアクリレート、1H,1H−ペルフルオロデシルメタクリレート、(ペルフルオロシクロヘキシル)メチルアクリレート、(ペルフルオロシクロヘキシル)メチルメタクリレート、
【0021】
2−(ペルフルオロブチル)エチルアクリレート、2−(ペルフルオロブチル)エチルメタクリレート、2−(ペルフルオロヘキシル)エチルアクリレート、2−(ペルフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、2−(ペルフルオロオクチル)エチルアクリレート、2−(ペルフルオロオクチル)エチルメタクリレート、2−(ペルフルオロデシル)エチルアクリレート、2−(ペルフルオロデシル)エチルメタクリレート、
【0022】
2−(ペルフルオロ−3−メチルブチル)エチルアクリレート、2−(ペルフルオロ−3−メチルブチル)エチルメタクリレート、2−(ペルフルオロ−5−メチルヘキシル)エチルアクリレート、2−(ペルフルオロ−5−メチルヘキシル)エチルメタクリレート、2−(ペルフルオロ−7−メチルオクチル)エチルアクリレート、2−(ペルフルオロ−7−メチルオクチル)エチルメタクリレート、2−(ペルフルオロ−9−メチルデシル)エチルアクリレート、2−(ペルフルオロ−9−メチルデシル)エチルメタクリレート、
【0023】
1H,1H,5H−ペルフルオロペンチルアクリレート、1H,1H,5H−−ペルフルオロペンチルメタクリレート、1H,1H,7H−ペルフルオロヘプチルアクリレート、1H,1H,7H−ペルフルオロヘプチルメタクリレート、1H,1H,9H−ペルフルオロノニルアクリレート、1H,1H,9H−ペルフルオロノニルメタクリレート、1H,1H,11H−ペルフルオロウンデシルアクリレート、1H,1H,11H−ペルフルオロウンデシルメタクリレート、
【0024】
3−(ペルフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−(ペルフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−(ペルフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−(ペルフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−(ペルフルオロブチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−(ペルフルオロヘキシル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−(ペルフルオロヘキシル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−(ペルフルオロオクチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−(ペルフルオロオクチル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、
【0025】
ビニルペルフルオロヘプタノエート、ビニルペルフルオロオクタノエート、ビニルペルフルオロノナノエート、p−ビニルベンジルペルフルオロオクタノエート、3−[2’−(ペルフルオロプロポキシ)−1’,1’,2’−トリフルオロエトキシ]ビニルベンゼン、2−(ペルフルオロプロポキシ)ペルフルオロプロピルトリフルオロビニルエーテル。
【0026】
モノマーBの例に:
モノメタクリルオキシプロピル末端基付きポリジメチルシロキサンおよびモノビニル末端基付きポリジメチルシロキサン
がある。好ましいMwは500−20,000であり、800−10,000がより好ましい。
【0027】
モノマーCの例に次のものがある:
(3−アクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−アクリロイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−アクリロイルオキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−メタクリロイルオキシプロピル)トリエトキシシラン、(3−メタクリロイルオキシプロピル)エチルジメトキシシラン、(3−メタクリロイルオキシプロピル)ジメチルジエトキシシラン、(メタクリロイルオキシメチル)トリメトキシシラン、(メタクリロイルオキシメチル)トリエトキシシラン、(メタクリロイルオキシメチル)ジメチルエトキシシラン、(3−メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−メタクリロイルオキシプロピル)トリエトキシシラン、(3−メタクリロイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−メタクリロイルオキシプロピル)エチルジメトキシシラン、(3−メタクリロイルオキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−メタクリロイルオキシプロピル)ジメチルジエトキシシラン、
【0028】
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリ−tert−ブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン。
【0029】
また、本発明に従って使用してもよい他のエチレン性不飽和化合物の例は、アクリル酸およびメタクリル酸、アクリル酸およびメタアクリル酸のエステルおよびアミド、ビニル化合物のような、モノマーである。
【0030】
本発明によるフッ素化ポリマーは、式(I)で表される構造を持つ少なくとも1種のモノマーAを適切な重合法によって重合させることによって製造することができる。
【0031】
本発明のフッ素化ポリマーまたはオリゴマーは、ポリシロキサンよりも低い表面エネルギーを有する。このフッ素化ポリマーまたはオリゴマーとポリシロキサンとのブレンド中では、フッ素化ポリマーまたはオリゴマーは表面に自然に移行してそのポリマー−空気界面に蓄積する。このプロセスは表面エネルギーの相違に因り熱力学的に推進される。フッ素化ポリマーまたはオリゴマーによって与えられる低表面エネルギーは、硬化ポリシロキサンによって与えられる弾性と共同して塗料の汚れ剥離性を改善する。フッ素化ポリマーまたはオリゴマーと硬化性ポリシロキサンを含む塗料においては,従って、フッ素化ポリマーまたはオリゴマーの表面への移行が促進されること、およびフッ素化された表面層が安定であることが望ましい。フッ素化ポリマーまたはオリゴマーは一般にポリシロキサンとは不相溶性であるから、これはフッ素化ポリマーまたはオリゴマーの塗料表面への制御された移行およびフッ素化表面層の形成を妨げ、代わってポリシロキサンマトリックス中におけるフッ素化ドメインの形成という結果をもたらす可能性がある。フッ素化ポリマーまたはオリゴマー中へのポリシロキサンペンダント基の導入は、ポリシロキサン塗料配合物との相溶性を改善してフッ素化表面層の形成を促進する。フッ素化ポリマーまたはオリゴマーが表面に移行したとき、塗料の表面を外側のフッ素化層の再構成と浸食に対して安定化させることが望ましい。ペルフルオロアルキル基は表面上に自己集合し、このことがその表面を水中における再構成に対して安定化させる。この層は、ポリシロキサン塗料の硬化反応に関わり得るフッ素化ポリマーまたはオリゴマー中にシラン反応性基を導入することによってさらに安定化させることができる。
【0032】
フッ素化ポリマーまたはオリゴマーの好ましい量は、硬化性ポリシロキサンの0.1−25重量%である。
【0033】
本発明の汚れ剥離組成物は硬化または架橋ポリシロキサンを含む。好ましくは、硬化または架橋ポリシロキサンは、一般に、主成分:
1)反応性ポリシロキサン
2)架橋剤
3)縮合触媒
より成る通常の室温加硫性(以後、RTVと称される)組成物である。RTV組成物は一部系(a one-part)であることもできるし、或いは数部系(several parts)として構成されていることもできるが、三部系以下であるのが好ましい。
【0034】
本発明の反応性ポリシロキサンは一般式(IV)
【化4】


(式中、
はヒドロキシルまたは-O-Si(R10)y(R11)(3-y)であり、
はC−C10アルキル、アリールおよびアルカリールから独立に選ばれ、
10はヒドロキシまたはC−Cアルコキシであり、
11は水素またはC−Cアルキルであり、
yは0〜3の整数である。)
のジオルガノシロキサンである。
【0035】
好ましくは、反応性ポリシロキサンは反応性ポリジメチルシロキサンである。
【0036】
RTV組成物は平均分子量が異なる1種または2種以上の反応性シリコーンポリマーを含むことができる。
【0037】
RTV組成物の架橋剤は一般式(V)
【化5】


(式中、
はアルコキシ、アセトキシ、オキシム、エノキシ(enoxy)またはアミンであり、
12はC−C10アルキルであり、
zは0または1である。)
を有する。
【0038】
架橋剤はモノマー形をしていてもよいし、或いはダイマー、オリゴマーまたはポリマーのような、自己縮合生成物の形をしてもよい。
【0039】
ポリシロキサンが、末端がジ−またはトリ−アルコキシで終わっている場合、別個の架橋剤は必要とされない。
【0040】
シリコーンバインダーの硬化は触媒の存在下で行われる。有用な触媒は、錫、亜鉛、チタン、鉛、鉄、バリウムおよびジルコニウムのカルボン酸塩のような、RTVシリコーン系における縮合反応を促進することが知られている触媒である。ヘキシルアンモニウム アセテートおよびベンジル トリメチルアンモニウム アセテートのような非金属触媒も使用することができる。
【0041】
本発明による、フッ素化ポリマーまたはオリゴマー、および硬化性ポリシロキサン、を含む塗料配合物は、また、1種または2種以上の非反応性の油、並びに充填剤、顔料、溶媒および添加剤のような、塗料の配合で一般に用いられる他の物質を含んでいてもよい。
【0042】
非反応性油の例に、ポリジメチルシロキサン油、メチルフェニルシロキサン油のようなシリコーン油;ポリオレフィン油、並びにパラフィン油および生物学的油、例えばヤシ油のような有機の油がある。
【0043】
充填剤の例に硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、シリカ、シリケート、ベントナイトおよび他のクレーがある。好ましい充填剤はシリカであり、これには疎水性および親水性の煙霧シリカおよび沈降シリカが含まれる。
【0044】
顔料の例に二酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック、ランプブラック、紺青、フタロシアニンブルー、コバルトブルー、群青、フタロシアニングリーンがある。
【0045】
適切な溶媒および希釈剤の例を挙げると、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼンのような芳香族炭化水素;ホワイトスピリットのような脂肪族炭化水素;1−メトキシ−2−プロパノール、ブタノールのようなアルコール;2,4−ペンタンジオン、4−メチル−2−ペンタノン、5−メチル−2−ヘキサノン、シクロヘキサノンのようなケトン;酢酸ブチルのようなエステル;および上記のもの相互の混合物または上記のものと脂肪族炭化水素との混合物がある。
【0046】
この塗料は、はけ塗り法、ロール塗り法またはスプレー法(エアレススプレー法または普通のスプレー法)のような任意の常用の方法で適用することができる。本発明の組成物は、ポリシロキサン系汚れ剥離仕上げ層用に設計されたどんな予備処理層上にも適用することができる。このような塗料層の例はエポキシ防錆層、および基材と最終シリコーン含有汚れ剥離層との間の接着を確実にするように設計されたシリコーン含有結合(tie)層である。
【実施例】
【0047】
次の例は本発明を例証するものである。
【0048】
例1
フッ素化ポリマーの一般的製造手順
攪拌機、凝縮器、温度計、添加装置および窒素入口を備える反応容器に溶媒を装填し、そして攪拌下で85℃まで加熱する。残りの溶媒、フッ素化モノマー、他のコモノマーおよび開始剤をフラスコまたはビーカー中に装填することによってモノマーバッチを調製する。次に、そのモノマーバッチを上記反応容器に2時間以上かけて滴下する。この反応混合物をさらに3時間85℃に保つ。随意に、あとの反応時間中に追加の開始剤溶液を加えることもできるし、或いは全ての残留モノマーを消費するために温度を30分、120℃に上げることもできる。
【0049】
フッ素化ポリマーの製造に使用されるモノマー、溶媒および開始剤の種類と量が表1に与えられる。
【表1−1】


【表1−2】

【0050】
例2:
三包系塗料組成物の調製
A部(基剤):
105.0g ポリジメチルシロキサン、シラノール末端基付き(粘度1000cSt)
18.0g ポリジメチルシロキサン(粘度粘度100cSt)
6.0g 二酸化チタン
1.0g シリカ
60.0g キシレン
6.5g 例1からのフッ素化ポリマー溶液(P1−P12)
パートB(硬化剤):
5.0g テトラエチルシリケート
パートC(触媒溶液):
0.4g ジブチルスズジアセテート
8.0g キシレン
【0051】
例3:
疑似蔓脚類甲殻動物(pseudobarnacles)を使用する汚れ剥離性能の試験
例2の塗料組成物を、エポキシプライマーおよびシリコーン系塗料用結合コートで下塗りされたPVCパネルの上にフレームアプリケーターによって塗布した。これらのパネルを少なくとも1日間硬化させる。上記の表面にエポキシ接着剤を用いて小さいアルミニウムスタッド(疑似蔓脚類甲殻動物)を接着させ、そして5日間硬化させる。手持ちフォースゲージを用いて上記表面に平行に適用された剪断力によって疑似蔓脚類甲殻動物を除去する。疑似蔓脚類甲殻動物を除去するのに要した力を書き留める。接着強さは剪断力を疑似蔓脚類甲殻動物ベースの面積で割ることによって計算される。報告される値は6測定の平均である。
【0052】
例2の塗料組成物についての疑似蔓脚類甲殻動物接着強さは表2に与えられる。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化または架橋ポリシロキサン、およびエチレン性不飽和モノマーに由来するフッ素化ポリマーまたはオリゴマーを含む、汚れ剥離組成物。
【請求項2】
フッ素化ポリマーまたはオリゴマーが、
(A)フッ素官能基を含んでいる重合性のエチレン性不飽和モノマー、
随意に、(B)ポリオルガノシロキサン官能基を含んでいる重合性のエチレン性不飽和モノマー、
随意に、(C)シラン官能基を含んでいる重合性のエチレン性不飽和モノマー、および
随意に、他の重合性のエチレン性不飽和モノマー、
から選ばれる単位を含む、請求項1に記載の汚れ剥離組成物。
【請求項3】
フッ素化ポリマーまたはオリゴマーが、
一般式(I):
【化1】


(式中、
はアクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、ビニルまたはビニルオキシカルボニルのような、エチレン性不飽和基であり、
は置換された、または非置換の、線状または分枝C−C10アルキルであり、
mは0または1であり、
はペルフルオロ化された線状または分枝C−C20アルキルである。)
のモノマー(A)、
随意に、一般式(II):
【化2】


(式中、
はアクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシまたはビニルのような、エチレン性不飽和基であり、
は線状または分枝C−C10アルキルであり、
はC−C10アルキルから独立に選ばれ、
mは0または1であり、
nは1〜200の整数である。)
のモノマー(B)、
随意に、一般式(III):
【化3】


(式中、
はアクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシまたはビニルのような、エチレン性不飽和基であり、
は線状または分枝C−C10アルキルであり、
mは0または1であり、
はC−C10アルキルであり、
はC−C10アルコキシおよびC−C10アルキルから独立に選ばれ、
はC−C10アルコキシであり、
pは0または1である。)
のモノマー(C)、
および、随意に、1種または2種以上の他の重合性のエチレン性不飽和化合物、
から選ばれる単位を含む、請求項2に記載の汚れ剥離組成物。
【請求項4】
フッ素化ポリマーまたはオリゴマーが、1−99重量%のモノマーA、0−99重量%のモノマーBおよび0−25重量%のモノマーCを含む、請求項3に記載の汚れ剥離組成物。
【請求項5】
フッ素化ポリマーまたはオリゴマーが、1−50重量%のモノマーA、0−99重量%のモノマーBおよび0−25重量%のモノマーCを含む、請求項3に記載の汚れ剥離組成物。
【請求項6】
フッ素化ポリマーまたはオリゴマーが、1−25重量%のモノマーA、0−99重量%のモノマーBおよび0−25重量%のモノマーCを含む、請求項3に記載の汚れ剥離組成物。
【請求項7】
フッ素化ポリマーまたはオリゴマーが、1−99重量%のモノマーBを含む、請求項4−6に記載の汚れ剥離組成物。
【請求項8】
硬化または架橋ポリシロキサンが一般式(IV):
【化4】


(式中、
はヒドロキシルまたは−O−Si(R10(R11(3−y)であり、
はC−C10アルキル、アリールおよびアルカリールから独立に選ばれ、
10はヒドロキシまたはC−Cアルコキシであり、
11は水素またはC−Cアルキルであり、
yは0−3の整数である。)
のジオルガノシロキサンである、請求項1−2に記載の汚れ剥離組成物。
【請求項9】
硬化または架橋ポリシロキサンが、反応性のポリジメチルシロキサンである、請求項1−8に記載の汚れ剥離組成物。
【請求項10】
フッ素化ポリマーまたはオリゴマーの量が、硬化または架橋ポリシロキサンの0.1−25重量%である、請求項1−8に記載の汚れ剥離組成物。
【請求項11】
海水中に沈められる物品用の汚れ剥離塗料における、請求項1−10のいずれか1項に記載の汚れ剥離組成物の使用。
【請求項12】
物品が船舶、石油掘削用プラットホームおよびブイのような、海洋構造物である、請求項11に記載の使用。


【公表番号】特表2009−529088(P2009−529088A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558221(P2008−558221)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【国際出願番号】PCT/NO2007/000082
【国際公開番号】WO2007/102741
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(508269248)
【Fターム(参考)】