説明

汚れ検出機能を有する画像読取装置

【課題】主走査線上にゴミやほこりが付着する等して黒すじや白すじが発生した場合においても、帳票に印刷されている罫線を消失することなしに帳票の画像を取り込むことができる、帳票走行型の画像読取装置を提供する。
【解決手段】帳票を走行方向に対して所定の角度だけ斜行させて帳票の画像を取り込むことにより、帳票の罫線が黒すじ又は白すじと重ならないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取部に対して帳票を移動させながら帳票の画像をイメージデータとして取り込む帳票走行型の画像読取装置に関し、特に、光学系の汚れ等により発生する黒すじや白すじを検出する機能を有する画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリ装置やイメージスキャナ装置等で原稿画像を読み取るために利用される画像読取装置の多くは、読取部に対して原稿を移動させながら画像を読み取る原稿送り方式を採用している。
この原稿送り方式の画像読取装置は、一般に、原稿の移動方向に直交して設けられる読取部の主走査線上において原稿を光学的に走査して画像を読み取るので、主走査線上にゴミやほこりが付着した場合等に、原稿画像とは無関係に一定の濃度の画素情報が取り込まれ、原稿の移動方向に黒すじや白すじとして現れる。黒すじはガラス面にゴミやほこりなどが付着し、光が遮られた場合に、白すじはガラス面に白い紙粉などが付着した場合に発生することが多い。
【0003】
その対策方法として、例えば特許文献1、2には、前もって主走査線の背景部に設けられる白板を読み取ることによってゴミの付着を検出し、画像データを補正する技術が開示されている。また、例えば特許文献3、4には、読み取った画像データを解析することによって黒すじを検出する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平2−130072号公報(第2頁左上欄5〜12行目、第1図)
【特許文献2】特開2000−278466号公報(段落0062)
【特許文献3】特開平6−303428号公報(段落0006〜0007、図1)
【特許文献4】特開平9−83703号公報(段落0006〜0009、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、帳票の画像を取り込むための画像読取装置においては、帳票の画像を背景画像から切り出す必要があるため、一般に、背景色には帳票部分との濃度差が大きい黒色が使用される。
例として、図2に示したような帳票4aを従来の原稿送り方式の画像読取装置で読み込むものとし、さらに黒すじとして現れるゴミと白すじとして現れるゴミの2つが主走査線上に付着していた場合を考える。このとき、最悪の場合には、取り込まれた画像のイメージデータは図6に示したようなものとなる。即ち、記号BLで示す黒すじと記号WLで示す白すじがいずれも帳票4a(図2)の縦罫線と重なっている。さらに記号RLで示す縦罫線は上下の背景画像(便宜的に網掛けで表示しているが、実際にはすべて黒色となっている)と連続しているため、黒すじと区別できない。
【0005】
したがって、図6に示したイメージデータに対して、前記の従来技術を適用して黒すじ及び白すじを検出して補正を行った後に帳票の画像を切り出した場合、結果は図9に示すようなものとなる。即ち、切り出された帳票画像6aの破線の部分に印刷されていた縦罫線がすべて消失しており、元の帳票4a(図2)のレイアウトとは大きく異なったものとなってしまっている。
【0006】
このように、従来の画像読取装置において帳票を読み込んで画像データの補正を行った場合には、黒すじあるいは白すじが発生した部分に印刷されていた罫線や、誤って黒すじとして検出された罫線が消失してしまうという不都合があった。
【0007】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたものであり、主走査線上にゴミやほこりが付着する等して黒すじや白すじが発生した場合においても、帳票に印刷されている罫線への影響が少ない状態で帳票の画像を取り込むことができる、画像読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の画像読取装置は、帳票の罫線が黒すじ又は白すじと重ならないように、読取部に対して帳票を所定の角度だけ斜行させながら帳票の画像を取り込むようにした。
【0009】
また、読取部に対して帳票を所定の角度だけ斜行させるためには、読取部の上流に、帳票を移動方向に対して所定の角度だけ回転させる斜行角度調整部を備えた。また、読取部に対して帳票を所定の角度だけ斜行させる他の手段として、帳票の投入口に、帳票の移動方向に対して所定の角度だけ回転した状態で帳票を投入するための投入角度調整用ガイドを備えた。
【0010】
また、帳票の画像データを背景から精度よく切り出せるようにするために、読取部の背景部分に黒色板を備えた。
【0011】
また、取り込んだ前記帳票の画像のイメージデータを分析して黒すじ又は白すじを検出する汚れ検出部を備えた。
【0012】
さらに、取り込んだ前記帳票の画像のイメージデータを斜行していない状態に整形する画像整形機能を有する画像処理部を備えた。
【0013】
さらに、取り込んだ帳票の画像のイメージデータを分析して黒すじ又は白すじを検出した旨の警告を通知する汚れ警告部と、黒すじ又は白すじのない状態に画像のイメージデータを補正する画像補正部とを備えた。
【発明の効果】
【0014】
本発明の画像読取装置によれば、主走査線上にゴミやほこりが付着した場合等に発生する黒すじや白すじによって帳票に印刷された罫線が隠されてしまう可能性が低くなるので、帳票に印刷されている罫線への影響が少ない状態で帳票の画像を取り込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る画像読取装置の最良の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る画像読取装置1の機器構成及び機能構成例を示したものである。図1において、帳票4は図の右から左方向へと搬送され、最初はほぼ直行して搬送されてくる帳票は、斜行角度調整部2において所定の角度だけ回転させられ、斜行したまま読取部3を通過する。
【0016】
斜行角度調整部2は、帳票を検知する2つの帳票センサ23R、23Lと、それぞれが上下2つのローラから成る帳票を回転させるための2組の斜行ローラ24R、24Lと、斜行ローラ24R、24Lを駆動するための2つのモータ22R、22Lと、それらを制御する制御回路21を備えて構成される。制御回路21は、2つの帳票センサ23R、23Lから出力される帳票検知信号の時間差から帳票4の先端がこれら両センサに到達した時点で走行方向(移動方向)に対する帳票4の角度を把握し、帳票4が所定の斜行角度となるようにモータ22R、22Lの回転速度を制御する。
【0017】
これにより、帳票4は2組の斜行ローラ24R、24Lによって挟持されている間に所定の斜行角度となるよう回転させられる。このとき、斜行角度の精度を高めるために、回転後の角度を検知するためのセンサを設けて斜行ローラ24R、24Lの回転速度にフィードバックしたり、角度調整用の搬送ガイドを設けてもよい。
【0018】
また、斜行角度調整部2を設けずに、最初から帳票4が走行方向に対して所定の角度だけ回転した状態で投入されるように、帳票の投入口(不図示)に投入角度調整用ガイドを備けてもよい。
【0019】
斜行角度調整部2の下流に位置している読取部3には、帳票4の走行方向に対して主走査線が直交するようにCCDセンサ31が設置され、この主走査線上を帳票が通過する間に一定の周期で撮像部11によって1ラインずつ画素データが取り込まれ、それらの画素データが画像処理部15によって集積された後に、イメージデータとして画像メモリ12に格納される。尚、主走査線の背景部分には、黒色板32が設けられ、帳票の背景部分は黒の画素データが取り込まれるようになっている。
【0020】
制御部10は、所定のプログラムにしたがって画像読取装置1の動作に必要な各種制御を実行するもので、不図示のCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成され、画像処理部15、汚れ検出部16、汚れ警告部17、画像補正部18の各機能を備える。操作表示部13は、帳票の読取開始等を指示するための不図示の操作キーやメッセージ等を表示するための不図示のディスプレイを有している。
【0021】
画像処理部15は、撮像部11によって取り込まれる画素データを集積して所定のイメージデータ形式に編集し、画像メモリ12に格納する。また、画像メモリ12に格納されているイメージデータの背景部分を除去して正立した帳票画像を切り出す整形機能を有する。画像処理部15によって切り出された帳票画像は、通信インタフェース14を介して他装置に伝送され利用される。
【0022】
汚れ検出部16は、画像メモリ12に格納されたイメージデータの中から、黒すじ又は白すじを検出する。この黒すじ又は白すじの検出には、例えば前記特許文献3や特許文献4に記載の従来技術を適用することができる。イメージデータが白黒の2値ではなく、多階調で表現される場合の黒すじ又は白すじの検出方法については後記する。
汚れ警告部17は、汚れ検出部16によって黒すじ又は白すじが検出されたときに、例えば、操作表示部13に警告メッセージを表示することにより、汚れの警告を通知する。
【0023】
画像補正部18は、汚れ検出部16によって黒すじ又は白すじが検出されたときに、画像メモリ12に格納されたイメージデータの黒すじ又は白すじに該当する部分のデータの補正を行い、補正後のイメージデータを画像メモリ12に格納する。
【0024】
このデータの補正は、斜行状態のイメージデータを縦横の罫線が垂直及び水平となる状態に整形した後に、横罫線方向と縦罫線方向の両方で画素の補間処理を実行するとよい。例えば、ある罫線方向の画素データが白「0」と黒「1」の2値で表され、黒すじ又は白すじに該当する部分の画素データを「U」で表すとき、図5に示したような隣接画素データに基づいた補正を行い、これを横罫線方向と縦罫線方向の両方向について実施した後に両者の論理和を取ることによって、黒すじ又は白すじが交差する罫線をほぼ正確に復元することができる。
【0025】
また画素データが多階調で表される場合であっても、黒すじ又は白すじに該当する部分に隣接する2つの画素データの階調の平均値によって補間することにより、上記と同様に罫線の復元が可能である。
【0026】
次に、図1に示した画像読取装置1における画像読取動作の原理を、図2に示した帳票4aの画像を取り込む場合を例に説明する。
図3は、図2に示した帳票4aを画像読取装置1で読み込んだときの画像のイメージデータの例を示したものである。即ち、帳票4aが所定の角度だけ斜行した状態で画像が取り込まれていくため、取り込まれた画像データは帳票4aが所定の角度だけ回転した状態となる。これによって、黒すじとして現れるゴミと白すじとして現れるゴミの2つが主走査線上に付着していたものとしても、記号BLで示す黒すじと記号WLで示す白すじが帳票の罫線と重なって隠れてしまう状態は回避され、記号RLで示す罫線と黒すじとの区別も可能である。
【0027】
したがって、図3に示したイメージデータに対して、前記の従来技術を適用して黒すじ及び白すじを検出した後に、帳票画像を背景から切り出して正立画像に整形すれば、図4のような帳票画像5aが得られる。この帳票画像5aに対して、前記の横罫線方向と縦罫線方向の両方向についての補間処理を実行することで、図2に示す元の帳票4aの罫線をほぼ正確に復元することができる。
【0028】
次に、イメージデータが多階調で表現される場合の黒すじ又は白すじの検出方法について図3に示したイメージデータを例に説明する。
イメージデータが多階調で表現される場合には、汚れ検出部16は、まず画像メモリ12に格納されているイメージデータを読み出し、図7に示すような階調差判定データを作成する。この階調差判定データは、画像メモリ12に格納されているイメージデータを主走査方向に読み出し、1つ前の画素との階調の差が所定値以上であれば「黒」、それ以外は「白」の2値データに変換することによって生成する。
【0029】
この階調差判定データについて帳票の走行方向に「黒」のデータ数を集計すれば、図8に示すようなヒストグラムが得られる。すなわち、黒すじが存在していた部分D1と白すじが存在していた部分D2の両端にそれぞれピークが現れる。したがって、汚れ検出部16は、図7に示した階調差判定データについて、帳票の走行方向に「黒」のデータ数を集計して、この値が所定値P以上となる隣接する2点を抽出することによって、図8のD1とD2に相当する部分を黒すじ又は白すじとして検出する。
【0030】
尚、図3の例は、帳票を走行方向に対して左に約15°だけ斜行させた場合を示しているが、斜行角度が大きいほど帳票の罫線との判別性が高まる反面、斜行角度調整部2の搬送路の幅と長さが大きくなり、また、斜行させるための所要時間も増大するので、斜行角度は概ね10°前後とすることが好ましい。
【0031】
以上説明したように、本発明によれば、帳票に印刷されている罫線を消失することなしに帳票の画像を取り込むことができ、各種の帳票処理システム、特に罫線の配置や位置情報を利用して帳票の種類を識別したり、罫線で囲まれた領域内の文字をOCR(Optical Character Reader)認識するシステムへの適用に好適な画像読取装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の画像読取装置の構成例を示す図である。
【図2】読み取り対象となる帳票の1例である。
【図3】本発明の画像読取装置で図2の帳票を読み取ったときの画像データである。
【図4】図3の画像データを整形した結果の帳票画像である。
【図5】2値の画像データの補正方法を説明するための図である。
【図6】従来の画像読取装置で図2の帳票を読み取ったときの画像データである。
【図7】図3の画像データに対する階調差判定データである。
【図8】図7の階調差判定データに対する「黒」データ数のヒストグラムである。
【図9】従来の画像読取装置によって罫線が消失した例を示す帳票画像である。
【符号の説明】
【0033】
1 画像読取装置
2 斜行角度調整部
3 読取部
4,4a 帳票
5a,6a 帳票画像
10 制御部
11 撮像部
12 画像メモリ
13 操作表示部
15 画像処理部
16 汚れ検出部
17 汚れ警告部
18 画像補正部
21 制御回路
22R,22L モータ
23R,23L 帳票センサ
24R,24L 斜行ローラ
31 CCDセンサ
32 黒色板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帳票の移動方向に直交する主走査線上の画素列を読み取る読取部を有し、
前記読取部に対して前記帳票を移動させながら前記帳票の画像を取り込む帳票走行型の画像読取装置において、
前記読取部に対して前記帳票を所定の角度だけ斜行させながら前記帳票の画像を取り込む、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記読取部の上流に、前記帳票を移動方向に対して所定の角度だけ回転させる斜行角度調整部を備えた、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記帳票の投入口に、前記帳票の移動方向に対して所定の角度だけ回転した状態で前記帳票を投入するための投入角度調整用ガイドを備えた、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記読取部の背景部分に黒色板を備えた、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
取り込んだ前記帳票の画像のイメージデータを斜行していない状態に整形する画像整形機能を有する画像処理部を備えた、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像読取装置。
【請求項6】
取り込んだ前記帳票の画像のイメージデータを分析して黒すじ又は白すじを検出する汚れ検出部を備えた、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記汚れ検出部が前記黒すじ又は白すじを検出したときに警告を通知する汚れ警告部を備えた、
ことを特徴とする請求項6に記載の画像読取装置。
【請求項8】
取り込んだ前記帳票の画像のイメージデータを分析して黒すじ又は白すじを検出して前記画像のイメージデータを補正する画像補正部を備えた、
ことを特徴とする請求項6に記載の画像読取装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−114567(P2010−114567A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284261(P2008−284261)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】