説明

汚れ検出装置および分析装置

【課題】分析処理に使用する容器に残存する汚れをさらに厳密に検出できる汚れ検出装置および分析装置を提供すること。
【解決手段】この発明にかかる分析装置1は、単に吸光度測定を行なうのではなく、液体検体中の成分と選択的に反応して光学的特性を変化させる汚れ検出用試薬を反応容器21に投入して、反応容器21に残存する汚れの光学的特性を十分に検出可能である程度まで引き上げてから、汚れ検出用測光部20による反応容器21における光学的特性を測定する汚れ検出用測定処理を行なう。そして、汚れ検出部34は、この汚れ検出用測光部20において測定された測定結果をもとに反応容器21の汚れの程度を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体検体の分析処理に使用される容器の汚れの程度を検出する汚れ検出装置および液体検体を容器中に分注して該液体検体を分析する分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液や体液等の検体を自動的に分析する装置として、試薬が分注された反応容器に検体を加え、反応容器内の試薬と検体の間で生じた反応を光学的に検出する分析装置が知られている。このような分析装置においては、光学的測定が終了した反応容器内の混合液を吸引して排出するとともに、洗剤や洗浄水等の洗浄液を注入および吸引することで洗浄を行ない、反応容器を繰り返し利用している。そして、このような分析装置においては、反応容器に蒸留水を注入し吸光度測定を行なうことによって洗浄後の容器の清浄度を確認した上で、反応容器を再利用していた(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−164762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の分析装置においては、単に反応容器の吸光度測定を行っているだけであったため、吸光度の検出限界以下の低濃度の汚れが反応容器に残存している場合であっても、この汚れを検出することができなかった。
【0005】
特にたんぱく質を含む血液などを分析する分析装置では、洗浄後の反応容器に微量に残留したたんぱく質が次の分析処理において注入された試薬と反応することによって、次の分析結果に対しても強く影響を及ぼしてしまう場合があった。
【0006】
また、近年においては、さらなる分析精度の向上を要求されているため、この分析精度の向上化を実現するためには、洗浄処理後の容器に残存する汚れをさらに厳密に検出する必要がある。
【0007】
本発明は、上記した従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、分析処理に使用する容器に残存する汚れをさらに厳密に検出できる汚れ検出装置および分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる汚れ検出装置は、液体検体の分析処理に使用される容器の汚れの程度を検出する汚れ検出装置において、前記容器に前記液体検体中の成分と選択的に反応して光学的特性を変化させる検出用試薬を投入する試薬投入手段と、前記試薬投入手段によって前記検出用試薬を投入された前記容器の光学的特性を測定する測光手段と、前記測光手段の測定結果をもとに前記容器の汚れの程度を検出する検出手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる汚れ検出装置は、前記検出用試薬は、前記液体検体の成分と反応して蛍光を生じる構成物を含み、前記測光手段は、前記容器から発せられた蛍光量を測定し、前記検出手段は、前記測光手段によって測定された蛍光量が所定の閾値を超えていた場合には前記容器に汚れが残存していると判断し、前記蛍光量が所定の閾値以下である場合には前記容器の汚れは取り除かれたと判断することを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる汚れ検出装置は、前記検出用試薬は、前記液体検体の成分と反応して発光する構成物を含み、前記測光手段は、前記容器からの発光量を測定し、前記検出手段は、前記測光手段によって測定された発光量が所定の閾値を超えていた場合には前記容器に汚れが残存していると判断し、前記発光量が所定の閾値以下である場合には前記容器の汚れは取り除かれたと判断することを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる汚れ検出装置は、前記検出用試薬は、前記液体検体の成分と反応して所定波長の光を吸収する構成物を含み、前記測光手段は、前記容器を透過した前記所定波長の光を測定して前記容器における前記所定波長の光の吸光度を測定し、前記検出手段は、前記測光手段によって測定された所定波長の光の吸光度が所定の閾値を超えていた場合には前記容器汚れが残存していると判断し、前記所定波長の光の吸光度が所定の閾値以下である場合には前記容器の汚れは取り除かれたと判断することを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる汚れ検出装置は、前記容器へ投入された前記検出用試薬を該容器外部へ排出する排出手段をさらに備え、前記測光手段は、前記排出手段によって前記検出用試薬が排出された後の容器に対して光学的測定を行なうことを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる汚れ検出装置は、前記測光手段は、前記容器の開口上部に配置されることを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる汚れ検出装置は、前記測光手段は、前記容器の蛍光量検出時に前記容器へ光を照射する光源の光軸を避け配置されることを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる分析装置は、容器に保持された液体検体を分析する分析装置において、前記請求項1〜7のいずれか一つに記載の汚れ検出装置を備え、前記汚れ検出装置は、当該分析装置において前記液体検体が分注される前記容器の汚れを検出することを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる分析装置は、前記液体検体の分析処理に使用された容器を洗浄する洗浄機構をさらに備え、前記汚れ検出装置は、前記洗浄機構によって洗浄された容器の汚れを検出することを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる分析装置は、前記試薬投入手段は、前記洗浄機構による前記容器の洗浄処理中に、前記検出用試薬を投入し、前記測光手段は、前記洗浄機構による前記洗浄処理が終了した前記容器の光学的特性を測定することを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる分析装置は、当該分析装置が前記液体検体に光を照射して該液体検体を分析する場合、前記液体検体の分析時と前記容器の汚れ検出時とで共通の光源を用いることを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる分析装置は、前記汚れ検出装置は、当該分析装置における分析処理前に該分析処理に使用する前記容器の汚れを検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、単に容器の吸光度測定を行なうのではなく、容器に液体検体中の成分と選択的に反応して光学的特性を変化させる汚れ検出用試薬を投入して、残存する汚れの光学的特性を十分に検出可能である程度まで引き上げてから、容器の光学的特性の測定結果をもとに容器の汚れの程度を検出するため、容器に残存する低濃度の汚れも検出でき、分析処理に使用する容器に残存する低濃度の汚れをさらに厳密に検出することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態である汚れ検出装置および分析装置について、血液検体が分注される反応容器に残存した汚れを検出する汚れ検出装置を有する分析装置を例に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0022】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1について説明する。図1は、実施の形態1にかかる分析装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、実施の形態1にかかる分析装置1は、分析対象である検体および試薬を反応容器21にそれぞれ分注し、分注した反応容器21内で生じる反応を光学的に測定する測定機構2と、測定機構2を含む分析装置1全体の制御を行なうとともに測定機構2における測定結果の分析を行なう制御機構3とを備える。分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体の生化学分析を自動的に行なう。なお、反応容器21は、容量が数nL〜数mLと微量な容器であり、測光部18の光源から出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を透過する透明素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。反応容器21は、側壁と底壁とによって液体を保持する水平断面が四角形の液体保持部が形成され、液体保持部の上部に開口を有する四角筒形状の反応容器である。
【0023】
測定機構2は、大別して検体移送部11、検体分注機構12、反応テーブル13、試薬庫14、試薬分注機構16、攪拌部17、測光部18、洗浄部19および汚れ検出用測光部20を備える。
【0024】
検体移送部11は、血液を検体として収容した複数の検体容器11aを保持し、図中の矢印方向に順次移送する複数の検体ラック11bを備える。検体移送部11上の所定位置に移送された検体容器11a内の検体は、検体分注機構12によって、反応テーブル13上に配列して搬送される反応容器21に分注される。
【0025】
検体分注機構12は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアーム12aを備える。このアーム12aの先端部には、検体の吸引および吐出を行なうノズルが取り付けられている。検体分注機構12は、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備える。検体分注機構12は、上述した検体移送部11上の所定位置に移送された検体容器11aの中からノズルによって検体を吸引し、アーム12aを図中時計回りに旋回させ、反応容器21に検体を吐出して分注を行なう。
【0026】
反応テーブル13は、反応容器21への検体や試薬の分注、反応容器21の攪拌、測光、洗浄および汚れ検出用測光を行なうために反応容器21を所定の位置まで移送する。この反応テーブル13は、制御部31の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、反応テーブル13の中心を通る鉛直線を回転軸として回動自在である。反応テーブル13の上方と下方には、図示しない開閉自在な蓋と恒温槽がそれぞれ設けられている。
【0027】
試薬庫14は、反応容器21内に分注される試薬が収容された試薬容器15を複数収納できる。試薬庫14には、複数の収納室が等間隔で配置されており、各収納室には試薬容器15が着脱自在に収納される。試薬庫14は、制御部31の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、試薬庫14の中心を通る鉛直線を回転軸として時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の試薬容器15を試薬分注機構16による試薬吸引位置まで移送する。試薬庫14の上方には、開閉自在な蓋(図示せず)が設けられている。また、試薬庫14の下方には、恒温槽が設けられている。このため、試薬庫14内に試薬容器15が収納され、蓋が閉じられたときに、試薬容器15内に収容された試薬を恒温状態に保ち、試薬容器15内に収容された試薬の蒸発や変性を抑制することができる。
【0028】
また、試薬庫14には、汚れ検出用試薬を収納した汚れ検出用試薬容器15aが収納されている。この汚れ検出用試薬は、検体である血液中のたんぱく質と選択的に反応して光学的特性を変化させるものである。汚れ検出用試薬は、たとえば血液中のたんぱく質と選択的に反応して強く蛍光を発する構成物を含む。
【0029】
試薬分注機構16は、検体分注機構12と同様に、検体の吸引および吐出を行なう試薬ノズルが先端部に取り付けられたアーム16aを備える。アーム16aは、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なう。試薬分注機構16は、試薬庫14上の所定位置に移動された試薬容器15内の試薬をノズルによって吸引し、アーム16aを図中時計回りに旋回させ、反応テーブル13上の所定位置に搬送された反応容器21に分注する。攪拌部17は、反応容器21に分注された検体と試薬との攪拌を行い、反応を促進させる。
【0030】
測光部18は、たとえば、所定の測光位置に搬送された反応容器21にハロゲンランプなどの光源から分析光(340〜800nm)を照射し、反応容器21内の液体を透過した光を分光し、PDAなどの受光素子による各波長光の強度測定を行なうことによって、分析対象である検体と試薬との反応液に特有の波長の吸光度を測定する。
【0031】
洗浄部19は、洗浄ノズルによって、測光部18による測定が終了した反応容器21内の混合液を吸引して排出するとともに、洗剤や洗浄水等の洗浄液を注入および吸引することで分析処理が終了した反応容器21を洗浄する。洗浄部19は、図2に例示するように、反応容器21内の混合液を吸引して排出するとともに反応容器21内に洗剤を注入する複数の洗剤用ノズル192と、反応容器21内をすすぎ洗浄するために反応容器21内の液体を吸引して排出するとともに先浄水を注入する複数の水用ノズル193と、反応容器21内の液体を排出する複数の吸引ノズル194とを有する。洗浄部19は、測光部18による測定が終了した後に搬送される反応容器21に対して、図2(1)に示すように、洗剤用ノズル192による洗剤注入、水用ノズル193によるすすぎ洗浄および吸引ノズル194による反応容器21内の液体排出を行って洗浄処理を行なう。
【0032】
そして、図2(2)の矢印Y3に示すように、試薬分注機構16における試薬ノズル161は、洗浄後の反応容器21に汚れ検出用試薬容器15aから汚れ検出用試薬Ld1を注入する。
【0033】
汚れ検出用測光部20は、試薬分注機構16によって汚れ検出用試薬を注入された反応容器21の光学的特性を測定する。汚れ検出用測光部20は、図2(3)に示すように、洗浄部19によって洗浄された反応容器21であって汚れ検出用試薬Ld1を注入された反応容器21の光学的特性を測定する。汚れ検出用試薬Ld1は、たとえば血液中のたんぱく質と選択的に反応して強く蛍光を発する構成物を含むものである。この場合、図2(3)および図3に示すように、汚れ検出用測光部20は、この汚れ検出用試薬Ld1が注入された反応容器21へ励起光E1を照射する光源20aと、反応容器21から発せられる蛍光E21を受光して受光量を出力する受光部20bとを備える。なお、受光部20bは、図3に示すように、光源20aからの光軸を避けるように反応容器21の開口上部に配置される。この結果、受光部20bは、側壁を隔てることなく、直接光を受光するので反応容器21側壁越しに蛍光量を検出するよりも高感度で蛍光量を検出可能とする。さらに、光源20aから発せられる光が受光部20bに受光されることを避けることができるため、受光部20bの受光結果への光源20aからの光の影響を除去できる。したがって、受光部20bは、反応容器21から発せられた蛍光のみを確実に測定することができる。また、汚れ検出用測光部20は、分析処理前におけるメンテナンス時において、分析装置1での使用開始前の反応容器21であって汚れ検出用試薬を注入された反応容器21の光学的特性も測定する。
【0034】
つぎに、制御機構3について説明する。制御機構3は、制御部31、入力部32、分析部33、汚れ検出部34、記憶部35および出力部36を備える。測定機構2および制御機構3が備えるこれらの各部は、制御部31に電気的に接続されている。
【0035】
制御部31は、CPU等を用いて構成され、分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部31は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行なう。入力部32は、キーボード、マウス等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。分析部33は、測光部18によって測定された吸光度に基づいて検体の成分分析等を行なう。
【0036】
汚れ検出部34は、汚れ検出用測光部20の測定結果をもとに反応容器21の汚れの程度を検出する。汚れ検出部34は、汚れ検出用測光部20は、洗浄部19によって洗浄された反応容器21の汚れの程度を検出する。汚れ検出用試薬が血液中のたんぱく質と選択的に反応して強く蛍光を発する構成物を含む場合には、汚れ検出部34は、汚れ検出用測光部20によって測定された反応容器21からの蛍光量が所定の閾値を超えていた場合には、この反応容器21には次の分析に影響を与える程度の汚れが残存していると判断する。一方、汚れ検出部34は、汚れ検出用測光部20によって測定された反応容器21からの蛍光量が所定の閾値以下である場合には、この反応容器21の汚れは次の分析処理に影響を与えない程度まで取り除かれたと判断する。なお、汚れ検出部34は、分析処理前におけるメンテナンス時において、汚れ検出用測光部20による測定結果を用いて、分析装置1での使用開始前の反応容器21に対しても汚れの程度を検出する。
【0037】
記憶部35は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部35は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。
【0038】
出力部36は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカー等を用いて構成され、検体の分析結果を含む諸情報を出力する。また、出力部36は、図示しない通信ネットワークを介して外部装置に諸情報を出力する。
【0039】
以上のように構成された分析装置1では、列をなして順次搬送される複数の反応容器21に対して、検体分注機構12が検体容器11a中の検体を分注し、試薬分注機構16が試薬容器15中の試薬を分注した後、測光部18が検体と試薬とを反応させた状態の検体の分光強度測定を行い、この測定結果を分析部33が分析することで、検体の成分分析等が自動的に行われる。
【0040】
そして、洗浄部19は、測光部18による測定が終了した後に搬送される反応容器21に対して、図2(1)に示すように、洗剤用ノズル192による洗剤注入、水用ノズル193によるすすぎ洗浄および吸引ノズル194による反応容器21内の液体排出を行なう洗浄処理を行なう。そして、図2(2)に示すように、洗浄部19による洗浄後の反応容器21に試薬分注機構16が汚れ検出用試薬Ld1を注入した後に、図2(3)に示すように、汚れ検出用測光部20がこの反応容器21の所定の光学的特性の測定処理を行なう。そして、汚れ検出部34は、汚れ検出用測光部20における測定結果をもとに洗浄後の反応容器21に汚れが残存していないかを検出して、汚れが残存していないと判断された反応容器21のみを再度利用して分析処理が行なわれる。
【0041】
つぎに、図4を参照して、分析装置1における洗浄後の反応容器21に対する汚れ検出処理について説明する。図4に示すように、洗浄部19は、分析処理が終了した反応容器に対する洗浄処理を行なう(ステップS2)。反応テーブル13は、洗浄処理が終了した反応容器21を試薬分注機構16による試薬吐出位置まで搬送し、試薬分注機構16は、試薬庫14内に収容された汚れ検出用試薬容器15a内の汚れ検出用試薬を、洗浄が終了した反応容器21内に注入する汚れ検出用試薬注入処理を行なう(ステップS4)。
【0042】
そして、反応テーブル13は、汚れ検出用試薬が注入された反応容器21を汚れ検出用測光部20に搬送し、汚れ検出用測光部20は、この反応容器21の蛍光などの所定の光学的特性を測定する汚れ検出用測光処理を行なう(ステップS6)。
【0043】
汚れ検出用測光部20の測定結果は、制御部31を介して、汚れ検出部34に出力される。汚れ検出部34は、汚れ検出用測光部20の測定値が所定の閾値を超えるか否かを判断する(ステップS8)。
【0044】
汚れ検出部34は、汚れ検出用測光部20の測定値が所定の閾値を超えると判断した場合(ステップS8:Yes)、この反応容器21には次の分析処理に影響を与える程度の汚れが残存していると判断する(ステップS10)。そして、制御部31は、洗浄部19に対して、汚れ検出部34によって汚れが検出された反応容器21を再洗浄させる再洗浄処理を行なう(ステップS12)。次いで、この再洗浄された反応容器21が汚れているかを再度判断するため、ステップS6に戻る。なお、再洗浄処理後に残存した汚れは、前回の汚れ検出処理のための注入した汚れ検出用試薬と反応した状態で残存する、すなわち励起光を照射されることによって蛍光を発する状態で残存するため、汚れ検出用試薬を再度注入しなくとも汚れを検出することが出来る。
【0045】
これに対し、汚れ検出部34は、汚れ検出用測光部20の測定値が所定の閾値を超えていないと判断した場合(ステップS8:No)、すなわち汚れ検出用測光部20の測定値が所定の閾値以下であると判断した場合、この反応容器21には次の分析処理に影響を与える程度の汚れが残存していないものと判断する(ステップS14)。そして、制御部31は、洗浄部19に対して、汚れ検出部34によって汚れがないと判断された反応容器21を水などですすぐすすぎ洗浄処理を行ない(ステップS16)、この反応容器21に対する汚れ検出処理を終了する。この反応容器21は、すすぎ洗浄処理が行われた後、再度分析処理に利用される。
【0046】
このように、本実施の形態1においては、反応容器21に血液検体中のたんぱく質と選択的に反応して強く蛍光を発する構成物を含む汚れ検出用試薬を投入して、反応容器21における蛍光量測定結果をもとに容器の汚れの程度を検出する。
【0047】
ここで、従来の分析装置においては、洗浄処理が終了した空の反応容器21に対し、または、図5に示すように蒸留水Lを注入した反応容器21に対し、ピンホールで絞った光源からの入射光Eiを照射し、この反応容器21を透過した出射光Eoを受光部において受光する吸光度測定を行なうことによって洗浄後の容器の清浄度を確認した上で、反応容器を再利用していた。従来の分析装置においては、反応容器21に残存した汚れによる入射光Eiの吸収によって吸光度が増加しているものと考えられるため、洗浄後の反応容器21による吸光度が所定の閾値を超えていた場合には、この反応容器21には汚れが残存していると判断していた。
【0048】
しかしながら、入射光Eiが反応容器21側壁に入射する領域は図5の領域Spのように限られた領域であることから、汚れがあった場合であっても出射光Eoの入射光Eiに対する光量変化が微小となってしまう場合がある。したがって、単に反応容器の吸光度測定を行なう従来の汚れ検出法では、汚れがあった場合であっても、汚れによる光の吸収が受光部の吸光度検出限界以下となってしまう場合があった。このため、従来の分析装置においては、受光部における吸光度の検出限界以下の低濃度の汚れが反応容器に残存している場合であっても、この汚れを検出することができなかった。
【0049】
特にたんぱく質を含む血液などを分析する分析装置では、洗浄処理によって反応容器から吸光度測定における検出限界以下の量までたんぱく質が取り除かれた場合であっても、このたんぱく質が次の分析処理において注入された試薬と反応することによって、次の分析結果に対しても強く影響を及ぼしてしまう場合があった。したがって、従来の分析装置においては、近年、要求される分析精度向上を実現できる程度に、洗浄処理後の容器に残存する汚れを厳密に検出することができなかった。
【0050】
これに対し、本実施の形態1においては、反応容器21に血液検体中のたんぱく質と選択的に反応して強く蛍光を発する構成物を含む汚れ検出用試薬を投入して、反応容器21における蛍光量測定結果をもとに容器の汚れの程度を検出する。言い換えると、本実施の形態1においては、単に反応容器の吸光度測定を行なうのではなく、液体検体中の成分と選択的に反応して強く蛍光を発する構成物を含む汚れ検出用試薬を反応容器21に注入して、残存する汚れの光学的特性を十分に検出可能である程度まで引き上げてから、反応容器21における蛍光特性の測定結果をもとに反応容器21の汚れの程度を検出する。このため、本実施の形態1によれば、汚れ検出用試薬の注入によって汚れの感度を上げることによって、従来においては検出できなかった反応容器21に残存する低濃度の汚れも厳密に検出でき、近年要求されるさらなる分析精度の向上を図ることが可能になる。
【0051】
なお、本実施の形態1においては、図3に示すように、光源20aからの光軸を避けるように受光部20bを反応容器21の開口上部に配置した場合を例に説明したが、もちろんこれに限らない。汚れ検出用試薬Ld1に含まれる構成物が発する蛍光量が強い場合には、反応容器21の側壁越しであっても十分に反応容器21からの蛍光を測定できるため、図6に示すように、光源20aと反応容器21を介して対向するように受光部20bを設けて、反応容器21を透過した蛍光E21bの蛍光量を測定するようにしてもよい。
【0052】
また、汚れ検出用試薬として、血液中のたんぱく質と選択的に反応して強く蛍光を発する構成物を含むものを例として説明したが、血液中のたんぱく質と選択的に反応して汚れに対する所定の光学的特性を十分に検出可能である程度まで引き上げることができるものであれば足りる。
【0053】
たとえば、汚れ検出用試薬は、血液に対してルミノール反応を生じさせるような試薬であって、血液中のたんぱく質と選択的に反応して強く発光する構成物を含む汚れ検出用試薬Ld2であってもよい。この場合には、図7に示すように、分析装置1は、洗浄後の反応容器21内に試薬ノズル161を用いて汚れ検出用試薬Ld2を注入して、反応容器21の開口上に設けられた受光部20bによって反応容器21から発せられる光E22の光量を測定すればよい。汚れ検出部34は、受光部20bによって測定された発光量が所定の閾値を超えていた場合には、この反応容器21に次の分析に影響を与える程度の汚れが残存していると判断し、受光部20bによって測定された発光量が所定の閾値以下である場合には、この反応容器21の汚れは次の分析処理に影響を与えない程度まで取り除かれたと判断する。なお、汚れ検出用試薬Ld2に含まれる構成物からの発光量が強い場合には、反応容器21の側壁越しであっても十分に反応容器21からの発光を測定できるため、図6と同様に、光源20aと反応容器21を介して対向するように受光部20bを設けてもよい。また、汚れ検出用試薬Ld2を用いた場合には、汚れ検出用試薬Ld1と異なり励起光を照射する必要がないため、汚れ検出用測光部20は、図7に示すように、図3に示す光源20aを削除した構成となる。
【0054】
また、汚れ検出用試薬は、血液中のたんぱく質と選択的に反応して蛍光または発光を生じるものであるほか、血液中のたんぱく質と選択的に反応して発色し、所定波長の光を吸収する構成物を含むものであってもよい。たとえば、汚れ検出用試薬は、ELISA法において用いられる試薬、ビウレット法において用いられる試薬あるいはキサントプロテイン反応等のキレート剤などのように、血液中の成分と選択的に反応して発色する構成物を含む汚れ検出用試薬Ld3であってもよい。このように、分析装置1は、汚れ検出用試薬Ld3を注入することによって、反応容器21内の汚れを染色して、汚れに対応する吸光度特性を十分に検出可能である程度まで引き上げてもよい。この場合には、図8に示すように、分析装置1は、洗浄後の反応容器21内に試薬ノズル161を用いて汚れ検出用試薬Ld3を注入して、光源20aから照射された入射光E2のうち反応容器21を透過した透過光E23を、光源20aと反応容器21を介して対向するように設けられた受光部20bで測定する。受光部20bは、受光した透過光E23の受光量をもとに所定波長の光の吸光度を測定する。汚れ検出部34は、受光部20bによって測定された所定波長の光の吸光度が所定の閾値を超えていた場合には、この反応容器21に次の分析に影響を与える程度の汚れが残存していると判断し、受光部20bによって測定された所定波長の光の吸光度が所定の閾値以下である場合には、この反応容器21の汚れは次の分析処理に影響を与えない程度まで取り除かれたと判断する。
【0055】
また、図1においては、分析処理として分光強度測定を行なう測光部18と、汚れ検出のための測光処理を行なう汚れ検出用測光部20とを別個に設けた場合を例に説明したが、汚れ検出用試薬Ld1の構成物に対する励起光が、測光部18におけるハロゲンランプなどの光源の波長領域内に含まれる場合には、血液検体の分析時と反応容器21の汚れ検出時とで共通の光源を用いることができる。すなわち、図9に示すように、汚れ検出用試薬Ld1の構成物に対する励起光が測光部18における光源の波長領域内に含まれる場合には、測光部18における光源18aを用いて、汚れ検出用試薬Ld1が注入された反応容器21に励起光E1を照射してもよい。この場合、反応容器21の開口上部に配置された受光部20bは、反応容器21から発せられる蛍光E21を受光し、受光部20bによる測定結果をもとに汚れ検出部34がこの反応容器21に対する汚れ検出を行なう。
【0056】
さらに、汚れ検出用試薬Ld1が、たんぱく質と反応することによって470nm光で励起され570nmの光を発する構成物を含むナノオレンジなどのように、励起波長が測光部18における光源18aの波長領域内で、蛍光波長が測光部18における受光素子の波長範囲内である場合には、血液検体の分析時と反応容器21の汚れ検出時とで共通の光源および受光素子を用いることができる。すなわち、図9に示すように、測光部18の光源18aから汚れ検出用試薬Ld1が注入された反応容器21に励起光E1を照射し、受光部20bの代わりに測光部18のPDA18bが、反応容器21から発せられる蛍光E21bを受光し、PDA18bによる測定結果をもとに汚れ検出部34がこの反応容器21に対する汚れ検出を行なう。
【0057】
また、汚れを染色する汚れ検出用試薬Ld3の吸収波長が測光部18における光源18aの波長領域内かつ測光部18におけるPDA18bの波長範囲内である場合には、血液検体の分析時と反応容器21の汚れ検出時とで共通の光源および受光素子を用いてもよい。図10に示すように、測光部18の光源18aから汚れ検出用試薬Ld3が注入された反応容器21に入射光E10を照射し、測光部18のPDA18bが、反応容器21を透過した出射光E20を受光し、PDA18bによる吸光度測定結果をもとに汚れ検出部34がこの反応容器21に対する汚れ検出を行なう。
【0058】
このように、血液検体の分析時と反応容器21の汚れ検出時とで共通の光源および受光素子を用いることが可能である汚れ検出用試薬を選択することによって、汚れ検出専用の測光部を新たに設ける必要がなく、従来の装置構成のまま反応容器21の厳密な汚れ検出処理を行なうことができる。
【0059】
また、たんぱく質と反応して発光する構成物を含む汚れ検出用試薬Ld2における発光波長が測光部18におけるPDA18bの波長範囲内である場合には、血液検体の分析時と反応容器21の汚れ検出時とで共通の受光素子を用いてもよい。この場合には、図11に示すように、汚れ検出用試薬Ld2が注入された反応容器21からの発せられる光E22aを測光部18のPDA18bが受光し、PDA18bによる吸光度測定結果をもとに汚れ検出部34がこの反応容器21に対する汚れ検出を行なう。なお、PDA18bの受光動作と光源18aの発光動作が必ず同時に行なわれる場合には、図11の矢印Y6のように光源18aからの出射光を遮断できるシャッター18cを設ければよい。そして、制御部31は、反応容器21の汚れ検出時では、シャッター18cを動作させて光源18aからの出射光を遮断する。このシャッター18cの遮断によって、PDA18bは、反応容器21から発せられる光E22aのみを正確に受光することができ、発光量の測定を行なうことができる。もちろん、制御部31は、通常の分析処理時には、シャッター18cを動作させず、光源18aの出射光が反応容器21内に入射するようにして吸光度測定を行なう。
【0060】
また、反応容器21内に汚れ検出用試薬Ld1〜Ld3を注入したままでは蛍光、発光または染色が受光部20b,PDA18bの測定レンジ内で測定できない場合には、汚れ検出用試薬Ld1〜Ld3の反応が終了した後に反応容器21から汚れ検出用試薬Ld1〜Ld3を排出してから、汚れ検出用測定処理を行えばよい。この場合には、分析装置1は、図12(2b)に示す汚れ検出用試薬排出専用の吸引ノズル194aを新たに設け、矢印Y7のように反応容器21に注入され反応が終了した汚れ検出用試薬Ldを反応容器21外へ排出する。
【0061】
具体的には、図12(1)のように洗剤用ノズル192、水用ノズル193および吸引ノズル194によって洗浄処理が行われた反応容器21に対して、図12(2a)に示すように、試薬ノズル161は、汚れ検出用試薬Ldを注入する。そして、図12(2b)の矢印Y7に示すように、吸引ノズル194aが、反応容器21に注入され反応が終了した汚れ検出用試薬Ldを反応容器21外へ排出する。そして、図12(3)に示すように、吸引ノズル194aによって汚れ検出用試薬Ldが排出された後の反応容器21に対して、受光部20bまたはPDA18bが汚れ検出用の光学的測定を行なう。なお、分析装置1は、洗浄部19における吸引ノズル194によって反応容器21に注入され反応が終了した汚れ検出用試薬Ldを反応容器21外へ排出してもよい。
【0062】
また、分析装置1で説明したように、汚れ検出用試薬Ldは、必ずしも試薬分注機構16によって洗浄後の反応容器21内に注入される必要はない。たとえば図13の分析装置1aおよび図14に示すように、汚れ検出用試薬容器15aと接続して汚れ検出用試薬Ldを所定量注入できる検出用試薬注入ノズル195を吸引ノズル194の次に新たに設けた洗浄部19aを有する測定機構2aを有し、洗浄処理が終了した反応容器21に対して即時かつ連続して汚れ検出用試薬を注入できるようにしてもよい。
【0063】
そして、図14のように、洗浄部19aに、検出用試薬注入ノズル195に加え、汚れ検出用試薬Ldを反応容器21外へ排出する吸引ノズル195aをさらに設けて、洗浄処理が終了した反応容器21への汚れ検出用試薬Ldの注入および汚れ検出用試薬Ldの排出を同一の機構内で連続して行なってもよい。反応テーブル13は、反応容器21をそのまま隣に順次移動させることによって、図14(1)に示す洗剤用ノズル192による洗剤注入、水用ノズル193によるすすぎ洗浄、吸引ノズル194による反応容器21内の液体排出、図14(2a)に示す検出用試薬注入ノズル195による汚れ検出用試薬注入処理および図14(2b)に示す吸引ノズル195aによる汚れ検出試薬排出処理が順に行なわれる。その後、図14(3)のように汚れ検出用測定処理が行われる。反応テーブル13が汚れ検出試薬注入および汚れ検出試薬排出を行なう各機構に反応容器21を搬送する場合には、汚れ検出試薬注入および汚れ検出試薬排出のために新たに反応テーブル搬送プログラムを作成する必要があったが、図14に示す場合には、反応容器を隣の位置に順次搬送する従来の反応テーブル搬送プログラムとほぼ同様のプログラムを使用することが可能である。
【0064】
また、実施の形態1においては、洗浄部19による洗浄後の反応容器21の汚れを検出する場合について説明したが、たとえば分析装置における分析処理前のメンテナンス時に、分析処理に使用する反応容器21の汚れを検出してもよい。
【0065】
具体的には、図15に示すように、制御部31は、入力部32などを介して、分析処理に使用する反応容器21の汚れを検出する指示があるか否かを判断する(ステップS22)。そして、制御部31は、分析処理に使用する反応容器21の汚れを検出する指示があるまでステップS22の判断処理を繰り返し、分析処理に使用する反応容器21の汚れを検出する指示があると判断した場合に(ステップS22)、分析処理に使用される各反応容器21に対して汚れ検出のための各処理を行なう。すなわち、汚れ検出対象の反応容器21に対して、図4に示すステップS2〜ステップS16と同様に、汚れ検出用試薬注入処理(ステップS24)、汚れ検出用測光処理(ステップS26)、測定値が閾値を超えるか否かの判断処理(ステップS28)を行い、そして、汚れありとの判断処理(ステップS30)および再洗浄処理(ステップS32)、または、汚れなしとの判断処理(ステップS34)およびすすぎ洗浄処理(ステップS36)を行なう。
【0066】
次いで、制御部31は、汚れ検出対象の次の反応容器21があるか否かを判断する(ステップS38)。制御部31は、汚れ検出対象である次の反応容器21があると判断した場合(ステップS38:Yes)、ステップS24に戻り、汚れ検出対象である次の反応容器21に対して汚れ検出のための各処理を行なう。一方、制御部31は、汚れ検出対象の次の反応容器21がないと判断した場合には(ステップS38:No)、汚れ検出処理を終了する。
【0067】
このように、分析装置における分析処理前のメンテナンス時に、分析処理に使用する反応容器21の汚れ検出処理および汚れがあった反応容器21の再洗浄処理を行なうことによって、次の分析処理に影響を与えない程度まで汚れが取り除かれた反応容器21を分析処理に使用することができ、分析処理の高精度化を図ることができる。
【0068】
(実施の形態2)
つぎに、実施の形態2について説明する。実施の形態2においては、洗浄処理中に汚れ検出用試薬を注入する場合について説明する。図16は、実施の形態2にかかる分析装置の構成を示す模式図である。図16に示すように、実施の形態2にかかる分析装置201の測定機構202は、洗浄処理中に汚れ検出用試薬を注入可能である検出用試薬注入ノズルを有する洗浄部219を備える。
【0069】
図17に示すように、図16に示す洗浄部219は、洗剤用ノズル192と水用ノズル193との間に、汚れ検出用試薬容器15aと接続して汚れ検出用試薬Ldを所定量注入できる検出用試薬注入ノズル219bを備える。分析装置201においては、洗浄処理の一処理として、検出用試薬注入ノズル219bによって汚れ検出用試薬が注入される。そして、汚れ検出用測光部20は、図17(3)に示すように、洗浄処理の一処理として、反応容器21に対して所定の光学的特性を測定し、汚れ検出部34は、洗浄処理の一処理として、汚れ検出用測光部20による測定結果をもとに反応容器21に対する汚れの検出を行なう。
【0070】
つぎに、図18を参照して、図16および図17に示す洗浄部219による洗浄処理について説明する。図18に示すように、洗浄部219においては、まず、図17(1a)のように反応容器21に対して、洗剤用ノズル192による排液の吸引および洗剤の注入によって洗剤注入処理が行なわれる(ステップS201)。次いで、図17(1b)の矢印Y3に示すように、汚れ検出用試薬Ldが検出用試薬注入ノズル219bによって注入される汚れ検出用試薬注入処理が行なわれる(ステップS202)。そして、図17(1c)に示すように、汚れ検出用試薬Ldが注入された反応容器21に対して、水用ノズル193による排液の吸引および水の注入による水注入処理が行われる(ステップS203)。つぎに、図17(1d)に示すように、吸引ノズル194による反応容器21内の液体排出のための吸引処理が行われる(ステップS204)。
【0071】
そして、汚れ検出用測光部20は、図17(3)に示すように、洗浄処理の一処理として、汚れ検出用試薬が処理中に注入される洗浄処理が終了した反応容器21に対して所定の光学的特性を測定する汚れ検出用測光処理を行なう(ステップS206)。汚れ検出部34は、洗浄処理の一処理として、汚れ検出用測光部20による測定結果をもとに反応容器21に対する汚れの検出を行なう。具体的には、図4に示すステップS8と同様に、汚れ検出用測光部20の測定値が所定の閾値を超えるか否かを判断する(ステップS208)。
【0072】
汚れ検出部34は、汚れ検出用測光部20の測定値が所定の閾値を超えると判断した場合(ステップS208:Yes)、この反応容器21には次の分析処理に影響を与える程度の汚れが残存しているものと判断し(ステップS210)、洗浄部219は、この反応容器21を再洗浄するため、ステップS201に戻り、洗剤注入処理を行なう。
【0073】
これに対し、汚れ検出部34は、汚れ検出用測光部20の測定値が所定の閾値を超えていないと判断した場合(ステップS208:No)、この反応容器21には次の分析処理に影響を与える程度の汚れが残存していないものと判断する(ステップS214)。そして、洗浄部19は、この反応容器21に対しすすぎ洗浄処理を行ない(ステップS216)、この反応容器21に対する洗浄処理を終了する。
【0074】
このように、実施の形態2においては、洗浄処理の一処理として汚れ検出用試薬の注入、汚れ検出用測定処理および汚れ検出のための判断処理を行なうことから、インラインでの汚れ検出用測定処理を可能とするとともに、洗浄処理において取り除けなかった反応容器21の汚れの光学的特性を十分に検出可能である程度まで引き上げた上で汚れを検出するため、実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0075】
なお、実施の形態1,2においては、汚れ検出機能を有する分析装置1,201について説明したが、分析装置とは別個の、血液検体の分析処理に使用される反応容器21の汚れを検出する汚れ検出専用の汚れ検出装置に適用してもよい。
【0076】
たとえば図19の検出装置301のように、各機構に汚れ検出対象の反応容器21を順次移送する反応容器移送部311と、各反応容器21に順次汚れ検出用試薬を注入する検出用試薬注入部312と、検出用試薬注入部312によって汚れ検出用試薬を注入された反応容器21の所定の光学的特性を測定する汚れ検出用測光部20とを有する処理機構302を備えればよい。そして、検出装置301は、検出装置301の各構成部位を制御する制御部331と、汚れ検出に必要な諸情報や汚れ検出動作の指示情報を入力する入力部332と、汚れ検出部34と、汚れ検出情報などの諸情報を出力する出力部336とを有する制御機構303を備える。汚れ検出部34によって次の分析に影響を与える程度の汚れが残存していると判断された反応容器21bは、矢印Y31のように、仕分部313によって他の反応容器21と仕分けられた後、汚れあり容器回収部314に回収される。また、汚れがないと判断された反応容器21aは、矢印Y32のように、仕分部313によって汚れなし容器回収部315に回収される。
【0077】
また、本実施の形態1,2では、たんぱく質を含む検体として血液検体を例に説明したが、もちろん血液検体に限らず、たんぱく質を含む尿などの体液のほか、たんぱく質を含む環境分析系の分析対象物、生体物質などの検体に対しても同様に汚れ検出用試薬を用いて低濃度の汚れ検出を確実化することが可能になる。
【0078】
また、上記実施の形態で説明した分析装置1,201および検出装置301は、あらかじめ用意されたプログラムをコンピュータシステムで実行することによって実現することができる。このコンピュータシステムは、所定の記録媒体に記録されたプログラムを読み出して実行することで分析装置の処理動作を実現する。ここで、所定の記録媒体とは、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MOディスク、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」の他に、コンピュータシステムの内外に備えられるハードディスクドライブ(HDD)などのように、プログラムの送信に際して短期にプログラムを保持する「通信媒体」など、コンピュータシステムによって読み取り可能なプログラムを記録する、あらゆる記録媒体を含むものである。また、このコンピュータシステムは、ネットワーク回線を介して接続した管理サーバや他のコンピュータシステムからプログラムを取得し、取得したプログラムを実行することで分析装置および検出処理の処理動作を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】実施の形態1にかかる分析装置の構成を示す模式図である。
【図2】図1に示す分析装置における反応容器の汚れ検出処理を説明する図である。
【図3】図1に示す汚れ検出用測光部を説明する図である。
【図4】図1に示す分析装置における反応容器の汚れ検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】従来の汚れ検出処理を説明する図である。
【図6】図1に示す汚れ検出用測光部の他の例を説明する図である。
【図7】図1に示す汚れ検出用測光部の他の例を説明する図である。
【図8】図1に示す汚れ検出用測光部の他の例を説明する図である。
【図9】図1に示す汚れ検出用測光部の他の例を説明する図である。
【図10】図1に示す汚れ検出用測光部の他の例を説明する図である。
【図11】図1に示す汚れ検出用測光部の他の例を説明する図である。
【図12】図1に示す分析装置における反応容器の汚れ検出処理の他の例を説明する図である。
【図13】実施の形態1にかかる分析装置の他の構成を示す模式図である。
【図14】図13に示す分析装置における反応容器の汚れ検出処理を説明する図である。
【図15】図1に示す分析装置における反応容器の汚れ検出処理の処理手順の他の例を示すフローチャートである。
【図16】実施の形態2にかかる分析装置の構成を示す模式図である。
【図17】図16に示す分析装置における反応容器の汚れ検出処理を説明する図である。
【図18】図16に示す分析装置における反応容器の汚れ検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図19】実施の形態1にかかる分析装置における汚れ検出機構を適用した検出装置の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0080】
1,1a,201 分析装置
2,2a,202 測定機構
3,303 制御機構
11 検体移送部
11b 検体ラック
11a 検体容器
12 検体分注機構
12a アーム
13 反応テーブル
14 試薬庫
15 試薬容器
15a 汚れ検出用試薬容器
16 試薬分注機構
16a アーム
17 攪拌部
18 測光部
18a 光源
18b PDA
18c シャッター
19,19a,219 洗浄部
20 汚れ検出用測光部
20a 光源
20b 受光部
21 反応容器
31,331 制御部
32,332 入力部
33 分析部
34 汚れ検出部
35 記憶部
36,336 出力部
161 試薬ノズル
192 洗剤用ノズル
193 水用ノズル
194,194a,195a 吸引ノズル
195,219b 検出用試薬注入ノズル
301 検出装置
302 処理機構
311 反応容器移送部
312 検出用試薬注入部
313 仕分部
314 汚れあり容器回収部
315 汚れなし容器回収部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体検体の分析処理に使用される容器の汚れの程度を検出する汚れ検出装置において、
前記容器に前記液体検体中の成分と選択的に反応して光学的特性を変化させる検出用試薬を投入する試薬投入手段と、
前記試薬投入手段によって前記検出用試薬を投入された前記容器の光学的特性を測定する測光手段と、
前記測光手段の測定結果をもとに前記容器の汚れの程度を検出する検出手段と、
を備えたことを特徴とする汚れ検出装置。
【請求項2】
前記検出用試薬は、前記液体検体の成分と反応して蛍光を生じる構成物を含み、
前記測光手段は、前記容器から発せられた蛍光量を測定し、
前記検出手段は、前記測光手段によって測定された蛍光量が所定の閾値を超えていた場合には前記容器に汚れが残存していると判断し、前記蛍光量が所定の閾値以下である場合には前記容器の汚れは取り除かれたと判断することを特徴とする請求項1に記載の汚れ検出装置。
【請求項3】
前記検出用試薬は、前記液体検体の成分と反応して発光する構成物を含み、
前記測光手段は、前記容器からの発光量を測定し、
前記検出手段は、前記測光手段によって測定された発光量が所定の閾値を超えていた場合には前記容器に汚れが残存していると判断し、前記発光量が所定の閾値以下である場合には前記容器の汚れは取り除かれたと判断することを特徴とする請求項1に記載の汚れ検出装置。
【請求項4】
前記検出用試薬は、前記液体検体の成分と反応して所定波長の光を吸収する構成物を含み、
前記測光手段は、前記容器を透過した前記所定波長の光を測定して前記容器における前記所定波長の光の吸光度を測定し、
前記検出手段は、前記測光手段によって測定された所定波長の光の吸光度が所定の閾値を超えていた場合には前記容器に汚れが残存していると判断し、前記所定波長の光の吸光度が所定の閾値以下である場合には前記容器の汚れは取り除かれたと判断することを特徴とする請求項1に記載の汚れ検出装置。
【請求項5】
前記容器へ投入された前記検出用試薬を該容器外部へ排出する排出手段をさらに備え、
前記測光手段は、前記排出手段によって前記検出用試薬が排出された後の容器に対して光学的測定を行なうことを特徴とする請求項1に記載の汚れ検出装置。
【請求項6】
前記測光手段は、前記容器の開口上部に配置されることを特徴とする請求項2または3に記載の汚れ検出装置。
【請求項7】
前記測光手段は、前記容器の蛍光量検出時に前記容器へ光を照射する光源の光軸を避け配置されることを特徴とする請求項2に記載の汚れ検出装置。
【請求項8】
容器に保持された液体検体を分析する分析装置において、
前記請求項1〜7のいずれか一つに記載の汚れ検出装置を備え、
前記汚れ検出装置は、当該分析装置において前記液体検体が分注される前記容器の汚れを検出することを特徴とする分析装置。
【請求項9】
前記液体検体の分析処理に使用された容器を洗浄する洗浄機構をさらに備え、
前記汚れ検出装置は、前記洗浄機構によって洗浄された容器の汚れを検出することを特徴とする請求項8に記載の分析装置。
【請求項10】
前記試薬投入手段は、前記洗浄機構による前記容器の洗浄処理中に、前記検出用試薬を投入し、
前記測光手段は、前記洗浄機構による前記洗浄処理が終了した前記容器の光学的特性を測定することを特徴とする請求項9に記載の分析装置。
【請求項11】
当該分析装置が前記液体検体に光を照射して該液体検体を分析する場合、前記液体検体の分析時と前記容器の汚れ検出時とで共通の光源を用いることを特徴とする請求項8に記載の分析装置。
【請求項12】
前記汚れ検出装置は、当該分析装置における分析処理前に該分析処理に使用する前記容器の汚れを検出することを特徴とする請求項8に記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−14505(P2009−14505A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176530(P2007−176530)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】