汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の製造方法
【課題】 洗剤を用いずに洗濯を行った場合であっても、優れた洗浄効果が得られ、かつ、高い伸縮性を有する汚れ洗濯性向上機能が付与された弾性繊維の製造方法、該汚れ洗濯性向上機能が付与された弾性繊維の製造方法により製造された汚れ洗濯性向上機能が付与された弾性繊維、及び、該汚れ洗濯性向上機能が付与された弾性繊維を含有する繊維製品を提供する。
【解決手段】 綿とポリウレタン繊維との混合繊維を、モノクロル酢酸又はモノクロル酢酸のアルカリ金属塩と、アルカリ金属の水酸化物とを含有する処理液に接触させることを特徴とする汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の製造方法。
【解決手段】 綿とポリウレタン繊維との混合繊維を、モノクロル酢酸又はモノクロル酢酸のアルカリ金属塩と、アルカリ金属の水酸化物とを含有する処理液に接触させることを特徴とする汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、洗剤を用いずに洗濯を行った場合であっても、優れた洗浄効果が得られ、かつ、高い伸縮性を有する汚れ洗濯性向上機能が付与された弾性繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
汚れた繊維製品は、洗剤を用いて洗濯することが常識である。これは、洗剤の主成分である界面活性剤の効果により汚れ成分と繊維の表面との剥離を促進することにより達成される。しかし、大量の洗剤が環境中に排出された場合、海や湖沼等の環境を著しく汚染する可能性が指摘されている。これに対して、近年では、洗剤中の成分を見直して、環境に与える影響の少ない成分を主成分とする洗剤や、より少ない量で従来と同等の洗浄効果が得られる洗剤等が開発され、上市されている。しかしながら、家庭用途及び産業用途で使用され排出される洗剤の量は膨大であり、環境に与える影響をいかに軽減するかは依然として大きな課題のままであった。
【０００３】
これに対して、洗濯機や洗濯方法を工夫することにより、洗剤を用いなくとも洗剤を用いた場合と同等の洗浄効果が得られる洗濯方法も検討されている。例えば、特許文献１には、ヒドロニウムイオンやヒドロキシルイオン等を含有した洗剤を入れなくとも洗浄効果を有する水と空気との混合体を高速で衣類を通過させる洗濯方法が開示されている。しかしながら、この方法は特殊な洗濯機を必要とするうえ、皮脂汚れ等の油性成分による汚れに対する洗浄効果は不充分であるとの報告もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開２０００−２３７４８５号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
本発明は、上記現状に鑑み、洗剤を用いずに洗濯を行った場合であっても、優れた洗浄効果が得られ、かつ、高い伸縮性を有する汚れ洗濯性向上機能が付与された弾性繊維の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
本発明は、綿とポリウレタン繊維との混合繊維を、モノクロル酢酸又はモノクロル酢酸のアルカリ金属塩と、アルカリ金属の水酸化物とを含有する処理液に接触させる汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【０００７】
本発明者らは、鋭意検討の結果、繊維又は繊維製品に親水化処理を施すことより、汚れ洗濯性向上機能を付与できることを見出し、特開２００６−３３６１４５号公報において、所定のアルカリ金属塩と、アルカリ金属の水酸化物とを含む溶液でポリエステル繊維を処理することにより、優れた汚れ洗濯性向上機能を発揮できる技術を開示した。
しかしながら、このような技術は、ポリエステル繊維には好適に適用できるものの、伸縮性に優れる繊維として急速に需要が高まっているポリウレタン繊維に適用した場合、ポリウレタン繊維の高い親油性に起因して、汚れ洗濯性向上機能を付与できないという問題があった。
【０００８】
これに対して、本発明者らは鋭意検討した結果、綿とポリウレタン繊維との混合繊維をモノクロル酢酸又はモノクロル酢酸のアルカリ金属塩と、アルカリ金属の水酸化物とを含む溶液で処理した場合に、ポリウレタン繊維の有する伸縮性を損なうことなく、充分な汚れ洗濯性向上機能を発揮できる程度に親水化できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【０００９】
なお、本明細書において「汚れ洗濯性向上機能」とは、洗剤を用いずに洗濯した場合であっても、洗剤を用いて洗濯した場合に近い洗浄効果が得られることを意味し、「近い洗浄効果が得られる」とは、本発明の汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の製造方法により製造した汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維又は繊維製品を洗剤を用いずに洗濯した場合の洗浄効果が、未処理の綿とポリウレタン繊維との混合繊維又は繊維製品を洗剤を用いて洗濯した場合の洗浄効果に近いことを意味する。また、対象となる綿とポリウレタン繊維との混合繊維又は繊維製品が白色を含む色物である場合には、例えば、本発明の汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の製造方法により製造した汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維又は繊維製品を、オレイン酸８０ｇ／Ｌ、ゼラチン２０ｇ／Ｌを含有する溶液に５分間浸漬し、乾燥して洗剤を用いずに洗濯した後のオレイン酸の残留率（％）が、未処理の綿とポリウレタン繊維との混合繊維又は繊維製品を、オレイン酸８０ｇ／Ｌ、ゼラチン２０ｇ／Ｌを含有する溶液に５分間浸漬し、乾燥して洗剤を用いて洗濯した後のオレイン酸の残留率（％）が１２０％以内であることを意味する。
また、本明細書において「弾性繊維」とは、ＪＩＳ Ｌ ０２０４に規定されているように、ゴム状弾性をもっている繊維のことをいう。
【００１０】
本発明の汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の製造方法では、綿とポリウレタン繊維との混合繊維を、モノクロル酢酸又はモノクロル酢酸のアルカリ金属塩と、アルカリ金属の水酸化物とを含有する処理液に接触させる。
【００１１】
上記綿としては、特に限定されないが、木綿等を使用することができる。
【００１２】
上記ポリウレタン繊維は、分子鎖中にウレタン結合を有するポリウレタンからなる弾性繊維である。上記ポリウレタン繊維は、ゴムのように良く伸び、高い伸縮性を有する繊維でありながら、ゴムよりも強く、老化しにくいという特性を有し、自由に染色でき、極細の糸とすることもできる。従って、水着、パンティーストッキング、スポーツウェア等の伸縮性が要求される衣料に特に好適に用いることができる。
【００１３】
上記ポリウレタン繊維は、例えば、高分子ジオールと有機ジイソシアネートを主体とするイソシアネートと多官能活性水素化合物とを反応させて得られるポリウレタン樹脂を紡糸して得られたものが好ましい。なお、上記ポリウレタン繊維の紡糸方法としては特に限定されず、例えば、乾式紡糸法、湿式紡糸法、溶融紡糸法等の公知の方法によって製造することができる。
【００１４】
上記高分子ジオールとしては、例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレン、プロピレンエーテルグリコールのようなポリエーテルグリコール類、エチレングリコール、１，６−ヘキサンジオール、１，４−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類の少なくとも１種とアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、βーメチルアジピン酸、イソフタル酸等のジカルボン酸の少なくとも一種を反応させて得られるポリエステルグリコール類、ポリカプロラクトングリコール、ポリヘキサメチレンジカーボネートグリコールのような高分子ジオール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、２種以上を併用してもよい。
【００１５】
上記有機ジイソシアネートとしては、例えば、４，４´−ジフェニルメタンジイソシアネート、１，５−ナフタレンジイソシアネート、１，４−フェニレンジイソシアネート、２，４−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、１，４−シクロヘキサンジイソシアネート、４，４´ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートのような有機ジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、２種以上を併用してもよい。
【００１６】
上記多官能活性水素化合物としては、例えば、エチレンジアミン、１，２−プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、４，４´−ジフェニルメタンジアミン、ヒドラジン、１，４−ジアミノピペラジン、エチレングリコール、１，４−ブタンジオール、１，６−ヘキサンジオール等が挙げられる。
【００１７】
上記ポリウレタン繊維のうち、市販されているものとしては、例えば、モビロン（日清紡社製）、ライクラ（東レ・デュポン社製）、ロイカ（旭化成社製）、エスパ（東洋紡社製）、フジボウスパンデックス（富士紡績社製）等が挙げられる。
【００１８】
上記綿とポリウレタン繊維との混合繊維としては、例えば、綿とポリウレタン繊維との複合糸や、綿とポリウレタン繊維とを交編又は交織したものを用いることができる。
【００１９】
上記原料となる綿とポリウレタン繊維との混合繊維は、綿とポリウレタン繊維との混合繊維のみからなるものであってもよく、上記綿とポリウレタン繊維との混合繊維に、更に麻、絹、羊毛等の天然繊維や、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテート、ナイロン、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、アクリル、アクリル系、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成繊維との混合した繊維であってもよい。
【００２０】
上記綿とポリウレタン繊維との混合繊維における綿とポリウレタン繊維との混率については特に限定されないが、８５：１５〜９５：５であることが好ましい。
上記範囲よりも上記綿を多くすると、繊維の伸縮性を確保することができず、上記ポリウレタン繊維を多くすると、汚れ洗濯向上性が低下する。上記範囲内とすることで、処理後の繊維について、伸縮性と汚れ洗濯向上性とを両立させることが可能となる。
【００２１】
上記処理液中におけるモノクロル酢酸又はモノクロル酢酸のアルカリ金属塩の濃度の好ましい下限は０．１ｇ／Ｌ、好ましい上限は６００ｇ／Ｌである。上記濃度が０．１ｇ／Ｌ未満であると、上記綿とポリウレタン繊維との混合繊維をほとんど親水化できずに、所定の汚れ洗濯性向上機能が付与されないことがあり、６００ｇ／Ｌを超えると、得られる汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の風合いが悪化することがある。上記濃度のより好ましい下限は１０ｇ／Ｌ、より好ましい上限は３００ｇ／Ｌである。
【００２２】
上記処理液中におけるアルカリ金属の水酸化物の濃度の好ましい下限は０．１ｇ／Ｌ、好ましい上限は３００ｇ／Ｌである。上記濃度が０．１ｇ／Ｌ未満であると、綿とポリウレタン繊維との混合繊維をほとんど親水化できずに、所定の汚れ洗濯性向上機能が付与されないことがあり、３００ｇ／Ｌを超えると、得られる汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の風合いが悪化することがある。上記濃度のより好ましい下限は１０ｇ／Ｌ、より好ましい上限は３００ｇ／Ｌである。
【００２３】
上記綿とポリウレタン繊維との混合繊維と上記処理液とを接触させる方法としては、例えば、処理液中で上記綿とポリウレタン繊維との混合繊維を回転させる液流法；上記綿とポリウレタン繊維との混合繊維を処理液中に浸漬した後にパディング（絞り）する方法等が挙げられる。使用効率の点で、浴比（処理液の使用割合）を下げることが有効であり、この点で浸漬した後にパディングする方法が有効である。なお、上記綿とポリウレタン繊維との混合繊維と処理液とを接触させる際の温度条件としては特に限定されないが、好ましい下限は５℃、好ましい上限は２５０℃である。
【００２４】
上記綿とポリウレタン繊維との混合繊維と処理液とを接触させる時間としてはモノクロル酢酸又はモノクロル酢酸のアルカリ金属塩の濃度、アルカリ金属の水酸化物の濃度等の諸条件から適宜選択すればよいが、好ましい下限は１秒、好ましい上限は１００時間である。
【００２５】
本発明の汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の製造方法によれば、ポリウレタン繊維が有する高い伸縮性を損なうことなく、洗剤を用いずに洗濯を行った場合であっても優れた洗浄効果が得られるという汚れ洗濯性向上機能が付与された繊維を得ることができる。このような繊維では、また、洗剤を用いずに洗濯を行う場合には、洗剤を除去する操作（すすぎ操作）を省略することができることから、より短い時間で洗濯を行うことができる。このような洗濯時間の短縮により、水や電気等の資源を大幅に節約することができる。更に、本発明の汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の製造方法により製造された汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維を含む繊維製品は、吸放湿性に優れ、着衣の際の快適性に優れるという副次的な効果もある。
【００２６】
本発明の汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の製造方法により製造されたものである汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維もまた、本発明の１つである。
本発明の汚れ汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の製造方法により製造された汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維を含有する繊維製品もまた、本発明の１つである。
なお、本明細書において繊維製品には、水着、スポーツウェア、肌着、上着、靴下、パンティーストッキング、手袋、帽子、ヘアバンド、ネクタイ等の衣類の他、ハンカチ、タオル、フェイスマスク、マフラー、シーツ、枕カバー、ふとん、クッション、おむつ、おむつカバー等の通常繊維が用いられる全てのものが含まれ、特に伸縮性が必要とされる用途に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【００２７】
本発明によれば、洗剤を用いずに洗濯を行った場合であっても、優れた洗浄効果が得られ、かつ、高い伸縮性を有する汚れ洗濯性向上機能が付与された弾性繊維の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【００２８】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【００２９】
（実施例１）
元生地として綿９４．７％、ポリウレタン繊維（モビロンＲ、日清紡社製）５．３％の混率で編んだ生地を使用し、モノクロル酢酸ナトリウム（２００ｇ／Ｌ）及び水酸化ナトリウム（７０ｇ／Ｌ）を含有する処理液中に１：２０の浴比で浸漬し、パッダーで絞った後、２５℃、２４時間放置して反応させた。水洗して未反応物を除去し、乾燥させることにより処理布を得た。
なお、得られた処理布の加工度は２．８であった。なお、上記加工度は、処理によってカルボキシメチル化反応したＯＨ基の割合（％）を表し、未処理の生地のＯＨ基の数に対する処理後の生地のＣＯＯ基の数の割合（％）を示す。
【００３０】
上記ＣＯＯ基の数は、生地の全ＣＯＯ基をＣＯＯＨ基とし、水酸化ナトリウム水溶液（０．１Ｎ）に浸漬した後、その置換に使用されたＮａを定量することにより、求めることができる。置換に使用されたＮａ量は、生地を浸漬した水酸化ナトリウム水溶液を、例えば、塩酸（０．１Ｎ）を使用して滴定することにより、定量することができる。具体的には、以下の測定方法を採用することができる。
【００３１】
（１）生地を０．３Ｎの塩酸に、浴比１：５０、液温２０℃の条件で１時間浸漬して全ＣＯＯ基をＣＯＯＨ基とし、脱水し、乾燥して残留ＨＣｌを除去し、約４ｇをサンプリングして絶乾重量（Ｗ（ｇ））を秤量する。
【００３２】
（２）絶乾重量を秤量した生地を、精秤した０．１Ｎの水酸化ナトリウム水溶液５０ｍｌ（Ｂ（ｍｌ））に浸漬して液温２０℃で１晩放置することにより、全ＣＯＯＨ基をＣＯＯＮａに置換する。
【００３３】
（３）置換に使用されたＮａを定量するため、０．１Ｎ塩酸を使用して液を滴定し、滴定値をＸ（ｍｌ）とする。指示薬としてはフェノールフタレインを使用することができる。
【００３４】
上記加工度は、処理後の生地の絶乾重量（Ｗ（ｇ））、水酸化ナトリウム水溶液の体積（Ｂ（ｍｌ））、滴定に要した塩酸の体積（Ｘ（ｍｌ））から、以下の計算式に従って算出することができる。
【００３５】
加工度（モル％）＝１６２．１４×（Ｂ−Ｘ）÷〔１００００Ｗ−５９．０４×（Ｂ−Ｘ）〕÷３×１００
【００３６】
（実施例２〜９）
元生地として表１に示す綿とポリウレタン繊維との混合繊維を使用し、表１に示す加工度となるように処理を行った以外は実施例１と同様にして処理布を得た。なお、加工度の調整は、水酸化ナトリウムの濃度を変更することにより行った。
なお、ポリウレタン繊維としては、モビロンＱＳ（日清紡社製）、ライクラ１７８Ｃ（東レ・デュポン社製）、ライクラ１２７Ｃ（東レ・デュポン社製）を使用した。
【００３７】
（比較例１〜５）
生地として表１に示す綿とポリウレタン繊維との混合繊維を使用して処理液による処理を行わず、未処理布を得た。
【００３８】
（比較例６）
綿１００％の生地を使用して処理液による処理を行わず、未処理布を得た。
【００３９】
（評価）
実施例及び比較例で得た処理布及び未処理布について以下の方法により、オレイン酸洗浄性試験及び白度低下試験を行った。
結果を表１に示した。
【００４０】
（１）オレイン酸洗浄性試験
得られた処理布及び未処理布からなる試験布を、オレイン酸８０ｇ／Ｌ、ゼラチン２０ｇ／Ｌを含有する溶液に５分間浸漬し、水平マングルで該試験布と同等量絞った後、１２０℃で５分間乾燥し、一晩放置した。次いで、水のみの場合と、洗剤（花王社製、アタック）を０．６７ｇ／Ｌの濃度となるように加えた場合で、ＪＩＳ Ｌ ０２１３ １０３に規定する方法で洗濯を行った。
洗濯後の各試験布を天日乾燥した後、試験布上に残存するオレイン酸をメタノールで抽出し、ガスクロマトグラフ（島津製作所社製、ＧＣ−１７Ａ）によりオレイン酸の残留量を測定し、洗濯前後の測定値からオレイン酸残留率（％）を求めた。得られた数値から、以下の基準により評価した。
【００４１】
◎：水のみで洗濯した場合のオレイン酸残留率（％）が、洗剤を用いて未処理布を洗濯した場合のオレイン酸残留率の８０％以下
〇：水のみで洗濯した場合のオレイン酸残留率（％）が、洗剤を用いて未処理布を洗濯した場合のオレイン酸残留率の１１０％以下
△：水のみで洗濯した場合のオレイン酸残留率（％）が、洗剤を用いて未処理布を洗濯した場合のオレイン酸残留率の１２０％以下
×：水のみで洗濯した場合のオレイン酸残留率（％）が、洗剤を用いて未処理布を洗濯した場合のオレイン酸残留率の１２０％を超える
【００４２】
（２）白度低下試験
得られた処理布及び未処理布からなる試験布を、塩化ナトリウム２０．０ｇ／Ｌ、塩化アンモニウム１７．５ｇ／Ｌ、尿素５．０ｇ／Ｌ、酢酸２．５ｇ／Ｌ、乳酸１５．０ｇ／Ｌを含有する人工汗溶液に５分間浸漬し、水平マングルで該試験布と同等量絞った後、４０℃で１時間乾燥した。その後、水のみの場合と、洗剤（花王社製、アタック）を０．６７ｇ／Ｌの濃度となるように加えた場合で、ＪＩＳ Ｌ ０２１３ １０３に規定する方法で洗濯を行った。洗濯後の各試験布を天日で５時間乾燥した後、分光光度計（ＷＨＩＴＥ ＥＹＥ３０００、サカタインクス社製）を用いて洗濯前後の測定値から白度の差を測定した。
【００４３】
【表１】
【産業上の利用可能性】
【００４４】
本発明によれば、洗剤を用いずに洗濯を行った場合であっても、優れた洗浄効果が得られ、かつ、高い伸縮性を有する汚れ洗濯性向上機能が付与された弾性繊維の製造方法を提供することができる。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、洗剤を用いずに洗濯を行った場合であっても、優れた洗浄効果が得られ、かつ、高い伸縮性を有する汚れ洗濯性向上機能が付与された弾性繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
汚れた繊維製品は、洗剤を用いて洗濯することが常識である。これは、洗剤の主成分である界面活性剤の効果により汚れ成分と繊維の表面との剥離を促進することにより達成される。しかし、大量の洗剤が環境中に排出された場合、海や湖沼等の環境を著しく汚染する可能性が指摘されている。これに対して、近年では、洗剤中の成分を見直して、環境に与える影響の少ない成分を主成分とする洗剤や、より少ない量で従来と同等の洗浄効果が得られる洗剤等が開発され、上市されている。しかしながら、家庭用途及び産業用途で使用され排出される洗剤の量は膨大であり、環境に与える影響をいかに軽減するかは依然として大きな課題のままであった。
【０００３】
これに対して、洗濯機や洗濯方法を工夫することにより、洗剤を用いなくとも洗剤を用いた場合と同等の洗浄効果が得られる洗濯方法も検討されている。例えば、特許文献１には、ヒドロニウムイオンやヒドロキシルイオン等を含有した洗剤を入れなくとも洗浄効果を有する水と空気との混合体を高速で衣類を通過させる洗濯方法が開示されている。しかしながら、この方法は特殊な洗濯機を必要とするうえ、皮脂汚れ等の油性成分による汚れに対する洗浄効果は不充分であるとの報告もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開２０００−２３７４８５号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
本発明は、上記現状に鑑み、洗剤を用いずに洗濯を行った場合であっても、優れた洗浄効果が得られ、かつ、高い伸縮性を有する汚れ洗濯性向上機能が付与された弾性繊維の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
本発明は、綿とポリウレタン繊維との混合繊維を、モノクロル酢酸又はモノクロル酢酸のアルカリ金属塩と、アルカリ金属の水酸化物とを含有する処理液に接触させる汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【０００７】
本発明者らは、鋭意検討の結果、繊維又は繊維製品に親水化処理を施すことより、汚れ洗濯性向上機能を付与できることを見出し、特開２００６−３３６１４５号公報において、所定のアルカリ金属塩と、アルカリ金属の水酸化物とを含む溶液でポリエステル繊維を処理することにより、優れた汚れ洗濯性向上機能を発揮できる技術を開示した。
しかしながら、このような技術は、ポリエステル繊維には好適に適用できるものの、伸縮性に優れる繊維として急速に需要が高まっているポリウレタン繊維に適用した場合、ポリウレタン繊維の高い親油性に起因して、汚れ洗濯性向上機能を付与できないという問題があった。
【０００８】
これに対して、本発明者らは鋭意検討した結果、綿とポリウレタン繊維との混合繊維をモノクロル酢酸又はモノクロル酢酸のアルカリ金属塩と、アルカリ金属の水酸化物とを含む溶液で処理した場合に、ポリウレタン繊維の有する伸縮性を損なうことなく、充分な汚れ洗濯性向上機能を発揮できる程度に親水化できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【０００９】
なお、本明細書において「汚れ洗濯性向上機能」とは、洗剤を用いずに洗濯した場合であっても、洗剤を用いて洗濯した場合に近い洗浄効果が得られることを意味し、「近い洗浄効果が得られる」とは、本発明の汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の製造方法により製造した汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維又は繊維製品を洗剤を用いずに洗濯した場合の洗浄効果が、未処理の綿とポリウレタン繊維との混合繊維又は繊維製品を洗剤を用いて洗濯した場合の洗浄効果に近いことを意味する。また、対象となる綿とポリウレタン繊維との混合繊維又は繊維製品が白色を含む色物である場合には、例えば、本発明の汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の製造方法により製造した汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維又は繊維製品を、オレイン酸８０ｇ／Ｌ、ゼラチン２０ｇ／Ｌを含有する溶液に５分間浸漬し、乾燥して洗剤を用いずに洗濯した後のオレイン酸の残留率（％）が、未処理の綿とポリウレタン繊維との混合繊維又は繊維製品を、オレイン酸８０ｇ／Ｌ、ゼラチン２０ｇ／Ｌを含有する溶液に５分間浸漬し、乾燥して洗剤を用いて洗濯した後のオレイン酸の残留率（％）が１２０％以内であることを意味する。
また、本明細書において「弾性繊維」とは、ＪＩＳ Ｌ ０２０４に規定されているように、ゴム状弾性をもっている繊維のことをいう。
【００１０】
本発明の汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の製造方法では、綿とポリウレタン繊維との混合繊維を、モノクロル酢酸又はモノクロル酢酸のアルカリ金属塩と、アルカリ金属の水酸化物とを含有する処理液に接触させる。
【００１１】
上記綿としては、特に限定されないが、木綿等を使用することができる。
【００１２】
上記ポリウレタン繊維は、分子鎖中にウレタン結合を有するポリウレタンからなる弾性繊維である。上記ポリウレタン繊維は、ゴムのように良く伸び、高い伸縮性を有する繊維でありながら、ゴムよりも強く、老化しにくいという特性を有し、自由に染色でき、極細の糸とすることもできる。従って、水着、パンティーストッキング、スポーツウェア等の伸縮性が要求される衣料に特に好適に用いることができる。
【００１３】
上記ポリウレタン繊維は、例えば、高分子ジオールと有機ジイソシアネートを主体とするイソシアネートと多官能活性水素化合物とを反応させて得られるポリウレタン樹脂を紡糸して得られたものが好ましい。なお、上記ポリウレタン繊維の紡糸方法としては特に限定されず、例えば、乾式紡糸法、湿式紡糸法、溶融紡糸法等の公知の方法によって製造することができる。
【００１４】
上記高分子ジオールとしては、例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレン、プロピレンエーテルグリコールのようなポリエーテルグリコール類、エチレングリコール、１，６−ヘキサンジオール、１，４−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類の少なくとも１種とアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、βーメチルアジピン酸、イソフタル酸等のジカルボン酸の少なくとも一種を反応させて得られるポリエステルグリコール類、ポリカプロラクトングリコール、ポリヘキサメチレンジカーボネートグリコールのような高分子ジオール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、２種以上を併用してもよい。
【００１５】
上記有機ジイソシアネートとしては、例えば、４，４´−ジフェニルメタンジイソシアネート、１，５−ナフタレンジイソシアネート、１，４−フェニレンジイソシアネート、２，４−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、１，４−シクロヘキサンジイソシアネート、４，４´ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートのような有機ジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、２種以上を併用してもよい。
【００１６】
上記多官能活性水素化合物としては、例えば、エチレンジアミン、１，２−プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、４，４´−ジフェニルメタンジアミン、ヒドラジン、１，４−ジアミノピペラジン、エチレングリコール、１，４−ブタンジオール、１，６−ヘキサンジオール等が挙げられる。
【００１７】
上記ポリウレタン繊維のうち、市販されているものとしては、例えば、モビロン（日清紡社製）、ライクラ（東レ・デュポン社製）、ロイカ（旭化成社製）、エスパ（東洋紡社製）、フジボウスパンデックス（富士紡績社製）等が挙げられる。
【００１８】
上記綿とポリウレタン繊維との混合繊維としては、例えば、綿とポリウレタン繊維との複合糸や、綿とポリウレタン繊維とを交編又は交織したものを用いることができる。
【００１９】
上記原料となる綿とポリウレタン繊維との混合繊維は、綿とポリウレタン繊維との混合繊維のみからなるものであってもよく、上記綿とポリウレタン繊維との混合繊維に、更に麻、絹、羊毛等の天然繊維や、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテート、ナイロン、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、アクリル、アクリル系、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成繊維との混合した繊維であってもよい。
【００２０】
上記綿とポリウレタン繊維との混合繊維における綿とポリウレタン繊維との混率については特に限定されないが、８５：１５〜９５：５であることが好ましい。
上記範囲よりも上記綿を多くすると、繊維の伸縮性を確保することができず、上記ポリウレタン繊維を多くすると、汚れ洗濯向上性が低下する。上記範囲内とすることで、処理後の繊維について、伸縮性と汚れ洗濯向上性とを両立させることが可能となる。
【００２１】
上記処理液中におけるモノクロル酢酸又はモノクロル酢酸のアルカリ金属塩の濃度の好ましい下限は０．１ｇ／Ｌ、好ましい上限は６００ｇ／Ｌである。上記濃度が０．１ｇ／Ｌ未満であると、上記綿とポリウレタン繊維との混合繊維をほとんど親水化できずに、所定の汚れ洗濯性向上機能が付与されないことがあり、６００ｇ／Ｌを超えると、得られる汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の風合いが悪化することがある。上記濃度のより好ましい下限は１０ｇ／Ｌ、より好ましい上限は３００ｇ／Ｌである。
【００２２】
上記処理液中におけるアルカリ金属の水酸化物の濃度の好ましい下限は０．１ｇ／Ｌ、好ましい上限は３００ｇ／Ｌである。上記濃度が０．１ｇ／Ｌ未満であると、綿とポリウレタン繊維との混合繊維をほとんど親水化できずに、所定の汚れ洗濯性向上機能が付与されないことがあり、３００ｇ／Ｌを超えると、得られる汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の風合いが悪化することがある。上記濃度のより好ましい下限は１０ｇ／Ｌ、より好ましい上限は３００ｇ／Ｌである。
【００２３】
上記綿とポリウレタン繊維との混合繊維と上記処理液とを接触させる方法としては、例えば、処理液中で上記綿とポリウレタン繊維との混合繊維を回転させる液流法；上記綿とポリウレタン繊維との混合繊維を処理液中に浸漬した後にパディング（絞り）する方法等が挙げられる。使用効率の点で、浴比（処理液の使用割合）を下げることが有効であり、この点で浸漬した後にパディングする方法が有効である。なお、上記綿とポリウレタン繊維との混合繊維と処理液とを接触させる際の温度条件としては特に限定されないが、好ましい下限は５℃、好ましい上限は２５０℃である。
【００２４】
上記綿とポリウレタン繊維との混合繊維と処理液とを接触させる時間としてはモノクロル酢酸又はモノクロル酢酸のアルカリ金属塩の濃度、アルカリ金属の水酸化物の濃度等の諸条件から適宜選択すればよいが、好ましい下限は１秒、好ましい上限は１００時間である。
【００２５】
本発明の汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の製造方法によれば、ポリウレタン繊維が有する高い伸縮性を損なうことなく、洗剤を用いずに洗濯を行った場合であっても優れた洗浄効果が得られるという汚れ洗濯性向上機能が付与された繊維を得ることができる。このような繊維では、また、洗剤を用いずに洗濯を行う場合には、洗剤を除去する操作（すすぎ操作）を省略することができることから、より短い時間で洗濯を行うことができる。このような洗濯時間の短縮により、水や電気等の資源を大幅に節約することができる。更に、本発明の汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の製造方法により製造された汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維を含む繊維製品は、吸放湿性に優れ、着衣の際の快適性に優れるという副次的な効果もある。
【００２６】
本発明の汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の製造方法により製造されたものである汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維もまた、本発明の１つである。
本発明の汚れ汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の製造方法により製造された汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維を含有する繊維製品もまた、本発明の１つである。
なお、本明細書において繊維製品には、水着、スポーツウェア、肌着、上着、靴下、パンティーストッキング、手袋、帽子、ヘアバンド、ネクタイ等の衣類の他、ハンカチ、タオル、フェイスマスク、マフラー、シーツ、枕カバー、ふとん、クッション、おむつ、おむつカバー等の通常繊維が用いられる全てのものが含まれ、特に伸縮性が必要とされる用途に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【００２７】
本発明によれば、洗剤を用いずに洗濯を行った場合であっても、優れた洗浄効果が得られ、かつ、高い伸縮性を有する汚れ洗濯性向上機能が付与された弾性繊維の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【００２８】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【００２９】
（実施例１）
元生地として綿９４．７％、ポリウレタン繊維（モビロンＲ、日清紡社製）５．３％の混率で編んだ生地を使用し、モノクロル酢酸ナトリウム（２００ｇ／Ｌ）及び水酸化ナトリウム（７０ｇ／Ｌ）を含有する処理液中に１：２０の浴比で浸漬し、パッダーで絞った後、２５℃、２４時間放置して反応させた。水洗して未反応物を除去し、乾燥させることにより処理布を得た。
なお、得られた処理布の加工度は２．８であった。なお、上記加工度は、処理によってカルボキシメチル化反応したＯＨ基の割合（％）を表し、未処理の生地のＯＨ基の数に対する処理後の生地のＣＯＯ基の数の割合（％）を示す。
【００３０】
上記ＣＯＯ基の数は、生地の全ＣＯＯ基をＣＯＯＨ基とし、水酸化ナトリウム水溶液（０．１Ｎ）に浸漬した後、その置換に使用されたＮａを定量することにより、求めることができる。置換に使用されたＮａ量は、生地を浸漬した水酸化ナトリウム水溶液を、例えば、塩酸（０．１Ｎ）を使用して滴定することにより、定量することができる。具体的には、以下の測定方法を採用することができる。
【００３１】
（１）生地を０．３Ｎの塩酸に、浴比１：５０、液温２０℃の条件で１時間浸漬して全ＣＯＯ基をＣＯＯＨ基とし、脱水し、乾燥して残留ＨＣｌを除去し、約４ｇをサンプリングして絶乾重量（Ｗ（ｇ））を秤量する。
【００３２】
（２）絶乾重量を秤量した生地を、精秤した０．１Ｎの水酸化ナトリウム水溶液５０ｍｌ（Ｂ（ｍｌ））に浸漬して液温２０℃で１晩放置することにより、全ＣＯＯＨ基をＣＯＯＮａに置換する。
【００３３】
（３）置換に使用されたＮａを定量するため、０．１Ｎ塩酸を使用して液を滴定し、滴定値をＸ（ｍｌ）とする。指示薬としてはフェノールフタレインを使用することができる。
【００３４】
上記加工度は、処理後の生地の絶乾重量（Ｗ（ｇ））、水酸化ナトリウム水溶液の体積（Ｂ（ｍｌ））、滴定に要した塩酸の体積（Ｘ（ｍｌ））から、以下の計算式に従って算出することができる。
【００３５】
加工度（モル％）＝１６２．１４×（Ｂ−Ｘ）÷〔１００００Ｗ−５９．０４×（Ｂ−Ｘ）〕÷３×１００
【００３６】
（実施例２〜９）
元生地として表１に示す綿とポリウレタン繊維との混合繊維を使用し、表１に示す加工度となるように処理を行った以外は実施例１と同様にして処理布を得た。なお、加工度の調整は、水酸化ナトリウムの濃度を変更することにより行った。
なお、ポリウレタン繊維としては、モビロンＱＳ（日清紡社製）、ライクラ１７８Ｃ（東レ・デュポン社製）、ライクラ１２７Ｃ（東レ・デュポン社製）を使用した。
【００３７】
（比較例１〜５）
生地として表１に示す綿とポリウレタン繊維との混合繊維を使用して処理液による処理を行わず、未処理布を得た。
【００３８】
（比較例６）
綿１００％の生地を使用して処理液による処理を行わず、未処理布を得た。
【００３９】
（評価）
実施例及び比較例で得た処理布及び未処理布について以下の方法により、オレイン酸洗浄性試験及び白度低下試験を行った。
結果を表１に示した。
【００４０】
（１）オレイン酸洗浄性試験
得られた処理布及び未処理布からなる試験布を、オレイン酸８０ｇ／Ｌ、ゼラチン２０ｇ／Ｌを含有する溶液に５分間浸漬し、水平マングルで該試験布と同等量絞った後、１２０℃で５分間乾燥し、一晩放置した。次いで、水のみの場合と、洗剤（花王社製、アタック）を０．６７ｇ／Ｌの濃度となるように加えた場合で、ＪＩＳ Ｌ ０２１３ １０３に規定する方法で洗濯を行った。
洗濯後の各試験布を天日乾燥した後、試験布上に残存するオレイン酸をメタノールで抽出し、ガスクロマトグラフ（島津製作所社製、ＧＣ−１７Ａ）によりオレイン酸の残留量を測定し、洗濯前後の測定値からオレイン酸残留率（％）を求めた。得られた数値から、以下の基準により評価した。
【００４１】
◎：水のみで洗濯した場合のオレイン酸残留率（％）が、洗剤を用いて未処理布を洗濯した場合のオレイン酸残留率の８０％以下
〇：水のみで洗濯した場合のオレイン酸残留率（％）が、洗剤を用いて未処理布を洗濯した場合のオレイン酸残留率の１１０％以下
△：水のみで洗濯した場合のオレイン酸残留率（％）が、洗剤を用いて未処理布を洗濯した場合のオレイン酸残留率の１２０％以下
×：水のみで洗濯した場合のオレイン酸残留率（％）が、洗剤を用いて未処理布を洗濯した場合のオレイン酸残留率の１２０％を超える
【００４２】
（２）白度低下試験
得られた処理布及び未処理布からなる試験布を、塩化ナトリウム２０．０ｇ／Ｌ、塩化アンモニウム１７．５ｇ／Ｌ、尿素５．０ｇ／Ｌ、酢酸２．５ｇ／Ｌ、乳酸１５．０ｇ／Ｌを含有する人工汗溶液に５分間浸漬し、水平マングルで該試験布と同等量絞った後、４０℃で１時間乾燥した。その後、水のみの場合と、洗剤（花王社製、アタック）を０．６７ｇ／Ｌの濃度となるように加えた場合で、ＪＩＳ Ｌ ０２１３ １０３に規定する方法で洗濯を行った。洗濯後の各試験布を天日で５時間乾燥した後、分光光度計（ＷＨＩＴＥ ＥＹＥ３０００、サカタインクス社製）を用いて洗濯前後の測定値から白度の差を測定した。
【００４３】
【表１】
【産業上の利用可能性】
【００４４】
本発明によれば、洗剤を用いずに洗濯を行った場合であっても、優れた洗浄効果が得られ、かつ、高い伸縮性を有する汚れ洗濯性向上機能が付与された弾性繊維の製造方法を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
綿とポリウレタン繊維との混合繊維を、モノクロル酢酸又はモノクロル酢酸のアルカリ金属塩と、アルカリ金属の水酸化物とを含有する処理液に接触させることを特徴とする汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の製造方法。
【請求項２】
処理液は、モノクロル酢酸又はモノクロル酢酸のアルカリ金属塩の濃度が０．１〜６００ｇ／Ｌ、アルカリ金属の水酸化物の濃度が０．１〜３００ｇ／Ｌであって、綿とポリウレタン繊維との混合繊維と前記処理液とを、５〜２５０℃において１秒〜１００時間接触させることを特徴とする請求項１記載の汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の製造方法。
【請求項３】
請求項１又は２記載の汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の製造方法により製造されたものであることを特徴とする汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維。
【請求項４】
請求項１又は２の汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の製造方法により製造された汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維を含有することを特徴とする繊維製品。
【請求項１】
綿とポリウレタン繊維との混合繊維を、モノクロル酢酸又はモノクロル酢酸のアルカリ金属塩と、アルカリ金属の水酸化物とを含有する処理液に接触させることを特徴とする汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の製造方法。
【請求項２】
処理液は、モノクロル酢酸又はモノクロル酢酸のアルカリ金属塩の濃度が０．１〜６００ｇ／Ｌ、アルカリ金属の水酸化物の濃度が０．１〜３００ｇ／Ｌであって、綿とポリウレタン繊維との混合繊維と前記処理液とを、５〜２５０℃において１秒〜１００時間接触させることを特徴とする請求項１記載の汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の製造方法。
【請求項３】
請求項１又は２記載の汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の製造方法により製造されたものであることを特徴とする汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維。
【請求項４】
請求項１又は２の汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維の製造方法により製造された汚れ洗浄性向上機能付与弾性繊維を含有することを特徴とする繊維製品。
【公開番号】特開２０１０−２３６１４２（Ｐ２０１０−２３６１４２Ａ）
【公開日】平成２２年１０月２１日（２０１０．１０．２１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００９−８５８４０（Ｐ２００９−８５８４０）
【出願日】平成２１年３月３１日（２００９．３．３１）
【出願人】（０００００１３３９）グンゼ株式会社 (919)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年１０月２１日（２０１０．１０．２１）
【国際特許分類】
【出願日】平成２１年３月３１日（２００９．３．３１）
【出願人】（０００００１３３９）グンゼ株式会社 (919)
【Ｆターム（参考）】
[ Back to top ]